特開2018-35510(P2018-35510A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2018-35510あと施工アンカーの施工方法及びあと施工アンカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-35510(P2018-35510A)
(43)【公開日】2018年3月8日
(54)【発明の名称】あと施工アンカーの施工方法及びあと施工アンカー
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20180209BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20180209BHJP
【FI】
   E04G21/12 105Z
   E04B1/41 503F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-166871(P2016-166871)
(22)【出願日】2016年8月29日
(71)【出願人】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501111142
【氏名又は名称】株式会社タチバナ
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】及川 宗敏
(72)【発明者】
【氏名】篠澤 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】八ッ代 雄太
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 大二
(72)【発明者】
【氏名】村上 良樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】成願 正彦
(72)【発明者】
【氏名】南木 清志
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA76
2E125AF01
2E125AG13
2E125BA16
2E125BA23
2E125BB08
2E125BB24
2E125BC06
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA05
2E125EA33
(57)【要約】
【課題】簡単な作業であと施工アンカーを適切な拡開状態で確実に拡開させることができ、作業者以外の者が施工確認を確実に行うことを可能にする。
【解決手段】筒部21とテーパ部22を有し雌ねじ孔23が形成されたインナー部材2と、スリット33で分割された拡開部32を有し筒部21に外装されるアウタースリーブ3から構成されるあと施工アンカー1の施工方法であり、アウタースリーブ3の外径に略対応した径で且つインナー部材2の全長L1に略対応した穿孔深さL2で、コンクリートに穿孔61を形成する工程、インナー部材2を穿孔61の奥まで挿入してインナー部材2の後端面がコンクリート表面62と略面一となることを確認する工程、あと施工アンカー1を穿孔61に奥まで挿入する工程、アウタースリーブ3の後端面がコンクリート表面62と略面一になるまでアウタースリーブ3を打込んで拡開部32を拡開する工程を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後側の筒部と前側のテーパ部を有し、筒部の端面から内部に雌ねじ孔が形成されているインナー部材と、前側にスリットで分割された拡開部を有し、前記筒部に外装されるアウタースリーブとから構成されるあと施工アンカーの施工方法であって、
前記アウタースリーブの外径に略対応した径で且つ前記インナー部材の全長に略対応した深さで、コンクリートに穿孔を形成する第1工程と、
前記アウタースリーブが外装されていない前記インナー部材を前記穿孔の奥まで挿入し、前記インナー部材の後端面が前記コンクリートの表面と略面一となることを確認する第2工程と、
前記アウタースリーブが前記インナー部材に外装されたあと施工アンカーを前記穿孔に奥まで挿入する第3工程と、
前記アウタースリーブの後端面が前記コンクリートの表面と略面一になるまで前記アウタースリーブを打込んで前記拡開部を拡開する第4工程
を備えることを特徴とするあと施工アンカーの施工方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記インナー部材の後端面が前記コンクリートの表面から外側に突出した場合、前記インナー部材を取り出して穿孔深さを深くするように前記穿孔を形成した後、前記アウタースリーブが外装されていない前記インナー部材を前記穿孔の奥まで再度挿入し、前記インナー部材の後端面が前記コンクリートの表面と略面一となることを確認することを特徴とする請求項1記載のあと施工アンカーの施工方法。
【請求項3】
後側の筒部と前側のテーパ部を有し、筒部の端面から内部に雌ねじ孔が形成されているインナー部材と、
