【解決手段】複数の板状電極部材32,34と、前記電極部材32,34同士を厚さ方向に接合する接合部とを備え、前記接合部は、150℃以上の耐熱性を有し、700℃以下で融解することを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1に示すドライエッチング装置10は、真空チャンバー12と、電極板14と、基台16と、フォーカスリング18とを備える。電極板14は、円板状の部材であり、支持リング20によって真空チャンバー12内の上部に固定されている。支持リング20は、絶縁部材であるシリコンで形成されている。電極板14は、厚さ方向に貫通した複数の貫通穴15を有する。電極板14は、高周波電源26が電気的に接続されている。電極板14は、ガス供給管24が接続されている。ガス供給管24から供給されたエッチングガスは、電極板14の貫通穴15から真空チャンバー12内へ流れ込み、排出口28から外部に排出され得る。
【0012】
基台16は、真空チャンバー12内の下部に設置されており、その周囲はグラウンドリング30で囲まれている。グラウンドリング30は絶縁部材であるシリコンで形成されており、接地されている。基台16上には、フォーカスリング18が設けられている。フォーカスリング18は、絶縁部材であるシリコンで形成され、ウエハ22の周縁を支持する凹部19が内側の全周に渡って形成されている。
【0013】
ドライエッチング装置10は、電極板14を通じてエッチングガスが供給され、高周波電源26から高周波電圧が印加されると、電極板14とウエハ22の間でプラズマを生じる。このプラズマによってウエハ22表面がエッチングされる。
【0014】
図2に示すように、電極板14は、板状の第1電極部材32及び第2電極部材34と、第1電極部材32及び第2電極部材34の間に設けられた接合部(本図には図示しない)とを備える。本実施形態の場合、第1電極部材32及び第2電極部材34はシリコンで形成されている。第1電極部材32及び第2電極部材34は、単結晶でも多結晶でもよく、その製造方法、純度、結晶方位等において限定されない。本図の場合、第1電極部材32及び第2電極部材34は、同じ厚さ及び直径を有する円盤であって、接合面38において同軸上に重ねられている。電極板14は、厚さ方向に貫通した複数の貫通穴15を有する。
【0015】
図3に示すように、第1電極部材32及び第2電極部材34は、厚さ方向に貫通した複数の貫通穴15を有する。第1電極部材32及び第2電極部材34の貫通穴15同士は、それぞれ位置があっている。したがって貫通穴15は、電極板14の一側表面から他側表面へ貫通している。
【0016】
接合部36は、第1電極部材32及び第2電極部材34の間の少なくとも一部に設けられている。本図の場合、接合部36は、第1電極部材32及び第2電極部材34の接合面38の間に設けられている。接合部36は、150℃以上の耐熱性を有し、700℃以下で融解する。接合部36は、300℃以上の耐熱性を有するのがより好ましい。本実施形態の場合、接合部36は、シリコンと共晶合金を形成する金属を含むシリコンとの共晶合金である。シリコンと共晶合金を形成する金属は、In、Sn及びAlのいずれか(以下、「合金形成金属」ともいう)である。合金形成金属の純度は、シリコンと共晶を形成することが可能であれば特に限定されず、好ましくは98%以上である。
【0017】
第1電極部材32及び第2電極部材34の大きさは特に限定されないが、例えば、厚さ1mm以上50mm以下、直径300mm以上460mm以下とすることができる。
【0018】
次に電極板14を製造する方法について説明する。まず第1電極部材32及び第2電極部材34に対し表面処理をする。具体的には、第1電極部材32及び第2電極部材34の表面を研削及び研磨などにより加工し、好ましくは鏡面にする。第1電極部材32及び第2電極部材34の表面を、弗酸と硝酸の混合液などによりエッチングしてもよい。混合液としてはJIS規格H0609に規定の化学研磨液(弗酸(49%):硝酸(70%):酢酸(100%)=3:5:3)などを用いることができる。
【0019】
続いて、第2電極部材34の表面に、合金形成金属箔を配置する。合金形成金属箔の厚みは、融解させるためのエネルギーが少なくて済む点では薄い方がよい。合金形成金属箔は、接合強度を得るために0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましい。合金形成金属箔は、上記下限値より薄いと接合面38に合金形成金属箔を載せる際に破損し易い。合金形成金属箔は、上記上限値より厚いと、シリコンとの接合が十分ではない部分が生じやすい。
