(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-21211(P2018-21211A)
(43)【公開日】2018年2月8日
(54)【発明の名称】リグニンを含む分散状の組成物、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 97/00 20060101AFI20180112BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20180112BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20180112BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20180112BHJP
C08J 9/18 20060101ALI20180112BHJP
【FI】
C08L97/00
C08L71/02
C08K5/49
C08J3/20 ZCEP
C08J9/18
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-215769(P2017-215769)
(22)【出願日】2017年11月8日
(62)【分割の表示】特願2015-514663(P2015-514663)の分割
【原出願日】2013年5月30日
(31)【優先権主張番号】1250569-9
(32)【優先日】2012年6月1日
(33)【優先権主張国】SE
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリュンバウアー、ディーアール. ヘンリー ジェイ.エム.
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA61
4F070AA72
4F070FA02
4F074AA01
4F074AA76
4F074BA39
4F074CA31
4F074CA34
4F074DA35
4F074DA37
4F074DA47
4J002DH006
4J002FD136
(57)【要約】
【課題】本発明は、分散状の組成物、前記組成物を製造するための方法及びその使用に関する。
【解決手段】1つ又は複数の分散剤、及びリグニン、好ましくはアルカリ性リグニン、を含んでいる分散状組成物であって、前記リグニンが、約100nmから約2000nmまで、好ましくは約100から約1000nmまで、最も好ましくは約200から約600nmまでの範囲の平均粒径を有しており、前記分散剤が、約18から約30MPa
1/2までの溶解パラメーター及び約15mPasから約20,000mPasまで、より好ましくは約15mPasから約10,000mPasまで、特に好ましくは約20mPasから約1000mPasまで、最も好ましくは約20mPasから約500mPasまでの粘度を有する上記組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の分散剤、及びリグニン、好ましくはアルカリ性リグニン、を含んでいる分散状組成物であって、前記リグニンが、約100nmから約2000nmまで、好ましくは約100から約1000nmまで、最も好ましくは約200から約600nmまでの範囲の平均粒径を有しており、前記分散剤が、約18から約30MPa1/2までの溶解パラメーター及び約15mPasから約20,000mPasまで、より好ましくは約15mPasから約10,000mPasまで、特に好ましくは約20mPasから約1000mPasまで、最も好ましくは約20mPasから約500mPasまでの粘度を有する上記組成物。
【請求項2】
前記リグニンが、クラフトリグニンである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記分散剤が、ポリオール、好ましくはエチレングリコール又はポリエチレングリコール又はそれらの組合せ、最も好ましくはPEG、DEG、TEG及びMEGからなる群から選択されるか又はそれらの組合せである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリオールがPEGであり、好ましくはそのPEGが、約100から約5000まで、特に好ましくは約100から約600まで、最も好ましくは約400の分子量を有する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオールが、異なるPEGの混合物を含み、前記混合物が好ましくは約400の分子量を有している1つのPEG及び約600の分子量を有している1つのPEGを含む請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
1つ又は複数のアルカノールアミン、好ましくはMEAも含んでいる請求項1から5までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
1つ又は複数の難燃化剤、好ましくはTCPP又はDEEP又はその両方の組合せも含んでいる請求項1から6までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
