特開2018-39367(P2018-39367A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-39367(P2018-39367A)
(43)【公開日】2018年3月15日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20180216BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20180216BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20180216BHJP
【FI】
   B60C13/00 D
   B60C11/03 300C
   B60C11/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-174695(P2016-174695)
(22)【出願日】2016年9月7日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成28年5月1日、NITTO TIRE U.S.A.INC.において開示
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 早智雄
(57)【要約】
【課題】 重量バランスの不均一を抑制することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 空気入りタイヤにおいては、サイドウォール部は、タイヤ幅方向に突出する複数の突出部を備え、突出部は、タイヤ幅方向視において、少なくとも一部が複数のブロックのうち一つとタイヤ径方向で重なるように、配置され、複数の突出部の少なくとも一つは、少なくとも一つの開口部を備え、少なくとも一つの突出部において、開口部の開口面積の総和は、突出部の実表面積以下である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向に延びるサイドウォール部と、
タイヤ径方向の外側にトレッド面を有し、前記サイドウォール部のタイヤ径方向の外側端に連接されるトレッド部と、を備え、
前記トレッド部は、タイヤ幅方向の外側端まで延びる複数の溝と、前記複数の溝に区画されることにより、タイヤ周方向に並列される複数のブロックと、を備え、
前記サイドウォール部は、タイヤ幅方向に突出する複数の突出部を備え、
前記突出部は、タイヤ幅方向視において、少なくとも一部が前記複数のブロックのうち一つとタイヤ径方向で重なるように、配置され、
前記複数の突出部の少なくとも一つは、少なくとも一つの開口部を備え、
前記少なくとも一つの突出部において、前記開口部の開口面積の総和は、前記突出部の実表面積以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記開口部は、前記少なくとも一つの突出部に複数備えられ、
前記少なくとも一つの突出部において、前記開口部は、タイヤ径方向の領域が少なくとも一つの他の前記開口部のタイヤ径方向の領域と異なるように、配置されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記開口部は、タイヤ回転方向の前方側に配置される第1側面と、タイヤ回転方向の後方側に配置される第2側面とを備え、
前記第2側面が前記突出部の表面と成す角度は、前記第1側面が前記突出部の表面と成す角度よりも、直角に近い、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1側面が前記突出部の表面と成す角度は、鈍角である、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ幅方向に突出する複数の突出部を備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとして、タイヤ幅方向に突出する複数の突出部を備える空気入りタイヤが、知られている(例えば、特許文献1)。斯かる構成によれば、突出部が泥をせん断する際の抵抗や突出部と岩との間の摩擦等により、泥濘地や岩場でのトラクション性能が向上し、また、ゴム厚みの増加により、耐外傷性能が向上する。
【0003】
ところで、突出部の存在により、タイヤにおける重量バランスが不均一になり易い。これにより、例えば、タイヤ製造時(加硫時)に、ゴムが円滑に流れず、所望のタイヤ形状に対して欠け(ベア)が発生したり、また、例えば、車両装着時に、ユニフォミティが低下し、車両の振動や騒音の原因となったりする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−264962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、重量バランスの不均一を抑制することができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
空気入りタイヤは、タイヤ径方向に延びるサイドウォール部と、タイヤ径方向の外側にトレッド面を有し、前記サイドウォール部のタイヤ径方向の外側端に連接されるトレッド部と、を備え、前記トレッド部は、タイヤ幅方向の外側端まで延びる複数の溝と、前記複数の溝に区画されることにより、タイヤ周方向に並列される複数のブロックと、を備え、前記サイドウォール部は、タイヤ幅方向に突出する複数の突出部を備え、前記突出部は、タイヤ幅方向視において、少なくとも一部が前記複数のブロックのうち一つとタイヤ径方向で重なるように、配置され、前記複数の突出部の少なくとも一つは、少なくとも一つの開口部を備え、前記少なくとも一つの突出部において、前記開口部の開口面積の総和は、前記突出部の実表面積以下である。
