【解決手段】本発明は、ハウジングに保持され、相手コネクタ側に延出する支持片と、嵌合開始位置から嵌合終了位置の範囲まで回動移動が可能なように支持片に固定される可動片とを備え、可動片は、嵌合開始位置において、突出部の嵌合移動の経路上に位置し、相手コネクタと嵌合する際に、突出部によって押されることで、可動片を回動させる接触片と、嵌合開始位置において、突出部の嵌合移動の経路と干渉する位置になく、可動片が嵌合開始位置から回動すると、回動軸に対して内側に移動して突出部の側面に接触し、突出部に対して干渉量を有するように形成される押圧部とを備え、干渉量は、嵌合終了位置の手前で最大になり、嵌合終了位置で最大よりも小さくなることを特徴とするコネクタを提供する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや、半導体の不具合を検査する半導体検査装置といった各種電子装置には、多くの回路基板が搭載される。このような電子装置では、例えば、マザーボード基板を介して、複数の回路基板を電気的に接続するが、マザーボード基板と回路基板とは、基板対基板用コネクタを用いて接続される。このような基板と基板とを接続するコネクタには、従来から、コネクタの嵌合不良を原因として、電子装置が不具合を起こすという課題があった。
【0003】
基板と基板との着脱に用いられるコネクタとして、特開2008−84796号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、ソケット及びプラグのそれぞれに配列された接続子(端子)を弾性接触させて電気的に接続させることによって、ソケットやプラグを備える両基板の電気的接続を担保するコネクタが開示されている。
【0004】
しかしながら、基板対基板のコネクタの場合には、嵌合面を目視することが困難な場合があることから、コネクタを摺動させながら嵌合させるため、ハウジングや端子を損傷することがあった。
【0005】
特許文献1に開示される発明の課題を踏まえ、特開2012−79684号公報(特許文献2)では、コネクタの長手方向両端に補強金具を取り付け、コネクタの嵌合方向を案内して、コネクタ接続時の摺動を抑制することによって、ハウジングや端子の損傷を防ぐことができるコネクタが提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されるコネクタであっても、嵌合面を目視できないため、コネクタが完全に嵌合したか否かは、作業者がコネクタから伝わる感触に基づいて、判断するしかなかった。したがって、コネクタの嵌合が不十分であるのに、コネクタの嵌合が完了したという判断をしたことによって、コネクタが接続不良を起こすことがあった。このような接続不良は、想定と異なる回路動作を発生させて、装置の故障を引き起こすこともある。また、コネクタの嵌合が不十分であると、装置を移動させる場合などに、振動によって、コネクタが抜脱してしまうこともあった。
【0008】
また、各端子は、電気的な接続不良を防ぐために、相手コネクタの端子を押圧するので、特に、数多くの端子を備える大型のコネクタでは、コネクタの挿抜力が高くなる。そのため、コネクタが、完全に接続する前に、作業者が、強い抵抗力を受け、コネクタが完全に接続したものと誤認する原因となることもあった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を踏まえ、コネクタが完全に嵌合した際に発生する嵌合感触を明確にしたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。すなわち、本発明によるコネクタは、突出部が形成された相手ハウジングと、相手コンタクトとを備える相手コネクタと嵌合するコネクタであって、ハウジングと、前記ハウジングに保持され、前記相手コネクタが嵌合したときに、前記相手コンタクトと電気的に接続するコンタクトと、前記ハウジングに保持され、前記相手コネクタ側に延出する支持片と、前記相手コネクタと嵌合していない状態を嵌合開始位置とし、前記相手コネクタと嵌合した状態を嵌合終了位置とし、前記嵌合開始位置から前記嵌合終了位置の範囲まで回動移動が可能なように前記支持片に固定される可動片とを備え、前記可動片は、前記嵌合開始位置において、前記突出部の嵌合移動の経路上に位置し、相手コネクタと嵌合する際に、前記突出部によって押されることで、前記可動片を回動させる接触片と、前記嵌合開始位置において、前記突出部の嵌合移動の経路と干渉する位置になく、前記可動片が嵌合開始位置から回動すると、回動軸に対して内側に移動して前記突出部の側面に接触し、突出部に対して干渉量を有するように形成される押圧部と、を備え、前記干渉量は、前記嵌合終了位置の手前で最大になり、前記嵌合終了位置で最大よりも小さくなることを特徴とするコネクタである。
