(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-44481(P2018-44481A)
(43)【公開日】2018年3月22日
(54)【発明の名称】エンジン駆動作業機
(51)【国際特許分類】
F02B 63/04 20060101AFI20180223BHJP
F02B 77/13 20060101ALI20180223BHJP
F02B 77/00 20060101ALI20180223BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20180223BHJP
【FI】
F02B63/04 Z
F02B77/13 C
F02B77/13 Z
F02B77/00 B
F02B63/04 B
F16F15/08 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-179192(P2016-179192)
(22)【出願日】2016年9月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000109819
【氏名又は名称】デンヨー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100963
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 陽男
(72)【発明者】
【氏名】尾鷲 真一
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA04
3J048DA02
3J048EA01
(57)【要約】
【課題】 上下方向,水平方向及び回転方向の振動を有効に抑制できるようにする。また、筐体を小型化する。
【解決手段】 筐体のベース3上面に4個の傾斜防振ゴム5,5,5,5を配置し、それら傾斜防振ゴム5,5,5,5の間で、エンジン1の出力軸の直下に位置するように垂直防振ゴム6,6を設ける。そして、傾斜防振ゴム5,5,5,5及び垂直防振ゴム6,6の上に、4個の傾斜防振ゴム5,5,5,5がエンジンベース4の四隅に、上方から見て放射状になるように配置して、エンジンベース4を取り付け、その上に、発電機2を一体的に結合したエンジン1を固定支持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、該エンジンにより駆動される作業機本体を筐体内に収納したエンジン駆動作業機であって、
前記筐体の底部に設けられたベースの上面に4個の傾斜防振ゴムを配置し、それら傾斜防振ゴムで挟まれる位置に垂直防振ゴムを設け、エンジンベースを、前記4個の傾斜防振ゴムが該エンジンベースの四隅に位置するようにして、前記傾斜防振ゴムと垂直防振ゴムの上に取り付け、該エンジンベースの上に、前記作業機本体を一体的に結合した前記エンジンを固定支持するようにしたことを特徴とするエンジン駆動作業機。
【請求項2】
前記4個の傾斜防振ゴムを上方から見て放射状に配置したことを特徴とする請求項1に記載のエンジン駆動作業機。
【請求項3】
前記垂直防振ゴムを、前記エンジンの出力軸の直下に出力軸と平行になるように2個配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジン駆動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン発電機,エンジン溶接機,エンジンコンプレッサのようなエンジン駆動作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路工事等の屋外作業現場では、エンジン、該エンジンにより駆動される発電機,溶接機,コンプレッサ等の作業機本体を一つの筐体内に収納したエンジン駆動作業機が稼働している。そのようなエンジン駆動作業機を狭いスペースに設置する場合、エンジン駆動作業機を小型化して設置面積を小さくする必要がある。
【0003】
そのようなエンジン駆動作業機では、運転中、エンジンが振動して騒音が発生し、また、工事現場等への輸送中は、輸送車からの振動を受けてエンジンや作業機本体が揺れて、筐体内壁に当たり、エンジン,作業機本体や筐体が損傷するおそれがある。そこで、特許文献1に示されるようなエンジン駆動作業機の防振支持構造が提案されている。
【0004】
図9は、従来のエンジン駆動作業機における防振支持構造を示す図である。エンジンベース11と、発電機ベース12と、H字形をしたコモンベース13と、防振ゴム14,14,14,14とで主要部が構成される。
