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特開2018-3019難燃性エンジニアリングプラスチック及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-3019(P2018-3019A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】難燃性エンジニアリングプラスチック及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20171208BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20171208BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20171208BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20171208BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20171208BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20171208BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20171208BHJP
   C08G 79/025 20160101ALI20171208BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20171208BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K5/5399
   C08L69/00
   C08L63/00 A
   C08L55/02
   C08K3/00
   C08K5/00
   C08G79/025
   C09K21/12
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-130361(P2017-130361)
(22)【出願日】2017年7月3日
(31)【優先権主張番号】201610523503.6
(32)【優先日】2016年7月5日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】516064150
【氏名又は名称】広東広山新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潘 慶崇
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
4J030
【Fターム(参考)】
4H028AA34
4H028AA36
4H028BA06
4J002AA001
4J002BN153
4J002CD002
4J002CD042
4J002CD052
4J002CD112
4J002CG001
4J002CP174
4J002DA017
4J002DA067
4J002DL007
4J002EJ029
4J002EW019
4J002EW156
4J002FA047
4J002FA067
4J002FD017
4J002FD079
4J002FD136
4J002FD178
4J002FD204
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J030CA01
4J030CB48
4J030CB49
4J030CB72
4J030CE02
4J030CE11
4J030CG22
(57)【要約】
【課題】本発明は、難燃性エンジニアリングプラスチック及びその調製方法を提供する。
【解決手段】該難燃性エンジニアリングプラスチックは、原料成分としてノンハロゲン難燃物を含み、該難燃物の添加により、エンジニアリングプラスチックは、優れた難燃性を有するとともに、優れた機械的性質を有する。エンジニアリングプラスチックは、成分として40〜60質量部のPC、20〜40質量部のエポキシ樹脂、10〜20質量部のABS、5〜15質量部の難燃物を含む原料で調製されたものであり、本発明によるエンジニアリングプラスチックは、曲げ強さが82.4〜84MPa、引張強さが65.7〜66.6MPa、ノッチ付き衝撃強さが26.3〜27J/mと高く、メルトインデックスが12.6〜15であり、酸素指数が26.2〜27.5%であるので、優良な機械的性質と優れた難燃性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料成分として次式に示される分子構造を有するノンハロゲン難燃物を含むことを特徴とする難燃性エンジニアリングプラスチックである。
【化22】
(上記式において、RとRは、独立にその化学的環境を満たす任意の不活性求核性基であり、RとRは、その化学的環境を満たす任意の有機基であり、XとXは、独立に
【化23】
のうちのいずれかであり、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13は、その化学的環境を満たす任意の有機基であり、YとYは、独立にその化学的環境を満たす任意の求核性基であり、
Mは、シクロトリホスファゼン基M、4つ以上のホスファゼン基を持つ環状基M又は非環状ポリホスファゼン基Mのうちのいずれか又は少なくとも2種の組合せであり、m、nは0以上の整数であり、
a、b、c、dは0以上の整数であり、c、dは同時に0にはならず、且つa+b+c+d+2はM基におけるリン原子数の2倍である。)
【請求項2】
とRは、独立に置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルチオ基、置換又は非置換のアリールチオ基、置換又は非置換のカルボキシレート基、置換又は非置換のカルボナート基、置換又は非置換のスルフォネート基、又は置換又は非置換のホスホネート基のうちのいずれかであり、
前記アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、ヘテロアリールアルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボナート基、スルフォネート基又はホスホネート基の置換基は、独立に直鎖又は分岐鎖アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシレート基、カルボナート基、スルフォネート基又はホスホネート基のうちのいずれか又は少なくとも2種の組合せであり、前記置換基に反応性キャッピング基が含まれず、
