【課題】ダウンドロー法による帯状ガラス溶融物を挟持して強制的に下方に送り出すためや、フロート法、ロールアウト法、コルバーン法等により製造されるガラス板の熱によるひずみを取り除くために、徐冷工程において板ガラスを搬送するために使用する、圧縮強度及び耐磨耗性に優れるディスクロール用基材の提供。
【解決手段】層状珪酸塩を含むディスクロール10用基材であって、該層状珪酸塩として、層間距離が10Åを超える鉱物を2種類以上含有するように構成されるディスクロール10用基材。好ましくは、前記鉱物が、100Å以下の層間距離である、ディスクロール10用基材。前記鉱物がスメクタイト族、バーミキュライト族又は緑泥石族に含まれる鉱物から選択されるものであり、ディスクロール10用基材の質量に対して、5〜60質量%であることが好ましいディスクロール10用基材。
前記層間距離が10オングストロームを超える鉱物が、スメクタイト族、バーミキュライト族、緑泥石族に含まれる鉱物から選択されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディスクロール用基材。
前記層間距離が10オングストロームを超える鉱物の前記ディスクロール用基材の質量に対する質量比が5乃至60質量%であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のディスクロール用基材。
請求項6に記載のディスクロール用基材を軸部に挿通する挿通工程を備え、該ディスクロール用基材を含む筒状のディスク部と、該ディスク部が挿通された軸部とを備えるディスクロールを製造することを特徴とするディスクロールの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、ディスクロール用基材には高い圧縮強度及び耐磨耗性が要求されている。従来から、特許文献1〜4のようなディスクロールが知られていたが、さらなる圧縮強度及び耐磨耗性が求められていた。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、圧縮強度と耐磨耗性に優れるディスクロール用基材、及びディスクロールを提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなディスクロール用基材及びディスクロールを製造することができる製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、層状珪酸塩を含むディスクロール用基材であって、該層状珪酸塩として、層間距離が10オングストロームを超える鉱物を2種類以上含有するものであることを特徴とするディスクロール用基材を提供する。
【0011】
このように、ディスクロール用基材が、層状珪酸塩として、層間距離が10オングストロームを超える鉱物を含むことにより、ディスクロール用基材に適度な柔軟性及び弾力性を与えることができ、ディスクロール用基材の圧縮強度を高くすることができる。また、ディスクロール用基材がこのような鉱物を2種類以上含有することにより、異なる種類の鉱物の間で接触した際に鉱物間に引っかかりが生じ、磨耗した際の磨耗片の発生(いわゆる粉落ち)を抑制することができるため、ディスクロール用基材に高い耐磨耗性を与えることができる。
【0012】
このとき、前記層間距離が10オングストロームを超える鉱物は、層間距離が100オングストローム以下のものであることが好ましい。
【0013】
このように、ディスクロール用基材に含ませる層状珪酸塩鉱物の層間距離の上限を100オングストローム以下とすることにより、上記の圧縮強度及び耐磨耗性をより効果的に得ることができる。
【0014】
また、前記層間距離が10オングストロームを超える鉱物が、スメクタイト族、バーミキュライト族、緑泥石族に含まれる鉱物から選択されるものであることが好ましい。
【0015】
このような種類の鉱物を採用することにより、層間距離10オングストローム以上という条件を容易に満たすことができ、上記の圧縮強度及び耐磨耗性をより効果的に得ることができる。
【0016】
また、前記層間距離が10オングストロームを超える鉱物の前記ディスクロール用基材の質量に対する質量比が5乃至60質量%であることが好ましい。
【0017】
このような質量比で層間距離が10オングストロームを超える鉱物を含ませることにより、ディスクロール用基材に十分な圧縮強度及び耐磨耗性を与えることができる。
【0018】
また、上記のいずれかのディスクロール用基材であって、該ディスクロール用基材は無機繊維と、粘土とを含み、該ディスクロール用基材の質量に対する含有割合が、前記無機繊維は20乃至55質量%であり、前記粘土は5乃至50質量%であることが好ましい。
【0019】
このように、本発明のディスクロール用基材は無機繊維及び粘土を含むことができる。また、耐熱性、耐熱衝撃性等が向上するため、その含有量は上記のようにすることが好ましい。
