【解決手段】測位システム1では、3つの固定局10a,10b,10cは、予め決められた位置に固定されている。固定局10a,10b,10c夫々は、搬送波がミリ波である無線信号を送信する。移動局12は、固定局10a,10b,10cが送信した無線信号を受信し、受信した無線信号について、送信元から自局までの伝播距離を算出する。移動局12は、送信元が異なる複数の無線信号に係る伝播距離に基づいて、自局の位置を演算する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における測位システム1の要部構成を示すブロック図である。測位システム1は、室内Rに設けられており、3つの固定局10a,10b,10c、制御装置11、移動局12及び搬送装置13を備える。固定局10a,10b,10c夫々は予め決められた室内Rの位置に固定されている。固定局10a,10b,10cの位置は、室内Rの隅であり、相互に異なっている。固定局10a,10b,10cは制御装置11に有線で接続されている。
【0034】
移動局12は搬送装置13に搭載されている。搬送装置13は、例えば、溶接部品、電子部品、基板又はウェハ等のワークを搬送する。搬送装置13は、例えば、所定のルートを移動する無人搬送車、又は、天井若しくは床に設置された軌道を移動する移動シャトル等の移動体である。搬送装置13の動作は、MES(Manufacturing Execute System)と呼ばれる生産管理システムによって管理されている。室内Rには、無線信号を反射する壁体W1,W2,W3が存在している。搬送装置13は、壁体W1,W2,W3との接触を回避しながら室内Rを移動する。移動局12は、搬送装置13と共に、室内Rを移動する。
【0035】
固定局10a,10b,10c夫々は、制御装置11の指示に従って、無線信号を移動局12に送信する。移動局12は、固定局10a,10b,10cから受信した無線信号に基づいて、自局の位置を演算し、演算した位置を示す位置情報を含む位置信号を搬送装置13に出力する。搬送装置13は、移動局12から入力された位置信号に含まれている位置情報に基づいて、進行方向の変更、移動の停止、又は、移動速度の変更等を行う。
【0036】
図2は、固定局10aの要部構成を示すブロック図である。固定局10aは、信号出力部20、時計部21、符号化部22、符号信号発生器23、重畳部24、搬送波発生器25、増幅器26及び送信器27を有する。
【0037】
信号出力部20は、時計部21から、現在の時刻を示す時刻情報を取得する。信号出力部20が時計部21から時刻情報を取得した場合、信号出力部20が取得した時刻情報が示す時刻は、取得時点の時刻と一致又は略一致する。また、信号出力部20には、制御装置11から無線信号の送信指示が入力される。信号出力部20は、送信指示が入力された場合、時刻情報を時計部21から取得する。信号出力部20は、時計部21から取得した時刻情報、固定局10aを示す送信元情報、及び、固定局10aの位置を座標で示す座標情報等を含むベースバンド信号を符号化部22に出力する。信号出力部20には、無線信号の送信の停止を指示する停止指示が入力される。信号出力部20は、停止指示が入力された場合、ベースバンド信号の出力を停止する。
ベースバンド信号に含まれる時刻情報は、送信時刻を示す送信時刻情報である。以下では、ベースバンド信号に含まれる時刻情報を送信時刻情報と記載する。
【0038】
符号信号発生器23は、所定の符号に応じた送信側符号信号を符号化部22に出力する。符号は、「0」又は「1」で表される数字の羅列であり、これらの数字の数が符号長である。例えば、符号が「0100101」である場合、符号長は7である。送信側符号信号では、所定の符号に対応する波形が周期的に繰り返される。
【0039】
符号化部22は、符号信号発生器23から入力された送信側符号信号を用いて、信号出力部20から入力されたベースバンド信号のスペクトルを拡散させることによって、このベースバンド信号を符号化する。符号化部22は、符号化した符号化信号を重畳部24に出力する。
【0040】
搬送波発生器25は搬送波を重畳部24に出力する。搬送波発生器25が出力する搬送波はミリ波である。ミリ波の周波数の範囲は30GHz〜300GHzである。
重畳部24は、搬送波発生器25から入力された搬送波に、符号化部22から入力された符号化信号を重畳することによって重畳信号を生成する。重畳部24は、生成した重畳信号を増幅器26に出力する。
【0041】
増幅器26は、重畳部24から入力された重畳信号の振幅を増幅し、振幅が増幅された重畳信号を送信器27に出力する。送信器27は、増幅器26から入力された重畳信号を無線信号として移動局12に送信する。従って、重畳部24は、送信器27が送信する無線信号を生成する生成部として機能する。
【0042】
送信器27は、指向性を有し、
図1に示すように、第1方向に無線信号A1を送信し、第2方向に無線信号A2を送信し、第3方向に無線信号A3を送信する。送信器27は、所定の時間が経過する都度、無線信号の送信方向を、第1方向、第2方向又は第3方向に切替える。送信器27の送信方向は、第1方向、第2方向及び第3方向の順に切替えられる。
【0043】
送信器27は、切替えスイッチ30、3つの出力アンテナ31,32,33及び切替え部34を有する。切替えスイッチ30は棒状の導体30fを有する。
