【課題を解決するための手段】
【0006】
原料成分として次式に示される分子構造を有するノンハロゲン難燃物を含み、
【化1】
上記式Iにおいて、R
1とR
2は、独立にその化学的環境を満たす任意の不活性求核性基であり、R
3とR
4は、その化学的環境を満たす任意の有機基であり、X
1とX
2は、独立に
【化2】
のうちのいずれかであり、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12及びR
13は、その化学的環境を満たす任意の有機基であり、Y
1とY
2は、独立にその化学的環境を満たす任意の求核性基であり、Mは、シクロトリホスファゼン基M
1、4つ以上のホスファゼン基を持つ環状基M
2又は非環状ポリホスファゼン基M
3のうちのいずれか又は少なくとも2種の組合せであり、m、nは0以上の整数であり、a、b、c、dは0以上の整数であり、且つa+b+c+d+2はM基におけるリン原子数の2倍である。
【0007】
本発明では、上記化学的環境を満たすこととは、隣接する原子に連結されて安定した化学結合手を形成できることを意味する。
【0008】
好ましくは、R
1とR
2は、独立に置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルチオ基、置換又は非置換のアリールチオ基、置換又は非置換のカルボキシレート基、置換又は非置換のカルボナート基、置換又は非置換のスルフォネート基、又は置換又は非置換のホスホネート基のうちのいずれかであり、
前記アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、ヘテロアリールアルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボナート基、スルフォネート基又はホスホネート基の置換基は、独立に直鎖又は分岐鎖アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシレート基、カルボナート基、スルフォネート基又はホスホネート基のうちのいずれか又は少なくとも2種の組合せであり、
前記置換基に、反応性キャッピング基が含まれず、例えば、前記置換基に、OH、−CN、−NH
2、−SH、−COOH、−CHO、−CONH
2等の反応性基が含まれず、具体的な実例で説明すれば、置換基がカルボキシレート基である場合に、一端にカルボキシル基を持つホルメートとすることができない。
【0009】
具体的に、R
1とR
2は、独立にCH
3O−、CH
3CH
2O−、CH
3S−、CH
3CH
2CH
2S−、CH
3COO−又はPhO−(Phはフェニル基を示す)のうちのいずれかである。
【0010】
本発明では、R
1とR
2は、同じ基であっても異なる基であってもよい。
【0011】
好ましくは、R
3とR
4は、独立に置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基、又は置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基のうちのいずれかである。
【0012】
具体的に、R
3とR
4は、独立に
【化3】
のうちのいずれかである。
【0013】
好ましくは、R
5、R
6、R
7、R
8、R
11、R
12及びR
13は、独立に置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキレン基、置換又は非置換のシクロアルキレン基、置換又は非置換のアリーレン基、置換又は非置換のヘテロアリーレン基、置換又は非置換のアリーレンアルキレン基、置換又は非置換のアルキレンアリーレン基、置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基、又は置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基のうちのいずれかである。
【0014】
具体的に、R
5、R
6、R
7、R
8、R
11、R
12及びR
13は、独立に
【化4】
のうちのいずれかである。
【0015】
好ましくは、R
9とR
10は、独立に置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のヘテロアリール基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルアリールオキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルコキシヘテロアリール基、置換又は非置換のヘテロアリールオキシアルキル基、置換又は非置換のアルキルヘテロアリール基、置換又は非置換のアルキルアリール基、置換又は非置換のアリールアルキル基、置換又は非置換のアルキルヘテロアリール基、置換又は非置換のアルキルチオ基、置換又は非置換のアリールチオ基、置換又は非置換のカルボキシレート基、置換又は非置換のカルボナート基、置換又は非置換のスルフォネート基、又は置換又は非置換のホスホネート基のうちのいずれかである。
【0016】
具体的に、R
9とR
10は、独立に−CH
3、−OCH
3、−CN、−COOH、−CHO、−CONH
2又はPh−のうちのいずれかである。
【0017】
好ましくは、Y
1とY
