【解決手段】移動体1は、複数の固定局2からのミリ波帯以上の周波数の電波を受信アンテナを介して受信する受信部11と、受信部11による電波の受信結果に基づいて現在位置を取得する現在位置取得部12と、移動体1を移動させる移動機構16と、移動体1の経路を取得する経路取得部15と、現在位置取得部12によって取得された現在位置を用いて、移動体1が経路取得部15によって取得された経路を移動するように移動機構16を制御する制御部17とを備える。このように、ミリ波等の電波を用いて現在位置を取得することによって、移動体1の周囲の状況に依存しない、精度の高い現在位置の取得を実現することができる。
前記受信アンテナの移動方向と、当該移動方向に応じて前記現在位置取得部によって取得された現在位置の変化とを用いて、前記移動体の方向を取得する方向取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記方向取得部によって取得された前記移動体の方向をも用いて前記移動機構を制御する、請求項1から請求項3のいずれか記載の移動体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による移動体及び移動体システムについて、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による移動体システムは、ミリ波帯以上の周波数の電波を用いて移動体の測位を行うものである。
【0017】
図1は、本実施の形態による移動体システム100の構成を示す模式図である。本実施の形態による移動体システム100は、移動体1と、複数の固定局2−1,2−2,2−3とを備える。移動体1は、複数の固定局2−1,2−2,2−3からそれぞれ送信された電波を受信し、その電波を用いて自己位置を取得するものである。なお、複数の固定局2−1,2−2,2−3を特に区別しない場合には、固定局2と記載するものとする。また、移動体システム100に存在する移動体1の個数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。固定局2は、位置が固定されているのに対して、移動体1は、移動し得るものである。したがって、移動体1は、固定局2に対する移動局であると考えてもよい。また、移動体システム100に存在する固定局2の個数は、後記する必要数以上であれば、特に限定されない。例えば、固定局2−4,…,2−N等が存在してもよい。Nは、必要数以上の整数である。固定局2は、移動体1の移動経路と干渉しないように、移動体1の移動空間に配置されることが好適である。例えば、固定局2は、移動体1の移動空間の周辺領域に配置されてもよい。移動体システム100は、通常、工場等の屋内で用いられるが、そうでなくてもよい。また、後記のように、複数の固定局2が時分割で電波を送信する場合には、その送信タイミングを制御する図示しない制御サーバが移動体システム100に存在してもよい。
【0018】
図2は、本実施の形態による移動体1の構成を示すブロック図である。移動体1は、受信部11と、現在位置取得部12と、記憶部13と、受付部14と、経路取得部15と、移動機構16と、制御部17と、方向取得部18と、障害物検知部19とを備える。移動体1は、探索された経路を移動するものであり、通常、ユーザによる操作がなくても自律的にその経路を移動するものである。その経路は、2次元平面における経路であってもよく、3次元空間における立体的な経路であってもよい。移動体1は、例えば、走行する走行体であってもよく、または、飛行する飛行体であってもよい。また、移動体1は、例えば、台車であってもよく、ロボットであってもよい。ロボットは、例えば、エンターテインメントロボットであってもよく、監視ロボットであってもよく、搬送ロボットであってもよく、清掃ロボットであってもよく、その他のロボットであってもよい。また、飛行体は、例えば、回転翼機であってもよく、飛行機であってもよく、飛行船であってもよく、その他の飛行体であってもよい。任意の位置に移動可能であるという観点からは、飛行体は、回転翼機であることが好適である。回転翼機は、例えば、ヘリコプターであってもよく、3個以上の回転翼(ロータ)を有するマルチコプターであってもよい。マルチコプターは、例えば、4個の回転翼を有するクワッドロータであってもよく、その他の個数の回転翼を有するものであってもよい。本実施の形態では、移動体1が搬送台車である場合について主に説明する。
【0019】
受信部11は、複数の固定局2からの電波を、受信アンテナ10を介して受信する。その電波は、ミリ波帯以上の周波数の電波である。その電波は、例えば、波長が1〜10mmであり、周波数が30〜300GHzであるミリ波の電波であってもよく、波長が0.1〜1mmであり、周波数が0.3〜3THzであるサブミリ波の電波であってもよい。本実施の形態では、受信部11が、固定局2からミリ波の電波を受信する場合について主に説明する。なお、受信部11は、複数の固定局2からの電波をそれぞれ別々に受信してもよく、または、一括して受信してから分離してもよい。複数の固定局2が時分割で電波を送信する場合には、受信部11は、前者のように、複数の固定局2からの電波を別々に受信してもよい。一方、複数の固定局2が時分割でなく電波を送信する場合には、受信部11は、後者のように、複数の固定局2からの電波を一括して受信してもよい。
【0020】
現在位置取得部12は、受信部11による電波の受信結果に基づいて現在位置を取得する。その現在位置は、2次元平面における位置であってもよく、または、3次元空間における位置であってもよい。本実施の形態では、後者の場合について主に説明する。その現在位置は、例えば、受信アンテナ10の現在位置であってもよく、受信アンテナ10に対して所定の位置関係にある箇所(例えば、移動体1における所定の箇所であってもよく、移動体1外の所定の箇所であってもよい。)の現在位置であってもよい。また、現在位置を取得する方法は問わない。例えば、固定局2から移動体1までの電波の伝搬時間を用いて現在位置を取得してもよく、ある固定局2から移動体1までの電波の伝搬時間と、他の固定局2から移動体1までの電波の伝搬時間との差を用いて現在位置を取得してもよい。なお、現在位置取得部12による現在位置の取得処理の全部または一部は、GPSによる測位の処理と同様であると考えてもよい。その場合には、GPSの衛星が固定局2に対応することになり、GPSで用いられる1.6GHz程度の周波数の電波に代えて、ミリ波やサブミリ波などの電波が用いられることになる。また、現在位置取得部12は、例えば、固定局2から送信された電波を用いた現在位置の取得と、自律航法による現在位置の取得とを併用してもよく、または、前者のみで現在位置の取得を行ってもよい。
なお、受信部11及び現在位置取得部12の詳細な構成の一例については後記する。
【0021】
記憶部13では、地図情報が記憶される。この地図情報は、経路取得部15による経路の取得に用いられるものである。例えば、経路取得部15によってノード探索法による経路の演算が行われる場合には、地図情報には、ノード探索で用いられるノードやリンクが含まれていることが好適である。その地図情報は、例えば、カーナビゲーションで用いられるKIWIフォーマットの地図情報であってもよく、ノード探索を行うことができる他のフォーマットの地図情報であってもよい。また、例えば、経路取得部15によって状態空間探索法による経路の演算が行われる場合には、地図情報は、移動体1の移動可能領域を示す情報であってもよい。移動可能領域を示す地図情報は、ある領域において移動体1が移動できる領域と、移動できない領域とを区別可能な情報であり、例えば、移動体1の移動領域における障害物の領域を示す情報であってもよく、移動体1の移動領域における移動体1が通行可能な領域を示す情報であってもよい。障害物の領域は、例えば、障害物の位置と大きさとによって示されてもよく、障害物の境界線や輪郭線によって示されてもよい。障害物とは、移動体1が移動する領域に継続的または一時的に存在する、移動体1の移動の障害となるものであり、例えば、柱や壁、載置物等であってもよい。したがって、その地図情報は、例えば、柱や壁等を示す地図の情報であると考えてもよい。
図6Aは、その地図情報の一例を示す図である。
図6Aにおいて、移動体1が移動し得る領域に存在する障害物が斜線で示されている。なお、記憶部13に地図情報が記憶される過程は問わない。例えば、記録媒体を介して地図情報が記憶部13で記憶されるようになってもよく、通信回線等を介して送信された地図情報が記憶部13で記憶されるようになってもよく、または、入力デバイスを介して入力された地図情報が記憶部13で記憶されるようになってもよい。記憶部13での記憶は、RAM等における一時的な記憶でもよく、または、長期的な記憶でもよい。記憶部13は、所定の記録媒体(例えば、半導体メモリや磁気ディスク、光ディスクなど)によって実現され得る。
