(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-33341(P2018-33341A)
(43)【公開日】2018年3月8日
(54)【発明の名称】シナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20180209BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20180209BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20180209BHJP
【FI】
A23L2/26
A23L2/02 A
A23L2/00 B
A23L2/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-168044(P2016-168044)
(22)【出願日】2016年8月30日
(71)【出願人】
【識別番号】311002447
【氏名又は名称】キリン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(72)【発明者】
【氏名】工藤 あずさ
(72)【発明者】
【氏名】若林 英行
(72)【発明者】
【氏名】引地 まき
(72)【発明者】
【氏名】茶木 香保里
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LG01
4B117LG03
4B117LG05
4B117LK06
4B117LL00
4B117LL01
(57)【要約】
【課題】ソフトフルーツの果汁にシナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料を提供するに際して、果汁香味とシナモン香味との香味上の不調和を改善して、香味の調和された、嗜好性の高いシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料を提供すること。
【解決手段】ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料において、該飲料に、カルダモン抽出物或いはカルダモン香料を添加して、飲料中のカルダモン香料成分である1,8−シネオールが0.2ppm〜5.0ppmの濃度であるように調整することにより、ソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味が調和されたシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料において、飲料中のカルダモンの香味成分である1,8−シネオールが0.2ppm以上の濃度であるように調整されたことを特徴とするソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味が調和されたシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料。
【請求項2】
ソフトフルーツ果汁の1,8−シネオール濃度の調整が、カルダモン、カルダモン抽出物、或いはカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加して、飲料中の1,8−シネオールの含有量が0.2ppm〜5.0ppmの濃度であるように調整されたことを特徴とする請求項1に記載のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料。
【請求項3】
ソフトフルーツ果汁のシナモン香味の付与が、シナモン、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを添加して、飲料中のシンナミックアルデヒドの含有量が1ppm以上に調整されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料。
【請求項4】
ソフトフルーツ果汁飲料の原料フルーツが、ブドウ、リンゴ、もも、及び、アンズからなる群より選択される1以上のフルーツであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料。
【請求項5】
シナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料が、容器詰めソフトフルーツ果汁飲料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料。
【請求項6】
ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料の製造において、該飲料原料に、カルダモン、カルダモン抽出物、或いはカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加して、飲料中の1,8−シネオールが0.2ppm〜5.0ppmの濃度となるように調整することを特徴とするソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味が調和されたシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料の製造方法。
【請求項7】
ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料の製造において、該飲料原料に、カルダモン、カルダモン抽出物或いはカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加して、飲料中の1,8−シネオールが0.2ppm〜5.0ppmの濃度となるように調整することにより、ソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味を調和させることを特徴とするシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料の香味の改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料において、該飲料の調製において、カルダモンの香味成分である1,8−シネオールを含有させることにより、果汁香味とシナモン香味との香味上の不調和を改善して、香味が調和され、嗜好性が増大したシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料、及び、該飲料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果汁飲料は、果実由来の新鮮な風味と適度な甘酸味、爽やかな咽喉ごしを持っており、その自然な風味と味覚から、嗜好性の高い飲料として愛されている。また、近年の健康志向の高まりから、天然成分の飲料として、健康飲料としての嗜好性も高い。果汁飲料は、原料となる果実の種類の豊富さから、それぞれの果実の特徴のある味わいを楽しめる各種のものが提供されている。果汁飲料の調製は、各種果実の果汁等を直接用いる方法や、果実フレーバー(香料)を用いて、果実香味を付与する方法等各種方法が用いられている。果汁飲料には、ぶどう、りんご、もも、あんずのような、柑橘系以外の果実であるソフトフルーツを原料果実としたソフトフルーツ果汁飲料も、果汁飲料の主要な位置を占め、容器詰め果汁飲料等として市場に提供されている。