2は、独立に置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルコキシ基、置換又は非置換のアリールオキシ基、置換又は非置換のアリールアルコキシ基、置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基、置換又は非置換のアルキルチオ基、置換又は非置換のアリールチオ基、置換又は非置換のカルボキシレート基、置換又は非置換のカルボナート基、置換又は非置換のスルフォネート基、又は置換又は非置換のホスホネート基のうちのいずれかである。
【0018】
具体的に、Y
1とY
2は、独立に−OCH
3、PhO−、CH
3S−、PhS−又はCH
3COO−のうちのいずれかである。
【0019】
本発明では、置換又は非置換の直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基は、好ましくは置換又は非置換のC1〜C12(例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはC1〜C8直鎖アルキル基又は分岐鎖アルキル基であり、炭素原子数が1であればメチル基であり、炭素原子数が2であればエチル基である。
【0020】
置換又は非置換のシクロアルキル基は、好ましくは置換又は非置換のC3〜C12(例えばC4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)のシクロアルキル基である。
【0021】
置換又は非置換のアルコキシ基は、好ましくは置換又は非置換のC1〜C12(例えばC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)のアルコキシ基である。
【0022】
置換又は非置換のシクロアルコキシ基は、好ましくは置換又は非置換のC3〜C12(例えばC4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)のシクロアルコキシ基である。
【0023】
置換又は非置換のアリール基は、好ましくはフェニル基、ベンジル基、ナフチル基、
【化5】
等である。
【0024】
置換又は非置換のヘテロアリール基は、五員又は六員ヘテロアリール基であり、好ましくは置換又は非置換のフラニル基又はピリジル基である。
【0025】
置換又は非置換のアリールアルキル基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アリールアルキル基である。
【0026】
置換又は非置換のアルキルアリール基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルキルアリール基である。
【0027】
置換又は非置換のアルコキシアリール基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルコキシアリール基である。
【0028】
置換又は非置換のヘテロアリールアルキル基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)ヘテロアリールアルキル基である。
【0029】
置換又は非置換のアルキルヘテロアリール基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルキルヘテロアリール基である。
【0030】
置換又は非置換の直鎖アルキレン基は、好ましくはC1〜C12(例えばC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)の直鎖アルキレン基である。
【0031】
置換又は非置換の分岐鎖アルキレン基は、好ましくはC1〜C12(例えばC2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10又はC11)の分岐鎖アルキレン基である。
【0032】
置換又は非置換のアリーレン基は、好ましくはC6〜C13(例えばC7、C8、C9、C10、C11又はC12)のアリーレン基である。
【0033】
置換又は非置換のヘテロアリーレン基は、好ましくはC5〜C13(例えばC6、C7、C8、C9、C10、C11又はC12)のヘテロアリーレン基である。
【0034】
置換又は非置換のアルキレンアリーレン基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルキレンアリーレン基である。
【0035】
置換又は非置換のアリーレンアルキレン基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アリーレンアルキレン基である。
【0036】
置換又は非置換のアルキレンヘテロアリーレン基は、好ましくはC6〜C13(例えばC7、C8、C9、C10、C11又はC12)アルキレンヘテロアリーレン基である。
【0037】
置換又は非置換のヘテロアリーレンアルキレン基は、好ましくはC6〜C13(例えばC7、C8、C9、C10、C11又はC12)ヘテロアリーレンアルキレン基である。
【0038】
置換又は非置換のアルコキシヘテロアリール基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)アルコキシヘテロアリール基である。
【0039】
