(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-384(P2018-384A)
(43)【公開日】2018年1月11日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/537 20060101AFI20171208BHJP
【FI】
A61F13/537 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-129294(P2016-129294)
(22)【出願日】2016年6月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100204755
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA04
3B200BA06
3B200BB04
3B200DA14
(57)【要約】
【課題】皮膚刺激性が低く、吸収性能に優れ、逆戻り性が低い、肌に優しい吸収性物品を提供すること。
【解決手段】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品において、トップシートと、吸収体と、の間に、セカンドシートが配置されており、トップシートが、エンボスパターンを有しておらず、セカンドシートが、1層の不織布からなり、セカンドシートが、3次元の凹部及び凸部を有するマッチドエンボスパターンを有する、吸収性物品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品において、
トップシートと、吸収体と、の間に、セカンドシートが配置されており、
前記トップシートが、エンボスパターンを有しておらず、
前記セカンドシートが、1層の不織布からなり、
前記セカンドシートが、3次元の凹部及び凸部を有するマッチドエンボスパターンを有する、吸収性物品。
【請求項2】
前記セカンドシートの坪量が15g/m2以上50g/m2以下であり、前記セカンドシートの厚みが0.3mm以上1.0mm以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記セカンドシートが有するマッチドエンボスパターンが、ハニカムパターンである、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記セカンドシートが有するマッチドエンボスパターンの凹部の面積率が、5%以上90%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
1層の不織布からなるセカンドシートを2枚を用い、2枚のセカンドシートにおいて対向する面の凸部あるいは凹部同士が重なるように積層した、請求項1から3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記セカンドシートに用いられる不織布シートが、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる複合繊維から構成されるエアスルー不織布、又はポリエチレン及びポリエステルからなる複合繊維から構成されるエアスルー不織布である、請求項1から5のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記セカンドシートは、吸収体の上面の全部又は一部を被覆している、請求項1から6のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽失禁パッドや、ライナー等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿や血液等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。ここで、従来、吸収性物品においては、吸収性能を改善し、体液の吸収後においてもトップシート表面のドライ感を維持するため、多層構造を有する繊維層に凹凸加工を施した不織布をトップシートに用いたり、吸収体近傍に、高吸収性ポリマーを担持させたSAPシートや、嵩高のセカンドシートを設けたりすることが行われている。このうち、セカンドシートについては、これを設けることにより、トップシート側から吸収体への体液の移行が促進されて、吸収性物品の吸収性能が向上するとともに、吸収した体液の逆戻りも効果的に防止され、トップシートを乾燥した状態に維持することができる。
【0003】
トップシートに凹凸加工を施した吸収性物品としては、例えば、特許文献1に、トップシート、セカンドシート、吸収体、及びバックシートを備え、トップシートとセカンドシートは、トップシートからセカンドシートに向かって窪んだ所定の凹状のエンボスによって互いに関連付けられている吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、セカンドシートを設けた吸収性物品としては、例えば、特許文献2に、トップシートと、バックシートと、吸収体とを有する吸収性物品において、トップシートと吸収体との間に配置するセカンドシートにおける、KES圧縮試験の圧縮特性における圧縮硬さのLCの値、及びセカンドシートの厚み等の特性を調整した吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−198075号公報
【特許文献2】特許第4164416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の吸収性物品においては、トップシートに凹凸のエンボスパターンが設けられているため、肌への刺激性が悪化する可能性がある。また、特許文献2の吸収性物品を含め、セカンドシートを設けた吸収性物品では、製造時のトップシートと吸収体との接合時に、セカンドシートの嵩高さが失われてしまうおそれがあり、そのような場合には、吸収性物品の吸収性能や逆戻り性が悪化する可能性があった。したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、皮膚刺激性が低く、吸収性能に優れ、逆戻り性が低い、肌に優しい吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、トップシートと、バックシートと、吸収体と、を有する吸収性物品において、1層の不織布からなるセカンドシートに、3次元の凹部及び凸部を有するマッチドエンボスパターンを付与することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品において、トップシートと、吸収体と、の間に、セカンドシートが配置されており、前記トップシートが、エンボスパターンを有しておらず、前記セカンドシートが、1層の不織布からなり、前記セカンドシートが、3次元の凹部及び凸部を有するマッチドエンボスパターンを有する、吸収性物品である。