【0022】
受付部14は、移動体1の目的地を受け付ける。この目的地は、経路取得部15によって取得される経路の目的地である。受付部14が目的地を受け付ける方法は問わない。受付部14が受け付ける目的地は、例えば、目的地を示す座標(例えば、緯度・経度や、移動体1の移動領域の座標系における座標値等)によって示されてもよく、地図上で指定されてもよい。前者の場合には、目的地の座標等が受け付けられてもよく、後者の場合には、
図6Bで示されるように、地図上における位置の指定が受け付けられてもよい。
図6Bでは、タブレット端末50において、地図情報と、移動体1の現在位置とが表示されている。それらの情報は、操作者がタブレット端末50を操作して移動体1にアクセスすることによって、そのタブレット端末50に移動体1から送信されたものであってもよい。なお、移動体1へのアクセスは、例えば、操作者の端末から、移動体1の位置等を管理している図示しない管理サーバ等を介して間接的に行われてもよく、または、操作者の端末から直接、移動体1に対して行われてもよい。
図6Bにおいて、操作者がタブレット端末50のタッチパネルに表示されている地図上の所望の目的地を、タップ等によって指定することにより、その指定位置が移動体1に送信され、受付部14において受け付けられることになる。なお、その場合に、受付部14が受け付ける情報は、例えば、地図上の位置であってもよく、その位置に対応する実空間の位置(例えば、座標値等)であってもよい。前者の場合には、受付部14は、例えば、地図上の位置を実空間の位置に変換してもよい。また、移動体システム100に移動体1の位置等を管理している管理サーバが存在する場合には、例えば、操作者によって、その管理サーバ等において目的地の設定が行われ、その設定された目的地が、管理サーバから移動体1に送信されてもよい。また、受付部14による目的地の受け付けは、あらかじめ記憶されている複数の目的地から一つの目的地が選択されることによって行われてもよい。このように、結果として移動体1の目的地を特定できるのであれば、その目的地を受け付ける方法は問わない。
【0023】
受付部14は、例えば、入力デバイス(例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなど)から入力された目的地を受け付けてもよく、有線または無線の通信回線を介して送信された目的地を受信してもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)から読み出された目的地を受け付けてもよい。なお、受付部14は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、モデムやネットワークカードなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、受付部14は、ハードウェアによって実現されてもよく、または所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0024】
経路取得部15は、移動体1の経路を取得する。その経路は、あらかじめ設定されている経路ではなく、演算された経路である。その取得される経路は、例えば、移動体1の現在位置、すなわち現在位置取得部12によって取得された最新の現在位置から、受付部14によって受け付けられた目的地までの経路であってもよい。また、その経路の取得において、記憶部13で記憶されている地図情報が用いられてもよい。経路取得部15は、例えば、ノード探索法によって経路の取得を行ってもよく、状態空間探索法によって経路の取得を行ってもよい。ノード探索法によって経路探索を行う場合には、経路取得部15は、あらかじめノードやリンクの設定されている地図情報を用いて、例えば、ダイクストラ法、A*アルゴリズム、ベルマン−フォード法、ワーシャル−フロイド法等の公知のアルゴリズムを用いて経路の探索を行ってもよい。ノード探索法では、あらかじめ定められたノードをつなげた移動経路が取得されることになる。状態空間探索法によって経路探索を行う場合には、経路取得部15は、移動体1の移動可能領域を示す地図情報を用いて、例えば、RRT(Rapidly-exploring Random Tree)、ラプラスポテンシャル法、熱ポテンシャル法等の公知のアルゴリズムを用いて経路の探索を行ってもよい。状態空間探索法では、あらかじめノード等の設定されていない空間において、障害物を回避するように移動経路が取得されることになる。例えば、
図6Cで示されるように、移動体1の現在位置がS1である時に、ユーザが目的地G1を設定すると、経路取得部15は、出発地S1から目的地G1までの経路P1を、障害物を避けるように状態空間探索法によって生成してもよい。なお、RRTについては、例えば、次の文献を参照されたい。
文献:S. M. LaValle,"Rapidly-exploring random trees: A new tool for path planning",TR 98-11,Computer Science Dept.,Iowa State University,1998
【0025】
また、経路取得部15は、移動体1の経路を取得する際に、移動体1の方向を示す方向情報を含めて経路を取得してもよい。その方向情報は、例えば、経路上の位置に対応する情報であり、その位置における移動体1の方向を示す情報であってもよい。すなわち、経路上の各位置について、方向情報が設定されてもよい。その方向情報は、例えば、方位角の情報であってもよく、方位角と仰俯角との情報であってもよく、ロール・ピッチ・ヨー角やオイラー角の情報であってもよい。すなわち、方向情報は、2次元平面における方向を示す情報であってもよく、3次元空間における方向を示す情報であってもよく、3次元空間(ワールド座標系)における3次元空間(移動体1のローカル座標系)の方向を示す情報であってもよい。例えば、経路取得部15は、移動体1の前方が進行方向を向くように方向情報を含む経路を生成してもよい。また、例えば、移動体1が監視ロボットである場合には、経路取得部15は、移動体1の有するカメラ等が監視対象を向くように方向情報を含む経路を生成してもよい。
また、経路取得部15は、例えば、経路を演算することによって取得してもよく、または、経路を演算するサーバ等に経路の演算の指示を送信し、その送信に応じて経路の演算結果を受信することによって経路を取得してもよい。本実施の形態では、前者の場合、すなわち経路取得部15によって経路の生成が行われる場合について主に説明する。
【0026】
移動機構16は、移動体1を移動させる。移動機構16は、移動体1を移動させることができるものであれば、その方式を問わない。移動機構16は、例えば、走行部(例えば、車輪や無限軌道など)と、その走行部を駆動する駆動手段(例えば、モータやエンジンなど)とを有していてもよく、回転翼と、その回転翼を駆動する駆動手段とを有していてもよく、プロペラと、そのプロペラを駆動する駆動手段とを有していてもよい。この移動機構16としては、公知のものを用いることができるため、その詳細な説明を省略する。本実施の形態では、移動機構16が走行部と、その走行部を駆動する駆動手段とを有している場合について主に説明する。
【0027】
制御部17は、現在位置取得部12によって取得された現在位置と、方向取得部18によって取得された移動体1の方向とを用いて、移動体1が経路取得部15によって取得された経路を移動するように移動機構16を制御する。すなわち、制御部17は、経路取得部15によって取得された経路を移動体1が移動するように、移動機構16を制御する。なお、生成された経路に方向情報が含まれる場合には、制御部17は、現在位置がその方向情報に対応する位置になった時に、移動体1が、その方向情報によって示される向きとなるように制御してもよい。方向情報は経路上の位置に対応しているため、通常、飛び飛びの情報となる。したがって、例えば、方向情報の設定されている位置間については、方位情報を適宜、補間して用いてもよく、または、方向情報の設定されている位置Aから、方向情報の設定されている次の位置Bまでの方位は、位置Aに対応する方位情報で示されるものであると決まっていてもよい。なお、制御部17は、その制御において、現在位置取得部12によって取得された現在位置を用いるものとする。また、制御部17は、その制御において、移動体1の現在方向を用いてもよい。例えば、制御部17は、移動体1の現在位置や現在方向が、経路における位置や方向となるように移動機構16をフィードバック制御してもよい。なお、所定の経路に沿って移動体1を移動させる制御はすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0028】