【0011】
上記コネクタにおいて、前記可動片は、前記嵌合終了位置のみにおいて、前記相手コネクタ又は前記コネクタの一部を圧接する圧接面を備えることが好ましい。この場合には、相手コネクタと嵌合した際に、圧接面が、相手コネクタ又はコネクタの一部を叩くことになり、弾音が生じるので、作業者は、一層嵌合の終了を認識しやすくなる。
【0012】
また、上記コネクタは、前記突出部は、第1の突出部と、前記第1の突出部よりも外側に形成された第2の突出部を含み、前記接触片は、前記嵌合開始位置において、前記第1の突出部の嵌合移動の経路上に位置し、前記押圧部は、前記第2の突出部の側面に接触し、前記第2の突出部に対して干渉量を有するように形成されるようにしてもよい。
【0013】
さらに、上記コネクタは、前記接触片が、前記回動移動の回動軸よりも内側に位置し、前記接触片が、前記嵌合開始位置において、前記相手コネクタ側に向いて形成された溝部を備え、前記押圧部が、前記溝部の回動軸側端部に位置するようにしてもよい。この場合には、突出部の頂部が、溝部に収納され、押圧部が、突出部の側面を押圧することになるが、接触片も押圧部もいずれも内側に位置させることができるため、コネクタのサイズを小さくすることができる。このとき、前記突出部は、先端に外側方向に向けて傾斜するテーパを備えることが好ましい。この場合には、接触片が、テーパに沿って移動できるので、可動部の回動移動に伴う接触片の移動が、滑らかになる。
【0014】
上述のコネクタにおいて、前記支持片が、前記端子と一体である、ことが好ましい。両部品を併せて製造でき、製造工程を簡略化できる上に、ハウジング内に設ける部品を保持する機構の数を減らすことができるからである。また、上述のコネクタは、記相手コネクタと嵌合した状態において、前記相手コネクタと係合する係止部をさらに備えるようにしてもよい。この場合には、嵌合を強固にすることができる。特に両コネクタを一度嵌合させたら、通常嵌合を解除させないような場合に、このような係止部を備えるコネクタが好ましい。
【0015】
また、本発明は、さらに、突出部が形成された相手ハウジング及び相手コンタクトを備える相手コネクタと、前記相手コネクタと嵌合するコネクタとを含むコネクタセットであって、前記コネクタは、ハウジングと、前記ハウジングに保持され、前記相手コネクタが嵌合したときに、前記相手コンタクトと電気的に接続するコンタクトと、前記ハウジングに保持され、前記相手コネクタ側に延出する支持片と、前記相手コネクタと嵌合していない状態を嵌合開始位置とし、前記相手コネクタと嵌合した状態を嵌合終了位置とし、前記嵌合開始位置から前記嵌合終了位置の範囲まで回動移動が可能なように前記支持片に固定される可動片とを備え、前記可動片は、前記嵌合開始位置において、前記突出部の嵌合移動の経路上に位置し、相手コネクタと嵌合する際に、前記突出部によって押されることで、前記可動片を回動させる接触片と、前記嵌合開始位置において、前記突出部の嵌合移動の経路と干渉する位置になく、前記可動片が嵌合開始位置から回動すると、回動軸に対して内側に移動して前記突出部の側面に接触し、突出部に対して干渉量を有するように形成される押圧部と、を備え、前記干渉量は、前記嵌合終了位置の手前で最大になり、前記嵌合終了位置で最大よりも小さくなる、ことを特徴とするコネクタセットを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、電気コネクタの接続した際に発生する嵌合感触を明確にすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、実施の形態を説明するための全ての図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るコネクタ10及び、該コネクタ10と嵌合する相手コネクタ40を示す斜視図である。