切替えスイッチ30の導体30fの一端は、重畳信号が出力される増幅器26の出力端に接続されている。導体30fの他端は、3つの出力アンテナ31,32,33中の1つに接続される。
【0044】
3つの出力アンテナ31,32,33夫々には信号が有線で入力される。3つの出力アンテナ31,32,33夫々は、指向性を有し、有線で入力された信号を無線で出力する。3つの出力アンテナ31,32,33夫々が信号を無線で出力する出力方向は相互に異なっている。3つの出力アンテナ31,32,33の中で切替えスイッチ30の導体30fの他端が接続されている出力アンテナには増幅器26から重畳信号が入力され、この出力アンテナから重畳信号が無線信号として出力される。
【0045】
出力アンテナ31が無線信号を出力した場合、第1方向に無線信号A1が送信される。出力アンテナ32が無線信号を出力した場合、第2方向に無線信号A2が送信される。出力アンテナ33が無線信号を出力した場合、第3方向に無線信号A3が送信される。
【0046】
切替え部34は、所定期間が経過する都度、切替えスイッチ30の導体30fの他端の接続先を、3つの出力アンテナ31,32,33中の1つに切替える。これにより、所定期間が経過する都度、重畳信号、即ち、無線信号を出力する出力先が3つの出力アンテナ31,32,33中の1つに切替えられる。切替え部34は、導体30fの他端の接続先を、出力アンテナ31,32,33の順に切替える。これにより、送信器27が無線信号を送信する送信方向は、第1方向、第2方向及び第3方向の順に切替えられ、送信方向が相互に異なる無線信号が連続して送信される。
【0047】
なお、切替え部34が切替えスイッチ30の導体30fの他端の接続先を変更するタイミングは、時計部21が示す時刻に基づいて調整されてもよいし、図示しないタイマに基づいて調整されてもよし、制御装置11の指示に基づいて調整されてもよい。
【0048】
信号出力部20は、制御装置11から送信指示が入力された場合、連続してベースバンド信号を符号化部22に出力する。このとき、信号出力部20は、所定の時間が経過する都度、ベースバンド信号を符号化部22に出力する。このため、送信器27は、無線信号を連続して送信し、送信器27が連続して送信する3つの無線信号の送信方向は相互に異なる。
【0049】
図3は無線信号の生成方法の説明図である。
図3には、ベースバンド信号、送信側符号信号、符号化信号、搬送波及び無線信号の波形の一例が示されている。これらの縦軸及び横軸夫々には、電圧及び時間が示されている。ベースバンド信号、送信側符号信号及び符号化信号夫々は、「+1」及び「−1」で表される2値信号である。実際には、「+1」は「(振幅)/2」に対応し、「−1」は「−(振幅)/2」に対応する。
【0050】
信号出力部20は、前述したように、送信時刻情報、送信元情報及び座標情報を含むベースバンド信号を符号化部22に出力する。ベースバンド信号はNRZ(Non-Return to Zero)信号である。
前述したように、符号信号発生器23は、送信側符号信号を符号化部22に出力し、送信側符号信号では、所定の符号に対応する所定の波形が周期的に繰り返される。
図3の例では、所定の符号は「0100101」であり、符号の「0」は「+1」に対応し、符号の「1」は「−1」に対応している。送信側符号信号の周期Tsは、ベースバンド信号の1ビットの長さと一致又は略一致している。
【0051】
符号化部22は、ベースバンド信号と送信側符号信号とを乗算することによって、ベースバンド信号を符号化する。従って、ベースバンド信号が「+1」を示す期間の符号化信号の波形は所定の波形に一致し、ベースバンド信号が「−1」を示す期間の符号化信号の波形は、所定の波形の正負を反転した波形に一致する。
【0052】
符号化信号のパルス幅の最小値は、ベースバンド信号の1ビットの長さを、所定の符号の符号長で除算することによって算出される値である。以下では、符号化信号のパルス幅の最小値をチップ期間と記載する。ベースバンド信号のビットレートと符号長との積がチップレートである。チップ期間Tcはチップレートの逆数である。
【0053】
符号化信号のパルス幅の最小値、即ち、チップ期間Tcは、ベースバンド信号のパルス幅の最小値、即ち、ベースバンド信号の1ビットの期間よりも小さい。2値信号について、スペクトル幅は、パルス幅の最小値に反比例する。従って、符号化部22が符号化を行うことによって、ベースバンド信号のスペクトルが拡散される。
図3の例では、符号化信号のパルス幅の最小値は、(ベースバンド信号のパルス幅の最小値)/7である。このため、符号化信号のスペクトル幅は、ベースバンド信号のスペクトル幅の7倍である。
【0054】
搬送波発生器25が出力する搬送波は
図3に示すように正弦波である。搬送波がミリ波である場合、搬送波の周波数は、30GHz〜300GHz中の1つの周波数である。
【0055】
重畳部24は、前述したように、搬送波発生器25が出力した搬送波に、符号化部22が出力した符号化信号を重畳することによって、送信器27から無線信号として送信される重畳信号を生成する。符号化信号が「+1」を示す期間の重畳信号の波形は搬送波の波形に一致し、符号化信号が「−1」を示す期間の重畳信号の波形は、搬送波の波形の正負を反転した波形に一致する。