前側にスリットで分割された拡開部を有し、前記筒部に外装されるアウタースリーブとから構成され、
設定された穿孔深さに一致するように前記インナー部材の全長が形成され、
前記アウタースリーブが前記インナー部材の前記筒部に着脱自在に外嵌されていることを特徴とするあと施工アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁やトンネル等のコンクリート構造物に設置される雌ねじタイプのあと施工アンカーの施工方法及びあと施工アンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁やトンネル等のコンクリート構造物に対して、電気設備用ケーブルの支持具等の取付物を取り付ける際に、雌ねじタイプのあと施工アンカーが用いられている。図5(a)に従来例の雌ねじタイプのあと施工アンカー11を示す。あと施工アンカー11は、後側の円筒部121と前側のテーパ部122から構成されるインナー部材12を有し、円筒部121の内部、或いは円筒部121の全体とテーパ部122の一部の内部には雌ねじ孔123が形成されている。
【0003】
インナー部材12の外側にはアウタースリーブ13が外装される。アウタースリーブ13は、スリーブ本体131と、スリーブ本体131の前側に設けられる拡開部132を備え、拡開部132は、アウタースリーブ13の前端からスリーブ本体131まで切り込まれたスリット133で分割されて片状に形成されている。アウタースリーブ13は、非拡開状態では拡開部132を円筒部121の外周に配置するようにしてインナー部材12に外装されている。
【0004】
あと施工アンカー11をコンクリート構造物16に固定する際には、図5(a)の非拡開状態のあと施工アンカー11をコンクリート構造物16に形成した穿孔161内にテーパ部122側から挿入し、専用の打込み棒でアウタースリーブ13の後端を打込んで拡開部132をテーパ部122に載せるようにして拡開する。拡開した拡開部132は、図5(b)に示すように、コンクリート構造物16の穿孔161の孔壁に押し付けられるようにして食い込んで固定される。そして、コンクリート構造物16の表面162に隣接して取付物14を配置し、取付物14を貫通するようにしてボルト15をあと施工アンカー11の雌ねじ孔123に螺合することで、取付物14がコンクリート構造物16に取り付けられる。
【0005】
この雌ねじタイプのあと施工アンカー11は、コンクリート構造物16の表面162からボルト等を飛び出させずに固定できるメリットと、インナー部材12に引抜方向の力が作用した場合にインナー部材12のテーパ部122がアウタースリーブ13の拡開部132を追随拡張させるメリットの両方を兼ね備えるものである。尚、同様の雌ねじタイプのあと施工アンカーが特許文献1の第1図及び第2図に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−2469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の雌ねじタイプのあと施工アンカーを施工する際に、穿孔161の深さが足りない場合、図6(a)のように、アウタースリーブ13を表面162から突出しないように穿孔161内に入り込ませて打ち込むことができなくなり、取付物14を表面162に隣接して取り付けることができなくなる。そこで、作業者は斯様な事態を避けるため、穿孔深さが若干余分に深くなるように穿孔161を形成してしまいがちになる。
【0008】
穿孔161を余分に深く形成すると、アウタースリーブ13が表面162から突出する事態は回避できるが、アウタースリーブ13をどこまで打ち込めば拡開部132が適切に拡開しているのか分かりにくくなる。即ち、一般的に、雌ねじタイプのあと施工アンカーの打込み、固定がしっかりと行われたか否かの施工確認は、アンカーを打設する作業者が打込み時の打音や手応えの変化を察知することで為されているが、穿孔深さが深過ぎる場合には作業者が打込み時の打音や手応えの変化を察知しにくくなる。特に作業が行いにくい狭量箇所や上向き施工や交通騒音がある場所等では作業者がこれらの変化を察知し難くなり、作業者の質が施工品質を大きく左右することとなって、場合によっては図6(b)のように拡開部132が拡開不足となる。
【0009】