【0007】
また、空気入りタイヤにおいては、前記開口部は、前記少なくとも一つの突出部に複数備えられ、前記少なくとも一つの突出部において、前記開口部は、タイヤ径方向の領域が少なくとも一つの他の前記開口部のタイヤ径方向の領域と異なるように、配置されている、という構成でもよい。
【0008】
また、空気入りタイヤにおいては、前記開口部は、タイヤ回転方向の前方側に配置される第1側面と、タイヤ回転方向の後方側に配置される第2側面とを備え、前記第2側面が前記突出部の表面と成す角度は、前記第1側面が前記突出部の表面と成す角度よりも、直角に近い、という構成でもよい。
【0009】
また、空気入りタイヤにおいては、前記第1側面が前記突出部の表面と成す角度は、鈍角である、という構成でもよい。
【発明の効果】
【0010】
以上の如く、空気入りタイヤは、重量バランスの不均一を抑制することができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
図2図2は、同実施形態に係る空気入りタイヤの要部正面図(タイヤ径方向視図)である。
図3図3は、同実施形態に係る空気入りタイヤの要部側面図(タイヤ幅方向視図)である。
図4図4は、図3のIV−IV線の要部拡大断面図である。
図5図5は、同実施形態に係る開口部の開口面積の領域を示す図である。
図6図6は、同実施形態に係る突出部の実表面積の領域を示す図である。
図7図7は、図3のVII−VII線の要部拡大断面図である。
図8図8は、他の実施形態に係る突出部を示す図である。
図9図9は、さらに他の実施形態に係る突出部を示す図である。
図10図10は、さらに他の実施形態に係る突出部を示す図である。
図11図11は、さらに他の実施形態に係る突出部を示す図である。
図12図12は、さらに他の実施形態に係る突出部を示す図である。
図13図13は、さらに他の実施形態に係る突出部を示す図である。
図14図14は、実施例と比較例との評価表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1図7を参酌して説明する。なお、各図(図8図13も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0013】
図1に示すように、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1は、ビード11aを有する一対のビード部11を備えている。そして、タイヤ1は、各ビード部11からタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12の各々のタイヤ径方向D2の外側端に連接され、地面と接するトレッド面13aをタイヤ径方向D2の外側に有するトレッド部13とを備えている。なお、タイヤ1は、リム(図示していない)に装着される。
【0014】
また、タイヤ1は、一対のビード11a,11aの間に架け渡されるカーカス層14と、カーカス層14の内側に配置され、空気が充填されるタイヤ1の内部空間に面するインナーライナー15とを備えている。カーカス層14及びインナーライナー15は、ビード部11、サイドウォール部12、及びトレッド部13に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0015】
図1(以下の図も同様)において、第1の方向D1は、タイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3(例えば、図2及び図3参照)は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D3である。また、タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ幅方向D1の中心に位置する面であり、タイヤ子午面は、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面である。
【0016】
ビード11aは、環状に形成されるビードコア11bと、ビードコア11bのタイヤ径方向D2の外側に配置されるビードフィラー11cとを備えている。例えば、ビードコア11bは、ゴム被覆されたビードワイヤ(例えば、金属線)を積層して形成され、ビードフィラー11cは、硬質ゴムを、タイヤ径方向D2の外側に向けてテーパ状にして形成されている。
【0017】
ビード部11は、リムに接触する外表面を構成すべく、カーカス層14のタイヤ幅方向D1の外側に配置されるリムストリップゴム11dを備えている。サイドウォール部12は、外表面を構成すべく、カーカス層14のタイヤ幅方向D1の外側に配置されるサイドウォールゴム12aを備えている。
【0018】
トレッド部13は、トレッド面13aを構成するトレッドゴム13bと、トレッドゴム13bとカーカス層14との間に配置されるベルト部13cとを備えている。ベルト部13cは、複数(図1においては、4つ)のベルトプライ13dを備えている。例えば、ベルトプライ13dは、平行配列した複数本のベルトコード(例えば、有機繊維や金属)と、ベルトコードを被覆するトッピングゴムとを備えている。
【0019】
