(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-26471(P2018-26471A)
(43)【公開日】2018年2月15日
(54)【発明の名称】変圧器用遮蔽袋
(51)【国際特許分類】
H01F 27/14 20060101AFI20180119BHJP
C08J 5/12 20060101ALI20180119BHJP
【FI】
H01F27/14 A
C08J5/12CEQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-157908(P2016-157908)
(22)【出願日】2016年8月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】藍原 寿明
(72)【発明者】
【氏名】松野 利幸
【テーマコード(参考)】
4F071
5E050
【Fターム(参考)】
4F071AA10
4F071AA12
4F071AA13
4F071AA15
4F071AA26
4F071AA27
4F071AA54
4F071AF02
4F071AF57
4F071AF61
4F071AF62
4F071AH15
4F071CA01
4F071CB08
4F071CD07
5E050DA05
(57)【要約】
【課題】材料の主成分として、膨張・収縮の変形性に優れるゴムを用いながらも、耐油性に優れるものとして、可燃性ガスの拡散が無く環境性能に優れながら耐久性に富むように、より改良された変圧器用遮蔽袋を提供する。
【解決手段】ゴム層2と前記ゴム層2に重ねられた合成樹脂層3とでなる単位ゴムシート1の端部どうしを接合一体化してなる接続部Aが備えられた合成樹脂皮膜ゴムシートSを、所定の袋形状に形成することで変圧器用遮蔽袋20が構成される。接続部Aは、一方の単位ゴムシート1の折り返し部と、他方の単位ゴムシート1のカバー部と、覆いゴムシート4との加硫接着により接合一体化されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム層と前記ゴム層に重ねられた合成樹脂層とでなる単位ゴムシートと、前記単位ゴムシートの端部どうしを接合一体化してなる接続部とを有する合成樹脂皮膜ゴムシートにより、所定の袋形状に形成されている変圧器用遮蔽袋。
【請求項2】
前記接続部は、
一方の前記単位ゴムシートの端部を前記ゴム層が内側となる方向に折り畳んだ形状とされている折り返し部と、
他方の前記単位ゴムシートの端部を、これの合成樹脂層が前記折り返し部の合成樹脂層に沿うようにクランク状に折り曲げた形状とされているカバー部と、
前記折り返し部と前記カバー部とがそれぞれの合成樹脂層どうしが当接する状態に重ね合わされている重ね部に外接される覆いゴムシートとを備えるとともに、
前記重ね部と前記覆いゴムシートとの接着によりなる一体化部、及び、前記折り返し部の合成樹脂層と前記カバー部の合成樹脂層との貼着によりなる貼着部が構成されている請求項1に記載の変圧器用遮蔽袋。
【請求項3】
前記ゴム層がゴム引布により形成されている請求項2に記載の変圧器用遮蔽袋。
【請求項4】
前記折り返し部は、接着ゴムを挟んで折り畳んだ状態に構成されている請求項2又は3に記載の変圧器用遮蔽袋。
【請求項5】
前記一方及び他方の各合成樹脂皮膜ゴムシートの端部における前記合成樹脂層どうしに跨る合成樹脂フィルムが設けられ、一方の合成樹脂層及び他方の合成樹脂層のそれぞれと前記合成樹脂フィルムとの貼着によりなる第2貼着部が構成されている請求項2〜4の何れか一項に記載の変圧器用遮蔽袋。
【請求項6】
前記覆いゴムシートは、覆い内側の接着ゴム層と、覆い外側のゴム引布とが重ねられて一体化された2層構造のものに構成されている請求項2〜5の何れか一項に記載の変圧器用遮蔽袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所などに装備される変圧器であって、変圧器内の絶縁油が空気に触れて酸化することを防止するために、コンサベータに収容されて用いられる遮蔽袋、即ち、変圧器用遮蔽袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変圧器には巻線冷却用として絶縁油が充填されている。絶縁油が、負荷状況による加熱冷却によって膨張・収縮を繰り返すと、変圧器の内部には呼吸するように空気の出入り、即ち、呼吸作用が生じることになる。呼吸作用により変圧器内部に空気が流入すると、空気中に含まれる水分と絶縁油が接触して絶縁油が酸化し、絶縁性能など電気特性の劣化につながる。