【0005】
エンジンベース11は、溝形鋼の開口部を上にして、フランジの中央部分に切り欠き部11aを設けた、横断面形状が上に開いたコの字形をしており、発電機ベース12は、エンジンベース11と同様に、溝形鋼の開口部を上にしてフランジの中央部分に切り欠き部12aを設けた、横断面形状が上に開いたコの字形をしている。
【0006】
コモンベース13は、H字形をした部材であり、横断面形状が、開口部を下にした略溝形である幅広の板材の長手方向の両端に、横断面形状が、開口部を下にして複数のボルト孔13aを設けた、下に開いたコの字形をした幅が狭い溝形鋼を固設することにより形成される。コモンベース13は、エンジンベース11及び発電機ベース12の上向き開口部に防振ゴム14,14,14,14を介装して設けられる。そして、コモンベース13には、エンジン及び発電機の基台がボルトとナットにより取り付け固定される。
【0007】
防振ゴム14,14,14,14は、主として、部材に加わる力の方向が部材を圧縮する方向となる場所に使用され、形状が略円筒形の弾性体であり、発電機ベース11及びエンジンベース12とコモンベース13との間に設けられる。
【0008】
このようにすることにより、運転時には、防振ゴム14,14,14,14により振動が吸収されて騒音の発生が抑えられ、かつ、輸送時には、急停止や路面状態等により、エンジン発電機の軸方向に強い力が加わって防振ゴム14,14,14,14が変形し、コモンベース13が必要以上に動こうとしても、発電機ベース11の溝形鋼のフランジがコモンベース13の溝形鋼のフランジを受け止めることができ、エンジンや発電機が、ケースの内面と接触してケースや部品等を破損することがなくなる。
【0009】
また、エンジン発電機の軸方向に対して直角水平方向に急激な力が加わって防振ゴム14,14,14,14が変形し、コモンベース13が左右に必要以上に動こうとした時には、エンジンベース11および発電機ベース12の溝形鋼のフランジの切り欠き部が、横断面形状が、開口部を下にした略溝形であるコモンベース13の板材を受け止めることができ、エンジンや発電機がケースの内面と接触してケースや部品等を破損することがなく
なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第3065007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の防振支持構造における防振ゴムは垂直に配設されているため、上下方向及び水平方向の振動は抑制できるが、発電機の回転方向の振動についてはあまり抑制できないという問題点があった。
【0012】
また、最近は、災害等による停電時に迅速に対応でき、かつ、極小スペースに設置できる防音型非常用発電装置が求められているが、上記従来のエンジン駆動作業機における防振支持構造では、筐体を小型化しにくいという問題点があった。すなわち、上記従来の防振支持構造は、エンジン,発電機の回転軸と水平に直交する方向にエンジンベースと発電機ベースを伸ばすことで防振効果を高めるようにしているが、筐体を小型化するには、必然的に両ベースを短くしなければならず、その分、防振効果が低下してしまうからである。
【0013】
本発明は、そのような問題点に鑑み、上下方向の振動,水平方向の振動及び回転方向の振動を有効に抑制できるようにすることを目的とするものである。また、筐体を小型化しながら防振効果を高くすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本願の請求項1にかかる発明は、エンジン、該エンジンにより駆動される作業機本体を筐体内に収納したエンジン駆動作業機であって、前記筐体の底部に設けられたベースの上面に4個の傾斜防振ゴムを配置し、それら傾斜防振ゴムで挟まれる位置に垂直防振ゴムを設け、エンジンベースを、前記4個の傾斜防振ゴムが該エンジンベースの四隅に位置するようにして、前記傾斜防振ゴムと垂直防振ゴムの上に取り付け、該エンジンベースの上に、前記作業機本体を一体的に結合した前記エンジンを固定支持するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記4個の傾斜防振ゴムを上方から見て放射状に配置したことを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1又は2にかかる発明において、前記垂直防振ゴムを、前記エンジンの出力軸の直下に出力軸と平行になるように2個配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1にかかる発明においては、ベースの上面に4個の傾斜防振ゴムを配置し、それら傾斜防振ゴムで挟まれる位置に垂直防振ゴムを設け、エンジンベースを、前記4個の傾斜防振ゴムが該エンジンベースの四隅に位置するようにして、前記傾斜防振ゴムと垂直防振ゴムの上に取り付け、該エンジンベースの上に、前記作業機本体を一体的に結合した前記エンジンを固定支持するようにした。その結果、傾斜防振ゴムと垂直防振ゴムの組み合わせにより、上下方向の振動,水平方向の振動及び回転方向の振動を有効に抑制できるようになる。
