【課題】体重の増減、食欲の減退及び性欲の減退等の副作用や、離脱症状の少ない、気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群の治療に有効な新規の医薬組成物を提供すること。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の医薬組成物は、以下に説明する化合物及びその他の任意の成分を、製剤形態に適した担体と混合して、製剤化することにより得られる。
【0010】
1.化合物
本発明の医薬組成物は、以下の構造を有する化合物の1種又は2種以上を含む:
【化2】
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキルオキシ基又はハロゲン基である)
【0011】
前記Rとしての炭素数1〜3のアルキルオキシ基として、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等が挙げられる。アルキルオキシ基としては、メトキシ基がより好ましい。
前記Rとしてのハロゲン基として、例えば、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。ハロゲン基としては、クロロ基がより好ましい。
Rの結合箇所は特に制限がなく、エーテル結合を形成するフェニル基上の炭素原子を基準として、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれでも良い。Rがアルキルオキシ基である場合には、Rがオルト位にあることがより好ましい。Rがハロゲン基である場合には、Rがパラ位にあることがより好ましい。
前記化合物の構造を有する単一の化合物を1種のみで使用しても、前記構造の範囲内で異なる構造を有する化合物を2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0012】
本発明の医薬組成物は、上記化合物の内、特に好ましくは、カルバミン酸クロルフェネシン及び/又はメトカルバモールを含む。
【化3】
(カルバミン酸クロルフェネシン)
【化4】
(メトカルバモール)
本発明の医薬組成物における上記化合物は、合成したものを使用することも、市販のものを使用することもできる。本発明の医薬組成物は、カルバミン酸クロルフェネシン又はメトカルバモールを、それぞれ単体の化合物として含んで良い。また、本発明の医薬組成物は、カルバミン酸クロルフェネシンとメトカルバモールとを両方含んでも良い。本発明の医薬組成物がこれら化合物を両方含むことにより、疾病に対する治療効果の程度や作用時間を調整できる。
【0013】
本発明者は、気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群の原因がセロトニンの減少のみにあるのではなく、いくつかの原因が複合していることを突き止めた。本発明者の見いだした気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群の原因の一つに、頭蓋骨の内外接面の筋肉等の異常が挙げられる。すなわち、脳の髄膜、頭蓋表筋、前頭筋、後頭筋、側頭筋、帽状腱膜及び咀嚼筋等が異常緊張、収縮又は固着を起こすことにより、気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群、例えば、うつ病の主な症状である意欲停止、頭痛、疲労感及び頭の締め付け等の症状が発生する。本発明の医薬組成物に含まれる前記化合物を投与することにより、これら頭蓋骨の内外接面の筋肉を弛緩させ、異常緊張、収縮又は固着を緩和することによって、気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群における上記症状を緩和又は寛解させる。また、本発明の医薬組成物をあらかじめ投与することにより、頭蓋骨の内外接面の筋肉を弛緩した状態に保てるため、気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群の発生を予防する効果も期待できる。また、本発明の医薬組成物に含まれる前記化合物は、SSRIと比較して依存性及び副作用の程度が低い。従って、気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群を治療するために十分な量の医薬組成物を、治療に必要な期間投与することができる。さらに、頭蓋骨の内外接面の筋肉が硬直したことによりストレスが発生する場合には、本発明の医薬組成物によりこのようなストレスを解消又は予防することも可能である。
【0014】