図1は、コネクタ10が、相手コネクタ40と嵌合していない状態を示す。本実施形態において、コネクタ10及び相手コネクタ40は、基板に取り付けられて用いられる基板対基板用のコネクタである。
【0020】
コネクタ10は、略直方体の外径を有し、例えば合成樹脂といった絶縁体で形成されているハウジング11と、ハウジング11に保持される複数の端子20と、ハウジングの長手方向側面の相手コネクタ側に位置し、コネクタ10の長手方向を回動軸として回動可能な可動片30とを備える。ハウジング11の中央部分には、相手コネクタ40と嵌合するため、嵌合方向に突出した嵌合部12が形成されている。この嵌合部12の内部には、複数の端子20が、前後2列で長手方向に等間隔に並べて保持される。端子の先端側方には突起部23が設けられ、嵌合した状態において相手コネクタの端子(相手端子)50と接続するために、嵌合部12に櫛形状に形成された複数の切り欠き13から、外部に露出している。端子20は、金属製であり、例えば、銅によって形成される。ハウジング11の長手方向側面は、可動片30の回動を規制しないように、凹型形状に加工され、可動片30が、凹型形状の溝に当たる部分に配置されることで、外側下向きまで、回動可能になる。実際に、両コネクタが嵌合していない
図1に示される状態では、可動片30は、外側下方に延びている。以下では、相手コネクタと嵌合していない状態における可動片30の位置を嵌合開始位置とする。また、ハウジング底面の長手方向両端には、基板(図示せず。)にコネクタ10を固定するための取付部14が存在する。
【0021】
相手コネクタ40は、略平板な平板部42及び平板部42から嵌合方向に突出し、四角形の筒状に形成され、内部が嵌合部12に嵌合する突出部43からなる相手ハウジング41と、突出部43の内側に、等間隔に2列に配列して保持される相手端子50とを備える。相手端子50は、相手ハウジング41の平板部42の底から筒状の突出部43の内部へと形成された相手貫通孔44に配置される。平板部42の底には、複数の突起部45が設けられ、相手端子50は、かかる突起部45によって、挟持される。また、平板部42の長手方向の両端には、相手基板(図示せず)に相手コネクタを取り付ける相手取付部46が設けられている。また、相手ハウジング41の両端には、相手嵌合部43の両端に位置し、嵌合方向に向けて突起したガイド突起47が設けられている。ガイド突起47は、先端に外側に傾斜するテーパ47aを有し、嵌合時において、ハウジング11の側面11aの両端付近に設けられた内側に傾斜するテーパ11bと接触することで、相手コネクタ40が、コネクタ10の内部に案内する役割を果たす。コネクタ10と同様に、相手ハウジング41は、合成樹脂等の絶縁体製であり、相手端子50は、金属製である。
【0022】
図2は、本実施形態に係るコネクタ10が、相手コネクタ40と嵌合した状態示す斜視図である。相手コネクタ40の突出部43が、コネクタ10のハウジング11の側面と嵌合部12との間に形成される空間に収容されるようにして、両コネクタは、嵌合する。このとき、嵌合部12は、筒状の突出部43の内部に位置し、嵌合部12の切り欠き13から露出した端子20の突起部23は、突出部43の内面に配置された相手端子50と接触して、両コネクタが、電気的に接続する。
図2に示されるように、両コネクタが嵌合した状態においては、可動片30は、回動軸から相手コネクタ側(上方)に延びており、突出部43の外面と接触している。以下では、この嵌合した状態における可動片30の位置を嵌合終了位置とする。可動片30の向きが、嵌合していない状態と異なる理由は、突出部43が、嵌合により、可動片30の一部を押して、可動片30を回動させるためである。以下にその動作を詳述する。なお、本実施形態においては、相手ハウジング41の側面の一部が、突出部43として、可動片の一部を押して回動させる役割を果たすが、相手コネクタの別の部分を、突出部として利用してもよい。例えば、ガイド突起を突出部として用いることもできる。