前述したように、重畳部24が生成した重畳信号の振幅は増幅器26によって増幅され、振幅が増幅された重畳信号は無線信号として送信器27から送信される。
【0056】
固定局10b,10c夫々は固定局10aと同様に構成されている。固定局10aの構成の説明において、無線信号A1,A2,A3夫々を無線信号B1,B2,B3に置き換えることによって、固定局10bの構成を説明することができる。同様に、固定局10aの構成の説明において、無線信号A1,A2,A3夫々を無線信号C1,C2,C3に置き換えることによって、固定局10cの構成を説明することができる。
【0057】
固定局10a,10b,10c夫々の搬送波発生器25が出力する搬送波の周波数は同一又は略同一である。また、固定局10a,10b,10c夫々の符号信号発生器23で用いられる符号は同一である。更に、固定局10a,10b,10cの時計部21が示す時刻は同一又は略同一である。制御装置11によって、固定局10a,10b,10cの時計部21が示す時刻が一致するように、これらの時刻が繰り返し調整される。
【0058】
制御装置11は、3つの固定局10a,10b,10c中の少なくとも2つの送信器27が同一の時間帯に無線信号を送信することがないように、固定局10a,10b,10cに送信指示を出力し、無線信号を送信する送信器27を経時的に変更する。従って、1日の全ての時間帯において、固定局10a,10b,10c中の1つの固定局のみが無線信号を送信しているか、又は、固定局10a,10b,10cの全てが無線信号の送信を停止している。
【0059】
3つの固定局10a,10b,10cの送信器27は、例えば、以下のように無線信号を送信する。
まず、制御装置11は、固定局10aの信号出力部20に送信指示を出力し、無線信号を送信する送信器を固定局10aの送信器27に変更する。固定局10aの送信器27は、無線信号A1,A2,A3をこの順で送信する。
【0060】
無線信号A3が送信された後、制御装置11は、固定局10aの信号出力部20に停止指示を出力する。その後、制御装置11は、固定局10bの信号出力部20に送信指示を出力し、無線信号を送信する送信器を固定局10bの送信器27に変更する。固定局10bの送信器27は、無線信号B1,B2,B3をこの順で送信する。
無線信号B3が送信された後、制御装置11は、固定局10bの信号出力部20に停止指示を出力する。その後、制御装置11は、固定局10cの信号出力部20に送信指示を出力し、無線信号を送信する送信器を固定局10cの送信器27に変更する。固定局10cの送信器27は、無線信号C1,C2,C3をこの順で送信する。
無線信号C3が送信された後、制御装置11は、固定局10cの信号出力部20に停止指示を出力する。その後、制御装置11は、固定局10aの信号出力部20に送信指示を再び出力する。
【0061】
なお、固定局10a,10b,10c夫々の信号出力部20は、制御装置11から送信指示が入力されてから、前述した所定の時間の3倍が経過した場合にベースバンド信号の出力を停止するように構成されてもよい。この場合、制御装置11は、所定の時間の3倍が経過する都度、送信指示を出力すればよい。制御装置11は、固定局10a,10b,10cの信号出力部20の順に送信指示を出力する。
【0062】
図4は移動局12の要部構成を示すブロック図である。移動局12は、受信器40、増幅器41、混合器42、発振器43、ローパスフィルタ(以下ではLPFという)44、復号部45、受信検出部46、符号信号発生器47、演算部48、時計部49、タイマ50、出力部51及び記憶部52を有する。
【0063】
受信器40は、固定局10a,10b,10cの送信器27が送信した無線信号を受信し、受信した無線信号を増幅器41に出力する。受信器40は、ダイポールアンテナ又はマイクロストリップアンテナを有する。
【0064】
ダイポールアンテナでは、ケーブルの端面から2本の導線が突出しており、2本の導線夫々はL字状をなしている。2本の導線夫々の突出端の位置は、端面におけるケーブルの軸心を基準として対称である。
マイクロストリップアンテナでは、薄い銅箔付プリント基板上に、円状、楕円状又矩形状等の共振素子が設置されている。誘電率が低い基板がプリント基板として用いられる。
【0065】
受信器40は、ダイポールアンテナ又はマイクロストリップアンテナを用いて無線信号を受信する。このため、受信器40の指向性が広いので、固定局10a,10b,10c夫々の送信器27が送信した無線信号が受信される確率が高い。
受信器40の無線信号の受信帯域は、ミリ波に対応する周波数帯域(30GHz〜300GHz)の一部又は全部である。
【0066】
増幅器41は、受信器40から受信した無線信号の振幅を増幅し、振幅が増幅された無線信号を混合器42に出力する。
発振器43は正弦波を混合器42に出力する。
【0067】
混合器42は、増幅器41から入力された無線信号と発振器43から出力された正弦波とを混合することによって、符号化信号が含まれる混合信号を生成する。発振器43が出力する正弦波の周波数は、例えば、固定局10a,10b,10cの搬送波発生器25が出力する搬送波の周波数と同じである。混合器42は、生成した混合信号をLPF44に出力する。
【0068】