好ましくは、RとRは、独立に置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基、又は置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基のうちのいずれかであり、
好ましくは、R、R、R、R、R11、R12及びR13は、独立に置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基、又は置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基のうちのいずれかであり、
好ましくは、RとR10は、独立に置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のヘテロアリール基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルアリールオキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルコキシヘテロアリール基、置換又は非置換のヘテロアリールオキシアルキル基、置換又は非置換のアルキルヘテロアリール基、置換又は非置換のアルキルアリール基、置換又は非置換のアリールアルキル基、置換又は非置換のアルキルヘテロアリール基、置換又は非置換のアルキルチオ基、置換又は非置換のアリールチオ基、置換又は非置換のカルボキシレート基、置換又は非置換のカルボナート基、置換又は非置換のスルフォネート基、又は置換又は非置換のホスホネート基のうちのいずれかであり、
好ましくは、YとYは、独立に置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルチオ基、置換又は非置換のアリールチオ基、置換又は非置換のカルボキシレート基、置換又は非置換のカルボナート基、置換又は非置換のスルフォネート基、又は置換又は非置換のホスホネート基のうちのいずれかであり、
好ましくは、Mの構造は、
【化24】
であり、
の構造は、
【化25】
(但し、xは4以上)であり、
の構造は、
【化26】
(但し、yは3以上)であり、
好ましくは、Mは少なくとも50wt%のM、多くとも30wt%のM及び多くとも45wt%のMを含むことを特徴とする請求項1に記載のエンジニアリングプラスチック。
【請求項3】
前記ノンハロゲン難燃物は、以下の構造を有する化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジニアリングプラスチック。
【化27】
(但し、Mはシクロトリホスファゼン基である。)
【請求項4】
前記エンジニアリングプラスチックの原料は、成分として40〜60質量部のPC、20〜40質量部のエポキシ樹脂、10〜20質量部のABS、5〜15質量部の請求項1〜3のいずれか1項に記載のノンハロゲン難燃物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジニアリングプラスチック。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、固体ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固体ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、環状イソプレン型エポキシ樹脂又はビフェニル型エポキシ樹脂のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジニアリングプラスチック。
【請求項6】
前記エンジニアリングプラスチックの原料は、成分として0.5〜3質量部の助剤、5〜25質量部の強化充填材を更に含み、
好ましくは、前記助剤は、0.5〜1部の潤滑剤、0.2〜0.8部の酸化防止剤、0.3〜0.7部の相溶化剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンジニアリングプラスチック。
【請求項7】
前記潤滑剤はTAF潤滑剤であり、
好ましくは、前記酸化防止剤は、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n-オクタデシルと有機ホスファイト粉末であり、
好ましくは、前記相溶化剤は、ポリシロキサン−アクリレート系相溶化剤であることを特徴とする請求項6に記載のエンジニアリングプラスチック。
【請求項8】
前記強化充填材は、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ウィスカー、ガラスシート及び鉱物充填材のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであることを特徴とする請求項6に記載のエンジニアリングプラスチック。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のエンジニアリングプラスチックの調製方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載のノンハロゲン難燃物を含む原料を混合し、
混合された前記原料を押出造粒することを特徴とする調製方法。
【請求項10】
前記押出造粒は、スクリュー押出機によって行われ、その温度は、第一領域200±0.5℃、第二領域220±0.5℃、第三領域220±0.5℃、第四領域220±0.5℃、第五領域240±0.5℃、第六領域270±0.5℃、第七領域270±0.5℃、第八領域270±0.5℃、第九領域250±0.5℃、第十領域250±0.5℃、第十一領域280±0.5℃、第十二領域280±0.5℃であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃物質の技術分野に関し、特に難燃性エンジニアリングプラスチック及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックとは、工業用の部品又はハウジング材料として用いられる工業用プラスチックを指し、強度、耐衝撃性、耐熱性、硬度及び耐久性がいずれも優れたプラスチックである。エンジニアリングプラスチックとは、構造材料として、幅広い温度範囲内で機械的応力に耐えて、過酷な化学・物理的環境で使用できる高性能高分子材料を指し、良好な機械的性質と寸法安定性を有し、高温でも低温でも優れた性能を保持することができ、エンジニアリング構造部材用プラスチックとして使用できる。例えば、ABS、ナイロン、ポリスルホンなどが挙げられる。汎用プラスチックに比べて、エンジニアリングプラスチックは、機械的性質、耐久性、耐食性、耐熱性などの点から、より高い要求を満たし、且つ加工しやすく、金属材料の代わりとして使用できる。エンジニアリングプラスチックは、電子・電気、自動車、建築、オフィス機器、機械、航空宇宙などの産業に幅広く用いられ、国際的には、プラスチックが鋼や木材を代替する傾向がある。エンジニアリングプラスチックは、今日の世界のプラスチック工業において成長率が最も高い分野であり、その発展は、国家支柱産業と現代ハイテク産業をサポートするだけでなく、伝統産業の改良や製品構造の調整も促進する。
