特開2018-24300(P2018-24300A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2018024300-空気入りタイヤ 図000004
  • 特開2018024300-空気入りタイヤ 図000005
  • 特開2018024300-空気入りタイヤ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-24300(P2018-24300A)
(43)【公開日】2018年2月15日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 3/06 20060101AFI20180119BHJP
   B60C 3/04 20060101ALI20180119BHJP
   B60C 9/30 20060101ALI20180119BHJP
【FI】
   B60C3/06
   B60C3/04 B
   B60C9/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-156434(P2016-156434)
(22)【出願日】2016年8月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】小原 将明
(57)【要約】
【課題】トレッド部の構造に変化を加えることなく横力の大きさを調整できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ赤道Eに対して、外形プロファイル形状が左右対称で、外面から内面までの厚みが左右非対称である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ赤道に対して、外形プロファイル形状が左右対称で、外面から内面までの厚みが左右非対称である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ内部構造に起因する横力とトレッド部の意匠に起因する横力とを足した横力の向く方向側において、外面から内面までの厚みが厚く、その反対側において、外面から内面までの厚みが薄い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ幅方向両側の接地端に挟まれた範囲内で、タイヤ赤道側よりも接地端側において左右の厚みの差が大きい、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
タイヤ赤道に対してトレッド部の意匠が左右対称である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
1または2以上のベルトを備え、接地幅の半分以上の幅を覆うベルトのうち最外層に配置されたベルトが、タイヤ赤道に対してオフセットしている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
1または2以上のベルトを備え、接地幅の半分以上の幅を覆うベルトのうち最外層に配置されたベルトが、タイヤ赤道に対してオフセットしている、空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記オフセットの方向が、接地幅の半分以上の幅を覆うベルトのうち最外層に配置されたベルトがオフセットしていないと仮定した場合に横力の向く方向である、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤには内部構造や意匠(トレッドパターン)に起因する横力が発生することが知られている。このような横力が発生すると、空気入りタイヤを装着した車両にハンドル流れが生じる。そこで従来からこの横力を無くす試みがなされている。特許文献1では、トレッド部のリブやブロックに傾斜面を付けることにより上記の横力を打ち消している。また特許文献2では、傾斜方向が異なる横溝をタイヤ周方向に交互に配置することにより、隣接する横溝から生じる横力を打ち消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−193606号公報