また、制御部17は、移動中に障害物検知部19によって障害物が検知された際に、障害物と干渉しないように移動機構16を制御してもよい。その制御は、例えば、移動体1の停止であってもよく、移動体1の減速であってもよい。また、経路取得部15による経路の取得が状態空間探索法によって行われる場合には、その制御は、例えば、障害物が検知された時点の現在位置から目的地までの経路を、検知された障害物を回避するように経路取得部15に取得させ、その取得された新たな経路に沿って移動体1が移動するように制御することであってもよい。また、その制御は、例えば、従来の自動搬送台車において障害物が検知された際に行われる障害物の回避動作等と同様のものであってもよい。
【0029】
方向取得部18は、受信アンテナ10の移動方向と、その移動方向に応じて現在位置取得部12によって取得された現在位置の変化とを用いて、移動体1の方向を取得する。なお、受信アンテナ10の移動方向とは、移動体1のローカル座標系における移動方向である。その受信アンテナ10の移動は、移動体1の方向の取得のために行われてもよく、または、他の目的、例えば、経路に沿った移動体1の移動等の目的のために行われてもよい。前者の場合には、例えば、方向取得部18が、制御部17や、後記するアンテナ移動機構20に、移動の指示を渡すことによって受信アンテナ10が移動されてもよい。また、受信アンテナ10の移動方向に応じて現在位置取得部12によって取得された現在位置の変化とは、ワールド座標系における現在位置の変化である。移動方向及び現在位置の変化は両方、方向のみが分かればよいため、移動の距離や変化の程度は、取得されなくてもよい。また、方向取得部18が取得する移動体1の方向は、ワールド座標系における移動体1の方向である。その方向は、2次元平面における方向であってもよく、3次元空間における方向であってもよい。この方向も、方向情報と同様に、例えば、方位角であってもよく、方位角と仰俯角であってもよく、ロール・ピッチ・ヨー角やオイラー角であってもよい。取得対象の方向が方位角、または方位角及び仰俯角である場合には、方向取得部18は、受信アンテナ10を一方向に移動させた際の移動方向と、その移動方向に応じた現在位置の変化とを用いて、その方位角等を取得することができる。例えば、
図7で示されるように、移動体1を、移動体1のローカル座標系におけるx軸方向に移動させたとする。すると、受信アンテナ10の移動方向は、ローカル座標系におけるx軸方向となる。なお、
図7において、移動前の移動体1を実線で示しており、移動後の移動体1を破線で示している。また、移動前のワールド座標系における現在位置が(X1,Y1,Z1)であり、移動後のワールド座標系における現在位置が(X2,Y2,Z1)であるとすると、方向取得部18は、ローカル座標系のx軸に関するワールド座標系での方向を取得することができる。
図7では、ローカル座標系のz軸とワールド座標系のZ軸とが平行であるため、方向取得部18によって取得される移動体1の方向は、ワールド座標系における方位角となる。移動体1のローカル座標系におけるx軸方向を移動体1の方向とすると、
図7の場合には、その方向を示す方位角φは、次式のようになる。なお、φは、ワールド座標系におけるX軸とのなす角度である。すなわち、φ=0がX軸となる角度である。
φ=tan
-1((Y2−Y1)/(X2−X1))
【0030】
一方、ローカル座標系のz軸とワールド座標系のZ軸とが平行でない場合には、方向取得部18によって取得される移動体1の方向は、ワールド座標系における方位角及び仰俯角となる。また、取得対象の方向がロール・ピッチ・ヨー角やオイラー角である場合には、方向取得部18は、受信アンテナ10を独立した二方向に移動させた際の移動方向と、各移動方向に応じた現在位置の変化とを用いて、ロール・ピッチ・ヨー角等を取得することができる。例えば、
図7と同様に、移動体1をローカル座標系におけるy軸方向にも移動させ、方向取得部18が、そのy軸方向に関する移動体1の方向も取得したとする。すると、ワールド座標系におけるローカル座標系のx軸及びy軸の向きが特定されたことになるため、ワールド座標系におけるローカル座標系の向きが一意に決まることになる。したがって、方向取得部18は、ワールド座標系に対するローカル座標系のロール・ピッチ・ヨー角やオイラー角を取得することができる。なお、移動体1の方向を取得するために受信アンテナ10を移動させる際には、移動体1を回転させないで直線的に移動させることが好適である。また、受信アンテナ10を移動させる方法は問わない。例えば、移動機構16によって移動体1を移動させることによって受信アンテナ10を移動させてもよく、後記するアンテナ移動機構20によって受信アンテナ10を移動させてもよく、両者によって受信アンテナ10を移動させてもよい。制御部17は、方向取得部18によって取得された移動体1の方向をも用いて、移動機構16を制御してもよい。なお、方向取得部18によって取得される方向は、ある時点(すなわち、方向取得のための受信アンテナ10の移動が行われた時点)の移動体1の方向である。したがって、その後の移動体1の移動に応じて、移動体1の方向は変わり得る。そのため、方向取得部18によって移動体1の方向が取得された後に、現在位置取得部12または制御部17等によって、移動体1の相対的な回転の程度が記録され、現在方向が算出されてもよい。すなわち、方向取得部18によって方向が取得された後の移動体1の現在方向は、自律航法によって取得されてもよい。このように、制御部17が、方向取得部18によって取得された移動体1の方向を用いるとは、その取得された方向を現在方向として用いること、すなわち、取得された方向を直接的に用いることであってもよく、または、その取得された方向を用いて得られた現在方向を用いること、すなわち、取得された方向を間接的に用いることであってもよい。また、方向取得部18は、移動体1の方向の取得を繰り返してもよい。その繰り返しは、例えば、所定の時間ごとに行われてもよく、または、所定の移動距離ごとに行われてもよい。
【0031】
また、本実施の形態では、上記のように、方向取得部18が受信アンテナ10の移動方向を用いて移動体1の方向を取得する場合について説明するが、方向取得部18は、その他の方法によって移動体1の方向を取得してもよい。例えば、方向取得部18は、電子コンパスや地磁気センサ、傾斜センサ等を用いて移動体1の方向を取得してもよい。この場合には、通常、方向取得部18によって移動体1の現在方向が取得されることになる。したがって、制御部17は、方向取得部18によって取得された現在方向を直接用いることができる。
【0032】
障害物検知部19は、経路取得部15によって得られた経路上の障害物を検知する。経路上の障害物を検知するとは、その経路に対応する実空間に存在する障害物を検知することである。なお、厳密には経路上に存在しなくても、移動体1がその経路を通過する際に障害となる障害物も、経路上の障害物であると考えてもよい。その障害物の検知は、通常、移動体1の移動中に行われる。障害物検知部19が障害物を検知する方法は問わない。例えば、障害物検知部19は、超音波センサや、レーザーセンサ等によって、障害物までの距離を測定し、その距離があらかじめ決められた閾値以下となった場合に、障害物を検知してもよい。そのレーザーセンサは、例えば、レーザーレンジセンサ(レーザーレンジスキャナ)であってもよい。また、障害物検知部19は、移動体1の外周に取り付けられた感圧センサによって、接触を検知した場合に、障害物を検知してもよい。また、障害物検知部19は、撮像センサや、その他の公知のセンサによって障害物を検知してもよい。障害物検知部19は、経路上の障害物を適切に検知することができるようにするため、例えば、進行方向前方に存在する障害物を検知するように設けられていてもよい。具体的には、移動体1の進行方向前方に、超音波センサやレーザーセンサ、感圧センサ等が設けられていてもよい。
【0033】
障害物検知部19は、移動体1の移動可能領域を示す地図情報が記憶部13で記憶されている場合に、障害物の検知に応じて、その検知した障害物に関する情報を地図情報に追加してもよい。その障害物に関する情報は、例えば、障害物の位置を示す情報(例えば、障害物の座標値を示す情報など)であってもよく、大きさのある障害物の範囲を示す情報(例えば、障害物の座標値と、当該障害物の直径や幅などの大きさとを示す情報)であってもよい。検知した障害物までの距離や方向が分からない場合、例えば、感圧センサ等によって障害物を検知した場合には、障害物検知部19は、その検知時点の移動体1の進行方向前方の位置を、障害物の位置として示す障害物情報を生成してもよい。その位置は、現在位置取得部12によって取得されたその時点の現在位置に進行方向の所定のベクトルを加算することによって生成されてもよい。また、検知した障害物までの距離や方向が分かる場合、例えば、超音波センサやレーザーセンサ等の距離センサによって障害物を検知した場合には、障害物検知部19は、その障害物までの距離や、その検知時点の距離センサの向き、移動体1の現在位置を用いて、障害物の位置を算出してもよい。具体的には、その距離や向きを用いて、移動体1の現在位置から障害物の位置までのベクトルを生成し、移動体1の現在位置から、そのベクトルに応じた距離及び向きだけ離れた位置を、障害物の位置としてもよい。また、障害物検知部19がレーザーレンジセンサ等を有している場合には、障害物の幅を取得できることもある。そのように、障害物の幅を取得できた場合には、障害物検知部19は、障害物の位置と、幅とを含む障害物情報を生成してもよい。また、障害物検知部19は、検知した障害物の位置に関する障害物情報を、その他の方法によって生成してもよい。
