特開2018-36042(P2018-36042A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スミトモ (エスエイチアイ) クライオジェニックス オブ アメリカ インコーポレイテッドの特許一覧

特開2018-36042騒音および振動を低減するためのカラーバンパを備えた極低温膨張機
<>
  • 特開2018036042-騒音および振動を低減するためのカラーバンパを備えた極低温膨張機 図000003
  • 特開2018036042-騒音および振動を低減するためのカラーバンパを備えた極低温膨張機 図000004
  • 特開2018036042-騒音および振動を低減するためのカラーバンパを備えた極低温膨張機 図000005
  • 特開2018036042-騒音および振動を低減するためのカラーバンパを備えた極低温膨張機 図000006
  • 特開2018036042-騒音および振動を低減するためのカラーバンパを備えた極低温膨張機 図000007
  • 特開2018036042-騒音および振動を低減するためのカラーバンパを備えた極低温膨張機 図000008
  • 特開2018036042-騒音および振動を低減するためのカラーバンパを備えた極低温膨張機 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-36042(P2018-36042A)
(43)【公開日】2018年3月8日
(54)【発明の名称】騒音および振動を低減するためのカラーバンパを備えた極低温膨張機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/14 20060101AFI20180209BHJP
   F25B 41/00 20060101ALI20180209BHJP
【FI】
   F25B9/14 530Z
   F25B9/14 510B
   F25B41/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-140979(P2017-140979)
(22)【出願日】2017年7月20日
(31)【優先権主張番号】62/366,205
(32)【優先日】2016年7月25日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】501356112
【氏名又は名称】スミトモ (エスエイチアイ) クライオジェニックス オブ アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sumitomo(SHI)Cryogenics of America,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロングスワース シー. ラルフ
(57)【要約】
【課題】本発明は、空気圧駆動膨張機内のディスプレイサまたはピストンが、シリンダの低温側端部または高温側端部に衝突することを防ぐバンパのエネルギ吸収能力を最大化する極低温膨張機を提供する。
【解決手段】ピストンの高温側端部に配置されたカラーは、ピストンと同じ外径を有しており、ピストンがシリンダの低温側端部または底部に衝突する前に「O」リングと係合する。カラーの高温側端部は、ピストンがシリンダの高温側端部または上部に衝突する前にも「O」リングと係合する。シリンダの最大径に近い「O」リングを備えることにより、「O」リングが吸収可能なエネルギ量を最大化し、それによって、従来技術よりも大きいサイズの膨張機を静音で運転することを可能にする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に備えられ、かつ、空気圧により駆動される往復ピストンであって、高温側ピストン端部および低温側ピストン端部を有し、高温側シリンダ端部と低温側シリンダ端部との間を往復し、該ピストンの移動距離は、前記シリンダの前記高温側シリンダ端部と前記低温側シリンダ端部との間における該ピストンのストロークにより定義される、ピストンと、
前記高温側ピストン端部に備えられた、前記ピストンと前記シリンダとの間のシールと、
前記シリンダ内に備えられた、バンパと、および、