【0003】
果汁飲料は、原料となる果実の自然な香味を生かす観点から、原料果実の香味をそのまま生かす方法で製造するのが基本となっている。しかしながら、果汁飲料の果汁感を補強する意味で、果汁以外の添加成分を添加する方法も行なわれている。例えば、特開平9−187259号公報には、果汁飲料の調製に際して、α化澱粉を添加することにより、果汁飲料にのどごし感や、腹持ち感を付与する方法が、特開2005−87301号公報には、果汁飲料の調製に際して、ローカストビーンガム、グアガム、キサンタンガム、及び、ペクチンのような増粘多糖類を添加して、果汁飲料のゲル化を抑制し、とろみを保持する方法が、特開2013−27328号公報には、マンゴー果実の溶媒抽出物を添加して、果汁飲料の自然な風味と、コク・ボリュ−ムを付与し、飲料の果汁感を向上させる方法が、特開2014−54192号公報には、C16、cis−9−不飽和脂肪酸モノカルボン酸であるパルミトレイン酸を果汁感増強剤として添加して、無、低果汁飲料の果汁感を増強する方法が開示されている。
【0004】
また、果汁飲料の調製に際して、果実香味とは異なる香味成分を添加して、香味上特徴のある果汁飲料を調製する方法も開示されている。例えば、特開2002−119264号公報には、果実入り飲料にメントール、及び、酢酸メンチル、乳酸メンチルのような有機酸メントールエステルを含有させることにより、口腔中の冷涼感を強く持続的に体感でき、かつ加温状態で保存した場合にも冷涼感の減少が抑制される果実飲料を製造する方法が、特開2005−143461号公報には、果汁含有飲料に、(a)メントール、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル及びユーカリプタスオイルからなる群より選ばれる1種以上の清涼感物質と、(b)3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−l−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−l−メントキシエタン−1−オール、3−l−メントキシプロパン−1−オール及び4−l−メントキシブタン−1−オールからなる群より選ばれる1種以上の冷感剤物質とを含有させることにより、さっぱり感を持続的に与えられ、嗜好性が高く、かつ長期加温状態で保存した場合にもさっぱり感の減少が抑制される果汁含有飲料を製造する方法が開示されている。該開示のものは、メントールのような香味成分を含有させることにより、果汁飲料に特徴のある香味を付与するものであるが、果汁飲料の調製に際して、各種合成香料(フレーバー)や天然香料(フレーバー)を配合して、果汁飲料に香味を付与すること自体は、従来より提案され、特に新規なものではないが(特開2005−143461号公報、段落[0036]〜[0050])、果汁飲料の香味を生かし、該飲料に香料(フレーバー)成分を添加して、両者の調和のとれた、特徴のある香味を有する果汁飲料を提供するには、更なる課題の解決が必要となる。
【0005】
他方で、飲食品等に特有の香味を付与する香味成分として、古くより利用されている香辛料として、シナモンが知られている。シナモンは、特有の香味を有する香辛料であり、飲料においても利用され、シナモンの独特の香味に嗜好性を持たせた飲料として、古くから消費者に好まれているところである。また、近年はシナモン自体が持つ健康機能も報告されている。シナモンを飲料の調製に用いた例として、例えば、特開平8−38503号公報には、シナモン入りコーヒー飲料が、特開2004−329021号公報には、シナモン入り紅茶飲料が開示されている。また、特開2003-144086号公報及び特開2005−304442号公報には、飲料等の甘味料として用いられるスクラロースのような高甘味度甘味料の風味、味覚の改善のために、シナモンのようなフレーバーを用いることが開示されている。
【0006】
上記のとおり、シナモンは、香味成分として、嗜好性の高い香味成分であり、例えば、ソフトフルーツ果汁飲料の調製に際して、該香味成分を用いることは、特徴のある嗜好性の高い果汁飲料を提供する上で、望むべきところであるが、ソフトフルーツ果汁飲料の調製に際して、シナモンの香味を付与すると、ソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味が、それぞれ飲用後の異なったタイミングで感じられるため、飲料全体の香味の調和が失われてしまい、味覚上、不調和で、嗜好性が損なわれた飲料となる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−38503号公報。
【特許文献2】特開平9−187259号公報。
【特許文献3】特開2002−119264号公報。
【特許文献4】特開2003-144086号公報。
【特許文献5】特開2004−329021号公報。
【特許文献6】特開2005−87301号公報。
【特許文献7】特開2005−304442号公報。
【特許文献8】特開2005−143461号公報。
【特許文献9】特開2013−27328号公報。