【0034】
図3は、固定局2の構成の一例を示すブロック図である。
図3において、固定局2は、基準時計41と、拡散符号発生器42と、搬送波発生器43と、乗算器44と、増幅器45とを備える。固定局2は移動しないものであり、送信アンテナ40を介して、移動体1の現在位置の取得に用いられる電波を送信する。その電波は、上記のとおり、ミリ波帯以上の周波数の電波である。なお、固定局2の位置、すなわち送信アンテナ40の位置は、既知であるとする。また、複数の固定局2は、それぞれ同様の構成である。また、送信アンテナ40と、受信アンテナ10との間で見通し通信を行うことができるようにするため、送信アンテナ40は、高い位置(例えば、受信アンテナ10より高い位置であってもよく、受信アンテナ10の位置が変更され得る場合には、受信アンテナ10の最も高い位置より高い位置であってもよい。)に設置されることが好適である。
【0035】
基準時計41は、現在の時間に相当する計時信号を発振し、拡散符号発生器42に出力する。各固定局2の基準時計41は、同期していることが好適である。
拡散符号発生器42は、基準時計41が発振する計時信号に同期して、信号をスペクトラム拡散させるための拡散符号を発生し、発生した拡散符号の信号を乗算器44に出力する。拡散符号は、例えば、疑似雑音符号であってもよい。拡散符号発生器42は、基準時計41が発振する計時信号を参照し、所定時点を起点にして拡散符号の発生を開始し、拡散符号の信号を出力する。拡散符号は、複数の固定局2で共通であってもよく、または、固定局2ごとに異なっていてもよい。拡散符号が複数の固定局2で共通である場合には、各固定局2は電波を時分割で送信することが好適である。移動体1において、送信元の固定局2を特定できるようにするためである。一方、拡散符号が複数の固定局2ごとに異なる場合には、各固定局2は電波を同時に送信してもよい。移動体1において、固定局2ごとの拡散符号に応じた逆拡散符号を用いることによって、各固定局2からの電波を分離できるからである。
【0036】
搬送波発生器43は、搬送波の信号を発生し、発生した搬送波の信号を乗算器44に出力する。その搬送波の周波数は、ミリ波帯以上である。搬送波は、例えば、ミリ波の搬送波であってもよく、サブミリ波の搬送波であってもよい。搬送波発生器43は、例えば、60GHzの搬送波の信号を出力してもよい。
【0037】
乗算器44は、拡散符号発生器42から出力された拡散符号の信号と、搬送波発生器43から出力された搬送波の信号とを乗算することによって、スペクトラム拡散変調された信号を生成し、そのスペクトラム拡散変調された信号を増幅器45に出力する。スペクトラム拡散変調された信号は、基準時計41に同期して発生された拡散符号を用いて変調された信号であるため、固定局2からその信号が送信される送信時の情報を含むことになる。なお、移動体1の位置を正確に演算するために必要な補助的な情報があれば、その情報を含む信号をスペクトラム拡散変調して出力するように構成してもよい。その情報は、例えば、GPSで用いられる航法メッセージと同様に、拡散符号と一緒にスペクトラム拡散変調されてもよい。例えば、その補助的な情報に、固定局2の位置を示す情報が含まれてもよく、固定局2の識別子が含まれてもよい。
【0038】
増幅器45は、乗算器44から出力された信号を増幅し、増幅した信号を送信アンテナ40に出力する。このようにして、スペクトラム拡散変調された電波が、移動体1に送信されることになる。なお、送信アンテナ40は、指向性を有していてもよく、または、有していなくてもよい。送信アンテナ40が指向性を有している場合には、電波の送信方向(すなわち、指向性の方向)を周期的に切り替えることによって、異なる複数方向に電波が送信されるようにしてもよい。例えば、固定局2は、第1の方向に電波を送信し、その後に第2の方向に電波を送信し、その後に第3の方向に電波を送信することを繰り返してもよい。なお、電波の送信方向の切り替えは、例えば、固定局2が、基準時計41の計時信号を参照することによって自律的に行ってもよく、または、他の制御サーバ等の制御に応じて行ってもよい。
【0039】
図4は、移動体1の受信部11及び現在位置取得部12の構成の一例を示すブロック図である。
図4において、受信部11は、増幅器31と、発振器32と、混合器33とを備える。また、現在位置取得部12は、時計34と、逆拡散符号発生器35と、相関器36と、演算器37とを備える。
【0040】
受信アンテナ10は増幅器31に接続されており、各固定局2からの電波を受信し、受信した信号を増幅器31に出力する。
受信部11の増幅器31は、受信アンテナ10が受信した信号を増幅し、増幅した信号を混合器33に出力する。発振器32は、受信アンテナ10が受信した信号の周波数を変換するための信号を発振し、混合器33に出力する。混合器33は、増幅器31から出力された信号と、発振器32から出力された信号とを混合することによって、周波数変換を行う。混合器33によって周波数変換された信号は、増幅され、図示しないフィルタを通じて現在位置取得部12の相関器36に出力される。
【0041】
現在位置取得部12の時計34は、固定局2の基準時計41と同期して、現在の時間に相当する計時信号を発振し、逆拡散符号発生器35に出力する。この時計34は、基準時計41と正確に同期していることが好適である。なお、正確に同期していない場合には、時計34が基準時計41と正確に同期するように、時計34の時間の補正を行ってもよい。その補正の処理については、後記する。また、後記するように、移動体1の時計34が、固定局2の基準時計41と正確に同期しておらず、誤差がある場合でも、移動体1の現在位置を取得する方法がある。したがって、そのような方法で現在位置の取得を行う場合には、両者は正確に同期していなくてもよい。
【0042】
逆拡散符号発生器35は、スペクトラム拡散変調された信号を逆拡散するための逆拡散符号を、時計34が発振する計時信号に同期して発生し、発生した逆拡散符号の信号を相関器36に出力する。逆拡散符号は、例えば各固定局2で用いられる拡散符号を時間反転させた信号であり、逆拡散符号発生器35は、時計34が発振する計時信号を参照し、所定時点を起点にして逆拡散符号の発生を開始し、逆拡散符号の信号を出力する。なお、固定局2ごとに異なる拡散符号が用いられる場合には、逆拡散符号発生器35は、固定局2ごとに異なる逆拡散符号を発生することが好適である。また、逆拡散符号を発生するための情報が図示しない記録媒体で記憶されており、逆拡散符号発生器35は、その情報を用いて、複数の固定局2に共通の逆拡散符号、または固定局2ごとの逆拡散符号を発生してもよい。
【0043】
相関器36は、混合器33から出力された信号と、逆拡散符号発生器35から出力された逆拡散符号の信号とを比較することによって、受信された信号に重畳されている拡散符号と、逆拡散符号発生器35から出力された逆拡散符号との相関を取る。そして、相関器36は、各符号の相関が最大になる時点を求めることによって、受信した電波の送信時及び受信時の時間差、すなわち固定局2から移動体1までの電波の伝搬時間を特定し、特定した伝搬時間を演算器37に出力する。また、相関器36は、各符号の相関が最大になった時の相関の大きさを示す相関値を演算器37に出力してもよい。また、相関器36は、電波の送信元の固定局2を識別する情報を演算器37に出力してもよい。例えば、複数の固定局2が時分割で電波を順次送信している場合には、移動体1は、固定局2から送信された電波の受信タイミングから、相関値最大に係る電波の送信元である固定局2を特定することができる。また、例えば、固定局2ごとに異なる拡散符号でスペクトラム拡散変調した電波を送信している場合には、相関器36は、相関値が最大になる逆拡散符号を判別することによって、電波の送信元である固定局2を特定することができる。ある拡散符号でスペクトラム拡散変調された電波の受信信号と、その拡散符号とは異なる拡散符号の逆拡散符号の信号との相互相関は、ピークを持たず、略ゼロになるからである。また、例えば、固定局2からの電波に固定局2の識別子が含まれる場合には、相関器36は、電波に含まれる識別子に基づいて、電波の送信元である固定局2を特定してもよい。