更に、拡開部132が拡開不足の状態であと施工アンカー11がコンクリート構造物16に施工された場合、施工した作業者以外の施工管理者が確認する際に、外側から見ると一見きちんと施工がなされているように見えることから、施工不良が見逃されるという問題も生ずる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、作業者の質に依拠せず簡単な作業で、あと施工アンカーを適切な拡開状態で確実に拡開させることができると共に、作業者以外の者がアンカー打設状態の施工確認を確実に行うことを可能にする、あと施工アンカーの施工方法及びあと施工アンカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のあと施工アンカーの施工方法は、後側の筒部と前側のテーパ部を有し、筒部の端面から内部に雌ねじ孔が形成されているインナー部材と、前側にスリットで分割された拡開部を有し、前記筒部に外装されるアウタースリーブとから構成されるあと施工アンカーの施工方法であって、前記アウタースリーブの外径に略対応した径で且つ前記インナー部材の全長に略対応した深さで、コンクリートに穿孔を形成する第1工程と、前記アウタースリーブが外装されていない前記インナー部材を前記穿孔の奥まで挿入し、前記インナー部材の後端面が前記コンクリートの表面と略面一となることを確認する第2工程と、前記アウタースリーブが前記インナー部材に外装されたあと施工アンカーを前記穿孔に奥まで挿入する第3工程と、前記アウタースリーブの後端面が前記コンクリートの表面と略面一になるまで前記アウタースリーブを打込んで前記拡開部を拡開する第4工程を備えることを特徴とする。
これによれば、インナー部材の後端面がコンクリートの表面と略面一となる穿孔深さを確認することで、あと施工アンカーが適切な拡開状態で拡開する穿孔深さの穿孔であることを確認することができる。そして、この穿孔深さの穿孔にあと施工アンカーを挿入し、アウタースリーブの後端面がコンクリートの表面と略面一になるまでアウタースリーブを打込むことにより、あと施工アンカーを適切な拡開状態で確実に拡開させ、コンクリートに固定することができる。更に、この作業は作業者の熟練を特に必要とせずに行うことができ、作業者の質に依拠しない簡単な作業で、あと施工アンカーを適切な拡開状態で確実に拡開させることができる。また、アウタースリーブを打込んでアウタースリーブの後端面がコンクリートの表面と略面一になった状態を確認することにより、施工管理者など、作業者以外の者がアンカー打設状態の施工確認を目視で確実に行うことができる。また、あと施工アンカーの施工後に、あと施工アンカーがコンクリート表面から突出せずに、インナー部材の後端面とアウタースリーブの後端面がコンクリート表面と略面一になることから、コンクリート表面に隣接する取付物の取り付けを行える状態を確保することができる。更に、取付物を取り付けた際にも取付状態のコンクリート表面からの突出長を極力抑えることができる。
【0012】
本発明のあと施工アンカーの施工方法は、前記第2工程において、前記インナー部材の後端面が前記コンクリートの表面から外側に突出した場合、前記インナー部材を取り出して穿孔深さを深くするように前記穿孔を形成した後、前記アウタースリーブが外装されていない前記インナー部材を前記穿孔の奥まで再度挿入し、前記インナー部材の後端面が前記コンクリートの表面と略面一となることを確認することを特徴とする。
これによれば、穿孔深さの誤差を必要に応じて調整し、あと施工アンカーのコンクリート表面からの突出を確実に防止して、インナー部材の後端面とアウタースリーブの後端面がコンクリート表面と略面一になる状態を確保することができる。
【0013】
本発明のあと施工アンカーは、後側の筒部と前側のテーパ部を有し、筒部の端面から内部に雌ねじ孔が形成されているインナー部材と、前側にスリットで分割された拡開部を有し、前記筒部に外装されるアウタースリーブとから構成され、設定された穿孔深さに一致するように前記インナー部材の全長が形成され、前記アウタースリーブが前記インナー部材の前記筒部に着脱自在に外嵌されていることを特徴とする。
これによれば、アウタースリーブと着脱自在なインナー部材の全長が設定された穿孔深さに一致するように形成されていることから、インナー部材を取り外してコンクリートに形成された穿孔に挿入し、インナー部材の後端面がコンクリートの表面と略面一となる穿孔深さであること、換言すればあと施工アンカーが適切な拡開状態で拡開する穿孔深さであることを確認することができる。そして、この穿孔深さの穿孔にあと施工アンカーを挿入し、アウタースリーブの後端面がコンクリートの表面と略面一になるまでアウタースリーブを打込むことにより、あと施工アンカーを適切な拡開状態で確実に拡開させ、コンクリートに固定することができる。更に、この作業は作業者の熟練を特に必要とせずに行うことができ、作業者の質に依拠しない簡単な作業で、あと施工アンカーを適切な拡開状態で拡開させることができる。また、アウタースリーブを打込んだ際に、アウタースリーブの後端面がコンクリートの表面と略面一になった状態を得ることが可能となるから、この状態を確認することにより、施工管理者など、作業者以外の者がアンカー打設状態の施工確認を目視で確実に行うことができる。また、あと施工アンカーの施工後に、あと施工アンカーがコンクリート表面から突出せずに、インナー部材の後端面とアウタースリーブの後端面がコンクリート表面と略面一になった状態を得ることが可能となることから、コンクリート表面に隣接する取付物の取り付けを行える状態を得ることができる。更に、取付物を取り付けた際にも取付状態のコンクリート表面からの突出長を極力抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業者の質に依拠せず簡単な作業で、雌ねじタイプのあと施工アンカーを適切な拡開状態で確実に拡開させることができる。また、施工管理者など、作業者以外の者がアンカー打設状態の施工確認を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明による実施形態のあと施工アンカーの斜視図、(b)はその正面図、(c)はその縦断面図。