【特許文献2】特開平5−178008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載されているようにトレッド部の構造に変化を加えると、横力が打ち消される代わりに、空気入りタイヤに本来求められていた性能が犠牲になってしまう。
【0005】
また、横力を無くすのではなく、一定の大きさの横力をあえて発生させたい場合もある。
【0006】
そこで本発明は、トレッド部の構造に変化を加えることなく横力の大きさを調整できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ赤道に対して、外形プロファイル形状が左右対称で、外面から内面までの厚みが左右非対称であることを特徴とする。また、本実施形態の空気入りタイヤは、1または2以上のベルトを備え、接地幅の半分以上の幅を覆うベルトのうち最外層に配置されたベルトが、タイヤ赤道に対してオフセットしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態の空気入りタイヤでは、外面から内面までの厚みを左右非対称としたり、接地幅の半分以上の幅を覆うベルトのうち最外層に配置されたベルトをタイヤ赤道に対してオフセットさせたりすることにより横力を発生させるため、トレッド部の構造に変化を加えることなく横力の大きさを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の空気入りタイヤ10の幅方向断面図。
図2】実施形態1の空気入りタイヤ10のベルト層をタイヤ径方向外側から見た図。
図3】実施形態2の空気入りタイヤ110の幅方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について図面に基づき説明する。なお以下の実施形態は例示であって、発明の範囲はこれに限定されない。また図面は、説明のために、長さや形状等が誇張されて描かれている場合がある。また以下の説明における左右は図面における左右と一致する。
【0011】
1.実施形態1
(1)空気入りタイヤ10の基本構造
図1に本実施形態の空気入りタイヤ10を示す。本実施形態の空気入りタイヤ10は、束ねられた鋼線にゴムが被覆されたビードコア11を含むビード部を、タイヤ幅方向両側に有する。カーカス13が、タイヤ幅方向両側でビード部を包むと共に、これらのビード部間で空気入りタイヤ10の骨格を形成している。カーカス13は複数のプライコードがゴムで被覆されて形成されたものである。プライコードとしては、ポリエステルやナイロン等でできた有機繊維コードや、スチールコード等が用いられる。
【0012】
カーカス13よりタイヤ径方向外側には複数のベルトが積層されたベルト層が設けられている。ベルトは、スチール製の複数本のコードが、タイヤ周方向に対して傾斜して配置され、ゴムで被覆されたものである。これらのベルトはカーカス13を締め付けてトレッド部32の剛性を高めている。
【0013】
ベルトの数は限定されないが、例えば図1および図2では、タイヤ径方向内側の第1ベルト22とタイヤ径方向外側の第2ベルト24の2枚が積層されている。第1ベルト22および第2ベルト24は、少なくとも接地幅の半分以上の幅を有し、例えば後述する接地幅と同等の幅を有する。第1ベルト22のコード23と第2ベルト24のコード25とは傾斜方向が逆になっている。また、これらのベルトのタイヤ径方向外側に、接地幅の半分以下の幅のベルトが設けられていても良い。
【0014】
複数のベルトよりタイヤ径方向外側にはベルト補強層が設けられていても良い。ベルト補強層は複数のベルト全体をタイヤ径方向外側から覆う。ベルト補強層は、タイヤ周方向に略平行に延びる複数本のコードがゴムで被覆されたものである。ベルト補強層のコードはナイロンやポリエステル等の有機繊維で出来ている。このベルト補強層は車両走行中の遠心力による空気入りタイヤの変形を抑える。
【0015】