【0044】
演算器37は、伝搬時間、相関値等の情報に基づいて、移動体1の現在位置を演算する。例えば、演算器37は、複数の固定局2から送信された電波に応じた受信信号から、相関値が最大となる伝搬時間をそれぞれ取得する。相関値が高いほど、固定局2から送信された電波の受信状態が良好であることになるため、マルチパスが発生している場合であっても、相関値が最大となる伝搬時間は、見通し通信の直接波に関する伝搬時間であると考えられるからである。その処理により、演算器37は、各固定局2から移動体1までの電波の伝搬時間をそれぞれ取得できる。その伝搬時間を用いて、演算器37は、移動体1の位置を算出できる。その算出方法について、(1)時間の誤差がない場合、(2)時間の誤差がある場合に分けて簡単に説明する。
【0045】
(1)時間の誤差がない場合
固定局2と移動体1との間で時間の誤差がない場合、すなわち、時計34が基準時計41に正確に同期している場合には、演算器37は、次のようにして移動体1の現在位置を算出することができる。
【0046】
固定局2−iと移動体1との間の電波の伝搬時間に応じた伝搬距離をr
iとする。iは1以上の整数である。すると、3個の固定局2−1,2−2,2−3に関する伝搬距離は、次式のようになる。なお、伝搬時間に応じた伝搬距離とは、伝搬時間に光速を掛けることによって算出される距離のことである。また、移動体1の受信アンテナ10の位置座標を(x,y,z)としており、固定局2−iの送信アンテナ40の位置座標を(x
i,y
i,z
i)としている。各固定局2の位置座標は、例えば、移動体1において記憶されていてもよく、固定局2からの電波に含まれていてもよい。
r
1=((x
1−x)
2+(y
1−y)
2+(z
1−z)
2)
1/2
r
2=((x
2−x)
2+(y
2−y)
2+(z
2−z)
2)
1/2
r
3=((x
3−x)
2+(y
3−y)
2+(z
3−z)
2)
1/2
【0047】
この場合には、方程式が3個であり、未知数もx,y,zの3個であるため、上記連立方程式を解くことによって、移動体1の位置座標(x,y,z)を算出することができる。したがって、この場合には、固定局2の必要数は「3」となる。なお、必要数とは、移動体1の現在位置の取得に必要な固定局2の個数である。
【0048】
なお、例えば、移動体1の位置座標のうち、zが既知である場合、例えば、床面や地面等から受信アンテナ10までの距離が既知である場合には、未知数が2個になるため、最低2個の方程式があればよいことになる。したがって、この場合には、移動体システム100に2個の固定局2が存在すれば現在位置を算出できることになり、必要数は「2」となる。
【0049】
(2)時間の誤差がある場合
固定局2と移動体1との間で時間の誤差がある場合、すなわち、時計34が基準時計41に正確には同期していない場合には、演算器37は、次のようにして移動体1の現在位置を算出することができる。この方法は、GPSによる測位と同様の方法となる。
【0050】
この場合には、伝搬距離r
iは、正確な距離に対して誤差sが加わったものになるため、伝搬距離は、次式のようになる。この場合の伝搬距離は、擬似距離と呼ばれることもある。
r
1=((x
1−x)
2+(y
1−y)
2+(z
1−z)
2)
1/2+s
r
2=((x
2−x)
2+(y
2−y)
2+(z
2−z)
2)
1/2+s
r
3=((x
3−x)
2+(y
3−y)
2+(z
3−z)
2)
1/2+s
r
4=((x
4−x)
2+(y
4−y)
2+(z
4−z)
2)
1/2+s
【0051】
この場合には、未知数はx,y,z,sの4個であるため、上記4個の方程式を含む連立方程式を解くことによって、移動体1の位置座標(x,y,z)を算出することができる。したがって、この場合には、固定局2の必要数は「4」となり、移動体システム100には、4個の固定局2が必要である。なお、上記連立方程式を解く方法は問わない。例えば、上記各式の両辺を2乗すれば球面の式になるため、移動体1の位置座標(x,y,z)と、各球面との距離の二乗和を目的関数として、その目的関数が最小になるように最適化問題を解いてもよい。また、上記4式の式同士を引き算することによって1個の未知数sを消去できる。したがって、未知数sを消去した連立方程式を解くことによって、移動体1の位置座標(x,y,z)を求めてもよい。その場合には、未知数sを消去した3個の方程式のそれぞれは、2点からの距離の差が一定となる面、すなわち回転双曲面となるため、回転双曲面の交点が移動体1の現在位置となる。
【0052】
なお、例えば、移動体1の位置座標のうち、zが既知である場合には、未知数が3個になるため、最低3個の方程式があればよいことになる。したがって、この場合には、必要数は「3」となる。また、この場合には上記回転双曲面が双曲線になるため、いわゆる双曲線航法によって現在位置を算出することになる。
【0053】
上記説明では、現在位置取得部12が受信アンテナ10の現在位置(x,y,z)を取得する場合について説明したが、そうでなくてもよいことは上記のとおりである。現在位置取得部12は、例えば、受信アンテナ10と所定の位置関係にある箇所の現在位置を取得してもよい。その場合には、現在位置取得部12は、上記のようにして算出した位置座標(x,y,z)に、所定のベクトル(a,b,c)を加算することによって、現在位置(x+a,y+b,z+c)を算出してもよい。そのベクトル(a,b,c)は、図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。また、後記のように、受信アンテナ10の位置が変化する場合には、現在位置取得部12は、現在の受信アンテナ10の位置に応じたベクトルを用いてもよい。
【0054】
また、演算器37は、時計34の時間の補正を行ってもよい。上記の最適化問題を解くことによって算出された誤差sを時間に変換した値が、時計34の補正量となる。したがって、演算器37は、その補正量を用いて、時計34の時間を補正してもよい。また、その補正量の算出は、移動体1が停止している場合、または、移動体1の移動速度が閾値以下の場合に行われてもよい。より正確な補正量を算出するためである。
【0055】
また、
図3,
図4で示した固定局2並びに移動体1における受信部11及び現在位置取得部12の構成は一例であり、それ以外の構成によって、各固定局2からの電波を用いた移動体1の現在位置の取得が行われてもよい。また、現在位置の取得に用いられる各構成要素を、受信部11及び現在位置取得部12のいずれが有するのかについてもある程度の任意性があり、
図4とは異なっていてもよい。例えば、現在位置取得部12が発振器32及び混合器33を有していてもよく、受信部11が時計34、逆拡散符号発生器35、及び相関器36を有していてもよい。
【0056】
次に、移動体1の動作について
図5のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受付部14は、目的地を受け付けたかどうか判断する。そして、目的地を受け付けた場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、目的地を受け付けるまでステップS101の処理を繰り返す。
【0057】
(ステップS102)現在位置取得部12は、その時点の現在位置を取得する。
【0058】
(ステップS103)制御部17は、移動体1の方向を取得するための移動を行うように移動機構16を制御する。その移動は、あらかじめ決められた向きへの移動である。その移動は、例えば、移動体1の直進であってもよい。
【0059】
(ステップS104)現在位置取得部12は、その時点の現在位置を取得する。
【0060】
(ステップS105)方向取得部18は、ステップS102,S104で取得された現在位置と、あらかじめ決められた向きとを用いて、移動体1の方向を取得する。
【0061】
上記ステップS102〜S105により、移動体1の方向を取得する処理が行われたことになる。なお、方向取得部18がワールド座標系に対する移動体1のローカル座標系のロール・ピッチ・ヨー角やオイラー角を取得する場合には、ステップS103,S104を2回繰り返してからステップS105における移動体1の方向の取得を行ってもよい。また、これ以降の移動体1の現在方向の取得は、現在位置取得部12や制御部17等により、自律航法を用いて行われてもよい。また、ステップS103において移動体1が移動されたため、移動体1が元の位置に戻るように再度、移動体1が移動されてもよい。
【0062】
(ステップS106)経路取得部15は、記憶部13で記憶されている地図情報を用いて、現在位置取得部12によって取得された最新の現在位置から、受付部14で受け付けられた目的地までの経路を生成する。その経路は、図示しない記憶部で記憶されてもよい。
