前記第2導電型コレクタ層は、前記第1導電型ベース層の表面の法線方向から見た平面視において、前記第2導電型コラム層に交差する形状に形成され、当該交差部分において前記第2導電型コラム層に対向している、請求項7に記載の半導体装置。
前記第2導電型コレクタ層は、前記第1導電型ベース層の表面の法線方向から見た平面視において、前記第2導電型コラム層に平行なストライプ状に形成されている、請求項7に記載の半導体装置。
前記第2導電型コレクタ層は、前記第1導電型ベース層の表面の法線方向から見た平面視において、多角形状または円形状に形成されている、請求項13に記載の半導体装置。
前記第1導電型ベース層は、前記複数の第2導電型コレクタ層の上方領域に形成された第1導電型ドリフト層よりも不純物濃度が高く、前記複数の第2導電型コレクタ層の各間に配置された第1導電型コンタクト層を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置1の模式的な平面図である。
図2は、
図1のII−II切断面における断面図である。なお、
図1では、説明に必要な構成のみを示しており、たとえばゲート電極7、ソース電極8等の図示を省略している。
【0022】
半導体装置1は、スーパージャンクション構造を有するnチャンネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
半導体装置1は、n
−型ベース層2と、p型コラム層3と、p型ベース層4と、n
+型ソース層5と、ゲート絶縁膜6と、ゲート電極7と、ソース電極8と、n
+型コンタクト層9と、p
+型コレクタ層10と、ドレイン電極11と、空乏層緩和領域30と、トラップレベル領域32とを含む。ゲート電極7上には、層間絶縁膜12が配置されている。
【0023】
n
−型ベース層2は、n型不純物が注入された半導体層である。より具体的には、n型不純物を注入しながらエピタキシャル成長されたn型エピタキシャル層であってもよい。n型不純物としては、P(リン)、As(ヒ素)、SB(アンチモン)などを用いることができる。
p型コラム層3およびp型ベース層4は、p型不純物が注入された半導体層である。より具体的には、n
−型ベース層2に対してp型不純物をイオン注入(インプラ)することによって形成された半導体層であってもよい。p型不純物としては、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)などを適用することができる。
【0024】
p型ベース層4は、
図1に示すように、n
−型ベース層2の表面の法線方向から見た平面視(以下、単に「平面視」とする)において周期的に離散配置された複数の領域において、n
−型ベース層2の表面部に選択的に形成されている。この実施形態では、複数のp型ベース層4は、互いに平行なストライプ状に形成されている。各p型ベース層4の幅は、たとえば、3μm〜10μmである。個々のp型ベース層4およびその周囲のn
−型ベース層2を含む領域は、セル13を形成している。すなわち、この半導体装置1は、
図1のレイアウトでは、平面視においてストライプ状に配列された多数(複数)のセル13を有している。
【0025】
p型コラム層3は、平面視において、各セル13のp型ベース層4の内方の領域に形成されている。より具体的には、この実施形態では、p型コラム層3は、平面視において、p型ベース層4の幅方向中央の領域においてストライプ状に形成されている。p型コラム層3は、p型ベース層4に連なるように形成されており、n
−型ベース層2において、p型ベース層4よりも深い位置までn
−型ベース層2の裏面に向かって延びている。したがって、p型コラム層3は、隣り合うp型ベース層4との間に連続性を持って配列されている。p型コラム層3のピッチP
1(本発明の第1周期の一例)は、10μm〜20μmである。ここで、ピッチP
1とは、p型コラム層3と、隣り合うp型コラム層3の間のn
−型ベース層2とを一つの繰り返し単位とし、当該繰り返し単位のn
−型ベース層2の表面に沿う方向の長さのことである。この実施形態では、p型コラム層3が各p型ベース層4の幅方向中央に配置されていることから、ピッチP
1はセル13のピッチ(セルピッチ)に一致している。
【0026】
各p型コラム層3は、n
−型ベース層2の厚さ方向に沿う側面が当該方向に沿って周期的に起伏した凹凸面となっている。また、各p型コラム層3の底部からn
−型ベース層2の裏面までのn
−型ベース層2の厚さは、15μm以上であることが好ましい。15μm以上であれば、600V以上の耐圧性能を実現することができる。
p型ベース層4およびp型コラム層3とn
−型ベース層2との界面は、pn接合面であり、寄生ダイオード(ボディダイオード)14を形成している。
【0027】
n
+型ソース層5は、平面視において各セル13のp型ベース層4の内方領域に形成されている。n
+型ソース層5は、当該領域において、p型ベース層4の表面部に選択的に形成されている。n
+型ソース層5は、p型ベース層4にn型不純物を選択的にイオン注入することによって形成されてもよい。n型不純物の例は、前述のとおりである。n
+型ソース層5は、p型ベース層4の周縁(p型ベース層4とn
−型ベース層2との界面)から所定距離だけ内側に位置するようにp型ベース層4内に形成されている。これにより、n
−型ベース層2およびp型ベース層4等を含む半導体層の表層領域において、n
+型ソース層5とn
−型ベース層2との間には、p型ベース層4の表面部が介在し、この介在している表面部がチャネル領域15を提供する。
【0028】
この実施形態では、n
+型ソース層5は、
図1に示すように平面視ストライプ状に形成されており、p型コラム層3の側面よりも外側の領域に形成されている。チャネル領域15は、n
+型ソース層5の形状に応じて、ストライプ状の形状を有している。
ゲート絶縁膜6は、たとえば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、ハフニウム酸化膜、アルミナ膜、タンタル酸化膜などからなっていてもよい。ゲート絶縁膜6は、少なくともチャネル領域15におけるp型ベース層4の表面を覆うように形成されている。この実施形態では、ゲート絶縁膜6は、n