発泡体、ゴム製品、接着剤、反応性フィラーを製造するための又は充填剤として使用するための、請求項1から7までのいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
i)リグニン、好ましくはアルカリ性リグニンを用意するステップ、
ii)1つのポリオール又はポリオールの混合物を添加するするステップ、及び
iii)前記成分を混合し、かくして前記組成物を提供するステップ、
を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の分散状の組成物を製造するための方法。
【請求項10】
混合前に、1つ又は複数の難燃化剤が添加される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記混合が、少なくとも約1000rpm、好ましくは少なくとも約5000rpm、最も好ましくは少なくとも約20000rpmの高せん断混合である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか一項に記載の方法によって得られる、分散状の組成物。
【請求項13】
a)請求項1から7のいずれか一項又は12に記載の組成物を用意するステップ、
b)前記組成物に1つ又は複数の発泡剤を添加するステップ、
c)場合によって1つ又は複数の添加剤を添加するステップ、
d)前記組成物にイソシアナートを添加するステップ、
e)ステップd)で得られた混合物を撹拌するステップ、及び
f)ステップe)で撹拌された混合物を鋳型に搬送し、連続的又は不連続的に発泡体を供給するステップ、
を含む、発泡体を製造するための方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の添加剤が、1つ又は複数の界面活性剤、好ましくは1つ又は複数のポリジメチルシロキサンコポリマー、1つ又は複数のポリウレタン触媒、好ましくは1つ又は複数の第三級アミン又は1つ又は複数のトリアミン、1つ又は複数の難燃化剤、又はそれらの組合せからなる群から選択され得る請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ又は複数の発泡剤が、好ましくは、i−ペンタン、n−ペンタン及びシクロペンタン又はそれらの組合せから選択される1つ又は複数の炭化水素化合物である請求項13に記載の方法。
【請求項16】
1つ又は複数のヒドロキシル含有化合物及び/又はもう1つの触媒が、前記1つ又は複数の発泡剤、好ましくは1つ又は複数のポリエステルポリオール及び/又は1つ又は複数のポリエーテルポリオールの添加前に添加され、触媒として三量体触媒が添加される請求項13に記載の方法。
【請求項17】
請求項13から16までのいずれか一項に記載の方法によって得られる発泡体。
【請求項18】
建物及び建築部分における、自動車用途、家庭電化用品、履物、又は家具若しくは寝具用途における、断熱のための請求項17に記載の発泡体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散状の組成物、前記組成物を製造するための方法及びさまざまな応用分野、例えば、接着剤、結合剤、鋳物、発泡体(例えば、冷蔵庫及び冷凍庫内並びに建物及び建築用途における断熱材用の硬質ポリウレタン及びポリイソシアヌラートフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、スプレーフォーム、成型され同時に積層されている軟質ポリウレタンフォーム、微細セルフォーム並びに粘弾性発泡体など)、充填剤、グルー、シーラント、エラストマー及びゴム製品などにおけるそれらの使用に関する。
【0002】
本発明は、また、発泡体の製造のための方法及びこの発泡体の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
近年、リグニン及びリグニンを素材とする製品は、われわれの世界の生態学的均衡に悪い方向で影響を及ぼすことが知られている現在の鉱油を素材とする製品に対する地球に優しい代替品への探求において次第に重要になってきている。この状況において注目を受けている重要な領域は、多くのポリマー材料、例えば、ゴム、エポキシ及びウレタンを素材とするネットワーク及びポリマーなどのための補強充填材としてのリグニンの使用であった。
【0004】
さらに、米国特許第3,223,697号は、リグニンの粉末を開示しており、米国特許第5,008,378号は、リグニン分散系を開示している。加えて、CN1462760は、リグニンポリウレタンフォームを開示しており、特開2011−184643は、リグニンを素材とする物質を用いる発泡体を開示している。
【0005】
しかしながら、これらの文献のどれも、熱硬化性及び熱可塑性工業製品のポリマー骨格の一部として、リグニンが望ましい影響を発揮することができるそのような製品中のこれらの粒子の混和のための効果的方法において分散系の使用を可能にする粒径を有する前記リグニンの分散系を開示してはいない。
【0006】
その上、これらの粉末が効果的であり得る多数の工業製品の製造の影響を受けやすいサブミクロン及び/又はナノメートルサイズのリグニン粒子の製造のための簡単で、費用効率の高いプロセスに対する必要性も存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一の態様によって、1つ又は複数の分散剤、及びリグニン、好ましくはアルカリ性リグニン、を含んでいる分散状の組成物であって、前記リグニンが、約100nmから約2000nmまで、好ましくは約100から約1000nmまで、最も好ましくは約200から約600nmまでの範囲の平均粒径を有しており、前記分散系が、約18から約30MPa