カーカス層14は、少なくとも1つ(図1においては、2つ)のカーカスプライ14aで構成されている。カーカスプライ14aは、ビード11aを巻き込むようにビード11aの周りで折り返されている。また、カーカスプライ14aは、タイヤ周方向D3に対して略直交する方向に配列した複数のプライコード(例えば、有機繊維や金属)と、プライコードを被覆するトッピングゴムとを備えている。
【0020】
インナーライナー15は、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れている。なお、サイドウォール部12において、インナーライナー15は、カーカス層14の内周側に密接しており、インナーライナー15及びカーカス層14間には、他の部材は介在していない。
【0021】
例えば、最も内周側に配置されるカーカスプライ14aとタイヤ内周面(インナーライナー15の内周面)との間の距離において、サイドウォール部12の当該距離は、トレッド部13の当該距離の90%〜180%である。より具体的には、サイドウォール部12の当該距離は、トレッド部13の当該距離の120%〜160%である。
【0022】
なお、サイドウォール部12は、タイヤ最大幅となる位置(具体的には、カーカス層14のタイヤ幅方向D1の外側同士間の距離のうち、最大距離となる位置)とタイヤ径方向D2で同じになる位置12bを、外表面に備えている。以下、当該位置12bを、タイヤ最大幅位置12bという。
【0023】
また、サイドウォール部12は、ビードフィラー11cのタイヤ径方向D2の外側端11eと、タイヤ径方向D2で同じになる位置12cを、外表面に備えている。以下、当該位置12cを、ビードフィラー外側端位置12cという。
【0024】
図2図4に示すように、トレッド部13は、タイヤ幅方向D1の外側端まで延びる複数の溝2と、複数の溝2に区画されることにより、タイヤ周方向D3に並列される複数のブロック3とを備えている。また、サイドウォール部12は、プロファイル面(基準面)S2からタイヤ幅方向D1に突出する複数の突出部4と、プロファイル面S2からタイヤ幅方向D1に突出し、タイヤ周方向D3に沿って延びる環状突起部5とを備えている。
【0025】
なお、タイヤ周方向D3のうち、一方向側D3aは、車両前進時のタイヤ回転方向も示している。したがって、タイヤ周方向D3のうち、一方向側D3aは、タイヤ回転方向の前方側D3aとなり、また、タイヤ周方向D3のうち、他方向側D3bは、タイヤ回転方向の後方側D3bとなる。
【0026】
突出部4は、サイドウォール部12の少なくともタイヤ径方向D2の外側に配置されている。これにより、突出部4は、泥濘地や砂地において、車両の重みによりタイヤ1が沈降し、泥や砂に埋没した状態で接地したり、また、岩場において、凹凸の岩に接地したりできる。即ち、突出部4は、泥濘地、砂地、及び岩場といった悪路において、接地する。なお、突出部4は、平坦な道路において、通常走行時に接地しない。
【0027】
また、突出部4は、サイドウォール部12のビードフィラー外側端位置12c(図1参照)よりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。具体的には、突出部4は、サイドウォール部12のタイヤ最大幅位置12b(図1参照)よりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。
【0028】
突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、少なくとも一部が複数のブロック3のうち一つとタイヤ径方向D2で重なるように、配置されている。即ち、突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、タイヤ径方向D2で一つのブロック3のみと重なっている。そして、例えば、突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、タイヤ径方向D2で、ブロック3とタイヤ周方向D3の25%以上(好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上)の範囲で重なっている。
【0029】
突出部4のタイヤ径方向D2の外側端4aは、ブロック3のトレッド面13aより、タイヤ径方向D2の内側である。これにより、ブロック3のトレッド面13aと、突出部4のタイヤ径方向D2の外側端4aとにより、凹凸形状が形成されている。
【0030】
ところで、凹凸形状が存在することにより、面やエッジの成分が形成される。そして、泥、砂、岩に接地する部分に、凹凸形状が形成されることにより、泥、砂、岩に接地する面積が、大きくなったり、また、その凹凸形状による面やエッジが、さまざまな位置の泥、砂、岩に接地し易くなったりする。このように、泥、砂、岩に接地する部分に、凹凸形状が形成されることで、トラクション性能が向上する。
【0031】
突出部4は、開口部6,7を備えている。これにより、突出部4の存在により重量が増加する一方、開口部6,7が重量の増加を抑えているため、突出部4の存在に起因する重量バランスの不均一を抑制している。また、開口部6,7の存在により、面やエッジの成分が増加するため、トラクション性能が向上する。なお、第1及び第2開口部6,7は、タイヤ幅方向D1視で、それぞれ四角形状に形成されている。
【0032】
開口部6,7は、突出部4のタイヤ径方向D2の両端縁から離れて配置されている。さらに、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の両端縁から離れて配置されている。これにより、突出部4の開口部6,7周りの剛性を高めることができるため、突出部4によるトラクション性能を維持することができている。例えば、開口部6,7の開口縁と突出部4の端縁との間の幅寸法は、1.5mm以上(好ましくは、2.0mm以上)である。
