【実施例】
【0039】
以下実施例及び比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
まず、実施例で用いたゼラチンハイドロゲル粒子の作製方法を説明する。
【0041】
(ゼラチンハイドロゲル粒子(GHM)の作製方法)
ゼラチンハイドロゲル粒子は、Tabata, Y. & Nagano, A.( Biodegradation of hydrogel carrier incorporating fibroblast growth factor. Tissue Eng. 5, 127-138, 1999)に記載の方法に準じ、下記のように油エマルジョン(油乳濁液)内でのゼラチン粒子の脱水加熱架橋により作製した。
10w/w%ゼラチン水溶液(等電点5.0、分子量100000、新田ゼラチン)20mLを40℃とし、200〜400rpmにて10分間撹拌することにより油エマルジョン(油乳濁液)を得た。油エマルジョンの温度を4℃に下げ、ゲル化することにより、非架橋粒子を得た。その非架橋粒子をアセトン(4℃)にて3回遠心洗浄(5000rpm、4℃、5分)し、油分を除去した。20〜32μmの漉し器(飯田製作所)を用いて濾した後、4℃にて空気乾燥した。これにより得られた非架橋乾燥ゼラチン粒子(200mg)を140℃、0.1Torrの真空オーブンにて脱水加熱架橋し、ゼラチンハイドロゲル粒子を得た。
【0042】
(実施例1)
<多層構造ロッドの製造>
生体吸収性高分子として、生体適合性のポリ−L−乳酸(分子量110000)を使用し、温度180〜200℃で溶融紡糸し、延伸倍率5〜6倍に延伸することでモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメント糸の直径は0.125mmであった。
このモノフィラメント糸を芯糸及び被覆糸に使用し、
図2に示す装置で8本角打ちの紐を作成した。この角打ち紐の直径は0.7mm、単位長さ当たりの質量は0.019g/100mmであった。この角打ち紐にゼラチン(10w/w%ゼラチン水溶液を純水で0.1質量%に希釈したもの)を塗布し、室温で5分間放置した。ゼラチン塗布量は乾燥後の質量で、角打ち紐100質量部に対して2質量部であった。ゼラチン塗布後の角打ち紐のたわみ量を上述したとおりに測定したところ、0.65mmであった。
ゼラチン塗布後の角打ち紐を21.4mmの長さにカットし、2本平行状に並べ、補助バーとして直径0.6mm長さ6mmのポリ乳酸の糸を2本使用した。二本の角打ち紐の端部と、補助バーの先端を熱溶融させて、
図3に示すように角打ち紐と補助バーが90度で交わる状態で冷却し、固化させることで接着させて、長方形のフレーム(以下において、「PLLAフレーム」と記す。)を作製した。
【0043】
<ヒトiPS細胞由来積層化心臓組織シートのトレーニング>
(1)ヒトiPS細胞由来心臓組織シートの作製
Masumotoら(SCIENTIFIC REPORTS, 2014, 4:6716)に記載の方法に準じて行った。具体的には、以下のようにヒトiPS細胞由来心臓組織シートを作製した。
(I)iPS細胞(未分化のヒトiPS細胞株201B6、以下において「hiPS」と記す。)を、マトリゲル(成長因子を少なくした製品、1:60希釈、Invitrogen)コートのファルコン培養皿(10cm)にて、マウス胎児性線維芽細胞(MEF細胞)からの培養上清(conditioned medium)(以下、「MEF−CM)」とも記す。)に4ng/mLのヒト繊維芽細胞成長因子(hbFGF、WAKO)を添加した培地10mLを用いて37℃で培養・維持した。培養上清の基礎培地は、ノックアウトDMEM(GIBCO)471mL、ノックアウト血清代替品(GIBCO、以下、「KSR」とも記す。)20mL、非必須アミノ酸(以下、「NEAA」とも記す。)6mL、200mMのL−グルタミン3mL、55mMの2−メルカプトエタノール(2−ME、GIBCO)、及び4ng/mLのhbFGFにて調製した。なお、MEFはマイトマイシンC(以下、「MMC」とも記す、和光)にて2.5時間処理されたのちに使用した。
(II)細胞は4〜6日毎に細胞塊(small clump)の状態にて継代培養した。この際CTK溶液(0.1%IV型コレゲナーゼ、0.25%トリプシン、20%KSR及び1mMCaCl
2がリン酸緩食塩水中に溶解した)にて細胞コロニー周囲を剥離したのち、セルストレーナーで細胞塊の状態にした。