【特許文献10】特開2014−54192号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ソフトフルーツ果汁飲料に、香味の異なる香味成分を添加して、新タイプの嗜好性ソフトフルーツの果汁飲料を提供することにあり、特に、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料を提供するに際して、該果汁飲料の調製において問題となる、果汁香味とシナモン香味との香味上の不調和を改善して、香味の調和された、嗜好性の高いシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ソフトフルーツ果汁飲料に、香味の異なる香味成分を添加して、新タイプの嗜好性ソフトフルーツの果汁飲料を提供する方法について検討する中で、該果汁飲料への付与香味としてシナモンに注目し、特に、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料を提供するに際して、該果汁飲料の調製において問題となる、果汁香味とシナモン香味との香味上の不調和を改善する方法について鋭意検討する中で、ソフトフルーツ果汁とシナモンの香味に加えて、「カルダモン」の香味成分を特定濃度で含有させると、果汁香味とシナモン香味との香味上の不調和が改善され、飲料全体の香味の調和が図られた、シナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料を調製することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料において、該飲料中のカルダモン香味成分である1,8−シネオールが0.2ppm以上の濃度であるように調整されたことを特徴とするソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味が調和されたシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料からなる。本発明は、該飲料を調製することにより、香味の調和された、新タイプの嗜好性の高いシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料を提供することができる。
【0011】
本発明において、ソフトフルーツ果汁のシナモン香味の付与は、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを添加して、飲料中のシンナミックアルデヒドの含有量が1ppm以上に調整される。好ましい、シンナミックアルデヒドの含有量としては、1〜100ppm、更に好ましくは、10〜90ppm、特に好ましくは、20〜60ppmの含有量を挙げることができる。
【0012】
本発明において、ソフトフルーツ果汁飲料の原料フルーツである「ソフトフルーツ」とは、柑橘系以外の果実を指すものと定義することができ、ブドウ、リンゴ、もも、アンズ、すいか、メロン、柿、いちご、バナナ、なし、ライチ、マンゴー、パインアップル、ベリー等を挙げることができる。特に好ましい原料フルーツとしては、ブドウ、リンゴ、もも、及び、アンズからなる群より選択される1以上のフルーツを挙げることができる。
【0013】
本発明のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料は、PETボトルのような容器詰めソフトフルーツ果汁飲料として調製することができる。
【0014】
本発明は、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料の製造において、該飲料原料液に、カルダモン、カルダモン抽出物或いはカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加して、飲料中の1,8−シネオールが0.2ppm〜5.0ppmの濃度となるように調整することを特徴とするソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味が調和されたシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料の製造方法の発明を包含する。
【0015】
また、本発明は、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料の製造において、該飲料原料液に、カルダモン、カルダモン抽出物或いはカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加して、飲料中の1,8−シネオールが0.2ppm〜5.0ppmの濃度となるように調整することにより、ソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味を調和させることを特徴とするシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料の香味の改善方法の発明を包含する。
【0016】
すなわち、具体的には本発明は、(1)ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料において、飲料中のカルダモンの香味成分である1,8−シネオールが0.2ppm以上の濃度であるように調整されたことを特徴とするソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味が調和されたシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料や、(2)ソフトフルーツ果汁の1,8−シネオール濃度の調整が、カルダモン、カルダモン抽出物、或いはカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加して、飲料中の1,8−シネオールの含有量が0.2ppm〜5.0ppmの濃度であるように調整されたことを特徴とする上記(1)に記載のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料や、(3)ソフトフルーツ果汁のシナモン香味の付与が、シナモン、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを添加して、飲料中のシンナミックアルデヒドの含有量が1ppm以上に調整されたことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料や、(4)ソフトフルーツ果汁飲料の原料フルーツが、ブドウ、リンゴ、もも、及び、アンズからなる群より選択される1以上のフルーツであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料や、(5)シナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料が、容器詰めソフトフルーツ果汁飲料であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料からなる。
【0017】