【0003】
ポリカーボネート(PC)は、優れた透光性、高いガラス転移温度、耐衝撃強度、電気絶縁性及び耐候性などの独特の性能を有し、発展速度の最も速いエンジニアリングプラスチックの一つであり、建築、交通、電子・電気機器及び光学デバイスに幅広く用いられる。ポリカーボネートそのものは、極限酸素指数が28で、垂直燃焼試験(UL94)グレードがV−2級であるが、ある特殊な応用分野ではポリカーボネートの難燃性が依然として不足するため、それに対して難燃改質を行う必要がある。ハロゲン系難燃剤は環境に悪いため、ノンハロゲン、低煙、低毒で、環境に配慮した新規膨張型難燃性の開発は、研究の焦点となっている。
【0004】
PCエンジニアリングプラスチックの難燃性又は難燃グレードを向上させるために、従来、水酸化アルミニウム水和物、水酸化マグネシウム水和物のような結晶水含有金属水酸化物の難燃剤、又はポリリン酸アンモニウム(APP)、リン酸エステル系難燃剤を添加することが一般的である。中国特許CN104497529Aには、成分として、芳香族ポリカーボネート50〜70重量%、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体15〜40重量%、難燃剤3〜6重量%、相溶化剤1〜4重量%、耐衝撃性改質剤1〜4重量%、及び潤滑剤0〜1重量%を使用して調製される難燃性PC/ABSエンジニアリングプラスチックが開示されているが、前記難燃剤は、ナノ水酸化アルミニウムであり、その難燃効果と機械的性質が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の事情に鑑み、本発明の一様態は、優れた難燃効果と良好な機械的性質を有する難燃性エンジニアリングプラスチックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
原料成分として次式に示される分子構造を有するノンハロゲン難燃物を含み、
【化1】
上記式Iにおいて、RとRは、独立にその化学的環境を満たす任意の不活性求核性基であり、RとRは、その化学的環境を満たす任意の有機基であり、XとXは、独立に
【化2】
のうちのいずれかであり、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及びR13は、その化学的環境を満たす任意の有機基であり、YとYは、独立にその化学的環境を満たす任意の求核性基であり、Mは、シクロトリホスファゼン基M、4つ以上のホスファゼン基を持つ環状基M又は非環状ポリホスファゼン基Mのうちのいずれか又は少なくとも2種の組合せであり、m、nは0以上の整数であり、a、b、c、dは0以上の整数であり、且つa+b+c+d+2はM基におけるリン原子数の2倍である。
【0007】
本発明では、上記化学的環境を満たすこととは、隣接する原子に連結されて安定した化学結合手を形成できることを意味する。
【0008】
好ましくは、RとRは、独立に置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルチオ基、置換又は非置換のアリールチオ基、置換又は非置換のカルボキシレート基、置換又は非置換のカルボナート基、置換又は非置換のスルフォネート基、又は置換又は非置換のホスホネート基のうちのいずれかであり、
前記アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、ヘテロアリールアルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボナート基、スルフォネート基又はホスホネート基の置換基は、独立に直鎖又は分岐鎖アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシレート基、カルボナート基、スルフォネート基又はホスホネート基のうちのいずれか又は少なくとも2種の組合せであり、
前記置換基に、反応性キャッピング基が含まれず、例えば、前記置換基に、OH、−CN、−NH、−SH、−COOH、−CHO、−CONH等の反応性基が含まれず、具体的な実例で説明すれば、置換基がカルボキシレート基である場合に、一端にカルボキシル基を持つホルメートとすることができない。
【0009】
具体的に、RとRは、独立にCHO−、CHCHO−、CHS−、CHCHCHS−、CHCOO−又はPhO−(Phはフェニル基を示す)のうちのいずれかである。
【0010】
本発明では、RとRは、同じ基であっても異なる基であってもよい。
【0011】
好ましくは、RとRは、独立に置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基、又は置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基のうちのいずれかである。
【0012】
具体的に、RとRは、独立に
【化3】
のうちのいずれかである。
【0013】
好ましくは、R、R、R、R、R11、R12及びR13は、独立に置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基、又は置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基のうちのいずれかである。
【0014】
具体的に、R、R、R、R、R11、R12及びR13は、独立に
【化4】
のうちのいずれかである。
【0015】
好ましくは、RとR10は、独立に置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のヘテロアリール基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルアリールオキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルコキシヘテロアリール基、置換又は非置換のヘテロアリールオキシアルキル基、置換又は非置換のアルキルヘテロアリール基、置換又は非置換のアルキルアリール基、置換又は非置換のアリールアルキル基、置換又は非置換のアルキルヘテロアリール基、置換又は非置換のアルキルチオ基、置換又は非置換のアリールチオ基、置換又は非置換のカルボキシレート基、置換又は非置換のカルボナート基、置換又は非置換のスルフォネート基、又は置換又は非置換のホスホネート基のうちのいずれかである。
【0016】
具体的に、RとR10は、独立に−CH、−OCH、−CN、−COOH、−CHO、−CONH又はPh−のうちのいずれかである。
【0017】
