特開2018-34302(P2018-34302A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-34302円筒状ゴム部材の製造方法及び製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-34302(P2018-34302A)
(43)【公開日】2018年3月8日
(54)【発明の名称】円筒状ゴム部材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20180209BHJP
   B29D 30/26 20060101ALI20180209BHJP
【FI】
   B29D30/30
   B29D30/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-166466(P2016-166466)
(22)【出願日】2016年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】芝野 寿治
【テーマコード(参考)】
4F212
4F215
【Fターム(参考)】
4F212AH20
4F212VA01
4F212VA08
4F212VA11
4F212VD22
4F212VL13
4F212VM06
4F212VP01
4F212VP23
4F215AH20
4F215VA01
4F215VA08
4F215VA11
4F215VD22
4F215VL13
4F215VM06
4F215VP01
4F215VP23
(57)【要約】
【課題】円筒状ゴム部材を変形させることなく回転ドラムから脱型して搬送することができる円筒状ゴム部材の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】円筒状ゴム部材を製造するための円筒状ゴム部材の製造方法であって、回転ドラム1の外表面1aに円筒状ゴム部材9を成型する工程と、円筒状ゴム部材9の外周面9aの全体を覆うように、複数の多孔質吸着パッド31を円筒状ゴム部材9の周方向に隙間なく並べて配置する工程と、多孔質吸着パッド31により円筒状ゴム部材9の外周面9aを吸着する工程と、回転ドラム1を縮径して円筒状ゴム部材9を脱型する工程と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状ゴム部材を製造するための円筒状ゴム部材の製造方法であって、
回転ドラムの外表面に前記円筒状ゴム部材を成型する工程と、
前記円筒状ゴム部材の外周面の全体を覆うように、複数の多孔質吸着パッドを前記円筒状ゴム部材の周方向に隙間なく並べて配置する工程と、
前記多孔質吸着パッドにより前記円筒状ゴム部材の外周面を吸着する工程と、
前記回転ドラムを縮径して前記円筒状ゴム部材を脱型する工程と、を備える円筒状ゴム部材の製造方法。
【請求項2】
前記複数の多孔質吸着パッドを前記円筒状ゴム部材の周方向に隙間なく並べて配置する工程は、
前記円筒状ゴム部材が外表面に成型された前記回転ドラムを、隣り合う前記多孔質吸着パッド同士の間に隙間を設けた前記複数の多孔質吸着パッドの中に配置する工程と、
前記複数の多孔質吸着パッドを前記円筒状ゴム部材の外周面に近付けて接触させる工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の円筒状ゴム部材の製造方法。
【請求項3】
円筒状のゴム部材を製造するための円筒状ゴム部材の製造装置であって、
外表面に前記円筒状ゴム部材が成型される回転ドラムと、
前記円筒状ゴム部材の外周面の全体を覆うように周方向に並べて複数配置される多孔質吸着パッドと、
前記多孔質吸着パッドを前記円筒状ゴム部材の径方向の内外に移動させるパッド駆動装置と、
前記多孔質吸着パッドに吸引力を付与する負圧装置と、を備える円筒状ゴム部材の製造装置。
【請求項4】
前記多孔質吸着パッドは、前記円筒状ゴム部材の外周面に沿った曲面形状をしていることを特徴とする請求項3に記載の円筒状ゴム部材の製造装置。
【請求項5】
前記回転ドラムを移動させるドラム移動装置を備え、