+型ソース層5の一部、チャネル領域15、およびn
−型ベース層2の表面を覆うように形成されている。より端的には、ゲート絶縁膜6は、各セル13のp型ベース層4の中央領域およびこの領域に連なるn
+型ソース層5の内縁領域に開口を有するパターンで形成されている。
【0029】
ゲート電極7は、ゲート絶縁膜6を介してチャネル領域15に対向するように形成されている。ゲート電極7は、たとえば、不純物を注入して低抵抗化したポリシリコンからなっていてもよい。この実施形態では、ゲート電極7は、ゲート絶縁膜6とほぼ同じパターンに形成されており、ゲート絶縁膜6の表面を覆っている。すなわち、ゲート電極7は、n
+型ソース層5の一部、チャネル領域15、およびn
−型ベース層2の表面の上方に配置されている。より端的には、ゲート電極7は、各セル13のp型ベース層4の中央領域およびこの領域に連なるn
+型ソース層5の内縁領域に開口を有するパターンで形成されている。すなわち、ゲート電極7は、複数のセル13を共通に制御するように形成されている。これにより、プレーナゲート構造が構成されている。
【0030】
層間絶縁膜12は、たとえば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、TEOS(テトラエトキシシラン)などの絶縁材料からなる。層間絶縁膜12は、ゲート電極7の上面および側面を覆い、各セル13のp型ベース層4の中央領域およびこの領域に連なるn
+型ソース層5の内縁領域にコンタクト孔16を有するパターンで形成されている。
ソース電極8は、アルミニウムその他の金属からなる。ソース電極8は、層間絶縁膜12の表面を覆い、かつ各セル13のコンタクト孔16に埋め込まれるように形成されている。これにより、ソース電極8は、n
+型ソース層5にオーミック接続されている。したがって、ソース電極8は、複数のセル13に並列に接続されており、複数のセル13に流れる全電流が流れるように構成されている。また、ソース電極8は、コンタクト孔16を介して各セル13のp型ベース層4にオーミック接続されており、p型ベース層4の電位を安定化する。
【0031】
n
+型コンタクト層9は、n
−型ベース層2の裏面全体にわたって形成されている。n
+型コンタクト層9は、p型コラム層3の底部に対して間隔が空くような深さで形成されている。これにより、p型コラム層3とn
+型コンタクト層9との間には、n
−型ベース層2が介在している。
p
+型コレクタ層10は、n
−型ベース層2の裏面に選択的に形成され、当該裏面に沿って連続性を持って複数配列されている。この実施形態では、p
+型コレクタ層10は、
図1にクロスハッチングで明示するように平面視においてp型コラム層3に平行なストライプ状に形成されている。これにより、n
−型ベース層2の裏面には、p
+型コレクタ層10と、隣り合うp
+型コレクタ層10間のn
+型コンタクト層9とがストライプ状に交互に露出することとなる。
【0032】
p
+型コレクタ層10のピッチP
2(本発明の第2周期の一例)は、p型コラム層3のピッチP
1よりも大きい。これにより、半導体装置1は、n
−型ベース層2の厚さ方向において、p
+型コレクタ層10に対向するp型コラム層3と、p
+型コレクタ層10に対向せずに、隣り合うp
+型コレクタ層10の間のn型部分に対向するp型コラム層3とを選択的に有することとなる。
【0033】
ここで、ピッチP
2とは、p
+型コレクタ層10と、隣り合うp
+型コレクタ層10の間のn
+型コンタクト層9とを一つの繰り返し単位とし、当該繰り返し単位のn
−型ベース層2の表面に沿う方向の長さのことである。この繰り返し単位においてp
+型コレクタ層10とn
+型コンタクト層9が占める割合(幅)は、適宜変更可能であるが、この実施形態では1:1である。一方、この繰り返し単位においてp
+型コレクタ層10とn
+型コンタクト層9が占める割合(幅)は、別の局面から、n
−型ベース層2の裏面全体に対するp
+型コレクタ層10の占有率が50%〜80%となるように定めてもよい。
【0034】
そして、p
+型コレクタ層10のピッチP
2は、ピッチP
1よりも大きければ特に制限されないが、好ましくはピッチP
1の2倍〜5倍である。これにより、半導体装置1の低電圧域および高電圧域の両方において良好なオン抵抗をバランスよく達成することができる。なお、
図1および
図2では、図面のスペースの制約から、ピッチP
2がピッチP
1の2倍の場合を示しているが、むろん、3倍、4倍、5倍、6倍およびそれ以上であってもよい。したがって、ピッチP
2=2×ピッチP
1を示す
図1および
図2では、p
+型コレクタ層10は、p型コラム層3を横切る方向に沿って、p型コラム層3一つ置きに一対一で対向しているが、ピッチP
2>2×ピッチP
1の場合には、隣り合う複数のp型コラム層3に跨るように対向していてもよい。また、ピッチP
2の具体的な大きさとしては、たとえば、前述のようにp型コラム層3のピッチP
1が5μm〜20μmである場合には、5μm〜200μmである。
【0035】
さらにp
+型コレクタ層10の構成について説明を加えると、p
+型コレクタ層10の不純物濃度は、1×10
17cm
−3〜1×10
22cm
−3である。また、p
+型コレクタ層10は、n
−型ベース層2の裏面からn
+型コンタクト層9を厚さ方向に貫通してn
−型ベース層2に達するように形成されており、n
−型ベース層2の裏面から0.2μm〜3μmの深さを有している。また、p
+型コレクタ層10の幅は、5μm〜200μmである。
【0036】
ドレイン電極11は、アルミニウムその他の金属からなる。ドレイン電極11は、n
−型ベース層2の裏面に、n
+型コンタクト層9およびp
+型コレクタ層10に接するように形成されている。これにより、ドレイン電極11は、複数のセル13に並列に接続されており、複数のセル13に流れる全電流が流れるように構成されている。この実施形態では、n
−型ベース層2の裏面にn
