(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-43762(P2018-43762A)
(43)【公開日】2018年3月22日
(54)【発明の名称】補強材付き樹脂製パレット
(51)【国際特許分類】
B65D 19/32 20060101AFI20180223BHJP
【FI】
B65D19/32 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-179260(P2016-179260)
(22)【出願日】2016年9月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113804
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 敏
(72)【発明者】
【氏名】清水 玄宏
(72)【発明者】
【氏名】幸長 浩気
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】山中 高士
【テーマコード(参考)】
3E063
【Fターム(参考)】
3E063AA03
3E063BA05
3E063CA15
3E063CA16
3E063EE01
(57)【要約】
【課題】 樹脂製パレット(特に上下非対称の樹脂製パレット)において、これまでに無い新規な構造でその強度・剛性を高めて破損を防止することにある。
【解決手段】 樹脂製パレット10は、積載物90(例えば、フロアパネル)を載置する載置面12を有した上面デッキ11とその下面側にフォークリフトのフォークの差込可能な桟構造15を有する上下非対称の樹脂製パレットである。そして、この樹脂製パレット10のフォークリフトのフォークを差し込む差込側の相対する上面デッキ11の端部13,13に断面コ字形の補強材20,20を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載物を載置する載置面を有するデッキを備えた樹脂製パレットであって、
フォークリフトのフォークを差し込む差込側のデッキ端部に、積載物と当接してこれを支持する補強材を備えたことを特徴とする補強材付き樹脂製パレット。
【請求項2】
補強材は、断面コ字形又はL字形であることを特徴とする請求項1記載の補強材付き樹脂製パレット。
【請求項3】
積載物を載置する載置面を有するデッキを備えた樹脂製パレットであって、
デッキの載置面上に、積載物と当接してこれを支持する補強材を備えたことを特徴とする補強材付き樹脂製パレット。
【請求項4】
補強材は、枠体であることを特徴とする請求項3記載の補強材付き樹脂製パレット。
【請求項5】
積載物を載置する載置面を有するデッキを備えた樹脂製パレットであって、
デッキの載置面端部の裏面に、積載物を支持する補強材を備えたことを特徴とする補強材付き樹脂製パレット。
【請求項6】
補強材は、丸パイプ又は角パイプであることを特徴とする請求項5記載の補強材付き樹脂製パレット。
【請求項7】
樹脂製パレットは、積載物を載置する載置面を有した上面デッキとその下面側にフォークリフトのフォークの差込可能な桟構造を有し、下面デッキを有しない上下非対称であるであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の補強材付き樹脂製パレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、樹脂製パレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトを用いて荷役作業に用いる四角形の荷台である「パレット」は、これまで木製のものがほとんどであった。近年、自然環境への配慮や一体成型による製造容易化に伴って樹脂製のものも増加してきている。
【0003】
しかし、樹脂製パレットは、成型が容易である反面、その形状によっては強度・剛性が不足する場合もある。例えば、下面デッキを有しない(上面デッキと桟構造のみ)いわば上下非対称の樹脂製パレットでは、パレットの上側と下側で強度・剛性がアンバランスなために積載物を載置した場合に破損しやすくなっている。
【0004】
そこで、このような樹脂製パレットの破損を防止するために、パレットに補強構造を施す技術が種々開発されている(例えば、特許文献1など)。なお、木製パレットにおいても、補強構造として特許文献2などが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−125234号公報