【0023】
図3は、
図1に示される嵌合していない状態にある両コネクタのA−A断面における断面図である。ハウジング11の底部には、複数の端子20の配置に合わせて配列して貫通孔15が形成されており、それぞれの貫通孔15の内面によって、端子20が挟持される。端子は、貫通孔内面によって挟持される基体部21と、基体部21の嵌合部12側から嵌合方向に延出し、相手端子50と電気的に接続する弾性腕部22と、基体部21のハウジング側面11a側から嵌合方向に延出して、可動片30を保持し、外側方向に弾性移動可能な弾性片として形成される支持片24と、底面からハウジング外に延びて、基板の導体と電気的に接続する接続部26とを備える。上述の通り、突出部12には、切り欠き13が形成されており、弾性腕部22は、かかる切り欠き13内に位置する。弾性腕部22の先端には、外側方向に突起し、切り欠き13からハウジング外部に露出する突起部23が存在し、相手端子50と接触する。弾性腕部22の先端から後方に向かうにつれ、外側方向に傾斜するテーパ22aが形成されており、嵌合時において、相手コネクタ40の突出部43の位置を案内する。また、突起部23は、相手端子50の嵌合経路と干渉するため、嵌合時において、相手端子50の内面により内側に押圧される。そのため、弾性腕部22は、内側に弾性移動し、かかる弾性移動によって外側方向に発生する復元力(弾性力)によって、端子20と相手端子50との電気的接続が確保される。
【0024】
支持片24の先端には、可動片30の回動中心となる軸部31を収容し、回動自在に支持する回動支持部25が形成されている。また、支持片24の先端側背部の少なくとも一部では、ハウジングの側面11aが形成されていないため、支持片24は、外側方向に弾性移動できる。
図1に戻ると、可動片30は、内側に切り欠き32を有し、かかる切り欠き32に支持片24が位置する。そして、切り欠き32には、軸部31が形成されており、かかる軸部31が、上述の通り、回動支持部25に収容されている。本実施形態においては、コネクタ作成のための部品点数の削減や製造時間の短縮のため、支持片24は、端子20と一体となっているが、支持片を、直接ハウジングに保持されるようにして、端子と異なる部品にすることもできる。また、上記実施例は、支持片24が、端子20と一体になっているから、弾性腕部22ごとに支持片24が、設けられているが、支持片は、弾性腕部ごとに設ける必要はない。
【0025】
図3Aは、
図3における可動片30及びその周囲を拡大した図である。可動片30は、嵌合開始位置において、軸部31の中心を紙面垂直方向に貫く回動軸から内側方向相手端子側(上方)に延出して、嵌合時に相手コネクタ40の突出部43の先端43aと接触する接触片33と、嵌合開始位置において、回動軸よりも相手端子側に位置し、相手端子側に向けて僅かに突出する押圧部34と、嵌合開始位置において、外側底側(下方)に延出するする圧接片35とを備える。接触片33は、嵌合方向に向けて開口した凹状の溝部33aが形成されている。また、
図1に示されるように、本実施形態では、接触片33は、可動片30の長手方向の一端にのみ形成されているが、両端又は中央に形成してもよいし、可動片の長手方向全体又は一部に連続して形成してもよい。ハウジングの側面11aの上端は、圧接片35と接触し、可動片30が、下方へ回動することを規制している。圧接片35には、段差35aが設けられている。また、ハウジングの側面の上端の外側にもまた、段差11bが設けられている。圧接片の段差35aの側面35bとハウジングの段差11bの段差面とが、面接触して、可動片の回動を規制している。このような段差の加工を行わないと、ハウジングの上端の外側の角が、圧接片と接触するため、繰り返し可動片を回動させたときに、ハウジングの上端が削れることがある。ハウジング上端が削れることを防ぐため、圧接片の背部及びハウジング上端に段差35a、11bが設けられている。
【0026】