+型コンタクト層9が形成されているので、ドレイン電極11をn
−型ベース層2に対して良好にオーミック接触させることができる。
【0037】
ドレイン電極11を高電位側、ソース電極8を低電位側として、ソース電極8およびドレイン電極11の間に直流電源を接続すると、寄生ダイオード14には逆バイアスが与えられる。このとき、ゲート電極7に所定の閾値電圧よりも低い制御電圧が与えられていると、ドレイン−ソース間にはいずれの電流経路も形成されない。すなわち、半導体装置1は、オフ状態となる。一方、ゲート電極7に閾値電圧以上の制御電圧を与えると、チャネル領域15の表面に電子が引き寄せられて反転層(チャネル)が形成される。これにより、n
+型ソース層5とn
−型ベース層2との間が導通する。すなわち、ソース電極8から、n
+型ソース層5、チャネル領域15の反転層、n
−型ベース層2を順に通って、ドレイン電極11に至る電流経路が形成される。すなわち、半導体装置1は、オン状態となる。
【0038】
この構成によれば、n
−型ベース層2の裏面に複数のp
+型コレクタ層10が選択的に形成されているので、当該裏面にはn
−型ベース層2とp
+型コレクタ層10の両方が露出することとなる。これにより、n
−型ベース層2の裏面に、当該露出したn
−型ベース層2およびp
+型コレクタ層10の両方に接するようにドレイン電極11を形成することによって、低電圧域でのセット効率に優れるMOSFETの特性と、高電圧域において伝導度変調を発生させることができるIGBTの特性とを併せ持つ半導体装置1を提供することができる。
【0039】
一方、n
−型ベース層2の裏面全体に対する、n
−型ベース層2およびp
+型コレクタ層10のそれぞれの占有率は、裏面全体がn型もしくはp型の領域単独で占有される一般的なMOSFETおよびIGBTに比べて小さくなる。そのため、n
−型ベース層2およびp
+型コレクタ層10の一方の面積を増やせば、他方の面積が狭くなる。その結果、相対的に狭い層に対するドレイン電極11のコンタクト抵抗が高くなり、そのオン抵抗の低減効果が弱まってしまう。つまり、半導体装置1に付与されたMOSFETの特性とIGBTの特性との間にはトレードオフの関係がある。
【0040】
そこで、本願発明者が鋭意研究したところ、p
+型コレクタ層10のピッチP
2をp型コラム層3のピッチP
1と一致(ピッチP
1=ピッチP
2)させるのではなく、ピッチP
1よりも大きくすることによって(ピッチP
2>ピッチP
1)、低電圧域および高電圧域の両方においてオン抵抗をバランスよく低減することができた。その結果、この半導体装置1によれば、アプリケーションに最適なデバイス特性に制御することができる。
【0041】
電動モータ等の誘導性負荷を駆動するインバータ回路に半導体装置1が適用されるとき、ソース電極8がドレイン電極11よりも高電位となって、寄生ダイオード14がオンし、この寄生ダイオード14を通って電流が流れる場合がある。その後、ソース電極8がドレイン電極11よりも低電位となると、寄生ダイオード14は、逆バイアス状態となって、ターンオフする。このターンオフ時には、寄生ダイオード14のpn接合部から空乏層が広がり、p型ベース層4およびp型コラム層3内のキャリヤ(正孔)がソース電極8側に移動し、n
−型ベース層2内のキャリヤ(電子)がドレイン電極11側へと移動する。
【0042】
このキャリヤの移動により、寄生ダイオード14がオン状態のときとは逆方向への電流が流れる。この電流は、逆回復電流とよばれる。逆回復電流は、一旦増加し、その後に減少する。ダイオードの順方向電流が零となってから、逆回復電流の大きさがその最大値の10%にまで減少するまでの時間は逆回復時間と呼ばれる。逆回復電流の変化(di/dt)が大きいときは、電流が零に収束するまでに振動(リンギング)が生じる場合がある。このような逆回復特性は、ハードリカバリと呼ばれ、ノイズや誤動作の原因となる。
【0043】
トラップレベル領域32は、逆回復時間の短縮に寄与する。また、空乏層緩和領域30は、ハードリカバリの緩和に寄与する。
トラップレベル領域32は、n
−型ベース層2の裏面側から重粒子を照射することによって形成された領域である。トラップレベル領域32には、キャリヤをトラップして再結合させることにより消失させる再結合中心が多く存在している。これにより、寄生ダイオード14がターンオフするときにキャリヤを速やかに消失させることができるから、逆回復時間および逆回復電流を低減できる。
【0044】
トラップレベル領域32は、n
−型ベース層2内において、n
−型ベース層2の裏面から予め設定された深さ位置に薄く(たとえば1μm〜3μm程度の厚さで)広がるように局所的に形成されている。トラップレベル領域32は、p型コラム層3に接していてもよいし、p型コラム層3と接しておらず、p型コラム層3の底部とp
+型コレクタ層10との間に位置していてもよい。トラップレベル領域32は、p型コラム層3の底部の近くに位置している方が逆回復時間の短縮に効果的である反面、p型コラム層3の底部から離れている方がドレイン・ソース間リーク電流の低減に効果的である。逆回復時間およびドレイン・ソース間リーク電流のいずれをも低減するためには、トラップレベル領域32の厚さ方向中心位置は、p型コラム層3の底部からp
+型コレクタ層10に向かって5μm〜10μmの範囲に位置していることが好ましい。これにより、たとえば、逆回復時間を80nsec以下にすることができ、かつドレイン・ソース間リーク電流を数μA以下にできる。したがって、寄生ダイオード14を、高電圧域でIGBTのように動作する半導体装置1のFRD(ファーストリカバリダイオード)として利用することができる。その結果、半導体装置1のFRDを省略することができる。
【0045】
トラップレベル領域32の形成には、プロトン、
3He
++、
4He
++などの重粒子の照射を適用することができる。なかでも、質量の大きなヘリウム原子核(
3He
++、または
4He
++)は、再結合中心の厚さ方向の分布域を狭くすることができ、厚さ方向に関して狭い範囲に再結合中心を局所的に分布させることができるので、好ましい。
空乏層緩和領域30は、n
