(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-39710(P2018-39710A)
(43)【公開日】2018年3月15日
(54)【発明の名称】水素製造方法及び水素製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/08 20060101AFI20180216BHJP
【FI】
C01B3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-176818(P2016-176818)
(22)【出願日】2016年9月9日
(71)【出願人】
【識別番号】516047979
【氏名又は名称】山本 泰弘
(71)【出願人】
【識別番号】516047980
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
(57)【要約】
【課題】
改質した水とアルミニウムとを接触させることで水素を製造することができる水素の製造方法と、改質した水とアルミニウムとを接触させることで低温かつ、自身の反応熱を利用し、外部からのエネルギーを極力使用せず、低エネルギーで効率良く水素を製造するための水素製造装置とを提供することを目的とする。
【解決手段】
日本国内基準の飲料用水道水、または浄水器を通過した軟水を使用し、天然鉱石ないし人工鉱石に前記の水を通過させることによって生成して得た改質した水をアルミニウムとともに反応容器内に入れ、反応容器内で前記両者を接触させた状態で反応容器内の温度を常温以上かつ改質した水の沸点未満の条件で、前記改質した水とアルミニウムとを反応させて水素を発生させるようにしたことを特徴とする水素の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
日本国内基準の飲料用水道水、または浄水器を通過した軟水を使用し、天然鉱石および/または人工鉱石に前記の水を通過させることによって生成して得た改質した水をアルミニウムとともに反応容器内に入れ、反応容器内で前記両者を接触させた状態で反応容器内の温度を常温以上かつ改質した水の沸点未満の条件で、前記改質した水とアルミニウムとを反応させて水素を発生させるようにしたことを特徴とする水素の製造方法。
【請求項2】
前記反応容器内の温度を常温以上かつ改質した水の沸点未満の条件は、25℃以上かつ加温した水の沸点未満であることを特徴とする請求項1に記載の水素の製造方法。
【請求項3】
前記改質した水とアルミニウムを反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満として水素を発生させる水素の製造方法において、改質した水をアルカリ性とし、反応容器内のアルカリ性の改質した水に新たなアルミニウムを供給することで電気分解および加熱無しに反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満の間に保持して水素を発生させることを特徴とする請求項2に記載の水素の製造方法。
【請求項4】
前記反応容器内の温度が25℃未満の場合には、反応容器内の温度を加熱手段、電気分解、または改質した水にさらにアルカリ性物質を投入することによって継続的に反応容器内温度を上昇させ、改質した水とアルミニウムを反応させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の水素の製造方法。
【請求項5】
前記飲料用水道水または浄水器を通過した水は、さらにRO膜処理を含む純水処理工程と、水にミネラル成分を含有ないし添加するミネラル成分添加工程を経るようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の水素の製造方法。
【請求項6】
前記改質した水を生成するための天然鉱石または人工鉱石が以下のものから選ばれてなる請求項1ないし5のいずれかに記載の水素の製造方法。
<天然鉱石の種類>
黄鉄鉱、白鉄鉱、辰砂、方鉛鉱、斑銅鉱、ハロゲン化鉱物、蛍石、氷晶石、トルマリン、黒曜石、マグネシウム、方解石、ウレキサイト(テレビ石)、コールマン石、硼砂、ハウライト、石膏、重晶石、天青石、燐灰ウラン石、カルノー石、錦石、黒砂金石、麦飯石、石英
<その粒径>
1〜5mm、5〜10mm、10〜20mm、20〜40mm、30〜50mm
<人工鉱石>
人工鉱石は、その他の物質としてアルミニウム、ステンレス、銀から選ばれた少なくとも1種類の金属との混合物
<添加ミネラル>
天然鉱石他、天然鉱石より抽出出来るミネラルを添加することも有効である。例えば花崗岩などから抽出するミネラル使用する。
