【解決手段】一つの実施形態によれば、ディスク装置の製造方法が提供される。製造方法は、ディスク媒体に記録された補助サーボパターンを用いて粗動アクチュエータ及び微動アクチュエータによりヘッドを第1の半径位置に位置決めし、前記第1の半径位置における前記微動アクチュエータの制御信号の第1のゲインを測定することを含む。製造方法は、前記補助サーボパターンを用いて前記粗動アクチュエータ及び前記微動アクチュエータにより前記ヘッドを第2の半径位置に位置決めし、前記第2の半径位置における前記微動アクチュエータの制御信号の第2のゲインを測定することを含む。
ディスク媒体に記録された補助サーボパターンを用いて粗動アクチュエータ及び微動アクチュエータによりヘッドを第1の半径位置に位置決めし、前記第1の半径位置における前記微動アクチュエータの制御信号の第1のゲインを測定することと、
前記補助サーボパターンを用いて前記粗動アクチュエータ及び前記微動アクチュエータにより前記ヘッドを第2の半径位置に位置決めし、前記第2の半径位置における前記微動アクチュエータの制御信号の第2のゲインを測定することと、
を備えたディスク装置の製造方法。
前記第1のゲイン補正値に応じて、前記補助サーボパターンを用いながら前記第1の半径位置に前記ヘッドを位置決めし、前記ディスク媒体にサーボパターンをライトすることと、
前記第2のゲイン補正値に応じて、前記補助サーボパターンを用いながら前記第2の半径位置に前記ヘッドを位置決めし、前記ディスク媒体にサーボパターンをライトすることと、
をさらに備えた
請求項2に記載のディスク装置の製造方法。
前記第1のゲイン補正値を求めることは、前記第1の半径位置及び前記第2の半径位置について前記微動アクチュエータの制御信号のゲインが一様になるように、前記第1のゲイン補正値を求めることを含み、
前記第2のゲイン補正値を求めることは、前記第1の半径位置及び前記第2の半径位置について前記微動アクチュエータの制御信号のゲインが一様になるように、前記第2のゲイン補正値を求めることを含む
請求項2に記載のディスク装置の製造方法。
半径位置とゲイン関連値とが少なくとも前記第1の半径位置及び前記第2の半径位置について対応付けられた情報を生成して前記ディスク媒体又は不揮発性メモリに格納することをさらに備え、
前記ゲイン関連値は、前記第1のゲイン及び前記第2のゲイン、又は前記第1のゲイン補正値及び前記第2のゲイン補正値を含む
請求項2に記載のディスク装置の製造方法。
前記第1のゲイン補正値及び前記第2のゲイン補正値を求めることは、前記第1の半径位置及び前記第2の半径位置に対するゲインの変化に対する第1の近似曲線を生成することを含み、
前記第1のゲイン補正値は、前記第1の近似曲線における前記第1の半径位置に対応した値の逆数の値を含み、
前記第2のゲイン補正値は、前記第1の近似曲線における前記第2の半径位置に対応した値の逆数の値を含む
請求項2に記載のディスク装置の製造方法。
半径位置とゲイン関連値とが少なくとも前記第1の半径位置及び前記第2の半径位置について対応付けられた情報を生成して前記ディスク媒体又は不揮発性メモリに格納することをさらに備え、
前記ゲイン関連値は、前記第1のゲイン及び前記第2のゲイン、前記第1の近似曲線上の前記第1の半径位置に対応した値及び前記第2の半径位置に対応した値、又は前記第1のゲイン補正値及び前記第2のゲイン補正値を含む
請求項7に記載のディスク装置の製造方法。
前記第1のゲイン補正値及び前記第2のゲイン補正値を求めることは、前記第1の半径位置に対する前記第1のゲインの逆数を求め、前記第2の半径位置に対する前記第2のゲインの逆数を求め、前記第1の半径位置及び前記第2の半径位置におけるゲインの逆数の変化に対する第2の近似曲線を生成することを含み、
前記第1のゲイン補正値は、前記第2の近似曲線における前記第1の半径位置に対応した値を含み、
前記第2のゲイン補正値は、前記第2の近似曲線における前記第2の半径位置に対応した値を含む
請求項2に記載のディスク装置の製造方法。
半径位置とゲイン関連値とが少なくとも前記第1の半径位置及び前記第2の半径位置について対応付けられた情報を生成して前記ディスク媒体又は不揮発性メモリに格納することをさらに備え、
前記ゲイン関連値は、前記第1のゲイン補正値及び前記第2のゲイン補正値、又は前記第2の近似曲線上の前記第1の半径位置に対応した値及び前記第2の半径位置に対応した値を含む
請求項9に記載のディスク装置の製造方法。
前記コントローラは、前記第1の半径位置について、前記第1のゲインに応じて第1のゲイン補正値を求め、前記第2の半径位置について、前記第2のゲインに応じて第2のゲイン補正値を求める
請求項12に記載のディスク装置。
前記コントローラは、前記第1のゲイン補正値に応じて、前記補助サーボパターンを用いながら前記第1の半径位置に前記ヘッドを位置決めし、前記ディスク媒体にサーボパターンをライトし、前記第2のゲイン補正値に応じて、前記補助サーボパターンを用いながら前記第2の半径位置に前記ヘッドを位置決めし、前記ディスク媒体にサーボパターンをライトする
請求項13に記載のディスク装置。
前記コントローラは、前記第1の半径位置及び前記第2の半径位置について前記微動アクチュエータの制御信号のゲインが一様になるように、前記第1のゲイン補正値及び前記第2のゲイン補正値を求める
請求項13に記載のディスク装置。
前記コントローラは、前記第1の半径位置に対する前記第1のゲインの逆数を求め、前記第2の半径位置に対する前記第2のゲインの逆数を求め、前記第1の半径位置及び前記第2の半径位置におけるゲインの逆数の変化に対する第2の近似曲線を生成し、
前記第1のゲイン補正値は、前記第2の近似曲線における前記第1の半径位置に対応した値を含み、
前記第2のゲイン補正値は、前記第2の近似曲線における前記第2の半径位置に対応した値を含む
請求項13に記載のディスク装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるディスク装置の製造方法、及びディスク装置を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(実施形態)
図1を用いて、実施形態にかかるディスク装置100について説明する。