【0063】
(ステップS107)制御部17は、生成された経路に応じて移動体1が移動するように移動機構16を制御する。なお、この制御において、現在位置取得部12によって取得された現在位置が用いられるものとする。また、この制御において、方向取得部18によって取得された方向、または、その方向を用いて取得された現在方向が用いられてもよい。
【0064】
(ステップS108)現在位置取得部12は、現在位置を取得し、制御部17に渡す。
【0065】
(ステップS109)制御部17は、現在位置取得部12によって取得された最新の現在位置が、経路の目的地と一致するかどうか判断する。そして、一致する場合には、移動機構16による移動を停止してステップS101に戻り、そうでない場合には、ステップS110に進む。
【0066】
(ステップS110)障害物検知部19は、移動経路上の障害物を検知したかどうか判断する。そして、障害物を検知した場合には、ステップS106に戻り、経路の取得が再度行われ、そうでない場合には、ステップS107に戻り、目的地への移動が継続されることになる。ステップS106に戻った場合には、ステップS106において、検知された障害物の情報を含む地図情報を用いた新たな経路の生成が行われることになる。したがって、その新たな経路に沿って移動することにより、障害物を回避した目的地までの移動が可能となる。
【0067】
なお、
図5のフローチャートにおいて、移動の途中においても、方向取得部18による方向の取得を繰り返して行ってもよい。その場合には、方向の取得のための移動を別途、行うのではなく、目的地への移動のうち、直進の際の移動を用いて方向の取得が行われてもよい。また、
図5のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。また、
図5のフローチャートでは、障害物が検知された場合に、新たな経路の生成を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。経路取得部15による経路の取得がノード探索法によって行われる場合には、制御部17は、障害物が検知された場合に、あらかじめ決められた障害物の回避動作を行い、それまでの経路に沿った移動制御を継続してもよい。また、
図5のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0068】
また、本実施の形態による移動体1は、
図8A,
図8Bで示されるように、受信アンテナ10を移動させるアンテナ移動機構20をさらに備えてもよい。
図8Aでは、アンテナ移動機構20がリフタである場合について示している。
図8Bでは、アンテナ移動機構20がマニピュレータである場合について示している。
図8A,
図8Bで示されるように、アンテナ移動機構20は、他の機構と兼用されているものであってもよく、または、専用の機構であってもよい。専用の機構であるアンテナ移動機構20は、例えば、受信アンテナ10を上下方向(すなわち、鉛直方法)に移動可能な機構であってもよい。アンテナ移動機構20は、受信アンテナ10を、移動体1において移動させるものである。したがって、移動体1が停止している場合であっても、アンテナ移動機構20は受信アンテナ10を移動させることができる。なお、アンテナ移動機構20が受信アンテナ10を移動させる目的は問わない。アンテナ移動機構20は、例えば、上記のように、移動体1の方向を取得するために受信アンテナ10を移動させてもよく、移動体1の移動時に、固定局2の送信アンテナ40と、移動体1の受信アンテナ10とが見通しの通信となるように、受信アンテナ10の位置を上方に移動させてもよい。例えば、アンテナ移動機構20は、移動体1の経路に沿った移動が開始される前に受信アンテナ10の位置を上方に移動させることによって移動時の測位の精度が上がるようにしてもよく、移動体1の経路に沿った移動が終了された後に受信アンテナ10の位置を下方に移動させることによって移動後の移動体1による作業(例えば、搬送対象物の積み降ろしなど)において、受信アンテナ10が障害にならないようにしてもよい。また、アンテナ移動機構20を用いることによって、固定局2からの電波の受信に最適な受信アンテナ10の位置を探索してもよい。例えば、測位に用いる複数の電波の各相関値の合計が最も大きくなる受信アンテナ10の位置を探索してもよく、その相関値の最小値が最も大きくなる受信アンテナ10の位置を探索してもよく、測位に用いる複数の電波の受信レベル(例えば、受信信号強度等)がすべて、あらかじめ決められた閾値以上となる受信アンテナ10の位置を探索してもよく、その受信レベルの最低値が最も大きくなる受信アンテナ10の位置を探索してもよい。その探索は、例えば、現在位置取得部12によって行われてもよい。なお、現在位置取得部12によって取得される現在位置が、受信アンテナ10以外の箇所における位置である場合には、上記のとおり、アンテナ移動機構20による受信アンテナ10の移動に応じて、現在位置取得部12による現在位置の取得を変更するようにしてもよい。すなわち、現在位置取得部12は、アンテナ移動機構20によって移動された受信アンテナ10の位置に応じて現在位置を取得してもよい。その場合には、現在位置取得部12は、例えば、受信アンテナ10の基準位置から移動後の位置までのオフセット量を用いて現在位置を補正し、その補正後の現在位置を、最終的な移動体1の現在位置としてもよい。
【0069】
また、上記説明では、移動体システム100に必要数の固定局2が存在する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。移動体システム100に、必要数を超える固定局2が存在してもよい。その場合には、移動体1において、必要数を超える固定局2から、必要数の固定局2を選択し、その選択した固定局2の電波を用いて測位を行ってもよい。その選択を行う場合には、
図9で示されるように、移動体システム100は、移動体1と、冗長な個数の固定局2−1〜2−4と、制御サーバ3とを備えてもよい。なお、固定局2の個数は、5個以上であってもよい。また、移動体1は、
図10で示されるように、受信部11と、現在位置取得部12と、記憶部13と、受付部14と、経路取得部15と、移動機構16と、制御部17と、方向取得部18と、障害物検知部19と、選択部21と、送信部22とを備えてもよい。なお、選択部21、送信部22以外の構成及び動作は、以下で説明する以外、
図2で示される移動体1と同様のものであり、その詳細な説明を省略する。また、受信部11は、必要数を超える個数の固定局2から電波を受信することになる。
【0070】
選択部21は、受信部11による電波の受信結果を用いて、必要数を超える固定局2から必要数の固定局2を選択する。なお、固定局2を選択するとは、結果として、固定局2を選択することと同じになるのであれば、具体的な選択対象は問わない。例えば、選択部21は、移動体1に伝搬してくる電波を選択することによって、結果として、その電波を送信した固定局2を選択してもよい。選択部21は、必要数を超える固定局2から、現在位置の取得に適した必要数の固定局2を選択することが好適である。その選択方法は問わない。例えば、選択部21は、複数の固定局2からそれぞれ送信された電波について現在位置取得部12によって取得された相関値の大きい必要数の電波に対応する固定局2を選択してもよい。相関値の大きい必要数の電波は、例えば、相関値の大きい方から順番に選択された必要数の電波であってもよく、あらかじめ決められた閾値以上の相関値に対応する電波から選択された必要数の電波であってもよい。後者の場合には、例えば、選択は、ランダムに行われてもよく、または、所定のルールに応じて行われてもよい(例えば、固定局2のIDの昇順の選択や降順の選択など)。また、例えば、選択部21は、受信レベルの大きい電波に対応する固定局2を選択してもよい。受信レベルの大きい電波は、例えば、受信レベルの大きい方から順番に選択された必要数の電波であってもよく、あらかじめ決められた閾値以上の受信レベルに対応する電波から選択された必要数の電波であってもよい。後者の場合には、例えば、選択は、ランダムに行われてもよく、または、所定のルールに応じて行われてもよい。また、現在位置取得部12は、選択部21によって選択された固定局2からの電波の受信結果に基づいて現在位置を取得することになる。
【0071】
送信部22は、選択部21による選択結果に応じた送信を行う。この送信は、
