(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-44295(P2018-44295A)
(43)【公開日】2018年3月22日
(54)【発明の名称】道路舗装復旧工法及びそれに用いる再加熱アスファルト混合物
(51)【国際特許分類】
E01C 7/32 20060101AFI20180223BHJP
E01C 3/00 20060101ALI20180223BHJP
E01C 7/22 20060101ALI20180223BHJP
E01C 7/26 20060101ALI20180223BHJP
【FI】
E01C7/32
E01C3/00
E01C7/22
E01C7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-177737(P2016-177737)
(22)【出願日】2016年9月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592090315
【氏名又は名称】株式会社佐藤渡辺
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶田 光信
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 志伸
(72)【発明者】
【氏名】神野 稔久
(72)【発明者】
【氏名】坂本 寿信
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AC03
2D051AE05
2D051AG01
2D051AG11
2D051AH01
(57)【要約】
【課題】容器詰めされ常温保管したアスファルト混合物を再加熱して使用するに際して、施工精度や品質を高める。
【解決手段】道路舗装復旧工法は、舗装面を開削した掘削孔内に埋め戻し資材を投入して路床を形成する工程と、容器詰めされ常温保管されたアスファルト混合物を90〜110℃で再加熱する工程と、前記容器から取り出した再加熱アスファルト混合物を、前記路床上に形成した路盤上に敷き均す工程とを有し、前記再加熱アスファルト混合物は、90〜110℃での動粘度が1700〜3800cStである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装面を開削した掘削孔内に埋め戻し資材を投入して路床を形成する工程と、
容器詰めされ常温保管されたアスファルト混合物を90〜110℃で再加熱する工程と、
前記容器から取り出した再加熱アスファルト混合物を、前記路床上に形成した路盤上に敷き均す工程とを有し、
前記再加熱アスファルト混合物は、90〜110℃での動粘度が1700〜3800cStであることを特徴とする道路舗装復旧工法。
【請求項2】
前記再生加熱アスファルト混合物は、ストレートアスファルトにステアリン酸アミドを主成分とする添加剤を添加していることを特徴とする請求項1記載の道路舗装復旧工法。
【請求項3】
前記再加熱する工程は、積層した前記容器の間にシートヒータを挟み込み、積層した前記容器の周囲を面ヒータで覆うことを特徴とする請求項1又は2記載の道路舗装復旧工法。
【請求項4】
道路舗装復旧工法に用いられ、容器詰めされ常温保管されたアスファルト混合物を90〜110℃で再加熱する再加熱アスファルト混合物であって、ストレートアスファルトにステアリン酸アミドを主成分とする添加剤を添加し、90〜110℃での動粘度が1700〜3800cStであることを特徴とする再加熱アスファルト混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰めされた常温保管のアスファルト混合物を再加熱して使用する道路舗装の復旧工法及びそれに用いる再加熱アスファルト混合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンホールや電柱などの設置工事、ガス管や水道管などの配管埋設工事、既設埋設管の修理・補修や点検作業を行うための工事においては、道路舗装面を一旦壊して路盤を露出させて開削作業が行われ、これらの工事後には、壊した舗装面を平坦な舗装面に戻す復旧作業が行われる。
【0003】
アスファルト舗装面の復旧作業に用いられる舗装材料としては、加熱した状態で使用する材料(加熱アスファルト混合物又は加熱舗装材料)と常温で使用する材料(常温舗装材料)がある。加熱舗装材料は、アスファルトプラントで規定の温度にて加熱混合され、アスファルトプラントから工事現場に搬送されて、本復旧材又は一部仮復旧材として使用される。一方、常温舗装材料は常温で袋詰めされたものを工事現場で常温のまま敷設し、一般には仮復旧材として使用される。ここでいう本復旧とはその作業で復旧を完了させる復旧作業であり、仮復旧とはその後に本復旧を行うことを前提とした仮の復旧作業である。加熱舗装材料と常温舗装材料は共に復旧箇所に均等に敷き均され、その後転圧機を用いて既存の舗装面と面一に仕上げられる。
【0004】
また、アスファルトプラントで製造された加熱アスファルト混合物である加熱舗装材料を密封自在な容器(袋)に小分け梱包して常温保管し、容器に梱包したままの状態で加熱舗装材料を再加熱して、再加熱された加熱舗装材料を容器から取り出して舗装面の復旧箇所に敷き均し転圧する工法が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−114613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加熱舗装材料は、施工に際しての温度管理が重要であり、アスファルトプラントから搬送されて工事現場で使用されるまでの間に規定温度以下に低下しないことが必要になる。それ故に、施工者側では運搬による加熱舗装材料の温度低下を考慮して必要量より多めに購入することがなされており、特に小規模復旧の場合には、2〜3割程度の廃棄材が発生する。また、温度管理が不十分な場合には温度低下による品質劣化が懸念される。
【0007】