【0009】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記セカンドシートの坪量が15g/m
2以上50g/m
2以下であり、前記セカンドシートの厚みが0.3mm以上1.0mm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
(3)本発明の第2の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記セカンドシートが有するマッチドエンボスパターンが、ハニカムパターンであることを特徴とするものである。
【0011】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記セカンドシートが有するマッチドエンボスパターンの凹部の面積率が、5%以上90%以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、1層の不織布からなるセカンドシートを2枚を用い、2枚のセカンドシートにおいて対向する面の凸部あるいは凹部同士が重なるように積層したことを特徴とするものである。
【0013】
(6)本発明の第5の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記セカンドシートに用いられる不織布シートが、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる複合繊維から構成されるエアスルー不織布、又はポリエチレン及びポリエステルからなる複合繊維から構成されるエアスルー不織布であることを特徴とするものである。
【0014】
(7)本発明の第6の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記セカンドシートは、吸収体の上面の全部又は一部を被覆していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吸収性物品は、トップシートが、エンボスパターンを有していないとともに、1層の不織布からなるセカンドシートを備え、このセカンドシートが3次元の凹部及び凸部を有するマッチドエンボス(matched emboss)パターンを有している。このため、吸収性物品が肌に触れるトップシートの皮膚刺激性が低く抑えられるとともに、トップシートと吸収体との接合後においても、マッチドエンボスパターンがセカンドシートの嵩高さを十分に維持するので、吸収性物品の吸収性能が向上し、逆戻り性が低く抑えられて、体液吸収後のトップシートのドライ感が向上する。したがって、本発明によれば、肌に優しい吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の吸収性物品の平面図及び断面図を示す図面である。
【
図2】本発明の吸収性物品に用いられるセカンドシートの模式図を示す図面である。
【
図3】セカンドシートに付与されるハニカムパターンを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る吸収性物品1について詳細に説明する。なお、本実施形態の説明においては、全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。本明細書における以下の説明において、体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出される液体をいう。さらに、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方を示す。なお、本明細書の説明において、吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、本明細書において、吸収性物品1の身体接触側表面とは、吸収性物品1の着用時に着用者の肌に当接する表面を指し、衣類接触側表面とは、吸収性物品1の着用時に着用者の衣類に当接する表面を指す。本明細書においては、吸収性物品1の身体接触側表面側を上側と称し、衣類接触側表面側を下側と称することがある。
【0018】
<吸収性物品>
図1は本発明の吸収性物品1の平面図及び断面図を示す図面である。本発明の吸収性物品1は、液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、トップシート10及びバックシート30の間に配置された吸収体20と、を有し、トップシート10及び吸収体20の間には、セカンドシート15が配置されている。
【0019】
[トップシート]
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体20を挟んで、バックシート30と対向して配置されている。トップシート10は、肌と当接するシートとなることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような基材、例えば、エアスルー不織布を代表とするサーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、又はこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。トップシート10は、単層であっても、複数層積層されていてもよく、ドライタッチ性を付与するために多数の透孔が形成されていてもよい。
【0020】
不織布としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成繊維やレーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、サーマルボンド法のほか、スパンレース法やスパンボンド法等の公知の加工法によって得られたものも用いることができる。加工性及び強度の点から、トップシート10の坪量は、18g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシート10には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。トップシート10は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形状等の形状を有していてもよく、吸収体20の側縁よりも若干外方に延在して設けられていてもよい。
