(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-24557(P2018-24557A)
(43)【公開日】2018年2月15日
(54)【発明の名称】合わせガラス用成形袋
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20180119BHJP
【FI】
C03C27/12 H
C03C27/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-157903(P2016-157903)
(22)【出願日】2016年8月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】藍原 寿明
(72)【発明者】
【氏名】松野 利幸
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA04
4G061AA11
4G061BA02
4G061CA02
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD18
4G061DA38
4G061DA62
4G061DA63
4G061DA67
4G061DA68
(57)【要約】
【課題】さらなる鋭意研究により、開口部の開閉作業、特に閉じ作業を、閉じたときの良好な気密性を損なうことなく、従来よりも素早く行えるように改善された合わせガラス用成形袋を提供する。
【解決手段】三方が開口可能な開口部Kを有し、各開口部Kが開き状態と閉じ状態とに切換え可能に構成されている合わせガラス用成形袋において、開口部Kは、一方の袋本体2の第1開口縁10と、他方の袋本体3の第2開口縁11とを有し、第1,第2開口縁10,11にはゴム製の第1,第2合わせ部10A,11Aがそれぞれ設けられ、開き状態は、第1合わせ部10Aと第2合わせ部11Aとが互いに離間した状態によりなり、閉じ状態は、第1合わせ部10Aの合わせ面10aと第2合わせ部11Aの合わせ面11aとが重ね合わされた状態によりなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四方のうち一方以上が開口可能な開口部を有し、前記開口部は、これを開口した開き状態と密閉された閉じ状態とに切換え可能に構成されている合わせガラス用成形袋であって、
前記開口部は、第1開口縁を備える一方の袋本体の前記第1開口縁と、第2開口縁を備える他方の袋本体の前記第2開口縁とを有してなり、前記第1開口縁にはゴム製の第1合わせ部が、かつ、前記第2開口縁にはゴム製の第2合わせ部がそれぞれ設けられており、
前記開き状態は、前記第1合わせ部と前記第2合わせ部とが互いに離間した状態によりなるとともに、前記閉じ状態は、前記第1合わせ部の合わせ面と前記第2合わせ部の合わせ面とが重ね合わされた状態によりなる合わせガラス用成形袋。
【請求項2】
前記第1及び第2合わせ部を構成するゴムの材質がEPDMで、硬度が40〜70にそれぞれ設定されている請求項1に記載の合わせガラス用成形袋。
【請求項3】
前記第1開口縁と前記第2開口縁とのいずれか一方に、前記閉じ状態の前記開口部を巻いて覆うことが可能な巻き付け片を備え、かつ、前記巻き付け片の先端部には、面ファスナを形成する一対のファスナ部材のうちの一方のファスナ部材が装備されるとともに、
前記第1開口縁と前記第2開口縁とのいずれか他方に、前記閉じ状態の前記開口部を覆う状態の前記巻き付け片の前記一方のファスナ部材と重ね合わせ可能な他方のファスナ部材が装備されている請求項1又は2に記載の合わせガラス用成形袋。
【請求項4】
前記第1合わせ部と前記第2合わせ部との何れか一方に、前記合わせ面の長手方向に沿って凸設又は凹設される段差が形成されているとともに、前記第1合わせ部と前記第2合わせ部との何れか他方に、前記合わせ面どうしが重ね合わされている閉じ状態において前記合わせ面に形成されている前記段差と凹凸嵌合する段差が前記合わせ面に沿って形成されている請求項1〜3の何れか一項に記載の合わせガラス用成形袋。
【請求項5】
前記第1合わせ部と前記第2合わせ部との何れか一方に、前記閉じ状態において前記第1合わせ部と前記第2合わせ部との何れか他方の先端部に嵌合する嵌め入れ部が設けられている請求項1〜3の何れか一項に記載の合わせガラス用成形袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントガラスなどを製造するのに用いられる合わせガラス用成形袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスや高層ビルの窓ガラスなどにおいては、破損しても破片が飛び散らないようにするために、ガラス板とガラス板との間にポリビニルブチラールのような熱溶融性の高分子フィルムを設け、その高分子フィルムを加熱溶融させてガラス板どうしを密着させた構造のガラス、いわゆる合わせガラスが用いられている。