【特許文献2】特許第5605774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対して、本願発明者は、樹脂製パレット(特に上下非対称の樹脂製パレット)において、これまでに無い新規な構造でその強度・剛性を高めて破損を防止することを目的として、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1の発明は、直接支持方式(その1)によるもので、積載物を載置する載置面を有するデッキを備えた樹脂製パレットであって、フォークリフトのフォークを差し込む差込側のデッキ端部に、積載物と当接してこれを支持する補強材を備えたことを特徴とする補強材付き樹脂製パレットである。
第2の発明は、上記補強材が、断面コ字形又はL字形であることを特徴とする同補強材付き樹脂製パレットである。
第3の発明は、直接支持方式(その2)によるもので、積載物を載置する載置面を有するデッキを備えた樹脂製パレットであって、デッキの載置面上に、積載物と当接してこれを支持する補強材を備えたことを特徴とする補強材付き樹脂製パレットである。
第4の発明は、上記補強材が、枠体であることを特徴とする同補強材付き樹脂製パレットである。
第5の発明は、間接支持方式によるもので、積載物を載置する載置面を有するデッキを備えた樹脂製パレットであって、デッキの載置面端部の裏面に、積載物を支持する補強材を備えたことを特徴とする補強材付き樹脂製パレットである。
第6の発明は、上記補強材が、丸パイプ又は角パイプであることを特徴とする同補強材付き樹脂製パレットである。
第7の発明は、樹脂製パレット(本体)が、積載物を載置する載置面を有した上面デッキとその下面側にフォークリフトのフォークの差込可能な桟構造を有し、下面デッキを有しない上下非対称であるであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)樹脂製パレットに取り付けられた補強材が直接的又は間接的に積載物を支持するので、樹脂製パレット本体の一部分に集中して負荷がかからず、パレット本体の強度・剛性が増し、その破損を防止できる。
(2)すなわち、本願発明では補強材が積載物を支持する「主」であり、樹脂製パレット本体はその補強材を固定する「従」の関係となっている。これに対して、これまでの補強構造は、あくまでも積載物を支持する「主」たる樹脂製パレット本体の「従」であるに過ぎなかった。従って、本願発明は、従来の補強構造とは全く異なる補強構造であると言える。
(4)とくに、下面デッキを有しない(上面デッキと桟構造のみ)上下非対称の樹脂製パレットにおいては、パレットの上側と下側で強度・剛性がアンバランスなために積載物を載置した場合に破損するおそれがあるが、この補強材を備えることでその破損を防止することができる。
(5)また、こうして下面デッキを有しない(上面デッキと桟構造のみ)上下非対称の樹脂製パレットが安全に使用可能となれば、パレットのみの輸送時(返却時など)に積載量(トラック等に対する)が増えて、コスト減・輸送効率等に資することになる。
(6)なお、このような補強材を備えることで、経年劣化等により万一樹脂製パレットに破損が生じたとしても、そのままの状態で使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本願発明の第1実施形態を示す説明図(1)。
【
図2】本願発明の第1実施形態を示す説明図(2)。
【
図3】本願発明の第1実施形態を示す説明図(3)。
【
図4】本願発明の第1実施形態を示す説明図(4)。
【
図5】本願発明の第1実施形態を示す説明図(5)。
【
図6】本願発明の第1実施形態を示す説明図(6)。
【
図9】本願発明の効果を説明するための説明図(1)。
【
図10】本願発明の効果を説明するための説明図(2)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは下面デッキを有しない(上面デッキと桟構造のみ)上下非対称の樹脂製パレット(本体)を例に説明するが、本願発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
図1〜
図6は、本願発明の第1実施形態(直接支持方式:その1)を示す説明図である。
まず、
図1〜
図4に示すように、樹脂製パレット10は、積載物90(例えば、フロアパネル)を載置する載置面12を有した上面デッキ11とその下面側にフォークリフトのフォークの差込可能な桟構造15を有する上下非対称の樹脂製パレットである。そして、この樹脂製パレット10のフォークリフトのフォークを差し込む差込側の相対する上面デッキ11の端部13,13に補強材20,20を備える。
【0012】
補強材20は、断面コ字形をしており、端部13に差し込みようにして取り付けられる(図示省略するが、ビス固定などを施しても良い)。そして、
図3に示すように、補強材20は、積載物90と当接して直接的に積載物90を支持する。補強材20が直接に積載物90を支持するので、樹脂製パレット10の一部分に集中して負荷がかからず、パレットの強度・剛性が増し、その破損を防止できる。なお、補強材20の寸法(例えば、