図3に戻ると、相手端子50は、相手貫通孔44の内壁に沿って配置される相手基体部51と、相手貫通孔44の内壁から筒状の突出部43の内壁に沿って延出し、かかる内壁によって外側への移動が規制される腕部52と、底面からハウジング外に延びて、基板の導体と電気的に接続する相手接続部53とを備える。突出部の先端43aは、相手端子の腕部52の先端よりもコネクタ側に位置し、かつ、腕部52の先端面52aを覆うように内側に僅かに突出している。これは、コネクタと嵌合する際に、金属である腕部52の先端面52aが、相手コネクタと接触して、相手コネクタを損傷させることを防ぐためである。また、52腕部の先端には、底方向に向けて内側に傾斜するテーパ52bが設けられ、コネクタ10と嵌合する際に、弾性腕部22を内側へ案内することができる。
【0027】
図4は、嵌合途中における両コネクタの断面図であり、弾性腕部22と腕部52が接触し始めた時点の状態を示している。弾性腕部22の接触部23は、突出部43の経路上に位置し、突出部43と干渉することから、弾性腕部22は、テーパ22a及びテーパ52aを介して案内されて、内側に弾性移動している。
【0028】
図4Aは、
図4における可動片30及びその周囲を拡大した図である。
図4Aでは、可動片30は、嵌合開始位置から回動していないので、回動軸から上方へ延びる破線によって示される嵌合方向を基準とする回動角度が0度であることが示されている。
図4Aから明らかなように、嵌合開始位置において、接触片33は、突出部43の経路上に位置し、嵌合に際して、接触片33は、突出部43の先端43aにより底側に押されることになる。すなわち、相手コネクタ40を、
図4に示される位置から更に嵌合方向(下方)に移動させると、突出部43の先端43aが、接触部33を押して、可動片30を回動させることになる。なお、本実施形態においては、突出部43の先端43aによって接触部33が押されるが、突出部に突起を設けてかかる突起が接触片を押して、可動片を回動させてもよい。一方で、嵌合開始位置において、押圧部34は、突出部43の経路上に位置しないので、可動片30が回動しない限り、突出部43と干渉することはない。したがって、押圧部34が、相手コネクタの先端43aと衝突して、嵌合を妨げることはない。
【0029】
図5は、
図4に示される位置から、相手コネクタを下方へ移動させた状態における、嵌合途中の両コネクタの断面図を示す。
図5Aは、
図5に示される可動片30周辺の拡大図である。
図5Aに示されるように、可動片30は、嵌合開始位置から36度回動している。可動片30が回動すると、押圧部34は、内側に移動するので、
図5に示される位置では、押圧部34の先端は、突出部43の嵌合移動の経路(嵌合経路)との境界上に位置し、突出部43の側面と接触する。上述の通り、接触片33には、相手コネクタ側(上方)に向けて開口した凹状の溝部33aが形成されている。溝部33aが、突出部43の頂部を収容することによって、溝部33aの回動軸側に位置する押圧部34が、突出部43の経路内に入る前に、突出部43の先端が、押圧部34よりも嵌合方向(下方)に移動することができるので、押圧部34は、突出部43の先端と接触して嵌合を妨害することはなく、外側の側面を押圧することになる。また、突出部43の頂部には、外側部分にテーパ43bが存在し、可動片30が回動する際に、接触片33の先端は、テーパ43bに沿って移動することができる。そのため、接触片33は、テーパ43bにより、外側方向に力を受けるため、相手コネクタの嵌合方向への力を効率よく、可動片30を回動させる力に転化させることができ、小さい力で、両コネクタを嵌合させることができる。このように、接触片33を回動軸の内側に形成すると共に、接触片が、溝部33aを有し、接触片の回動軸側端部に押圧部34を形成することにより、一つの突出部が、接触片を回動させるとともに、押圧部からの押圧を受けることができるので、コネクタの大きさを小さくすることができる。
【0030】