前記高温側ピストン端部に配置され、上部にリップを備えたカラーであって、前記シールと前記リップとの間に、少なくとも前記ストロークと同一の長さを有し、かつ、前記ピストンの直径と同一の外径を有する、カラーと、
を備え、
前記リップが前記バンパと係合することにより、前記ピストンが前記低温側シリンダ端部に接触することを防止して、騒音および振動を低減させることを特徴とする、
極低温膨張機。
【請求項2】
前記リップは、前記カラーの内側または外側にある、請求項1に記載の極低温膨張機。
【請求項3】
前記リップは、前記ピストンが前記シリンダの前記高温側シリンダ端部に接触することを防止するためのバンパと係合する、請求項1に記載の極低温膨張機。
【請求項4】
GMサイクルまたはブレイトンサイクルで運転される、請求項1に記載の極低温膨張機。
【請求項5】
前記ピストンと同軸であって、前記高温側ピストン端部に配置された、ドライブステムをさらに備える、請求項1に記載の極低温膨張機。
【請求項6】
シリンダと、
前記シリンダ内に備えられ、かつ、空気圧により駆動される往復ピストンであって、高温側ピストン端部および低温側ピストン端部を有し、高温側シリンダ端部と低温側シリンダ端部との間を往復し、該ピストンの移動距離は、前記シリンダの前記高温側シリンダ端部と低温側シリンダ端部との間における該ピストンのストロークにより定義される、ピストンと、
前記高温側ピストン端部に備えられた、前記ピストンと前記シリンダとの間のシールと、
前記シリンダ内に備えられた、バンパと、および、
前記高温側ピストン端部に配置され、上部にリップを備えたカラーであって、前記シールと前記リップとの間に、少なくとも前記ストロークと同一の長さを有し、かつ、外径の少なくとも90%の内径を有する、カラーと、
を備え、
前記高温側シリンダ端部は、前記カラーの内側に伸長するネックを有するシリンダヘッドを備え、前記ネックは、前記カラーの内側との間にネックシールを備え、および、
前記リップが前記バンパと係合することにより、前記ピストンが前記低温側シリンダ端部に接触することを防止して、騒音および振動を低減させることを特徴とする、
極低温膨張機。
【請求項7】
前記リップは、前記カラーの内側または外側にある、請求項6に記載の極低温膨張機。
【請求項8】
前記リップは、前記ピストンが前記シリンダの前記高温側シリンダ端部に接触することを防止するためのバンパと係合する、請求項6に記載の極低温膨張機。
【請求項9】
GMサイクルまたはブレイトンサイクルで運転される、請求項6に記載の極低温膨張機。
【請求項10】
前記ピストンを往復させる空気圧力は、前記カラーに作用する、請求項6に記載の極低温膨張機。
【請求項11】
シリンダと、
前記シリンダ内に備えられ、かつ、空気圧により駆動される往復ピストンであって、高温側ピストン端部および低温側ピストン端部を有し、高温側シリンダ端部と低温側シリンダ端部との間を往復し、該ピストンの移動距離は、前記シリンダの前記高温側シリンダ端部と低温側シリンダ端部との間における該ピストンのストロークにより定義される、ピストンと、
前記高温側ピストン端部に備えられた、前記ピストンと前記シリンダとの間のシールと、
前記シリンダ内に備えられた、バンパと、および、
前記高温側ピストン端部に配置され、上部にリップを備えたカラーであって、前記シールと前記リップとの間に、少なくとも前記ストロークと同一の長さを有し、前記ピストンの直径よりも小さい外径を有し、かつ、前記ピストンの断面積より20%以上小さい断面積を有する、カラーと、
を備え、
前記リップが前記バンパと係合することにより、前記ピストンが前記低温側シリンダ端部に接触することを防止して、騒音および振動を低減させることを特徴とする、
極低温膨張機。
【請求項12】
前記リップは、前記カラーの内側または外側にある、請求項11に記載の極低温膨張機。
【請求項13】
前記リップは、前記ピストンが前記シリンダの前記高温側シリンダ端部に接触することを防止するためのバンパと係合する、請求項11に記載の極低温膨張機。
【請求項14】
GMサイクルまたはブレイトンサイクルで運転される、請求項11に記載の極低温膨張機。
【請求項15】