図10で示されるように、送信アンテナ50を介して行われてもよく、または、受信アンテナ10を介して行われてもよい。なお、固定局2からの電波の受信に影響を与えない観点からは、送信部22は、送信アンテナ50を介して、固定局2の送信する電波とは異なる周波数の電波によって選択結果に応じた送信を行うことが好適である。この送信に応じて、選択されなかった固定局2は、電波の送信を停止することが好適である。不要な電波の送信を停止することによって、省エネルギーになるからである。なお、選択結果に応じた送信は、例えば、選択結果そのものを送信することであってもよく、選択されなかった固定局2に、選択されなかった旨を送信することであってもよい。前者の場合には、例えば、送信結果の送信先は制御サーバ3であり、制御サーバ3が、選択結果に応じて、選択されなかった固定局2が電波の送信を停止するように制御してもよい。また、送信部22が、選択されなかった固定局2に選択されなかった旨を送信した場合には、それを受信した固定局2において、電波の送信が停止されることが好適である。なお、送信部22が固定局2に直接送信を行う場合には、移動体システム100は、制御サーバ3を備えていなくてもよい。また、送信部22による選択結果に応じた送信が行われる場合には、各固定局2は、選択されなかった際に、その送信に応じて電波の送信を停止できる構成を有していることが好適である。なお、電波の送信を停止した固定局2であっても、定期的にまたは不定期に、電波を送信してもよい。例えば、すべての固定局2が電波を送信する期間があらかじめ定められている場合には、移動体1は、その期間に固定局2の選択を行うようにしてもよい。移動体1が移動している場合には、移動に応じて好適な固定局2が変化することもあるからである。また、移動体1等からの指示に応じて、各固定局2は電波の送信を開始してもよい。
【0072】
図11は、
図10で示される移動体1の動作を示すフローチャートである。
図11において、ステップS201〜S203以外の処理は、
図5のフローチャートと同様であり、その説明を省略する。
(ステップS201)受信部11は、各固定局2からの電波をそれぞれ受信する。なお、電波に含まれる拡散符号や識別子を用いて固定局2を識別する場合には、受信された電波について、現在位置取得部12によって逆拡散符号との相関値が算出されたり、電波に含まれる識別子が取り出されたりすることが好適である。一方、各固定局2から時分割で電波が送信される場合には、現在位置取得部12による処理が行われてもよく、または、そうでなくてもよい。例えば、選択部21による選択に相関値が用いられる場合には、現在位置取得部12による処理が行われることが好適であり、選択部21による選択に受信レベルが用いられる場合には、現在位置取得部12による処理が行われなくてもよい。
【0073】
(ステップS202)選択部21は、必要数を超える個数の固定局2からの電波の受信結果を用いて、必要数の固定局2を選択する。
【0074】
(ステップS203)送信部22は、ステップS202における選択結果に応じた送信を行う。
なお、それ以降の現在位置の取得(ステップS102,S104,S108)においては、現在位置取得部12は、選択された固定局2からの電波を用いて現在位置を取得するものとする。例えば、ステップS203の送信に応じて、選択されなかった固定局2が電波の送信を停止したことに応じて、結果として、選択された固定局2からの電波を用いた現在位置の取得が実現されてもよい。また、ステップS201の前段に、すべての固定局2によって電波が送信されるように指示する処理が存在してもよい。その処理が存在する場合には、例えば、その指示が制御サーバ3に送信され、制御サーバ3が各固定局2からの電波の送信が行われるように制御してもよい。また、そのような場合には、目的地に到達した後に、移動体1が、固定局2による電波の送信が停止されるように指示する処理が存在してもよい。移動体1が停止している際には、固定局2による電波の送信は不要だからである。
【0075】
また、ここでは、選択されなかった固定局2が電波の送信を停止する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、工場等において複数の移動体1が移動している場合には、各移動体1が最適な必要数の固定局2を選択できるようにするため、各固定局2は、継続して電波を送信するようにしてもよい。その場合には、移動体1は、選択結果に応じた送信を行う送信部22を備えていなくてもよい。また、その場合には、現在位置取得部12は、固定局2からの電波のうち、選択された固定局2からの電波を用いて、現在位置を取得するものとする。そのため、例えば、時分割で電波の送信が行われている場合には、選択された固定局2が電波の送信を行っているタイミングでのみ電波の受信を行ってもよく、拡散符号が複数の固定局2ごとに異なる場合には、選択された固定局2に対応する逆拡散符号のみを用いて相関値の算出を行ってもよい。
【0076】
また、移動体システム100に必要数を超える固定局2が存在する場合に、移動体1において必要数の固定局2を選択し、その選択した固定局2からの電波を用いて現在位置の取得を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。必要数を超える固定局2が移動体システム100に存在する場合であっても、必要数を超える固定局2からの電波を用いて現在位置の取得が行われてもよい。その場合には、未知数を超える方程式を含む連立方程式を解くことになる。通常、そのような連立方程式の解を一意に得ることはできないため、例えば、未知数を超える各方程式のそれぞれを最もよく満たす現在位置を、最適化問題を解くことなどによって求めてもよい。その最適化問題を解く際には、例えば、各方程式に関する誤差の二乗和を目的関数として用いてもよい。このように、必要数の固定局2の選択を行わない場合には、移動体1は、選択部21や送信部22を備えていなくてもよい。
【0077】
以上のように、本実施の形態による移動体システム100によれば、複数の固定局2から送信された電波を用いて、移動体1において現在位置を取得することができる。したがって、移動体1と障害物との距離に関係なく、同じ精度で現在位置を取得できる。また、変化の少ない長い通路などにおいても、同じ精度で現在位置を取得できる。さらに、新たな障害物の有無によって現在位置の精度が変化することもない。このように、移動体システム100では、SLAMよりも高精度な現在位置の取得を実現することができる。また、SLAMと比較して、より軽い処理によって現在位置を取得することができる。その結果、同程度のプロセッサを用いた場合には、SLAMよりも現在位置取得部12のほうがより高速に現在位置を取得できることになる。また、高精度な現在位置の取得を実現できることにより、結果として、経路の移動精度も向上することになる。また、前記のように、より高速に現在位置を取得することができるため、移動体1のより高速な移動にも対応できるようになる。また、移動体1が方向取得部18を備えていることにより、電子コンパス等を有していなくても、ワールド座標系における移動体1の方向を取得できる。また、移動体1がアンテナ移動機構20を有している場合には、受信アンテナ10を適切な位置(例えば、複数の送信アンテナ40から受信アンテナ10までが見通しとなる位置など)に移動させることによって、より正確な現在位置の取得を実現することができるようになる。また、移動体1が選択部21を有している場合には、適切な固定局2が選択されることにより、より精度の高い現在位置の取得を実現することができる。また、選択結果に応じた送信が行われ、その送信に応じて、選択されなかった固定局2が電波の送信を停止することによって、現在位置の取得に影響を与えることなく、省エネルギーを実現することができる。
【0078】
また、経路取得部15が状態空間探索法によって経路を取得する場合には、障害物が検知された時に、その検知された障害物を回避するように目的地までの経路を新たに生成することができる。その場合には、障害物が検知された後の目的地までの経路が、ノード探索法による経路の取得と比較して、より最適なものとなり得る。ノード探索法によって経路を取得した場合には、障害物が検知された時に、その障害物の回避を行い、あらかじめ取得された経路に戻ることになるため、状況によっては、障害物の回避に応じて移動経路が冗長になることもあるからである。また、ノード探索法によって経路が演算される場合には、例えば、演算に用いる地図情報において、壁などの障害物から遠い位置にノードやリンクが設定されていること、例えば、通路等の中心付近にノード等が設定されていることによって、現在位置の取得精度があまり高くなくても、移動体が壁などの障害物と干渉することを防止でき得る。一方、ノードやリンクの設定されていない地図情報を用いた状態空間探索法による経路の演算が行われる場合には、より高精度な現在位置の取得が要求されることになる。壁などの障害物の付近を通過する経路が生成されることもあるからである。したがって、ミリ波等の波長の短い電波を用いて現在位置の取得を高精度に実現することは、状態空間探索法によって演算された経路に沿った移動に好適であるといえる。
【0079】
