(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-31145(P2018-31145A)
(43)【公開日】2018年3月1日
(54)【発明の名称】構造物用免震支承装置及び構造物用免震支承装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20180202BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20180202BHJP
【FI】
E01D19/04 B
E01D1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-162629(P2016-162629)
(22)【出願日】2016年8月23日
(11)【特許番号】特許第6064075号(P6064075)
(45)【特許公報発行日】2017年1月18日
(71)【出願人】
【識別番号】503121088
【氏名又は名称】株式会社ビービーエム
(71)【出願人】
【識別番号】000170772
【氏名又は名称】黒沢建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 亮平
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA37
2D059GG02
2D059GG17
(57)【要約】
【課題】構造が簡単で、製造組み立てが容易で免震効果の大きな構造物用免震支承装置及び構造物用免震支承装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の構造物用免震支承装置は、上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した中央積層ゴム体と、前記中央積層ゴム体に対してリング状の空間を形成して配置され上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した外側積層ゴム体と、前記中央積層ゴム体と前記外側積層ゴム体との間のリング状空間に配置される硬質粒状物又は硬質粉状体が分散したウレタン成形体からなる減衰部材と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した中央積層ゴム体と、
前記中央積層ゴム体に対してリング状の空間を形成して配置され上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した外側積層ゴム体と、
前記中央積層ゴム体と前記外側積層ゴム体との間のリング状空間に配置される硬質粒状物又は硬質粉状体が分散したウレタン成形体からなる減衰部材と、
を備えることを特徴とする構造物用免震支承装置。
【請求項2】
前記ウレタン成形体からなる減衰部材が、鉄、アルミニウム、セラミックのいずれか1種又は2種以上組み合わせで含有量1〜18体積%、粒径1〜20mmの硬質粒状物又は硬質粉状体を含むことを特徴とする請求項1に記載の構造物用免震支承装置。
【請求項3】
上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した中央積層ゴム体の外周部にリング状の空間をあけて上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した外側積層ゴム体を配置し、前記中央積層ゴム体と前記外側積層ゴム体との間のリング状空間に硬質粒状材又は硬質粉状材を混合したウレタン成形材料を充填し硬質粒状材又は硬質粉状材が分散したウレタン成形体からなる減衰部材を形成することを特徴とする構造物用免震支承装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、橋梁等の構造物の上部構造と下部構造との間に設置される構造物用免震支承装置及び構造物用免震支承装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや橋梁などの構造物において地震の際の揺れを抑制するため、免震支承装置が使用される場合がある。この免震支承装置として、金属などの剛性板とゴムなどの弾性板とを交互に積層した積層弾性体の中央部に円筒状の中空部を形成し、前記中空部に減衰部材として円柱状の鉛体(鉛プラグ)が嵌め込まれるものが提案されている。
【0003】
このような構造の免震支承装置は、積層されたゴム等の弾性体のせん断変形時には内部の鉛プラグの塑性変形によりエネルギーを吸収することができる。従って、この免震支承装置を構造物と基礎との間に配置しておくことで、地震の際、積層されたゴム等により構造物の固有周期を地震の周期からずらすとともに、減衰部材により縦揺れや横揺れのエネルギーが吸収され、構造物の破壊を防ぐ効果が得られる。