図5に示される位置から更に相手コネクタを下方へ移動させると、可動片30は更に、回動し、押圧部34が、内側に移動するため、押圧部34は、突出部43の側面に対して干渉することになる。もっとも、突出部43は、合成樹脂等で形成されて硬性であるため、突出部43の側面が実質的に、へこんだり、内側に移動したりすることはなく、支持片24の先端側の回動支持部25を含む一部が、ハウジング側面11aによって背部を支持されていないため、外側方向に弾性移動し、回動支持部25に取り付けられた可動片30全体が外側に移動することになる。すなわち、押圧部34の突出部43に対する干渉量は、支持片24の該一部の弾性移動の変位量に対応する。そして、押圧部34は、支持片24に生じた内側への復元力によって、突出部43の外側の側面を押圧することになる。したがって、相手コネクタを下方へ移動させて、両コネクタを嵌合させるためには、支持片24の該一部を外側方向に弾性移動させなければならないので、作業者は、接触片33を介して、かかる弾性移動に基づく復元力を両コネクタの嵌合に対する抵抗力として感じることになる。
【0031】
相手コネクタを嵌合方向(下方)に移動させるにつれて、可動片30は、回動するので、押圧部34は、軸部に対して徐々に内側へと移動し、突出部43の側面との干渉量が大きくなる。したがって、相手コネクタを下方に移動に応じて、支持片24の復元力が、大きくなり、嵌合に際し、作業者が接触片33を介して受ける抵抗力も徐々に大きくなる。一方で、接触片33は、突出部43の先端に設けられたテーパ43bに沿って、外側方向に移動することになり、突出部43の嵌合経路から外れていくことになる。
【0032】
図6は、
図5に示される位置から更に、相手コネクタを下方へ移動させた状態の両コネクタの断面図を示す。
図6Aは、
図6に示される可動片30周辺の拡大図である。
図6Aに示されるように、両コネクタは、嵌合途中の状態であるが、可動片30は、嵌合開始位置から90度回動している。可動片30が、回動開始位置から90度回動すると、押圧部34の突出部43に対する接触部分と軸部31とは、同一の高さ(嵌合方向にと平行方向)にあり、軸部31の中心にある回動軸と押圧部34の先端である上記接触部分との水平方向(嵌合方向に対して垂直方向)の距離Lは最大となり、押圧部34と突出部43との干渉量は、最大になる。すなわち、
図6に示される状態では、支持片24の変位量が、最大になるから、押圧部34が突出部43の側面を押圧する力も最大となる。その結果、接触片33を介して作業者が受ける抵抗力も最大になる。
【0033】
図7は、
図6に示される位置から更に、相手コネクタを下方へ移動させた状態における、両コネクタの断面図を示す。
図7Aは、
図7に示される可動片周辺の拡大図である。
図7Aに示されるように、可動片30は、嵌合開始位置から95度回動している。可動片30が95度回動した状態では、押圧部34の先端は、回動軸の高さ位置より低い位置にあり、回動によって外側方向に移動することになるから、押圧部34と突出部43との干渉量は、
図6に示される状態よりも小さくなる。また、押圧部34の突出部43との接触位置は、回動軸よりも下方に位置することになるので、押圧部34の突出部43側面に対する押圧力の反作用によって、押圧部34が受ける抗力は、支持片24の復元力と併せて、可動片30の回動を促進することになり、後述する
図8に示されるように嵌合が終了する。すなわち、嵌合終了状態では、押圧部34が、嵌合開始状態と、嵌合方向について回動軸に対して逆側に位置することになって、押圧部34によって妨げられていた可動片30の回動が、押圧部34によって促進されることになる。そのため、作業者は、これまで接触片33を介して受けていた抵抗力が、急になくなり、クリック感を感じることになる。さらに、回動により押圧部34が嵌合方向(下方)に移動し、摩擦力を介して、突出部43が嵌合方向へ移動することになるので、作業者は、かかる相手コネクタの移動からもクリック感を感じることになる。そして、両コネクタが嵌合した状態における可動片30の位置である嵌合終了位置の手前で、押圧部34と突出部43との干渉量を最大となっているため、作業者が、クリック感を感じたときには、抵抗力に抗して加えられていた力によって、相手コネクタが移動し、両コネクタの嵌合が完了しているので、作業者が受ける嵌合感触が明確になる。したがって、作業者は、クリック感を感じることによって、両コネクタを黙視することなく、嵌合の完了を認識することができる。
【0034】
図8は、嵌合終了位置における両コネクタの断面図である。
図8Aは、
図8に示される可動片30周辺の拡大図である。