(III)コンフルエントになったhiPS細胞をバーゼン液(Versene、Invitrogen)での37℃、3〜5分間インキュベーションして剥離した。バーゼン液を吸引したのち、MEF−CMにてピペッティングし、単一細胞にて回収し、遠心して細胞数をカウントした。10cm培養皿一枚につき約300万細胞を回収したが、10万細胞/cm
2の目安にて、マトリゲルコート6ウェルプレート(1ウェルあたり約100万細胞)にまき直した。MEF−CMに4ng/mLのhbFGF添加した培地を使用した。培地は、この後、ゼラチン(Sigma−Aldrich)コートした温度感受性培養皿(UpCell)への再播種まで6ウェルプレート1枚に対して5mLを使用した。
(IV)培地交換なしに37℃で2〜3日培養した。コンフルエントになった段階で、マトリゲル(1:60希釈、invitrogen)及び4ng/mLのhbFGFを含んだMEF−CMにて培地交換を行った(マトリゲルサンドイッチ)。
(V)0日目:24時間後にRPMI/B27培地(RPMI1640(GIBCO)、2mMのL−グルタミン、x1B27サプリメント(インスリンなし、GIBCO))に100ng/mLのアクチビンA(ActA;R&D Systems)を添加した培地に交換した。
(VI)1日目:24時間後に、10ng/mLの骨形成タンパク質4(BMP4、R&D)と10ng/mLのhbFGFを含むRPMI/B27培地に交換した、その後4日間培地交換なしに培養を継続した。
(VII)5日目:血管内皮細胞増殖因子(rhVEGF、和光)を50〜100nM含むRPMI/B27培地に交換した。rhVEGF添加量はその時の培養状態・継代数などにより、上記の範囲内で調節した。その後2日置きに同様の培地にて培地を交換した。9〜12日目に拍動が観察された。
(VIII)15日目:細胞は細胞分離/分散溶液(AccuMax、Innovative Cell Technologies)を使用して剥離し、回収した。細胞をカウントし、100万細胞/ウェルになるように、αMEM/FBS/rhVEGF/Y−27632培地(1mlのαMEM/FBS培地(α最少必須培地(αMEM、GIBCO)、10%ウシ胎児血清(FBS)、5.5mMの2−ME)にrhVEGFを50nMとY−27632(ROCK阻害剤、和光)を10μM添加したもの)で、ゼラチン(Sigma−Aldrich)コートした温度感受性培養皿(UpCell、和光)12−マルチウェルプレートに播種し、37℃で培養した。
(IX)17日目(シート2日目):RPMI1640に2mMのL−グルタミン及び10%のFBSを加え、さらにrhVEGFを50nMを加えた培地にて培地交換した。
(X)19日目(シート4日目):温度感受性培養皿を37℃から室温(約20℃)にもどすことにより、心筋細胞、血管内皮細胞及び血管壁細胞を含む未配向細胞シート(心臓組織シート)を回収した。得られた未配向細胞シートは、心筋細胞16.5%及び血管壁細胞72.2%を含んでいた。
【0044】
(2)未配向細胞シートの積層及び多層構造ロッドとの結合
Matsuoら(SCIENTIFIC REPORTS, 2015, 5:16842)に記載の方法に準じて行った。具体的には、下記のように未配向細胞シートの積層及び多層構造ロッドとの結合を行った。
(I)一層目の未配向細胞シートをαMEM/FBS培地とともにマトリゲル(1:60希釈、Invitrogen)コートのファルコン培養皿(6cm)に移し、未配向細胞シートが広がった状態でαMEM/FBS培地を除去した。
(II)上記のように作製したゼラチンハイドロゲル粒子(GHM)2mgをPBS(−)20μLに溶解させ、よく撹拌して、GHM溶液を作製して37℃に保存した。
(III)GHM溶液5μL(500μg相当)を一層目の未配向細胞シートの上に滴下し広げた。
(IV)37℃の保湿下のインキュベータにて30〜45分間静置した。
(V)二層目の未配向細胞シートをαMEM/FBS培地とともに加え、二層目の未配向細胞シートが広がった状態でαMEM/FBS培地を除去し、GHM溶液5μL(500μg相当)を二層目の未配向細胞シートの上に滴下し広げた。
(VI)PLLAフレームをその上におき、
図4Dに示すように、平行状に保持された2本の多層構造ロット(角打ち紐)に一層目と二層目の2枚の細胞シートの端部を巻き付けた後、37℃の保湿下のインキュベータにて30〜45分間静置した。
(VII)三層目の未配向細胞シートをαMEM/FBS培地とともに加え、三層目の未配向細胞シートが広がった状態でαMEM/FBS培地を除去し、GHM溶液5μL(500μg相当)を三層目の未配向細胞シートの上に滴下し広げた。
(VIII)37℃の保湿下のインキュベータにて30〜45分間静置した。