1/2までの溶解パラメーター及び約15mPasから約20,000mPasまで、より好ましくは約15mPasから約10,000mPasまで、特に好ましくは約20mPasから約1000mPasまで、最も好ましくは約20mPasから約500mPasまでの粘度を有する上記組成物を提供することによって1つ又は複数の上記問題を解決する。溶解パラメーター及び粘度の値は、室温で測定又は計算される。
【0008】
本発明は、また、第二の態様によれば、第一の態様による組成物の発泡体、ゴム製品、接着剤、反応性フィラーの製造における又は充填剤として使用するための使用も提供する。前記分散系は、例えば、I電化製品(例えば、家庭用電気器具、例えば冷蔵庫及び冷凍庫など)又は建物及び建築への応用において使用され得る。それは、また、断熱が必要とされる応用、例えば冷蔵庫及び冷凍庫などにおいても使用され得る。それは、また、発泡体(例えば、スプレーフォーム、二重バンド積層によって製造された硬質面及び軟質面のあるパネル、不連続パネル、ブロックフォーム、現場注入発泡フォーム及びパイプ断熱用フォーム)においても使用され得る。これら後者のパネル中の発泡体は、ポリウレタン又はポリイソシアヌラートタイプのものであり得る。前記分散系は、また、微小気泡フォーム及び粘弾性フォーム、柔軟なスラブ材及び柔軟な成型したポリウレタンフォーム、例えば、寝具類、家具、履物(例えば靴底)及び自動車用途などでも使用され得る。前記分散系は、また、複合材、コーティング、結合剤、シーラント、ゴム製品、接着剤、反応性フィラーの中で使用されてもよく、又は充填剤として使用され得る。前記分散系は、また、ポリマーキャスティングにおける、例えばエポキシキャスティングにおける又はポリオレフィンキャスティングにおける反応性フィラー/充填剤としても使用され得る。
【0009】
本発明は、また、第三の態様によれば、
i)リグニン、好ましくはアルカリ性リグニンを用意するステップ、
ii)1つのポリオール又はポリオールの混合物を添加するするステップ、及び
iii)前記成分を混合し、かくして前記組成物を提供するステップ、
を含む、第一の態様による分散状の組成物を製造するための方法を提供する。
【0010】
本発明は、また、第四の態様によれば、第三の態様による方法によって得られる分散状の組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、第五の態様によれば、
a)第一又は第四の態様による組成物を用意するステップ、
b)前記組成物に1つ又は複数の発泡剤を添加するステップ、
c)場合によって1つ又は複数の添加剤を添加するステップ、
d)前記組成物にイソシアナートを添加するステップ、
e)ステップd)で得られた混合物を撹拌するステップ、及び
f)ステップe)で撹拌された混合物を鋳型に搬送し、連続的又は不連続的(即ちバッチ方式)に供給するステップ、
を含む、発泡体を製造するための方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、第六の態様によれば、第五の態様による方法によって得ることができる発泡体を提供する。
【0013】
本発明は、また、第七の態様によれば、第五の態様による発泡体の使用を提供する。前記発泡体は、断熱のために、建物及び建築部分において、電化製品(例えば家庭電化用品、例えば冷蔵庫及び冷凍庫など)において、自動車用途又は家具若しくは寝具用途において使用され得る。それは、また、断熱が必要となる用途、例えば、冷蔵庫及び冷凍庫において、スプレーフォーム、二重バンド積層によって製造された硬質面及び軟質面のあるパネル、不連続パネル、ブロックフォーム、現場注入発泡フォーム及びパイプ断熱用フォームにおいて使用され得る。これらの後者のパネルにおける発泡体は、ポリウレタン又はポリイソシアヌラートタイプのものであり得る。前記発泡体は、また、上述のように、寝具類、家具及び自動車用途(例えば自動車の座席)においても使用され得る。前記発泡体は、さらに履物(例えば靴底)に使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
語句「リグニン」は、分散させるために使用され得る任意のリグニンを包含することが本記述を通して意図されている。好ましくはそのリグニンはアルカリ性リグニンである。それは、例えばクラフトリグニンであり得る。そのリグニンは、好ましくは、EP1794363に開示されているプロセスを用いることによって得ることができる。
【0015】
語句「イソシアナート」は、発泡体用途での使用に適する任意のイソシアナート化合物を包含することが本記述を通して意図されている。このイソシアナートは、モノマーのジイソシアナート、ポリマーのイソシアナート又はそれはイソシアナートプレポリマーでもあり得る。
【0016】
語句「サブミクロン」は、2000nmより下で1nmまでの任意のものを包含することが本記述を通して意図されている。
【0017】