−型ベース層2の裏面側から重粒子を照射し、さらに熱処理によってその重粒子をドナー化して形成された領域である。ドナー化した重粒子は、寄生ダイオード14がターンオフするときにそのpn接合部から広がる空乏層の広がりを抑制する。これにより、空乏層が広がる速さが緩和されるので、逆回復電流の変化速度を抑制でき、それによって、ハードリカバリを緩和できる。
【0046】
空乏層緩和領域30は、n
−型ベース層2内において、n
−型ベース層2の裏面から設定された深さ位置に厚く(トラップレベル領域32よりも厚く。たとえば5μm〜10μm程度の厚さで)広がるように形成されている。空乏層緩和領域30は、p型コラム層3に接していてもよいし、p型コラム層3に接していなくてもよい。また、空乏層緩和領域30は、p型コラム層3との重複領域を有していてもよいし、p型コラム層3との重複領域を有しておらず、p型コラム層3の底部とp
+型コレクタ層10との間に全体が位置していてもよい。空乏層緩和領域30はドナーを含む領域であるので、p型コラム層3の機能を損なわないように、p型コラム層3と重複する領域は、可能な限り少ないことが好ましい。また、空乏層緩和領域30は、空乏層の広がりを緩和する目的からは、p型コラム層3に近いことが好ましい。そこで、
図2に示すように、空乏層緩和領域30の上側縁がp型コラム層3の底部とほぼ一致するように、空乏層緩和領域30の配置を選択するのが最も好ましい。
【0047】
空乏層緩和領域30の形成には、プロトン、
3He
++、
4He
++などの重粒子照射を適用することができる。なかでも、質量の小さなプロトンは、厚さ方向に広く分布するように導入できるので、厚い空乏層緩和領域30の形成に適している。また、プロトンは、比較的低温(たとえば、350℃〜450℃)の熱処理でドナー化を行える。そのため、たとえば、ドレイン電極11等の形成前でも形成後でも、プロトンの照射およびそのドナー化(熱処理)を行うことができる。したがって、プロトンを用いることにすれば、プロセスの自由度が増す。
【0048】
上記説明した空乏層緩和領域30の配置と、トラップレベル領域32との配置は、任意に組み合わせることができる。
図3A〜
図3Jは、半導体装置1の製造工程の一部を工程順に示す図である。
まず、
図3Aに示すように、基板17上に、n型不純物を注入しながら行うエピタキシャル成長によって、初期ベース層18が形成される。エピタキシャル成長の条件は、たとえば、5.0Ω・cm、厚さ50μmである。基板17としては、n型シリコン基板を採用することができるが、この基板17は後の工程で除去するものであるので、高品質なものである必要はなく、安価な基板を使用することができる。
【0049】
次に、
図3Bに示すように、初期ベース層18の上に、p型不純物を所定の位置に選択的に注入(Bイオンを50keV、5.3×10
13cm
−2、0度で注入)しながら5Ω・cm/6μmの薄いn型半導体層19を形成する工程を繰り返すマルチエピタキシャル成長を実行することにより、p型不純物の注入位置が上下間で重なり合う複数層のn型半導体層19を積層させる。これにより、複数枚のn型半導体層19と初期ベース層18とが一体化されて、n
−型ベース層2が形成される。
【0050】
次に、
図3Cに示すように、アニール処理(1000℃〜1200℃)を行うことにより、複数層のn型半導体層19のp型不純物をドライブ拡散させる。これにより、p型コラム層3が形成される。
次に、n
−型ベース層2の表面部に選択的に比較的低いエネルギでp型不純物が注入(Bイオンを50keV、5.0×10
15cm
−2、7度で注入)されて、p型ベース層4が形成される。また、平面視においてp型ベース層4内においてp型ベース層4の外周縁から所定距離だけ内方に後退した位置に外縁部を有する所定幅の環状領域にn型不純物が選択的に注入(Pイオンを130keV、2.0×10
15cm
−2、7度で注入)され、これにより、n
+型ソース層5が形成される。
【0051】
次に、n
−型ベース層2およびp型ベース層4の表面(半導体結晶の表面)を覆うように、ゲート絶縁膜6が形成される。このゲート絶縁膜6は、半導体結晶表面の熱酸化によって形成されてもよい。さらに、ゲート絶縁膜6上に、ゲート電極7が形成される。ゲート電極7の形成は、たとえば、不純物を添加して低抵抗化したポリシリコン膜を全表面に形成し、その後、そのポリシリコン膜をフォトリソグラフィによって選択的にエッチングすることによって行ってもよい。このエッチングのときには、ゲート絶縁膜6を同時にパターニングして、ゲート電極7およびゲート絶縁膜6を同一パターンに形成してもよい。さらに、ゲート電極7を覆うように、層間絶縁膜12(たとえば、32000Å厚)が形成され、この層間絶縁膜12に、フォトリソグラフィによって、コンタクト孔16が形成される。次に、層間絶縁膜12上に、ソース電極8が形成され、必要に応じて、合金化によるオーミック接合形成のための熱処理が行われる。ソース電極8の形成は、たとえば、Ti/TiN(たとえば250/1300Å)のバリア膜を形成する工程と、当該バリア膜上にAlCu膜(たとえば4.2μm)堆積させる工程とを含む工程であってもよい。この後、図示しない表面保護膜(たとえば、16000Å厚)が形成され、その表面保護膜に、ソース電極8の一部をパッドとして露出させるパッド開口が形成される。
【0052】
次に、
図3Dに示すように、たとえばグラインダを用いて基板17を裏面側から研削する。この研削は、基板17を完全に除去してn
−型ベース層2の裏面が露出した後、p型コラム層3の直下のn
−型ベース層2の厚さが30μm以上残るように行う。研削後、n
−型ベース層2の裏面をスピンエッチングすることにより、裏面を鏡面に仕上げる。
このように、製造工程の途中までn
−型ベース層2が基板17に支持されているので、n
−型ベース層2の搬送・ハンドリングを行い易くすることができる。また、基板17の研削に続けてn
−型ベース層2の研削を連続して実行することができるので、p型コラム層3の直下のn
−型ベース層2の厚さを簡単に調節することができる。
【0053】
この後、