【0020】
続いて、合金形成金属箔上に、第1電極部材32を置く。第1電極部材32は、先に配置された第2電極部材34に対し、同軸上に配置する。このとき貫通穴15同士の位置が合うように位置決めする。上記のようにして、先に配置された第2電極部材34上に、合金形成金属箔を介して、第1電極部材32が重ねられた状態となる。
【0021】
次に、第1電極部材32側から加熱して、シリコンと合金形成金属を含む融解物を生成する。加熱方法は特に限定されず、抵抗加熱、光加熱等により行うことができる。加熱部位を容易に移動でき、かつ供給する電力に応じて加熱量を変化させることが容易である点で、光加熱が好ましく、例えば各種ランプ、レーザーが使用される。
【0022】
本実施形態の場合、
図4に示す装置を用いることができる。本図に示す装置は、少なくとも一つの、ランプ40及び当該ランプ40が出射する光を集光する集光部42を備える。ランプ40としては、赤外線結晶成長装置に一般的に用いられるキセノンランプやハロゲンランプを用いることができる。出力としては1〜30kW程度のものが好ましい。
【0023】
加熱は、第1電極部材32の上側から行う。上側であればよく、第1電極部材32に対して垂直方向上側には限られず、斜め上側からであってもよい。加熱により先ず合金形成金属箔が融解し金属融解物が生成する。次いで、該金属融解物に接している第1電極部材32及び第2電極部材34の接合面38がこの金属融解物に侵され、シリコンを含む融解物が生成される。加熱を止めて温度が低下すると、該融解物が共晶を含む合金相を形成しながら凝固し、接合が完成するものと考えられる。例えば、Al箔を用いた場合、800℃程度までの加熱で十分に第1電極部材32及び第2電極部材34を接合することができる。
【0024】
集光領域は、通常直径10〜30mm程度である。集光領域は、該ランプの発光位置を楕円ミラーの焦点からずらすことにより、30〜100mm程度に広がる。集光領域が広がることにより、加熱範囲をひろげることができる。該集光領域を金属箔及び第1電極部材32及び第2電極部材34の表面全体に亘って走査させて加熱するのが好ましい。
【0025】
次に、シリコンと合金形成金属とを含む融解物を冷却し固化させることにより、共晶合金を含む接合部36を生成する。以上により、第1電極部材32及び第2電極部材34を接合し、電極板14を製造することができる。
【0026】
合金形成金属がAlの場合、約577℃まで冷却すると、Al−シリコン共晶物(12.2原子%Al)を含む接合部36が生成する。冷却速度は、使用する合金形成金属に応じて異なるが、Alを使用する場合には10〜100℃/分となるように制御することが好ましい。冷却速度が前記下限値未満では冷却時間が長くなり、効率が悪い。冷却速度が前記上限値より大きいと接合部36中に歪が残る傾向がある。
【0027】
冷却速度は、合金形成金属箔の融解が完了した後、加熱手段の出力を徐々に低下させて、接合部36の温度が共晶物の融解温度より低くなったと推測されたときに加熱を停止することによって制御することができる。このような加熱温度の制御は、例えば実際に貼り合わせる電極部材と同様な形状の熱電対を電極部材同士の間に設置し、あらかじめ加熱手段のパワーと温度の関係を測定しておき、該測定結果に基づき行うことができる。
【0028】
上記の加熱による融解物の生成、冷却による共晶合金を含む接合部36の生成は、合金形成金属及びシリコンの酸化を防ぐために10〜200torr(約1333〜26664Pa)のアルゴン雰囲気のチャンバー内で行うことが好ましい。アルゴンガスを使用せずに、減圧することによって酸化を防ぐこともできるが、減圧にするとシリコンの蒸発が起き、チャンバー内が汚染される場合があるので好ましくない。また窒素ガスによっても酸化を防ぐことはできるが、1200℃以上でシリコンの窒化が起こるため、好ましくない。
【0029】
貫通穴15と接合面38が交差する箇所は、共晶合金が露出しないように処理するのが好ましい。例えば、合金形成金属箔を各貫通穴15の周囲3mm以内に配置しないことにより、共晶合金が貫通穴15と接合面38が交差する箇所に露出することを防ぐことができる。