例として添加ミネラル成分及び添加する個体の物質として以下を使用する
カルシウム、リン、ケイ素、マグネシウム、ナトリウム、セレン、亜鉛、バナジウム、ゲルマニウム、ニッケル、マンガン、モリブデン、銅、タングステン、コバルト、リチウム、バリウム、鉄、カリウム、アルミニウム、ルビジウム、チタンなどが挙げられる。
【請求項7】
前記天然鉱石は、トルマリン、黒曜石,花崗岩、方鉛鉱、斑銅鉱、ハロゲン化鉱物、蛍石、氷晶石のうち少なくとも1つから選ばれた岩石であることを特徴とする請求項6に記載の水素の製造方法。
【請求項8】
前記反応容器内に投入する改質した水とアルミニウムの比率は、改質した水100重量部に対して、アルミニウムを5重量部以上とすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の水素の製造方法。
【請求項9】
前記アルミニウムの重量部を10重量部以上としたことを特徴とする請求項8に記載の水素の製造方法。
【請求項10】
前記改質した水は、水酸化ナトリウムを加えた水酸化ナトリウム水溶液として反応容器内でアルミニウムと接触させることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の水素の製造方法。
【請求項11】
前記反応容器内の温度は、反応容器の外部からの熱を加える加熱手段を用いずに、水酸化ナトリウム水溶液とアルミニウムとの反応熱によって25℃以上にすることを特徴とする請求項10に記載の水素の製造方法。
【請求項12】
前記反応容器内の温度は、水酸化ナトリウム水溶液とアルミニウムとの反応熱によって反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満にすることを特徴とする請求項10に記載の水素の製造方法。
【請求項13】
前記水酸化ナトリウム水溶液は、水酸化ナトリウムの濃度を0.1%以上とすることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の水素の製造方法。
【請求項14】
前記水酸化ナトリウム水溶液は、水酸化ナトリウムの濃度を3%以上とすることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の水素の製造方法。
【請求項15】
前記改質した水とアルミニウムを反応容器内の温度を常温以上かつ改質した水の沸点未満として水素を発生させる水素の製造方法において、反応容器の底にアルミニウムを配置し、そのアルミニウムの最上位よりも水酸化ナトリウム水溶液の液面を上位とすることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の水素の製造方法。
【請求項16】
日本国内基準の飲料用水道水、または浄水器を通過した軟水の投入手段と、該水を通過させる天然鉱石および/または人工鉱石を内蔵した水の改質手段と、該水に水酸化ナトリウムを添加して水をアルカリ性とする水酸化ナトリウム添加手段と、該アルカリ性の改質した水とアルミニウムとを収容するための反応容器と、前記反応容器にアルミニウムを投入するためのアルミニウム投入手段と、前記改質した水とアルミニウムとの反応により水素が発生して生成された酸化アルミニウム粉体の回収手段とを有することを特徴とする水素の製造装置。
【請求項17】
前記水素の製造装置は、改質した水を貯留するタンクを備え、該タンクの中にはフィルタ筒が設置されてその中に天然鉱石および/または人工鉱石が配置されており、改質した水とアルミニウムと反応させるための前記反応容器は、前記改質した水とアルミニウムとを反応させる第一次反応容器と、該反応容器で発生した水素と酸素と水分とから水素を分離させる第二次反応容器とで構成されたことを特徴とする請求項16に記載の水素の製造装置。
【請求項18】
前記水素の製造装置は、前記改質した水とアルミニウムとを反応容器内で温度を25℃以上にして水素を発生させるものであることを特徴とする請求項16または17に記載の水素の製造装置。
【請求項19】
前記水素の製造装置は、前記改質した水に水酸化ナトリウムを混合する手段を備え、水酸化ナトリウムの濃度を0.1%以上とするものであることを特徴とする請求項16ないし18のいずれかに記載の水素の製造装置。
【請求項20】
前記水素の製造装置は、前記水酸化ナトリウムの濃度を3%以上とするものであることを特徴とする請求項19に記載の水素の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質した水とアルミニウムとを用いて水素を発生させるための水素製造方法および水素製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスとして水素を使用することが従来から知られている。水素を製造する製造方法としては多くの発明が提供されている。