【0020】
また、本発明のディスクロール用基材は、リング状に成形されているものとすることができる。
【0021】
このように、本発明のディスクロール用基材はリング状に成形したものとすることができ、リング状のディスクロール用基材であれば、ディスクロールの筒状のディスク部の構成部材として有益である。
【0022】
また、本発明は、筒状のディスク部と、該ディスク部が挿通される軸部とを備えるディスクロールであって、前記ディスク部が、上記のリング状に成形したディスクロール用基材を含み、前記ディスク部が溶融ガラスに接触するものであり、ガラスの搬送に用いるものであることを特徴とするディスクロールを提供する。
【0023】
このような、上記のリング状に成形したディスクロール用基材を用いてディスク部としたディスクロールであれば、高い圧縮強度及び高い耐磨耗性を有するディスクロール用基材を用いたディスクロールであるので、ガラスの搬送に用いる際に、ガラスを傷めることが抑制されるとともに、より粉落ちが少ないディスクロールを提供することができる。
【0024】
また、本発明は、このディスクロールを用いて溶融ガラスを搬送する搬送工程を備えることを特徴とするガラスの製造方法を提供する。
【0025】
このように、本発明のディスクロール用基材を備えるディスクロールを用いることにより、傷の発生を抑えてガラスを搬送することができ、かつ、ディスクロールからの粉落ちを抑制することができるので、高品質のガラスを製造することができる。
【0026】
また、本発明は、上記のリング状に成形したディスクロール用基材を軸部に挿通する挿通工程を備え、該ディスクロール用基材を含む筒状のディスク部と、該ディスク部が挿通された軸部とを備えるディスクロールを製造することを特徴とするディスクロールの製造方法を提供する。
【0027】
このような製造方法により、上記の圧縮強度及び耐磨耗性に優れたディスクロール用基材を備えたディスクロールを製造することができる。
【0028】
また、本発明は、層状珪酸塩を含むスラリーを準備する工程と、該スラリーを成形してディスクロール用基材を製造する工程とを有するディスクロール用基材の製造方法であって、前記スラリーとして、層間距離が10オングストロームを超える層状珪酸塩を2種類以上含有するスラリーを準備し、これを成形してディスクロール用基材を製造することを特徴とするディスクロール用基材の製造方法を提供する。
【0029】
このようなディスクロール用基材の製造方法により、上記の高い圧縮強度と高い耐磨耗性を有するディスクロール用基材を製造することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のディスクロール用基材は、ディスクロール用基材の圧縮強度を高くすることができるとともに、高い耐磨耗性を与えることができる。また、本発明のディスクロール用基材を用いたディスクロールでは、ガラスの搬送に用いる際に、ガラスを傷めることが抑制されるとともに、粉落ちが少ないものとすることができる。また、本発明のディスクロール用基材の製造方法及びディスクロールの製造方法により、そのような優れた機能性を有するディスクロール用基材及びディスクロールを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に関して、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
本発明のディスクロール用基材は、層状珪酸塩を含み、かつ、該層状珪酸塩として、層間距離が10オングストロームを超える鉱物を2種類以上含有する。以降の説明では、この層間距離が10オングストロームを超える鉱物を「長層間距離鉱物」とも称する。長層間距離鉱物は、層間距離が100オングストローム以下のものであることが好ましい。
【0034】
層状珪酸塩の層間距離とは、隣り合う珪酸塩層の対応する位置同士の距離のことである。層状珪酸塩の層間距離は、隣り合う珪酸塩層の重心間の距離ということもできる。
【0035】
非特許文献1(「粘土基礎講座1 粘土の構造と化学組成」 上原誠一郎 粘土科学、第40巻、第2号(2000)100−111頁)によると、スメクタイト族、バーミキュライト族、緑泥石族に含まれる鉱物は層間距離が10オングストロームを超える。従って、本発明における長層間距離鉱物は、スメクタイト族、バーミキュライト族、緑泥石族に含まれる鉱物から選択されるものであることが好ましい。スメクタイト族(以下、「スメクタイト」ともいう。)の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト等が挙げられる。バーミキュライト族(以下、「バーミキュライト」ともいう。)の具体例としては、3八面体型バーミキュライト、2八面体型バーミキュライト等が挙げられる。緑泥石族の具体例としては、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等が挙げられる。