【0018】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかるエンジン駆動作業機におい
て、前記4個の傾斜防振ゴムを上方から見て放射状に配置したので、各傾斜防振ゴムが斜めになる分、幅方向の寸法を小さくできて、筐体を小型化しながら防振効果を高くすることができる。
【0019】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項1又は2にかかるエンジン駆動作業機において、前記垂直防振ゴムを、前記エンジンの出力軸の直下に出力軸と平行になるように2個配置したので、垂直防振ゴムが、エンジンの回転による上下、左右の起振力に対して有効に作用し、また、それらをエンジンの出力軸の直下に出力軸と平行になるように2個配置したことにより、エンジン及び作業機本体の重心位置付近を支持することになって、さらに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例に係るエンジン駆動作業機の主要部分を示す図である。
【
図4】エンジンベースに凹部を設ける理由を説明するための図である。
【
図5】ベースに防振ゴムを取り付けた状態を示す図である。
【
図6】ベースにエンジンベースを載せた状態を示す図である。
【
図7】傾斜防振ゴムを放射状に配置することの利点を説明するための図である。
【
図8】エンジン及び発電機の重心と傾斜防振ゴムの弾性中心との関係を示す図である。
【
図9】従来のエンジン駆動作業機における防振支持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の一実施例に係るエンジン駆動作業機の主要部分を示す図である。
図1において、1はエンジン、2はエンジン1と一体的に結合された発電機、3は作業機の底部に設けられたベース、4はエンジンベース、5は傾斜防振ゴム、6は垂直防振ゴムである。
【0023】
傾斜防振ゴム5は、135°に屈曲された2枚の金属板の間に柱状のゴム材が、45°に傾斜して接着固定され、2枚の金属板のゴム材がない取付部分には上下に延びる固定用ボルトが取り付けられている。また、垂直防振ゴム6は、中心に固定用ボルトを垂直に取り付けた金属円板の間に、円柱状のゴム材が接着して取り付けられたものである。
【0024】
ベース3の上面に、そのような4個の傾斜防振ゴム5,5,5,5を設け、それら4個の傾斜防振ゴム5,5,5,5に挟まれる位置に垂直防振ゴム6,6を設けている。それら4個の傾斜防振ゴム5,5,5,5は、エンジンベース4の四隅に対向するようにし、ゴム材の中心軸が、エンジンベース4の中心に向かって斜め上方約45°の角度になるように配置する。そして、ベース3との間に4個の傾斜防振ゴム5,5,5,5及び垂直防振ゴム6,6を挟んでエンジンベース4を取り付け、そのエンジンベース4の上に、発電機2が一体的に結合されたエンジン1を設置する。
【0025】
次に、各部を詳細に説明する。
図2は、ベース3を示す図である。このベース3は、作業機の底部に設けられ、エンジン1,発電機2等を固定支持するためのものである。ベース3は、枠状のベース基部3aに、梁状の2本の支持体3b,3bを平行に、上方に突出するように差し渡して設け、その上面に、4個の防振ゴム取付板3c,3c,3c,3cと振止め金具3d,3dを設けている。
【0026】
4個の防振ゴム取付板3c,3c,3c,3cは、エンジンベース4の四隅を支持するための傾斜防振ゴム5,5,5,5を取り付けるためのものである。また、振止め金具3d,3dは、断面がコの字形をしていて、上面部分には、上方に開口する切欠部3e,3eが設けられていて、この切欠部3e,3eにエンジンベース4の縁部垂下板が入り込むことにより、エンジンベース4の振れ幅を制限するようにしている。さらに、防振ゴム取付板3cには、傾斜防振ゴム5の位置決めと回り止め用の貫通穴3hと、傾斜防振ゴム5を取り付けるためのボルト穴3fとが設けられ、防振ゴム取付板3cの向きは、傾斜防振ゴム5を取り付けたい方向に設けておき、振止め金具3dが設けられている部分には、垂直防振ゴム6を取り付けるためのボルト穴3gが設けられている。