例えば、a.水100%を熱分解して水素を得る方法や、b.硫酸を熱分解し、ヨウ素水を用いて水素を取り出すIS法(Iodine−Sulfe)法等が知られている。b.IS法は、ブンゼン反応工程と、ヨウ化水素濃縮分解行程と、硫酸濃縮分解行程による3つの行程を経て、水から水素と酸素とを分解して取り出すものである(特開2005−41764号公報、特許文献1参照)。
その他に、c.金属亜鉛とマグネタイトと水とを反応させ、反応生成物として水素を発生させる水の分解方法が知られている(特開2001−270701号公報、特許文献2)。
【0003】
さらに、d.アルミニウムやマグネシウムと水とを接触させることで、水素を発生させる水素の製造方法も知られている(特開2007−290888号公報、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−41764号公報
【特許文献2】特開2001−270701号公報
【特許文献3】特開2007−290888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のa.水100%を熱分解して水素を得る方法では、水は水素と酸素との結びつきが強いため、理論上3,000℃〜5,000℃の温度を与えないと、水素と酸素に分解しないと言われている。3,000℃以上の温度で水を熱分解して水素を得る方法では、3,000℃以上の高温を得る実質的な方法が得られないことや、そのような高温状態の空間を外界から保つための設備を安価に作れないことや、高温の空間内に連続的に水を供給する手段が考えられないこと等、多くの問題を含んでいることから、水の熱分解による水素の生成は実現には至っていない。
【0006】
b.特許文献1に示すIS法では、900℃程度の高熱を必要とするため、熱源として高温ガス炉等を用いなければならない。この高温ガス炉は製造コストが高く、しかも3つの工程を経て水素を製造することになり、水素を製造するためのコストが非常に高いものとなっていた。
【0007】
c.特許文献2に示す水の分解方法では、金属亜鉛とマグネタイトとを600℃で水蒸気と反応させることで水素を製造するものであり、600℃の水蒸気を作るための加熱手段を備えなければならない。
【0008】
d.特許文献3に示す水素の製造方法では、水としてpHが4〜10の不凍水を使用するもので、0℃以下でも水素を発生させるものである。この特許文献3では、アルミニウムと水との反応によって水素を発生させるが、0℃以下の低温で反応を行なうことから、低温では水素を大量に発生させることはできず、高い経済効率で水素を発生させることができない。
【0009】
本発明は、改質した水とアルミニウムとを接触させることで水素を製造することができる水素の製造方法と、改質した水とアルミニウムとを接触させることで低温かつ、自身の反応熱を利用し、外部からのエネルギーを極力使用せず、低エネルギーで効率良く水素を製造するための水素製造装置とを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の水素の製造方法は、水は日本の飲料水としての水道水規格、浄水器で濾過、RO膜などにて純水にし、ミネラルを添加した水、軟水である水、などを条件にした水を使用する。その後に天然鉱石または人工鉱石、あるいは天然鉱石および人工鉱石に通過させることによって生成するものを改質した水とし、改質した水とアルミニウムとを反応容器内に入れて反応容器内で接触させた状態で反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満とすることで、改質した水とアルミニウムとを反応させて水素を発生させることを特徴とするものである。
本発明は、アルミニウムを粉末またはインゴット状、粒状、あらゆる形の粉体とし、反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満にして水素を発生させることで改質した水をアルカリ性(アルカリ性の改質した水)とする。そして、該反応容器内のアルカリ性の特殊な水に新たなアルミニウムからなる粉末またはインゴット状、粒状、あらゆる形の粉体を供給することで、加熱手段による加熱無しに前記反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満の間に保持して水素を発生させることを特徴とするものである。