【0036】
スメクタイト族、バーミキュライト族、緑泥石族に含まれる鉱物から選択されるものを採用することにより、層間距離10オングストローム以上という条件を容易に満たすことができ、上記の圧縮強度及び耐磨耗性をより効果的に得ることができる。
【0037】
層状珪酸塩は組成等により層間距離が伸縮することがある。その場合、X線回折装置(RIGAKU製UltimaIIIを用いたX線回折により層状珪酸塩の層間距離を求めることが出来る。この層間距離は測定によって得られた回折強度の回折角θを用いて下記式より求めることが出来る。
2d・sinθ=λ
d:層間距離
θ:回折角
λ:測定X線波長
このようにして測定した層間距離を、その層状珪酸塩の層間距離として用いることもできる。
【0038】
長層間距離鉱物は、例えば、スメクタイト族から複数種類選択してディスクロール用基材に含有させることもでき、バーミキュライト族又は緑泥石族から複数種類選択してディスクロール用基材に含有させることもできる。また、ディスクロール用基材に含有させる長層間距離鉱物は、スメクタイト族から1種類選択し、かつ、バーミキュライト族又は緑泥石族から1種類選択するものとしても良い。また、ディスクロール用基材に含有させる長層間距離鉱物は3種類以上でもあってもよい。
【0039】
上記非特許文献1によると、蛇紋石−カオリン族、ハロイサイト族、タルク−パイロフィライト族、雲母(マイカ)族、脆雲母族等の層状珪酸塩は層間距離が10オングストローム以下である。本発明のディスクロール用基材には、上記のように、層状珪酸塩として層間距離が10オングストロームを超える鉱物を2種類以上含有することが必要であるが、これらを含むものであれば、それ以外に、層間距離が10オングストローム以下の鉱物(短層間距離鉱物)を含んでいてもよい。また、ディスクロール用基材は層間距離が10オングストローム以下の鉱物を含んでいなくてもよい。
【0040】
上記のように、ディスクロール用基材が、層状珪酸塩として、層間距離が10オングストロームを超える鉱物(長層間距離鉱物)を含むことにより、ディスクロール用基材に適度な柔軟性及び弾力性を与えることができる(この効果は一般に「アコーディオン効果」と呼ばれることがある。)。これにより、ディスクロール用基材の圧縮強度を高くすることができる。また、ディスクロール用基材が上記長層間距離鉱物を2種類以上含有することにより、異なる種類の鉱物の間で接触した際に鉱物間に引っかかりが生じる(この効果は一般に「アンカリング効果」又は「アンカー効果」と呼ばれることがある。)。これにより、磨耗した際の磨耗片の発生(いわゆる粉落ち)を抑制することができるため、ディスクロール用基材に高い耐磨耗性を与えることができる。このように、本発明のディスクロール用基材では、高い圧縮強度と高い耐磨耗性を両立させることができ、またそのバランスを良好なものとすることができる。
【0041】
また、上記のように、長層間距離鉱物は層間距離が100オングストローム以下のものを使用することが好ましい。上記の圧縮強度及び耐磨耗性をより効果的に得ることができるからである。
【0042】
長層間距離鉱物のディスクロール用基材の質量に対する質量比が5乃至60質量%であることが好ましい。このような質量比で層間距離が10オングストロームを超える鉱物を含ませることにより、ディスクロール用基材に十分な圧縮強度及び耐磨耗性を与えることができる。この質量比は7乃至50質量%であることがさらに好ましく、10乃至40質量%であることが特に好ましい。
【0043】
また、本発明のディスクロール用基材では、上記のように層状珪酸塩として長層間距離鉱物を2種類以上用いるが、長層間距離鉱物間の質量比として、任意の1種類を除いた際に残りの種類の層状珪酸塩で10%質量以上あることが好ましい。例えば、長層間距離鉱物として2種類用いる場合には、長層間距離鉱物間の質量比は10%:90%〜90%:10%とすることが好ましい。アンカリング効果がより効果的に作用すると考えられるためである。また、この質量比は1:4〜4:1とすることがより好ましい。
【0044】
また、本発明のディスクロール用基材は無機繊維と、粘土とを含むことが好ましい。
【0045】
本発明において、無機繊維は、従来からディスクロールに用いられている各種無機繊維を適宜用いることができ、その例としてセラミック繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ガラス繊維、ロックウール繊維等が挙げられる。中でも、耐熱性に優れたアルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ・アルミナ繊維、シリカ繊維が好適である。また、無機繊維は、必要に応じて2種以上を併用することができる。
【0046】