【0003】
合わせガラスは次のとおりの工程により作製される。即ち、2枚のガラス板の間に、ガラス板どうしを結合させる高分子フィルムを設けて介在させた後、内圧を真空近くにまで大きく減圧させることが可能な可撓性のある袋、即ち成形用袋に入れる。次に、成形用袋を、一般には100〜130℃の熱雰囲気中で10〜15分間、加熱処理するとともに、この間中、成形用袋内の空気を連続して吸引し続け、2枚のガラス板の間に含まれている微量の空気を除去する。このようにして、成形用袋の内と外とに生じた圧力差及び熱により、2枚のガラス板を袋壁で挟持して加圧加熱することにより製作される。
【0004】
合わせガラスの製作工程は、走行するラインで連続して行われる。つまり、成形用袋は、成形用袋の中に入れた未接着のガラス板の加熱、吸引、加圧工程を終えて合わせガラスを取り出した後には、直ちに他の未接着のガラス板を入れて前記と同じ工程で反復して用いられる。従って、吸引による減圧を円滑、迅速に行うためには、開口部を素早く閉じ操作でき、かつ、閉じた状態での確実な密着性(気密性)も求められる。
【0005】
従来における成形用袋の開口を閉じる手段としては、特許文献1において開示されたように、袋の各開口縁に一続きの気密ファスナを設ける手段が挙げられる。しかしながら、この気密ファスナは、気密性を持たせる構造上、その開け閉めにはかなりの力を要するため、成形用袋の開閉作業に時間及び労力が掛かるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2において開示されるように、開口に沿って延びる凸条と、この凸条に係合可能な凹条とを一対の袋本体部に振り分けて配置してなるシール部材を用いる手段もある。
しかしながら、このシール部材では、一続きの凸条と凹条とを端から順次押し込んで係合させてゆく作業になるため、やはり作業には時間が掛かるものであった。加えて、強く扱きながらの係合作業に伴って凸条と凹条とが微妙に長さ変形してうまく合致しないとか、途中で係合が外れるなど、やり直しを余儀なくされることもしばしばあり、簡単な作業でもなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−321257号公報
【特許文献2】特開2006−182581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、さらなる鋭意研究により、開口部の開閉作業、特に閉じ作業を、閉じたときの良好な気密性を損なうことなく、従来よりも素早く行えるように改善された合わせガラス用成形袋を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、四方のうち一方以上が開口可能な開口部Kを有し、前記開口部Kは、これが開口された開き状態と密閉された閉じ状態とに切換え可能に構成されている合わせガラス用成形袋において、
前記開口部Kは、第1開口縁10を備える一方の袋本体2の前記第1開口縁10と、第2開口縁11を備える他方の袋本体3の前記第2開口縁11とを有してなり、前記第1開口縁10にはゴム製の第1合わせ部10Aが、かつ、前記第2開口縁11にはゴム製の第2合わせ部11Aがそれぞれ設けられており、
前記開き状態は、前記第1合わせ部10Aと前記第2合わせ部11Aとが互いに離間した状態によりなるとともに、前記閉じ状態は、前記第1合わせ部10Aの合わせ面10aと前記第2合わせ部11Aの合わせ面11aとが重ね合わされた状態によりなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の合わせガラス用成形袋において、
前記第1及び第2合わせ部10A,11Aを構成するゴムの材質がEPDMで、硬度が40〜70にそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の合わせガラス用成形袋において、
前記第1開口縁10と前記第2開口縁11とのいずれか一方に、前記閉じ状態の前記開口部Kを巻いて覆うことが可能な巻き付け片12を備え、かつ、前記巻き付け片12の先端部には、面ファスナ13を形成する一対のファスナ部材13A,13Bのうちの一方のファスナ部材13Aが装備されるとともに、