(IX)上記VII及びVIIIの操作を未配向細胞シートが五層になるまで繰り返した。
(X)三層目、四層目及び五層目の3枚の未配向細胞シートの端部を、
図4Fに示すように、平行状に保持された2本の多層構造ロット(角打ち紐)に巻き付けた後、37℃の保湿下のインキュベータにて30〜45分間静置した。
(XI)細胞が多層構造ロット(角打ち紐)によって行き、表面及び内部で増殖することで、未配向細胞シートが多層構造ロット(角打ち紐)に絡まり、未配向細胞シートと多層構造ロット(角打ち紐)が接着することで、PLLA付け積層化細胞シートを得た。PLLA付け積層化細胞シートにおいて、積層化細胞シートの厚みは0.3mmであり、多層構造ロット(角打ち紐)間の細胞シートの長さは4mmであった。
(XII)対照群では、PLLA付け積層化細胞シートを37℃で、7日間aMEM/FBS培地中に保存した(比較例1)。実験群では、PLLA付け積層化細胞シートに伸展刺激を付与した(実施例1)。
【0045】
(3)(伸展刺激によるトレーニング)
細胞培養用伸展装置(ストレックス社製、「CS−1700−15−KI」及び細胞シート伸展フックセット(ストレックス社製、STB−CH−F−15)を用いて、細胞シートに伸展刺激を与えた。具体的には、
図5に示すように、PLLA付積層化細胞シートの多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bをフック15a及び15bにアプライし、アプライの後、PLLAフレームの補助バー13a及び13bをカットし、多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bを平行に保った状態で、細胞培養用伸展装置(図示なし)でフック15a及び15bを矢印17a及び17bに示すように互いに離れる方向に引っ張って、多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bの距離を離すことで、非配向細胞シートを伸展させ、その後、多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bの距離を元に戻すことで、非配向細胞シートをトレーニングした。毎回伸展刺激が終了すると、多層構造ロット(角打ち紐)10a及び10bは最初の位置に戻り、非配向細胞シートは矢印16で示すように往復運動をしていた。トレーニング培養は、37℃、aMEM/FBS培地中で、下記の表1に示す内容で一日あたり24時間伸展刺激を付与しながら7日間行われた。なお、補助バー13a及び13bによって、トレーニング培養中のPLLA付積層化細胞シートの平行方向の脱落を防ぐことができた。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1の細胞シート及び比較例1の細胞シートを、デジタルHDDビデオカメラレコーダー(ソニー社製、型番「HDR−CX520V」)にて観察し、その結果を
図6及び
図7に示した。
図6から分かるように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例1の細胞シートは、多層構造ロット(角
打ち紐)に絡んでいる部分の端部の幅は他の部分の幅よりより大きく、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいない二つの端部の中央部分が凹んでいる湾曲状であった。具体的には、実施例1の細胞シートにおいて、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいる部分の端部の幅(Wt)は7mmであり、中央部の幅(Wc)は2.6mmであった。一方、
図7から分かるように、比較例1の未配向細胞シートは、全体にわたってほぼ同等の幅であった。
【0048】
また、実施例1の細胞シート及び比較例1の細胞シートを、共焦点顕微鏡(株式会社ニコン製、「A1R MP」で観察し、その結果を
図8〜
図11に示した。
図8は、実施例1の細胞シートを共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、
図9は、同トレース図である。
図8は、元々心筋細胞を緑色で可視化し、血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(
図9)を用いた。
図8及び9から明らかなように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例1の細胞シートでは、心筋細胞及び血管壁細胞が細胞シートの伸展方向に沿って配向していた。