これに対して、常温舗装材料は、取り扱いが容易という利点はあるが、強度を引き出すためには硬化剤を塗布することが必要になり、施工が煩雑になって、条件によっては強度が低下する問題がある。また、常温舗装材料は、転圧による締め固めが必要になり、住宅地の近傍では騒音の苦情があって早朝や夜間の作業を行い難い問題がある。
【0008】
また、容器に小分け梱包して常温保管した加熱舗装材を再加熱して使用する従来技術では、複数の容器を一度に加熱する際に均質な加熱再生処理が困難であることや、加熱再生された再生合材を適正に施工する方法が確立されていないことで、やはり転圧による締め固めが必要になる問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に対処するものであり、容器詰めされ常温保管したアスファルト混合物を再加熱して使用するに際して、施工精度や品質を高めることを課題とし、転圧無し或いは軽度の転圧による施工でも良好な復旧工事を行うことができること、などを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明による道路舗装復旧工法は、以下の構成を具備するものである。
【0011】
舗装面を開削した掘削孔内に埋め戻し資材を投入して路床を形成する工程と、容器詰めされ常温保管されたアスファルト混合物を90〜110℃で再加熱する工程と、前記容器から取り出した再加熱アスファルト混合物を、前記路床上に形成した路盤上に敷き均す工程とを有し、前記再加熱アスファルト混合物は、90〜110℃での動粘度が1700〜3800cStであることを特徴とする道路舗装復旧工法。
【発明の効果】
【0012】
このような特徴を有する本発明によると、容器詰めされ常温保管したアスファルト混合物を再加熱して使用するに際して、施工精度や品質を高めることができ、転圧無し或いは軽度の転圧による施工でも良好な復旧工事を行うことができる。これによって、騒音問題を軽減した道路舗装復旧工事が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る道路舗装復旧工法を説明するフローである。
【
図2】(a)が路床形成、(b)が路盤構築、(c)が再加熱アスファルト混合物敷き均し工程をそれぞれ説明する説明図である。
【
図3】アスファルト混合物再加熱工程を説明する説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る再加熱アスファルト混合物の動粘度−温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る道路舗装復旧工法を説明する。
図1に示すように、本発明の工法は、路床形成工程S1、アスファルト混合物再加熱工程S2、路盤構築工程S3、再加熱アスファルト混合物敷き均し工程S4の順に行われる。
【0015】
路床形成工程S1では、
図2(a)に示すように、舗装面Rを開削した掘削孔T内に埋め戻し資材Mを投入して路床を形成する。埋め戻し資材Mとしては、直径5cm程度の樹脂成形体(ecoボール(登録商標))を多数袋詰めしたものなどを用いることができる。
【0016】
アスファルト混合物の再加熱工法S2では、容器詰めされ常温保管されたアスファルト混合物を用い、
図3(a)に示すように、これを容器(袋)Aに詰めた状態で積層して、容器Aの間にシートヒータSを配置する。そして、積層した容器Aの周囲を、
図3(b)に示すような6面の面ヒータBで覆い、所定時間(約2時間)加熱する。ここでの再加熱の温度は、90〜110℃の中温とする。
【0017】
ここで用いられる再加熱アスファルト混合物は、施工現場での中温加熱で高い流動性が得られるものが用いられる。
図4は、使用する再加熱アスファルト混合物(実施例)とストレートアスファルト60/80(比較例)の動粘度−温度特性を示している。実施例の再加熱アスファルト混合物は、ストレートアスファルト60/80に対して、90〜110℃の中温で動粘度が低く(流動性が高く)、90〜110℃での動粘度が1700〜3800cStになっている(ここでの動粘度は、B型粘度計を用いて計測した。)。
【0018】
また、使用する再加熱アスファルト混合物(実施例)とストレートアスファルト60/80のバインダ試験(JIS K 2207)結果を表1に示す。実施例の再加熱アスファルト混合物とストレートアスファルト60/80とを比較すると、密度は同等(実施例の方が比較例よりやや低い)であり、針入度は実施例の方が比較例より低い値になり、軟化点は実施例の方が比較例より高い値になる。
【0020】
実施例の再加熱アスファルト混合物は、ストレートアスファルト60/80に流動性付与添加剤を添加することで得ることができる。流動性付与添加剤としては、例えば、ステアリン酸アミドを主成分とする添加剤を挙げることができる。このような添加剤を数%(重量%)ストレートアスファルトに添加することで、中温(90〜110℃)での再加熱によるアスファルト混合物の流動性を効果的に高めることができる。
【0021】
路盤構築工程S3では、
図2(b)に示すように、路床上に路盤を形成する。再加熱アスファルト混合物敷き均し工程S4では、
図2(c)に示すように、90〜110℃に再加熱した実施例の再加熱アスファルト混合物Pを、路床上に構築した路盤上に投入し、敷き均す。この際には、敷き均し後に簡易な転圧で良質の路盤を形成することができる。
【0022】
本発明の実施形態に係る道路舗装復旧工法によると、容器(袋)詰めされ常温保管されたアスファルト混合物を現場で再加熱して施工できるので、再加熱用のヒータ等、最小限の資材で施工が可能になる。使用する再加熱アスファルト混合物は、中温で高い流動性を示すので、簡易な施工で施工精度や品質を高めることができる。そして、軽度の転圧で敷設可能であるから、騒音を減らして深夜早朝の施工効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0023】
R:舗装面,T:掘削孔,M:埋め戻し資材,A:容器,S:シートヒータ,
B:面ヒータ,P:再加熱アスファルト混合物