前記第1開口縁10と前記第2開口縁11とのいずれか他方に、前記閉じ状態の前記開口部Kを覆う状態の前記巻き付け片12の前記一方のファスナ部材13Aと重ね合わせ可能な他方のファスナ部材13Bが装備されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の合わせガラス用成形袋において、
前記第1合わせ部10Aと前記第2合わせ部11Aとの何れか一方に、前記合わせ面10aの長手方向に沿って凸設又は凹設される段差10Cが形成されているとともに、前記第1合わせ部10Aと前記第2合わせ部11Aとの何れか他方に、前記合わせ面10a,11aどうしが重ね合わされている閉じ状態において前記段差10Cと凹凸嵌合する段差11Cが前記合わせ面11aに沿って形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の合わせガラス用成形袋において、
前記第1合わせ部10Aと前記第2合わせ部11Aとの何れか一方10Aに、前記閉じ状態において前記第1合わせ部10Aと前記第2合わせ部11Aとの何れか他方11Aの先端部18に嵌合する嵌め入れ部14が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、第1合わせ部10Aの合わせ面10aと第2合わせ部11Aの合わせ面11aとを重ね合わせるだけの簡単で楽な操作により、開口部Kを閉じ状態にすることができる。そして、閉じ状態においては、第1合わせ面10aと第2合わせ面11aとが良好な面接触状態となり、成形用袋1の減圧による負圧に耐える優れたシール作用、即ち優れた気密性が発揮できるようになる。
その結果、さらなる鋭意研究により、開口部の開閉作業、特に閉じ作業を、閉じたときの良好な気密性を損なうことなく、従来よりも素早く行えるように改善された合わせガラス用成形袋を提供することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、ゴムを、その材質がEPDMで硬度が40〜70のものに設定する工夫により、第1合わせ面10aと第2合わせ面11aとを重ねるだけで極めて広い面で密着した面接触状態が得られ、前述した優れた気密性をより一層発揮させることができる。また、成形用袋1を繰返し使用しても第1及び第2開口縁10,11が変形したり型崩れしたりすることが生じ難いので、長期に亘って使用できるという優れた耐久性も得ることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、次のような作用効果を発揮させることが可能になる。即ち、成形用袋1に内装されている合わせガラスを加熱・加圧処理すべく、成形用袋1の減圧を行うと、袋本体2,3に負圧による引っ張り力が作用し、第1及び第2合わせ部10A,11Aが各先端側から互いに引き剥がされるように反り上がり変形することがあり、それによって開口部Kの気密性が損なわれるおそれがある。
【0017】
しかしながら、閉じ状態とされている第1及び第2開口縁10,11を巻き付け片12で巻き付けて装着でき、第1及び第2開口縁10,11を互いに離れないように押え付けることができるので、前述の反り上がり変形が防止又は規制され、安定した気密性を保つことができるようになる。
しかも、面ファスナによる簡単で楽な操作により、巻き付け片12を巻き付け状態に維持させることができる利点もある。
【0018】
請求項4の発明によれば、互いに凹凸嵌合する段差を第1及び第2開口縁10,11に振り分け配置してあるから、開口部Kを閉じ操作する際には、それら段差10C,11Cどうしを当て付けるようにして第1及び第2開口縁10,11を重ね合わせればよい。つまり、このような簡単な操作により、第1合わせ面10aと第2合わせ面11aとが位置ずれすることない良好な面接触状態を、素早く、しかも労力少なく得ることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、第1合わせ部10Aと第2合わせ部11Aとが嵌合によって係止されるので、前述した減圧時の第1及び第2開口縁10,11の反り上がり変形をより強固に防止又は規制できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】(a)は開口部の閉じ操作を示す作用図、(b)は
図1のA−A線断面図
【
図4】別構造の合わせ部を持つ開口部を示し、(a)は閉じ操作を示す作用図、(b)は
図1のA−A線に相当する部分の断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明による合わせガラス用成形袋の実施の形態を、自動車のフロントガラスなどの製造に用いられるものとして、図面を参照しながら説明する。
【0022】
〔実施例1〕
合わせガラス成形用袋(以下「成形用袋」と略称する)1は、