無機繊維のディスクロール用基材の質量に対する含有割合は、20乃至55質量%であることが好ましい。この含有割合は、より好ましくは30質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは33質量%以上45質量%以下であり、特に好ましくは35質量%以上43質量%以下である。無機繊維が20質量%以上であれば耐熱性、耐熱衝撃性が向上するため好ましい。また、無機繊維が55質量%以下であれば、ディスクロール用基材の密度を十分な高さに保つことができ、作業性を良くすることができる。
【0047】
本発明に用いる無機繊維は、無機繊維全体に対する割合として通常、アルミナを40質量%以上99質量%以下、好ましくは40質量%以上80質量%以下、より好ましくは70質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上75質量%以下含む。また、無機繊維は、通常、シリカを1質量%以上60質量%以下、好ましくは20質量%以上60質量%以下、より好ましくは20質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上30質量%以下含むことができる。アルミナが増えると耐熱性が増す。
【0048】
本発明において、粘土は、木節粘土、ベントナイト、カオリン粘土、蛙目粘土、及び耐火粘土等を用いることができるが、特に木節粘土及びベントナイトを用いることが好ましい。粘土は1種類でもよいし、2種類以上を共に用いてもよい。
【0049】
ディスクロール用基材の質量に対し、粘土は5乃至50質量%の範囲で含まれることが好ましい。この含有割合は、より好ましくは10質量%以上48質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上45質量%以下、特に好ましくは20以上45質量%以下である。粘土の含有量が5質量%以上であれば、より耐磨耗性を高くすることができ、50質量%以下であれば、より生産性を向上することができる。
【0050】
本発明のディスクロール用基材では、必要に応じ、木節粘土を、ディスクロール用基材の質量に対し、2質量%以上30質量%以下の範囲で含むことが好ましい。この含有割合は、5質量%以上25重量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下で含むことが特に好ましい。木節粘土をこの範囲で含むと表面潤滑性(平滑性)が良好となる。
【0051】
本発明のディスクロール用基材では、必要に応じ、スメクタイト(具体的にはモンモリロナイト)を主成分とするベントナイトを2質量%以上30質量%以下の範囲で含むことが好ましい。この含有割合は、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上25質量%以下であることが特に好ましい。ディスクロール用基材がベントナイトを含むと、定着・凝集が十分となり、また濾水性が向上する。逆にベントナイトの含有量が30質量%以下であれば、スラリーの粘性が高くなりすぎず、濾水性が向上する。
【0052】
粘土成分にも長層間距離鉱物に分類される層状珪酸塩が含まれることがあるが、この層状珪酸塩も、上記の長層間距離鉱物のディスクロール用基材の質量に対する質量比に算入される。粘土成分に含まれる長層間距離鉱物と、これ以外に用いられる長層間距離鉱物とで合わせて2種類以上がディスクロール用基材に含まれていれば本発明の効果を奏することができる。粘土成分に含まれている長層間距離鉱物と、それ以外に用いる長層間距離鉱物とで、同じ種類のものが用いられていてもよい。
【0053】
また、本発明のディスクロール用基材は、形状は特に限定されないが、板状をなし、例えば四角形状のほか、リング状などに成形されているものとすることができる。
【0054】
このように、本発明のディスクロール用基材はリング状に成形したものとすることができ、リング状のディスクロール用基材を重ねて筒状のディスク部を形成することでディスクロールの構成部品とすることができる。
【0055】
次に、
図1を参照して、本発明のディスクロールの構成を説明する。本発明のディスクロール10は、筒状のディスク部13と、該ディスク部が挿通される軸部11とを備える。また、ディスク部13は、リング状に成形したディスクロール用基材12を複数、軸部11に挿通してなるものである。軸部(シャフト)11に複数枚挿通されたリング状ディスクロール用基材12は、ロール状の積層物とされ、その両端に配したフランジ14を介して全体を加圧してディスクロール用基材12に若干の圧縮を加えた状態でナット15等により固定されたものである。本発明のディスクロール10は、ディスクロール用基材12として、上記の本発明のディスクロール用基材をリング状に形成したものを含むものである。また、ディスク部13は溶融ガラスに接触するものであり、ガラスの搬送に用いるものである。