ベルト層およびベルト補強層よりタイヤ径方向外側にはトレッドゴム30が設けられている。トレッドゴム30には、タイヤ周方向に延びる主溝31や、タイヤ幅方向またはタイヤ幅方向に対して傾斜する方向に延びる横溝等からなる意匠(トレッドパターン)が形成されている。トレッドゴム30におけるこのような意匠が形成されている部分をトレッド部32とする。トレッド部32は接地面34を有する。接地面34とは、空気入りタイヤ10が正規リムにリム組みされ正規内圧にされ正規荷重が負荷された状態での接地面のことである。ここで正規リムとはJATMA、TRA、ETRTO等の規格に定められている標準リムのことである。また正規荷重とは前記規格に定められている最大荷重のことである。また正規内圧とは前記最大荷重に対応した内圧のことである。接地面34の幅が接地幅である。接地面34の幅方向両端が接地端35である。なお図1では接地端35が角部33となっているが、図3のように、接地端35近傍に角部が無く、曲率半径を有する曲面上に接地端35があっても良い。
【0016】
また、カーカス13のタイヤ幅方向両側にはサイドウォールゴム17が設けられている。以上の部材の他にも空気入りタイヤ10の機能上の必要性に応じて複数の部材が設けられている。
【0017】
空気入りタイヤ10には、プライステアと呼ばれる内部構造に起因する横力およびパターンステアと呼ばれるトレッド部32の意匠に起因する横力が発生する。プライステアには、例えば、接地幅の半分以上の幅を覆うベルトのうち最外層に配置されたベルト、つまり本実施形態における第2ベルト24のコード25の傾斜方向が影響する。パターンステアには、例えば、横溝の傾斜方向が影響する。空気入りタイヤ10にはプライステアとパターンステアが足し合わされた横力が発生する。
【0018】
(2)外形プロファイル形状および空気入りタイヤ10の厚み
本実施形態では空気入りタイヤ10の外形プロファイル形状がタイヤ赤道Eを中心にして左右対称である。外形プロファイル形状とは、空気入りタイヤ10を正規リムにリム組みし、正規内圧とした後に抜圧して内圧30kPaとした状態での、トレッド部32の表面形状のことである。
【0019】
一方、空気入りタイヤ10の厚みは、少なくともトレッド部32を有する範囲内において、タイヤ赤道Eを中心にして左右非対称である。例えば図1では、カーカス13よりタイヤ内径側において、タイヤ赤道Eに対して左側のゴム部分40が右側のゴム部分41よりも厚くなっており、そのことにより空気入りタイヤ10の厚みが左右非対称となっている。
【0020】
ここで、空気入りタイヤ10の厚みとは、タイヤ外面42に対する法線方向の、タイヤ外面42からタイヤ内面43までの長さのことである。ただし、図1のように接地端35またはその近傍でトレッド部32が角部33を有する場合は、その角部33からタイヤ内面43までの最短の長さが、その角部33における空気入りタイヤ10の厚みである。以下では空気入りタイヤ10の厚みのことを「タイヤ厚み」と言う。
【0021】
タイヤ厚みをどの程度左右非対称とするかは、空気入りタイヤ10に横力を発生させるか否かや、どの程度の大きさの横力を発生させるか等により、タイヤ毎に異なる。
【0022】
ところで、タイヤ赤道Eから左右に等距離だけ離れた2つの位置のタイヤ厚みの差を「左右のタイヤ厚みの差」とすると、左右のタイヤ厚みの差は、次の第1の厚みの構成および第2の厚みの構成のうち、少なくともいずれか一方の構成となっていても良い。
【0023】
第1の厚みの構成は、タイヤ幅方向両側の接地端35に挟まれた範囲内すなわち接地面34を有する範囲内で、タイヤ赤道E側よりも接地端35側において、左右のタイヤ厚みの差が大きい、という構成である。言い換えれば、タイヤ幅方向両側の接地端35に挟まれた範囲内では、左右のタイヤ厚みの差は、タイヤ赤道Eから左右に遠く離れた位置におけるほど大きい。
【0024】
第2の厚みの構成の説明の前に、まず、タイヤ最大幅を取る左右の2点A、Aよりもタイヤ径方向外側の部分を「タイヤ外径側部分50」とする。また、タイヤ外径側部分50において、タイヤ赤道Eより右側におけるタイヤ厚みが最大となる位置を、右側の「最大厚み位置」とし、タイヤ赤道Eより左側におけるタイヤ厚みが最大となる位置を、左側の「最大厚み位置」とする。さらに、第2の厚みの構成では、タイヤ外径側部分50において、右側の最大厚み位置と左側の最大厚み位置とがタイヤ赤道Eから等距離だけ離れていることを前提としている。第2の厚みの構成とは、この前提のもとで、タイヤ外径側部分50において、右側の最大厚み位置と左側の最大厚み位置とにおいて、左右のタイヤ厚みの差が最大となる構成である。