置換又は非置換のヘテロアリールアルコキシ基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)ヘテロアリールアルコキシ基である。
【0040】
置換又は非置換のヘテロアリールオキシアルキル基は、好ましくはC7〜C13(例えばC8、C9、C10、C11又はC12)ヘテロアリールオキシアルキル基である。
【0041】
置換又は非置換のアリールアルコキシ基はC7〜C12(例えばC8、C9、C10又はC11)アラルコキシ基である。
【0042】
置換又は非置換のアルキルアリールオキシ基は、好ましくはC7〜C12(例えばC8、C9、C10又はC11)アルキルアリールオキシ基である。
【0043】
置換又は非置換のアルキルチオ基は、好ましくはC1〜C8(例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7又はC8)アルキルチオ基である。
【0044】
置換又は非置換のアリールチオ基は、好ましくはC7〜C12(例えばC8、C9、C10又はC11)アリールチオ基である。
【0045】
本発明で用いる用語である「置換」とは、指定原子が通常の原子価以下で且つ置換結果として安定した化合物を生成するという条件下で、指定原子におけるいずれか一つ又は複数の水素原子が、指定群から選ばれる置換基に置換されることを指す。置換基がオキソ基又はケトン基(即ち=O)である場合、原子における2つの水素原子が置換される。ケトン置換基は芳香環上に存在しない。「安定した化合物」とは、反応混合物から有効な純度になるまで確実に分離して有効化合物を調製することができることを指す。
【0046】
本発明では、Mは、シクロトリホスファゼン基M
1、4つ以上のホスファゼン基を持つ環状基M
2、非環状ポリホスファゼン基M
3のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0047】
好ましくは、Mは、少なくとも50wt%のM
1、多くとも30wt%のM
2及び多くとも45wt%のM
3を含む。
【0048】
本発明では、M
1の含有量は少なくとも50wt%であり、即ちM
1の含有量は50wt〜100wt%であってもよく、M
1は主成分である。M
1の含有量が100wt%であれば、M
2とM
3を含まないことになる。本発明では、M
1の含有量の代表例として、50wt%、51wt%、55wt%、58wt%、60wt%、65wt%、70wt%、74wt%、75wt%、80wt%、85wt%、90wt%、92wt%、95wt%、98wt%又は100wt%が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明では、M
2の含有量は多くとも30wt%であり、即ち、M
2の含有量は0〜30wt%であってもよい。M
2の含有量が0wt%であれば、M
2を含まないことになる。本発明では、M
2の含有量の代表例として、0wt%、2wt%、5wt%、8wt%、11wt%、14wt%、16wt%、17wt%、19wt%、20wt%、22wt%、25wt%、27wt%、28wt%又は29wt%が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明では、M
3の含有量は多くとも45wt%であり、即ち、M
3の含有量は0〜45wt%であってもよい。M
3の含有量が0wt%であれば、M
3を含まないことになる。本発明では、M
3の含有量の代表例として、0wt%、2wt%、5wt%、8wt%、10wt%、12wt%、14wt%、16wt%、18wt%、20wt%、23wt%、25wt%、27wt%、28wt%、30wt%、32wt%、35wt%、38wt%、40wt%、43wt%又は45wt%が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明では、M
1、M
2及びM
3の質量百分率の合計は100%である。
【0052】
本発明の式I中、m、nは0以上の整数であり、m、nは同時に0であってもよく、同時に0にはならなくてもよい。例えば、mは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10とすることができるが、これらに限定されず、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10とすることができるが、これらに限定されない。
【0053】
a、b、c、dは0以上の整数であり、且つc、dは同時に0にはならず、即ちMが持つ基には反応活性を有する基(例えば−SH又は−OH)を少なくとも一つ含むことを確保する。
【0054】
本発明の式I中、Mに連結された基はすべてM中のリン原子に連結される。更に、本発明の式I中、a+b+c+d+2はM基におけるリン原子数の2倍であり、即ち、Mにおけるリン原子は原子価が五価の飽和状態になることを確保する。
【0055】
好ましくは、M
1の構造は、
【化6】
であり、
M
2の構造は、
【化7】
(但し、xは4以上)であり、
M
3の構造は、
【化8】
(但し、yは3以上)である。
【0056】
なお、M
1、M
2の構造式の表示において、現れる符号である
【化9】
は「環状」構造の表示に過ぎない。
【0057】
本発明は、ノンハロゲン難燃物を提供し、化学式におけるすべての基又は基団における置換基にハロゲンを含まない。
【0058】
