【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例に記載する単位は特に言及しない限り、「%」は「重量%」を意味するものとする。
【0028】
(1)γ−シクロデキストリンとチモキノンを含有する精油との包接体
γ−シクロデキストリンと50%のチモキノンを含むブラッククミン種子精油とを表1に示す割合で蒸留水10mlに懸濁し、室温で一晩撹拌した。その後、懸濁液を吸引ろ過し、ろ過物を蒸留水およびエタノールで洗浄し、60℃で3時間乾燥した。得られた包接体の収量、並びに包接体中のチモキノンの含有率および加えたチモキノンに対する包接体中のチモキノンの収率を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
γ包接体1〜4に含まれるチモキノンの含有量は以下に示すように、高速液体クロマトグラフィーを用いて調べた。
γ包接体1〜4のそれぞれ30mgを50mlのメスフラスコに秤量した。そこへ、5mlのジメチルスルホキシドを加え、超音波処理により完全に溶解した後に、蒸留水を用いて定容した。これら溶液を、0.45μmのフィルターでろ過することで、分析サンプルとした。高速液体クロマトグラフィーの分析条件を以下に示す。
【0031】
<分析条件>
装置:Agilent 1100 HPLC VWD System(Agilent Technologies社製)
カラム:PEGASIL ODS 4.6×250mm(センシュー科学社製)
移動層:水−アセトニトリル(60:40〜0:100)
流速:1ml/分
検出:254nmにおける紫外線吸収を利用
【0032】
なお、サンプル中のチモキノンの定量は、2−イソプロピル−5−メチル−1,4−ベンゾキノン(チモキノン:東京化成工業株式会社製)を分析サンプルと同様に処理したもので作成した検量線を用いて行った。
【0033】
(2)消臭試験
上記で製造したγ包接体2を用い、消臭試験を行った。γ包接体2を、チモキノンの終濃度が4.0μg/mlおよび20μg/mlとなるように0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、試験液を作成した。1mlの試験液を、バイアル瓶中の25ppmのメチルメルカプタンナトリウム水溶液500μlに添加した。テフロン(登録商標)コートされたゴム栓で封をした後に、37℃で5分間振とうすることで、チモキノンとメチルメルカプタンナトリウムとの反応を行った。
反応後のバイアル瓶のヘッドスペースガス50μlに含まれるメチルメルカプタン量(MS)とリン酸緩衝液(pH7.5)1mlに25ppmのメチルメルカプタンナトリウム水溶液500μlを添加した後のバイアル瓶のヘッドスペースガス50μlに含まれるメチルメルカプタン量(MB)から、次式によりメチルメルカプタン消臭率を算出し、結果を表2に示した。
メチルメルカプタン消臭率(%)=(MB−MS)/MB×100
【0034】
また、コントロールとして、終濃度が4.0μg/mlおよび20μg/mlとなるようにチモキノンのリン酸緩衝液(pH7.5)溶液を調製し、試験液と同様にそのメチルメルカプタン消臭率を算出し、結果を表2に示した。
【0035】
【表2】
【0036】
上記結果より、本発明のチモキノンのシクロデキストリン包接体が、チモキノンと同様に揮発性硫黄化合物に対する酸化作用を有することが分かる。
【0037】
なお、メチルメルカプタン量は、炎光光度検出器(FPD)を用いたガスクロマトグラフ(Agilent 6890N、Agilent Technologies社製)より得られたピーク高さから算出した。ガスクロマトグラフの分析条件を以下に示す。
【0038】
<分析条件>
装置:Agilent 6890N(Agilent Technologies社製)
カラム:HP−5 10m×0.53μm×2.65μm(Agilent Technologies社製)
注入量:50μl
注入法:スプリット1:8
注入口温度:200℃
オーブン:50℃
キャリアガス:He
流速:10ml/min
検出器:炎光光度検出器(FPD)
【0039】
(3)消臭用タブレット
β包接体を2%含有するタブレットβおよびγ包接体を2%含有するタブレットγを以下の方法で作成した。
β−シクロデキストリン12gまたはγ−シクロデキストリン12gと50%のチモキノンを含むブラッククミン種子精油3gとを蒸留水100mlに懸濁し、室温で一晩撹拌した。その後、懸濁液を吸引ろ過し、ろ過物を蒸留水およびエタノールで洗浄し、60℃で3時間乾燥することで、β包接体11.4gおよびγ包接体12.4gを得た。