前記ピストンを往復させる空気圧力は、前記カラーに作用する、請求項11に記載の極低温膨張機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音および振動の低減機能を備えた極低温膨張機に関する。より具体的には、本発明は、空気圧により駆動し、極低温での冷却を提供する、往復ピストンと、騒音および振動を低減させるためのカラーバンパとを備えた、高容量の膨張機に関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプ、超伝導MRIマグネット、および実験研究機器を冷却するために使用される極低温冷却器としては、通常、GM型冷却器が使用されている。これらの冷却機としては、典型的には、ヘリウムを圧縮し、入力パワーの12kW以下を引き出すように改造された空調用圧縮機が使用されている。前記膨張機は、機械的または空気圧によって駆動される往復ピストンを有する。機械駆動は、ストロークの終わりにピストンが上面または底面に衝突しないようにする、ほぼ正弦波的運動を提供するため、比較的静かである。空気圧運動は、よりシンプルであるが、ストロークの終わりにピストンがシリンダの上面または底面に衝突すると、大きな騒音を生じる。ブレイトンサイクルで運転する膨張機も同様である。
【0003】
W.E.GiffordおよびH.O.McMahonによる、米国特許第3,045,436号は、基本的なGMサイクルを開示している。この冷却システムは、コンプレッサがガスを高圧で膨張機に供給し、この膨張機がこのガスを、高温側吸気弁を通じて、再生器の高温側端部に送り、このガスは、再生器を通って、その後、ピストンの低温側の拡張スペースに流入し、ここから再生器および高温排気バルブを通ってコンプレッサに低圧で戻るように構成されている。米国特許第3,045,436号は、ピストンのあるシリンダの外部に存在する再生器と、再生器へ流れるガスと位相が異なるように、ガスをピストンの高温側へ循環させる第2の一対のバルブを示している。W.E.Giffordによる米国特許第3,119,237号は、ピストンの高温側にドライブステムを設けることで、米国特許第3,045,436号の発明を改良したものであるが、このドライブステムにより、ピストンを上下に運動させるために使用されるガスの量を低減させることが可能となっている。膨張機の構成とバルブのサイクルは、米国特許第3,119,237号の図2図9に示されている。
【0004】
現在、製造されている典型的なGM型膨張機は、ピストン内に再生器が設けられている。ピストン/再生器は、高圧ガスとともに低温側から高温側に移動し、低圧ガスとともに高温側から低温側に移動するディスプレイサとなる。ディスプレイサの上下の圧力はほぼ同圧であるため、ディスプレイサを往復させるために必要とされる力は小さく、機械的または空気圧的メカニズムによって提供される。本明細書において、ピストンという用語が使用される時は、ディスプレイサのことも示す。
【0005】
ブレイトンサイクルで運転する空気圧駆動膨張機は、Longsworthによる米国特許第9,080,794号に開示されている。ブレイトンサイクルは、膨張する前に高圧ガスを予冷却するために、再生式熱交換器の代わりに逆流熱交換器を使用する点でGMサイクルとは異なる。ブレイトンサイクルは、膨張機の低温側に、高温側のバルブと同期しなければならない1対の追加的なバルブを必要とする。前記逆流熱交換器は、ピストンまたはシリンダの外部に存在していなければならず、また、同等の再生器よりも実質的に大きくなければならない。GMサイクル膨張機に対して、ブレイトンサイクル冷却器が有する重要な利点は、GM膨張機における低温膨張ガスが、膨張スペース内に収納されているのに対して、低温ガスを離隔した負荷に供給できることである。
【0006】
GMサイクル膨張機またはブレイトンサイクルエンジンにガスを供給するために使用されるコンプレッサシステムは、S.Dunnによる米国特許第7,674,099号「オイルバイパスを備えるコンプレッサ」に開示されている。高圧および低圧は、典型的には、2.2MPaと0.8MPaである。
【0007】
Longsworthの米国特許第6,256,997号は、GM型ディスプレイサの高温側においてエラストマ「O」リングを使用することを開示している。この「O」リングは、ディスプレイサがシリンダの高温側端部および低温側端部に衝突する際に伴う騒音と衝撃を排除するため、ストロークの終わりにあるディスプレイサの衝撃エネルギを吸収するための「衝撃吸収体」として機能する。この発明では、中央駆動メカニズムの周囲に「O」リングを配置することにより、この機能を達成している。米国特許第6,256,997号は、その基本的な構成を開示するとともに、比較的小型で軽量なディスプレイサへのその応用も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,045,436号