LPF44は、混合器42から入力された混合信号から符号化信号を抽出し、抽出した符号化信号を、復号部45及び受信検出部46に出力する。混合器42及びLPF44は抽出部として機能する。
【0069】
符号信号発生器47は、固定局10a,10b,10c夫々の符号信号発生器23と同様に、所定の符号に応じた受信側符号信号を復号部45に出力する。符号信号発生器47で用いられる符号は、固定局10a,10b,10cの符号信号発生器23で用いられる符号と同一である。受信側符号信号は、送信側符号信号と同様に、所定の符号に応じた所定の波形が周期的に繰り返される信号である。受信側符号信号及び送信側符号信号夫々について、所定の波形及び周期は同一である。
符号信号発生器23,47で用いられる符号は、例えば、PN(Pseudo Noise:疑似雑音)符号である。
【0070】
復号部45は、符号信号発生器47から入力された受信側符号信号と、LPF44から入力された符号化信号との位相が一致している状態で、受信側符号信号及び符号化信号を乗算することによって、LPF44から入力された符号化信号のスペクトルを逆拡散させる。これにより、LPF44によって抽出された符号化信号がベースバンド信号に復号される。
【0071】
図5はベースバンド信号への復号の説明図である。以下では、受信側符号信号及び符号化信号の乗算によって得られる信号を乗算信号と記載する。
図5には、符号化信号、受信側符号信号及び乗算信号の波形の一例が示されている。これらの縦軸及び横軸夫々には、電圧及び時間が示されている。受信側符号信号、受信側符号信号及び乗算信号夫々は、「+1」及び「−1」で表される2値信号である。実際には、「+1」は「(振幅)/2」に対応し、「−1」は「−(振幅)/2」に対応する。
【0072】
復号部45は符号化信号及び受信側符号信号を乗算する。従って、符号化信号及び受信側符号化信号が共に「+1」又は「−1」を示す期間、乗算信号は「+1」を示す。また、符号化信号及び受信側符号信号の中で一方が「+1」を示し、かつ、他方が「−1」を示す期間、乗算信号は「−1」を示す。
【0073】
図5に示すように、符号化信号及び受信側符号信号の位相差がゼロではない場合、乗算信号はベースバンド信号と一致しない。このとき、受信側符号信号の周期Tsに亘って積分することによって算出される積分値の絶対値、即ち、相関値は小さい。
図5の例では、相関値は1である。
符号化信号及び受信側符号の位相差がゼロである場合、乗算信号はベースバンド信号と一致し、相関値は最大である。
図5の例では、相関値の最大値は周期Tsの長さと一致する。
【0074】
復号部45は、相関値を監視しながら、符号化信号及び受信側符号の位相差をゼロに調整する。相関値が最大である場合、位相差はゼロである。前述したように、符号化信号のパルス幅の最小値(チップ期間Ts)は、ベースバンド信号のパルス幅の最小値よりも小さく、スペクトル幅は、パルス幅の最小値に反比例する。従って、復号部45が復号を行うことによって、符号化信号のスペクトルが逆拡散される。
図5の例では、ベースバンド信号のパルス幅の最小値は、符号化信号のパルス幅の最小値の7倍であるため、ベースバンド信号のスペクトル幅は、(符号化信号のスペクトル幅)/7である。
【0075】
相関値は、受信器40が受信した無線信号の受信強度が大きい程大きい。復号部45は、復号したベースバンド信号と、位相差がゼロである場合における相関値を示す相関値情報とを演算部48に出力する。
【0076】
固定局10a,10b,10c夫々の送信器27から移動局12の受信器40へ無線信号が送信された場合、受信器40が受信する無線信号には、送信器27から直接に受信器40に到達した無線信号の他に、壁体W1,W2,W3等の物体で反射して受信器40に到達した無線信号が含まれる可能性がある。
【0077】
受信器40が複数の無線信号を同一の時間帯に受信した場合、復号部45は、最初に復号に成功した無線信号に係るベースバンド信号と、この無線信号に係る相関値を示す相関値情報とを演算部48に出力する。
従って、復号部45は、送信器27から直接に受信器40に到達した無線信号の符号化信号をベースバンド信号に復号する確率が高い。
【0078】
なお、固定局10a,10b,10c夫々の符号信号発生器23が用いる符号が、移動局12の符号信号発生器47が用いる符号と異なる場合、位置差に無関係に相関値は小さく、符号化信号がベースバンド信号に復号されることはない。
【0079】
図4に示す受信検出部46は、LPF44から符号化信号が入力された場合、無線信号の受信を検出し、受信器40が無線信号を受信したことを演算部48に通知する。
【0080】
演算部48は、時計部49から、現在の時刻を示す時刻情報を取得する。演算部48は時計部49から時刻情報を取得した場合、演算部48が取得した時刻情報が示す時刻は、取得時点の時刻と略一致する。
タイマ50は、演算部48の指示に従って、計時の開始及び終了を行う。タイマ50が計時している計時時間は演算部48によって読み出される。
【0081】
出力部51は、演算部48の指示に従って、移動局12の位置を示す位置情報を含む位置信号を搬送装置13に出力する。搬送装置13は、前述したように、出力部51から入力された位置信号に含まれている位置情報に基づいて、進行方向の変更、移動の停止、又は、移動速度の変更等を行う。
【0082】