【0003】
呼吸作用の発生による変圧器内部の絶縁油劣化を防ぐため、絶縁油の劣化を防止することを目的としてコンサベータが使用されることが多い。コンサベータ内部は変圧器と同様に絶縁油で満たされているとともに、空気の入った遮蔽袋が収容されている。絶縁油が膨張すると遮蔽袋から吸湿呼吸器を通して外部に排出され、絶縁油が収縮すると吸湿呼吸器から外気が空気袋に流入する。コンサベータを用いることにより、変圧器内部における絶縁油と空気との接触が回避でき、絶縁油劣化の防止又は抑制が行える。
【0004】
コンサベータを備える変圧器としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1においては、コンサベータ5に収容される遮蔽袋(隔膜6)は、合成樹脂製フィルム(又はシート)の膜と、合成繊維製織物の膜とを有する多重構造の材料が用いられている。
特許文献1に示されるように、遮蔽袋の材料として、合成樹脂層(合成樹脂フィルム)を有するものを用いると、膨張・収縮の追従性の点では不利であるが、ガス遮断性能(気密性能)、絶縁性、耐薬品性などに優れる点では、遮蔽袋の材料として好適である。
【0005】
一方、特許文献2においては、ニトリルゴムやシリコーンゴムといったゴムを材料として用い、膨張・収縮に対する追従変形性に優れた遮蔽袋も開発されている。
しかしながら、ゴムの主たる元素はC(炭素)やH(水素)であって、変圧器の異常時に生じる可燃性ガスもCやHから構成されているため、可燃性ガスが遮蔽袋を透過して内部、即ち大気に拡散され易い、という不利がある。
【0006】
このように、いずれの特許文献に示された遮蔽袋にも一長一短がある。従って、耐油性があり、かつ、変形容易で膨張・収縮の追従性に優れるものとするには、さらなる改善の余地が残されているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−263166号公報
【特許文献2】特開2015−165553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、材料の主成分として、膨張・収縮の変形性に優れるゴムを用いながらも、耐油性に優れるものとして、可燃性ガスの拡散が無く環境性能に優れながら耐久性に富むように、より改良された変圧器用遮蔽袋を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、変圧器用遮蔽袋において、
ゴム層2と前記ゴム層2に重ねられた合成樹脂層3とでなる単位ゴムシート1の端部どうしを接合一体化してなる接続部Aとを有する合成樹脂皮膜ゴムシートSにより、所定の袋形状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の変圧器用遮蔽袋において、
前記接続部Aは、
一方の前記単位ゴムシート1の端部を前記ゴム層2が内側となる方向に折り畳んだ形状とされている折り返し部1Aと、
他方の前記単位ゴムシート1の端部を、これの合成樹脂層3が前記折り返し部1Aの合成樹脂層3に沿うようにクランク状に折り曲げた形状とされているカバー部1Bと、
前記折り返し部1Aと前記カバー部1Bとがそれぞれの合成樹脂層3,3どうしが当接する状態に重ね合わされている重ね部aに外接される覆いゴムシート4と、を備えるとともに、
前記重ね部aと前記覆いゴムシート4との接着によりなる一体化部1C、及び、前記折り返し部1Aの合成樹脂層3と前記カバー部1Bの合成樹脂層3との貼着によりなる貼着部Y1が構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の変圧器用遮蔽袋において、
前記ゴム層2がゴム引布8により形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の変圧器用遮蔽袋において、
前記折り返し部1Aは、接着ゴム6を挟んで折り畳んだ状態に構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の変圧器用遮蔽袋において、