また、本発明は、(6)ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料の製造において、該飲料原料に、カルダモン、カルダモン抽出物、或いはカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加して、飲料中の1,8−シネオールが0.2ppm〜5.0ppmの濃度となるように調整することを特徴とするソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味が調和されたシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料の製造方法や、(7)ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料の製造において、該飲料原料に、カルダモン、カルダモン抽出物或いはカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加して、飲料中の1,8−シネオールが0.2ppm〜5.0ppmの濃度となるように調整することにより、ソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味を調和させることを特徴とするシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料の香味の改善方法からなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料において、該果汁飲料の果汁香味とシナモン香味との香味の調和された、新タイプの嗜好性の高いシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料において飲料中のカルダモンの香味成分である1,8−シネオールが0.2ppm以上mの濃度であるように調整することにより、ソフトフルーツ果汁の香味とシナモンの香味が調和されたシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料を提供することからなる。本発明においては、該飲料を調製することにより、香味の調和された、新タイプの嗜好性の高いシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料を提供する。
【0020】
本発明のソフトフルーツ果汁飲料の原料フルーツである「ソフトフルーツ」とは、柑橘系以外の果実を指すものと定義することができ、ブドウ、リンゴ、もも、アンズ、すいか、メロン、柿、いちご、バナナ、なし、ライチ、マンゴー、パインアップル、ベリー等を挙げることができる。ソフトフルーツ果汁飲料の特に好ましい原料フルーツとしては、ブドウ、リンゴ、もも、及び、アンズからなる群より選択される1以上のフルーツを挙げることができる。本発明のソフトフルーツ果汁飲料の調製において、飲料中の果汁の量は、従来の果汁飲料のものと特に変わるところはないが、例えば、果汁率(ストレート換算)では、0.5〜100%のものが、好ましくは、1.5〜90%のものが、特に好ましくは2〜75%のものが、用いられる。
【0021】
本発明のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料は、容器詰め果汁飲料として調製することができ、該容器詰め果汁飲料としては、PETボトル等のプラスチック容器詰め果汁飲料として提供することができる。また、本発明のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料は、加温販売用飲料として調製し、提供することができる。
【0022】
本発明のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料は、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料として調製される。シナモンは、クスノキ科の常緑樹(学名:Cinnamonum verm)であり、その樹皮から作られる香辛料の名前として知られている。シナモン樹皮から得られる精油(桂皮油)には、芳香成分として、約90%のシンナミックアルデヒド(シンナムアルデヒド)が含有される。シナモン抽出物の調製は、公知の方法を用いることができるが(特開2004−329021号公報)、通常は、粉砕した樹皮を50〜95℃程度の温度で、熱水抽出することにより調製することができる。また、市販の精油製品や、フレーバーとして入手することもできる。
【0023】
本発明のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料においては、フルーツ果汁へのシナモン香味の付与は、シナモン、シナモン抽出物或いはシナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを添加して、飲料中のシンナミックアルデヒドの含有量が1ppm以上に調整される。好ましい、シンナミックアルデヒドの含有量としては、1〜100ppm、更に好ましくは、10〜90ppm、特に好ましくは、20〜60ppmの含有量を挙げることができる。
【0024】
本発明におけるシナモンは、クスノキ科の常緑樹(学名:Cinnamonum verm)の樹皮から作られる香辛料そのものを意味し、特に乾燥させ粉末にした状態のものが好ましい。また、本発明におけるシナモン抽出物は、シナモンを水、熱水、有機溶媒等で抽出したものを意味し、特にシナモンの天然香料、精油、エキスが好ましい。また、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを添加する場合、シンナミックアルデヒドを含有する合成香料を添加することが好ましい。
【0025】
果汁飲料中のシンナミックアルデヒドの含有量の調製は、予め、添加するシナモン抽出物或いはシナモンフレーバー中の香味成分であるシンナミックアルデヒドの濃度を、ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME−GC−MS)のような分析法により、求めておき、該シナモン抽出物或いはシンナミックアルデヒドを果汁飲料中に添加した場合のシンナミックアルデヒドの濃度を計算して調整することができる。通常用いられるシナモン抽出物(精油)の含有量及び添加量としては、果汁飲料の0.0001〜1.0%、好ましくは、0.001〜0.5%、特に好ましくは、0.01〜0.1%を挙げることができる。また別の態様では、添加するシナモンから溶出するシンナミックアルデヒドの量をガスクロマトグラフ質量分析法(SPME−GC−MS)のような分析法で確認しておき、果汁飲料中に添加した場合のシンナミックアルデヒドの濃度を計算して調整することができる。
【0026】