図10は、比較例1の細胞シートを共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、
図11は、同トレース図である。
図10は、元々心筋細胞を緑色で可視化し、血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(
図11)を用いた。
図10及び11から分かるように、伸展刺激によるトレーニングを行っていない比較例1の細胞シートは、非配向細胞シートであり、心筋細胞及び血管壁細胞のいずれも配向性を有せず、ランダムに分布していた。
【0049】
実施例1の細胞シート(配向細胞シート)及び比較例1の細胞シート(未配向細胞シート)の可塑性を下記のように破断伸展率を測定することで確認した。
【0050】
(破断伸展率)
細胞培養用伸展装置(ストレックス社製、「CS−1700−15−KI」及び細胞シート伸展フックセット(ストレックス社製、STB−CH−F−15)を用い、細胞シートの多層構造ロット(角打ち紐)を平行状にフックにアプライし、概ね0.1mm/秒の速度で用手的にフックを互いに離れる方向に引っ張ることで次第に過伸展させ、最初に細胞シートに破損が生じた時の多層構造ロット(角打ち紐)間の細胞シートの長さ(L1)を測定し、下記の式で破断伸展率を算出した。下記式において、L0は、フックを引っ張る前の多層構造ロット(角打ち紐)間の細胞シートの長さである。
破断伸展率(%)=(L1−L0)/L1×100
【0051】
比較例1の細胞シート(未配向細胞シート)の破断伸展率は68%であるのに対し、実施例1の細胞シート(配向細胞シート)の破断伸展率は115%であり、可塑性が高かった。実施例1の細胞シートは、可塑性が高いことにより、例えば、生体内に移植した際に、移植先の組織の動きに追従しやすく、移植先の組織に生着しやすい。
【0052】
(多層ロッドに用いる被覆糸の検討)
多層ロッドに用いる被覆糸を検討するため、実施例1と同様の手法で、心筋細胞20%及び血管壁細胞80%を含む未配向細胞シート(心臓組織シート)を得た後、下記表2に示す被覆糸を未配向細胞シート上に置き、5日間培養した。被覆糸の中、PET及びPLLAで構成された被覆糸は、未配向細胞シート上に静置する前に、あらかじめ、ウシ胎児血清に浸して、コーティングした。培養後、共焦点レーザー顕微鏡で被覆糸への細胞被覆率を算出した。得られた観察像より、被覆糸周囲の細胞被覆率を、Image Jより算出した。その結果を下記表2及び
図12に示した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2及び
図12の結果から分かるように、被覆糸がPLLAモノフィラメント(直径90μm)及びPETモノフィラメント(直径92μm)である場合よりも、被覆糸がPETマルチフィラメント(単糸直径9μm)、PETマルチフィラメント(単糸直径24μm)及びSilk(シルク)マルチフィラメント(直径7μm)の場合が、有意に細胞被覆率が高かった。
【0055】
(実施例2)
未配向細胞シート内の細胞の比率を心筋細胞40%、血管内皮細胞2.8%、血管壁細胞9.4%とし、PLLA付積層化細胞シートへの伸縮刺激を、伸展率25%にて3日間行った以外は、実施例1と同様の方法で細胞シートに伸縮刺激を与えた。同細胞比率にて、PLLA付積層化細胞シートに伸縮刺激を与えていない細胞シートを比較例2とした。実施例2及び比較例2の細胞シートに、生細胞が青色に蛍光染色されるHoechst 33342、死細胞が赤色に蛍光染色されるEthidium homodimer 1を標準量添加し、蛍光顕微鏡(キーエンス社製、型番「BZ-9000」)で観察したところ、実施例2及び比較例2のいずれにおいても、死細胞がほとんど見られなかった。伸縮率25%以下では、細胞死を起こしにくく、良好であった。
【0056】
(実施例3)
未配向細胞シート内の細胞の比率を心筋細胞75%、血管壁細胞24.6%とし、PLLA付積層化細胞シートへの伸縮刺激を、伸展率13%にて7日間行った以外は、実施例1と同様の方法で細胞シートに伸縮刺激を与えた。同細胞比率にて、伸縮刺激を与えていないPLLA付積層細胞シートを比較例3、PLLAフレームに搭載していない積層化細胞シートを比較例4とした。
【0057】
(実施例4)
未配向細胞シート内の細胞の比率を心筋細胞27%、血管壁細胞66%とし、細胞シートへの伸縮刺激を、伸展率25%にて7日間行った以外は、実施例1と同様の方法で細胞シートに伸縮刺激を与えた。同細胞比率にて、伸縮刺激を与えていないPLLA付積層細胞シートを比較例5、PLLAフレームに搭載していない積層化細胞シートを比較例6とした。