【0004】
近年、上記のような免震支承装置の減衰部材に関しては、環境負荷の観点から鉛以外の代替材料が望まれる傾向にある。鉛以外の減衰部材として、錫などの降伏点の低い材料からなる減衰部材を用いた免震支承装置が提案されている。
【0005】
一方、中空部にガラスビーズ、鉄等の硬質粒状物を最密充填した免震支承装置が提案されている。このような免震構造体では、中空部に最密充填された硬質粒状物同士の摩擦力により減衰効果が発揮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−190391号公報
【特許文献2】特開2004−169894号公報
【特許文献3】特開平9−177367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、錫などの低降伏点材料により連続体として作製した減衰部材を用いた場合、繰返し変形に対して減衰部材に多数の亀裂58が発生し易く、繰り返し耐久性が低いという問題がある。また、ガラスビーズ等の硬質粒状物は地震等の際に粒状物同士が摩擦し合うことにより破壊され易く、減衰効果が大きく低下して次の地震発生時に十分なエネルギー吸収を発揮できないおそれがある。
【0008】
本発明は、構造物用免震支承装置の製造方法及び構造物用免震支承装置は、前記従来技術の持つ問題点を解決する、構造が簡単で、製造組み立てが容易で免震効果の大きな構造物用免震支承装置及び構造物用免震支承装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構造物用免震支承装置は、前記課題を解決するために、上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した中央積層ゴム体と、前記中央積層ゴム体に対してリング状の空間を形成して配置され上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した外側積層ゴム体と、前記中央積層ゴム体と前記外側積層ゴム体との間のリング状空間に配置される硬質粒状物又は硬質粉状体が分散したウレタン成形体からなる減衰部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の構造物用免震支承装置は、前記ウレタン成形体からなる減衰部材が、鉄、アルミニウム、セラミックのいずれか1種又は2種以上組み合わせで含有量1〜18体積%、粒径1〜20mmの硬質粒状物又は硬質粉状体を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の構造物用免震支承装置の製造方法は、上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した中央積層ゴム体の外周部にリング状の空間をあけて上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した外側積層ゴム体を配置し、前記中央積層ゴム体と前記外側積層ゴム体との間のリング状空間に硬質粒状材又は硬質粉状材を混合したウレタン成形材料を充填し硬質粒状材又は硬質粉状材が分散したウレタン成形体からなる減衰部材を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した中央積層ゴム体と、前記中央積層ゴム体に対してリング状の空間を形成して配置され上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した外側積層ゴム体と、前記中央積層ゴム体と前記外側積層ゴム体との間のリング状空間に配置される硬質粒状物又は硬質粉状体が分散したウレタン成形体からなる減衰部材と、を備えることで、地震時に作用するせん断変形により、減衰部材を構成する硬質粒状材又は硬質粉状材が分散したウレタン成形体中の硬質粒状材又は硬質粉状材がウレタンと摩擦を起こすことで地震エネルギーを減衰することが可能となる。
ウレタン成形体からなる減衰部材が、鉄、アルミニウム、セラミックのいずれか1種又は2種以上組み合わせで含有量が1〜18体積%、粒径1〜20mmの硬質粒状物又は硬質粉状体を含むことで、硬質粒状材又は硬質粉状材を環境負荷が小さい材料とし、硬質粒状材又は硬質粉状材同士が摩擦、衝突する割合が少ないので硬質粒状材又は硬質粉状材が破壊されないので減衰性能を長期間維持することが可能となり、体積率、粒径の最適化を図り、ウレタン成形体中の応力集中点を多数点在させることにより、積層ゴム体のせん断変形によってウレタン成形体からなる減衰部材全体を均一にせん断変形させることが可能となる。