本発明のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料においては、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料に、カルダモン抽出物或いはカルダモン香料を添加して、飲料中のカルダモン香料成分である1,8−シネオールが0.2ppm以上の濃度であるように調整される。カルダモン(学名:Elettaria cardamomum)は、南アジアから東南アジアにかけての地域を原産とするショウガ科の多年草である。カルダモンからの抽出物は、1,8−シネオールを主な香味成分として含有している。カルダモン自体は、最も古くから知られているスパイスの一つである。カルダモン抽出物の調製は、カルダモンからの超臨界流体抽出法(CO
2蒸留法)等、公知の方法により調製することができ、また、市販のカルダモン香料(精油)を用いることもできる。
【0027】
本発明のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料においては、1,8−シネオールが、0.2ppm以上の濃度であるように調整されるが、該調整の方法自体は特に限定されない。好ましい態様の一例としては、フルーツ果汁へのカルダモン、カルダモン抽出物或いはカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加して、飲料中のカルダモン香料成分である1,8−シネオールが0.2ppm以上の濃度であるように調整される。好ましくは0.2〜5.0ppm、特に好ましくは、0.5〜4.0ppmに調整される。1,8−シネオールに対するシンナミックアルデヒドの含有量比としては、500以下、好ましくは、500〜5、更に好ましくは450〜50、最も好ましくは300〜100が採用される。
【0028】
本発明におけるカルダモンは、ショウガ科の多年草であるカルダモン(学名:Elettaria cardamomum)そのものを意味し、特に乾燥させ粉末にした状態のものが好ましい。また、本発明におけるカルダモン抽出物は、シナモンを水、熱水、有機溶媒等で抽出したものを意味し、特にカルダモンの天然香料、精油、エキスが好ましい。また、カルダモンの香味成分である1,8−シネオールを添加する場合、1,8−シネオールを含有する合成香料を添加することが好ましい。
【0029】
果汁飲料中のシンナミックアルデヒドの含有量の調製は、予め、添加するカルダモン抽出物或いはカルダモン香料中の香味成分である1,8−シネオールの濃度を、ガスクロマトグラフ質量分析法(SPME−GC−MS)のような分析法により、求めておき、該カルダモン抽出物或いはカルダモン香料を果汁飲料中に添加した場合の香味成分である1,8−シネオールの濃度を計算して調整することができる。果汁飲料中のカルダモン抽出物の含有量及び添加量としては、0.01〜1.0%、好ましくは、0.01〜0.5%、特に好ましくは、0.01〜0.1%が採用される。また別の態様では、添加するカルダモンから溶出する1,8−シネオールの量をガスクロマトグラフ質量分析法(SPME−GC−MS)のような分析法で確認しておき、果汁飲料中に添加した場合のシンナミックアルデヒドの濃度を計算して調整することができる。
【0030】
本発明のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料の製造においては、該ソフトフルーツ果汁飲料の製造に際して、所定量のシナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させる点、及び、所定量のカルダモンの香味成分である1,8−シネオールを含有させる点を除いて、通常のソフトフルーツ果汁飲料の製造方法と変わるところはない。本発明においては、本発明のシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料における香味を変更しない範囲で、通常のソフトフルーツ果汁飲料の製造において用いられている各種添加剤等を用いることができる。
【0031】
以下に実施例をもって、本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
[果汁(ブドウ果汁)飲料へのシナモンフレーバーの付与試験]
【0033】
<試験方法>
表1に示す果汁率のブドウ果汁含有飲料に、シナモンフレーバーをそれぞれ0.06%添加し、試験区1〜7を調整した。6名のパネラーが表2に示す基準に則り評価を行い、最も多いパネラーが示した結果を当該試験区の評価として採用した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
<結果>
結果を表1に示す。表1に示されるように、果汁(ブドウ果汁)の果汁率に関わらずシンナミックアルデヒドが存在する場合に、飲料全体の香味の調和が損なわれていることが分かった。また、試験区7ではブドウ果汁の香味が強いために、シナモンの香味を感じにくくなっていた。
【実施例2】
【0037】
[果汁(ブドウ果汁)飲料+シナモンフレーバーへのカルダモンフレーバーの添加試験(I)]
【0038】
<試験方法>
3%の果汁(ブドウ果汁)含有飲料に、シナモンフレーバーを0.06%添加し、カルダモンフレーバーを表3に示す量で添加し、試験区8〜12を調製した。結果を実施例1と同様に評価した。
【0039】
【表3】
【0040】
<結果>
結果を表3に示す。表3に示されるように、カルダモンフレーバーを添加することで香味の調和効果が出ることが分かった。試験区12については、飲料全体の香味としてまとまりはあるが、カルダモンの香味がやや強く感じられるため飲料としての適性に欠ける面があった。
【実施例3】
【0041】
[果汁(リンゴ、杏、桃果汁)飲料+シナモンフレーバーへのカルダモンフレーバーの添加試験(II)]
【0042】
<試験方法>
3%の果汁(リンゴ、杏、桃果汁)含有飲料に、シナモンフレーバーを0.06%添加し、カルダモンフレーバーを表4(りんご果汁の場合)、表5(杏果汁の場合)、及び表6(桃果汁の場合)に示す量で添加し、試験区13〜27を調整した。結果を実施例1と同様に評価した。
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
結果を表4(りんご果汁の場合)、表5(杏果汁の場合)、及び表6(桃果汁の場合)に示す。表4〜6に示されるように、表1(ブドウ果汁)の場合と同様、カルダモンフレーバーを添加することで香味の調和効果が出ることが分かった。試験区17、22、27については、飲料全体の香味としてまとまりはあるが、カルダモンの香味がやや強く感じられるため飲料としての適性に欠ける面があった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ソフトフルーツの果汁に、シナモンの香味成分であるシンナミックアルデヒドを含有させてシナモン香味を付与したソフトフルーツ果汁飲料において、該果汁飲料の果汁香味とシナモン香味との香味の調和された、新タイプの嗜好性の高いシナモン香味付与ソフトフルーツ果汁飲料を提供する。