前記ドラム移動装置は、外表面に前記円筒状ゴム部材を成型できるように複数の前記多孔質吸着パッドの外に前記回転ドラムを移動させ、かつ外表面に成型された前記円筒状ゴム部材を前記多孔質吸着パッドで吸着できるように複数の前記多孔質吸着パッドの中に前記ドラムを移動させることを特徴とする請求項3又は4に記載の円筒状ゴム部材の製造装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状ゴム部材を製造するための円筒状ゴム部材の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの構成部材として、例えばインナーライナーのような円筒状のゴム部材が存在する。このような円筒状ゴム部材は、回転ドラムの外表面に成型される。回転ドラムの外表面に成型された円筒状ゴム部材は、回転ドラムから脱型され、次の工程へと搬送される。
【0003】
円筒状ゴム部材を搬送するための方法としては、円筒状ゴム部材を複数の吸着パッドを有する吸着装置により吸着し、その吸着状態で搬送作業を行う方法が公知である。例えば、下記特許文献1には、水平方向に延長する支持体に掛け回された円筒状部材を上側から複数の吸着パッドにより吸着して搬送する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、成型後、収縮力が大きいゴムの場合、通常の吸盤状の吸着パッドで吸着すると、吸着していない部分でゴムの収縮変形が発生してしまう。また、薄肉の円筒状ゴム部材の場合、吸着している部分が吸引力によって変形する可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5423532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、円筒状ゴム部材を変形させることなく回転ドラムから脱型して搬送することができる円筒状ゴム部材の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の円筒状ゴム部材の製造方法は、円筒状ゴム部材を製造するための円筒状ゴム部材の製造方法であって、
回転ドラムの外表面に前記円筒状ゴム部材を成型する工程と、
前記円筒状ゴム部材の外周面の全体を覆うように、複数の多孔質吸着パッドを前記円筒状ゴム部材の周方向に隙間なく並べて配置する工程と、
前記多孔質吸着パッドにより前記円筒状ゴム部材の外周面を吸着する工程と、
前記回転ドラムを縮径して前記円筒状ゴム部材を脱型する工程と、を備えるものである。
【0008】
この構成に係る円筒状ゴム部材の製造方法によれば、回転ドラムの外表面に成型された円筒状ゴム部材の外周面の全体を多孔質吸着パッドにて吸着できるため、円筒状ゴム部材の収縮(変形)を抑え込むことができる。その結果、円筒状ゴム部材を変形させることなく回転ドラムから脱型して搬送することができる。
【0009】
本発明に係る円筒状ゴム部材の製造方法において、前記複数の多孔質吸着パッドを前記円筒状ゴム部材の周方向に隙間なく並べて配置する工程は、
前記円筒状ゴム部材が外表面に成型された前記回転ドラムを、隣り合う前記多孔質吸着パッド同士の間に隙間を設けた前記複数の多孔質吸着パッドの中に配置する工程と、
前記複数の多孔質吸着パッドを前記円筒状ゴム部材の外周面に近付けて接触させる工程と、を含むことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、複数の多孔質吸着パッドにより円筒状ゴム部材の外周面の全体を覆うことができる。
【0011】
また、本発明の円筒状ゴム部材の製造装置は、円筒状のゴム部材を製造するための円筒状ゴム部材の製造装置であって、
外表面に前記円筒状ゴム部材が成型される回転ドラムと、
前記円筒状ゴム部材の外周面の全体を覆うように周方向に並べて複数配置される多孔質吸着パッドと、
前記多孔質吸着パッドを前記円筒状ゴム部材の径方向の内外に移動させるパッド駆動装置と、
前記多孔質吸着パッドに吸引力を付与する負圧装置と、を備えるものである。
【0012】
この構成に係る円筒状ゴム部材の製造装置によれば、回転ドラムの外表面に成型された円筒状ゴム部材の外周面の全体を多孔質吸着パッドにて吸着できるため、円筒状ゴム部材の収縮(変形)を抑え込むことができる。その結果、円筒状ゴム部材を変形させることなく回転ドラムから脱型して搬送することができる。