【0033】
また、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心を含むように、配置されている。具体的には、開口部6,7のタイヤ周方向D3の中心位置は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心位置と一致している。そして、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心に対して線対称の形状となっている。これにより、タイヤ周方向D3において、重量バランスが不均一になることを抑制するため、車両装着時のユニフォミティが低下することを抑制できる。
【0034】
また、突出部4は、二つの開口部6,7を備えている。具体的には、突出部4は、タイヤ径方向D2の内側に配置される第1開口部6と、タイヤ径方向D2の外側に配置される第2開口部7とを備えている。第1開口部6は、環状突起部5よりも、タイヤ径方向D2の内側に配置されており、第2開口部7は、環状突起部5よりも、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。
【0035】
そして、第1開口部6のタイヤ径方向D2の領域(タイヤ径方向D2で占める位置)は、第2開口部7のタイヤ径方向D2の領域(タイヤ径方向D2で占める位置)と、異なっている。具体的には、開口部6のタイヤ径方向D2の領域は、他の開口部7のタイヤ径方向D2の領域と、完全に異なる。即ち、第1開口部6は、第2開口部7とタイヤ径方向D2で離れている。
【0036】
これにより、浅い泥濘地には、第2開口部7がトラクション性能を発揮し、深い泥濘地に対しては、第1及び第2開口部6,7がトラクション性能を発揮する。また、高い岩場に対しては、第1開口部6がトラクション性能を発揮し、低い岩場に対しては、第2開口部7がトラクション性能を発揮する。このように、さまざまな深さの泥濘地やさまざまな高さの岩場に対応することができる。
【0037】
ところで、開口部6,7を備える突出部4においては、図5及び図6に示すように、開口部6,7の開口面積(図5の網掛け線領域)A1a,A1bの総和A1は、突出部4の実表面積A2(図6の網掛け線領域)以下となっている。これにより、開口部6,7によりゴム厚みが薄くなることによる耐外傷性能の低下を抑制することができている。なお、突出部4の実表面積A2は、突出部4の端縁で囲われた見かけ上の表面積(開口面積A1a,A1bを含む面積)から、開口面積A1a,A1bを除いた面積である。
【0038】
そして、開口部6,7の存在による耐外傷性能の低下を抑制するために、開口部6,7の開口面積A1a,A1bの総和A1は、突出部4の実表面積A2に対して、3/7以下であることが好ましい。即ち、開口部6,7の開口面積A1a,A1bの総和A1は、突出部4の見かけ上の表面積の30%以下であることが好ましい。
【0039】
また、開口部6,7の存在により、トラクション性能を向上させるために、開口部6,7の開口面積A1a,A1bの総和A1は、突出部4の実表面積A2に対して、1/19以上であることが好ましく、さらに、1/9以上であることがより好ましい。即ち、開口部6,7の開口面積A1a,A1bの総和A1は、突出部4の見かけ上の表面積の5%以上であることが好ましく、さらに、10%以上であることがより好ましい。
【0040】
本実施形態においては、開口部6,7の開口面積A1a,A1bの総和A1は、突出部4の実表面積A2に対して、1/3である。即ち、本実施形態においては、開口部6,7の開口面積A1a,A1bの総和A1は、突出部4の見かけ上の表面積の25%である。
【0041】
また、図7に示すように、第2開口部7は、タイヤ回転方向の前方側D3aに配置される第1側面7aと、タイヤ回転方向の後方側D3bに配置される第2側面7bと、第1側面7aと第2側面7bとを接続する底面7cとを備えている。なお、図示していないが、第1開口部6も、第2開口部7と同じ構成を備えている。
【0042】
そして、第1側面7aが突出部4の表面と成す第1角度θ1は、鈍角となっている。これにより、実線矢印で示すように、泥が第2開口部7内に導入し易くなる。また、第2側面7bが突出部4の表面と成す第2角度θ2は、第1角度θ1よりも、直角に近くなっている。これにより、破線矢印で示すように、泥が第2側面7bに対して略垂直に衝突するため、第2側面7bが泥をせん断する際の抵抗は、大きくなる。
【0043】
このように、第1側面7aと第2側面7bとが協働することで、泥濘地でのトラクション性能を向上させることができている。本実施形態においては、第2角度θ2は、鈍角となっており、第1角度θ1よりも小さくなっている。
【0044】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向D2に延びるサイドウォール部12と、タイヤ径方向D2の外側にトレッド面13aを有し、前記サイドウォール部12のタイヤ径方向D2の外側端に連接されるトレッド部13と、を備え、前記トレッド部13は、タイヤ幅方向D1の外側端まで延びる複数の溝2と、前記複数の溝2に区画されることにより、タイヤ周方向D3に並列される複数のブロック3と、を備え、前記サイドウォール部12は、タイヤ幅方向D1に突出する複数の突出部4を備え、前記突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、少なくとも一部が前記複数のブロック3のうち一つとタイヤ径方向D2で重なるように、配置され、前記複数の突出部4の少なくとも一つは、少なくとも一つの開口部6,7を備え、前記少なくとも一つの突出部4において、前記開口部6,7の開口面積A1a,A1bの総和A1は、前記突出部4の実表面積A2以下である。