【0021】
本発明においては、トップシート10がエンボスパターンを有していないことが好ましい。上述のとおり、トップシート10が、エンボスパターンを有していないことにより、トップシート10の表面が平滑となり、トップシート10に付与されるエンボスパターンを構成する部位により、肌に刺激が与えられることを効果的に防止できる。トップシート10の厚みは、エンボスパターンが付与されていないことと対応して、0.20mm以上0.50mm以下であることが好ましい。
【0022】
[バックシート]
バックシート30は、吸収性物品1の外部に体液が漏れないよう、液不透過性を有し、遮水性を有するシート材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。このような特性を有するバックシート30の材料としては、例えば、ポリエチレンシートやポリエチレンラミネート不織布等の厚みの薄いプラスチックシートを挙げることができる。バックシート30は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形状等の形状を有していてもよく、吸収体20の側縁より若干外方に延在して設けられていてもよい。バックシート30の衣類接触側表面には、着用時に下着等に吸収性物品1を固着するための粘着剤層が設けられていてもよい。吸収性物品1が粘着剤層を有する場合、粘着剤層を保護するための剥離シートを有していてもよく、この剥離シートは、吸収性物品1の包装シートと一体となっていてもよい。トップシート10及びバックシート30は、長手方向端部等、端部の少なくとも一部において、吸収体20を挟まずに、ホットメルト接着剤やヒートシール等により固着されるフラップを形成していてもよい。
【0023】
[吸収体]
吸収体20は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(以下、SAPとも称する)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0024】
吸収体20の高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
【0025】
吸収体20において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体20の形状の安定化の目的から、吸収体20をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0026】
吸収体20は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0027】
[セカンドシート]
図2は、本発明の吸収性物品1に用いられるセカンドシート15の模式図を示す図面である。本発明の吸収性物品1においては、トップシート10と吸収体20との間に、セカンドシート15が配置されている。トップシート10と吸収体20との間に、セカンドシート15が配置されていることにより、トップシート10側から吸収体20への体液の移行が促進されて、吸収性物品1の吸収性能が向上するとともに、吸収した体液の逆戻りも効果的に防止され、トップシート10を乾燥した状態に維持することができる。セカンドシート15は、繊維材料から構成されており、エアスルー不織布のサーマルボンド不織布により構成することが好ましい。また、セカンドシート15を構成する繊維材料については、親水化処理がなされていることが好ましい。このような親水化処理により、体液を吸収体20に移行させる機能が最大化される。本発明においては、セカンドシート15は1層の不織布からなるものであることが好ましい。
【0028】
セカンドシート15である不織布シートを構成する繊維材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはポリエステル;ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の2種類以上の素材からなる複合繊維、又は;セルロース繊維等の天然繊維やその混合物でもよく、低融点ポリエステルとポリエステル、ポリエステルとポリエチレン、ポリプロピレンとポリエチレンの複合繊維であることが、強度や嵩高さの面からも好ましい。本発明においては、これらの中でも、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる複合繊維、又はポリエチレン及びポリエステルからなる複合繊維を使用することが好ましい。ここで、複合繊維とは、少なくとも2成分の繊維材料から1本の繊維を構成した多成分系の繊維を指し、各繊維材料の配置から、鞘−芯型、並列型、海島型、分割型等に分類される。本発明においては、これらの中でも、特に、鞘−芯型の複合繊維を用いることが好ましく、このような複合繊維から不織布を構成した後に熱風を当てることにより、嵩高な不織布を得ることができる。なお、繊維及び複合繊維の親水性処理方法としては、繊維及び複合繊維に親水化剤を塗布したり、製造したセカンドシート15にスプレー塗布、含浸したりすることによって処理する方法が挙げられる。
【0029】
セカンドシート15を構成する不織布の坪量は、15g/m
2以上50g/m
2以下であることが好ましく、20g/m
2以上45g/m
2以下であることがより好ましい。セカンドシート15の坪量を上記の範囲内のものとすることにより、セカンドシート15の嵩高さを十分に維持し、吸収性物品1の吸収性能や逆戻り性をより向上させることができる。
【0030】
なお、セカンドシート15は、吸収体20の上面の全部又は一部を被覆していることが好ましい。
【0031】
(マッチドエンボスパターン)
本発明においては、セカンドシート15が、3次元の凹部及び凸部を有するマッチドエンボスパターンを有する。ここで、マッチドエンボスパターンとは、例えば、特表2002−512660号公報に開示されるものであり、多数の凸体を有する凸ローラと、凸体と相補的な多数の凹体を有する凹ローラとで、凸体と凹体がかみ合うように不織布を挟み込み、必要に応じて熱を付与することにより形成されるものである。本発明の吸収性物品1に用いられるセカンドシート15は、このようなマッチドエンボスパターンを有していることにより、嵩高く維持されており、セカンドシート15の厚みは、好ましくは、0.3mm以上1.0mm以下となり、より好ましくは、0.5mm以上1.0mm以下となっている。