図3Eに示すように、n
−型ベース層2の裏面から、第1回の重粒子照射が行われる。このときに照射される重粒子(第1重粒子)としては、比較的質量の小さいもの、たとえばプロトンが用いられる。その後、低温の熱処理(低温アニール)が行われる。これにより、照射された重粒子がドナー化する。重粒子としてプロトンを選択した場合には、たとえば、350℃〜450℃程度(たとえば360℃)で30分〜90分程度(たとえば60分)の熱処理により、導入されたプロトンをドナー化できる。
【0054】
このようにして、第1重粒子の照射およびその後の低温熱処理によって、空乏層緩和領域30が形成される。第1重粒子を照射するときのエネルギを大きくすれば、第1重粒子の飛程が長くなるから、n
−型ベース層2の裏面から遠い位置に空乏層緩和領域30が形成され、そのエネルギを小さくすれば、重粒子の飛程が短くなるから、n
−型ベース層2の裏面から近い位置に空乏層緩和領域30が形成される。したがって、空乏層緩和領域30の配置に応じて、第1重粒子の照射のエネルギが設定される。少なくとも空乏層緩和領域30の一部がp型コラム層3の底部とp
+型コレクタ層10との間に位置するように、第1重粒子の照射エネルギが設定される(たとえば8MeV程度)。第1重粒子(たとえばプロトン)のドーズ量は、たとえば、5×10
13個/cm
2〜1×10
14個/cm
2程度とすればよい。
【0055】
次いで、
図3Fに示すように、n
−型ベース層2の裏面から、第2回の重粒子照射が行われる。このときに照射される重粒子(第2重粒子)としては、比較的質量の大きいもの、たとえばヘリウム原子核(
3He
++または
4He
++)が用いられる。その後、低温の熱処理(低温アニール)が行われる。これにより、照射された第2重粒子が活性化する。第2重粒子としてヘリウム原子核(
3He
++または
4He
++)を選択した場合には、たとえば、320℃〜380℃(たとえば350℃)で30分〜120分程度(たとえば60分)の熱処理により、導入されたヘリウム原子核を活性化できる。
【0056】
こうして、トラップレベル領域32が形成される。第2重粒子を照射するときのエネルギを大きくすれば、第2重粒子の飛程が長くなるから、n
−型ベース層2の裏面から遠い位置にトラップレベル領域32が形成され、そのエネルギを小さくすれば、第2重粒子の飛程が短くなるから、n
−型ベース層2の裏面から近い位置にトラップレベル領域32が形成される。したがって、トラップレベル領域32の配置に応じて、第2重粒子の照射エネルギが設定される。たとえば、トラップレベル領域32がp型コラム層3の底部とp
+型コレクタ層10との間に位置するように、第2重粒子の照射エネルギが設定される(たとえば23MeV程度)。重粒子のドーズ量は、たとえば、5×10
10個/cm
2〜5×10
12個/cm
2程度とすればよい。
【0057】
次に、
図3Gに示すように、n
−型ベース層2の裏面へ向かってn型不純物を全面に注入(Asイオンを30keV、1.0×10
15cm
−2、0度で注入)し、アニール処理することにより、n
+型コンタクト層9が形成される。
次に、
図3Hに示すように、n
−型ベース層2の裏面を選択的に露出させるフォトレジスト20が形成される。そして、このフォトレジスト20を介して、まずBイオンを100keV、1.0×10
15cm
−2、7度の傾斜角度で注入する。続けて、Bイオンを注入する工程よりも小さなエネルギ、具体的には、30keV、1.0×10
15cm
−2、7度(同じ傾斜角度)でBF
2イオンを注入する。この際、BイオンおよびBF
2イオンをn
−型ベース層2の裏面に対して垂直ではなく、所定の傾斜角度を持たせて斜め注入することにより、イオンがn
−型ベース層2の深くまで入っていくチャネリングを防止することができる。この後、フォトレジスト20を、たとえばアッシングにより除去する。
【0058】
次に、
図3Iに示すように、n
−型ベース層2をレーザアニール処理することにより、前工程で注入したBイオンおよびBF
2イオンを活性化させる。これにより、n
+型コンタクト層9の一部の導電型がn型からp型へと反転して、p
+型コレクタ層10が形成される。
このとき、高温(たとえば1500℃程度)のアニール処理を実行しないので、ソース電極8の溶融を防止することができる。つまり、ソース電極8などの高温環境下で溶融し易い金属系の部分を、このアニール処理に先立って作製することができる。そのため、n
−型ベース層2の表面側の構造の大部分もしくは全てを、当該アニール処理を行う前に作製することができる。その結果、n
−型ベース層2の表裏面を何度も逆にしなくて済むので、製造効率を向上させることができる。
【0059】
次に、
図3Jに示すように、n
−型ベース層2の裏面にドレイン電極11が形成され、必要に応じて、合金化によるオーミック接合形成のための熱処理が行われる。ドレイン電極11の形成は、Ti、Ni、AuおよびAgをこの順にスパッタしてする工程であってもよい。
以上の工程を経て、
図1および
図2の半導体装置1を得ることができる。
<p型コラム層3およびp
+型コレクタ層10のレイアウトの変形例>
次に、
図4〜
図7を参照して、p型コラム層3およびp
+型コレクタ層10のレイアウトの変形例について説明する。
【0060】
まず
図4および
図5では、ストライプ状のp型コラム層3に対するp
+型コレクタ層10レイアウトの変形例を示している。
具体的には、
図4では、p
+型コレクタ層10は、平面視においてストライプ状のp型コラム層3に交差するストライプ状に形成されている。より具体的には、p型コラム層3に直交するストライプ状に形成されている。この
図4の構成によれば、各p
+型コレクタ層10は、ストライプ状のp型コラム層3を連続して横切ることとなり、全てのp型コラム層3に対して均等に対向することとなる。その結果、セル13間におけるp
+型コレクタ層10の面積のばらつきをなくすことができるので、セル13間でのオン抵抗のばらつきを小さくすることができる。なお、
図4では、p型コラム層3に交差するストライプ状のp