続いて、ソルビトール顆粒、二酸化ケイ素、およびシュガーエステルの混合物に、ミント香料を加え、香料を原料に吸着させた。その後、原料全体の2%のβ包接体またはγ包接体を混合し、打錠することで、タブレットβおよびタブレットγをそれぞれ得た。タブレット1粒は150mgであり、それぞれのタブレット中にチモキノンは0.119mg(タブレットβ)および0.073mg(タブレットγ)含まれている。
【0040】
タブレットβおよびタブレットγを常温および高温多湿の加速条件で4週間放置したところ、タブレットβではチモキノンの含有量が常温で約1割、加速条件で約2割減少した。これに対しタブレットγでは、いずれの条件においてもチモキノンの含有量は減少しなかった。なお、チモキノンを直接タブレットに含有させた場合、常温において4週間放置することで、チモキノン含有量が約65%減少したことから、本発明に係るチモキノンのシクロデキストリン包接体の経時安定性がチモキノン単体の経時安定性に対して著しく高いことが分かる。
【0041】
上記で製造したタブレットβおよびタブレットγを用い、消臭試験を行った。タブレットβおよびタブレットγを砕き、それぞれ18.75mg、37.50mg、75.00mg、150.00mgとなるように精密に量りとり、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)を5ml加えてタブレットを溶解し試験液とした。試験液に25ppmのメチルメルカプタンナトリウム水溶液500μlを添加し、テフロン(登録商標)コートされたゴム栓で封をした後に、37℃で5分間振とうすることで、チモキノンとメチルメルカプタンナトリウムとの反応を行った。反応後のバイアル瓶のヘッドスペースガスより、メチルメルカプタン量を測定した。また、チモキノンのシクロデキストリン包接体を含まないタブレットに0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)を5ml加え、コントロールを作成した。このコントロールについて、バイアル瓶のヘッドスペースガスのメチルメルカプタン量を測定した。なお、メチルメルカプタン量の測定条件は、上記「(2)消臭試験」と同じ条件で行った。
【0042】
コントロールのメチルメルカプタン量に対する、試験液での反応により減少したメチルメルカプタン量の割合をメチルメルカプタン消臭率とし、表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
上記結果より、チモキノンのシクロデキストリン包接体を含むタブレットが、消臭作用を有することが分かる。
【0045】
(4)消臭用ガム
ガム全体に対して0.5%のβ包接体を含有するベースガムβ、およびガム全体に対して0.5%のγ包接体を含有するベースガムγを以下の方法で作成した。β包接体およびγ包接体は、前記消臭用タブレットに使用したものとおなじ包接体を用いた。
ガムベース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、アスパルテーム、香料、およびβ包接体またはγ包接体を混練および圧延し、成型を行うことでベースガムβおよびベースガムγを得た。ベースガムβおよびベースガムγの1粒の重量は、それぞれ1.50gであった。
【0046】
ガム全体に対して0.3%のβ包接体を糖衣に含有する糖衣ガムβ、およびガム全体に対して0.3%のγ包接体を糖衣に含有する糖衣ガムγを以下の方法で作成した。
ガムベース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、アスパルテーム、および香料を混練し、圧延した後に成型を行い、センターガムを得た。このセンターガムに、約1%のβ包接体またはγ包接体、マルチトール、およびアラビアガムからなるシロップを掛け、乾燥させたのち、常法に従って香料および光沢剤を添加した。こうして、β包接体またはγ包接体を糖衣に含有する糖衣ガムβおよび糖衣ガムγを得た。糖衣ガムβおよび糖衣ガムγの1粒の重量は、それぞれ1.50gであった。なお、センターガムと糖衣との重量比は約7:3であった。
【0047】
ガム全体に対して0.1%のブラッククミンデキストリン製剤を含有するコントロールガム1を以下の方法で作成した。なお、ブラッククミンデキストリン製剤はチモキノンを7.4%含むブラッククミンとデキストリンの混合物である。