【0058】
<弾性率の評価>
実施例3〜4、及び比較例3〜6の細胞シートについて、収縮力測定器(Small ointact muscle test system, Aurora Scientific社)を用いて、電圧10V下での組織のヤング率を測定した。本測定器では、心筋組織が追従できる周波数、組織応力、収縮力、ヤング率を測定することが可能である。その結果を表3及び
図13に示した。
【0059】
【表3】
【0060】
表3及び
図13の結果から分かるように、伸展刺激を受けた実施例3の細胞シートは、伸展刺激を受けていない同じ細胞比率の比較例3及び比較例4に比べてヤング率(弾性率)が向上していた。同様に、伸展刺激を受けた実施例4の細胞シートは、伸展刺激を受けていない同じ細胞比率の比較例5及び比較例6に比べてヤング率(弾性率)が向上していた。
【0061】
<配向性の評価>
実施例4及び比較例5の細胞シートを、共焦点顕微鏡(株式会社ニコン製、「A1R MP」で観察し、その結果を
図14〜
図17に示した。
図14は、実施例4の細胞シートを共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、
図15は、同トレース図である。
図14は、元々心筋細胞を緑色で可視化し、血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(
図15)を用いた。
図14及び
図15から明らかなように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例4の細胞シートでは、心筋細胞及び血管壁細胞が細胞シートの伸展方向に沿って配向していた。
図16は、比較例5の細胞シートを共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、
図17は、同トレース図である。
図16は、元々心筋細胞を緑色で可視化し、血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(
図17)を用いた。
図16及び
図17から分かるように、伸展刺激によるトレーニングを行っていない比較例5の細胞シートは、非配向細胞シートであり、心筋細胞及び血管壁細胞のいずれも配向性を有せず、ランダムに分布していた。
【0062】
(実施例5)
非配向細胞シート内の細胞が血管壁細胞のみの非配向細胞シート用いて、細胞シートを1枚のみ作製し、ロール状に丸めて、ゼラチンハイドロゲル微粒子を含めずにPLLAフレームに塔載した以外は、実施例1と同様の方法でロール状の細胞集合体に対して伸展刺激によるトレーニングを行った。
図18は、実施例5のロール状の細胞集合体を光学カメラ(デジタルHDDビデオカメラレコーダー、ソニー社製、型番「HDR−CX520V」)で撮影した写真である。
図18から分かるように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例5のロール状の細胞集合体は、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいる部分の端部の幅は他の部分の幅よりより大きく、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいない二つの端部の中央部分が凹んでいる湾曲状であった。具体的には、実施例1のロール状の細胞集合体において、多層構造ロット(角打ち紐)に絡んでいる部分の端部の幅(Wt)は4.3mmであり、中央部の幅(Wc)は1.61mmであった。
【0063】
実施例5のロール状の細胞集合体を、共焦点顕微鏡(株式会社ニコン製、「A1R MP」で観察し、その結果を
図19及び
図20に示した。
図19は実施例5のロール状の細胞集合体を共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真であり、
図20は同トレース図である。
図19は、元々血管壁細胞を赤色で可視化し、細胞核を青色で可視化して観察したカラー写真であるが、白黒にしたことにより、これらの区分が困難であったため、異なる色が確認できるようにトレース図(
図20)を用いた。
図19及び
図20から明らかなように、伸展刺激によるトレーニングを行った実施例5のロール状の細胞集合体では、血管壁細胞が細胞シートの伸展方向に沿って配向していた。実施例5の結果より、本発明で用いる細胞集合体の形状は、平面のシート状のみに制限されず、ロール状や、フィラメント状の種々3次元形状においても、使用できることが明らかである。