好ましくは、YとYは、独立に置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルチオ基、置換又は非置換のアリールチオ基、置換又は非置換のカルボキシレート基、置換又は非置換のカルボナート基、置換又は非置換のスルフォネート基、又は置換又は非置換のホスホネート基のうちのいずれかである。
【0018】
具体的に、YとYは、独立に−OCH、PhO−、CHS−、PhS−又はCHCOO−のうちのいずれかである。
【0019】
本発明では、置換又は非置換の直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基は、好ましくは置換又は非置換のC1〜C12(例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはC1〜C8直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であり、炭素原子数が1であればメチル基であり、炭素原子数が2であればエチル基である。
【0020】
置換又は非置換のシクロアルキル基は、好ましくは置換又は非置換のC3〜C12(例えばC4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)のシクロアルキル基である。
【0021】
置換又は非置換のアルコキシ基は、好ましくは置換又は非置換のC1〜C12(例えばC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)のアルコキシ基である。
【0022】
置換又は非置換のシクロアルコキシ基は、好ましくは置換又は非置換のC3〜C12(例えばC4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)のシクロアルコキシ基である。
【0023】
置換又は非置換のアリール基は、好ましくはフェニル基、ベンジル基、ナフチル基、
【化5】
等である。
【0024】
置換又は非置換のヘテロアリール基は、五員又は六員ヘテロアリール基であり、好ましくは置換又は非置換のフラニル基又はピリジル基である。
【0025】
置換又は非置換のアリールアルキル基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アリールアルキル基である。
【0026】
置換又は非置換のアルキルアリール基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルキルアリール基である。
【0027】
置換又は非置換のアルコキシアリール基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルコキシアリール基である。
【0028】
置換又は非置換のヘテロアリールアルキル基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)ヘテロアリールアルキル基である。
【0029】
置換又は非置換のアルキルヘテロアリール基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルキルヘテロアリール基である。
【0030】
置換又は非置換の直鎖アルキレン基は、好ましくはC1〜C12(例えばC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)の直鎖アルキレン基である。
【0031】
置換又は非置換の分岐鎖アルキレン基は、好ましくはC1〜C12(例えばC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)の分岐鎖アルキレン基である。
【0032】
置換又は非置換のアリーレン基は、好ましくはC6〜C13(例えばC7、C8、C9、C10、C11又はC12)のアリーレン基である。
【0033】
置換又は非置換のヘテロアリーレン基は、好ましくはC5〜C13(例えばC6、C7、C8、C9、C10、C11又はC12)のヘテロアリーレン基である。
【0034】
置換又は非置換のアルキレンアリーレン基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルキレンアリーレン基である。
【0035】
置換又は非置換のアリーレンアルキレン基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アリーレンアルキレン基である。
【0036】
置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基は、好ましくはC6〜C13(例えばC7、C8、C9、C10、C11又はC12)アルキレンヘテロアリーレン基である。
【0037】
置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基は、好ましくはC6〜C13(例えばC7、C8、C9、C10、C11又はC12)ヘテロアリーレンアルキレン基である。
【0038】
置換又は非置換のアルコキシヘテロアリール基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルコキシヘテロアリール基である。
【0039】
置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)ヘテロアリールアルコキシ基である。
【0040】
置換又は非置換のヘテロアリールオキシアルキル基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)ヘテロアリールオキシアルキル基である。
【0041】
置換又は非置換のアリールアルコキシ基はC7〜C12(例えばC8、C9、C10又はC11)アラルコキシ基である。
【0042】
置換又は非置換のアルキルアリールオキシ基は、好ましくはC7〜C12(例えばC8、C9、C10又はC11)アルキルアリールオキシ基である。
【0043】
置換又は非置換のアルキルチオ基は、好ましくはC1〜C8(例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7又はC8)アルキルチオ基である。
【0044】
置換又は非置換のアリールチオ基は、好ましくはC7〜C12(例えばC8、C9、C10又はC11)アリールチオ基である。
【0045】
本発明で用いる用語である「置換」とは、指定原子が通常の原子価以下で且つ置換結果として安定した化合物を生成するという条件下で、指定原子におけるいずれか一つ又は複数の水素原子が、指定群から選ばれる置換基に置換されることを指す。置換基がオキソ基又はケトン基(即ち=O)である場合、原子における2つの水素原子が置換される。ケトン置換基は芳香環上に存在しない。「安定した化合物」とは、反応混合物から有効な純度になるまで確実に分離して有効化合物を調製することができることを指す。