【0045】
斯かる構成によれば、突出部4は、タイヤ幅方向D1視において、少なくとも一部が複数のブロック3のうち一つとタイヤ径方向D2で重なるように、配置されている。したがって、ブロック3と突出部4とのタイヤ幅方向D1の位置関係(例えば、凹凸形状)により、トラクション性能が発揮される。
【0046】
また、突出部4の存在により、当該部分のゴム重量が大きくなる。そこで、複数の突出部4の少なくとも一つは、開口部6,7を備えている。これにより、突出部4の存在に起因する重量バランスの不均一を抑制することができている。しかも、開口部6,7の面やエッジにより、トラクション性能が発揮される。
【0047】
さらに、少なくとも一つの突出部4において、開口部6,7の開口面積A1a,A1bの総和A1が、突出部4の実表面積A2以下となっている。これにより、開口部6,7の存在により耐外傷性能が低下することを抑制することができている。
【0048】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記開口部6,7は、前記少なくとも一つの突出部4に複数備えられ、前記少なくとも一つの突出部4において、前記開口部6は、タイヤ径方向D2の領域が少なくとも一つの他の前記開口部7のタイヤ径方向D2の領域と異なるように、配置されている、という構成である。
【0049】
斯かる構成によれば、少なくとも一つの突出部4において、所定の開口部6のタイヤ径方向D2の領域は、少なくとも一つの他の開口部7のタイヤ径方向D2の領域と異なっている。これにより、さまざまな深さの泥濘地やさまざまな高さの岩場に対して、開口部6,7の面やエッジによるトラクション性能を発揮することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記開口部6,7は、タイヤ回転方向の前方側D3aに配置される第1側面7aと、タイヤ回転方向の後方側D3bに配置される第2側面7bとを備え、前記第2側面7bが前記突出部4の表面と成す角度θ2は、前記第1側面7aが前記突出部4の表面と成す角度θ1よりも、直角に近い、という構成である。
【0051】
斯かる構成によれば、第2側面7bが突出部4の表面と成す角度θ2が、第1側面7aが突出部4の表面と成す角度θ1よりも、直角に近くなっているため、例えば、第2側面7bが泥をせん断する際の抵抗は、大きくなる。これにより、例えば、泥濘地でのトラクション性能を効率的に向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記第1側面7aが前記突出部4の表面と成す角度θ1は、鈍角である、という構成である。
【0053】
斯かる構成によれば、第1側面7aが突出部4の表面と成す角度θ1は、鈍角となっているため、例えば、泥が開口部6,7内に導入し易くなる。これにより、例えば、第2側面7bにおける泥のせん断が発生し易くなるため、泥濘地でのトラクション性能をさらに効率的に向上させることができる。
【0054】
なお、空気入りタイヤは、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤは、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0055】
上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6のタイヤ径方向D2の領域は、他の開口部7のタイヤ径方向D2の領域と、完全に異なる、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、図8図11に示すように、所定の開口部8のタイヤ径方向D2の領域の少なくとも一部は、他の少なくとも一つの開口部8のタイヤ径方向D2の領域と、重なる、という構成でもよい。また、例えば、開口部のタイヤ径方向D2の領域は、他の全ての開口部のタイヤ径方向D2の領域と、完全に同じ、という構成でもよい。
【0056】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第2側面7bが突出部4の表面と成す第2角度θ2は、第1側面7aが突出部4の表面と成す第1角度θ1よりも、直角に近い、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、第1角度θ1は、第2角度θ2よりも、直角に近い、という構成でもよい。また、例えば、第1角度θ1は、第2角度θ2と同じ、という構成でもよい。
【0057】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1側面7aが突出部4の表面と成す第1角度θ1は、鈍角である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、第1角度θ1は、直角である、という構成でもよい。また、例えば、第1角度θ1は、鋭角である、という構成でもよい。
【0058】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心に対して線対称の形状である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、図9図10、及び図12に示すように、開口部8は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心に対して非対称の形状である、という構成でもよい。