記憶部52は例えば不揮発性メモリである。記憶部52には、制御プログラムが記憶されている。演算部48は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を有し、制御プログラムを実行することによって、移動局12の位置を演算する位置演算処理を含む処理を実行する。
記憶部52には、種々のデータが演算部48によって記憶される。また、記憶部52に記憶されているデータは演算部48によって読み出される。記憶部52には、固定局10a,10b,10cの位置を示す情報が記憶されている。
【0083】
図6は、演算部48が実行する処理の手順を示すフローチャートである。まず、演算部48は、タイマ50に指示して計時を開始させ(ステップS1)、受信検出部46が無線信号の受信を検出したか否かを判定する(ステップS2)。
【0084】
演算部48は、受信検出部46が無線信号の受信を検出したと判定した場合(S2:YES)、復号部45から入力されたベースバンド信号に含まれている送信時刻情報及び送信元情報と、復号部45から入力された相関値情報とを取得する(ステップS3)。次に、演算部48は、時計部49から時刻情報を取得する(ステップS4)。ここで、演算部48が取得した時刻情報が示す時刻は、無線信号の受信時刻である。
【0085】
次に、演算部48は、受信器40が受信した無線信号について、ステップS3で取得した送信時刻情報が示す送信時刻と、ステップS4で取得した時刻情報が示す受信時刻とに基づいて、送信元から移動局12の受信器40までの伝播時間を算出する(ステップS5)。演算部48は、例えば、送信時刻から受信時刻までの期間を伝播時間として算出する。
【0086】
次に、演算部48は、受信器40が受信した無線信号について、ステップS5で算出した伝播時間に基づいて、送信元から移動局12の受信器40までの無線信号の伝播距離を算出する(ステップS6)。例えば、室内が真空であると見なす場合、演算部48は、伝播時間に、真空中の無線信号の伝播速度を乗算することによって伝播距離を算出する。真空中の無線信号の伝播速度は3と10の8乗との積(単位:m/s)で表される。演算部48は距離算出部としても機能する。
【0087】
次に、演算部48は、ステップS3で取得した送信元情報が示す送信元に対応付けて、ステップS3で取得した相関情報が示す相関値と、ステップS6で算出した伝播距離とを記憶部52に記憶する(ステップS7)。
図7は、送信元に対応付けられた相関値及び伝播距離を示す図表である。ステップS7では、演算部48は、例えば、
図7に示すように、送信元である固定局10aに対応付けて、相関値Ma1と伝播距離La1とを記憶する。
【0088】
演算部48は、受信検出部46が無線信号の受信を検出していないと判定した場合(S2:NO)、又は、ステップS7を実行した後、タイマ50が計時している計時時間が基準時間以上であるか否かを判定する(ステップS8)。演算部48は、計時時間が基準時間未満であると判定した場合(S8:NO)、ステップS2を実行する。
【0089】
演算部48は、計時時間が基準時間以上となるまでの間に、受信器40が受信した無線信号について、送信元に対応付けて相関値及び伝播時間を記憶する。前述したように、無線信号A1,A2,A3,B1,B2,B3,C1,C2,C3は、固定局10a,10b,10cから所定の時間が経過する都度、順次送信される。基準時間は、例えば、所定の時間の9倍に設定される。これにより、計時時間が基準時間以上となるまでに、移動局12の受信器40は、無線信号A1,A2,A3,B1,B2,B3,C1,C2,C3の全てを受信することが可能である。
【0090】
計時時間が基準時間以上となるまでに、無線信号A1,A2,A3,B1,B2,B3,C1,C2,C3の全てを受信した場合、
図7に示すように、送信元に対応付けて9個の相関値と、9個の伝播距離とが記憶部52に記憶される。計時時間が基準時間以上となるまでに、例えば、無線信号B3が移動局12の受信器40に到達しなかった場合、送信元に対応付けて8個の相関値と、8個の伝播距離とが記憶部52に記憶される。
【0091】
演算部48は、計時時間が基準時間以上であると判定した場合(S8:YES)、タイマ50に指示して計時を終了させ(ステップS9)、固定局10a,10b,10c夫々について、相関値が最大である伝播距離を選択する(ステップS10)。演算部48は、計時時間が基準時間以上となるまでに記憶部52に記憶された相関値及び伝播距離に基づいて、ステップS10を実行する。固定局10a,10b,10c夫々について、相関値が高い程、無線信号の受信状態が良好であるため、相関値が最大である伝播距離を選択する。
【0092】
例えば、計時時間が基準時間以上となるまでに、
図7に示すように、相関値及び伝播距離が記憶部52に記憶されたと仮定する。演算部48は、固定局10aについて、相関値Ma1,Ma2,Ma3中の最大の相関値に対応する伝播距離を選択する。相関値Ma1が最大の相関値である場合、伝播距離La1を選択する。同様に、演算部48は、固定局10bについて、相関値Mb1,Mb2,Mb3中の最大の相関値に対応する伝播距離を選択し、固定局10cについて、相関値Mc1,Mc2,Mc3中の最大の相関値に対応する伝播距離を選択する。
【0093】