図1は、ディスク装置100の概略構成を示す図である。ディスク装置には、粗動アクチュエータ2及び微動アクチュエータ7によりヘッドMHを駆動する2段アクチュエータ(DSA:Dual Stage Actuator)技術が採用されることがある。
【0009】
例えば、ディスク装置100は、
図1に示すように、ケース1、複数枚のディスク媒体MD、スピンドルモータ(SPM)3、粗動アクチュエータ2、複数の微動アクチュエータ7、複数のヘッドMH、ヘッドアンプ12、リードライトチャネル(RWC)14、ハードディスクコントローラ(HDC)15、プロセッサ(CPU)16、不揮発性メモリ18、及びドライバ回路13を有する。
【0010】
複数枚のディスク媒体MDは、SPM3を介してケース1に回転可能に支持されている。SPM3は、ドライバ回路13により回転駆動される。複数のヘッドMHは、複数枚のディスク媒体MDの表面(記録面)及び裏面(記録面)に対応して複数設けられている。各ヘッドMHは、ディスク媒体MDの表面又は裏面に対向するように配置されている。
【0011】
ヘッドMHは、粗動アクチュエータ2及び微動アクチュエータ7を介してディスク媒体MD上を移動する。粗動アクチュエータ2及び微動アクチュエータ7は、ドライバ回路13により駆動される。粗動アクチュエータ2は、ボイスコイルモータ(VCM)4、回転軸5、及びキャリッジアーム6を含む。VCM4は、マグネット及びボイスコイルを含み、粗動アクチュエータ2における可動要素として機能する。マグネットの一部は、ケース1に取り付けられている。粗動アクチュエータ2は、マグネット及びボイスコイルにより電磁気的に及ぼす力によってキャリッジアーム6、微動アクチュエータ7、及びヘッドMHを粗動させる。微動アクチュエータ7は、サスペンションSS及び伸縮部材MAを含む。サスペンションSSは、ヘッドMHを保持する。伸縮部材MAは、圧電素子を含み、微動アクチュエータ7における可動要素として機能する。微動アクチュエータ7は、伸縮部材MAからサスペンションSSへ機械的に及ぼす力によってヘッドMHを微動させる。
【0012】
ヘッドMHは、ディスク媒体MDへのデータの書き込みに用いるライトヘッドと、ディスク媒体MDからのデータの読み出しに用いるリードヘッドとを有している。
【0013】
ヘッドアンプ12は、RWC14から入力されるライトデータに応じたライト信号(電流)をヘッドMH(ライトヘッド)に供給する。また、ヘッドアンプ12は、ヘッドMH(リードヘッド)から出力されたリード信号を増幅して、RWC14に伝送する。ヘッドアンプ12は、1チップの集積回路で構成され得る。ヘッドアンプ12のパッケージは、例えば、キャリッジアーム6の側面に装着され得る。
【0014】
RWC14は、信号処理回路である。RWC14は、HDC15から入力されたライトデータを符号化(コード変調)してヘッドアンプ12に出力する。また、RWC14は、ヘッドアンプ12から伝送されたリード信号からリードデータを復号化(コード復調)してHDC15に出力する。
【0015】
HDC15は、I/Fバスを介してホストHAとの間で行われるデータの送受信の制御などを行う。HDC15は、図示しないホストインターフェース(ホストI/F)回路を含む。
【0016】
CPU16は、例えば不揮発性メモリ18又はディスク媒体MDに記憶されたファームウェアに従って、このディスク装置100の全体的な制御を行う。ファームウェアは、ディスク装置100の起動時に最初に実行される初期ファームウェアおよびディスク装置100の通常動作に用いる制御用ファームウェアを含む。CPU16は、ファームウェアに従って、ヘッドMHによるリードまたはライトの制御処理、ディスク媒体MDの記録面上におけるヘッドMHの位置を制御するサーボ制御処理等の各種制御処理を実行することができる。
【0017】
なお、RWC14、HDC15、及びCPU16を含むハードウェア構成をコントローラ17と見なすこともできる。コントローラ17は、1チップの集積回路(システムオンチップ)として構成され得る。コントローラ17のパッケージは、ケース1の外側のプリント基板上に配され得る。
【0018】
不揮発性メモリ18は、コントローラ17のCPU16に接続され、CPU16により書き換え可能に構成されている。
【0019】
ドライバ回路13は、コントローラ17(CPU16)による制御に従い、SPM3、粗動アクチュエータ2及び微動アクチュエータ7を駆動する。ドライバ回路13は、1チップの集積回路として構成され得る。ドライバ回路13のパッケージは、ケース1の外側のプリント基板上に配され得る。
【0020】
ドライバ回路13は、SPM制御回路13a、生成回路13b、粗動制御回路13c、及び微動制御回路13dを有する。SPM制御回路13aは、CPU16から受けた制御信号に従い、駆動信号(駆動電圧又は駆動電流)を生成してSPM3へ供給する。これにより、SPM3が複数枚のディスク媒体MDを回転駆動する。
【0021】
例えば、コントローラ17(CPU16)は、ディスク媒体MDの補助サーボパターンからヘッドMHを介して読み出されヘッドアンプ12経由で受けたヘッド信号を復調して位置信号y(
図6(a)参照)を生成することができる。コントローラ17は、ヘッドMHの目標位置信号r(
図6(a)参照)を生成し、目標位置信号rと位置信号yとの差を演算して、演算結果を位置誤差eとして求めることができる。目標位置信号rと位置信号yとの差の演算は、例えば、目標位置信号rから位置信号yを減算すればよい。コントローラ17は、目標位置信号rに応じたヘッドMHの粗動制御位置と微動制御位置とのそれぞれを位置誤差eに応じて補正する。コントローラ17は、位置誤差eがゼロに近づくように、ヘッドMHの粗動制御位置と微動制御位置とのそれぞれを補正できる。コントローラ17は、補正後のヘッドMHの粗動制御位置に応じて制御信号CACTRを生成し、補正後のヘッドMHの微動制御位置に応じて制御信号MACTRを生成する。
【0022】