上記の通り、気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群はいくつかの原因が複合して起こる疾病である。気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群を治療するためには、症状に合わせて投与する医薬組成物を調製することがより好ましい。本発明の医薬組成物は、前記化合物以外の医薬品、例えばSSRI及び/又はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(以下、SNRI)を含むことも出来る。また、原因に合わせた治療計画を達成するために、本発明の医薬組成物は、前記化合物を唯一の気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群治療薬として含んでもよい。前記化合物を唯一の気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群治療薬として含むことにより、例えば、頭蓋骨の内外接面の筋肉異常のみを原因とする気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群は本発明の医薬組成物単体で治療し、複合原因(例えば、頭蓋骨の内外接面の筋肉異常とセロトニン不足の両方)による気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群は本発明の医薬組成物と従来から使用されているSSRI及び/又はSNRIとを併用すると言うように、フレキシブルな治療方法の選択が可能となる。
【0015】
本発明の医薬組成物における前記化合物の量は、使用する化合物の構造、患者の症状、剤形及び1回の投与により必要とされる投与量等により適宜変更可能である。一般的な配合量としては、例えば、医薬組成物における前記化合物の量を、1〜90質量%、好ましくは1〜85質量%、より好ましくは1〜80質量%とする。尚、本発明の医薬組成物に、前記構造を有する化合物を2種以上含む場合には、これら化合物の合計量が、上記配合量の範囲内であれば良い。
【0016】
2.担体
本発明の医薬組成物を製造する際に使用する担体は、医薬組成物を製造する際に採用し得る担体のいずれも特に制限無く採用し得る。これら担体としては、例えば、医薬組成物に通常使用される充填剤、増量剤、結合材、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等の希釈剤、賦形剤等が挙げられる。これら担体は、剤形によって適宜使い分けることが出来る。具体的に使用される担体を、以下に剤形ごとに分けて説明する。
【0017】
3.本発明の医薬組成物の採用し得る製剤形態
本発明の医薬組成物は、通常採用し得るいかなる製剤形態を採用できる。例えば、本発明の医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤及び顆粒剤等の経口投与のための内服用固形剤、水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤及びエリキシル剤等の内服用液剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤及び注射剤等の非経口のための剤形等を採用し得る。
【0018】
4.剤形毎に使用できる担体
内服用固形剤においては、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、非結晶セルロース及びデンプン等の賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の結合材、繊維素グリコール酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、グルタミン酸及びアスパラギン酸等の溶解補助剤、並びに安定剤等が挙げられる。製剤化した後に、単一又は複数の層でコーティングしても良い。
【0019】
内服用液剤においては、例えば、精製水、エタノール又はこれらの混合液等が希釈剤として用いられる。前記希釈剤は、必要に応じて、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤及び緩衝剤から選択される1又は2以上の成分を含んで良い。
軟膏剤で使用し得る担体としては、例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等が挙げられる。
【0020】
ゲル剤で使用し得る担体としては、例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤、保存剤、抗酸化剤、着香剤等が挙げられる。
【0021】
クリーム剤で使用し得る担体としては、例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(2−ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤、保存剤、抗酸化剤、着香剤等が挙げられる。
【0022】
湿布剤で使用し得る担体としては、例えば、増粘剤(ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤、保存剤、抗酸化剤、着香剤等が挙げられる。
【0023】
貼付剤で使用し得る担体としては、例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤、保存剤、抗酸化剤、着香剤等が挙げられる。
【0024】
リニメント剤で使用し得る担体としては、例えば、水、アルコール(エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、着香剤等が挙げられる。