前記一方及び他方の各単位ゴムシート1,1の端部における前記合成樹脂層3,3どうしに跨る合成樹脂フィルム5が設けられ、一方の合成樹脂層3及び他方の合成樹脂層3のそれぞれと前記合成樹脂フィルム5との貼着によりなる第2貼着部Y2が構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項2〜5の何れか一項に記載の変圧器用遮蔽袋において、
前記覆いゴムシート4は、覆い内側の接着ゴム層7と、覆い外側のゴム引布8とが重ねられて一体化された積層構造のものに構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、変圧器用遮蔽袋は、複数又は多数の単位ゴムシートを接合一体化して、大きな合成樹脂皮膜ゴムシートが作製可能になったことにより実現できたものである。
フッ素樹脂などの合成樹脂皮膜が付いて接合の難しい単位ゴムシートどうしの接合一体化が可能となったので、大型のゴムシート製品に好適となる大きな合成樹脂皮膜ゴムシートの作製が可能になった。従って、大型化が可能となった合成樹脂皮膜ゴムシートを用いて所定の袋形状に形成されてなる変圧器用遮蔽袋を得ることができる。
その結果、材料の主成分として、膨張・収縮の変形性に優れるゴムを用いながらも、耐油性に優れるものとして、可燃性ガスの拡散が無く環境性能に優れながら耐久性に富むように、より改良された変圧器用遮蔽袋を提供することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、接続部が、一方の単位ゴムシートに形成される折り返し部と、他方の単位ゴムシートに形成されるカバー部と、覆いゴムシートとを、それら三者が重ね合わせられた状態での接着により構成されているので、各単位ゴムシートの端部のゴム層どうしが強固にかつ隙間の無い状態で接合一体化できるとともに、合成樹脂層どうしも貼着により隙間無く一体化することができる。
従って、合成樹脂皮膜が施されての利点が多い単位ゴムシートの複数を接合して大きな合成樹脂皮膜ゴムシートを作るために、単位ゴムシートの端部どうしを密封状態で良好に接合させることが可能な接続部が構成される利点がある。
【0017】
請求項3の発明によれば、ゴム層が、布にゴムを貼り合わせたシートであるゴム引布により形成されているので、より強度や耐久性に優れる合成樹脂皮膜ゴムシート(単位ゴムシート)でなる変圧器用遮蔽袋とすることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、折り返し部を、折り返される形状によって対向配置されているゴム層どうしの間に接着に適した接着ゴムを設けてあるから、接着ゴムを用いない場合に比べて、接着強度を無理なく増せる利点がある。
【0019】
請求項5の発明によれば、接続部において対向状態にある一方の合成樹脂層と他方の合成樹脂層とに跨らせた合成樹脂フィルムとの貼着によりなる第2貼着部を設けてあるので、密封度が向上するとともに、耐引っ張り力が向上する利点も期待できる。
【0020】
請求項6の発明によれば、覆いゴムシートを、接着に好適な接着ゴム層とゴム引布とでなる積層構造シートとしてあるので、折り返し部及びカバー部と覆いゴムシートとが強固に接着されており、強度や耐久性に優れるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】コンサベータを備えた変圧器の構造を示す概略の断面図
【
図3】合成樹脂皮膜ゴムシートにおける接続部の構造を示す断面図
【
図4】接続部の製造方法を示し、(a)は折り曲げ工程の作用図、(b)は第1熱溶着工程の作用図
【
図5】接続部の製造方法を示し、(a)は第2折り曲げ工程の作用図、(b)は一体化工程の作用図
【
図6】接続部の製造方法を示し、(a)は全体接着用工程の作用図、(b)は第2熱溶着工程の作用図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明による変圧器用遮蔽袋の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下において、変圧器用遮蔽袋は単に「遮蔽袋」と略称する。また、接着とは、接着剤を用いての接着、接着剤を用いて加熱及び/又は加圧する接着、或いは加硫接着を含むこととする。また、貼着とは、熱溶着、接着などの手段を含む一体化手段の総称である。