本発明は、反応容器内の温度が25℃以上で80℃未満の場合に、反応容器内の温度を加熱手段及び電気分解によって継続的に上昇させることをも特徴とするものである。
本発明は、改質した水を生成するための天然鉱石として、黄鉄鉱、白鉄鉱、辰砂、方鉛鉱、斑銅鉱、ハロゲン化鉱物、蛍石、氷晶石、トルマリン、黒曜石、マグネシウム、方解石、ウレキサイト(テレビ石)、コールマン石、硼砂、ハウライト、石膏、重晶石、天青石、燐灰ウラン石、カルノー石、錦石、黒砂金石、麦飯石、石英等を用い、その粒径としては種類に応じて1〜5mm、5〜10mm、10〜20mm、20〜40mm、30〜50mmとすることが挙げられる。
また改質した水を生成するための人工鉱石としては、テラヘルツ鉱石等が挙げられる。
人工鉱石を用いる場合には、人工鉱石以外の物質としてアルミニウム、ステンレス、銀を少なくとも1種類の金属を混合させたことをも特徴とするものである。
また天然鉱石の他、天然鉱石より抽出出来るミネラルを添加することも有効である。例えば花崗岩などから抽出するミネラルを使用する。
添加ミネラル成分及び添加する個体の物質の例として以下の、カルシウム、リン、ケイ素、マグネシウム、ナトリウム、セレン、亜鉛、バナジウム、ゲルマニウム、ニッケル、マンガン、モリブデン、銅、タングステン、コバルト、リチウム、バリウム、鉄、カリウム、アルミニウム、ルビジウム、チタンなどが挙げられる。
本発明は、前記改質した水100重量部に対して、アルミニウムを3重量部以上、望ましくは15重量部以上配合することを特徴とするものである。さらに本発明は、前記アルミニウムの重量部を10≡40重量部以上とすることをも特徴とするものである。
【0011】
本発明は、改質した水にアルカリ性物質を加える。例えば代表的なもので水酸化ナトリウムが挙げられる。水酸化ナトリウムを加えた水酸化ナトリウム水溶液を用意し、反応容器内でアルミニウムと接触させることを特徴とするものである。本発明は、反応容器の外部からの熱を加える加熱手段を用いずに、水酸化ナトリウム水溶液とアルミニウムとの反応熱のみによって反応容器内の温度を25℃以上にすることを特徴とするものである。
本発明は、水酸化ナトリウム水溶液と前記アルミニウムとの反応熱によって反応容器内の温度を25℃以上にすることを特徴とするものである。そして本発明は、酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムの濃度を0.1%以上とすることを特徴とするものである。本発明は、水酸化ナトリウム水溶液における水酸化ナトリウムの濃度を0.1%≡3%以上とすることを特徴とするものである。
本発明は、反応容器にて改質した水とアルミニウムとを接触させるために、アルミニウムを収容するための反応容器と、反応容器にアルミニウムを投入するためのアルミニウム投入手段を備え、前記アルミニウム投入手段から反応容器内に投入されたアルミニウムは、水素発生後に酸化アルミニウム粉体になり、アルミニウムは変化を遂げる。なお投入するアルミニウムはその形をカートリッジ式にし、前記反応容器内で安易に交換出来る装置であること、また変化されたアルミニウムの酸化アルミニウム粉体は、カートリッジ内で分離し、回収可能な状態で取り出すことができる装置であることを特徴とするものである。
また本発明は、反応容器の底に前記アルミニウムを投入し、そのアルミニウムの最上位よりも前記水酸化ナトリウム水溶液の液面を上位とすることを特徴とするものである。
また、アルミニウムと接触する水は、タンク内に静止する状態で投入するばかりでなく、流れる状態で接触させることも出来る。固定されたアルミニウムに水を連続的に接触させる方法も挙げられる。反対に水の中にアルミニウムを連続的に接触させて任意の状態で反応を連続的に行うことができる。そうすることで、反応を止めたり、反応をスタートさせたりと、繰り返して任意の時間でその反応を行うことができる。
この改質した水とアルミニウムのほか、マグネシウムを用いて反応させるほかに、反応を促進させるために、同時に改質した水内のタンクに電極を設けて、電気分解による水素発生を同時に行うことが可能になる。
電極のほか、アルミニウムも反応して、電気を帯びたアルミニウムからは水素が大量に発生する。
この時に、水素と酸素と水が亜臨界点の状態に似た動きをする水が入り混じり、水素濃度を任意で高めたり、酸素水素ガスを生成することも出来る。酸素水素ガスHHOの状態のガス物質である。それはブラウンガスとも呼ばれている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水素の製造方法の請求項1で使用する材料は、市販のアルミニウムと改質した水との2種類の材料のみを用いるものであり、それらを反応容器内の温度を25℃以上にすることで水素を発生させるものである。本発明では、材料として化学剤やアルミニウム以外の金属を主要材料としなくても、アルミニウムと改質した水のみを用いて、非常に安価なコストで水素を製造することができる。