図2】(a)は拡開状態の実施形態のあと施工アンカーの正面図、(b)はその縦断面図。
図3】(a)は実施形態のあと施工アンカーが挿入されるコンクリートの穿孔を示す縦断面図、(b)は実施形態のあと施工アンカーにおけるインナー部材の正面図、(c)は実施形態のあと施工アンカーにおけるアウタースリーブの正面図。
図4】(a)〜(e)は本発明による実施形態のあと施工アンカーの施工方法の工程説明図。
図5】(a)、(b)は従来例のあと施工アンカーの施工方法の工程説明図。
図6】(a)は穿孔深さが足りない場合の従来例のあと施工アンカーの設置状態を示す縦断面図、(b)は穿孔深さが深過ぎる場合の従来例のあと施工アンカーの設置状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態のあと施工アンカー及びその施工方法〕
本発明による実施形態のあと施工アンカー1は、図1図3に示すように、後側の筒部21と前側のテーパ部22を有する略円筒状のインナー部材2を備え、テーパ部22は前方に向かって漸次拡径する略截頭円錐形状に形成されている。インナー部材2には、筒部21の後端面から内部に雌ねじ孔23が形成されており、図示例ではテーパ部22の一部にかかるまで雌ねじ孔23が形成されている。インナー部材2の全長L1は、設定された穿孔深さL2に一致するようにして形成されている。
【0017】
インナー部材2の筒部21の外周には、筒状のアウタースリーブ3が外装されている。アウタースリーブ3は、スリーブ本体31と、スリーブ本体31の前側に設けられる拡開部32を備え、拡開部32は、アウタースリーブ3の前端からスリーブ本体31まで切り込まれたスリット33で分割されて片状に形成されている。拡開部32の外面には、拡開変形を容易化するために周方向に延びる弧状溝34が複数形成されている。
【0018】
更に、本実施形態のアウタースリーブ3は、インナー部材2の筒部21に着脱自在に外嵌されるようにして外装されており、図示例では、アウタースリーブ3の拡開部32の全体とスリーブ本体31の一部分がインナー部材2の筒部21に着脱自在に外嵌されることで、拡開部32が拡開されていない非拡開状態のあと施工アンカー1が構成されている。
【0019】
本実施形態のあと施工アンカー1を施工する際には、図3(a)及び図4(a)に示すように、コンクリート構造物6に穿孔61を形成する。穿孔61は、アウタースリーブ3の外径に略対応した径で且つインナー部材2の全長L1に対応する穿孔深さL2で形成するようにし、その外周箇所において穿孔深さL2の深さで形成するようにする。穿孔61の形成後には、穿孔61内を清掃する。
【0020】
そして、あと施工アンカー1のアウタースリーブ3からインナー部材2を取り外し、図4(b)に示すように、アウタースリーブ3が外装されていない状態のインナー部材2だけを穿孔61の奥まで挿入し、インナー部材2の後端面がコンクリート構造物6の表面62と略面一となることを確認する。この際に、穿孔61の穿孔深さL2は、インナー部材2の全長L1に対応するように形成したことから、インナー部材2の後端面がコンクリート構造物6の表面62と略面一となることの確認により、穿孔61の穿孔深さL2がインナー部材2の全長L1に確かに対応していることを確認することができる。
【0021】
この際、インナー部材2の後端面がコンクリート構造物6の表面62から外側に突出し、穿孔61の穿孔深さがL2でなかった場合には、穿孔61に挿入したインナー部材2を取り出して穿孔深さを深くするように穿孔61を形成し、その後に、一旦取り出したアウタースリーブ3が外装されていないインナー部材2を穿孔61の奥まで再度挿入し、インナー部材2の後端面がコンクリート構造物6の表面61と略面一となることを確認する。
【0022】
その後、インナー部材2を穿孔61から抜き出し、アウタースリーブ3に嵌め込んで、インナー部材2にアウタースリーブ3が外嵌された非拡開状態のあと施工アンカー1を構成し、図4(c)に示すように、アウタースリーブ3がインナー部材2に外装されたあと施工アンカー1をインナー部材2の前端から穿孔61に奥まで挿入する。この挿入された状態のあと施工アンカー1では、アウタースリーブ3の後部がコンクリート構造物6の表面62から外側に突出した状態となる。
【0023】