【0046】
本発明では、Mは、シクロトリホスファゼン基M、4つ以上のホスファゼン基を持つ環状基M、非環状ポリホスファゼン基Mのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0047】
好ましくは、Mは、少なくとも50wt%のM、多くとも30wt%のM及び多くとも45wt%のMを含む。
【0048】
本発明では、Mの含有量は少なくとも50wt%であり、即ちMの含有量は50wt〜100wt%であってもよく、Mは主成分である。Mの含有量が100wt%であれば、MとMを含まないことになる。本発明では、Mの含有量の代表例として、50wt%、51wt%、55wt%、58wt%、60wt%、65wt%、70wt%、74wt%、75wt%、80wt%、85wt%、90wt%、92wt%、95wt%、98wt%又は100wt%が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明では、Mの含有量は多くとも30wt%であり、即ち、Mの含有量は0〜30wt%であってもよい。Mの含有量が0wt%であれば、Mを含まないことになる。本発明では、Mの含有量の代表例として、0wt%、2wt%、5wt%、8wt%、11wt%、14wt%、16wt%、17wt%、19wt%、20wt%、22wt%、25wt%、27wt%、28wt%又は29wt%が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明では、Mの含有量は多くとも45wt%であり、即ち、Mの含有量は0〜45wt%であってもよい。Mの含有量が0wt%であれば、Mを含まないことになる。本発明では、Mの含有量の代表例として、0wt%、2wt%、5wt%、8wt%、10wt%、12wt%、14wt%、16wt%、18wt%、20wt%、23wt%、25wt%、27wt%、28wt%、30wt%、32wt%、35wt%、38wt%、40wt%、43wt%又は45wt%が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明では、M、M及びMの質量百分率の合計は100%である。
【0052】
本発明の式I中、m、nは0以上の整数であり、m、nは同時に0であってもよく、同時に0にはならなくてもよい。例えば、mは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10とすることができるが、これらに限定されず、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10とすることができるが、これらに限定されない。
【0053】
a、b、c、dは0以上の整数であり、且つc、dは同時に0にはならず、即ちMが持つ基には反応活性を有する基(例えば−SH又は−OH)を少なくとも一つ含むことを確保する。
【0054】
本発明の式I中、Mに連結された基はすべてM中のリン原子に連結される。更に、本発明の式I中、a+b+c+d+2はM基におけるリン原子数の2倍であり、即ち、Mにおけるリン原子は原子価が五価の飽和状態になることを確保する。
【0055】
好ましくは、Mの構造は、
【化6】
であり、
の構造は、
【化7】
(但し、xは4以上)であり、

の構造は、
【化8】

(但し、yは3以上)である。
【0056】
なお、M、Mの構造式の表示において、現れる符号である
【化9】
は「環状」構造の表示に過ぎない。
【0057】
本発明は、ノンハロゲン難燃物を提供し、化学式におけるすべての基又は基団における置換基にハロゲンを含まない。
【0058】
好ましくは、本発明に記載のノンハロゲン難燃物は、以下の構造を持つ化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【化10】
(但し、Mはシクロトリホスファゼン基である)。
【0059】
一方、本発明は、前記ノンハロゲン難燃物の調製方法を提供する。
【0060】
本発明の式Iに示されるノンハロゲン難燃物は、ホスファゼン塩化物と求核性試薬を求核置換反応させて調製されるものである。
【0061】
ホスファゼン塩化物は、
【化11】
であり、求核性試薬はR、R、−S−R−SH、−O−R−OH、X、X、Y及びYに対応した親和性試薬であり、例えば、Rがメトキシ基である場合に、ホスファゼン塩化物と求核性置換してメトキシ基をMのリン原子に連結できる親和性試薬はメタノール又はナトリウムメトキシドであってもよく、Rがメチルチオ基(CHS−)である場合に、ホスファゼン塩化物と求核置換反応してメチルチオ基をMのリン原子に連結できる親和性試薬はメチルメルカプタン又はメチルメルカプタンナトリウムであってもよく、−S−R−SHが−S−CHCH−SHである場合に、ホスファゼン塩化物と求核置換反応して−S−CHCH−SHをMのリン原子に連結できる親和性試薬はHS−CHCH−SHであってもよく、−O−R−OHが、
【化12】
である場合に、ホスファゼン塩化物と求核置換反応して、
【化13】
をMのリン原子に連結できる親和性試薬は、
【化14】
であってもよく、同様の方法によって、X、X、Y及びYを連結することもでき、XとXに対応した求核性試薬はMと求核置換反応してXとXをMのリン原子に連結できる活性反応基を少なくとも2つ含む求核性試薬である。
【0062】
式Iに示されるノンハロゲン難燃物に、反応活性を有する基である−SH又は−OHを少なくとも一つ含む。c、dのいずれかがゼロである場合、求核反応に関与する反応物は、c、dのうちのゼロである一方に対応した反応物を含まない。
【0063】
前記求核置換反応において、ホスファゼン塩化物中の塩素が置換される。求核反応は本分野における公知方法によって行うことができ、例えば、「ポリホスファゼンの研究進展、張広偉等、材料導報2010年第24巻第7期」を参照できる。求核反応に用いられる触媒の具体的な実例として、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等の金属塩化物又は三フッ化ホウ素及びその錯体又は水酸化ナトリウム等のルイス塩基が挙げられる。これらの触媒は単独使用しても、複数種を混合して使用してもよく、本発明では特に限定がない。ここで、「ホスファゼン塩化物」とは式I中のM基がClに連結されてなる化合物を指す。ホスファゼン塩化物は、公知の溶剤、触媒を使用して公知の反応経路によって合成しても、五塩化リンと塩化アンモニウムを使用して公知の方法によってクロロホスファゼン化合物を合成した後、物理的方法によって精製し又は精製せずに直接製造してもよく、その場合、PCl+NHCl → 1/n(NPCl)n+4HClに示されるように、三量体(PNCl(即ちヘキサクロロシクロトリホスファゼン)と四量体(PNClを主とする反応生成物を更に60℃の真空で徐々に昇華することで純粋なヘキサクロロシクロトリホスファゼンが得られる。4つ以上のホスファゼンをもつ環状基の塩化物及び非環状クロロポリホスファゼンも従来技術によって調製してもよい。