【0056】
上記のディスクロール10は、例えば、
図2に示す板ガラス製造装置100に組み込まれ、板ガラスの成形及び搬送に用いることができる。この板ガラス製造装置100は、溶融炉101の線状に開口したスリット102から帯状のガラス溶融物110を連続的に排出し、この排出された帯状のガラス溶融物110を流下させ、流下中に冷却して硬化させることにより板ガラスを製造する装置であるが、ディスクロール10は一対の引張ロールとして機能し、帯状ガラス溶融物110を挟持して強制的に下方に送出(搬送)している。
【0057】
本発明のディスクロールは、上記の長層間距離鉱物を2種類以上含有するディスクロール用基材を用いてディスク部としたディスクロールであるので、高い圧縮強度及び高い耐磨耗性を有するディスクロール用基材が用いられている。従って、ガラスの搬送に用いる際に、ガラスを傷めることが抑制されるとともに、より粉落ちが少ないディスクロールとすることができる。
【0058】
次に、上記のディスクロール用基材及びディスクロールの製造方法を説明する。
【0059】
本発明のディスクロール用基材の製造方法は、層状珪酸塩を含むスラリーを準備する工程(工程a)と、該スラリーを成形してディスクロール用基材を製造する工程(工程b)とを有する。また、本発明のディスクロール用基材の製造方法では、工程aにおいて、上記スラリーとして、層間距離が10オングストロームを超える層状珪酸塩(長層状珪酸塩)を2種類以上含有するスラリーを準備する。このスラリーを工程bにおいて成形してディスクロール用基材を製造する。
【0060】
このようなディスクロール用基材の製造方法により、上記の高い圧縮強度と高い耐磨耗性を有するディスクロール用基材を製造することができる。
【0061】
より具体的には、長層間距離鉱物を2種類以上、無機繊維、粘土(木節粘土、ベントナイト)、必要に応じて充填剤、凝集剤、有機バインダー等を所定量含む水性スラリーを調製し、この水性スラリーを成形し、乾燥することにより基材を得ることができる。水性スラリーの成形、乾燥の方法は、例えば、抄造法や、金網等の成形金型の一方の面にスラリーを供給しつつ他方の面から吸引を行う脱水成形法等とすることができる。ディスクロール用基材の厚さは適宜設定することができ、2〜30mmが一般的である。
【0062】
次に、
図1を参照してディスクロールの製造方法に関して説明する。上記のように製造したディスクロール用基材をリング状に打ち抜き、リング状ディスクロール用基材12とする。その後、リング状ディスクロール用基材12を軸部11に挿通する挿通工程を備える。挿通工程において、リング状ディスクロール用基材12を含む筒状のディスク部13と、該ディスク部が挿通された軸部11とを備えるディスクロールを製造する。このような製造方法により、上記の圧縮強度及び耐磨耗性に優れたディスクロール用基材を備えたディスクロールを製造することができる。
【0063】
より具体的には以下のようにディスクロールを製造することができる。すなわち、リング状ディスクロール用基材12を複数枚、金属製(例えば鉄製、ステンレス鋼製)の軸部11に嵌挿してロール状の積層物(ディスク部13)とし、両端に配したフランジ14を介して両端から全体を加圧してリング状ディスクロール用基材に若干の圧縮を加えた状態でナット15等の固定具で固定する。必要により焼成する。焼成は、軸部へ挿通して充填する前でも充填した後でもよいが、充填後が好ましい。そして、所定のロール径となるようにディスク部13の外周面(すなわち、リング状のディスクロール用基材12の外周面)を研削することにより、ディスクロール10が得られる。
【0064】
ディスクロールにおけるディスク部の硬度(ShoreD硬度)は、通常、30〜70、好ましくは35〜65である。ディスク部の充填密度は、通常、1.0〜1.5g/cm
3、好ましくは1.1〜1.4g/cm
3である。
【0065】
ディスクロールの構造には軸部全体がリング状ディスクロール用基材で覆われている仕様のもの、ガラスの接触する部分のみ軸部がリング状ディスクロール用基材で覆われている仕様のもの等があり、いずれでも構わない。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
表1に示す配合(質量%)のように、バーミキュライト32質量%、スメクタイト(具体的にはモンモリロナイト)10質量%、無機繊維(アルミナ70質量%以上、シリカ30質量%以下のムライト繊維)40質量%、木節粘土10質量%、パルプ6質量%及び澱粉2質量%を含む水性スラリーを調製し、吸引脱水成形法により乾燥後の寸法が200mm×200mm×6mmのディスクロール用基材(ミルボード)を成形した。
【0068】
得られたディスクロール用基材について、下記(1)〜(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(1)表面平滑性試験