【特許文献2】米国特許第3,119,237号
【特許文献3】米国特許第9,080,794号
【特許文献4】米国特許第7,674,099号
【特許文献5】米国特許第6,256,997号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述の基本的な構成を、より大きな冷却作用を有し、より大型で重量なピストンを有する膨張機の、より大型のディスプレイサおよびピストンに応用する手段を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これは、ピストンの上部(高温側端部)から延出し、前記ピストンの外径と同じ外径を有するカラーと、ピストンがシリンダの底部(低温側端部)に衝突する前に、「O」リングと係合する前記カラーの上部にリップとを追加することで達成される。前記カラーの上端部は、前記ピストンが前記シリンダの上部(高温側端部)に衝突する前に、「O」リングと係合する。「O」リングが吸収できるエネルギは、「O」リングの体積に比例するため、シリンダの最大径に近い「O」リングを有することで、吸収するエネルギ量を最大化させることができる。エネルギを吸収する目的で使用される「O」リングは、本明細書中においては「バンパ」または「衝撃吸収体」というものとし、円形である必要はない。ブナNエラストマが好ましい素材ではあるが、他の素材も使用することが可能である。
【0011】
上部および底部という用語は、それぞれ高温側端部および低温側端部を示すものとして使用され、「上方へ」ということは低温側端部から高温側端部へ移動することを意味し、「下方へ」ということは高温側端部から低温側端部へ移動することを意味するが、すべての膨張機は、どのような方向でも運転することが可能である。カラーの直径をピストンの直径と同一にするということは、これらを異ならせる間隙および機械加工公差を小さくするということを意味する。
【0012】
本発明は、空気圧で駆動する極低温膨張機内のディスプレイサまたはピストンが、シリンダの低温側端部または高温側端部に衝突することを防ぐバンパのエネルギ吸収能力を最大化する手段を提供する。ピストンの外径と同一の外径を有するカラーを、該ピストンの高温側端部に追加し、該ピストンが前記シリンダの低温側端部または底部に衝突する前に「O」リングと係合するリップを上端部に追加する。前記カラーの上端部は、前記ピストンが前記シリンダの高温側端部または上部に衝突する前に「O」リングと係合する。前記シリンダの最大径に近い「O」リングを備えることにより、「O」リングが吸収できるエネルギの量を最大化させることが可能となる。これにより、より大型の膨張機を従来の設計よりも静かに運転することが可能となる。前記カラーは、典型的なドライブステムの代わりにピストンを上下に運動させるために使用することも可能である。この設計は、「カラーバンパ」と称される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、米国特許第3,119,237号で開示された、従来の空気圧駆動のGMサイクル膨張機の概略図である。
図2図2は、図1のディスプレイサの高温側端部に追加されたカラーと、該カラーの高温側端部に設けられ、ストロークの終わりにバンパと係合するリップとを備えた、膨張機の概略図である。前記カラーは、ピストンと同じ外径を有しており、前記底部バンパは、前記カラーの内側に設けられている。
図3図3は、図1のディスプレイサの高温側端部に追加されたカラーと、該カラーの高温側端部に設けられ、ストロークの終わりにバンパと係合するリップとを備えた、膨張機の概略図である。前記カラーは、ピストンと同じ外径を有しており、前記底部バンパは、前記カラーの外側に設けられている。