【0064】
上記調製方法では、式Iに示される構造を有するノンハロゲン難燃化合物の基団の連結構造を得るとともに式Iに示される構造に少なくとも一つの反応活性キャッピング基を有することを確保するために、求核性試薬は、必ず少なくとも2つの活性反応基を有する求核性試薬(即ち−S−R−SH、−O−R−OH、X、Xに対応した親和性試薬であり、R、R、X、Xについての限定が以上と同様である)を含む。少なくとも2つの活性反応基を有する求核性試薬の実例は、ヒドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール、混合ベンゼンジオール、1,4−ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、1,4−ベンゼンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、テレフタル酸等を含むが、これらに限定されない。
【0065】
少なくとも2つの活性反応基を含む上記求核性試薬以外、一つの活性反応基を有するその他求核性試薬、例えばモノアルコール(例えば、メタノール、エタノール)又はそのナトリウム塩、フェノール、モノカルボン酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、モノアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン)、モノメルカプタン(例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン)等を使用してもよい。
【0066】
求核性試薬とホスファゼン塩化物の反応において、先ず一つの活性反応基を有する求核性試薬とホスファゼン塩化物を反応させることで、ホスファゼン塩化物における塩素を部分的に置換し、次に少なくとも2つの活性反応基を有する前記求核性試薬をホスファゼン塩化物と反応させて、式Iの構造を有するノンハロゲン難燃物を得ることができる。
【0067】
本発明のエンジニアリングプラスチックの原料は、成分として、40〜60質量部のPC、20〜40質量部のエポキシ樹脂、10〜20質量部のABS、5〜15質量部の本発明に記載のノンハロゲン難燃物を含む。
【0068】
PCはポリカーボネートであり、本発明ではPCについて特に限定がない。ABSはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体である。
【0069】
勿論、以上の三種類の原料であるカーボネート、ABS、エポキシ樹脂は実際の製品のニーズに応じて市販品を使用してもよい。
【0070】
本発明のエンジニアリングプラスチックにおいて、PC使用量の代表例として、41部、42部、43部、44部、45部、47部、49部、50部、52部、55部、57部又は59部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本発明のエンジニアリングプラスチックにおいて、エポキシ樹脂の使用量の代表例として、21部、22部、24部、25部、27部、29部、30部、32部、34部、36部又は38部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明に記載のエンジニアリングプラスチックの原料において、エポキシ樹脂は、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、固体ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固体ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、環状イソプレン型エポキシ樹脂又はビフェニル型エポキシ樹脂のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0073】
本発明のエンジニアリングプラスチックにおいて、ABSの使用量の代表例として、11部、12部、13部、14部、15部、16部、17部、18部又は19部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本発明のエンジニアリングプラスチックにおいて、本発明に記載のノンハロゲン難燃物の使用量の代表例として、6部、7部、8部、9部、10部、11部、12部、13部又は14部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
実際のニーズに応じて、上記原料の他、エンジニアリングプラスチックの原料は、成分として、0.5〜3質量部(例えば0.6質量部、0.8質量部、1質量部、1.5質量部、1.8質量部、2質量部、2.5質量部又は2.8質量部)の助剤、5〜25質量部(例えば6質量部、8質量部、10質量部、12質量部、14質量部、16質量部、18質量部、20質量部、22質量部又は24質量部)の強化充填材を含んでもよい。
【0076】
助剤は、好ましくは0.5〜1質量部(例えば0.6、0.7、0.8又は0.9質量部)の潤滑剤、0.2〜0.8質量部(例えば0.3、0.4、0.5、0.6又は0.7質量部)の酸化防止剤、0.3〜0.7質量部(0.4、0.5又は0.6質量部)の相溶化剤を含む。
【0077】
潤滑剤は、好ましくはTAF潤滑剤である。
【0078】
酸化防止剤は安定剤とも呼ばれ、好ましくはβ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n-オクタデシルと有機ホスファイト粉末である。
【0079】
相溶化剤は、上記PC、ABS及びエポキシ樹脂の三つの相溶化性を向上させる。ポリシロキサン−アクリレート系相溶化剤が好ましい。
【0080】
強化充填材はエンジニアリングプラスチックの機械的性質の向上に寄与する。強化充填材は、好ましくはガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ウィスカー、ガラスシート及び鉱物充填材のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0081】
本発明の別の態様は難燃性エンジニアリングプラスチックの調製方法を提供し、該調製方法で得られた難燃性エンジニアリングプラスチックは優れた機械的性質と良好な難燃特性を有する。
【0082】
上記エンジニアリングプラスチックの調製方法は、本発明に記載のノンハロゲン難燃物を含む原料の混合、及び混合された原料の押出造粒を含む。
【0083】