生成回路13bは、ヘッドMHの粗動制御位置に関する制御信号CACTRをCPU16から受ける。生成回路13bは、制御信号CACTRに基づいて、粗動制御信号CADRVを生成して粗動制御回路13cに供給する。また、生成回路13bは、ヘッドMHの微動制御位置に関する制御信号MACTRをCPU16から受ける。生成回路13bは、制御信号MACTRに基づいて、微動制御信号MADRVを生成して微動制御回路13dに供給する。
【0023】
粗動制御回路13cは、粗動制御信号CADRVに応じて、駆動信号(駆動電圧又は駆動電流)を生成して粗動アクチュエータ2(VCM4)へ供給する。これにより、粗動アクチュエータ2(VCM4)は、ヘッドMHを粗動させる。
【0024】
微動制御回路13dは、微動制御信号MADRVに応じて、駆動信号(駆動電圧又は駆動電流)を生成して微動アクチュエータ7(伸縮部材MA)へ供給する。これにより、微動アクチュエータ7(伸縮部材MA)は、ヘッドMHを微動させる。
【0025】
すなわち、CPU16は、粗動アクチュエータ2による粗動と微動アクチュエータ7による微動との2段階でヘッドMHが位置決め制御されるように、ドライバ回路13を制御する。なお、粗動アクチュエータ2及び微動アクチュエータ7を含むハードウェア構成をアクチュエータ9とみなすことができる。
【0026】
粗動アクチュエータ2において、キャリッジアーム6は、VCM4に機械的に連結されたキャリッジと、キャリッジから延びた複数のアームAM(
図2(a)参照)とを有する。微動アクチュエータ7は、+Z側(−Z側)からアームAMに支持され、ディスク媒体MDの−Z側(+Z側)の記録面に対してヘッドMHを±Y方向(磁気ディスクMDの径方向)に移動させる。この微動アクチュエータ7(伸縮部材MA)は、ヘッドMHを微動させる。
【0027】
伸縮部材MAの具体的な実装形態は、例えば、
図2(a)に示すようになる。
図2(a)は、微動アクチュエータ7及びヘッドMHの構成例を示す平面図である。伸縮部材MAは、第1部材71及び第2部材72を含む。サスペンションSSは、ベースプレート81、フレキシャ82、及びロードビーム83を有する。第1部材71及び第2部材72は、それぞれ、ベースプレート81とロードビーム83との間に配される。第1部材71及び第2部材72は、フレキシャ82を中心として互いに反対側に配され得る。
【0028】
あるいは、伸縮部材MAの具体的な実装形態は、例えば、
図2(b)に示すようになる。
図2(b)は、微動アクチュエータ7及びヘッドMHの別の構成例を示す斜視図である。伸縮部材MAは、第1部材71a及び第2部材72aを有する。サスペンションSSは、ベースプレート81a、フレキシャ82a、及びロードビーム83aを含む。第1部材71a及び第2部材72aは、それぞれ、フレキシャ82aの先端側のジンバル部GにおけるヘッドMHとロードビーム83aとの間に配される。第1部材71a及び第2部材72aは、フレキシャ82aを中心として互いに反対側に配され得る。
【0029】
図2(a)または
図2(b)に示した個々の微動アクチュエータ7は、次のようにヘッドMHを微動させる。微動アクチュエータ7において、第1部材71,71a及び第2部材72,72aは、それぞれ、フレキシャ82,82aを介してドライバ回路13から駆動信号(駆動電圧又は駆動電流)を受けて機械的な力を発生させる。例えば、第1部材71,71aがX方向に伸びる(+X方向の力を発生させる)とともに第2部材72,72aがX方向に縮む(−X方向の力を発生させる)ことで、微動アクチュエータ7における伸縮部材MAは、ヘッドMHを+Y方向に微動させる。第1部材71,71aがX方向に縮む(−X方向の力を発生させる)とともに第2部材72,72aがX方向に伸びる(+X方向の力を発生させる)ことで、微動アクチュエータ7における伸縮部材MAは、ヘッドMHを−Y方向に微動させる。
【0030】
次に
図3を用いて補助サーボパターンを説明する。
図3は、補助サーボパターンの構成例を示す図である。ディスク装置100においてサーボパターンをディスク媒体MD上に記録する方法としては、単板STW(Media Stack STWなどとも呼ぶ)やセルフサーボライト(以下、SSW)が知られている。例えば、ディスク媒体MDの表裏面には、サーボパターンを記録するための基準となる補助サーボパターン(例えば、スパイラルパターン55)がサーボトラックライタ(以下、STW)等により予め記録される。SSWでは、ディスク媒体MDがSTWからディスク装置100へ載せ替えられ、補助サーボパターン(例えば、スパイラルパターン55)を基準にしてディスク媒体MDにサーボパターン28が記録され得る。スパイラルパターン55は、
図3に実線で示すように、ディスク媒体MDにスパイラル状に記録されたパターンであり、例えば、ディスク媒体MDの内周から外周にかけて等速度でバーストパターンおよび同期パターンが周期的に繰り返し記録されることで形成され得る。このスパイラルパターン55を利用したSSWにおけるサーボパターンのトラック幅の精度は、基準となるスパイラルパターン55のディスク媒体MDの円周方向に対する傾きのばらつきに依存する。スパイラルパターン55の傾きは、スパイラルパターン55をディスク媒体MDに書き込む際におけるSTWの移動速度のばらつき等により、ディスク媒体MDが搭載されるディスク装置100のヘッドMHごと・個体ごとにばらつきやすい。
【0031】
ディスク媒体MDの径方向における各トラック幅は、ディスク装置100の製造工程においてディスク媒体MDにサーボパターン28を記録する際のヘッドMHの送りピッチに依存して決まり得る。スパイラルパターン55を利用したSSWにおけるトラック幅の調整方法として、次の第1の方法〜第5の方法が考えられる。
【0032】
第1の方法では、予め求められた半径位置ごとの補正値(固定値)を用いてスパイラルパターン55の検出ウィンドウの位置をシフトさせサーボパターン28(
図3の破線参照)を書く位置を調整することで、半径位置に応じてトラック幅を調整する。第1の方法は、半径位置ごとの補正値が予め求められた固定値とされているため、ヘッドMHごと・個体ごとのスパイラルパターンの傾きのばらつきに対応したトラック幅の調整が困難である。
【0033】