【0030】
上記のようにして得られた電極板14は、ドライエッチング装置10の真空チャンバー12内に設置され、エッチング処理に供される。電極板14は、使用頻度に応じ、厚さが減少する。第2電極部材34がウエハに面した状態で電極板14が設置された場合、第2電極部材34の中央から減少し、周縁に向かって湾曲状に減少していく。第2電極部材34の厚さの減少量が所定値を超えた場合、電極板14は交換される。
【0031】
交換された使用済の電極板14における第1電極部材32は、第1電極部材32に対し第2電極部材34を新品に交換することにより、再利用することができる。第1電極部材32に対し第2電極部材34を新品に交換するには、まず電極板14を600℃以上に加熱して接合部36を融解し、第2電極部材34を第1電極部材32から分離する。次いで第1電極部材32表面から研削加工により共晶合金を除去する。その後、上記電極板14を製造する方法と同じ手順で、第1電極部材32に第2電極部材34を接合することにより、新品の電極板14を得ることができる。
【0032】
上記のように電極板14は、接合部36を再加熱して融解することにより、厚さが減少した第2電極部材34を交換することができる。したがって電極板14は、第1電極部材32を再利用することができるので、交換によって生じる部材の無駄を低減することができる。
【0033】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0034】
上記実施形態の場合、第1電極部材32及び第2電極部材34は、厚さ及び直径が同じである場合について説明したが、本発明はこれに限らず、厚さや直径が異なっていてもよい。
【0035】
第2電極部材34は、シリコンで形成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、シリコンよりプラズマ耐性に優れる材料、例えばSiCで形成してもよい。
【0036】
第1電極部材32及び第2電極部材34は、貫通穴15を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、貫通穴15を有していなくてもよい。第1電極部材32及び第2電極部材34を接合後、貫通穴15を形成してもよい。
【0037】
交換された使用済の電極板14における第1電極部材32に対し第2電極部材34を新品に交換する場合、第2電極部材34は貫通穴15を有していなくともよい。第2電極部材34が貫通穴15を有していない場合、第1電極部材32に接合後、第1電極部材32の貫通穴15に合わせて第2電極部材34に貫通穴15を形成する。
【0038】
電極板14は、2個の電極部材(第1電極部材32及び第2電極部材34)を備える場合について説明したが、本発明はこれに限らず、3個以上の電極部材を備えることとしてもよい。
【0039】
電極板14は、面方向に3個以上分割されていてもよい。面方向に3個以上分割されていることにより、より小さいウエハ用シリコン結晶インゴットから切り出した電極部材を用いてより大きい電極板14を得ることができる。
【0040】
上記実施形態の場合、合金形成金属箔を用いて電極部材同士を接合する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。合金形成金属の粉体又は粒子を用いても電極部材同士を接合することは可能であると考えられる。
【0041】
上記実施形態の場合、接合部36は、合金形成金属を含む場合について説明したが、本発明はこれに限らず、酸化ホウ素を含むこととしてもよい。接合部36が酸化ホウ素を含む場合の電極板の製造方法について以下、説明する。
【0042】
まず、上記実施形態と同様に表面処理をした第2電極部材34を第1の温度(180〜280℃)に加熱し、第2電極部材34の接合面38の少なくとも一部に、粒子状のホウ酸(B(OH)
3)からなる出発原料を供給する。第2電極部材34は、一般的な電気抵抗ヒーターを用いた加熱手段により加熱することができる。接合面38の温度が180〜280℃であるので、この接合面38上ではホウ酸の脱水反応が生じる。水は、10〜60秒程度でホウ酸から脱離し、メタホウ酸(HBO
2)を生じる。脱離した水にメタホウ酸が溶解し、流動性に富む液体状物になる。
【0043】