【0013】
本発明で使用する改質した水は、ヒドロキシルイオン(H
3O
2−)や水酸化イオン(OH
+)や水素イオン(H
+)等の水素原子を大量に含んでいるものである。アルミニウムは電極両性元素であることから、改質した水が25℃以上の温度になるとアルミニウムに多くのプラスの電極とマイナスの電極が現れ、そのプラスの電極とマイナスの電極が微弱電流を発生して反応容器内の改質した水の電気分解を促進させ、改質した水から水素を大量に発生させると推測される。さらに、改質した水から水素を発生させる時間が長いので、大量の水素を発生することができる。それは、本発明は、改質した水に含まれる代表的な状態としてヒドロキシルイオン(H
3O
2−)によって、アルミニウムの表面に膜が張るのを遅らせる効果があるのではないかと推測される。
【0014】
本発明において、改質した水とアルミニウムとを反応容器内で接触させて水素を発生させる場合、反応容器の加熱温度は25℃以上かつ改質した水の沸点未満であるため、大気圧の下での反応容器の加熱で済ませることができる。大気圧の下での加熱であるので、従来の水の熱分解のような3,000℃〜5,000℃に昇温しなければならないような特別な装置を必要とせずに、安価で簡単な装置で水素を発生させることができる。
なお、加熱手段を使用して反応容器内のアルミニウムと改質した水とを加熱する場合には、水とアルミニウムとの接触の停止及び、加熱の停止によって、水素の発生を停止することができる。よって、水素の発生と停止とを速やかに行なうことが可能となり、水素を燃料として使用する種々の装置に応用することができる。
【0015】
改質した水とアルミニウムとを入れた反応容器を一旦25℃以上に加熱して水素を発生させた後の改質した水に、新たなアルミニウムを接触させれば(反応容器内に入れれば)、水素を発生した後の改質した水と新たなアルミニウムとの接触によって、加熱手段で加熱しなくても、反応容器内の温度は25℃以上に保持され、水素が継続して発生する。
このように加熱手段を用いなくても水素を継続して発生するので、加熱にかかる燃料コストを省くことができる。これは、中性またはアルカリ性の改質した水はアルミニウムと反応して水素を一部発生した後、改質した水はアルカリ性となり、加熱手段による加熱をしなくても、この反応容器内のアルカリ性の改質した水が新たに加えたアルミニウムと反応して、反応容器内の温度は2 5℃以上に保持され、水素が継続して発生する。なお、アルミニウムを粉末とした場合に、発生する水素の量が大幅に増加する。
【0016】
反応容器にアルミニウムを入れ、改質した水、又は水酸化ナトリウム水溶液でアルミニウムの最上位を覆う。即ち、アルミニウムを改質した水や水酸化ナトリウム水溶液の中に浸漬させるようにすれば、改質した水に含まれるヒドロキシルイオン(H
3O
2−)によって、アルミニウムの表面への酸化被膜の発生を遅らせることができ、水素の発生時間を長くすることができる。
【0017】
改質した水のみに代えて、改質した水に水酸化ナトリウムを混合した水酸化ナトリウム水溶液を用いても良い。改質した水に水酸化ナトリウムを混合した水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合には、水酸化ナトリウム水溶液とアルミニウムとを反応容器内で接触させることで反応熱が発生する。その反応熱は自己昇温によって反応容器内の温度を25℃以上にすることができ、反応容器の外部から熱を加える加熱手段を用いなくても、反応容器内に水素を発生させることができる。
アルミニウムと水酸化ナトリウム水溶液とによる反応熱によって、反応容器内の温度が上昇し、水素がより大量に発生する25℃から80℃になるので、大量に水素を発生させたい場合にも適応することができる。従来の反応容器の外部から熱を加える加熱手段の温度は600℃〜5,000℃であり、高価な設備を必要としたが、本発明では反応容器の外部からの熱を加える加熱手段を省略でき、改質した水に水酸化ナトリウムを加えた水酸化ナトリウム水溶液とアルミニウムのみを使用するものであり、低コストで水素を製造することができる。本発明は、反応熱による自己昇温によって水素を発生させるものであり、反応容器の外部からの火や電気による熱を加える加熱手段を用いないものであるので、この水素発生方法に係る装置を自動車等に搭載することが可能となる。