得られたディスクロール用基材について、触針式表面粗さ測定機(JIS B 0651)を使用して、JIS B 0601−1994で規定された方法により測定し、算術平均粗さRa、最大高さRy、十点平均粗さRzを測定した。
【0070】
(2)耐衝撃試験
ディスクロール用基材を外径60mm内径20mmのリング状に打ち抜き、リング状ディスクロール用基材を作製した。これを直径20mmのステンレス鋼製軸部(シャフト)に挿通し、長さ100mm、充填密度1.35g/cm
3になるようにロールビルドし、試験用ディスクロールを作製した。この試験用ディスクロールを900℃の炉の中に投入し、3時間保持後、炉から取り出した。取り出した直後にステンレス製(350g)の衝撃用治具を所定高さ(50〜300mm)から落下させた。落下後の外観を観察した。クラックが入ったときの高さを衝撃強さとした。
【0071】
(3)磨耗試験
ディスクロール用基材を外径70mm内径20mmのリング状に打ち抜き、リング状ディスクロール用基材を作製した。これを直径20mmのステンレス鋼製軸部(シャフト)に挿通し、長さ100mm、充填密度1.35g/cm
3になるようにロールビルドし、ディスクロールを作製した。このようにして作製したディスクロールを、
図3(a)の試験用ディスクロール310として図示した。この試験用ディスクロール310を900℃で3時間加熱したあと、このディスクロール310のディスク部表面に、1mm間隔で幅1mmの溝加工を10本施した直径12mmのアルミナ製の軸(磨耗材322)を接触させた。磨耗材322には錘324により荷重をかけた。磨耗材322をディスクロール310のディスク部に接触させた状態で15分間回転させ、ディスクロール310のディスク部表面に出来た溝の深さを測定した。
図3(b)は
図3(a)の点線部を横から見て拡大した概略図である。磨耗材322には実際には上記のように溝が10本加工されている。
【0072】
(4)圧縮強度試験
上記のようにして得られたディスクロール用基材から、
図4(a)に示すような形状の測定用試料423を作製した。
図4(a)に示す接触部の外径が65mm、接触部の長さが30mmの試料とした。測定用試料423には、軸部に通すための貫通孔が形成されている。この測定用試料423を
図4(b)に示したように、軸部411に測定用試料423を挿通し、フランジ414を介してナット415で固定した。この状態で
図4(b)に示すように測定用試料423を上部圧縮子432と下部圧縮子434とで挟み、上部圧縮子を上方向から圧縮し、破壊したときの線荷重を算出した。また、所定荷重をかけた際の沈み込み変形量(ストローク)を測定した。
【0073】
(実施例2〜4)
表1に示すように、層状珪酸塩の量を変えた他は、実施例1と同様にしてディスクロール用基材とディスクロールを製造して評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
表1に示すように、層状珪酸塩としてマイカ(層間距離10オングストローム以下)とスメクタイト(具体的にはモンモリロナイト)を用いた他は、実施例1と同様にしてディスクロール用基材とディスクロールを製造して評価した。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例2)
表1に示すように、層状珪酸塩としてスメクタイト(具体的にはモンモリロナイト)のみを用いた他は、実施例1と同様にしてディスクロール用基材とディスクロールを製造して評価した。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すように、層状珪酸塩として層間距離が10オングストロームを超える層状珪酸塩を2種類(バーミキュライトとスメクタイト)用いた実施例1〜4では、ディスクロールの磨耗量が比較例1、2より格段に小さかった。また、実施例1〜4では比較例1、2に対して圧縮強度も高いことがわかる。また、ディスクロール用基材の表面平滑性も、実施例1〜4では比較例1、2より優れた結果が得られている。耐衝撃性も実施例1〜4は比較例1、2と比較して遜色ない結果となった。特に実施例3、4は比較例1、2と比較して耐衝撃性が優れた結果になっている。これらの結果より、本発明のディスクロール用基材及びディスクロールは耐磨耗性及び圧縮強度に優れることがわかる。
【0078】
また、実施例1及び比較例1の圧縮強度試験において得られた圧縮線荷重とストローク(圧縮変形量)の関係を
図5に示した。この結果からも、ともに層間距離が10オングストロームを超えるバーミキュライトとスメクタイトを併用した実施例1は、スメクタイトと、層間距離が10オングストローム以下であるマイカを併用した比較例1よりも圧縮強度が高いことがわかる。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。