【0059】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心を含むように、配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、図10に示すように、開口部8は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心から離れて、配置されている、という構成でもよい。
【0060】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7の開口面積A1a,A1bは、突出部4のタイヤ周方向D3の中心に対して、タイヤ回転方向の前方側D3a及び後方側D3bで同じである、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、図10に示すように、開口部8の開口面積は、突出部4のタイヤ周方向D3の中心に対して、タイヤ回転方向の前方側d3a及び後方側D3bで異なる、という構成でもよい。
【0061】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、タイヤ幅方向D1視で、四角形状に形成されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、図11及び図12に示すように、開口部8は、タイヤ幅方向D1視で、円形状(真円形状、楕円形状)に形成されている、という構成でもよい。また、例えば、図13に示すように、開口部8は、タイヤ幅方向D1視で、三角形状に形成されている、という構成でもよい。また、例えば、開口部は、タイヤ幅方向D1視で、五角形以上の多角形状に形成されている、という構成でもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、一つの突出部4に対して二つ備えられている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、開口部は、一つの突出部4に対して一つ又は三つ以上備えられている、という構成でもよい。例えば、図8図9、及び図12に示すように、開口部8は、一つの突出部4に対して三つ備えられている、という構成でもよい。また、例えば、図11に示すように、開口部8は、一つの突出部4に対して五つ備えられている、という構成でもよい。
【0063】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、全ての突出部4に備えられている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、開口部6,7は、複数の突出部4の少なくとも一つに備えられていればよい。なお、開口部6,7は、複数の突出部4の少なくとも1/4に備えられている構成が好ましく、少なくとも1/3に備えられている構成がより好ましく、少なくとも1/2に備えられている構成がさらに好ましい。
【0064】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、突出部4は、全て同じ形状であり、開口部6,7は、全て同じ形状である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、突出部4は、複数の異なる形状を備え、それぞれタイヤ周方向D3に順番に配置されている、という構成でもよい。また、例えば、開口部6,7は、複数の異なる形状を備え、それぞれの突出部4にタイヤ周方向D3に順番に配置されている、という構成でもよい。
【0065】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、突出部4のタイヤ径方向D2の両方の端縁からそれぞれ離れて配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、開口部6,7は、突出部4のタイヤ径方向D2の一方の端縁のみから離れて配置されている、という構成でもよい。
【0066】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の両方の端縁からそれぞれ離れて配置されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、開口部6,7は、突出部4のタイヤ周方向D3の一方の端縁のみから離れて配置されている、という構成でもよい。
【0067】
また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、突出部4は、一対のサイドウォール部12の両方に備えられている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤは、斯かる構成に限られない。例えば、突出部4は、一対のサイドウォール部12のうち一方に備えられている、という構成でもよい。例えば、突出部4は、一対のサイドウォール部12のうち、車両装着時に外側に配置されるサイドウォール部12に、少なくとも備えられている、という構成でもよい。
【0068】
また、空気入りタイヤ1においては、突出部4が、一対のサイドウォール部12の両方に備えられている構成に対して、開口部6,7は、一方側のサイドウォール部12の突出部4にのみ備えられている、という構成でもよく、両方のサイドウォール部12の突出部4に備えられている、という構成でもよい。例えば、開口部6,7は、一対のサイドウォール部12のうち、車両装着時に外側に配置されるサイドウォール部12の突出部4に、少なくとも備えられている、という構成でもよい。