【0018】
本発明の水素の製造方法において、改質した水に水酸化ナトリウムを混合した水酸化ナトリウム水溶液を用いることによって、改質した水のみの場合と比べて、水素の発生量を増加させるとともに、酸素の発生量を大幅に減少させることができる。酸素の発生比率を限りなく低くした場合には、水素と酸素を含む気体から酸素を分離する方法を簡単なものとすることができ、水素を製造するコストを低減することができる。
【0019】
本発明の水素発生装置では、加熱手段を用いなくてもアルミニウムと接触させるだけで水素を発生するアルカリ性の改質した水を用いる。アルミニウムと接触させるだけで水素を発生する水としては、改質した水とアルミニウムとを接触させて、一旦25℃から80℃に加熱して水素を発生した後の水(アルカリ性となっている)か、特殊な水と水酸化ナトリウムを混合した水酸化ナトリウム水溶液かのいずれかを用いる。アルカリ性の改質した水とアルミニウムとを収容するための反応容器内に、アルミニウムを載せるための載置部材(カートリッジ)を収容し、その載置部材を反応容器内の底面より上方となるよう反応容器内に配置する。載置部材の上のアルミニウムは、アルカリ性の改質した水と反応することによって溶けて酸化アルミニウムに変化する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の水素の製造方法に適用される水素の製造装置の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の水素の製造方法について、図面を参照して説明する。
図1はこの発明の水素の製造方法に使用される水素の製造装置を示すものである。
図1に示す水素の製造装置の構造図において、主要な反応槽11にはアルミニウムのカートリッジ12が保持され、また原水(改質した水)が注水されて前記カートリッジ12は原水11a中に浸漬されている。また反応槽11上部の蓋11bには触媒フィーダー13が設置され、水酸化ナトリウム水溶液からなる触媒が適宜タイミングないし分量で反応槽11内に注入されるようになっている。
また原水11aのレベルは常時計測され、常にアルミニウムのカートリッジ12が原水11a内に保持されるよう補充される。また反応槽11内の気圧が高まり過ぎた場合にはガスの圧力を逃がすよう、適宜位置にリリーフ弁14が付設されている。
前記反応槽11において発生した水素ガスは、分離タンク15に送られて水素ガスのみが取り出され、反応によって生じる圧力と同じ圧で、真空状態の貯留タンク17に保存できる。
必要に応じて水素ガスは、コンプレッサ16等で加圧した状態で貯留タンク17に送り込むこともできる。
また、エンジン発電機18で発電した上、バッテリー19で蓄電することもできる。20は全体を制御する制御盤である。
【0022】
また、反応によって出た水素が貯留タンク17に移行し貯蔵する圧力は、2気圧から3気圧程度である。そしてその貯蔵された水素を圧縮圧送装置によって、任意の圧力でさらに圧力を高めた貯蔵を可能にする。
圧力が加えられる水素の貯留タンク17は、圧力を任意に調整できて、その水素を適宜放出できるものとすることが可能である。
以下、この発明の水素の製造方法について、複数の実施例を基に詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
改質した水(天然鉱石)+アルミニウム
水は日本の飲料水としての水道水規格に適合した水を使用し、天然鉱石に通過させることによって生成したものを改質した水とする。
本例では、改質した水を生成するための天然鉱石として、黄鉄鉱、白鉄鉱、辰砂、方鉛鉱、斑銅鉱、ハロゲン化鉱物、蛍石、氷晶石、トルマリン、黒曜石、マグネシウム、方解石、ウレキサイト(テレビ石)、コールマン石、硼砂、ハウライト、石膏、重晶石、天青石、燐灰ウラン石、カルノー石、錦石、黒砂金石、麦飯石、石英等を用い、その粒径としては種類に応じて1〜5mm、5〜10mm、10〜20mm、20〜40mm、30〜50mmとしたものをろ過器内に充填し、上記水道水を通過させて改質した水を得た。
この改質した水100重量部に対して、15重量部のアルミニウムを反応容器内に入れて反応容器内で接触させた状態で反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満に保持することで、改質した水とアルミニウムとが反応して迅速に水素を発生させることができた。
そして、該反応容器内の水素発生によってアルカリ性を呈する特殊な水に新たなアルミニウムからなる粉末またはインゴット状、粒状、粉体等を供給したところ、加熱手段による加熱無しに前記反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満の間に保持することができ、しかも継続的に水素を発生させるができた。