【0025】
例えば、図1では、タイヤ厚みが、タイヤ赤道Eより右側では接地端35の位置において最大であり、タイヤ赤道Eより左側でも接地端35の位置において最大であり、左右の接地端35がタイヤ赤道Eから等距離である。この場合において、左右両側の接地端35におけるタイヤ厚みの差が、他の位置(例えば図1に示す位置Pや位置Q)での左右のタイヤ厚みの差よりも大きい。
【0026】
第1の厚みの構成または第2の厚みの構成において、左右のタイヤ厚みの差の最大値が、タイヤ外径側部分50の最大厚みの2%以上7%以下であることが望ましい。ここで、「最大厚み」とは、右側の最大厚み位置でのタイヤ厚みと、左側の最大厚み位置でのタイヤ厚みとのうち、厚い方のタイヤ厚みのことである。
【0027】
(3)空気入りタイヤ10の製造方法
タイヤ赤道Eを中心にして、外形プロファイル形状が対称で、タイヤ厚みが非対称である、という空気入りタイヤ10の形状は、例えば、加硫成型時に形成することができる。
【0028】
加硫成型装置は、セクター、サイドプレート、ビードリングを有し未加硫タイヤを横倒しで挿入できる金型と、挿入された未加硫タイヤの内面側で膨張するブラダーとを備えている。加硫成型後の空気入りタイヤの外形プロファイル形状がタイヤ赤道Eを中心にして対称になるように、金型のタイヤ成型面の形状が金型中心面(上下のサイドプレートの中間位置を水平に通る面)に対して対称になっている。
【0029】
このような加硫成型装置において、例えば、ブラダーを上下非対称に膨張するものとする。この加硫成型装置で未加硫タイヤを加硫成型すると、加硫成型後の空気入りタイヤ10の外形プロファイル形状がタイヤ赤道Eを中心にして対称になる。一方、ブラダーが上下非対称に膨張するため、加硫成型後の空気入りタイヤ10の内面43の形状がタイヤ赤道Eを中心にして非対称となり、その結果、加硫成型後の空気入りタイヤ10のタイヤ厚みがタイヤ赤道Eを中心にして非対称となる。
【0030】
また、例えば、上記の加硫成型装置において、ブラダーを上下対称に膨張するものとして、ブラダー中心面(膨張したブラダーの上端部と下端部との中間位置を水平に通る面)が金型中心面に対して上下のいずれか一方にずれているものとする。この加硫成型装置で未加硫タイヤを加硫成型すると、加硫成型後の空気入りタイヤ10の外形プロファイル形状がタイヤ赤道Eを中心にして対称になる。一方、ブラダー中心面が金型中心面に対してずれているため、加硫成型後の空気入りタイヤ10のタイヤ厚みは、そのずれている方向の部分で薄く、その反対方向の部分で厚くなり、タイヤ赤道Eを中心にして非対称となる。
【0031】
(4)実施形態1の作用効果
実施形態1の空気入りタイヤ10では、タイヤ厚みが左右非対称であることによる横力が発生するため、元々左右対称である外形プロファイル形状に変化を加えなくても、横力の大きさを調整できる。また、外形プロファイル形状が左右対称なだけでなくトレッド部の意匠も左右対称である場合は、左右対称であるという意匠の特徴を壊すことなく、横力の大きさを調整できる。
【0032】
タイヤ厚みが左右非対称である空気入りタイヤ10では、左右のうちタイヤ厚みが厚い方が重くまた接地時に潰れにくいことから、タイヤ厚みが厚い方から薄い方へ向かって、タイヤ厚みが左右非対称であることに起因する横力が発生する。
【0033】
そこで、例えば、空気入りタイヤ10にプライステアとパターンステアとを足した横力が発生する場合に、その横力の向く方向側において、タイヤ厚みを厚くし、その反対側において、タイヤ厚みを薄くする。そうすることにより、プライステアとパターンステアとを足した横力を、タイヤ厚みを左右非対称としたことによって発生する横力で打ち消すことができ、空気入りタイヤ10の横力を無くしたり小さくしたりすることができる。
【0034】
また、例えば、空気入りタイヤ10にプライステアとパターンステアとを足した横力がほとんど発生しない場合に、左右いずれか一方側において、タイヤ厚みを厚くし、その反対側において、タイヤ厚みを薄くする。そうすることにより、空気入りタイヤ10に横力を発生させることができる。
【0035】
ここで、タイヤ幅方向両側の接地端35に挟まれた範囲内で、タイヤ赤道E側よりも接地端35側において空気入りタイヤ10の左右のタイヤ厚みの差が大きければ、タイヤ厚みを左右非対称としたことによって発生する横力を大きくすることができる。