好ましくは、本発明に記載のノンハロゲン難燃物は、以下の構造を持つ化合物のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【化10】
(但し、Mはシクロトリホスファゼン基である)。
【0059】
一方、本発明は、前記ノンハロゲン難燃物の調製方法を提供する。
【0060】
本発明の式Iに示されるノンハロゲン難燃物は、ホスファゼン塩化物と求核性試薬を求核置換反応させて調製されるものである。
【0061】
ホスファゼン塩化物は、
【化11】
であり、求核性試薬はR
1、R
2、−S−R
3−SH、−O−R
4−OH、X
1、X
2、Y
1及びY
2に対応した親和性試薬であり、例えば、R
1がメトキシ基である場合に、ホスファゼン塩化物と求核性置換してメトキシ基をMのリン原子に連結できる親和性試薬はメタノール又はナトリウムメトキシドであってもよく、R
2がメチルチオ基(CH
3S−)である場合に、ホスファゼン塩化物と求核置換反応してメチルチオ基をMのリン原子に連結できる親和性試薬はメチルメルカプタン又はメチルメルカプタンナトリウムであってもよく、−S−R
3−SHが−S−CH
2CH
2−SHである場合に、ホスファゼン塩化物と求核置換反応して−S−CH
2CH
2−SHをMのリン原子に連結できる親和性試薬はHS−CH
2CH
2−SHであってもよく、−O−R
4−OHが、
【化12】
である場合に、ホスファゼン塩化物と求核置換反応して、
【化13】
をMのリン原子に連結できる親和性試薬は、
【化14】
であってもよく、同様の方法によって、X
1、X
2、Y
1及びY
2を連結することもでき、X
1とX
2に対応した求核性試薬はMと求核置換反応してX
1とX
2をMのリン原子に連結できる活性反応基を少なくとも2つ含む求核性試薬である。
【0062】
式Iに示されるノンハロゲン難燃物に、反応活性を有する基である−SH又は−OHを少なくとも一つ含む。c、dのいずれかがゼロである場合、求核反応に関与する反応物は、c、dのうちのゼロである一方に対応した反応物を含まない。
【0063】
前記求核置換反応において、ホスファゼン塩化物中の塩素が置換される。求核反応は本分野における公知方法によって行うことができ、例えば、「ポリホスファゼンの研究進展、張広偉等、材料導報2010年第24巻第7期」を参照できる。求核反応に用いられる触媒の具体的な実例として、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等の金属塩化物又は三フッ化ホウ素及びその錯体又は水酸化ナトリウム等のルイス塩基が挙げられる。これらの触媒は単独使用しても、複数種を混合して使用してもよく、本発明では特に限定がない。ここで、「ホスファゼン塩化物」とは式I中のM基がClに連結されてなる化合物を指す。ホスファゼン塩化物は、公知の溶剤、触媒を使用して公知の反応経路によって合成しても、五塩化リンと塩化アンモニウムを使用して公知の方法によってクロロホスファゼン化合物を合成した後、物理的方法によって精製し又は精製せずに直接製造してもよく、その場合、PCl
5+NH
4Cl → 1/n(NPCl
2)n+4HClに示されるように、三量体(PNCl
2)
3(即ちヘキサクロロシクロトリホスファゼン)と四量体(PNCl
2)
4を主とする反応生成物を更に60℃の真空で徐々に昇華することで純粋なヘキサクロロシクロトリホスファゼンが得られる。4つ以上のホスファゼンをもつ環状基の塩化物及び非環状クロロポリホスファゼンも従来技術によって調製してもよい。
【0064】
上記調製方法では、式Iに示される構造を有するノンハロゲン難燃化合物の基団の連結構造を得るとともに式Iに示される構造に少なくとも一つの反応活性キャッピング基を有することを確保するために、求核性試薬は、必ず少なくとも2つの活性反応基を有する求核性試薬(即ち−S−R
3−SH、−O−R
4−OH、X
1、X
2に対応した親和性試薬であり、R
3、R
4、X
1、X
2についての限定が以上と同様である)を含む。少なくとも2つの活性反応基を有する求核性試薬の実例は、ヒドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール、混合ベンゼンジオール、1,4−ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、1,4−ベンゼンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、テレフタル酸等を含むが、これらに限定されない。
【0065】
少なくとも2つの活性反応基を含む上記求核性試薬以外、一つの活性反応基を有するその他求核性試薬、例えばモノアルコール(例えば、メタノール、エタノール)又はそのナトリウム塩、フェノール、モノカルボン酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、モノアミン(例えば、メチルアミン、エチルアミン)、モノメルカプタン(例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン)等を使用してもよい。
【0066】
求核性試薬とホスファゼン塩化物の反応において、先ず一つの活性反応基を有する求核性試薬とホスファゼン塩化物を反応させることで、ホスファゼン塩化物における塩素を部分的に置換し、次に少なくとも2つの活性反応基を有する前記求核性試薬をホスファゼン塩化物と反応させて、式Iの構造を有するノンハロゲン難燃物を得ることができる。