図1,
図2に示されるように、互いの根元側長辺部である底部のみが一体化された一対の袋本体2,3により構成されており、各袋本体2,3それぞれの先端側長辺部と両短辺部のほぼ全域が、即ち、三方が開閉可能に開口されている。
成形用袋1は、先端側長辺部となる先端開口部Ks、根元側の端部以外が開口されていて両短辺部となる一側及び他側開口部Ki,Ktを有している。つまり、成形用袋1は、四方のうち一方以上が開口された開口部K(Ki,Ks,Kt)を有し、開口部Kを開口した開き状態と密閉された閉じ状態とに切換え可能に構成されている。
【0023】
袋本体2,3は、ポリエステル繊維布の表裏両面にエチレンプロピレンゴムを積層して、表面ゴム層と裏面ゴム層を有するEPDM積層布(エチレンプロピレンゴム積層布)4からなり、内面側にはふっ素樹脂製のフィルムシート5が圧着されている。また、各袋本体2,3の底部の外面は、折り返し形状の補強ゴム帯6で覆われている。
成形用袋1の内部には、成形用袋1としての使用時には下側となる一方の袋本体2の内面側に複数のループ状布8により、前後左右に位置決めされた捻りロープ7が配備されている。この捻りロープ7及びそれによる隙間が空気の通り道となり、吸引ノズル9を用いての成形用袋1内の減圧が円滑に行われる。
【0024】
各開口部Ki,Ks,Ktのそれぞれは、これら開口部Ki,Ks,Ktの閉じ状態における袋内の前記減圧を可能とするための気密構造が採られている。即ち、
図2,
図3に示されるように、開口部Kは、ゴム製の第1開口縁10を備える一方の袋本体2の第1開口縁10と、ゴム製の第2開口縁11を備える他方の袋本体3の第2開口縁11とを有してなる。
図1において、19はループ状に張り出た布製の取っ手であり、20は各袋本体2,3の外面補強帯である。なお、捻りロープ7は、底部に配置される一直線状の底ロープ7Aと、各開口部Ki,Ks,Ktのそれぞれに沿って「コ」字形状に配置される三方ロープ7Bとを有して構成されている。
【0025】
第1開口縁10は、外側となる第1合わせ部10A、第1合わせ部10Aより高さが低くて内側となる第1重ね部10B、及び第1合わせ部10Aの内端と第1重ね部10Bの外端とを繋ぐ垂直壁でなる凸段差10Cを有して構成されている。
第2開口縁11は、外側となる第2合わせ部11A、第2合わせ部11Aより高さが高くて内側となる第2重ね部11B、及び第2合わせ部11Aの内端と第2重ね部11Bの外端とを繋ぐ垂直壁でなる凹段差11Cを有して構成されている。
【0026】
成形用袋1の開き状態(
図2を参照)は、第1合わせ部10Aと第2合わせ部11Aとが互いに離間した状態によりなる。このとき、第1重ね部10Bと第2重ね部11B、及び凸段差10Cと凹段差11Cとの双方も離間している。
成形用袋1の閉じ状態(
図1を参照)は、第1合わせ部10Aの上面である第1合わせ面10aと、第2合わせ部11Aの下面である第2合わせ面11aとが重ね合わされた状態によりなる。このとき、第1重ね部10Bと第2重ね部11B、及び凸段差10Cと凹段差11Cとの双方が重ね合わせられておれば好都合である。
【0027】
第1合わせ面10a及び第2合わせ面11aはシール面であって、重ね合わせるだけで優れた気密性が得られるべく、第1及び第2合わせ部10A,11A、即ち第1及び第2開口縁10,11を構成するゴムの材質は、EPDMが好ましいが、その他の材質(NBR、H−NBR、CR)でも良い。また、ゴム硬度は40〜70に設定されている。
【0028】
このようなゴムの材質設定工夫により、第1合わせ面10aと第2合わせ面11aとを重ねるだけで広い面で密着した面接触状態が得られ、成形用袋1の減圧による負圧に耐える優れたシール作用、即ち優れた気密性が発揮できるようになっている。また、成形用袋1を繰返し使用しても第1及び第2開口縁10,11が変形したり型崩れしたりすることがなく、優れた耐久性も兼ね備えたものとなっている。
【0029】
図2,
図3に示すように、閉じ状態にある成形用袋1の第1開口縁10と第2開口縁11とを巻き付けて覆う巻き付け片12が、3箇所の各開口部K(Ki,Ks,Kt)に装備されている。
巻き付け片12は、一方の袋本体2を第1開口縁10より外側に所定長さ延長することで形成されており、その先端部には、面ファスナ13を形成する一対のファスナ部材13A,13Bのうちの一方のファスナ部材13Aが帯状に装備されている。そして、他方の袋本体3における第2開口縁11のすぐ傍の外面側に、他方のファスナ部材13Bが帯状に装備されている。
【0030】
巻き付け片12は、
図2に示されるように、開き状態では一方の袋本体2の延長上に進展されており、第1開口縁10と第2開口縁11とが重ね合わされた閉じ状態としてから、巻き付け操作される。