【0023】
図1に、変電所等に装置される変圧器Hの概略の構造が示されている。この変圧器Hは、巻線などからなる変圧器本体17、変圧器本体17を収容するタンク18、タンク18に内部連通するコンサベータ19、コンサベータ19の内部に収容される遮蔽袋20、タンク18及びコンサベータ19に充填されているシリコーン油などの絶縁油21、絶縁油21を冷却可能なラジエータ22、及び遮蔽袋20の吸排口20aに連通される吸湿呼吸器23、などを有して構成されている。
【0024】
遮蔽袋20は、
図2に示されるように、複数枚の単位ゴムシート1を接合一体化してなる合成樹脂皮膜ゴムシートSを、吸排口20a付の中空円筒形状(所定の袋形状の一例)に形成することにより構成されている。隣り合う単位ゴムシート1,1は、それらの端部どうしによる接続部Aによって密封状態で接合一体化されている。
【0025】
図3に示すように、合成樹脂皮膜付のゴムシートである単位ゴムシート1は、ゴム層2とゴム層2の片面にコーティングなどの手段により重ねらされた合成樹脂層3とでなる2層構造のゴムシートに構成されている。詳しくは、ゴム層2はゴム引布8でなり、その材質としては、NBR、H−NBR、CR、EPDMなどが挙げられ、後述する接着ゴム6も同じである。合成樹脂層3はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やETFE〔テトラフルオロエチレンとエチレン共重合体(4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)〕などのフッ素樹脂、或いはPVdF、EVA、ポリアミドでなる厚さの薄い層である。
【0026】
ゴム引布とは、布にゴムを貼り合わせたシートで、布とゴムの特性を併せ持った公知の複合材料である。布にゴムを含浸させてなるものでもよい。織布または不織布等の繊維の片面または両面にカレンダーロールで圧延したゴムを貼り合わせて製造する複合シートや、ゴムを繊維でサンドイッチする複合シートなどがある。
【0027】
合成樹脂皮膜ゴムシートSにおける接合続構造は、前述の単位ゴムシート1の単部どうしを接合一体化してなる接続部Aを有して構成されている。接続部Aは、互いに接着により一体化されている折り返し部1Aとカバー部1Bと覆いゴムシート4とでなる一体化部1Cと、折り返し部1Aの合成樹脂層3とカバー部1Bの合成樹脂層3とを熱溶着(貼着の一例)により一体化してなる第1熱溶着部(貼着部の一例)Y1と、折り返し部1A及びカバー部1Bそれぞれの合成樹脂層3,3に熱溶着(貼着の一例)により一体化された合成樹脂フィルム5と(それぞれの合成樹脂層3,3と合成樹脂フィルム5とを熱溶着してなる第2熱溶着部Y2と)、を備えて構成されている。合成樹脂フィルム5の材質は、合成樹脂層3と同じものであるが、それ以外でも良い。
【0028】
折り返し部1Aは、
図3及び
図5(a)に示されるように、一方の単位ゴムシート1の端部をゴム層2が内側となる方向に、シート状の接着ゴム6を挟み込んで180度折り曲げて折り畳んだ形状のものに構成されている。折り返し部1Aは、シート面に対して垂直姿勢となる部分である屈曲部11と、シート面に平行となる部分である返し部12とを有している。接着ゴム6は、接着に適した接着用のゴムである。
【0029】
カバー部1Bは、
図3及び
図5(a)に示されるように、他方の単位ゴムシート1の端部を、その合成樹脂層3が、カバー部1B以外の箇所における合成樹脂層3より凹んだ(退入した)状態となるようにクランク状(Z形状、又は段付状)に折り曲げた形状のものに構成されている。カバー部1Bは、シート面に垂直姿勢となる部分である立設部13と、シート面に平行となる部分である庇部14とを有している。カバー部1Bの合成樹脂層3と折り返し部1Aの合成樹脂層3とが直接に、かつ、隙間無く重なる状態に、カバー部1B及び折り返し部1Aが形状設定されている。
【0030】
覆いゴムシート4は、
図3及び
図5(b)に示されるように、覆い内側の接着ゴム層7と、覆い外側のゴム引布8とが重ねられて一体化された2層構造(積層構造の一例)のゴムシートであって、折り返し部1Aとカバー部1Bとが重ね合わされてなる重ね部aに隙間無く外接するように、鍋伏状の形状及び大きさに設定されて構成されている。重ね部aに外接された状態の覆いゴムシート4は、カバー部1B及び折り返し部1Aの端面を覆い、かつ、一方及び他方の各単位ゴムシート1,1の根元部9,10それぞれのゴム層2に跨って設けられている。