【0067】
本発明のエンジニアリングプラスチックの原料は、成分として、40〜60質量部のPC、20〜40質量部のエポキシ樹脂、10〜20質量部のABS、5〜15質量部の本発明に記載のノンハロゲン難燃物を含む。
【0068】
PCはポリカーボネートであり、本発明ではPCについて特に限定がない。ABSはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体である。
【0069】
勿論、以上の三種類の原料であるカーボネート、ABS、エポキシ樹脂は実際の製品のニーズに応じて市販品を使用してもよい。
【0070】
本発明のエンジニアリングプラスチックにおいて、PC使用量の代表例として、41部、42部、43部、44部、45部、47部、49部、50部、52部、55部、57部又は59部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本発明のエンジニアリングプラスチックにおいて、エポキシ樹脂の使用量の代表例として、21部、22部、24部、25部、27部、29部、30部、32部、34部、36部又は38部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明に記載のエンジニアリングプラスチックの原料において、エポキシ樹脂は、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、固体ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固体ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、環状イソプレン型エポキシ樹脂又はビフェニル型エポキシ樹脂のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0073】
本発明のエンジニアリングプラスチックにおいて、ABSの使用量の代表例として、11部、12部、13部、14部、15部、16部、17部、18部又は19部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本発明のエンジニアリングプラスチックにおいて、本発明に記載のノンハロゲン難燃物の使用量の代表例として、6部、7部、8部、9部、10部、11部、12部、13部又は14部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
実際のニーズに応じて、上記原料の他、エンジニアリングプラスチックの原料は、成分として、0.5〜3質量部(例えば0.6質量部、0.8質量部、1質量部、1.5質量部、1.8質量部、2質量部、2.5質量部又は2.8質量部)の助剤、5〜25質量部(例えば6質量部、8質量部、10質量部、12質量部、14質量部、16質量部、18質量部、20質量部、22質量部又は24質量部)の強化充填材を含んでもよい。
【0076】
助剤は、好ましくは0.5〜1質量部(例えば0.6、0.7、0.8又は0.9質量部)の潤滑剤、0.2〜0.8質量部(例えば0.3、0.4、0.5、0.6又は0.7質量部)の酸化防止剤、0.3〜0.7質量部(0.4、0.5又は0.6質量部)の相溶化剤を含む。
【0077】
潤滑剤は、好ましくはTAF潤滑剤である。
【0078】
酸化防止剤は安定剤とも呼ばれ、好ましくはβ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n-オクタデシルと有機ホスファイト粉末である。
【0079】
相溶化剤は、上記PC、ABS及びエポキシ樹脂の三つの相溶化性を向上させる。ポリシロキサン−アクリレート系相溶化剤が好ましい。
【0080】
強化充填材はエンジニアリングプラスチックの機械的性質の向上に寄与する。強化充填材は、好ましくはガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ウィスカー、ガラスシート及び鉱物充填材のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0081】
本発明の別の態様は難燃性エンジニアリングプラスチックの調製方法を提供し、該調製方法で得られた難燃性エンジニアリングプラスチックは優れた機械的性質と良好な難燃特性を有する。
【0082】
上記エンジニアリングプラスチックの調製方法は、本発明に記載のノンハロゲン難燃物を含む原料の混合、及び混合された原料の押出造粒を含む。
【0083】
スクリュー押出機を使用して押出造粒を行い、その温度には、第一領域200±0.5℃、第二領域220±0.5℃、第三領域220±0.5℃、第四領域220±0.5℃、第五領域240±0.5℃、第六領域270±0.5℃、第七領域270±0.5℃、第八領域270±0.5℃、第九領域250±0.5℃、第十領域250±0.5℃、第十一領域280±0.5℃、第十二領域280±0.5℃である。なお、ここで言われる領域とは、スクリュー押出機のスクリューが形状の相違によって分けられる複数の部位であり、各部位が一つの領域に対応する。
【0084】
上記用語「×××基又は基団」とは、×××化合物の分子構造から一つ又は複数の水素原子、又はほかの原子又は原子団を除去した後に残った部分を指す。