次に、演算部48は、ステップS10で選択した3つの伝播距離に基づいて、移動局12の位置を演算する(ステップS11)。演算部48は、例えば、双曲線航法によって、移動局12の位置を演算する。演算部48は、ステップS10で、固定局10a,10b,10c夫々に対応する伝播距離La1,Lb1,Lc1を選択したと仮定する。双曲線航法では、演算部48は、固定局10a,10b,10cの位置を示す座標において、固定局10a,10b夫々との距離の差が(La1−Lb1)の絶対値となる位置を示す第1双曲線を描き、固定局10b,10c夫々との距離の差が(Lb1−Lc1)の絶対値となる位置を示す第2双曲線を描き、第1双曲線及び第2双曲線の交点を移動局12の位置として演算する。第1双曲線は、固定局10a,10bの位置を2つの焦点とする双曲線である。第2双曲線は、固定局10b,10cの位置を2つの焦点とする双曲線である。固定局10a,10b,10c夫々の位置は、送信元が固定局10a,10b,10cであるベースバンド信号に含まれている座標情報が示す位置である。
【0094】
演算部48は、他の方法で移動局12の位置を演算してもよい。演算部48は、例えば、固定局10a,10b,10cの位置を示す座標において、中心が固定局10aの位置であり、半径が伝播距離La1である円を描き、中心が固定局10bの位置であり、半径が伝播距離Lb1である円を描き、中心が固定局10cの位置であり、半径が伝播距離Lc1である円を描く。そして、演算部48は、3つの円の交点を移動局12の位置として算出してもよい。
演算部48は位置演算部としても機能する。
【0095】
次に、演算部48は、出力部51に指示して、ステップS11で演算した位置を示す位置情報を含む位置信号を搬送装置13に出力させる(ステップS12)。
演算部48は、ステップS12を実行した後、処理を終了する。演算部48は、処理を終了した後、再び、ステップS1を実行し、移動局12の位置の演算を繰り返す。
【0096】
以上のように構成された測位システム1では、固定局10a,10b,10c夫々の送信器27が送信する無線信号の搬送波がミリ波であるため、チップレートが高い無線信号を移動局12に送信することができる。送信側符号信号において、周期Tsを維持した状態で符号長を長くすることにより、チップ期間Tcが短くなり、符号化信号のチップレートが上昇する。
【0097】
チップレートが高い場合においては、チップ期間Tcが短いので、移動局12の受信器40が複数の無線信号を同一時間帯に受信したときに、復号部45が壁体W1,W2,W3等の壁体で反射した無線信号から抽出された符号化信号を復号化する確率は低い。このため、移動局12の演算部48は、移動局12の位置を正確に演算することができる。
【0098】
更に、固定局10a,10b,10c夫々の送信器27が送信する無線信号の搬送波はミリ波である。このため、無線信号が回折によって大きく広がることはなく、固定局10a,10b,10c夫々の送信器27から送信された無線信号は、直進して移動局12の受信器40に到達する確率が高い。結果、移動局12の演算部48は、移動局12の位置として誤った位置を演算する確率は低い。
【0099】
また、固定局10a,10b,10c夫々の送信器27は、指向性を有しており、かつ、無線信号の送信方向を経時的に変更する。このため、無線信号が送信器27から移動局12に直接に到達する確率は高く、無線信号が、壁体W1,W2,W3等の物体で反射して移動局12に到達する確率は低い。
【0100】
移動局12の位置が
図1に示す位置である場合において、移動局12の受信器40が固定局10bの送信器27から無線信号B1,B2,B3を受信するとき、受信器40は、壁体W1で反射した無線信号B1と、壁体W2で反射した無線信号B3を受信する可能性がある。しかし、壁体W1,W2,W3等の物体で反射した無線信号B2を受信器40が受信することはない。従って、受信器40は、壁体W1,W2,W3等の物体で反射した無線信号を受信する確率は低い。
【0101】
また、固定局10a,10b,10c中の少なくとも2つの送信器27が同一の時間帯に無線信号を送信することはなく、固定局10a,10b,10cの送信器27の中で、無線信号を送信する送信器27は、経時的に変更される。このため、複数の無線信号が相互に干渉することはなく、無線信号に含まれる送信時刻情報及び送信元情報等が、移動局12の演算部48によって適切に取得される。
【0102】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2における固定局10aの要部構成を示すブロック図である。
以下では、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通しているため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0103】
実施の形態2における測位システム1において、実施の形態1における測位システム1と比較して、3つの固定局10a,10b,10c夫々の送信器27の構成が異なる。
【0104】
固定局10aの送信器27は、実施の形態1と同様に、指向性を有し、
図1に示すように無線信号A1,A2,A3を送信する。送信器27は、所定の時間が経過する都度、無線信号の送信方向を、第1方向、第2方向又は第3方向に切替える。送信器27の送信方向は、第1方向、第2方向及び第3方向の順に切替えられる。