【0032】
また、セカンドシート15にマッチドエンボスパターンが付与されていることにより、セカンドシート15の平面内に凹部と凸部が形成されるので、セカンドシート15の平面方向の通気性が良好に維持されるとともに、セカンドシート15に体液が接触した場合に、セカンドシート15が体液を保持しやすくなる。これらの効果は、いずれも、吸収性物品1の吸収性能や、逆戻り性の改善に寄与することとなる。
【0033】
セカンドシート15が有するマッチドエンボスパターンのパターン形状は、円形若しくは楕円形;三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等の正多角形若しくは多角形;長手方向若しくは幅方向に延びる、互いに平行な直線、又は;互いに並行する曲線であることが好ましく、多角形の場合は、縦方向の寸法が横方向の寸法よりも長くてもよく、横方向の寸法が縦方向の寸法よりも長くてもよい。より好ましい態様において、本発明の吸収性物品1におけるセカンドシート15が有するマッチドエンボスパターンは、
図3に示すように、六角形又は正六角形の凹部と、六角形又は正六角形の凹部とが連続して構成されるハニカムパターンであることが好ましい。
【0034】
セカンドシート15が有するマッチドエンボスパターンの凹部の面積率は、5%以上90%以下であることが好ましく、15%以上80%以下であることがより好ましい。面積率を上記の範囲内のものとすることにより、マッチドエンボスパターンの3次元形状が十分に維持され、セカンドシート15の嵩高さが良好に維持される。
【0035】
本発明においては、吸収性物品1に、1層の不織布からなるセカンドシート15を2枚用いてもよい。この場合、2枚のセカンドシート15において対向する面の凸部及び凹部同士が重なるように、2枚のセカンドシート15を積層することが好ましい。セカンドシートを2枚使用することにより、吸収性物品の吸収性能が改善され、逆戻り性等も優位に改善される。
【0036】
[立体ギャザー]
吸収性物品1の身体接触側表面には、立体ギャザーが設けられていてもよい。この立体ギャザーは、トップシート10とともに体液の閉じ込め空間を形成し、体液の横漏れを防止できるようになっている。立体ギャザーは、立体ギャザーシートと、立体ギャザーシートの自由端部に沿って配された伸縮性弾性部材と、を備えていることが好ましい。伸縮性弾性部材としては、天然ゴム、合成ゴム、及びポリウレタン等からなる、糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。
【0037】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、必要に応じて、液拡散性シート及び立体ギャザーをあらかじめトップシート10上に配置し、このトップシート10とバックシート30との間にセカンドシート15や吸収体20を挟持する。そして、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。最後に、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折り等にして折り畳めばよい。
【0038】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0039】
<実施例1>
パルプシートを粉砕して解繊したフラッフパルプ15gと、高吸収性ポリマー7gとをともに積繊した吸収体マットを準備し、長さ270mm、幅90mmにカットした。この吸収体をトップシート、セカンドシート、及びバックシートとともに積層するとともに、1対の横漏れ防止用立体ギャザーを形成し、長さ300mm、幅120mの軽失禁パッドを作製し、実施例1のサンプルとした。なお、トップシートとしては、身体側にエアスルー不織布(坪量20g/m
2)を用い、バックシートとしては、ポリエチレンフィルム(坪量40g/m
2)を用いるとともに、セカンドシートには、長手方向の寸法が270mm、幅方向の寸法が60mmのハニカムパターンの三次元の凹部及び凸部を有する、マッチドエンボスパターンを有するエアスルー不織布(坪量30g/m
2、厚さ0.6mm)を用い、吸収体の全面を被覆していた。マッチドエンボスの面積率は15%であった。得られた吸収性物品について、吸収速度と液戻り量を調べた。
【0040】
(吸収速度)
外径80mmの円柱の中央に内径75mmの穴が開いており、重さ100gとした測定冶具を、トップシートを上に向けた状態で、尿取りパッドの長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水150mlを投下し、生理食塩水が尿取りパッドに接触した時点から、測定治具中央円内の円周に生理食塩水が完全に吸い込まれるまでを終点として時間を計測し、吸収速度とした。
【0041】
(液戻り量)
吸収性物品の中央に生理食塩水170mlを注入し、50秒後経過後に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製No.2ろ紙、直径55mm)を注入部の中心に置き、ろ紙の上に687gの錘を載せた(圧力;35gf/cm2)。錘を載せてから1分経過後に、ろ紙の重量を測り、試験前後のろ紙の重量差(g)を液戻り量とした。液戻り量は、N=10サンプルについて行ったものの平均値とした。液戻り量が少ないほど吸収性能に優れる。
【0042】
(シート厚さの測定方法)
シートの厚さは、ハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製)を用いて、35gf/cm
2の荷重条件下で測定した。
【0043】
<実施例2及び3>
セカンドシートの坪量及び厚さを、表1に示すように変更した点以外は、実施例1と同様にして、吸収性物品を作成した。
【0044】
<比較例1>
セカンドシートにマッチドエンボスパターンを付与しなかった点以外は、実施例1と同様にして、吸収性物品を作成した。比較例1の吸収性物品に用いたセカンドシートの枚数、坪量及び厚さは表1に示したとおりであった。
【0045】
実施例および比較例の吸水速度と液戻量の結果は表1に示したとおりであった。
【表1】
【符号の説明】
【0046】
1 吸収性物品
10 トップシート
15 セカンドシート
20 吸収体
30 バックシート