第2の方法では、スパイラルパターン55間の領域に所定のデータパターンを書いてそれを読み出せる範囲(利用可能なストローク)を探索し、利用可能なストロークに基づいてトラックピッチを決定してサーボパターン28を書くことで、トラック幅を調整する。第2の方法では、所定のデータパターンを書いてから書かれたデータパターンを読み出す必要があるため、トラック幅の調整のための時間が長くかかる傾向にある。
【0034】
第3の方法では、スパイラルパターン55間の領域に所定のデータパターンを書いてライトヘッド又はリードヘッドの幅を求め、ライトヘッド又はリードヘッドの幅に基づいてトラックピッチを決定してサーボパターン28を書くことで、トラック幅を調整する。第3の方法は、所定のデータパターンを書いてから書かれたデータパターンを読み出す必要があるため、トラック幅の調整のための時間が長くかかる傾向にある。
【0035】
第4の方法は、サーボパターン28を書く基準となるスパイラルパターン55自体を調整する方法である。第4の方法では、スパイラルパターン55の半径位置毎の傾斜角が均等になるようにSTWのアクチュエータの移動速度を調整しながらディスク媒体MDにスパイラルパターン55を書き、ディスク媒体MDをSTWからディスク装置100へ載せ替えて、スパイラルパターン55を用いてディスク媒体MDにサーボパターン28を書く。第4の方法では、スパイラルパターン55の傾きがばらついていないことを前提としてディスク媒体MDにサーボパターン28を書くため、スパイラルパターン55の傾きのばらつきに対応したトラック幅の調整が困難である。
【0036】
第5の方法は、トラック幅の調整のために予め決められた複数のスパイラルパターン55を用意する。そして、ディスク媒体MDの1つの面に1つ目のスパイラルパターン55を書き、ディスク媒体MDの他の面に2つ目のスパイラルパターン55を書き、複数のスパイラルパターン55から最適な(サーボ)トラック幅のサーボパターン28を書くことができる傾きを持つスパイラルパターン55を選択する。第5の方法は、選択されたスパイラルパターン55の傾きがばらついていないことを前提としてディスク媒体MDにサーボパターン28を書くため、スパイラルパターン55の傾きのばらつきに対応したトラック幅の調整が困難である。
【0037】
第1の方法〜第5の方法では、面内の半径位置に応じたトラック幅の調整は、事前の設計仕様を基にして決められた補正値を用いて行われると考えられる。第1の方法〜第5の方法では、トラック幅を半径位置毎に個別に調整する場合、ディスク媒体MDの1つの面に、スパイラルパターン55とは別に、トラック幅調整用の補助パターンをさらに記録して測定する必要がある。すなわち、サーボパターン28の書き込みに先立って、トラック幅調整用の補助パターンをさらに記録して測定する必要があるため、トラック幅の調整のための時間が長くかかる傾向にある。
【0038】
さらに、第1の方法〜第5の方法では、トラック幅の調整において、粗動アクチュエータ2の制御信号のゲイン(制御信号に施して粗動アクチュエータ2の駆動信号を生成するためのゲイン)は半径位置ごとに変化するが、微動アクチュエータ7(伸縮部材MA)の制御信号のゲイン(制御信号に施して微動アクチュエータ7の駆動信号を生成するためのゲイン)は半径位置ごとには変化しないものとして扱われる。微動アクチュエータ7の制御信号のゲインが半径位置ごとに変わらないという前提は、ディスク媒体MD上の位置決めの基準となるパターンの検出感度が各半径位置で変わらないという暗黙の仮定の上で成り立っている。すなわち、微動アクチュエータ7の制御信号のゲインは、ヘッドMHごとに固有であり、基準となる補助サーボパターンのトラック幅変動が無視できるという暗黙の仮定があるため、半径位置ごとにゲインは変化しないとみなしている。
【0039】
しかし、SSWのような自身でサーボパターン28を形成するときには、補助サーボパターン(例えば、スパイラルパターン55)の半径位置ごとの検出感度が変動する場合には、どの半径位置でもパターンの検出感度が一様であるとの前提が崩れる。この検出感度の不均一性は、トラック幅のずれにも、SSW時に微動アクチュエータ2を利用した位置決め制御を行う際にも、影響する。この不均一性を解消するには、ディスク装置100のヘッドMHごと(記録面ごと)に、半径位置に応じたパターンの検出感度を測定し、その検出感度の変化に対応した送りピッチでサーボパターン28を記録することが求められる。
【0040】
すなわち、検討により、ディスク媒体MD上におけるヘッドMHの各半径位置毎に微動アクチュエータ7の制御信号のゲインを測定し、このゲイン測定値のばらつきを把握することで、各半径位置毎のスパイラルパターンのディスク媒体MDの円周方向に対する傾きのばらつきを間接的に把握することができるという新たな知見が見出された。
【0041】
そこで、本実施形態では、ディスク装置100の製造において、微動アクチュエータ7の制御信号のゲインを各半径位置毎に測定して測定値に応じたゲイン補正値を求め、ゲイン補正値に応じた調整量でトラック幅を調整しながらトラックを形成することで、補助サーボパターンのばらつき(例えば、スパイラルパターン55のディスク媒体MDの円周方向に対する傾きのばらつき)に起因したトラック幅のばらつきの低減を図る。
【0042】
具体的には、ディスク装置100において、半径位置ごとに微動アクチュエータ7の制御信号のゲインを測定する機能とそのゲインを利用する位置決め制御系とを構成する。さらに、ディスク装置100において、微動アクチュエータ7の半径位置ごとのゲインを同一ヘッドMH内で正規化し、スパイラルパターン55の傾きの変動が微動アクチュエータ7の制御信号のゲイン変化を表すものとみなして、半径位置ごとのSSW時のヘッドMHの送り幅を補正する機能を構成する。これにより、スパイラルパターン55の傾きの面内変動にともなうトラック幅の不均一性を補正できる。すなわち、微動アクチュエータ7の制御信号のゲイン補正値が補助サーボパターンの傾き等に依存することを利用して、半径位置ごとのトラック幅をサーポパターン記録時に調整する。その際にトラック形成用の補助サーボパターン(例えば、スパイラルパターン55)をトラック幅調整用のパターンとして兼用できるので、補助サーボパターンと別にディスク媒体MD上にトラック幅調整用の補助パターンを追加的に記録する必要はない。
【0043】
次に