図4図4は、空気圧駆動のGMサイクル膨張機のディスプレイサの高温側端部に追加されたカラーと、該カラーの上部に設けられ、ストロークの終わりにバンパと係合するリップとを備えた、該膨張機の概略図である。シリンダヘッドは、前記カラーの内側に伸長し、前記カラーの内側にシールを備えるネックと、前記ディスプレイサを上下に駆動し、かつ、前記カラーに作用する、ガスラインとを有する。前記カラーは、ピストンと同じ外径を有しており、前記底部バンパは、前記カラーの外側に設けられている。
図5図5は、図4と同様であるが、前記カラーの外径がピストンの直径よりも小さく、シリンダヘッドはより小さな内側ネックおよび外側部を有する。前記インナーネックは、前記カラーの内側にシールを備え、前記外側部は、前記カラーの外側にシールを備える。前記カラーは、前記シリンダヘッドの前記外側部の底部バンパと係合する外側リップを上部に備える。
図6図6は、図2と同様であるが、空気圧駆動のブレイトンサイクル膨張機に適用された例を示す。
図7図7は、図4と同様であるが、空気圧駆動のブレイトンサイクル膨張機に適用され、前記カラーのリップおよび底部バンパが該カラーの内側に設けられている例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
なお、図面において、底部バンパをブレイトン膨張機用のカラーの外側に設けたオプションについては、提示されていない。図面において、同等の要素に対しては、同一の識別番号を付している。
【0015】
図1は、従来技術である空気圧駆動のGMサイクル膨張機の概略図であり、シリンダの外側ではなく、ピストンの内部に再生器が設けられている点で、米国特許第3,119,237号に示された構造と異なっている。図1図7において、図示したすべてのシステムは、同一のコンプレッサ30、高圧の供給ライン31、低圧の戻りライン32を備える。これらのガスラインは任意の長さを有することができ、これにより膨張機の取付けの自由度が向上する。現在、主に使用されているコンプレッサは、オイル潤滑型スクロール式コンプレッサであって、空調用途のために製造され、大半の極低温冷却器に用いられる作動フルードであるヘリウムを圧縮するのに適している。運転圧力は、典型的には、約2.2/0.8MPaであり、入力パワーは約2kW〜12kWの範囲内である。本発明によれば、空気圧作動膨張機により高い冷却能力を持たせつつ、静音での運転が可能となる。高い冷却能力を持たせるためには、スクリュー型コンプレッサなど、より大きなコンプレッサが必要とされる。
【0016】
これらの膨張機は、主に4つのサブアセンブリを有する。シリンダサブアセンブリは、シリンダ6a、低温側キャップ9、および、高温側フランジ7を備える。ピストンサブアセンブリは、シリンダアセンブリ内を往復する、ピストン本体1、再生器19、ドライブステム2、および、ピストン本体1の高温側端部の近傍に設けられたピストンシール26を備える。シリンダヘッドサブアセンブリは、シリンダヘッド8a、ステムシリンダ18、および、ステムシール27を備える。バルブサブアセンブリは、通常、前記シリンダヘッドサブアセンブリに取り付けられたハウジング内にあるが、複数のバルブ12〜15を備える。これらのバルブは、典型的には、モーター駆動のポートロータリーバルブである。ピストン1が往復する時には、低温側変位容積部3、高温側変位容積部4、および、ドライブステム変位容積部5においてガスが移動する。これらの変位容積部は、ピストン1の往復にともなって変化するが、間隙およびガスポートという形態での空隙容積も含む。バルブ14および15により、ガスは、ライン33を通って高温変位容積部4に入り、さらに、ポート21、再生器19、ポート20を通って、低温変位容積部3へと循環する。バルブ12および13により、ガスは、ライン34を介して、ドライブステム変位容積部5へと循環する。シール17により、シリンダヘッド8aが高温側フランジ7に対して密閉する。
【0017】