スクリュー押出機を使用して押出造粒を行い、その温度には、第一領域200±0.5℃、第二領域220±0.5℃、第三領域220±0.5℃、第四領域220±0.5℃、第五領域240±0.5℃、第六領域270±0.5℃、第七領域270±0.5℃、第八領域270±0.5℃、第九領域250±0.5℃、第十領域250±0.5℃、第十一領域280±0.5℃、第十二領域280±0.5℃である。なお、ここで言われる領域とは、スクリュー押出機のスクリューが形状の相違によって分けられる複数の部位であり、各部位が一つの領域に対応する。
【0084】
上記用語「×××基又は基団」とは、×××化合物の分子構造から一つ又は複数の水素原子、又はほかの原子又は原子団を除去した後に残った部分を指す。
【発明の効果】
【0085】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0086】
本発明の難燃性エンジニアリングプラスチックは、原料成分として式Iに示されるノンハロゲン難燃物を含み、該難燃物の添加により、エンジニアリングプラスチックは、優れた難燃性を有するとともに、優れた機械的性質を有する。本発明は、成分として40〜60質量部のPC、20〜40質量部のエポキシ樹脂、10〜20質量部のABS、5〜15質量部の難燃物を含む原料で前記エンジニアリングプラスチックを調製し、本発明によるエンジニアリングプラスチックは、曲げ強さが82.4〜84MPa、引張強さが65.7〜66.6MPa、ノッチ付き衝撃強さが26.3〜27J/mと高く、メルトインデックスが12.6〜15であり、酸素指数が26.2〜27.5%であるので、優良な機械的性質と優れた難燃性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、実施例を参照しながら本発明の技術案を更に説明する。
【0088】
以下の実施例において、用いられる原料であるホスファゼン塩化物(例えばヘキサクロロシクロトリホスファゼン)は、本発明に記載の合成方法又は本分野の公知合成方法によって合成することができ、他の原料は市販品として購入できる。
【0089】
(実施例1)
本実施例において、ノンハロゲン難燃物は以下の構造を有する。
【化15】
【0090】
撹拌装置付きの2000mlの三つ口ガラス反応器にヘキサクロロシクロトリホスファゼン1mol、アセトン250ml、ビスフェノールA 3mol、メチルメルカプタンナトリウム3molを投入し、撹拌しながら窒素ガスを導入し、60℃に昇温し、60分かけて20%水酸化ナトリウム溶液620gを滴下し、60℃で保温し、撹拌して15時間反応させる。反応後、物理的方法によって系中の水分を除去し、系中の不溶分を濾過除去し、蒸留によって系中の溶剤を除去して、上記物質を含有する難燃化合物を得た。
【0091】
得られた難燃化合物について、H−NMRスペクトルで特性評価した結果は以下のとおりである:
H NMR(CDCl,500 MHz):δ6.6〜7.0(m,24H,ベンゼン環における水素)、5.0(s,3H,フェノール性ヒドロキシ基の水素)、2.0(m,9H,SCH)1.6(m,18H,ビスフェノールA基におけるメチル水素)。
【0092】
赤外線スペクトルにおける特徴ピークの位置:ホスファゼン骨格中のP=N結合の特徴吸収ピーク1217cm−1、ホスファゼン骨格中のP−N 874cm−1、メチルエーテルの吸収ピーク2995cm−1、P−O−C結合の吸収ピーク1035cm−1、ビスフェノールA基中のベンゼン環の骨格振動吸収ピーク1611cm−1、1509cm−1、1446cm−1、フェノール性ヒドロキシ基の吸収ピーク3610cm−1、1260cm−1
【0093】
難燃物5質量部、PC40質量部、エポキシ樹脂40質量部、ABS20質量部、潤滑剤0.5質量部、酸化防止剤0.2質量部、相溶化剤0.3質量部、ガラス繊維5質量部を、混合機で十分に混合した。次に、混合物を、第一領域199.5℃、第二領域219.5℃、第三領域219.5℃、第四領域219.5℃、第五領域239.5℃、第六領域269.5℃、第七領域269.5℃、第八領域269.5℃、第九領域249.5℃、第十領域249.5℃、第十一領域279.5℃、第十二領域279.5℃のスクリュー押出機で押出造粒し、難燃性エンジニアリングプラスチックを得た。
【0094】
(実施例2)
本実施例において、ノンハロゲン難燃物は以下の構造を有する。
【化16】
【0095】
撹拌装置付きの2000mlの三つ口ガラス反応器にヘキサクロロシクロトリホスファゼン1mol、アセトン250ml、エタンジチオール6molを投入し、撹拌しながら窒素ガスを導入し、60℃に昇温し、60分かけて20%水酸化ナトリウム溶液620gを滴下し、60℃で保温し、撹拌して15時間反応させた後、物理的方法によって系中の水分を除去し、系中の不溶分を濾過除去し、蒸留によって系中の溶剤を除去して、上記物質を含有する難燃化合物を得た。
【0096】
得られた難燃化合物について、H−NMRスペクトルで特性評価した結果は以下のとおりである:
H NMR(CDCl,500 MHz)δ:2.8(m,24H,HS−CHCHS−)、1.5(s,6H,HS−CHCHS−)。
【0097】
赤外線スペクトルにおける特徴ピークの位置:ホスファゼン骨格中のP=N結合の特徴吸収ピーク1217cm−1、ホスファゼン骨格中のP−N 874cm−1、メチルエーテルの吸収ピーク2995cm−1、P−O−C結合の吸収ピーク1035cm−1、CH−Sの吸収ピーク2980cm−1、−SHの吸収ピーク2560cm−1
【0098】
難燃物15質量部、PC60質量部、エポキシ樹脂20質量部、ABS20質量部、潤滑剤1質量部、酸化防止剤0.8質量部、相溶化剤0.7質量部、ガラス繊維25質量部を、混合機で十分に混合した。次に、混合物を、第一領域205.5℃、第二領域220.5℃、第三領域220.5℃、第四領域220.5℃、第五領域240.5℃、第六領域270.5℃、第七領域270.5℃、第八領域270.5℃、第九領域250.5℃、第十領域250.5℃、第十一領域280.5℃、第十二領域280.5℃のスクリュー押出機で押出造粒し、難燃性エンジニアリングプラスチックを得た。
【0099】
(実施例3)
本実施例において、ノンハロゲン難燃物は以下の構造を有する。
【化17】
【0100】
撹拌装置付きの2000mlの三つ口ガラス反応器にヘキサクロロシクロトリホスファゼン1mol、アセトン250ml、チオフェノール3mol、ナトリウムメトキシド2mol、エチレングリコール1molを投入し、撹拌しながら窒素ガスを導入し、60℃に昇温し、60分かけて20%水酸化ナトリウム溶液620gを滴下し、60℃で保温し、撹拌して15時間反応させ、次に、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン1molを添加して、更に2時間反応させた後にヒドロキノン2mol、ナトリウムメトキシド3molを添加して、更に6時間反応させる。反応後、物理的方法によって系中の水分を除去し、系中の不溶分を濾過除去し、蒸留によって系中の溶剤を除去して、上記物質を含有する難燃化合物を得た。