図8Aに示されるように、可動片30は、126度回動し、圧接片35の内面である圧接面35aが、突出部の側面に接して、可動片の回動が規制されて、可動片30の回動は終了している。このとき、圧接片35は、支持片の復元力によって付勢されているため、圧接面35aが、突出部43の側面と接触する際に、弾音が生じる。かかる弾音によっても作業者は、両コネクタの嵌合が十分になされたことを認識できるが、作業者は、クリック感によって嵌合終了を認識できるため、圧接片を設けず、弾音を積極的に生じさせないようにしてもよい。
【0035】
図8に示されるように、嵌合終了位置においても、圧接片35の突出部43に対する干渉量が、残っているので、圧接面35aと突出部43の側面との間に接圧が発生する。かかる接圧は、支持片24の復元力に基づくため、圧接片35と突出部43との干渉量を調整して、接圧を調節することができる。例えば、両コネクタが、装置の通常使用において、抜けることがなく、かつ、装置の修理・調整等により、両コネクタを抜くときに、極端に大きな力がかからないように、弾性腕部22と腕部52との間に発生する抵抗力を考慮しつつ、接圧を調整することができる。本実施形態においては、両コネクタを係止していないが、コネクタ及び相手コネクタに互いに係合する係止部を設け、両コネクタが外れないようにしてもよい。例えば、相手コネクタの突出部に外側方向に突出する係止片を設け、コネクタに該係止片と係合する溝を設け、両コネクタを係止させてもよい。
【0036】
<第2実施形態>
図9は、本発明の別の実施形態に係るコネクタ60及び、該コネクタと嵌合する相手コネクタ90を示す断面図である。本実施形態に係るコネクタ60は、接触片83が、ハウジング61の外側に延出し、嵌合前の状態において、相手コネクタ側を向いている点で、
図1に示されるコネクタ10と異なる。また、相手コネクタ90については、内側に位置し、筒状で内面に沿って複数の相手端子100を備える第1の突出部93及び外側に位置し、接触片80を押して、回動させる第2の突出部97の2つの突出部を備える点で
図1に示される相手コネクタとは異なる。
【0037】
可動片80は、軸部81を回動支持部75に収容させることによって、回動可能に支持片74の先端に取り付けられる。また、可動片80は、嵌合前の状態において、軸部の上方に位置し、相手コネクタ側に向かうにつれて外側方向へ延出する接触片83と、接触片83と軸部81の間に位置して両者をつなぐ、内面が嵌合開始位置において嵌合方向に略平行な連結部86と、軸部の下方に突出する押圧部84とからなる。嵌合開始位置は、例えば、ハウジング61の内壁と、可動片80の側端面に形成された凹凸(図示せず。)によって規制され、嵌合終了位置は、ハウジング61の側面61aによって規制される。嵌合開始位置において、接触片83は、第2の突出部97の嵌合経路と干渉するため、相手コネクタ90と嵌合させるときには、接触片83は、第2の突出部97に押され、接触片83がハウジングの外側を可動片80が回動することになる。押圧部84は、嵌合開始位置において、第1の突出部93の嵌合経路内に位置しないが、可動片80が回動することにより、内側に移動し、第1の突出部93の側面に干渉することになる。また、嵌合開始位置において、押圧部84から上方外側方向に延びる圧接面85が形成されている。圧接面85は、回動終了位置において、第1の突出部93の外側側面と略平行になると共に干渉するので、第1の突出部93の外側側面と圧接する。
【0038】
相手コネクタ90は、第1の突出部93に加え、外側に第2の突出部97を備える。第2の突出部97も、基体部92から嵌合方向に突出する。第2の突出部97の端面は、第1の突出部93の端面よりもコネクタ側に位置する。これは、後述するように、可動片が第2の突出部97によって押されて回動すると、押圧部84が、第1の突出部93の嵌合経路と重なるが、このとき、押圧部84が、第1の突出部の先端に接触するのではなく、側面を接触させるためである。実施形態1と同様に、第1の突出部93は、硬性であるため、支持片74の先側が、外側方向に弾性移動すると共に、可動片80全体が外側方向に移動する。また、支持片74の復元力により、押圧部84は、第1の突出部93の側面を押圧することになる。第2の突出部の先端は、水平方向に平坦な面であるが、外側に傾斜し、嵌合していない状態における接触部の前方の面と略平行な第1のテーパ97aと、内側に傾斜する第2のテーパ97bとを備える。