GM冷却サイクルは、低温側にピストンを有する状態から起動し(低温変位容積部3は最小化されている)、シリンダ6a内およびドライブステム2上に掛かる圧力は高い(バルブ12および14は開けられ、バルブ13および15は閉じられている)。次に、バルブ12が閉じられ、バルブ13が開けられる。ドライブステム2に掛かる圧力が低下することに伴い、ピストン1は上方に移動し、低温変位容積部3に高圧ガスが引き込まれる。ピストン1が上端に到達する前に、バルブ14は閉じられ、シリンダ6a内の圧力は、ピストン1が上部へ移動するにともなって、高圧および低圧の中間である第1の圧力まで低下する。この圧力低下は、高温ガスが高温変位容積部4から低温変位容積部3へと移動することにより生じる。次に、バルブ15が開き、シリンダ6a内の圧力は低圧となる。バルブ13は閉じられ、バルブ12は開いており、高圧ガスがドライブステム2に対して送り込まれ、ピストン1を押し下げる。ピストン1が底端に到達する前に、バルブ15は閉じられ、シリンダ6a内の圧力は、ピストン1が底部へ移動するにともなって、第2の中間圧力へと上昇する。この圧力上昇は、低温ガスが低温変位容積部3から高温変位容積部4へと移動することにより生じる。次に、バルブ14が開き、圧力は高圧まで上昇し、次のサイクルが開始される。低温変位容積部3にてなされたP−Vワークは、サイクルごとに生産された冷却量と等しい。
【0018】
図2は、図1に示した従来技術による設計のGM膨張機100を示すが、図1とは異なり、ピストン1にカラー22が追加され、バンパ「O」リング24および25が追加されている。カラー22は、ピストン1とほぼ同一の外径を有し、シリンダ6a内を往復する長さにおいては、シリンダ6aの内径と摩擦することはない。シリンダヘッド8bは、カラー22の内側に伸長するネックを有し、カラー22の内径に近い底端部に設けられたリップに、「O」リングバンパ25が支持されている。カラー22は、ピストン1が低温側に到達して低温端9に衝突する前に「O」リング25と係合する内部リップを上部に有している。したがって、ピストン1のストロークは、ピストン1が、圧縮された「O」リング24と25の間を移動する距離に相当し、カラー22の長さは、カラー22上のリップおよびシリンダヘッド8bの長さの分だけピストン1のストロークよりも長くなければならない。ドライブカラー22が移動する空間は、変位容積部4の空隙容積に連結し追加される空隙容積である。容積部11を加圧および減圧するには、2%〜5%の圧縮フローを使用する。GM膨張機100の冷却サイクルは、図1のGM膨張機のものと同一である。
【0019】
図3は、GM膨張機200を示す。GM膨張機200は、カラー23の上端部に設けられたリップが、ピストン1の外径よりも外側に存在する点で、GM膨張機100と異なっている。低温側バンパ25は、シリンダ6bの内径側で、ピストンシール26がスライドする領域の上方にある部分に設置されている。カラー23の上部にある外側リップは、ピストン1が低温側端部まで到達するが、低温側端部9と衝突する前に、「O」リング25と係合する。ピストン1が、高温側端部に到達すると、カラー23の上部は、ピストン1がシリンダヘッド8cと衝突する前に、「O」リング24と係合する。
【0020】
図4は、GM膨張機300を示す。GM膨張機300は、ピストンを往復させるための手段として、ドライブステム2をカラー23に置き換えている点で、GM膨張機200と異なっている。ピストン1の駆動手段をカラー23に代替させることにより、ドライブステム2およびドライブステムシリンダ18が不要となり、ステムシール27をシリンダヘッド8d内の内側カラーシール28に置き換えるだけで、その設計が簡素化される。ピストンシール26と内側カラーシール28との間の環状領域は、ステムシール27内の領域とほぼ同一である。ピストン1の断面積の約15%の面積があれば、通常、摩擦、圧力降下、および、ピストンを駆動するために必要とされる慣性力に打ち勝つことが十分に可能である。バルブ12および13と容積部10との間のラインとして、ライン35が設けられている。GM膨張機300の容積部10は、ピストン1を上下させるためにステム容積部5へ送り込まれていたガスフローを含み、カラーバンパに伴う空隙容積が低減されているため、GM膨張機300は、GM膨張機100および200よりもより効率的である。シリンダヘッド8dは簡素化され、アセンブリは他の実施形態よりも簡素であるため、GM膨張機300は、本発明の好ましい実施形態である。この駆動メカニズムは、従来の「ステムドライブ」に類似して「カラードライブ」と称される。
【0021】