+型コレクタ層10の一例として、これらの層3,10が互いに直交する場合を示しているが、p
+型コレクタ層10は、たとえば鋭角もしくは鈍角の傾斜角度で、p型コラム層3に対して斜めに交差していてもよい。
【0061】
一方、
図5では、p
+型コレクタ層10は、平面視において格子状に離散配置されており、各p
+型コレクタ層10は、隣り合う複数のp型コラム層3に跨るようにp型コラム層3に交差する(横切る)ひし形状に形成されている。各p
+型コレクタ層10の形状は、
図5に示すようにひし形状であってもよく、その他の多角形状や円形状であってもよい。この
図5の構成によれば、p
+型コレクタ層10は、
図4の構成のようにストライプ状のp型コラム層3を連続して横切るものではないが、周期的な格子状に配列されていることから、
図4の場合と同様に、全てのp型コラム層3に対して均等に対向させることができる。その結果、セル13間におけるp
+型コレクタ層10の面積のばらつきをなくすことができるので、セル13間でのオン抵抗のばらつきを小さくすることができる。
【0062】
次に、
図6および
図7では、ひし形状のp型コラム層3に対するp
+型コレクタ層10レイアウトの変形例を示している。すなわち、
図6および
図7では、p型コラム層3は、n
−型ベース層2の表面部に格子状に離散配置された各p型ベース層4の内方領域に形成されており、p型コラム層3を取り囲むようにn
+型ソース層5が形成されている。各p型ベース層4の形状は、
図6および
図7に示すようにひし形状であってもよく、その他の多角形状や円形状であってもよい。また、p型コラム層3の形状も、各p型ベース層4に合わせてひし形であってもよく、その他の多角形状や円形状であってもよい。
【0063】
そして、p
+型コレクタ層10は、
図6では互いに平行なストライプ状に形成されており、
図7ではp型ベース層4よりも大きいひし形状に形成されている。
図7においてp
+型コレクタ層10は、平面視において格子状に離散配置されている。
以上、
図4〜
図7に示した変形例はほんの一例に過ぎず、p型コラム層3およびp
+型コレクタ層10のレイアウトは、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
<p型コラム層3の製造工程の変形例>
次に、
図8A〜
図8Dを参照して、p型コラム層3の製造工程の変形例について説明する。
【0064】
前述の説明では、p型コラム層3は、
図3A〜
図3Cに示すように、初期ベース層18の形成後、マルチエピタキシャル成長によりp型不純物を注入しながら複数枚のn型半導体層19を形成し、その後、アニール処理を行うことにより形成されたが、たとえば、
図8A〜
図8Dの工程により形成してもよい。
具体的には、まず、基板17の上に、n
−型ベース層2をエピタキシャル成長させる。次に、
図8Aに示すように、n
−型ベース層2上にハードマスク24を形成する。ハードマスク24をパターニングした後、当該ハードマスク24を介して、n
−型ベース層2をドライエッチングする。これにより、n
−型ベース層2にトレンチ25を形成する。
【0065】
次に、
図8Bに示すように、ハードマスク24を除去した後、そのトレンチ25内部からn
−型ベース層2の表面が覆われるまで、p型半導体層26をエピタキシャル成長させる。
次に、
図8Cに示すように、n
−型ベース層2の表面を覆うトレンチ25外のp型半導体層26を、たとえばエッチバックにより除去する。これにより、トレンチ25に埋め込まれたp型コラム層3が形成される。
【0066】
その後は、
図8Dに示すように、
図3Cと同様の工程を実行し、
図3D〜
図3Jと同様の工程を実行すればよい。
この方法によれば、トレンチ25にp型半導体層26を埋め込むことによってp型コラム層3を形成するので、n
−型ベース層2の厚さ方向に沿う各p型コラム層3の側面を、当該方向に沿って平坦な面にすることができる。
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置31の模式的な断面図である。
図9において、前述の
図2に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。
【0067】
図9の半導体装置31は、単一層からなるn
−型ベース層2に代えて、n
+型基板33と、n
+型基板33上に形成されたn
−型ドリフト層34との積層構造からなるn型ベース層36を含む。n型ベース層36において、n
−型ドリフト層34は相対的に不純物濃度が低く、n
+型基板33は相対的に不純物濃度が高い。これにより、n
+型基板33は、n
−型ドリフト層34を支持する役割とともに、前述のn
+型コンタクト層9の役割を兼ねている。
【0068】
p
+型コレクタ層35は、n
+型基板33の裏面からn
+型基板33を厚さ方向に貫通してn
−型ドリフト層34の裏面に達するように形成されていて、n
+型基板33の裏面に露出している。ピッチP
2、不純物濃度、形状等に関しては、p
+型コレクタ層35は、前述のp
+型コレクタ層10と同様である。
図10A〜
図10Eは、
図9の半導体装置31の製造工程の一部を工程順に示す図である。
【0069】
この半導体装置31を製造するには、まず、
図10Aに示すように、n
+型基板33(たとえばn
+型シリコン基板)上に、n
+型基板33の表面を選択的に露出させるフォトレジスト27が形成される。そして、このフォトレジスト27を介して、p型不純物をイオン注入する。イオン注入のやり方は、
図3Hの工程に倣って行えばよい。イオン注入後、フォトレジスト27を、たとえばアッシングにより除去する。
【0070】
次に、
図10Bおよび
図10Cに示すように、
図3Aおよび
図3Bの工程と同様に、n
+型基板33上に初期ベース層18が形成され、続いて、複数層のn型半導体層19を積層させてn
−型ドリフト層34が形成される。これにより、n
+型基板33およびn
−型ドリフト層34からなるn型ベース層36が形成される。
次に、
図10Dに示すように、アニール処理(1000℃〜1200℃)を行うことにより、複数層のn型半導体層19のp型不純物およびn