語句「難燃剤」は、発泡体又はフィラー用途で有用な任意の難燃剤を包含することが本記述を通して意図されている。この難燃剤は、液体の有機リン、有機ハロゲン及びハロゲン化有機リン難燃剤であり得る。TCPP及びDEEPは好ましい例である。
【0018】
語句「鋳型」は、硬質発泡体製造において使用され得る任意の鋳型を包含することが本記述を通して意図されている。前記鋳型は、例えば、現場発泡体用の鋳型(それによって、スプレー技術を使用して材料を成型されるように搬送することができ、これは不連続技術である)、ブロックを提供するための鋳型(これは不連続式及び連続式の両方であり得る)、断熱板を製造するための鋳型(これは不連続式及び連続式の両方であり得る)、二重曲げラミネーター(例えば金属面を有するサンドイッチパネルを製造するため、これはさらにまた連続技術である)であり得る。上記の技術は、「ポリウレタンの本(The polyurethane book)」、2010年、編者David Randall及びSteve Leeにさらに記載されている。
【0019】
用語の溶解パラメーターは、有機化合物の他の有機化合物又は溶媒中の溶解性を説明するために、有機、物理及びポリマー化学の技術の中で使用されるδによって表される特性を指すことが本記述を通して意図されている。フラグメント寄与からのδの計算は、技術的に公開されている。[参照、例えば、溶解パラメーター及びその他の凝集パラメーターの便覧(Handbook of Solubility Parameters and other Cohesion Parameters)、Barten,A.、CRT Press、フロリダ(1984年)及びポリマーの特性:それらの推定及びそれらの化学構造との相関(Properties of Polymers: their Estimation and Correlation with Chmical Structure)、van Krevelen,D.W.、Hoftijzer,P.J.,Elsevier、アムステルダム第2版(1976年)]
【0020】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態によれば、前記リグニンはクラフトリグニンである。
【0021】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態によれば、前記分散剤は、ポリオール、好ましくはエチレングリコール又はポリエチレングリコール又はそれらの組合せであり、最も好ましくはPEG(ポリエチレングリコール)、DEG(ジエチレングリコール)、TEG(トリエチレングリコール)及びMEG(モノエチレングリコール)又はそれらの組合せを含む群から選択される。
【0022】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態によれば、そのポリオールは、PEGであり、好ましくはそのPEGは、約100から約5000までの、特に好ましくは約100から約600までの、最も好ましくは約400の分子量を有する。
【0023】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態によれば、前記ポリオールは、さまざまなPEGの混合物を含み、前記混合物は、約400の分子量を有している1つのPEG及び約600の分子量を有している1つのPEGを好ましくは含む。
【0024】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態によれば、前記組成物は、また、1つ又は複数のアルカノールアミン、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン、モノエタノールアミン(MEA)又はそれらの混合物、好ましくはMEAを含むことが用意される。
【0025】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態によれば、1つ又は複数の難燃化剤、好ましくはTCPP(トリス(1−クロロ−2−プロピル)ホスファート)又はDEEP(ジエチルエチルホスホナート)又はその両方の組合せも含んでいる組成物が提供される。
【0026】
本発明の第三の態様の好ましい実施形態によれば、1つ又は複数の難燃化剤は混合前に加えられる。
【0027】
本発明の第三の態様の好ましい実施形態によれば、前記混合は、少なくとも約1000rpm、好ましくは、少なくとも約5000rpm、最も好ましくは少なくとも約20000rpmの高せん断混合である。
【0028】
本発明の第五の態様の好ましい実施形態によれば、前記1つ又は複数の添加剤は、1つ又は複数の界面活性剤、好ましくは1つ又は複数のポリジメチルシロキサンコポリマー(例えばPDMS)、1つ又は複数のポリウレタン触媒、好ましくは1つ又は複数の第三級アミン又は1つ又は複数のトリアミン、1つ又は複数の難燃化剤、又はそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0029】
本発明の第五の態様の好ましい実施形態によれば、1つ又は複数のヒドロキシル含有化合物及び/又はもう1つの触媒は、前記1つ又は複数の発泡剤、好ましくは1つ又は複数のポリエステルポリオール及び/又は1つ又は複数のポリエーテルポリオールの添加前に添加され、そして触媒として三量体触媒(例えばアルカリオクトアートなど)が添加される。
【0030】