その後、図4(d)に示すように、専用の打込棒71をハンマー72で打撃することにより、打込棒71を介してアウタースリーブ3を打ち込み、最終的に、アウタースリーブ3の後端面がコンクリート構造物6の表面61と略面一になるまでアウタースリーブ3を打込んでいく。このアウタースリーブ3の打ち込みにより、拡開部32がテーパ部22の外周に倣って拡開し、拡開状態となる。尚、インナー部材2のテーパ部22とアウタースリーブ3の拡開部32は、アウタースリーブ3の後端面がインナー部材2の後端面と略面一になるまで打ち込まれた際に、適切な拡開状態になるように構成されている。拡開した拡開部32が穿孔61の孔壁に押し付けられるようにして食い込み、拡開状態のあと施工アンカー1がコンクリート構造物6に固定される。
【0024】
更に、取付物4をコンクリート構造物6に取り付ける場合には、図4(e)に示すように、取付物4をコンクリート構造物6の表面62に隣接させて配置し、取付物4を貫通するようにしてボルト5の雄ねじ部51を貫入する。そして、この雄ねじ部51をコンクリート構造物6に固定されたあと施工アンカー1の雌ねじ孔23に螺合することにより、取付物4がコンクリート構造物6に固定して取り付けられる。
【0025】
本実施形態によれば、インナー部材2を穿孔61に挿入してインナー部材2の後端面がコンクリート構造物6の表面62と略面一となる穿孔深さL2を確認することにより、あと施工アンカー1が適切な拡開状態で拡開する穿孔深さL2の穿孔61であることを確認することができる。そして、この穿孔深さL2の穿孔61にあと施工アンカー1を挿入し、アウタースリーブ3の後端面がコンクリート構造物6の表面61と略面一になるまでアウタースリーブ3を打込むことにより、あと施工アンカー1を適切な拡開状態で確実に拡開させ、コンクリート構造物6に固定することができる。更に、この作業は作業者の熟練を特に必要とせずに行うことができ、作業者の質に依拠しない簡単な作業で、あと施工アンカー1を適切な拡開状態で拡開させることができる。
【0026】
また、アウタースリーブ3を打込んでアウタースリーブ3の後端面がコンクリート構造物6の表面61と略面一になった状態を確認することにより、施工管理者など、作業者以外の者がアンカー打設状態の施工確認を目視で確実に行うことができる。また、あと施工アンカー1の施工後に、あと施工アンカー1がコンクリート構造物6の表面62から突出せずに、インナー部材2の後端面とアウタースリーブ3の後端面がコンクリート構造物6の表面62と略面一になることから、コンクリート構造物6の表面62に隣接する取付物4の取り付けを行える状態を確保することができる。更に、取付物4を取り付けた際にもコンクリート構造物6の表面からの突出長を極力抑えることができる。
【0027】
また、あと施工アンカー1の固定前にインナー部材2の挿入で穿孔61が穿孔深さL2になることを確認することにより、穿孔61の穿孔深さの誤差を必要に応じて調整し、あと施工アンカー1のコンクリート構造物6の表面62からの突出を確実に防止して、インナー部材2の後端面とアウタースリーブ3の後端面がコンクリート構造物6の表面62と略面一になる状態を確保することができる。
【0028】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものであり、下記変形例も包含する。
【0029】
例えば上記実施形態の施工工程では、あと施工アンカー1のアウタースリーブ3からインナー部材2を一旦取り外してからインナー部材2を穿孔61に挿入し、インナー部材2の全長L1=穿孔深さL2の穿孔61であることを確認したが、当初からアウタースリーブ3が外装されていない穿孔深さ確認用のインナー部材2を準備し、これを穿孔61に挿入して穿孔深さL2を確認する工程、或いは当初の状態がアウタースリーブ3が外装されていないインナー部材2を穿孔61に挿入して穿孔深さL2を確認し、その確認後にこのインナー部材2をアウタースリーブ3に嵌め込んであと施工アンカー1を形成する工程等とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、例えば橋梁やトンネル等のコンクリート構造物にあと施工アンカーを設置する場合や、あと施工アンカーにより電気設備用ケーブルの支持具等の取付物をコンクリート構造物に取り付ける場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…あと施工アンカー 2…インナー部材 21…筒部 22…テーパ部 23…雌ねじ孔 3…アウタースリーブ 31…スリーブ本体 32…拡開部 33…スリット 34…溝部 4…取付物 5…ボルト 51…雄ねじ部 6…コンクリート構造物 61…穿孔 62…表面 71…打込棒 72…ハンマー L1…インナー部材の全長 L2…穿孔深さ 11…あと施工アンカー 12…インナー部材 121…円筒部 122…テーパ部 123…雌ねじ孔 13…アウタースリーブ 131…スリーブ本体 132…拡開部 133…スリット 14…取付物 15…ボルト 16…コンクリート構造物 161…穿孔 162…表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6