【0039】
嵌合開始位置において、接触片83は、第2の突出部97の嵌合経路内に位置するため、両コネクタを嵌合させる際に、第2の突出部97の第1のテーパ97aは、接触片83の前方の面83aと面接触して、可動片80を回動させる。このとき、押圧部84は、軸部81の中心にある回動軸に対して、接触片83の位置と反対側である下方に位置するため、内側に移動する。また、第2の突出部97が、接触片83に接触し、可動片80が回動する際には、第1の突出部93の先端は、押圧部84よりも嵌合方向の奥側(下方)に位置するため、押圧部84は、第1の突出部93の外側側面に接触する。さらに可動片80を回動させると、押圧部84は、回動軸に対して内側に移動するが、第1の突出部83は、硬性であるため、支持片74の先側が、外側に弾性移動することになり、これに保持される可動片80全体が、外側に移動する。かかる支持片74の復元力によって、押圧部84は、第1の突出部93の外側側面を押圧することになる。したがって、両コネクタを嵌合させるためには、可動片80を回動させて、押圧部84を回動軸に対して内側に移動させていく必要があり、それにともない支持片74の先側の変位量が多くなるので、両コネクタを嵌合させる際に、作業者は、接触片83を介して支持片83の抗力を抵抗力として感じることになる。
【0040】
図10は、可動片が90度回動した状態における両コネクタの断面図である。可動片が90度回動すると、押圧部の軸部から水平方向距離L’が、最大になり、第1突出部との干渉量が最大になる。すなわち、弾性腕部の弾性移動による変位量が最大になるため、押圧部が、第1の突出部を押圧する力も最大になる。このとき、回動軸と第1の突出部93に接触する押圧部との嵌合方向に関する位置は、一致する。第2の突出部の先端面と、回動により上方に向いた連結部の内面とが、面で接触している。
【0041】
図10の状態から、さらに相手コネクタ90を嵌合方向に移動させ、可動片80を回動させると、押圧部84は外側に移動し、第1の突出部93との干渉量が小さくなる。このことは、押圧部84は、嵌合開始状態の位置とは逆側に当たる回動軸に対して上方に移動することを意味し、押圧部84が、第1の突出部93に対する押圧力の反作用として受ける力は、支持片74の復元力と共に、可動片80の回動を促進する。その結果、作業者が接触片80を介して受けていた抵抗力がなくなるため、作業者は、クリック感を感じることになる。
すなわち、嵌合終了位置の手前では、上記干渉量が最大になり作業者が強い抵抗力を感じていたところ、抵抗力が抜けて、作業者が、クリック感を感じたときには、抵抗力に対抗して加えていた力により相手コネクタが嵌合方向に移動し、両コネクタ嵌合が完了することになる。したがって、作業者は、クリック感に、両コネクタの嵌合が完了したことを認識しやすくなる。特に、圧接部と第1の突出部との接触部分から回動軸に延びる直線を基準として圧接面側への角度84aを例えば60度以下に、好ましくは45度以下に小さくすると、押圧部の第1の突出部に対する干渉量を急激に減らすことができ、クリック感を一層明確にすることが可能になる。さらに、可動片80の回動が、支持片74の復元力によって、付勢されているため、接触片83の後面である圧接面83bが、ハウジングの外側側面に当たり、弾音が生じ、かかる音からも、作業者は、嵌合の完了を認識することができる。
【0042】
図11は、嵌合終了位置における両コネクタの断面図である。
図11に示されるように、可動片80は、接触片の後面が、ハウジング61の外側側面に接して、可動片の回動が規制されて、可動片80の回動は終了している。嵌合が完了した状態においても、圧接面85と第1の突出部との干渉が残り、支持片74が変位量を持つため、支持片74の復元力により、圧接面85が第1の突出部93の側面を押圧し、両コネクタが、抜去することを防ぐことができる。また、干渉量を調整し、両コネクタを抜く際に、過大な力が不要となるように、圧接面74と第1の突出部93の側面との摩擦力を定めることができる。
【0043】
本実施形態は、いずれも基板対基板用のコネクタであるが、これに限らず、基板対ケーブル用コネクタに用いることもできる。