なお、本実施の形態では、各固定局2が電波を送信するものである場合について説明したが、そうでなくてもよい。一部の固定局2は、他の固定局2が送信した電波を反射するものであってもよい。その場合には、他の固定局2から送信された電波を反射する構成を有するものが固定局2であってもよい。すなわち、固定局2は、自ら電波を出力するものであってもよく、他の固定局2の出力した電波を反射するものであってもよい。以下、電波を反射する固定局2を有する移動体システム100について、
図12を参照して簡単に説明する。
図12において、固定局2−1は、電波を送信する送信局であり、固定局2−2,2−3は、固定局2−1が送信した電波を反射する反射局である。反射局は、リフレクタ(反射器)を有しており、送信局から送信された電波を反射する。リフレクタは、例えば、アルミニウムやステンレスなどの金属製であってもよい。また、リフレクタは、例えば、平面であってもよく、曲面であってもよく、2面や3面等の多面であってもよい。また、反射局は、1個の送信局からの電波のみを反射するように配置されることが好適である。
【0080】
ここで、複数の固定局2の一部が反射局である場合における現在位置の取得方法について簡単に説明する。
図12で示される移動体システム100では、移動体1は、固定局2−1から送信された直接波と、固定局2−1から送信され、固定局2−2,2−3でそれぞれ反射された反射波とを受信することになる。なお、伝搬時間に応じた伝搬距離の算出には固定局2−1の拡散符号を用いるため、反射波を用いて伝搬距離を算出する場合には、送信局から反射局までの距離も加算された伝搬距離が算出されることになる。したがって、現在位置取得部12は、反射局からの電波を用いて伝搬距離を算出した場合には、その伝搬距離から、送信局と反射局との間の距離を減算することによって、反射局から移動体1までの伝搬距離を算出してもよい。送信局と反射局との間の距離は、あらかじめ移動体1で記憶されていてもよく、または、各固定局2の位置を用いて算出されてもよい。
【0081】
次に、直接波と反射波とを識別する方法について説明する。通常、直接波の受信レベル(例えば、受信信号強度等)は反射波と比較して大きく、また、直接波を用いて計算される送信源(送信局)までの伝搬距離は反射波と比較して短い。逆に、反射波の受信レベルは直接波と比較して小さく、また、反射波を用いて計算される送信源までの伝搬距離は直接波と比較して長い。したがって、現在位置取得部12は、それらの特徴を利用して、送信局である固定局2−1からの電波と、反射局である固定局2−2,2−3からの電波とを識別することができる。具体的には、現在位置取得部12は、相関器36によって取得された相関値が閾値以上の複数の電波において、受信レベルが最も大きく、かつ、伝搬距離が最も短い電波があれば、その電波に応じた伝搬距離を、送信局までの伝搬距離としてもよい。なお、M個の送信局が存在する場合には、例えば、現在位置取得部12は、その複数の電波において、受信レベルが大きい方からM番目以内であり、かつ、伝搬距離が短いほうからM番目以内である電波に応じた伝搬距離を、送信局までの伝搬距離としてもよい。また、例えば、現在位置取得部12は、その複数の電波において、受信レベルが最大ではなく、かつ、伝搬距離が最小ではない電波があれば、その電波に応じた伝搬距離を、反射局を経由した伝搬距離として、その反射局までの伝搬距離を算出してもよい。なお、M個の送信局が存在する場合には、例えば、現在位置取得部12は、その複数の電波において、受信レベルが大きい方からM番目以内ではなく、かつ、伝搬距離が短いほうからM番目以内ではない電波に応じた伝搬距離を、反射局を経由した伝搬距離として、その反射局までの伝搬距離を算出してもよい。そのような識別を適切に行うことができるようにするため、相関値や受信レベルに関する適切な閾値を設けて、閾値以上の電波のみを現在位置の取得に用いるようにしてもよい。なお、反射波に関する送信源までの伝搬距離とは、移動体1から反射局までの伝搬距離と、反射局から送信源である送信局までの伝搬距離とを加算したものである。
【0082】
次に、複数の反射波を識別する方法について説明する。例えば、送信局から第1の反射局までの距離が、送信局から第2の反射局までの距離よりも十分短くなるように第1及び第2の反射局が配置されたとすると、第1の反射局からの反射波のほうが、第2の反射局からの反射波よりも、送信源までの伝搬距離が短くなる。したがって、その伝搬距離の差を用いて複数の反射局からの電波を識別することができる。また、移動体1が自律航法による現在位置の取得をも行う場合には、その自律航法によって移動体1の現在位置の近似値を得ることができる。したがって、例えば、送信局から第1及び第2の反射局までの距離が略同じであっても、現在位置取得部12は、自律航法によって得られた現在位置の近似値を用いて、第1の反射局を経由する送信源までの伝搬距離と、第2の反射局を経由する送信源までの伝搬距離との大小関係を知ることができるため、その大小関係を用いて、第1及び第2の反射局からの電波を識別することができる。例えば、自律航法を用いることによって、第1の反射局を経由する送信源までの伝搬距離のほうが短いことが分かる場合には、現在位置取得部12は、伝搬距離の短いほうの反射波が、第1の反射局から受信した反射波であると判断できる。3個以上の反射局が存在する場合にも、同様にして反射波を識別することができる。
なお、各固定局2からの電波を識別することができれば、現在位置取得部12は、上記説明と同様にして、移動体1の現在位置を取得することができる。
【0083】
また、本実施の形態では、移動体1が方向取得部18を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。方向に関する制御が必要ない場合等には、移動体1は、方向取得部18を備えていなくてもよい。
【0084】
また、本実施の形態において、移動体1は、上記のように、取得した経路に沿った移動を開始する際に、電波の送信を指示する情報を制御サーバに送信してもよい。その情報を受信すると、制御サーバは、各固定局2が電波を送信するように制御してもよい。また、移動体1は、取得した経路に沿った移動を終了した際に、電波の停止を指示する情報を制御サーバに送信してもよい。その情報を受信すると、制御サーバは、各固定局2が電波の送信を停止するように制御してもよい。なお、複数の移動体1が固定局2からの電波を用いた測位を行っている場合には、制御サーバは、例えば、電波の送信を指示する情報を送信したが、まだ電波の停止を指示する情報を送信していない移動体1が少なくとも1つ存在するときに、各固定局2が電波を送信するように制御し、電波の送信を指示する情報を送信した後に電波の停止を指示する情報を送信していない移動体1が存在しないとき(すなわち、電波の送信を指示する情報を送信したすべての移動体1から、制御サーバが、電波の停止を指示する情報を受信したとき)に、各固定局2が電波の送信を停止するように制御してもよい。なお、それらの情報の送信は、制御サーバではなく、各固定局2に直接行われてもよい。このように、電波の送信・停止に関する制御が行われる場合には、移動体1は、移動を開始する際に、固定局2からの電波の送信を指示する情報を送信し、移動を終了した際に、固定局2からの電波の停止を指示する情報を送信する指示送信部(図示せず)をさらに備えていてもよい。このようにすることで、移動体1が測位を行わない場合、すなわち、電波の送信が不要な場合における固定局2からの電波の送信を行わないようにすることができ、省エネルギーになる。
【0085】
また、本実施の形態では、移動体1が目的地を受け付ける受付部14を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。目的地があらかじめ決まっている場合などには、移動体1は、受付部14を備えていなくてもよい。
また、本実施の形態では、移動体1が記憶部13を備える場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、経路の演算が移動体1以外において行われる場合などには、移動体1は、記憶部13を備えていなくてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0089】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0090】
また、上記実施の形態において、移動体1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0091】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0092】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。