【0025】
噴霧剤、吸入剤、およびスプレー剤において使用し得る担体としては、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤が挙げられる。
【0026】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および使用時に溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤等が挙げられる。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。
【0027】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤、または吸入用液剤が挙げられ、当該吸入用液剤は使用時に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁させて使用する形態であってもよい。
例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(カルボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤等を必要に応じて適宜選択して調製される。
【0028】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(デンプン、デキストリン等)、賦形剤(乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤等を必要に応じて適宜選択して調製される。
【0029】
吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(アトマイザー、ネブライザー)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0030】
5.医薬組成物の製造方法
本発明の医薬組成物は、従来から存在する医薬組成物の製造方法により製造できる。例えば、剤形として錠剤を採用する場合には、前記例示した担体に、前記化合物を添加して混合し、得られた混合物を圧縮等して任意の大きさの錠剤を得ることが出来る。
【0031】
6.本発明の医薬組成物の気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群のための使用
前記の通り、本発明の医薬組成物を、気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群の治療のために使用できる。前記本発明の医薬組成物と合わせて、従来から気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群の治療のために使用されているSSRI等他の気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群治療薬を併用しても良い。
【0032】
気分障害、精神障害及び/又は慢性疲労症候群を治療する際の本発明の医薬組成物の投与量は、医薬組成物に含まれた化合物の種類及び量、患者の年齢、体重、症状、治療効果並びに投与方法等により異なり得る。以下に示す投与量は、いずれも、体重60kgの成人1人1日当たりの投与量で表される。前記の通り、以下の投与量は1日当たりの投与量であり、必要に応じて、以下の1日投与量を1回で投与することも、複数回(例えば2〜6回)に分けて投与することも可能である。
本発明の医薬組成物に含まれる化合物の一般的な投与量としては、本発明の医薬組成物に含まれる化合物の量として、例えば、10〜10000mg、好ましくは300〜8000mg、より好ましくは500〜6000mg投与することが好ましい。
【0033】
本発明の医薬組成物に含まれる化合物としてカルバミン酸クロルフェネシンを使用する場合、投与量は、本発明の医薬組成物に含まれる化合物の量として、例えば、10〜10000mg、好ましくは300〜8000mg、より好ましくは500〜6000mg投与することが好ましい。
本発明の医薬組成物に含まれる化合物としてメトカルバモールを使用する場合、投与量は、本発明の医薬組成物に含まれる化合物の量として、例えば、10〜10000mg、好ましくは300〜8000mg、より好ましくは500〜6000mg投与することが好ましい。
【0034】
カルバミン酸クロルフェネシンとメトカルバモールとを併用する場合の量として、例えば、両化合物を合わせた量として、10〜10000mg、好ましくは300〜8000mg、より好ましくは500〜6000mg投与することが好ましい。またこの場合の、カルバミン酸クロルフェネシン:メトカルバモールの混合比率は、例えば、10:90〜90:10、好ましくは30:70〜70:30、より好ましくは40:60〜60:40である。混合比率を前記範囲とすることにより、疾病に対する治療効果の程度や作用時間を調整できる。
【0035】
以下、実施例により、本発明の医薬組成物をより詳細に説明する。なお、実施例が本発明の範囲に影響を与えないことは言うまでも無い。
【実施例】
【0036】
動物実験