ガムベース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、アスパルテーム、香料およびブラッククミンデキストリン製剤を混練および圧延し、成型を行うことでコントロールガム1を得た。コントロールガム1の1粒の重量は1.50gであった。
【0048】
ガム全体に対して0.1%のブラッククミンデキストリン製剤を糖衣に含有するコントロールガム2を以下の方法で作成した。なお、ブラッククミンデキストリン製剤はコントロールガム1に用いたブラッククミンデキストリン製剤と同じものを用いた。
ガムベース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、アスパルテーム、および香料を混練し、圧延した後に成型を行い、センターガムを得た。このセンターガムに、0.34%のブラッククミンデキストリン製剤、マルチトール、およびアラビアガムからなるシロップを掛け、乾燥させたのち、常法に従って香料および光沢剤を添加した。こうしてコントロールガム2を得た。コントロールガム2の1粒の重量は1.50gであった。なお、センターガムと糖衣との重量比は70:30であった。
【0049】
(4−1)チモキノン溶出量の比較
ベースガムβおよびγ、糖衣ガムβおよびγ、並びにコントロールガム1および2をそれぞれ2粒ずつ5分咀嚼し、咀嚼後の各ガム中に残存するチモキノンの量に基づいて、各ガムからのチモキノンの溶出率を測定した。結果を表4に示す。
【0050】
なお、咀嚼後の各ガム中に残存するチモキノンの量は以下のように測定した。
咀嚼後の各ガムを溶解後、50mlのフラスコへ全量を移した。そこへ、5mlのジメチルスルホキシドを加え、超音波処理を行った後に、蒸留水を用いて定容した。これら各ガムの溶液を、0.45μmのフィルターでろ過することで、分析サンプルとした。この分析サンプルを、「(1)γ−シクロデキストリンとチモキノンを含有する精油との包接体」における、高速液体クロマトグラフィーの分析条件と同じ条件で、咀嚼後の各ガム中に残存するチモキノンの量を測定した。
【0051】
【表4】
【0052】
(4−2)消臭試験
ベースガムγ、糖衣ガムβおよびγ、並びに対照としてルブス植物の抽出液を有する自社製品ガム1(ロッテ社製)を用い、消臭試験を行った。それぞれのガムを細断し、0.75g(2分の1粒に相当する量)および1.50g(1粒に相当する量)を精密に量りとり、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)を5mlずつ加えて試験液を作成した。試験液に25ppmのメチルメルカプタンナトリウム水溶液を500μl加え、テフロン(登録商標)コートされたゴム栓で封をした後に、37℃で20分間振とうすることで、チモキノンとメチルメルカプタンナトリウムとの反応を行った。反応後のバイアル瓶のヘッドスペースガス50μlに含まれるメチルメルカプタン量を、FPD検出器を用いたガスクロマトグラフより得られたピーク高さから算出した。また、ガムベースのみを細断し、0.75gおよび1.50gを精密に量りとり、0.2Mリン酸緩衝液(pH7.5)を5mlずつ加えて試験液を作成した。この試験液についても同様にメチルメルカプタン量を算出した。なお、メチルメルカプタン量の測定条件は、上記「(2)消臭試験」と同じ条件で行った。
【0053】
ガムベースのみを用い測定したメチルメルカプタン量に対する各ガムとの反応により減少したメチルメルカプタン量の割合をメチルメルカプタン消臭率とし、表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
上記結果より、チモキノンのシクロデキストリン包接体を含むガムが、消臭作用を有し、また従来のルブスを含有するガムよりも強い消臭作用を有することが分かる。
【0056】
ベースガムγ、糖衣ガムγ、並びに自社製品ガム1(ロッテ社製)をそれぞれ0.75g用い、pH5.5、pH6.5、およびpH7.5の0.2Mリン酸緩衝液を用いた他は上記試験と同様に消臭試験を行った。メチルメルカプタン消臭率を表6に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
上記結果より、チモキノンのシクロデキストリン包接体を含むガムは、弱酸性条件においても消臭作用を有することが分かる。