【0013】
本発明に係る円筒状ゴム部材の製造装置は、前記多孔質吸着パッドは、前記円筒状ゴム部材の外周面に沿った曲面形状をしていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、多孔質吸着パッドの全面を円筒状ゴム部材の外周面に対して接触させることができるため、多孔質吸着パッドにより円筒状ゴム部材の外周面を適切に吸着できる。
【0015】
本発明に係る円筒状ゴム部材の製造装置は、前記回転ドラムを移動させるドラム移動装置を備え、前記ドラム移動装置は、外表面に前記円筒状ゴム部材を成型できるように前記複数の多孔質吸着パッドの外に前記回転ドラムを移動させ、かつ外表面に成型された前記円筒状ゴム部材を前記多孔質吸着パッドで吸着できるように前記複数の多孔質吸着パッドの中に前記ドラムを移動させるようにしてもよい。
【0016】
この構成によれば、複数の多孔質吸着パッドにより円筒状ゴム部材の外周面の全体を覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】円筒状ゴム部材の製造装置の構成の一例を示す模式図
図2】円筒状ゴム部材の製造装置の正面図
図3】円筒状ゴム部材の製造方法の一例を示す概略工程図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は円筒状ゴム部材の製造装置の構成の一例を示す模式図である。図2は、図1に示す製造装置の主要部を正面から見た図である。
【0019】
本発明の製造方法及び製造装置は、円筒状ゴム部材9を製造するためのものである。円筒状ゴム部材9としては、円筒状をしたゴム部材であれば特に限定されないが、本発明は、薄肉のシート状ゴムの端部同士を接合して円筒状に成形したゴム部材の製造に有用であり、インナーライナー等のタイヤ構成部材の製造に特に有用である。なお、薄肉のシート状ゴムは、公知の押出機により押出成形されるか又は公知のカレンダーロールにより圧延される。
【0020】
製造装置は、回転ドラム1と脱型装置2を備えている。円筒状ゴム部材9は、回転ドラム1の外表面1aに成型される。回転ドラム1の外表面1aに成型された円筒状ゴム部材9は、脱型装置2により脱型され、次の工程へと搬送される。
【0021】
回転ドラム1は、サーボモータにより回転可能に構成されている。回転ドラム1の回転軸は、水平方向に延びている。回転ドラム1は、支持台10に支持されている。支持台10は、回転ドラム1の回転軸方向に移動することができ、これにより、回転ドラム1を脱型装置2に向かって前進させたり後退させたりすることができる。
【0022】
回転ドラム1は、円筒状をしており、周方向に分割された複数のセグメント11で構成されている。本実施形態では、12個のセグメント11で構成されているが、これに限定されない。各セグメント11の外周面は、円弧状をしている。
【0023】
セグメント11は、セグメント移動装置12によって回転ドラム1の径方向の内側及び外側に向かって移動できる。これにより、外表面1aにて円筒状ゴム部材9を成型する際には、隣り合うセグメント11の間の隙間を無くすことができる。一方、円筒状ゴム部材9を脱型する際には、セグメント11を回転ドラム1の径方向内側へ向かって移動させて、回転ドラム1の外径を小さくすることができる。セグメント移動装置12としては、例えばエアー式や油圧式シリンダー、もしくはボールねじ等が挙げられる。
【0024】
脱型装置2は、吸着装置3と、負圧装置4とを備える。吸着装置3は、円筒状をしており、回転ドラム1の外表面1a上にある円筒状ゴム部材9の外周面9aの全体を覆うことができる。
【0025】
吸着装置3は、周方向に複数の吸着部30に分割されている。本実施形態の吸着装置3は、8個の吸着部30に分割されているが、これに限定されない。
【0026】
各吸着部30は、内周側に多孔質吸着パッド31を備える。多孔質吸着パッド31は、円筒状ゴム部材9の外周面9aに沿った曲面形状をしている。本実施形態では、多孔質吸着パッド31の周囲は特にシールされていないが、隣り合う多孔質吸着パッド31の側面同士が接触していればシールされていなくても吸着機能を発揮できる。ただし、多孔質吸着パッド31の周囲は、フィルム等で覆われていてもよく、シール性のある材料が塗布されていてもよい。