本発明の第五の態様の好ましい実施形態によれば、前記1つ又は複数の発泡剤は、好ましくはn−ペンタン、i−ペンタン及びシクロペンタン又はそれらの組合せから選択される1つ又は複数の炭化水素化合物、又はその他の技術的に知られている発泡剤である。
【0031】
上で提示したように、1つの好ましい実施形態において、本発明は、適切な非水性液体分散剤中のクラフトリグニンの安定なサブミクロン分散及びそれらの製造のためのプロセスに関する。
【0032】
上で提示したように、本発明は、また、さらなる固体処理及び時間のかかる固体−液体の濡れ及び混合の手順に対する必要性なしで最終製品を製造するさらなるプロセスステップに受け入れられる非水性分散剤中のクラフトリグニンのサブミクロンの分散系を含んでいるすぐに使える液体組成物を提供する。
【0033】
本発明は、従って、上で提示した好ましい実施形態に従って以下を提供する:
− クラフトリグニンが十分なせん断速度で適切な分散剤と混合されて分散を提供する比較的単純な混合プロセス、
− これらの分散剤は、それらの粘度及び溶解パラメーターのみによって特徴づけられ、それはそれらが意図された製造プロセスに向けて調整されることを可能にし、それによってリグニン粒子が目標の最終製品中に組み込まれ、
− 含まれるリグニン粒子は、最終製品の製造プロセスにおける参加者としてそれらを効果的にする大部分サブミクロン及び/又はナノメートルサイズのものである。
− 従って、本発明の第三の態様による前記プロセスは、これらの粒子を、目標とされる製造プロセスに参加する材料と混合可能である非水性分散の形で供給する。
【0034】
本発明のそれぞれの態様の好ましい特徴は、他の態様のそれぞれに関しては変更すべきところは変更される。本明細書に挙げられている従来技術の文献は、法的に認められている最大限まで組み込まれる。本発明は、添付の図面と一緒の以下の実施例においてさらに説明され、それらは本発明の範囲を多少なりとも限定しない。本発明の実施形態は、上記のように、添付の図面とともに実施形態の例を用いてより詳細に説明され、その唯一の目的は本発明を説明することであり、決してその範囲を限定することが意図されてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】エチレングリコール中に分散されたクラフトリグニンについての強度による粒度分布を開示する図である。
【
図2】ポリエチレングリコール400中に分散されたクラフトリグニンについての強度による粒度分布を開示する図である。
【
図3】ポリエチレングリコール600中に分散されたクラフトリグニンについての強度による粒度分布を開示する図である。
【
図4】1−ヘキサノール上澄み液中に分散されたクラフトリグニンについての強度による粒度分布を開示する図である。
【実施例】
【0036】
(例1)
エチレングリコール中の、クラフトリグニンの5、10及び15重量%の負荷をかけた分散系が、最初は乾燥リグニンを分散させるために18800rpm/分で少なくとも1分間、続いて最大の分散性を確保するために25000rpmで1分間の2つの速度で運転されるHeidolph DIAX 900分散機を用いて調製された。これらの分散系から採取された試料は、Malvern Zetasizer Nano ZSにより粒径及び粒径分布を測定する前に約50倍に希釈された。この装置は、ブラウン運動の下で動いている粒子の拡散を測定し、これをストークス−アインシュタインの式を用いて粒径及び粒径分布に変換する。各試料は3〜5回走査された。
図1により与えられた10重量%負荷での典型的な結果は、大きいばらつきを示しており、粒子間の連続的な凝集作用及び脱凝集作用過程を示唆している。この挙動は表1に「分類1」として大まかに分類されている。各試料について、平均の粒径が、全ての試料に対して平均された平均直径の値も示されている表1に記録されているように、全ての測定された各走査の強度分布に対して重量平均化することによって計算された。
【0037】
(例2)
ジエチレングリコール中の、クラフトリグニンの5、10及び15重量%の負荷をかけた分散系が、例1に概要が示されている手順を用いて調製された。粒径及びそれらの分布は、例1におけるのと同様に変動していた。平均粒径についての分類及び値は表1に示されている。
【0038】
(例3)
ポリエチレングリコール200中の、クラフトリグニンの5、10及び15重量%の負荷をかけた分散系が、例1に概要が示されている手順を用いて調製された。粒径及びそれらの分布は、例1におけるのと同様に変動していた。平均粒径についての分類及び値は表1に示されている。
【0039】
(例4)
ポリエチレングリコール400中の、クラフトリグニンの5、10及び15重量%の負荷をかけた分散系が、例1に概要が示されている手順を用いて調製された。粒径及びそれらの分布は、
図2によって示されている二相性のパターンを示した。この挙動は、平均粒径についての値も与えている表1に「分類2」として示されている。
【0040】
(例5)
ポリエチレングリコール600中の、クラフトリグニンの5、10及び15重量%の負荷をかけた分散系が、例1に概要が示されている手順を用いて調製された。粒径及びそれらの分布は、
図3によって示されている単分散挙動を見せた。この挙動は、平均粒径についての値も与えている表1に「分類3」として示されている。
【0041】
(例6)