【0101】
得られた難燃化合物について、H−NMRスペクトルで特性評価した結果は以下のとおりである:
H NMR(CDCl,500 MHz):δ7.0〜7.2(m,15H,
【化18】
基中のベンゼン環における水素)、6.6(m,8H,
【化19】
基中のベンゼン環における水素)、5.0(m,2H,
【化20】
基中のヒドロキシ基における水素)、3.7(d,4H,O−CHCHO−)、3.4(t,15H,O−CH)。
【0102】
赤外線スペクトルにおける特徴ピークの位置:ホスファゼン骨格中のP=N結合の特徴吸収ピーク1217cm−1、ホスファゼン骨格中のP−Nは874cm−1、メチルエーテルの吸収ピーク2995cm−1、P−O−C結合の吸収ピーク1035cm−1、CH−Oの吸収ピーク2983cm−1、フェノール性ヒドロキシ基の吸収ピーク3610cm−1、1260cm−1
【0103】
難燃物10質量部、PC50質量部、エポキシ樹脂30質量部、ABS15質量部、潤滑剤0.75質量部、酸化防止剤0.5質量部、相溶化剤0.5質量部、ガラス繊維15質量部を、混合機で十分に混合した。次に、混合物を、第一領域200℃、第二領域220.5℃、第三領域220℃、第四領域220℃、第五領域240℃、第六領域270℃、第七領域270℃、第八領域270℃、第九領域250℃、第十領域250℃、第十一領域280℃、第十二領域280℃のスクリュー押出機で押出造粒し、難燃性エンジニアリングプラスチックを得た。
【0104】
(実施例4)
本実施例において、ノンハロゲン難燃物は以下の構造を有する。
【化21】
【0105】
撹拌装置付きの2000mlの三つ口ガラス反応器にヘキサクロロシクロトリホスファゼン1mol、アセトン250ml、エタンジチオール5mol及びヒドロキノン1molを投入し、撹拌しながら窒素ガスを導入し、60℃に昇温し、60分かけて20%水酸化ナトリウム溶液620gを滴下し、60℃で保温し、撹拌して15時間反応させ、次に、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン1molを添加して、更に5時間反応させ、その後にビスフェノールAは1mol、ナトリウムメトキシド4molを添加して、更に10時間反応させる。反応後、物理的方法によって系中の水分を除去し、系中の不溶分を濾過除去し、蒸留によって系中の溶剤を除去して、上記物質を含有する難燃化合物を得た。
【0106】
得られた難燃化合物について、H−NMRスペクトルで特性評価した結果は以下のとおりである:
H NMR(CDCl,500 MHz):δ6.5〜7.0(m,44H,ベンゼン環における水素)、5.0(s,5H,フェノール性ヒドロキシ基の水素)、2.8(m,20H,HS−CHCHS−)、1.7(s,30H,メチル基における水素)、1.5(s,5H,メチル基における水素)。
【0107】
赤外線スペクトルにおける特徴ピークの位置:ホスファゼン骨格中のP=N結合の特徴吸収ピーク1217cm−1、ホスファゼン骨格中のP−N 874cm−1、メチルエーテルの吸収ピーク2995cm−1、P−O−C結合の吸収ピーク1035cm−1、CH−Oの吸収ピーク2983cm−1、ビスフェノールA基中のベンゼン環の骨格振動吸収ピーク1611cm−1、1509cm−1、1446cm−1、フェノール性ヒドロキシ基の吸収ピーク3610cm−1、1260cm−1
【0108】
難燃物8質量部、PC60質量部、エポキシ樹脂20質量部、ABS20質量部、潤滑剤0.7質量部、酸化防止剤0.5質量部、相溶化剤0.6質量部、ガラス繊維15質量部を、混合機で十分に混合した。次に、混合物を、第一領域199.5℃、第二領域219.5℃、第三領域220.5℃、第四領域220.5℃、第五領域239.5℃、第六領域270.5℃、第七領域270.5℃、第八領域270.5℃、第九領域250℃、第十領域250.5℃、第十一領域280.5℃、第十二領域280.5℃のスクリュー押出機で押出造粒し、難燃性エンジニアリングプラスチックを得た。
【0109】
(比較例1)
本比較例では、市販のヘキサフェノキシシクロトリホスファゼンを難燃物として、実施例1と同様の調製方法によってエンジニアリングプラスチックを調製した。即ち、難燃物5質量部、PC40質量部、エポキシ樹脂40質量部、ABS20質量部、潤滑剤0.5質量部、酸化防止剤0.2質量部、相溶化剤0.3質量部、ガラス繊維5質量部を、混合機で十分に混合した。次に、混合物を、第一領域199.5℃、第二領域219.5℃、第三領域219.5℃、第四領域219.5℃、第五領域239.5℃、第六領域269.5℃、第七領域269.5℃、第八領域269.5℃、第九領域249.5℃、第十領域249.5℃、第十一領域279.5℃、第十二領域279.5℃のスクリュー押出機で押出造粒し、難燃性エンジニアリングプラスチックを得た。
【0110】
(比較例2)
本比較例において、市販の水酸化アルミニウムを難燃物とし、難燃物10質量部、PC50質量部、エポキシ樹脂30質量部、ABS15質量部、潤滑剤0.75質量部、酸化防止剤0.5質量部、相溶化剤0.5質量部、ガラス繊維15質量部を、混合機で十分に混合した。次に、混合物を、第一領域200℃、第二領域220.5℃、第三領域220℃、第四領域220℃、第五領域240℃、第六領域270℃、第七領域270℃、第八領域270℃、第九領域250℃、第十領域250℃、第十一領域280℃、第十二領域280℃のスクリュー押出機で押出造粒し、難燃性エンジニアリングプラスチックを得た。
【0111】
上記すべての実施例及び比較例のケーブル製品について、下記表1に示されるテストを行い、結果を表2に示す(具体的なテスト方法は当業者にとって周知のものであるため、ここで詳細な説明を省略する)。
【表1】
【0112】
表中のテストデータから明らかなように、本発明のエンジニアリングプラスチックは、曲げ強さ、引張強さ、ノッチ付き衝撃強さが全て比較例より優れる。本発明の難燃物の添加によって機械的性質を改善できることが分かる。特に比較例に比べて難燃性が優れることは、本発明のエンジニアリングプラスチックが優れた難燃性を有することを示す。
【0113】
本発明では、上記実施例を利用して本発明のエンジニアリングプラスチック及びその調製方法を説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、即ち、本発明は上記実施例を頼らなければ実施できないことを意味していないことを出願人はここに言明する。当業者にとって明らかなように、本発明に対する全ての改良、本発明の製品の各原料に対する同等置換や補助成分の添加、具体的な方式の選択等は、全て本発明の保護範囲及び開示範囲に含まれる。