【0036】
また、上記の第1の厚みの構成または第2の厚みの構成において、最大となる左右のタイヤ厚みの差がタイヤ外径側部分50の最大厚みの2%以上であれば、タイヤ厚みが左右非対称であることに起因する十分な大きさの横力が発生する。また、最大となる左右のタイヤ厚みの差が最大厚みの7%以下であれば、左右のタイヤ厚みの差が大き過ぎて空気入りタイヤの耐久性が低下するおそれがない。
【0037】
(5)実施形態1の変更例
実施形態1に対し発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更を加えることができる。例えば、実施形態1の空気入りタイヤ10の特徴と、次に述べる実施形態2の空気入りタイヤ110の特徴とを組み合わせ、外形プロファイル形状が左右対称で、タイヤ厚みが左右非対称であり、かつ、接地幅の半分以上の幅を覆うベルトのうち最外層に配置されたベルトが、タイヤ赤道Eに対してオフセットしている空気入りタイヤとしても良い。
【0038】
2.実施形態2
(1)空気入りタイヤ110の基本構造
実施形態2の空気入りタイヤ110の基本構造は、実施形態1の空気入りタイヤ10の基本構造と同じである。実施形態2の空気入りタイヤ110を示す図3において、実施形態1の空気入りタイヤ10と共通する部分には、図1と同じ符号が付されている。
【0039】
(2)ベルトの配置
図3に示すように、実施形態2では、接地幅の半分以上の幅を覆うベルトのうち最外層に配置されたベルト(「最外ベルト」とする)である第2ベルト24が、タイヤ赤道Eに対してオフセットしている。ベルトがタイヤ赤道Eに対してオフセットしているとは、ベルトの幅方向の中心位置Cが、タイヤ赤道Eに対して左右のいずれか一方にずれている、ということである。
【0040】
最外ベルトである第2ベルト24のオフセット量Lすなわちタイヤ赤道Eから第2ベルト24の幅方向の中心位置Cまでの長さは、空気入りタイヤ110に横力を発生させるか否かや、どの程度の大きさの横力を発生させるか等により、タイヤ毎に異なる。ただし、オフセット量Lの好ましい範囲は、第2ベルト24のベルト幅Mの2%以上7%以下である。
【0041】
(3)空気入りタイヤ110の製造方法
上記の構造の空気入りタイヤ110は、例えば、未加硫タイヤの製造途中でカーカス13等の上にベルトを貼付ける際に、最外ベルトである第2ベルト24をタイヤ赤道Eに対してオフセットさせて貼り付けることにより製造できる。
【0042】
(4)実施形態2の作用効果
実施形態2の空気入りタイヤ110では、最外ベルトである第2ベルト24がタイヤ赤道Eに対してオフセットしていることによる横力が発生するため、トレッド部の構造に変化を加えなくても、横力の大きさを調整できる。
【0043】
最外ベルトである第2ベルト24がオフセットしている空気入りタイヤ110では、左右のうちオフセットの方向側が重くまた接地時に潰れにくいことから、オフセットの方向と反対の方向へ向かって、オフセットしていることに起因する横力が発生する。
【0044】
そこで、例えば、第2ベルト24がオフセットしていないと仮定した場合に横力の向く方向に、第2ベルト24をオフセットさせる。そうすることにより、第2ベルト24がオフセットしていない場合に発生する横力を、第2ベルト24がオフセットしたことに起因する横力で打ち消すことができ、空気入りタイヤの横力を無くしたり小さくしたりすることができる。
【0045】
より具体的な例を挙げると、タイヤ進行方向を上と定義して、最外ベルトである第2ベルト24のコード25の傾斜方向が、接地面側において右下がりであり、それと対向する非接地面側において右上がりであるとする。その場合、第2ベルト24のコード25の傾斜方向に起因して右方向への横力が発生する。そこで、第2ベルト24を右方向へオフセットさせる。そうすることにより、第2ベルト24のコード25の傾斜方向に起因する横力を、第2ベルト24がオフセットしたことに起因する横力で打ち消すことができる。
【0046】
また、例えば、第2ベルト24がオフセットしていないと仮定した場合に空気入りタイヤ110に横力がほとんど発生しない場合において、第2ベルト24をオフセットさせる。そうすることにより、空気入りタイヤ110に横力を発生させることができる。