【0105】
送信器27は、出力アンテナ60、反射体61及び駆動部62を有する。出力アンテナ60は、重畳信号が出力される増幅器26の出力端に接続されている。出力アンテナ60は、増幅器26から有線で入力された重畳信号を無線信号として反射体61に無線で出力する。反射体61は、U字状の断面を有し、出力アンテナ60が出力した無線信号を内面で反射する。これにより、無線信号が送信される。
【0106】
駆動部62は、反射体61における無線信号の反射角度を変更する。これにより、無線信号の送信方向が第1方向、第2方向又は第3方向に切替えられる。駆動部62は変更部として機能する。
【0107】
図9は、無線信号の反射角度の変更方法の説明図である。駆動部62は反射体61の外側に接続している。駆動部62は、反射体61との接続点を通り、室内Rの床面に対して垂直である直線を軸として反射体61を回動させる。これにより、反射体61における無線信号の反射角度が変更される。室内Rの床面に垂直な直線は、
図9においては、紙面に垂直な直線である。
【0108】
なお、反射体61が有する断面の形状は、U字状に限定されず、例えば、矩形状であってもよい。また、
図9に示すように、傾きが連続的に変化する断面を反射体61が有している場合には、駆動部62は、反射体61を室内Rの床面に平行な方向に移動させてもよい。例えば、
図9においては、駆動部62は、反射体61を上下方向に移動させることによって、反射体61における無線信号の反射角度を変更することができる。
図9における上下方向は室内Rの床面に平行な方向の1つである。
【0109】
以上のように、駆動部62は反射体61における無線信号の反射角度を変更することによって、送信方向が相互に異なる無線信号を連続して送信することができる。
【0110】
固定局10b,10c夫々の送信器27は固定局10aの送信器27と同様に構成されている。固定局10aの送信器27の構成の説明において、無線信号A1,A2,A3夫々を無線信号B1,B2,B3に置き換えることによって、固定局10bの送信器27の構成を説明することができる。同様に、固定局10aの送信器27の構成の説明において、無線信号A1,A2,A3夫々を無線信号C1,C2,C3に置き換えることによって、固定局10cの送信器27の構成を説明することができる。
【0111】
実施の形態2における測位システム1は、実施の形態1における測位システム1が奏する効果の中で、送信器27の構成によって得られる効果を除く他の効果を同様に奏する。
【0112】
なお、実施の形態1,2において、固定局10a,10b,10cの送信器27の構成は同一でなくてもよい。実施の形態1では、固定局10a,10b,10cの送信器27中の少なくとも1つが、切替えスイッチ30、3つの出力アンテナ31,32,33及び切替え部34を有していればよい。また、実施の形態2では、固定局10a,10b,10cの送信器27中の少なくとも1つが、出力アンテナ60、反射体61及び駆動部62を有していればよい。従って、実施の形態1,2において、例えば、固定局10aの送信器27の構成が、切替えスイッチ30、3つの出力アンテナ31,32,33及び切替え部34を有する構成であり、固定局10b,10c夫々の送信器27の構成が、出力アンテナ60、反射体61及び駆動部62を有する構成であってもよい。
【0113】
(実施の形態3)
図10は、実施の形態3における測位システム1の要部構成を示すブロック図である。
以下では、実施の形態3について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通しているため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0114】
実施の形態3における測位システム1は、実施の形態1における測位システム1が備える構成部に加えて、固定局10dを備えている。固定局10dも、予め決められた室内Rの位置に固定され、制御装置11に有線で接続されている。固定局10a,10b,10c,10dの位置は相互に異なっている。固定局10dも制御装置11の指示に従って、無線信号を移動局12に送信する。移動局12は、固定局10a,10b,10c,10dから受信した無線信号に基づいて、自局の位置を演算する。
【0115】
固定局10dは固定局10aと同様に構成されている。実施の形態1における固定局10aの構成の説明において、無線信号A1,A2,A3夫々を無線信号D1,D2,D3に置き換えることによって、固定局10dの構成を説明することができる。
【0116】
固定局10dの搬送波発生器25が出力する搬送波の周波数は、固定局10a,10b,10c夫々の搬送波発生器25が出力する周波数と同一又は略同一である。また、固定局10dの符号信号発生器23で用いられる符号も、固定局10a,10b,10c夫々の符号信号発生器23で用いられる符号と同一である。制御装置11によって、固定局10a,10b,10c,10dの時計部21が示すと時刻が一致するように、これらの時刻が繰り返し調整されている。
【0117】