+型基板33に注入されたp型不純物をドライブ拡散させる。これにより、p型コラム層3およびp
+型コレクタ層35が同時に形成される。続いて、
図3Cの工程と同様に、p型ベース層4、n
+型ソース層5、ゲート絶縁膜6、ゲート電極7等が形成される。
【0071】
次に、
図10Eに示すように、
図3Dの工程と同様に、たとえばグラインダを用いてn
+型基板33を裏面側から研削する。この研削は、n
+型基板33の裏面からp
+型コレクタ層35が露出するまで続ける。研削後、n
+型基板33の裏面をスピンエッチングすることにより、n
+型基板33の裏面を鏡面に仕上げる。
その後は、
図3E〜
図3Jと同様の工程(
図3G〜
図3Iの工程は除く)を実行することにより、半導体装置31が得られる。
【0072】
この方法によれば、n型ベース層36が、n
+型基板33およびn
−型ドリフト層34の積層構造で形成されている。そのため、半導体装置31の完成まで、n
−型ドリフト層34がn
+型基板33に支持されることになるので、n型ベース層36の搬送・ハンドリングをより一層行い易くすることができる。
また、n型ベース層36の基層となるn
+型基板33を、前述の第1実施形態のn
+型コンタクト層9として利用することができるので、
図3Gに示すようなイオン注入工程を省略することができる。そのため、製造工程を簡単にすることができる。
<第3実施形態>
図11は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置41の模式的な断面図である。
図11において、前述の
図1に示された各部と対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。
【0073】
図11の半導体装置41は、単一層からなるn
−型ベース層2に代えて、n
+型基板42と、n
+型基板42上に形成されたn
−型ドリフト層43との積層構造からなるn型ベース層44を含む。n型ベース層44において、n
−型ドリフト層43は相対的に不純物濃度が低く、n
+型基板42は相対的に不純物濃度が高い。これにより、n
+型基板42は、n
−型ドリフト層43を支持する役割とともに、前述のn
+型コンタクト層9の役割を兼ねている。
【0074】
p
+型コレクタ層48は、前述の第2実施形態のp
+型コレクタ層35と同様に、n
+型基板42の裏面からn
+型基板42を厚さ方向に貫通してn
−型ドリフト層43の裏面に達するように形成されている。p
+型コレクタ層48は、n
+型基板42の裏面に露出しているが、n
−型ドリフト層43の裏面からn
+型基板42の裏面に向かって幅が小さくなるテーパ形状を有している点で、p
+型コレクタ層35と異なっている。つまり、p
+型コレクタ層48のn
+型基板42の裏面に露出する部分の幅が、p
+型コレクタ層48のn
−型ドリフト層43の裏面に接する部分の幅よりも小さくなるテーパ形状である。
【0075】
図12A〜
図12Fは、
図11の半導体装置41の製造工程の一部を工程順に示す図である。
この半導体装置41を製造するには、まず、
図12Aに示すように、n
+型基板42(たとえばn
+型シリコン基板)上に、n
+型基板42の表面を選択的に露出させるフォトレジスト45が形成される。そして、このフォトレジスト45を介して、n
+型基板42をドライエッチングする。ドライエッチングでは、n
+型基板42が表面から裏面へ向かって等方的にエッチングされる。これにより、p
+型コレクタ層48を形成すべき部分に、開口端から底部へ向かって幅が小さくなるテーパ形状のトレンチ46が形成される。
【0076】
次に、
図12Bに示すように、n
+型基板42上に、p型不純物を注入しながら行うエピタキシャル成長によって、p
+型半導体層47が形成される。p
+型半導体層47の成長は、少なくともトレンチ46を埋め尽くし、n
+型基板42の表面が隠れるまで続けられる。
次に、
図12Cに示すように、CMP処理により、p
+型半導体層47を研磨する。これにより、トレンチ46に残ったp
+型半導体層47からなるp
+型コレクタ層48が形成される。
【0077】
次に、
図12Dに示すように、
図3Aおよび
図3Bの工程と同様に、n
+型基板42上に初期ベース層18が形成され、続いて、複数層のn型半導体層19を積層させてn
−型ドリフト層43が形成される。これにより、n
+型基板42およびn
−型ドリフト層43からなるn型ベース層44が形成される。
次に、
図12Eに示すように、アニール処理(1000℃〜1200℃)を行うことにより、複数層のn型半導体層19のp型不純物をドライブ拡散させる。これにより、p型コラム層3が形成される。続いて、
図3Cの工程と同様に、p型ベース層4、n
+型ソース層5、ゲート絶縁膜6、ゲート電極7等が形成される。
【0078】
次に、
図12Fに示すように、
図3Dの工程と同様に、たとえばグラインダを用いてn
+型基板42を裏面側から研削する。この研削は、n
+型基板42の裏面からp
+型コレクタ層48が露出するまで続ける。研削後、n
+型基板42の裏面をスピンエッチングすることにより、n
+型基板42の裏面を鏡面に仕上げる。
その後は、
図3E〜
図3Jと同様の工程(
図3G〜
図3Iの工程は除く)を実行することにより、半導体装置41が得られる。
【0079】
この方法によれば、前述の第2実施形態と同様に、n型ベース層44が、n
+型基板42およびn
−型ドリフト層43の積層構造で形成されている。そのため、半導体装置41の完成まで、n
−型ドリフト層43がn
+型基板42に支持されることになるので、n型ベース層44の搬送・ハンドリングをより一層行い易くすることができる。
また、n型ベース層44の基層となるn
+型基板42を、前述の第1実施形態のn
+型コンタクト層9として利用することができるので、
図3Gに示すようなイオン注入工程を省略することができる。そのため、製造工程を簡単にすることができる。
【0080】
さらに、p
+型コレクタ層48がエピタキシャル成長により形成されるので、p