エタノールアミン中の、クラフトリグニンの5及び10重量%の負荷をかけた分散系が、例1に概要が示されている手順を用いて調製された。粒径及びそれらの分布は、単分散挙動を見せ、それは従って、平均粒径についての値も与えている表1において分類された。
【0042】
(例7)
Voranol
(商標)P1010(Dow Chemical Companyの1000の分子量のポリプロピレングリコール)中の、クラフトリグニンの5、10及び15重量%の負荷をかけた分散系が、例1に概要が示されている手順を用いて調製された。粒径及びそれらの分布は、リグニンの遅い沈殿によって引き起こされる分散系の濁りのために測定することができなかった。この挙動は、表1において「分類4」として分類されている。
【0043】
(例8)
1−ヘキサノール中の、クラフトリグニンの5及び10重量%の負荷をかけた分散系が、例1に概要が示されている手順を用いて調製された。粒径及びそれらの分布は、速い沈殿によって引き起こされる分散系の濁りのために測定することができなかった(表1における分類4)。沈殿後、着色した上澄みが後に残り、それはさらなる希釈なしで測定された。その結果は
図4によって示されており装置の測定限界を超える非常に大きい粒径が観察される。
【0044】
(例9)
シクロペンタジエン中の、クラフトリグニンの5及び10重量%の負荷をかけた分散系が、例1に概要が示されている手順を用いて調製された。粒径及びそれらの分布は、速い沈殿によって引き起こされる分散系の濁りのために測定することができなかった(表1における分類4)。沈殿後、透明な上澄みが後に残り、それはさらなる希釈なしで測定されたが粒子は検出することができなかった。
【0045】
表1は、文献又は供給業者から得られた分散剤の粘度を含めた全てのデータのまとめを示している。溶解パラメーターは、A.F.M.Barton、(CRC Press Inc.,1983年)による溶解パラメーター及びその他の凝集パラメーターの便覧から得られたか又は同じ参考文献に記載されているHoy−van Krevelenの方法を用いて分子断片値から計算された。
【表1】
【0046】
ポリイソシアヌラート発泡体の例
本発明の適用性は、ハンドミックス発泡によるポリイソシアヌラート発泡体の調製(これはそれ故不連続のバッチ式のプロセスであった)を含む例10〜17によりさらに実証される。この目的を達成するために、リグニンを含んでいるポリオール組成物が、目標量のリグニンをボール紙製のビーカー中に計量し、選択した分散剤を添加し、続いて全てのその他のポリオール成分及び発泡剤(1つ又は複数)を除く添加剤を添加することによって調製された。この混合物は、その後、最初に乾燥リグニンを分散させるために少なくとも1分間、18800rpm/分で、続いて最大の分散性を確保するために25000rpmで少なくとも1分間の2つの速度で運転されるHeidolph DIAX 900分散機を用いて分散された。発泡剤は、ポリオールブレンドを常にPMDIとして使用されるBASF製のLupranat M20Sと混合する直前に、以下に記載されているHeidolph攪拌機を用いていつも最後に加えられた。
【0047】
ハンドミックス発泡体が、タイマー及びrpmカウンターを取り付けたHeidolph lab.攪拌機を用いて以下のとおり調製された。ポリオールブレンドをボール紙製のビーカー中で調製後、秤量した量のLupranat M20Sがそのビーカーに注がれた。続いてその混合物は4000rpmで10秒間撹拌され、その後その反応物は、20×20×20cm
3のボール紙の箱の中に注がれ、自由に昇温し、硬化するままにされた。核生成が、その箱の中でクリーム状の塊に移行することを視覚的に点検することによって、通常の方法で記録された(クリーム時間)。その完全に成熟した発泡体は、次に、発泡している塊の中に糸状のものの形成をチェックするために使い捨ての(木製の)へらによって精査された。これらの糸状のものの最初の出現は「ストリング時間」として記録された。最後にその同じへらは、完全に膨らんだ発泡体の「粘着性」をテストするために使用された。その最初の粘着性の消失は、「タックフリー」時間として記録された。ポリイソシアヌラート(PIR)発泡体は、一方でこの特定の適用に限定されない本発明の機能を実証するための第一の標的として選択された。
【0048】
この発泡体の核密度は、その発泡体の中央の10×10×10cm
3の立方体からそれらの重量:堆積比に関して平均化することによって切断した8個の5×5×5cm
3の試料について測定された。浮力についての修正はなされなかった。圧縮強度は、5mm/分で移動するZwick 1425 Dynamic Mechanical試験機に基づく同じ試料についての4つの高まりに対する垂直及び4つの高まりに対する平行の測定に関して平均化することによって同様に測定された。その試料の10%の圧縮のために必要なkPaでの平均圧力が、その発泡体の圧縮強度として記録された。使用された配合物は表1に示されており、そこではポリエチレングリコール400又はそれのポリエチレングリコール600との混合物がリグニンに対する分散剤として常に使用された。さまざまなポリオール、添加剤及び炭化水素発泡剤を含んでいる配合物の詳細が、リグニンを含んでいない参照用の配合物に関するデータとともに表2に明記されている。これらの発泡体の反応性、核密度及び圧縮強度の性能は表3に示されている。それらは優れた特性を有するPIRフォームがこの発明のリグニン分散系を使用して製造され得ることを実証している。