実施の形態1と同様に、制御装置11は、4つの固定局10a,10b,10c,10d中の少なくとも2つの送信器27が同一の時間帯に無線信号を送信することがないように、固定局10a,10b,10c,10dに送信指示を出力し、無線信号を送信する送信器27を経時的に変更する。従って、1日の全ての時間帯において、固定局10a,10b,10c,10d中の1つの固定局のみが無線信号を送信しているか、又は、固定局10a,10b,10c,10dの全てが無線信号の送信を停止している。
移動局12の受信器40は、固定局10a,10b,10c,10dの送信器27が送信した無線信号を受信し、受信した無線信号は増幅器41に出力される。
【0118】
移動局12の演算部48は実施の形態1と同様の処理を行う。基準時間は、例えば、所定の時間の12倍に設定される。これにより、タイマ50が計時している計時時間が基準時間以上となるまでに、移動局12の受信器40は、無線信号A1,A2,A3,B1,B2,B3,C1,C2,C3,D1,D2,D3の全てを受信することが可能である。
【0119】
ステップS10では、演算部48は、固定局10a,10b,10c,10d夫々について、相関値が最大である伝播距離を選択する。ステップS11では、演算部48は、ステップS10で選択した4つの伝播時間に基づいて、移動局12の位置を演算する。ここで、演算部48は、4つの伝播距離を用いるため、2次元の位置、即ち、
図10の上下及び左右に係る位置だけではなく、3次元の位置、即ち、上下、左右及び高低に係る位置を演算することができる。高低に係る位置は、
図10の紙面に垂直な方向の位置である。
実施の形態3における測位システム1は、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0120】
なお、実施の形態3において、演算部48が演算する位置が2次元の位置で十分である場合、演算部48は、固定局10a,10b,10c,10d中の3つ夫々について、相関値が最大である伝播距離を選択し、選択した3つの伝播距離に基づいて、移動局12の位置を演算してもよい。この構成では、固定局10a,10b,10c,10d中の1つの送信器27が連続して送信した全ての無線信号を、移動局12の受信器40が受信することができなかった場合であっても、移動局12の位置が演算される。
【0121】
また、固定局の数はK(K:5以上の整数)個であってもよい。演算部48が演算する位置が2次元の位置で十分である場合、演算部48は、K個の固定局中の3つ夫々について、相関値が最大である伝播距離を選択し、選択した3つの伝播距離に基づいて、移動局12の位置を演算してもよい。この構成では、K個の固定局中の(K−3)個の固定局の送信器27が連続して送信した全ての無線信号が、移動局12の受信器40が受信されなかった場合であっても、移動局12の位置が演算される。
【0122】
演算部48が演算すべき位置が3次元の位置である場合、演算部48は、K個の固定局中の4つ夫々について、相関値が最大である伝播距離を選択し、選択した4つの伝播距離に基づいて、移動局12の位置を演算してもよい。この構成では、K個の固定局中の(K−4)個の固定局の送信器27が連続して送信した全ての無線信号を、移動局12の受信器40が受信することができなかった場合であっても、移動局12の位置が演算される。
固定局の数がK個である場合、基準時間は、例えば、所定の時間の3・K倍に設定される。「・」は積を表す。
また、演算部38が演算する位置が1次元の位置で十分である場合には、固定局の数は2つであってもよい。この場合、基準時間は、例えば、所定の時間の6倍に設定される。
【0123】
なお、実施の形態3において、送信器27の構成は、切替えスイッチ30、3つの出力アンテナ31,32,33及び切替え部34を有する構成に限定されない。送信器27の構成は、出力アンテナ60、反射体61及び駆動部62を有する構成であってもよい。この場合、実施の形態3における測位システム1は実施の形態1と同様の効果を奏する。また、全ての固定局の送信器27の構成は同一でなくてもよい。
【0124】
なお、実施の形態1〜3において、固定局の送信器27が送信する無線信号の送信方向の数は、3に限定されず、2又は4以上であってもよい。また、この送信方向の数は、全ての固定局について同じでなくてもよい。更に、固定局の送信器27は連続して無線信号を送信しなくてもよい。また、固定局の位置は、相互に異なる室内Rの位置であればよいので、室内Rの隅に限定されない。
また、受信器40の構成は、ダイポールアンテナ又はマイクロストリップアンテナを有する構成に限定されず、無線信号を受信することが可能な構成であればよい。
【0125】
更に、伝播時間の算出方法は、無線信号の送信時刻及び受信時刻に基づく算出方法に限定されない。例えば、1つの固定局の符号信号発生器23が行う送信側符号信号の出力と、移動局12の符号信号発生器47が行う受信側符号信号の出力とを同一時刻に行い、移動局12内において、符号化信号及び受信側符号信号の位相差(
図5を参照)を伝播時間として算出してもよい。
また、復号部45が出力する相関値情報が示す相関値は、符号化信号及び受信側符号信号の位相差がゼロである場合における相関値に限定されず、符号化信号及び受信側符号信号の位相差がゼロではない場合における相関値であってもよい。
【0126】
開示された実施の形態1〜3はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。