いわゆるマウスの強制水泳法を用いて、試験物質の抗うつ作用を評価した。マウスの強制水泳法は、ポーソルトによって提案された抗うつ作用を確認する動物実験方法である(Arch.int,pharmacoydn。229.327-336 (1977)参照)。プールに入れられたマウスは、活動状態と無動状態を示す。本試験では、マウスの無動状態の短縮を指標として、医薬組成物の抗うつ作用を確認する。
【0037】
1.強制水泳用プール
高さ30cm、内径16cmのガラス製円柱容器に、水深が20cmとなるように25℃の水を入れ、強制水泳用プールとして使用した。
2.試験動物
動物種 :マウス
系統 :S1c:ICR
性別 :雄
供給源 :日本エスエルシー株式会社
微生物学的グレード :SPF
入荷時週齢 :8週齢
試験開始時週齢 :9週齢
個体識別 :試験番号、ケージ番号及び個体識別番号を記載したラベルをケージに設置し、動物の尾にマジックで個体識別番号を記載した。
【0038】
3.試験に使用する物質と試験で用いる医薬組成物の調製
本発明を説明するための実施例において、メトカルバモールを使用した。一方、本発明と比較するための比較例において、抗不安剤としてうつ病の治療に一般的に使用されているエチゾラムを使用した。
メトカルバモール製剤(応元化学製薬社製、商品名ボラキシン、メトカルバモール含有比率76質量%)260mgに蒸留水を10mlになるまで加えて、メトカルバモール量で200mg/10mlのメトカルバモール水溶液(メトカルバモール換算で2質量%)を調製した(試薬名M−1)。
また、エチゾラム製剤(INTAS PHARMACEUTICALS社製、商品名ETILAAM−1、エチゾラム含有比率0.01質量%)3.3mgに蒸留水を10mlになるまで加えて、エチゾラム量で0.033mg/10mlのエチゾラム水溶液(エチゾラム換算で0.00033質量%)を調整した(試薬名E−1)。
それぞれのマウスに対する投与量が、以下の表1に示してある。
【表1】
【0039】
4.強制水泳試験
(1)実施例1
試験を行う1時間前に、マウスに対して上記調製したメトカルバモール水溶液を10ml/kg1回のみ投与した(メトカルバモール換算で200mg/kg)。投与経路は強制経口投与であり、テルモ株式会社製注射用シリンジに、有限会社フチガミ器械製のマウス用経口投与ゾンデを取り付けたものを使用して、無麻酔下で行った。強制投与の1時間後、マウスを前記強制水泳用プールに入れて10分間放置した。入れた後の最初の3分は馴化時間として放置し、残りの7分間における無動時間を計測した。「無動」とは、マウスが前肢及び後肢を動かさず、首から上を水面に出して浮かんでいる状態を指す。「無動時間」とは、「無動」の状態が持続している時間を合計した時間を意味する。上記試験を別々のマウスに対して10回繰り返し、平均値を算出した。
【0040】
(2)比較例
メトカルバモール水溶液の代わりに、エチゾラム水溶液を使用し、エチゾラム換算での投与量が0.033mg/kgであった以外は、上記(1)と同様の試験を行った。
(3)媒体対照
メトカルバモール水溶液の代わりに、医薬品を含まない蒸留水を使用した以外は、上記(1)と同様の試験を行った。
【0041】
5.結果
マウスの無動時間を測定して、媒体対照群と実施例及び比較例の平均値(n=10)を比較した。各平均値を以下の表2に示している。
【表2】
【0042】
媒体対照群の無動時間が230.8秒であるのに対して、エチゾラム投与群が107.3秒、メトカルバモール投与群が157.7秒であった。従って、メトカルバモール投与群が、エチゾラム投与群とほぼ同等の効果を有することが明らかである。
【0043】
うつ病患者への投与試験(実施例2)
1.うつ病患者の治療
(1)メトカルバモールを含む医薬組成物の調製
ボラキシン錠500mg(応元化学製薬社製、メトカルバモール500mg含有(メトカルバモール含有率76質量%))
(2)患者
2年以上うつ病に罹患した患者を被験者として選出した。
(3)治療方法
患者に対して、1日3回に分けて医薬組成物を投与し、服用を1週間継続させた。服用は初日を3.0〜4.5g/日(メトカルバモール換算)とし、様子を見て6.0g/日(メトカルバモール換算)まで増やした(服用量は全て記録)。試験中、試験の医薬組成物以外に服用している常用薬はそのまま継続して服用した。試験中、飲酒は控えた。
【0044】
2.結果の判定
1週間後、服用前と服用後でうつ病改善の効果があったか否かを評価した。なお、評価は関連二群の二項検定にて有意差を検討した。評価は、思考、意欲及び疲労感において、被験者が改善を実感できたか否かの申告に基づき行った。
3.結果
1週間後の試験結果が以下の表3に示される。
【表3】
【0045】
上記の通り、メトカルバモールを含む医薬組成物が、うつ病治療の効果があることが確認できた。
本発明の医薬組成物における上記化合物は、合成したものを使用することも、市販のものを使用することもできる。本発明の医薬組成物は、カルバミン酸クロルフェネシン又はメトカルバモールを、それぞれ単体の化合物として含んで良い。また、本発明の医薬組成物は、カルバミン酸クロルフェネシンとメトカルバモールとを両方含んでも良い。本発明の医薬組成物がこれら化合物を両方含むことにより、疾病に対する治療効果の程度や作用時間を調整できる。