【0047】
ここで、オフセット量Lが第2ベルト24のベルト幅Mの2%以上であれば、第2ベルト24がオフセットしていることに起因する十分な大きさの横力が発生する。また、オフセット量Lが第2ベルト24のベルト幅Mの7%以下であれば、オフセット量Lが大き過ぎて空気入りタイヤの耐久性が低下するおそれがない。
【0048】
(5)実施形態2の変更例
実施形態2に対し発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更を加えることができる。
【0049】
まず、上記実施形態2では最外ベルトである第2ベルト24のみがタイヤ赤道Eに対してオフセットしていたが、その他のベルトも同様にオフセットしていても良い。例えば図3のように第1ベルト22と第2ベルト24の2枚のベルトが積層されている場合は、第2ベルト24だけでなく第1ベルト22もオフセットしていても良い。
【0050】
また、実施形態1の変更例としても説明したように、実施形態1の空気入りタイヤ10の特徴と実施形態2の空気入りタイヤ110の特徴とが組み合わされ、外形プロファイル形状が左右対称で、タイヤ厚みが左右非対称であり、かつ、接地幅の半分以上の幅を覆うベルトのうち最外層に配置されたベルトが、タイヤ赤道Eに対してオフセットしていても良い。
【0051】
この場合、空気入りタイヤの左右のタイヤ厚み差等とベルトのオフセット量等とを調整することにより、空気入りタイヤに発生する横力の大きさを調整することができる。例えば、プライステアとパターンステアとを足した横力が非常に大きい場合であって、空気入りタイヤに左右のタイヤ厚み差を付けるだけでは前記横力を相殺できない場合は、さらにベルトをオフセットさせることにより、前記横力を相殺できる。
【0052】
3.比較例および実施例
表1に示す比較例および実施例の空気入りタイヤの横力の大きさを評価した。比較例1の空気入りタイヤは、タイヤ厚みが左右対称であり、タイヤ赤道とベルトの幅方向中心位置とが一致しているタイヤである。比較例1の空気入りタイヤでは、プライステアとパターンステアとを足した横力が発生する。実施例1〜4の空気入りタイヤは、比較例1の空気入りタイヤの構造を基本とし、これに変更を加えたものである。実施例1、4の空気入りタイヤは、比較例1の空気入りタイヤの横力を打ち消す方向に横力が発生するように、タイヤ厚みを左右非対称とした空気入りタイヤである。実施例1、4の空気入りタイヤは、実施形態1の第1の厚みの構成および第2の厚みの構成を備えている。実施例2〜4の空気入りタイヤは、比較例1の空気入りタイヤの横力を打ち消す方向に横力が発生するように、最外ベルトをオフセットさせた空気入りタイヤである。
【0053】
なお、表1における「左右のタイヤ厚みの差」および「最大厚み」の定義は実施形態1に記載の通りであり、「ベルトのオフセット量」の定義は実施形態2に記載の通りである。
【0054】
評価にあたり、タイヤサイズを155/65R14、リムホイールサイズを14×4.5JJ、内圧を230kPa、荷重を2.66kNとした。上記サイズの空気入りタイヤをフラットベルト試験機のベルト上に配置し、内圧および荷重を上記の通り設定し、ベルトを時速30kmで回転させ、セルフアライニングトルクが0N・mのときの回転軸に作用するタイヤ進行方向に対する横方向荷重を算出した。
【0055】
結果は表1の通りで、実施例1〜4の空気入りタイヤの横力は、比較例1の空気入りタイヤの横力よりも小さいことが分かった。このことから、タイヤ厚みを左右非対称にしたり、ベルトをタイヤ赤道に対してオフセットさせたりすることにより、そのようにしない場合に発生する横力を打ち消すことができることが確認できた。
【0056】
【表1】
【符号の説明】
【0057】
10…空気入りタイヤ、11…ビードコア、13…カーカス、17…サイドウォールゴム、22…第1ベルト、23…コード、24…第2ベルト、25…コード、27…コード、30…トレッドゴム、31…主溝、32…トレッド部、33…角部、34…接地面、35…接地端、40…左側のゴム部分、41…右側のゴム部分、42…タイヤ外面、43…タイヤ内面、50…タイヤ外径側部分、110…空気入りタイヤ
図1
図2
図3