図4のX)については、積載物90の重量等によって変更することで(重量が重い場合にはXを長くする等)、様々な積載物90に対応することができる。また、補強材20は、積載物90を支持するため強度・剛性の高い金属製のものが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0013】
樹脂製パレット90に載置された積載物90は運搬時に荷崩れしないようにバンド95等で固定されるが(
図3を参照)、補強材20が断面コ字形であるために角部にあってもバンド95の切れるおそれが無くなる。
図4は、補強材20のその他の実施形態を図示したものであるが、積載物90と当接する当接面21に滑り止め機能22を設けたものである。
図4(a)は当接面21の表面を粗くした(梨地)もの、
図4(b)〜(d)は当接面21の表面に凹凸を設けたものである。
【0014】
次に、
図5に図示する補強材30は、断面L字形をしたものである。補強材30においても、その寸法(例えば、
図5のX、Y)を積載物90の重量等によって変更することで(重量が重い場合にはX、Yを長くする等)、様々な積載物90に対応することができる。その他については、補強材20と同じであるので、その説明を省略する。
【0015】
次に、
図6に図示する補強材40は、細長い矩形をしたものである。補強材40においても、その寸法(例えば、
図6のX)を積載物90の重量等によって変更することで(重量が重い場合にはXを長くする等)、様々な積載物90に対応することができる。その他については、補強材20と同じであるので、その説明を省略する。
【0016】
図7は、本願発明の第2実施形態(直接支持方式:その2)を示す説明図である。
図7に図示する補強材50は、積載物90と当接して直接的に積載物90を支持する点では、上記した補強材20,30,40と共通するが、上面デッキ11の載置面12上に設けられて、積載物90と当接してこれを支持する点で異なる。
補強材50は、積載物と広く当接するために枠体となっているが、図示のような目の字形に限られることはない。補強材50も直接に積載物90を支持するので、樹脂製パレット10の一部分に集中して負荷がかからず、パレットの強度・剛性が増し、その破損を防止できる。
【0017】
図8は、本願発明の第3実施形態(間接支持方式)を示す説明図である。
図8に図示する補強材60は、積載物90と当接せずに間接的に積載物90を支持する点では、上記した補強材20,30,40,50と異なる。しかし、間接的にせよ、補強材60も積載物90を支持するので、樹脂製パレット10の一部分に集中して負荷がかからず、パレットの強度・剛性が増し、その破損を防止できる。
図8(a)では、フォークリフトのフォークを差し込む差込側の相対する上面デッキ11の載置面12端部(端部13)の裏面に、積載物90を支持する補強材60を備えているが、さらに強度・剛性を高めるために、上面デッキ11の載置面12中央寄りの裏面に補強材60を備えてもよい。
なお、図示する補強材60は丸パイプであるが、角パイプその他の部材であってもよい。また、補強材60を樹脂製パレットに取り付ける方法は任意の方法を採用してよい。
【0018】
図9及び
図10は、本願発明による効果を説明するための説明図である。
本願発明によれば、補強材20,30,40,50,60等を使用することで、下面デッキを有しない(上面デッキ11と桟構造15のみの)上下非対称の樹脂製パレット10においても十分な強度・剛性が得られることになる。このような上下非対称の樹脂製パレット10が広く利用されることになった場合、積載物90の無い樹脂製パレット10のみの輸送時(返却時など)に積載量(トラック等に対する)が増えて、コスト減・輸送効率等に資することになる。
【0019】
すなわち、
図9に図示するように、上下非対称の樹脂製パレット10は、下面デッキが無いので、桟構造15どうしを組み合わせてコンパクトに収容できる。
これに対して、下面デッキを有する上下対称のパレット80の場合は、
図10に図示するようにパレットどうしをそのまま積み重ねるしかないので、コンパクトに収容できるものではない。
従って、本願発明により上下非対称の樹脂製パレット10が広く利用できることになると、コスト減・輸送効率等に資することになり、大きなメリットを享受できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本願発明は、樹脂製パレットに限らず、幅広くパレット分野に利用できるものである。
【符号の説明】
【0021】
10 樹脂製パレット(本体)
11 上面デッキ
12 載置面
13 端部
15 桟構造
20 補強材(直接支持方式:その1)
21 当接面
22 滑り止め機能
30 補強材(直接支持方式:その1)
40 補強材(直接支持方式:その1)
50 補強材(直接支持方式:その2)
60 補強材(間接支持方式)
80 パレット
90 積載物
95 バンド