即ち、
図3(a)に示されるように、巻き付け片12を上方に持ち上げ、重ね合わされている第1開口縁10及び第2開口縁11を巻回して覆う状態となるように引っ張り、その引っ張った状態で一方のファスナ部材13Aを他方のファスナ部材13Bに重ねて面ファスナ13を機能させる。
すると、
図3(b)に示されるように、閉じられた状態の開口部Kを包み覆う状態で巻き付け片12が係止固定される。
【0031】
第1開口縁10と第2開口縁11とが重ね合わされた状態、即ち、第1合わせ面10aと第2合わせ面11aとが面接触して密着された成形用袋1の閉じ状態としてから、図外の吸引ポンプを用いて吸引ノズル9から減圧する。
この減圧操作により、成形用袋1が、これに内装されている合わせガラスを加熱・加圧処理すべく大きく(例えば、真空近くまで)減圧されると、袋本体2,3に負圧による引っ張り力が作用し、第1及び第2合わせ部10A,11Aが各先端側から互いに引き剥がされんばかりに反り上がり変形(反っくり返り変形)する。
【0032】
巻き付け片12を強く巻き付け固定することにより、それら第1及び第2開口縁10,11の反り上がり変形を極力防止又は規制でき、安定した気密性を保つことができる。
図1,
図2に示されるように、巻き付け片12は、一側及び他側開口部Ki,Ktのそれぞれと先端開口部Ksとの境目である両角部21,21には形成できない。
そのため、それら角部21における第1及び第2合わせ部10A,11Aの反り上がりが懸念される場合には、強力に弾性挟持可能なクリップ22(
図1の仮想線を参照)を用いて第1開口縁10と第2開口縁11とを挟むようにしても良い。
【0033】
開口部Kを閉じ操作する際には、第2開口縁11を、その凹段差11Cを凸段差10Cに当て付けて第1開口縁10に乗せるようにすれば、第1合わせ面10aと第2合わせ面11aとが位置ずれすることない良好な面接触状態に、簡単・素早く、しかも労力少なく重ね合わせることができる。
この閉じ状態では、
図3(b)に示されるように、第1重ね部10Bと第2重ね部11Bとも丁度面接触して第2のシール部となればより気密性が高められて好都合であるが、第1合わせ面10aと第2合わせ面11aとの面接触状態を確実に得るべく、閉じ状態においては、第1重ね部10Bと第2重ね部11Bとが僅かに離れる設定でも良い。
【0034】
〔実施形態2〕
開口部Kとしては、
図4に示すように、第1合わせ部10Aと第2合わせ部11Aとの何れか一方、例えば第1合わせ部10Aに、両合わせ面10a,11aどうしが重ね合わされた閉じ状態において何れか他方、例えば第2合わせ部11Aの先端部18に嵌合する嵌め入れ部14が設けられている構成でもよい。
【0035】
第1合わせ部10Aは、
図4(a)に示されるように、その断面形状が横倒しのJ字のような形状でゴム製のものに設定されており、第1合わせ面10aに続く縦壁15と返し横壁16とによって、内向きに凹入した嵌め入れ部14が構成されている。
第2合わせ部11Aは、他方の袋本体3のEPDM積層布4の上下両側に形成されたゴム層17,17により、断面形状が矩形となるゴム製のものに構成されている。
【0036】
実施形態2による開口部Kを閉じるには、第2合わせ部11Aを横移動させて〔
図4(a)を参照〕、その先端部18を第1合わせ部10Aの嵌め入れ部14に押し込んで嵌め入れ、第1合わせ面10aと第2合わせ面11aとを重ね合わせる。それから、巻き付け片12を操作して、
図4(b)に示されるように、第2合わせ部11Aがセットされた第1合わせ部10Aに巻き付けるとともに、一方のファスナ部材13Aを他方のファスナ部材13Bに重ねて面ファスナ13を機能させるのである。
【0037】
この実施形態2による開口部Kでは、第2合わせ部11Aを第1合わせ部10Aに押し込むことが必要にはなるが、第1合わせ部10Aと第2合わせ部11Aとが嵌合によって係止されるので、前述した減圧時の第1及び第2開口縁10,11の反り上がり変形をより強固に防止又は規制できる利点がある。
【0038】
〔別実施形態〕
巻き付け片12が、上側となる他方の袋本体3に設けられる構成でも良い。実施形態1による開口部Kにおいて、段差10C,11Cの凹凸が互いに逆となる構成でもよい。
【符号の説明】
【0039】
2 一方の袋本体
3 他方の袋本体
10 第1開口縁
10A 第1合わせ部
10C 段差
10a 合わせ面
11 第2開口縁
11A 第2合わせ部
11C 段差
11a 合わせ面
12 巻き付け片
13 面ファスナ
13A 一方のファスナ部材
13B 他方のファスナ部材
14 嵌め入れ部
18 先端部
K 開口部