図4を用いてディスク装置100の製造方法を説明する。
図4は、ディスク装置100の製造方法の一例として、SSW方式に従ったディスク装置100の製造方法を示すフローチャートである。より具体的には、ディスク装置100の製造方法では、ディスク媒体MDにサーボパターン28が書き込まれる。例えば、SSW方式では、STWによりディスク媒体MDに補助サーボパターンが書き込まれた後、複数枚のディスク媒体MDがケース1(
図1参照)に搭載される。そして、
図4に示すように、コントローラ17は、ヘッドMHを内周側から外周側へ送りながら、補助サーボパターンを用いて位置決め制御を行うことなどにより、SSWのための各種のキャリブレーションを行う(S1)。その後、コントローラ17は、補助サーボパターンを用いて、微動アクチュエータ7の制御信号のゲインを各半径位置毎に測定する測定処理を実行する(S10)。コントローラ17は、補助サーボパターンを用いて、ヘッドMHを内周側から外周側まで所定のピッチごとに送りながら、複数枚のディスク媒体MDのサーボ領域にサーボパターン28(
図3の破線参照)をほぼ同時に書き込むサーボパターンライト処理を行う(S20)。これにより、各ディスク媒体MDのほぼ全面にサーボパターン28が記録される。そして、コントローラ17は、サーボパターン28を用いて、ヘッドMHを位置決め制御しながら、各トラックにデータをライトし、ライトされたデータが適正にリードできるか(適正にサーボパターン28が書き込まれているか判定する。すなわち、コントローラ17は、データのリード/ライトのテストを行う(S30)。なお、サーボパターン品質の判定は、S30とは別の方法で行われてもよい。
【0044】
次に、測定処理(S10)の詳細について
図5を用いて説明する。
図5は、測定処理(S10)の詳細を示すフローチャートである。
【0045】
粗動アクチュエータ2(VCM4)は、半径位置ごとにトルク定数が異なり制御信号のゲインが異なる、すなわち制御信号のゲインが半径位置依存性を有するために、半径位置ごとのゲイン補正値が求められ得る。粗動アクチュエータ2におけるVCM4のゲイン補正値は、半径位置依存性があるとして、ディスク媒体MDの半径位置毎に求められ、テーブル等の形式でディスク媒体MDの管理情報格納領域又は不揮発性メモリ18に格納され得る。
【0046】
一方、微動アクチュエータ7(伸縮部材MA)については、半径位置に依存しないゲインが補助サーボパターン(例えば、スパイラルパターン55)のディスク媒体MDの円周方向に対する傾きのばらつきの影響で半径位置ごとに相対的に異なって測定され得るために、半径位置ごとのゲイン補正値が求められ得る。微動アクチュエータ7のゲイン補正値は、ディスク媒体MDの半径位置毎に求められ、テーブル等の形式でディスク媒体MDの管理情報格納領域又は不揮発性メモリ18に格納され得る。すなわち、ディスク装置100では、半径位置依存性がないゲインを基準として、ゲイン測定値のばらつきを通して補助サーボパターンの傾きのばらつきを間接的に観測する。
【0047】
具体的には、
図5に示すように、ディスク装置100は、補助サーボパターン(例えば、スパイラルパターン55)を用いて、測定開始の半径位置(測定点)へヘッドMHを位置決め制御する(S11)。
【0048】
その測定点へヘッドMHが位置決め制御されると、ディスク装置100は、微動アクチュエータ7の制御信号のゲインを測定する(S12)。ゲインは、ディスク媒体MDに同心円状に設けられたゾーンごとに測定されゾーン内で平均化され得る。
【0049】
ディスク装置100は、粗動アクチュエータ2及び微動アクチュエータ7について合成されたゲインから粗動アクチュエータ2のゲインを取り除くことで、微動アクチュエータ7の制御信号のゲインを推定(測定)することができる。ディスク装置100によるこの測定処理は、
図6に示すように行うことができる。
図6は、測定処理(S12)における制御動作を示す図である。ディスク装置100は、ゲイン測定値が得られたら、ヘッドMHの半径位置に対応付けてゲイン測定値を保持する。
【0050】
例えば、ディスク装置100における測定処理の制御動作のための構成は、等価的に、
図6(a)、
図6(b)に示すような機能ブロックで示すことができる。
図6(a)、
図6(b)において、加算器173は、ヘッドMH、ヘッドアンプ12、コントローラ17(
図1参照)の一部に対応する。減算器172、信号源177,178は、それぞれ、コントローラ17の一部に対応する。サーボコントローラ171は、コントローラ17の一部と生成回路13b(
図1参照)とに対応する。可変アンプ175は、粗動制御回路13c(
図1参照)に対応する。可変アンプ176、スイッチ174は、微動制御回路13d(
図1参照)に対応する。
【0051】
S12では、各ヘッドMHについて、
図6(a)に示す制御系の制御動作と
図6(b)に示す制御系の制御動作とが順次に行われ得る。
【0052】
図6(a)に示す制御系の制御動作では、粗動アクチュエータ2(VCM4)の制御信号(操作量)のゲインに応じた制御系のゲインが測定される。すなわち、微動アクチュエータ7を動作させずに粗動アクチュエータ2を動作(加振動作)させるために、スイッチ174は、微動アクチュエータ7の入力側を電気的に遮断している。この状態において、正弦波状の参照信号(加振動作における目標位置信号)rが信号源177から減算器172へ供給され、ヘッドMHの位置信号yが加算器173から減算器172へ供給される。減算器172は、参照信号rから位置信号yを減算して、減算結果を位置誤差eとしてサーボコントローラ171へ供給する。サーボコントローラ171は、アクチュエータ9の操作量に対して位置誤差eがゼロに近づくように補正された操作量を求める。サーボコントローラ171は、アクチュエータ9の操作量に基づき、粗動アクチュエータ2の操作量u1を求めて可変アンプ175へ供給するとともに、微動アクチュエータ7の操作量u2を求めて可変アンプ176へ供給する。可変アンプ175は、操作量u1に従って、駆動信号s1(例えば、VCM4の駆動電流)を生成して粗動アクチュエータ2へ供給する。加算器173は、粗動アクチュエータ2による位置変位量(駆動信号s1に対応した変位量)と微動アクチュエータ7による位置変位量(ここではゼロ)とを直前のヘッドMHの位置に加算して、加算結果を変位後のヘッドMHの位置(y)として出力する。