第2電極部材34の温度が低すぎる場合には、ホウ酸から水を脱離させてメタホウ酸を得ることができない。一方、第2電極部材34の温度が高すぎると、ホウ酸から水が急激に脱離する。それによって、第2電極部材34の接合面38に供給されたホウ酸が飛び散ったり、固化したメタホウ酸が直ちに生じてしまう。第1の温度が180〜280℃であれば、より確実にメタホウ酸を得ることができる。第1の温度は、200〜240℃が好ましい。
【0044】
粒子状のホウ酸からなる出発原料としては、直径0.1〜2mmの顆粒状の市販品を、そのまま用いることができる。直径が0.1〜2mmのホウ酸からなる出発原料を、第1の温度に加熱された第2電極部材34の表面に供給することによって、後述するようなメタホウ酸を含む層を形成することができる。ホウ酸は、電極部材の表面の一部に少量ずつ供給することが好ましい。
【0045】
ホウ酸から水が脱離して生じた液体状物をヘラで延ばすことによって、メタホウ酸を含む層が得られる。上述したように第2電極部材34の接合面38に、出発原料としてのホウ酸を少量ずつ供給し、生じた液体状物をその都度延ばすことによって、均一なメタホウ酸を含む層を接合面38に形成することができる。ヘラとしては、ウエハを切断して得られたものを用いることで、メタホウ酸を含む層への不純物の混入は避けられる。
【0046】
メタホウ酸を含む層の厚さは、1mm以下であることが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましい。メタホウ酸を含む層の厚さが薄いほど、後の工程で加熱された際に、脱水反応による泡の発生を抑制することができる。メタホウ酸を含む層の厚さは、供給する出発原料としてのホウ酸の量を制御して、調整することができる。
【0047】
接合面38にメタホウ酸を含む層が形成された第2電極部材34を加熱して、第2の温度(500〜700℃)に昇温する。その結果、メタホウ酸から水がさらに脱離して、酸化ホウ素(B
2O
3)を含む溶融物が得られる。第2の温度が高すぎる場合には、後の工程で冷却した際に、酸化ホウ素とシリコンとの熱膨張係数の違いによって、第1電極部材32及び第2電極部材34に割れが生じるおそれがある。第2の温度が500〜700℃であれば、より確実に酸化ホウ素を含む溶融物を得ることができる。第2の温度は、550〜600℃が好ましい。
【0048】
第2電極部材34の接合領域に生じた酸化ホウ素を含む溶融物の上に、表面処理をした第1電極部材32を圧着する。圧着の際の圧力は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0049】
酸化ホウ素の溶融物を固化させることで、第1電極部材32と第2電極部材34とが酸化ホウ素の層によって接合される。溶融物は、例えば室温で放置することで、固化する。以上のようにして接合部36を生成することにより、電極板14を製造することができる。
【0050】
第1電極部材32に対し第2電極部材34を新品に交換するには、まず電極板14を500℃以上に加熱して接合部36を融解するか、あるいは長時間水中に浸漬させ酸化ホウ素を溶出させることにより、第2電極部材34を第1電極部材32から分離する。次いで第1電極部材32表面から水あるいはエタノールを含んだ布を用いて拭うことにより酸化ホウ素の層を除去する。その後、上記と同じ手順で、第1電極部材32に第2電極部材34を接合することにより、新品の電極板14を得ることができる。
【0051】
メタホウ酸を含む層を、第1電極部材32及び第2電極部材34の接合面38の全域ではなく、接合面38の外縁に沿って枠状に形成してもよい。枠状のメタホウ酸を含む層の幅は、5〜10mmとすることができる。枠状のメタホウ酸を含む層の内側の領域には、合金形成金属箔を配置する。合金形成金属箔を内側の領域に配置する前に、枠状のメタホウ酸を含む層を冷却して、表面を研磨して厚さを低減してもよい。第2電極部材34の接合面38に枠状のメタホウ酸を含む層を形成し、合金形成金属箔を配置した後、第1電極部材32を配置して、共晶温度以上700℃以下に加熱する。加熱によって合金形成金属がシリコンと共晶を形成することで、第1電極部材32及び第2電極部材34を、よりいっそう強固に接合することができる。ここで形成された共晶合金は、枠状の酸化ホウ素の層で囲まれることになるので、金属が拡散して汚染源となるおそれも小さい。この場合も、上記実施形態と同様に、第1電極部材32に対し第2電極部材34を新品に交換することができる。