水素の発生については、貯留タンクから放出させたガスに着火したところ、爆発的に発火したことで確かめることができた。
【実施例2】
【0024】
改質した水(人工鉱石)+アルミニウム
水は日本の飲料水としての水道水規格に適合した水を使用し、人工鉱石に通過させることによって生成したものを改質した水とする。
改質した水を生成するための人工鉱石としてはテラヘルツ鉱石等を挙げることができる。その粒径としては種類に応じて1〜5mm、5〜10mm、10〜20mm、20〜40mm、30〜50mmとしたものをろ過器内に充填し、上記水道水を通過させて改質した水を得た。
この改質した水100重量部に対して、20重量部のアルミニウムを反応容器内に入れて反応容器内で接触させた状態で反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満に保持することで、改質した水とアルミニウムとが反応して迅速に水素を発生させることができた。
そして、該反応容器内の水素発生によってアルカリ性を呈する特殊な水に新たなアルミニウムからなる粉末またはインゴット状、粒状、粉体等を供給したところ、加熱手段による加熱無しに前記反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満の間に保持することができ、しかも継続的に水素を発生させるができた。
水素の発生については、貯留タンクから放出させたガスに着火したところ、爆発的に発火したことで確かめることができた。
【実施例3】
【0025】
改質した水(天然鉱石、人工鉱石)+水酸化ナトリウム+アルミニウム
水酸化ナトリウムの濃度(0.1%、3%)
水は日本の飲料水としての水道水規格に適合した水を使用し、天然鉱石および人工鉱石に通過させることによって生成したものを改質した水とする。
本例では、改質した水を生成するための天然鉱石として、黄鉄鉱、白鉄鉱、辰砂、方鉛鉱、斑銅鉱、ハロゲン化鉱物、蛍石、氷晶石、トルマリン、黒曜石、マグネシウム、方解石、ウレキサイト(テレビ石)、コールマン石、硼砂、ハウライト、石膏、重晶石、天青石、燐灰ウラン石、カルノー石、錦石、黒砂金石、麦飯石、石英等を用い、その粒径としては種類に応じて1〜5mm、5〜10mm、10〜20mm、20〜40mm、30〜50mmとしたものをろ過器内に充填した。
また、改質した水を生成するための人工鉱石としてテラヘルツ鉱石を用い、天然鉱石とともにろ過器内に充填した。
その上で、上記水道水を通過させて改質した水を得た。
この改質した水100重量部に対して、25重量部のアルミニウムと、水酸化ナトリウム(濃度:0.1%、3%)を反応容器内に入れて反応容器内で接触させた状態で反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満に保持することで、改質した水とアルミニウムとが反応して迅速に水素を発生させることができた。
そして、該反応容器内の水素発生によってアルカリ性を呈する特殊な水に新たなアルミニウムからなる粉末またはインゴット状、粒状、粉体等、および水酸化ナトリウムを供給したところ、加熱手段による加熱無しに前記反応容器内の温度を25℃以上かつ改質した水の沸点未満の間に保持することができ、しかも継続的に水素を発生させるができた。
水素の発生については、貯留タンクから放出させたガスに着火したところ、爆発的に発火したことで確かめることができた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
放出される水素は、エンジン構造がガソリンエンジンのようなものならば、LPガスを燃料にするエンジンと同様にエンジンを起動することができる。
水素利用方法として、エンジンを起動できることから、ガソリン仕様の発電機、自動車エンジンに用いることができる。
水素で起動しているエンジンから排出される排気ガスは、ガソリン仕様の排気ガスと異なり、水または水蒸気が排気ガスから排気ガスとして放出される。
また、水素ガスをそのまま燃焼用の装置、例えばガスコンロのような調理器具にも仕様することが出来る。燃焼用の装置に本技術を用いた水素ガスを仕様する場合は、燃焼用器具の改造が既存の装置に対して必要になる。
【符号の説明】
【0027】
11 反応槽
11a 原水
11b 蓋
12 カートリッジ
13 触媒フィーダー
14 リリーフ弁
15 分離タンク
16 コンプレッサ
17 貯留タンク
18 エンジン発電機
19 バッテリー
20 制御盤