+型コレクタ層48の不純物濃度を、全体にわたって一定にすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、
図13に示す半導体装置51のように、トレンチゲート構造を有していてもよい。具体的には、n
−型ベース層2の表面からn
+型ソース層5およびp型ベース層4を貫通するゲートトレンチ21が形成され、当該ゲートトレンチ21に、ゲート絶縁膜22を介してゲート電極23が充填されたトレンチゲート構造を有していてもよい。
【0081】
また、空乏層緩和領域30およびトラップレベル領域32は、一方もしくは両方とも省略されていてもよい。
また、半導体装置1,31,41,51の各半導体部分の導電型を反転した構成が採用されてもよい。たとえば、半導体装置1において、p型の部分がn型であり、n型の部分がp型であってもよい。
【0082】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0083】
次に、本発明のいくつかの効果を証明するためのシミュレーションを行ったので説明する。
<シミュレーション例1>
シミュレーション例1では、低電圧域および高電圧域それぞれのオン抵抗が、p
+型コレクタ層10のピッチP
2の変化によってどのように変化するかを確認した。シミュレーション例1においては、
図2に示した半導体装置1の構造を採用し、シミュレーション条件として、p
+型コレクタ層10の占有率=64%、p
+型コレクタ層10とn
+型コンタクト層9の幅の比率=1:1を設定した。
【0084】
そして、p
+型コレクタ層10のピッチP
2を、p型コラム層3のピッチP
1の等倍(1cell pitch)、2倍(2cell pitch)、4倍(4cell pitch)および8倍(8cell pitch)とした条件下で、それぞれのId−Vd特性を調べた。結果を
図14(a)(b)に示す。
図14(a)(b)では、参考例として、p
+型コレクタ層10が形成されていない通常のMOSFET構造のId−Vd特性も示している。
【0085】
図14(a)によると、p
+型コレクタ層10のピッチP
2が2cell pitch、4cell pitch、8cell pitchと大きくなるにつれて、高電圧域におけるオン電流が増加していることが分かった。ただし、4cell pitchと8cell pitchとの間の増加幅は、2cell pitchと4cell pitchとの間の増加幅ほどではない。このことから、高電圧域におけるオン電流は、p
+型コレクタ層10のピッチP
2をp型コラム層3のピッチP
1の4倍もしくは5倍程度までなら等倍に比べて効果的な増加を見込めるが、4倍付近でその増加が飽和状態となることがわかった。
【0086】
一方、
図14(b)によると、p
+型コレクタ層10のピッチP
2が2cell pitch、4cell pitch、8cell pitchと大きくなるにつれて、低電圧域におけるオン電流が減少していることが分かった。しかも、4cell pitchと8cell pitchとの間の減少幅が、2cell pitchと4cell pitchとの間の減少幅よりも増えていることが分かった。したがって、低電圧域においても比較的高い電流を流す観点から、p
+型コレクタ層10のピッチP
2をp型コラム層3のピッチP
1の4倍もしくは5倍程度までに留めることが好ましいことが分かった。
【0087】
以上、
図14(a)(b)の結果をまとめると、低電圧域および高電圧域の両方においてオン抵抗をバランスよく低減するという点では、p
+型コレクタ層10のピッチP
2をp型コラム層3のピッチP
1よりも大きくすればよいが(ピッチP
2>ピッチP
1)、2倍〜5倍にすることによってより優れた効果を達成できることが分かった。
<シミュレーション例2>
シミュレーション例2では、セル13間でのオン抵抗のばらつきが、p
+型コレクタ層10のレイアウトの変化によってどのように変化するかを確認した。シミュレーション例2においては、シミュレーション条件として、n
−型ベース層2の裏面におけるp
+型コレクタ層10の占有率を72%、p型コラム層3のピッチP
1=14.25μm、p
+型コレクタ層10とn
+型コンタクト層9の幅の比率=1:1を設定した。
【0088】
そして、p
+型コレクタ層10のピッチP
2を、p型コラム層3のピッチP
1の等倍(1cell pitch)、2倍(2cell pitch)、4倍(4cell pitch)および8倍(8cell pitch)とした条件下で、1Aのドレイン電流を流したときの各セル13のオン抵抗(Ron)を調べた。結果を
図15に示す。
図15では、参考例として、p
+型コレクタ層10が形成されていない通常のMOSFET構造(0%:FET)のシミュレーション結果も示している。また、実線、破線および一点鎖線の3つの線は、p
+型コレクタ層10を形成するときのフォトリソグラフィの横方向のずれが、n
−型ベース層2の裏面におけるn部(n
+型コンタクト層9)にどの程度寄与するかを示している。たとえば、一点鎖線PR:0.5μm/n−寄与(%)は、1cell pitchの場合において0.5μmリソずれが生じると、そのずれによってn部分の形成位置が、設計位置よりも約50%分ずれることを意味している。
【0089】
図15によると、p
+型コレクタ層10を垂直レイアウト(
図4のレイアウト)にすれば、p
+型コレクタ層10のピッチP
2の大きさおよびフォトリソグラフィのずれの大きさに関わらず、セル13間のオン抵抗にばらつきがほとんどないことが分かった。
一方、p
+型コレクタ層10が平行レイアウト(
図1のレイアウト)およびひし形レイアウト(5のレイアウト)では、垂直レイアウトの場合に比べて若干ばらつきが見られた。このばらつきは、p
+型コレクタ層10が全てのp型コラム層3に対して均等に対向していないことや、フォトリソグラフィのずれが要因であると考えられる。なお、平行レイアウトおよびひし形レイアウトのばらつきは、あくまでも垂直レイアウトを基準として大きいというのであって、実用上は問題のないレベルである。