【0053】
このとき、粗動アクチュエータ2(VCM4)の感度関数をCvcmとし、粗動アクチュエータ2(VCM4)のプラント特性をPvcmとすると、コントローラ17は、参照信号rの振動振幅Δrと位置信号yの振動振幅Δyとを観測し、次の数式1で表される制御系のゲイン(=Δy/(Δr))を求める。
Δy/(Δr)=1/(1+Cvcm×Pvcm)・・・数式1
【0054】
図6(b)に示す制御系の制御動作では、粗動アクチュエータ2(VCM4)の制御信号(操作量)のゲインと微動アクチュエータ7(伸縮部材MA)の制御信号(操作量)のゲインとについて合成された制御系のゲインが計測される。すなわち、微動アクチュエータ7を加振動作させるために、スイッチ174は、微動アクチュエータ7の入力側を信号源178に電気的に接続している。この状態において、
図6(a)と同様の動作が行われるとともに、正弦波状の参照信号(加振動作における駆動信号)r2が信号源178から微動アクチュエータ7へ供給される。参照信号r2における加振周波数は、伸縮部材MAの主共振周波数よりも十分に低くしておく。加算器173は、粗動アクチュエータ2による位置変位量(駆動信号s1に対応した変位量)と微動アクチュエータ7による位置変位量(参照信号r2に対応した変位量)とを直前のヘッドMHの位置に加算して、加算結果を変位後のヘッドMHの位置(y)として出力する。
【0055】
このとき、微動アクチュエータ7(伸縮部材MA)のプラント特性をPmaとすると、コントローラ17は、参照信号r2の振動振幅Δr2と位置信号yの振動振幅Δyとを観測し、次の数式2で表されるゲイン(=Δy/(Δr2))を求める。
Δy/(Δr2)=Pma/(1+Cvcm×Pvcm)・・・数式2
【0056】
そして、数式1,2から次の数式3が導かれる。
Pma={Δy/(Δr2)}/{Δy/(Δr)}・・・数式3
【0057】
すなわち、コントローラ17は、数式3に示されるように、
図6(b)で計測されたゲインを
図6(a)で計測されたゲインにより除算することで、微動アクチュエータ7(伸縮部材MA)の制御信号のゲイン(すなわち、プラント特性)Pmaを求める。これにより、加振周波数での微動アクチュエータ7(伸縮部材MA)の制御信号のゲインの計測が可能になる。このゲインには、位置決めの基準となるパターンの検出感度が含まれている。
【0058】
図5に戻って、微動アクチュエータ7の制御信号のゲインの測定(S12)が完了すると、ディスク装置100は、ヘッドMHの現在の半径位置が測定終了の半径位置(測定点)であるか否か判断する(S13)。
【0059】
現在の半径位置が測定終了の半径位置でない場合(S13でNo)、ディスク装置100は、ヘッドMHを次の半径位置(測定点)へ位置決め制御し(S14)、処理をS12へ戻す。なお、半径方向における測定点の間隔(測定間隔)は、互いに略等距離であることが後々の正規化計算にとっては都合がよい。
【0060】
現在の半径位置が測定終了の半径位置である場合(S13でYes)、ディスク装置100は、S12の測定結果に基づいて、ゲイン補正値を算出する(S15)。ゲイン補正値は、微動アクチュエータ7の制御信号のゲインを半径位置ごとに相対的に均一に補正するための値である。例えば、ディスク装置100は、S12で半径位置に対応付けて保持されたゲイン測定値の逆数を、その半径位置に対するゲイン補正値として算出することができる。ディスク装置100は、例えば
図7に示すように、各半径位置毎にゲイン補正値を算出し、ヘッドMHの識別子と半径位置とゲイン補正値とが複数の半径位置について対応付けられたゲイン補正情報182を得ることができる。
図7は、測定処理で得られるゲイン補正情報182を示す図である。このとき、ゲイン補正値は、相対的に補正するための値であり、正規化され得る。例えば、ディスク装置100は、各半径位置におけるゲイン補正値を最内周位置RP0(
図3に示す最内周位置56b)におけるゲイン補正値で正規化して、
図7に示すようなゲイン補正情報182を得ることができる。
図7では、例えば、縦軸が正規化されたゲイン補正値を示し、横軸が半径位置(測定ゾーン番号)を示す。ゾーンごとのトラック数は等しくすることができる。
図7では、最内周位置RP0に対するゲイン補正値が「1」になる。
【0061】
図5に戻り、ディスク装置100は、S15で得られた各半径位置におけるゲイン補正値が適正範囲内に収まっているか否か判断する(S16)。
【0062】
各半径位置におけるゲイン補正値のうち適正範囲から外れているゲイン補正値が存在する場合(S16でNo)、ディスク装置100は、補助サーボパターンが異常であると判定して報知する(S17)。補助サーボパターンの異常の報知は、LED等のランプを点灯させることなどの視覚的な手段で行われてもよいし、ブザーを鳴らせることなどの聴覚的な手段で行われてもよい。これにより、異常なディスク装置100の後工程への流出を防止できる。
【0063】
各半径位置におけるゲイン補正値がいずれも適正範囲内に収まっている場合(S16でYes)、ディスク装置100は、得られたゲイン補正情報182をテーブル等の形式でディスク媒体MDの管理情報格納領域又は不揮発性メモリ18に上書きで格納して、ゲイン補正情報182を更新することができる(S18)。なお、ゲイン補正情報182は、ヘッドMHの識別子と半径位置とゲイン補正値とが対応付けられた情報であればよく、例えば、数式等の関数の形式で構成されていてもよい。
【0064】
次に、サーボパターンライト処理(S20)の詳細について
図8を用いて説明する。
図8は、サーボパターンライト処理(S20)の詳細を示すフローチャートである。
【0065】