【実施例】
【0069】
タイヤの構成と効果を具体的に示すため、タイヤの実施例とその比較例とについて、図14を参酌して、以下に説明する。
【0070】
<トラクション性能>
サイズがP265/70R17である各タイヤを車両F150に装着した上で、深さが5cmで長さが10mである泥プールに侵入し、一旦停止後、泥プールから脱出するまでの時間を計測した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きい(泥プールから脱出するまでの時間が短い)ほど、トラクション性能が優れていることを示す。
【0071】
<耐外傷性能>
サイズがP265/70R17である各タイヤを車両F150に装着し、速度10km/Hrで走行した状態で、タイヤを縁石に5回衝突させ、その際のゴム欠け量を測定した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きい(ゴム欠け量が少ない)ほど、耐外傷性能が優れていることを示す。
【0072】
<実施例1〜5>
実施例1は、図1図7に係る上記実施形態に係るタイヤである。即ち、実施例1においては、開口部の開口面積の総和A1は、突出部の実表面積A2に対して、1/3(=25/75)である。
実施例2は、実施例1に係るタイヤ対して、開口部の開口面積の総和A1が突出部の実表面積A2に対して1/19(=5/95)である構成に、変更したタイヤである。
実施例3は、実施例1に係るタイヤ対して、開口部の開口面積の総和A1が突出部の実表面積A2に対して1/9(=10/90)である構成に、変更したタイヤである。
実施例4は、実施例1に係るタイヤ対して、開口部の開口面積の総和A1が突出部の実表面積A2に対して3/7(=30/70)である構成に、変更したタイヤである。
実施例5は、実施例1に係るタイヤ対して、開口部の開口面積の総和A1が突出部の実表面積A2に対して1(=50/50)である構成に、変更したタイヤである。
【0073】
<比較例1〜2>
比較例1は、実施例1に係るタイヤ対して、開口部を備えていない構成に変更したタイヤである。
比較例2は、実施例1に係るタイヤ対して、開口部の開口面積の総和A1が突出部の実表面積A2に対して11/9(=55/45)である構成に、変更したタイヤである。即ち、開口部の開口面積の総和A1が突出部の実表面積A2よりも大きいタイヤである。
【0074】
<評価結果>
図14に示すように、比較例2は、比較例1に対して、トラクション性能を向上することができている一方、耐外傷性能の低下が10%以上であり、耐外傷性能の低下が著しい。それに対して、実施例1〜5は、比較例1に対して、トラクション性能を向上することができており、しかも、耐外傷性能の低下が10%以下である。
【0075】
したがって、実施例1〜5は、トラクション性能を向上することができ、さらに、耐外傷性能の低下を抑制することができている。このように、少なくとも一つの突出部が、少なくとも一つの開口部を備え、且つ、開口部の開口面積の総和A1が、突出部の実表面積A2以下という構成を採用することで、トラクション性能を向上することができると共に、耐外傷性能の低下を抑制することができている。
【0076】
また、タイヤのより好ましい実施例について、以下に説明する。
【0077】
まず、実施例2は、比較例1に対して、耐外傷性の低下が5%以下(1%)である一方、トラクション性能の向上が5%未満である。また、実施例5は、比較例1に対して、トラクション性能の向上が5%以上(15%)である一方、耐外傷性能の低下が5%以上である。
【0078】
それに対して、実施例1、3、及び4は、比較例1に対して、トラクション性能の向上が5%以上であり、しかも、耐外傷性能の低下が5%以下であり、両性能のバランスが良い。このように、トラクション性能の向上と耐外傷性能の低下抑制とを効果的に実現することができるため、開口部の開口面積の総和A1が突出部の実表面積A2に対して1/9(=10/90)以上で且つ3/7(=30/70)以下という構成が、好ましい。
【符号の説明】
【0079】
1…空気入りタイヤ、2…溝、3…ブロック、4…突出部、4a…外側端、5…環状突起部、6…第1開口部、7…第2開口部、7a…第1側面、7b…第2側面、7c…底面、8…開口部、11…ビード部、11a…ビード、11b…ビードコア、11c…ビードフィラー、11d…リムストリップゴム、11e…外側端、12…サイドウォール部、12a…サイドウォールゴム、12b…タイヤ最大幅位置、12c…ビードフィラー外側端位置、13…トレッド部、13a…トレッド面、13b…トレッドゴム、13c…ベルト部、13d…ベルトプライ、14…カーカス層、14a…カーカスプライ、15…インナーライナー、A1…開口面積の総和、A2…実表面積、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、D3a…タイヤ回転方向の前方側、D3b…タイヤ回転方向の後方側、S1…タイヤ赤道面、S2…プロファイル面
図1
図2
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図4
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図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14