【0031】
覆いゴムシート4は、一方の単位ゴムシート1のゴム層2に重なる一方の裾野部4a、他方の単位ゴムシート1のゴム層2に重なる他方の裾野部4b、カバー部1B及び折り返し部1Aそれぞれの先端面15,16に外接する一方の縦壁部4c、カバー部1Bの立設部13に外接する他方の縦壁部4d、及びカバー部1Bの庇部14に外接する頂壁部4eとを有している。
【0032】
接続部Aにおいては、
図3、
図6(b)5に示されるように、折り返し部1Aの合成樹脂層3とカバー部1Bの合成樹脂層3とが熱溶着(貼着の一例)により一体化されてなる第2熱溶着部(第2貼着部の一例)Y2が形成されている。詳しくは、折り返し部1A及びカバー部1Bそれぞれの根元部9,10の合成樹脂層3に跨って重ねられる合成樹脂フィルム5を設け、各合成樹脂層3と合成樹脂フィルム5とをが熱溶着することで第2熱溶着部Y2が構成されている。
折り返し部1Aの根元部9は、屈曲部11及び返し部12以外の部分(シート面と平行な部分)であり、カバー部1Bの根元部10は、立設部13及び庇部14以外の部分(シート面と平行な部分)である。
【0033】
つまり接続部Aにおいては、一方及び他方の単位ゴムシート1の合成樹脂層3どうしが熱溶着されるとともに、各根元部9,10の合成樹脂層3,3と合成樹脂フィルム5とが熱溶着されての密封状態で接合一体化されている。そして、一方の単位ゴムシート1における一方の裾野部4aに対応する部分及び折り返し部1Aそれぞれのゴム層2、及び他方の単位ゴムシート1における他方の裾野部4bに対応する部分及びカバー部1Bそれぞれのゴム層2が、覆いゴムシート4と加硫接着により強固に一体化されている。
【0034】
このように、単位ゴムシート1を複数又は多数枚接合一体化させて、
図7に示されるように、略平板状で実質的に一枚ものの大きな合成樹脂皮膜ゴムシートSを得ること(作製すること)ができる。従って、この大きな合成樹脂皮膜ゴムシートSにより、遮蔽袋20はもとより、タンク内に収容される流体貯留袋などの優れた絶縁性、耐薬品性などを持ちながら漏れの無い大型のゴム製品を作製することが可能となる。
【0035】
次に、単位ゴムシート1,1の端部どうしを接合一体化する接続部Aの製造方法について説明する。なお、シート面とは、単位ゴムシート1の上又は下の面のことであり、
図3〜6においては、紙面の左右方向に広がる面である。
【0036】
まず、単位ゴムシート1(ゴム層2は加硫済)の一対を用意し、
図4(a)に示されるように、それぞれの単位ゴムシート1の端部を、ゴム層2が内側となる方向に90度折り曲げて折り曲げ部1Mを形成する折り曲げ工程を行う。そして、
図4(b)に示されるように、それぞれの折り曲げ部1M,1Mどうしを重ね、互いの合成樹脂層3,3どうしを熱溶着し、一体化した一体端部1Tを形成させる第1熱溶着工程(第1貼着工程)を行う。
【0037】
次に、
図5(a)に示されるように、一体端部1Tを、その途中部位において何れか一方の方向に90度折り曲げ、「ユ」字状(クランク状)の重ね部aを形成する第2折り曲げ工程を行う。この第2折り曲げ工程により、折り返し部1A及びカバー部1Bが形成される。また、折り返し部1Aとその根元部9との間にシート状の接着ゴム6(未加硫)を入れ込んで設ける付加工程を行う。
第2折り曲げ工程+付加工程に代えて、第2折り曲げ工程を行うための動作の前に、折り曲げ内側となる側の根元部9に接着ゴム6を配備しておき、その状態で一体端部1Tを90度折り曲げて重ね部aを形成する、という挟み折り曲げ工程とすることも可能である。
【0038】
なお、付加工程又は挟み折り曲げ工程の際に、一体端部1Tの折り曲げ内側面及び折り曲げ側の根元部9のゴム層2の表面(或いは、折り曲げ後における折り返し部1Aの内側となるゴム層の表面)、又は接着ゴム6の表裏面に接着剤を塗布しておき、接着ゴム6と接するゴム層2と接着ゴム6とを接着させる内側接着工程を伴ってもよい。
【0039】
次に、
図5(b)に示されるように、接着ゴム6が設けられている重ね部aに、未加硫の接着ゴム層7を有する鍋伏形状の覆いゴムシート4を被せて重ねる一体化工程を行う。覆いゴムシート4は、シート面に対して凸となる重ね部aに隙間無く外接して嵌合されるように、鍋伏形状に設定されている。