上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した中央積層ゴム体の外周部にリング状の空間をあけて上下に上下連結鋼板を配置した補強鋼板とゴムとを交互に積層した外側積層ゴム体を配置し、前記中央積層ゴム体と前記外側積層ゴム体との間のリング状空間に硬質粒状材又は硬質粉状材を混合したウレタン成形材料を充填し硬質粒状材又は硬質粉状材が分散したウレタン成形体からなる減衰部材を形成することで、減衰部材をリング状空間に挿入配置する工程を省略することができ効率のよい免震支承製造方法とすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図により説明する。
図1〜
図4は、本発明の構造物用免震支承装置1の一実施形態を示す縦断面図である。
【0015】
構造物用免震支承装置1は、平面視円形の中央積層ゴム体2を備えている。中央積層ゴム体2は、ゴム層3と補強鋼板4を交互に鉛直方向に複数毎積層し、上下に上連結鋼板5と下連結鋼板6を配置し、加硫成形により一体化して形成される。
【0016】
中央積層ゴム体2の外側に中央積層ゴム体2に対して所定間隔のリング状空間12を開けてリング状の外側積層ゴム体7を配置する。外側積層ゴム体7は、ゴム層8と補強鋼板9を交互に鉛直方向に複数毎積層し、上下に上連結鋼板10と下連結鋼板11を配置し、加硫成形により一体化して形成される。
【0017】
中央積層ゴム体2の下連結鋼板6の両端にリング状の下押え型枠13を載置するための段部6aが形成される。また、外側積層ゴム体7の下連結鋼板11の内側にリング状の下押え型枠13を載置するための段部11aが形成される。
【0018】
中央積層ゴム体2の上連結5の両端にリング状の上押え型枠14を載置するための段部5aが形成される。また、外側積層ゴム体7の上連結鋼板10の内側にリング状の上押え型枠14を載置するための段部10aが形成される。
【0019】
図4は、中央積層ゴム体2と外側積層ゴム体7との間のリング状空間12に減衰部材15を形成する第一工程を示す図である。この工程では、中央積層ゴム体2の下連結鋼板6に形成した段部6aと外側積層ゴム体7の下連結鋼板11に形成した段部11aに下押え型枠13を載置し固定ボルト16で固定する。
【0020】
減衰部材15を構成するウレタン成形体を形成するため、ポリオール、イソシアネートの主原料に触媒、発泡剤、整泡剤等と環境負荷の少ない鉄、アルミニウム、セラミックのいずれか1種又は2種以上組み合わせた硬質粒状物又は硬質粉状体を混合した材料をリング状空間12の上部から充填する。
【0021】
硬質粒状物又は硬質粉状体のウレタン成形体中の含有率を1〜18体積%、とする。1体積%未満では、ウレタン成形体からなる減衰材の塑性変形能の改善効果が不十分であり、18体積%超ではウレタン組成物の含有率が減少し、硬質粒状物又は硬質粉状体同士の摩擦により振動エネルギーの減衰効果が十分に得られないためである。
【0022】
硬質粒状物又は硬質粉状体の粒径を1〜20mmとする。硬質粒状物又は硬質粉状体の粒径が1mm未満であると大きさが不十分であり応力集中点として機能しない。一方、硬質粒状物又は硬質粉状体の粒径球体が20mm超であるとウレタン成形体からなる減衰部材15に硬質粒状物又は硬質粉状体を均一に分散させることが困難となる。
【0023】
図3は、リング状空間12への上記混合材料の充填が終了すると、中央積層ゴム体2の上連結鋼板5に形成した段部5aと外側積層ゴム体7の上連結鋼板10に形成した段部10aに上押え型枠14を載置し固定ボルト16で固定する。
【0024】
この状態でウレタン成形混合物を成形すると発泡により体積が増加するがリング状空間12の上下が上押え型枠14と下押え型枠13で閉じられているため減衰部材15は加圧成形の状態で成形される。
【0025】
ここまでの製造工程は、工場で実施される。出来上がった構造物用免震支承装置1は、現場に搬送され、上部構造と下部構造の間に設置される。
【0026】
このように構成された構造物用免震支承装置1は、地震時に作用するせん断変形により減衰部材15中の硬質粒状材又は硬質粉状材がウレタンと摩擦し地震エネルギーを減衰する。硬質粒状材又は硬質粉状材同士が摩擦、衝突する割合が少ないので、硬質粒状材又は硬質粉状材が破壊しないので長期的に減衰性能を維持することができる。
【0027】
また、減衰部材15の中央ゴム体2と外側ゴム体7間のリング状空間12への挿入配置の工程を省略することができ効率のよい免震支承の製造方法とすることが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1:構造物用免震支承装置、2:中央積層ゴム体、3:ゴム層、4:補強鋼板、5:上連結鋼板、5a:段部、6:下連結鋼板、6a:段部、7:外側積層ゴム体、8:ゴム層、9:補強鋼板、10:上連結鋼板、10a:段部、11:下連結鋼板、11a:段部、12:リング状空間、13:下押え型枠、14:上押え型枠、15:減衰部材、16:固定ボルト