【0049】
Lupraphen(登録商標)8007は、ジカルボン酸に基づく二官能性のポリエステルポリオールである。供給業者はBASFであった。
Stepanpol 2402Bは、ジカルボン酸に基づく二官能性のポリエステルポリオールである。供給業者はStepanであった。
リグニンは、国内で得られたクラフトリグニンであった。
ポリエチレングリコールPEG400は、Pluriol(登録商標)E400であり、供給業者はBASFであった。
ポリエチレングリコールPEG600は、Pluriol(登録商標)E600であり、供給業者はBASFであった。
KOSMOS(登録商標)75MEGは、発泡体を製造するときに使用するための中粘度の触媒である。それはエチレングリコールに溶解されたオクタン酸カリウムからなる。提供業者はEvonik Industries AGであった。
TEGOAMIN(登録商標)PMDETA(ペンタメチルジエチレントリアミン)は、Evonik Industries AGを通して提供された。
TEGOAMIN(登録商標)DMCHA(N,N−ジメチルシクロヘキシル−アミン)も、また、Evonik Industries AGを通して提供された。
TEGOSTAB(登録商標)B8491は、加水分解耐性のあるポリエーテルポリジメチルシロキサンコポリマーである。提供業者は、Evonik Industries AGであった。
TCPP(商標名)は、トリス(1−クロロ−2−プロピル)ホスファートであり、提供業者は、前記化合物に対して商標Fyrol(登録商標)PCFを有しているICLであった。
Lupranat(登録商標) M 20 Sは、高い官能性オリゴマー及び異性体を伴う4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアナート(MDI)に基づく無溶媒の製品である。提供業者はBASFであった。
シクロペンタン及びn−ペンタンは、Alfa Aesarから入手された。
【表2】
【表3】
【0050】
例10〜16からの発泡体の反応性、核密度、圧縮強度の性能は、表3によって示されている。それらはPIRフォームの優れた反応性及び機械的性能の特性がこの発明のリグニン分散系を使用して製造され得ることを実証している。例番号17は、発泡体の断熱性能並びに難燃性が、参考資料に匹敵することを実証するためにこの表に含められている。23.85のラムダ値は、参考試料より良好であり、さらに、DIN4102における10.50cmの火炎高さは、この発泡体がDIN B2の等級を満足させることを示している。
【0051】
本発明のさまざまな実施形態が上で説明されてきたが、当業者であれば、本発明の範囲に該当するさらなる軽微な修正に気付く。本発明の幅と範囲は、上で説明した典型的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの同等物によってのみ定義されるべきである。例えば、上記の組成物又は方法は、いずれも、その他の既知の方法と組み合わせられ得る。本発明の範囲内のその他の態様、有利な点及び修正品は、本発明が関係する当業者には明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2017年12月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体を生成するための1つ又は複数の分散剤及び該分散剤に分散されたリグニンを含む組成物であって、該リグニンが、200から600nmまでの範囲の平均粒径を有しており、該分散剤が、18から30MPa1/2までの溶解パラメーター及び15mPasから20,000mPasまでの粘度を有する、上記組成物。
【請求項2】
1つ又は複数の分散剤、及びリグニンを含んでいる分散状組成物であって、該リグニンが、200から600nmまでの範囲の平均粒径を有しており、該分散剤が、18から30MPa1/2までの溶解パラメーター及び15mPasから20,000mPasまでの粘度を有する、上記組成物。
【請求項3】
前記リグニンがアルカリ性リグニンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記分散剤が15mPasから10,000mPasまでの粘度を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記分散剤が20mPasから1000mPasまでの粘度を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記分散剤が20mPasから500mPasまでの粘度を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記リグニンが、クラフトリグニンである、請求項1〜6までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記分散剤が、ポリオールである、請求項1〜7までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記分散剤が、エチレングリコール又はポリエチレングリコール又はそれらの組合せである、請求項1〜7までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記分散剤が、PEG、DEG、TEG及びMEGからなる群から選択されるか又はそれらの組合せである、請求項1〜7までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリオールがPEGであり、そのPEGが、100から5000までの分子量を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリオールがPEGであり、そのPEGが100から600までの分子量を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリオールがPEGであり、そのPEGが400の分子量を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリオールが、異なるPEGの混合物を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
前記混合物が400の分子量を有している1つのPEG及び600の分子量を有している1つのPEGを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
1つ又は複数のアルカノールアミンも含んでいる、請求項1から15までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記1つ又は複数のアルカノールアミンがMEAである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
1つ又は複数の難燃化剤も含んでいる、請求項1から17までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記1つ又は複数の難燃化剤がTCPP又はDEEP又はその両方の組合せである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
発泡体、ゴム製品、接着剤、反応性フィラーを製造するための又は充填剤として使用するための、請求項1から19までのいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項21】
i)リグニンを用意するステップ、
ii)1つのポリオール又はポリオールの混合物を添加するするステップ、及び
iii)前記成分を混合し、かくして前記組成物を提供するステップ、
を含む、請求項1から19までのいずれか一項に記載の分散状の組成物を製造するための方法。
【請求項22】
前記リグニンがアルカリ性リグニンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
混合前に、1つ又は複数の難燃化剤が添加される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記混合が、少なくとも1000rpmの高せん断混合である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
前記混合が、少なくとも5000rpmの高せん断混合である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項26】
前記混合が、少なくとも20000rpmの高せん断混合である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項27】
a)請求項1から19までのいずれか一項に記載の組成物を用意するステップ、
b)前記組成物に1つ又は複数の発泡剤を添加するステップ、
c)1つ又は複数の添加剤を添加するステップ、
d)前記組成物にイソシアナートを添加するステップ、
e)ステップd)で得られた混合物を撹拌するステップ、及び
f)ステップe)で撹拌された混合物を鋳型に搬送し、連続的又は不連続的に発泡体を供給するステップ、
を含む、発泡体を製造するための方法。
【請求項28】
前記1つ又は複数の添加剤が、1つ又は複数の界面活性剤、1つ又は複数のポリウレタン触媒、1つ又は複数の難燃化剤、又はそれらの組合せからなる群から選択され得る、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記1つ又は複数の界面活性剤が1つ又は複数のポリジメチルシロキサンコポリマーであり、前記1つ又は複数のポリウレタン触媒が1つ又は複数の第三級アミン又は1つ又は複数のトリアミンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記1つ又は複数の発泡剤が、i−ペンタン、n−ペンタン及びシクロペンタン又はそれらの組合せから選択される1つ又は複数の炭化水素化合物である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
1つ又は複数のヒドロキシル含有化合物及び/又はもう1つの触媒が、前記1つ又は複数の発泡剤の添加前に添加され、触媒として三量体触媒が添加される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ又は複数のヒドロキシル含有化合物が1つ又は複数のポリエステルポリオール及び/又は1つ又は複数のポリエーテルポリオールである、請求項31に記載の方法。