なお、一体化工程の際に、接着剤の塗布により、重ね部a及び両根元部9,10それぞれのゴム層2と、覆いゴムシート4の接着ゴム層7とのそれぞれを接着させる外側接着工程を伴ってもよい。
【0040】
一体化工程の次は、
図6(a)に示されるように、一体化部1Cを加熱・加圧型に入れるなどして、上下に(シート面に対する上下に)加圧するとともに加熱(例:160℃で20〜30分)し、重ね部a及び両根元部9,10と覆いゴムシート4とを強固に加硫接着させるための全体接着用工程を行う。全体接着用工程により、覆いゴムシート4の接着ゴム層7と接着ゴム6とが加硫される際に、折り返し部1A、カバー部1B、及び各根元部9,10のゴム層2の表面部位も若干軟化し、接着ゴム層7や接着ゴム6と強度十分に加硫接着(プレス架橋接着)されて強固に一体化される。
【0041】
最後に、
図6(b)に示されるように、一体化部1Cにおける両根元部9,10それぞれの合成樹脂層3に跨る状態に、合成樹脂フィルム5を各合成樹脂層3,3に熱溶着させて第2熱溶着部Y2を作る第2熱溶着工程(第2貼着工程)を行う。第2熱溶着工程により、合成樹脂フィルム5が一体化部1Cに熱溶着され、接続部Aの製造が終了する。上述の方法により作製された接続部Aにおいて、重ね部aの折り曲げ内側の単位ゴムシート1の端部が折り返し部1Aであり、かつ、折り曲げ外側の単位ゴムシート1の端部がカバー部1Bである。
そして、所定数の接続部Aが作製されての複数の単位ゴムシート1の接合一体化により、
図7に示される大きな合成樹脂皮膜ゴムシートSが作製される。
【0042】
以上述べたように、本発明による遮蔽袋20は、複数又は多数の単位ゴムシート1を接合一体化して、大きな合成樹脂皮膜ゴムシートSが作製可能になったことにより実現できたものである。
つまり、単位ゴムシート1,1どうしの接続部Aは、一方に形成される折り返し部1Aと、他方に形成されるカバー部1Bと、覆いゴムシート4とを嵌合状態で重ね合わせた状態で、加熱や加圧を伴っての接着(加硫接着、接着剤による接着)により一体化されてなる。隣合せて配置される各単位ゴムシート1,1のゴム層2,2どうしが強固にかつ隙間の無い状態で接合(接続)一体化できるとともに、合成樹脂層3,3どうしも熱溶着により隙間の無い状態で一体化することができる。
【0043】
従って、フッ素樹脂などの合成樹脂皮膜が付いて接合の難しい単位ゴムシート1,1どうしの接合一体化が可能となり、大型タンク用の流体貯留袋など、大型のゴムシート製品に好適となる大きな合成樹脂皮膜ゴムシートS(
図6を参照)の作製が可能になった。
その結果、材料の主成分として、膨張・収縮の変形性に優れるゴムを用いながらも、耐油性に優れるものとして、可燃性ガスの拡散が無く環境性能に優れながら耐久性に富むように、より改良された遮蔽袋20を提供することができる。
【0044】
ゴム層2を公知のゴム引布8とすればより強度や耐久性に優れる合成樹脂皮膜ゴムシートS(単位ゴムシート1)が実現できる。また、覆いゴムシート4を、接着に好適な接着ゴム層7とゴム引布8とでなる2層構造シートとして、加硫接着性に優れ、かつ、強度や耐久性にも優れるものとすることができる。
折り返し部1Aに、折り返されることで対向配置されるゴム層2,2どうしの間に接着ゴム6を介装させ構成とすれば、接着ゴム6を用いない場合に比べて、接着による一体化接着強度を無理なく増せる利点がある。
【0045】
接続部Aにおいて対向状態にある一方の合成樹脂層3と他方の合成樹脂層3とに跨って面接触する合成樹脂フィルム5を用いて熱溶着して第2熱溶着部Y2を設けてあるので、合成樹脂フィルム5を用いない手段に比べて、密封度が向上するとともに、単位ゴムシート1,1どうしが離れる方向の力、即ち、引っ張り力にも耐える強度が向上する利点もある。
【0046】
折り返し部1Aは、接着ゴム6を用いず、上下のゴム層2,2どうしを直接接着(加硫接着、接着剤による接着)させる構成でも良い。また、ゴム層2は、ゴムのみからなるもの、強化繊維を含むゴムなど、ゴム引布以外のものでも良い。
【符号の説明】
【0047】
1 単位ゴムシート
1A 折り返し部
1B カバー部
1C 一体化部
2 ゴム層
3 合成樹脂層
4 覆いゴムシート
5 合成樹脂フィルム
6 接着ゴム
7 接着ゴム層
8 ゴム引布
A 接続部
Y1 貼着部
Y2 第2貼着部
S 合成樹脂皮膜ゴムシート
a 重ね部