【0027】
多孔質吸着パッド31は、多孔質材料で構成されている。多孔質材料としては、多数の気孔を有する、ゴム、プラスチック、セラミック、ウレタンフォーム等が例示される。ただし、多孔質材料は柔軟性を有するものが好ましい。多孔質材料は、空隙率を30〜95%とすることが好ましい。
【0028】
吸着装置3は、各吸着部30を径方向の内外に移動させることのできるピストンシリンダ32(パッド駆動装置の一例)を備える。これにより、吸着装置3は、複数の多孔質吸着パッド31が周方向に隙間なく並んだ縮径状態と、隣り合う多孔質吸着パッド31同士の間に隙間を設けた拡径状態とに変形できる。
【0029】
負圧装置4は、負圧を発生させることができ、吸着装置3に接続されている。負圧装置4は、多孔質吸着パッド31に吸引力を付与することができる。負圧装置4が発生させる負圧は、例えば−0.1〜−1.0kgf/cm程度である。
【0030】
次に、上記の製造装置を用いた円筒状ゴム部材9の製造方法を説明する。本発明の円筒状ゴム部材9の製造方法は、回転ドラム1の外表面1aに円筒状ゴム部材9を成型する工程と、円筒状ゴム部材9の外周面9aの全体を覆うように、複数の多孔質吸着パッド31を円筒状ゴム部材9の周方向に隙間なく並べて配置する工程と、多孔質吸着パッド31により円筒状ゴム部材9の外周面9aを吸着する工程と、回転ドラム1を縮径して円筒状ゴム部材9を脱型する工程と、を備える。
【0031】
図3は、円筒状ゴム部材9の製造工程を模式的に示す図である。初めに、図3(a)のように回転ドラム1の外表面1aに円筒状ゴム部材9を成型する。このとき、回転ドラム1のセグメント11は、隣り合うセグメント11同士の間に隙間が無い。
【0032】
次いで、回転ドラム1を脱型装置2の方向に移動させ、吸着装置3を拡径状態とした脱型装置2にセットする。具体的には、図3(b)に示すように、回転ドラム1を、隣り合う多孔質吸着パッド31同士の間に隙間を設けた複数の多孔質吸着パッド31の中に配置する。
【0033】
次いで、図3(c)に示すように、吸着装置3を縮径状態に変形させて、複数の多孔質吸着パッド31を円筒状ゴム部材9の外表面9aに近付けて接触させる。これにより、円筒状ゴム部材9の外周面9aの全体を覆うように、複数の多孔質吸着パッド31を円筒状ゴム部材9の周方向に隙間なく並べて配置することができる。
【0034】
次いで、負圧装置4により多孔質吸着パッド31に吸引力を付与し、多孔質吸着パッド31により円筒状ゴム部材9の外周面9aを吸着する。
【0035】
次いで、円筒状ゴム部材9の脱型を開始する。回転ドラム1は、初めに図3(d)に示すように複数のセグメント11のうち半分のセグメント11を回転ドラム1の径方向内側へ向かって移動させる。その後、図3(e)に示すように残りの半分のセグメント11を回転ドラム1の径方向内側へ向かって移動させる。これにより、回転ドラム1の外径を小さくして、円筒状ゴム部材9を回転ドラム1の外表面1aから取り外すことができる。このとき、円筒状ゴム部材9の外周面9aの全体が多孔質吸着パッド31にて吸着されているため、円筒状ゴム部材9の収縮(変形)を抑え込んで、成型時の円筒状ゴム部材9の形状を保つことができる。
【0036】
最後に、回転ドラム1を脱型装置2から離れる方向に移動させて、脱型が完了する。回転ドラム1から脱型された円筒状ゴム部材9は、吸着装置3に吸着されたまま、次の工程へと搬送される。次の工程へ搬送された円筒状ゴム部材9は、吸着装置3の吸着を解除することで、次の工程の装置へセットされる。
【0037】
[他の実施形態]
前述の実施形態では、回転ドラム1を移動させて脱型装置2へ向かって前進又は後退をさせているが、脱型装置2を移動させて回転ドラム1へ向かって前進又は後退をさせてもよく、回転ドラム1と脱型装置2の両方を移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 回転ドラム
1a 回転ドラムの外表面
2 脱型装置
3 吸着装置
4 負圧装置
9 円筒状ゴム部材
9a 円筒状ゴム部材の外周面
31 多孔質吸着パッド


図1
図2
図3