図5は、GM膨張機400を示す。GM膨張機400は、ピストンの外径と同一の外径を有するカラー23を、外径のより小さいカラー23bに置き換えている点で、GM膨張機300とは異なっている。シリンダヘッド8eは、直径のより小さいネックおよび内側カラーシール28を有する。シリンダヘッド8eは、底部バンパ25および外側カラーシール29を保持する外側部を有する。カラー23b(シール28と29の間)の断面積は、ピストンの断面積の約15%(<20%)である。カラー23bの基部にあるガスポート37は、高温側変位容積部4の内側容積部および外側容積部を接続するために必要とされる。GM膨張機400は、GM膨張機100および200に対して、GM膨張機300と同等の効率性を備える。バンパ「O」リング24および25は、ピストン1の直径とほぼ同一のものよりも小さいが、より大きいバンパ「O」リングの最大エネルギ吸収性能を必要としない、より軽量のピストンに使用することが可能である。これは、追加的にシール29が必要となる点で、好ましい実施形態ではない。
【0022】
図6は、ブレイトン膨張機500を示す。ブレイトン膨張機500は、ステムドライブ2と、内部リップを備えたカラー22とを備える点で、GM膨張機100と同一であるが、ピストン1内の再生器が外部熱交換器41に置き換えられており、低温側変位容積部3へのガスフローは、ライン36を通じ、高圧の低温側吸気バルブ43および低圧の低温側排気バルブ44によって制御される。ブレイトンピストン40は、低温側変位容積部3と、高温側変位容積部4とを分離する。ブレイトンサイクル膨張機500は、エンドキャップ9のみにおいてだけではなく、離間した場所にある熱交換器42においても冷却を可能とするため、多数の応用において、GM膨張機に対して大きな利点を有する。大型化は容易であるが、大型化するに従って、機械的により複雑となるという難点も有する。バルブ開閉のタイミングは、米国第9,080,794号の図7に、その図1オプションBとの関連で示されている、GMサイクルのために説明されたものと同一のサイクルが適用可能である。
【0023】
図7は、カラードライブを有するブレイトン膨張機600を示す。カラー22は、ピストン40が低温側端部9に衝突する前に底部バンパ25と係合する内側リップを上部に備える。シリンダヘッド8fは、底部バンパ25および内側カラーシール28を保持するネックを有する。ブレイトン膨張機400の運転は、ブレイトン膨張機300と同様である。
【0024】
本発明の目的は、空気圧駆動のピストンを備える極低温膨張機を、より高い性能を有する冷却器内において静かに運転させることである。「O」リングバンパのサイズは、ピストンの直径とほぼ同一とすることにより最大化され、ピストンの高温側端部にカラーを備え、カラーの上部に、ピストンが低温側端部と衝突する前に、この「O」リングバンパと係合するリップが設けられ、さらに、ピストンが高温側端部と衝突することを防止する、同様の「O」リングが設けられている。より小さな直径を有する従来技術の「O」リングバンパ7は、少量の冷却をもたらすピストンには適用可能である。
【0025】
冷却が生産される割合は、往復膨張機の膨張スペース内における高圧から低圧までの差と、変位の割合(dV/dt)に比例する。同一の圧力が加わると、冷却率は、ピストンの直径(D)、ストローク(S)、サイクル率(N)の平方に比例する(たとえば、dV/dt=(SπDN)/4)。ピストンの運動エネルギはその質量Mおよび速度の2乗(SN)に比例する。ストロークまたは速さを2倍にすることにより変位速度(冷却率)が2倍となった場合、「O」リングバンパによって吸収されなければならないエネルギは4倍に増加するが、追加的なエネルギを吸収するためのバンパの容積は不変である。ピストンの領域を2倍にすることにより変位速度が増加し、ピストンの長さ、ストローク、および速度が同一に維持された場合、運動エネルギは2倍となるが、ピストンの直径である「O」リングバンパの長さは、D√2のみ増大する。つまり、ピストンの面積を2倍にすることにより変位速度が増加し、ピストンの長さ、ストローク、および速度が同一に維持された場合、運動エネルギは2倍となるが、ピストンの直径である「O」リングバンパの長さは、D×20.5のみ増大する。より大きな変位ピストンをより軽量にするためにどのような戦略がとられたとしても、ピストンの直径とほぼ同一の直径を有するバンパ「O」リングは、静音で運転する空気圧駆動のピストンにより生産される冷却率を最大化する。カラーバンパを備えたピストンは、これを達成可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】