サーボパターンライト処理(S20)では、ディスク装置100は、測定処理(S10)で求められた半径位置毎のゲイン補正値に応じて、補助サーボパターン(例えば、スパイラルパターン55)を用いながら複数の半径位置のそれぞれにヘッドMHを位置決めし、トラック幅を調整する。すなわち、ディスク装置100は、ディスク媒体MDの管理情報格納領域又は不揮発性メモリ18にアクセスしてゲイン補正情報182を参照し、サーボパターン28を書くべきヘッドMHの識別子とそのヘッドMHの現在の半径位置とに対応したゲイン補正値を取得する。ディスク装置100は、取得されたゲイン補正値に応じたトラック幅の調整量を求めて、その調整量に対応してヘッドMHの送りピッチを基準送りピッチから補正する(S21)。これにより、ディスク装置100は、半径位置毎の補助サーボパターンのディスク媒体MDの円周方向に対する傾きのばらつきの影響を低減して実際の送りピッチが各半径位置で一様となるように、制御すべき送りピッチを補正することができる。基準送りピッチは、基準トラック幅の略2分の1とすることができる。
【0066】
ディスク装置100は、
図7に示すゲイン補正情報182に応じて、
図9に示すようなトラック幅の調整量を求めることができる。
図9では、縦軸がトラック幅の調整量(例えば、基準トラック幅に対する調整割合[%])を示し、横軸が半径位置(例えば、測定ゾーン番号)を示す。ゾーンごとのトラック数は等しくすることができる。ディスク装置100は、半径位置毎に、ゲイン補正情報182における正規化されたゲイン補正値に所定の係数を乗算することで基準トラック幅に対する調整割合[%]を求めることができる。
【0067】
例えば、SSW用のスパイラルパターン55のように、スパイラル検出ウィンドウDWを開くタイミングにスパイラルパターン55が検出されることでヘッドMHが位置決め制御される制御系の場合、
図10に示すように、スパイラル検出ウィンドウDWを開くタイミングを調整することでヘッドMHの送りピッチを調整できる。
図10は、サーボパターンライト処理の制御動作を示す図である。スパイラル検出ウィンドウDWは、その信号レベルがアクティブレベルにある期間において開かれた状態になり、その信号レベルがノンアクティブレベルにある期間において閉じられた状態になる。
【0068】
図10(a)は、ディスク装置100(コントローラ17)により制御されるヘッドMHのディスク媒体MDの半径方向及び円周方向における位置を示す図である。
図10(a)において、各ステップST_(N−3),ST_(N−2),ST_(N−1),ST_N,ST_(N+1)は、サーボパターン28が書き込まれる目標となる半径位置を示す。
図10(a)では、ステップST_NとステップST_(N+1)との間でスパイラルパターン55の傾きが変化している例が示されている。各ステップST_(N−3),ST_(N−2),ST_(N−1),ST_N,ST_(N+1)の円周方向に対するスパイラルパターン55の傾きを、それぞれ、φ1,φ2,φ3,φ4,φ5とすると、次の数式4が成り立つ。
φ1≒φ2≒φ3>φ4≒φ5・・・数式4
【0069】
図10(b)は、
図10(a)に対応したスパイラル検出ウィンドウDWの信号波形を示す図である。スパイラル検出ウィンドウDW_(N−3),DW_(N−2),DW_(N−1),DW_N,DW_(N+1)は、それぞれ、ステップST_(N−3),ST_(N−2),ST_(N−1),ST_N,ST_(N+1)に対応している。
図10(a)の例では、ステップST_NとステップST_(N+1)との間で傾きが緩やかになっているため、スパイラル検出ウィンドウDWの中心時刻のずらし幅を大きくすれば、半径方向の送りピッチを略等しくすることができる。スパイラル検出ウィンドウDW_(N−3),DW_(N−2),DW_(N−1),DW_N,DW_(N+1)の間における中心時刻のずらし幅(時間幅)を、それぞれ、Δt1,Δt2,Δt3,Δt4とすると、次の数式5が成り立つようにする。
Δt1≒Δt2≒Δt3<Δt4・・・数式5
【0070】
すなわち、スパイラル検出ウィンドウDWの中心に追従するように位置決め制御系は動作する。そのため、スパイラル検出ウィンドウDWの発生タイミングのずらし幅を変えることで、実際のヘッドMHの送りピッチが各半径位置で一様となるような目標位置の変更が可能になる。スパイラル検出ウィンドウDWのタイミングの分解能に制約がある場合には、スパイラル検出ウィンドウDWの中心時刻ではなく、中心時刻からオフセットをつけて位置決めすることで、微小な送りピッチの調整が可能になる。
【0071】
例えば、ディスク装置100は、
図7に示すゲイン補正情報182に応じて
図9に実線で示すように求められたトラック幅の調整量に基づき、スパイラル検出ウィンドウDWの発生タイミングのずらし幅を求める。これにより、実際のヘッドMHの送りピッチが各半径位置で一様となるように位置決め制御することができる。
【0072】
図8に戻り、ディスク装置100は、補正後の送りピッチでヘッドMHを送り、ヘッドMHによりサーボパターン28をディスク媒体MDにライトする(S22)。すなわち、ヘッドMHの送りピッチが各半径位置で一様となるように位置決め制御された状態でサーボパターン28がディスク媒体MDにライトされるので、ディスク媒体MDに規定されるトラックの幅を各半径位置で均等にすることができる。
【0073】
ディスク装置100は、ディスク媒体MDにおける全てのサーボ領域にサーボパターン28(
図3参照)をライトするまで(S23でNo)、S21〜S22の処理を繰り返す。ディスク装置100は、ディスク媒体MDにおける全てのサーボ領域へのサーボパターン28のライトが完了すると(S23でYes)、処理を終了する。
【0074】
以上のように、実施形態では、ディスク装置100の製造方法において、微動アクチュエータ7の制御信号のゲインを各半径位置毎に測定して測定値に応じたゲイン補正値を求め、ゲイン補正値に応じた調整量でトラック幅を調整しながらサーボパターン28をライトする。これにより、補助サーボパターンのばらつき(例えば、スパイラルパターン55のディスク媒体MDの円周方向に対する傾きのばらつき)の影響を低減しながらディスク媒体MDにサーボパターン28を形成でき、補助サーボパターンのばらつきに起因したトラック幅のばらつきを低減できる。すなわち、ディスク媒体MDにおけるサーボパターン28で規定される各トラックのトラック幅を複数の半径位置に渡って均一にできる。
【0075】