【0027】
図3は、エンジンベース4を示す図である。エンジンベース基板4aは、四隅が45°の角度で切り取られており、縁部は下方に折り曲げられた垂下板4bが設けられている。そのエンジンベース基板4aの下面には、縦横に断面コの字形の補強材4c,4dが設けられており、上面にはエンジン取付座4eが設けられ、その中央部には開口部4fが形成されている。エンジン取付座4eは、垂直防振ゴム6のボルト・ナット用のスペースを確保するために、エンジン1の設置面を高くするように一段高くしている。また、開口部4fは、エンジン1及び発電機2の取付位置を低くするように、エンジン1のオイルパン1d(
図4参照)を下方に通すためのものである。
【0028】
エンジンベース基板4aの四隅には傾斜防振ゴム取付孔4g,4g,4g,4gが設けられ、横断方向に延びる補強材4dの間には垂直防振ゴム取付孔4hが設けられている。また、エンジン取付座4eの上面四隅には、エンジン取付孔4i,4i,4i,4iが設けられている。さらに、エンジンベース基板4aには、
図4に示すように、エンジン1のオイルゲージ1a,オイルフィルタ1b,オイルドレンボルト1cがある側に、エンジンオイルを受けるための凹部4jを設けている。
【0029】
次に、ベース3にエンジンベース4を取り付ける手順を説明する。まず、
図5に示すように、ベース3に傾斜防振ゴム5と垂直防振ゴム6を取り付ける。傾斜防振ゴム5は、ベース3に取り付けた防振ゴム取付板3cのボルト穴3fに固定ボルトを通し、ナットで締め付けることにより取り付ける。その際、各傾斜防振ゴム5の下側金属板の先端下向爪部(図示せず)を、防振ゴム取付板3cの貫通穴3hに掛止して位置決めするので、上方から見て放射状になる。また、垂直防振ゴム6は、振止め金具3dの中に位置するボルト穴3gに固定ボルトを通し、ナットで締め付けることにより取り付ける。
【0030】
このようにして傾斜防振ゴム5と垂直防振ゴム6を取り付けたベース3の上に、
図6に示すように、エンジンベース4を設置する。すなわち、エンジンベース4の四隅の傾斜防振ゴム取付孔4g,4g,4g,4gに、ベース3の上に取り付けられた傾斜防振ゴム5,5,5,5の上側の固定ボルトを通し、また、エンジンベース4の垂直防振ゴム取付孔4h,4hに、ベース3の上に取り付けられた垂直防振ゴム6,6の上側の固定ボルトを通してエンジンベース4を取り付ける。この後、傾斜防振ゴム5,5,5,5の上側の固定ボルトと垂直防振ゴム6,6の上側の固定ボルトは、ナットで締め付ける。
【0031】
エンジン取付座4eの上には、発電機2が一体的に結合されたエンジン1を載せ、エンジン取付孔4i,4i,4i,4iに取付ボルトを通して固定する。
【0032】
このエンジン駆動作業機では、各傾斜防振ゴム5,5,5,5を上方から見て放射状になるように配置しているが、その理由は、
図7に示すように、各傾斜防振ゴム5,5,5,5を横方向に配置する場合に比べて、放射状に配置すれば、図中、幅Dだけ横幅を小さくでき、その分エンジン駆動作業機の筐体を小型化できるからである。
【0033】
また、傾斜防振ゴム5,5,5,5は、弾性中心軸が、水平面に対して45°傾斜するようになっていて、エンジン1と発電機2の回転方向の振動に対して抑制効果が働くようにしている。そのため、本来は、エンジン1と発電機2を合わせた重心位置Gから片側45°下方に引いた線と、水平面に対して45°傾斜している傾斜防振ゴム5の弾性中心軸が一致することが望ましい。
【0034】
しかしながら、現実的には、
図8に示すように、傾斜防振ゴム5の上側の固定ボルトにナットを締め付け易くなるように、傾斜防振ゴム5の弾性中心軸が、エンジン1と発電機2の重心位置Gから片側45°下方に引いた線からずれる位置関係にせざるをえない。そのように多少の位置ずれがあっても、傾斜防振ゴム5の弾性中心軸の角度が45°になっていて、エンジン1,発電機2の回転方向の振動を抑制できる。
【符号の説明】
【0035】
1 エンジン
1a オイルゲージ
1b オイルフィルタ
1c オイルドレンボルト
1d オイルパン
2 発電機
3 ベース
3a ベース基部
3b 支持体
3c 防振ゴム取付板
3d 振止め金具
3e 切欠部
4 エンジンベース
4a エンジンベース基板
4b 垂下板
4c,4d 補強材
4e エンジン取付座
4f 開口部
4g 傾斜防振ゴム取付孔
4h 垂直防振ゴム取付孔
4i エンジン取付孔
4j 凹部
5 傾斜防振ゴム
6 垂直防振ゴム
7 バッテリー