なお、ゲイン測定のばらつきの影響を低減するためにゲイン又はゲイン補正値に対する近似処理が行われてもよい。例えば、ディスク装置100(コントローラ17)は、複数の半径位置におけるゲインの変化に対する第1の近似曲線を生成し、第1の近似曲線における値の逆数をゲイン補正値として求め、正規化し、所定の係数を乗算することで基準トラック幅に対する調整割合[%]を求めてもよい。あるいは、例えば、ディスク装置100(コントローラ17)は、各半径位置におけるゲインの逆数を求め、複数の半径位置におけるゲインの逆数の変化に対する第2の近似曲線を生成し、第2の近似曲線における値をゲイン補正値とし、正規化し、所定の係数を乗算することで基準トラック幅に対する調整割合[%]を求めてもよい。第1の近似曲線又は第2の近似曲線が4次の近似曲線である場合、各半径位置に対する基準トラック幅に対する調整割合[%]は、
図9に破線で示すようになる。第1の近似曲線又は第2の近似曲線が6次の近似曲線である場合、各半径位置に対する基準トラック幅に対する調整割合[%]は、
図9に一点鎖線で示すようになる。
【0076】
また、
図5に示す測定処理では、ゲイン補正情報182の更新(S18)がS16の処理の前であってゲイン補正値を算出(S15)した後に行われてもよい。
【0077】
また、トラック幅を調整するためにディスク媒体MD又は不揮発性メモリ18に格納される情報は、ゲイン補正情報182に代えてゲイン情報であってもよい。この場合、
図5に示す測定処理において、S15〜S18が省略されるとともに、S12で半径位置毎のゲイン測定値が追加される度にゲイン情報が追加的に更新されてディスク媒体MD又は不揮発性メモリ18に格納されればよい。また、
図8に示すサーボパターンライト処理において、送りピッチを補正する際に、ゲイン情報からその半径位置に対するゲインが取得され、ゲインに応じてゲイン補正値が求められ、ゲイン補正値に応じてトラック幅の調整量が求められ、トラック幅の調整量に応じてサーボパターンをライトする際の送りピッチが求められ得る。
【0078】
また、ゲイン補正情報182(
図7参照)は、ディスク装置100の製造方法においてディスク媒体MDに規定されるトラック幅の調整が完了した後はディスク媒体MD又は不揮発性メモリ18から削除され得るが、削除されずに残されてもよい。すなわち、ゲイン補正情報182は、出荷後のディスク装置100において、位置決め制御のための情報として利用されてもよい。
【0079】
例えば、
図5に示す測定処理において、粗動アクチュエータ2に対するゲイン補正情報181が求められ、微動アクチュエータ7に対するゲイン補正情報182が求められ、出荷時のディスク装置100は、
図11に示すように構成されればよい。
図11は、リード/ライト処理の制御動作を示す図である。すなわち、粗動アクチュエータ2及び微動アクチュエータ7をそれぞれサーボコントローラ171に応じて動作させるために、スイッチ174は、微動アクチュエータ7の入力側を可変アンプ176の出力側に電気的に接続している。
図11に示す構成(制御系)において、粗動アクチュエータ2に対するゲイン補正情報181と微動アクチュエータ7に対するゲイン補正情報182とが共通化され、ヘッド識別子及び半径位置の組み合わせ毎に粗動アクチュエータ2のゲイン補正値と微動アクチュエータ7の制御信号(操作量)のゲイン補正値とが対応付けられたゲイン補正情報として構成されていてもよい。
【0080】
出荷後において、ディスク装置100は、
図12に示すように動作することができる。
図12は、リード/ライト処理における制御動作を示すフローチャートである。ディスク装置100は、リード/ライト処理において、ディスク媒体MDのサーボパターン28からサーボ信号を読み出し、読み出されたサーボ信号を復調して(S41)位置信号yを生成する。ディスク装置100(コントローラ17)は、リード/ライト処理における制御位置を決定し(S42)、制御位置に対応した目標位置信号rを生成する。ディスク装置100(コントローラ17)は、ゲイン補正情報181,182を参照し、制御位置を補正する(S43)。例えば、目標位置信号rが信号源177(コントローラ17)から減算器172へ供給され、ヘッドMHの位置信号yが加算器173から減算器172へ供給される。減算器172は、目標位置信号rから位置信号yを減算して、減算結果を位置誤差eとしてサーボコントローラ171へ供給する。サーボコントローラ171は、アクチュエータ9の操作量に対して位置誤差eがゼロに近づくように補正された操作量を求める。サーボコントローラ171は、アクチュエータ9の操作量に基づき、粗動アクチュエータ2の操作量u1を求めて可変アンプ175へ供給するとともに、微動アクチュエータ7の操作量u2を求めて可変アンプ176へ供給する。コントローラ17は、操作対象のヘッドMHのヘッド識別子と半径位置とに応じたゲイン補正値をゲイン補正情報181,182から読み出して、それぞれ、可変アンプ175,176へ供給する。可変アンプ175は、操作量u1に対してゲイン補正値に応じた補正を施し、補正後の操作量u1に応じて駆動信号s1(例えば、VCM4の駆動電流)を生成して粗動アクチュエータ2へ供給する。可変アンプ176は、操作量u2に対してゲイン補正値に応じた補正を施し、補正後の操作量u2に応じて駆動信号s2(例えば、伸縮部材MAの駆動電流)を生成して微動アクチュエータ7へ供給する。これにより、ディスク装置100は、ヘッドMHを位置決め制御する(S45)。例えば、加算器173は、粗動アクチュエータ2による位置変位量(駆動信号s1に対応した変位量)と微動アクチュエータ7による位置変位量(略ゼロ)とを直前のヘッドMHの位置に加算して、加算結果を変位後のヘッドMHの位置(y)として出力する。そして、ディスク装置100は、ヘッドMHを介してディスク媒体MDに対してデータをリード/ライトする(S46)。
【0081】
このように、2段アクチュエータにおける少なくとも微動アクチュエータ7の制御信号(操作量)のゲインを調整してヘッドMHの位置決め制御を行うので、微動アクチュエータ7の制御信号のゲインを調整しない場合に比べて位置決めの制御精度を向上できる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。