【解決手段】医療用観察装置を構成する制御部は、第1のモータの回転速度を既定の動作速度V1とするまで第1の速度プロファイルPxに沿って当該回転速度を制御するとともに、第2のモータの回転速度を既定の動作速度V1とするまで第1の速度プロファイルPxとは異なる第2の速度プロファイルPyに沿って当該回転速度を制御する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0025】
〔医療用観察システムの概略構成〕
図1は、本実施の形態1に係る医療用観察システム1の概略構成を示す図である。
医療用観察システム1は、手術時や検査時において術者が処置する対象となる部位(観察対象)を拡大して撮像し、当該撮像に応じた画像を表示するシステムである。この医療用観察システム1は、
図1に示すように、観察対象を撮像して画像信号を出力する医療用観察装置2と、医療用観察装置2から出力された画像信号に基づく画像を表示する表示装置3とを備える。
【0026】
医療用観察装置2は、
図1に示すように、撮像部21と、ベース部22と、支持部23と、制御装置24と、フットスイッチ25とを備える。
撮像部21は、観察対象を拡大して撮像し、当該撮像に応じた画像信号を出力する。この撮像部21は、例えば、各種の公知の光学系と、当該光学系が集光した光を受光して電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等の各種の公知の撮像素子とを備える。また、この撮像部21には、AF(Auto Focus)機能や光学ズーム機能等の各種の機能も搭載されている。また、撮像部21としては、一対の撮像素子を備えた所謂、ステレオカメラとして構成しても構わない。
ベース部22は、医療用観察装置2の基台であり、キャスター221(
図1)を介して床面上を移動可能に構成されている。
【0027】
支持部23は、ベース部22から延在し、先端(ベース部22から離間した端部)にて撮像部21を保持する。そして、支持部23は、術者の操作に応じて、撮像部21を3次元的に移動可能とする。
なお、本実施の形態1では、支持部23は、撮像部21の移動に対して6自由度を有するように構成されているが、これに限られず、その他の異なる数の自由度を有するように構成しても構わない。
【0028】
この支持部23は、
図1に示すように、第1〜第5アーム部231A〜231Eと、第1〜第6関節部232A〜232Fとを備える。
なお、第1〜第6関節部232A〜232Fの詳細な構成については、第2,第3関節部232B,232Cを例示して後述するが、固定部及び可動部をそれぞれ有し、固定部に対して可動部が回転可能な構造になっている。
【0029】
第1関節部232Aは、支持部23の先端に位置し、円筒形状を有する。この第1関節部232Aは、円筒内側に位置する可動部(図示略)にて撮像部21を保持し、円筒外側に位置する固定部(図示略)にて第1アーム部231Aに支持される。そして、第1関節部232Aにおいて、可動部は、固定部に対して、第1軸O1を中心として回転可能とする。このため、第1関節部232Aは、第1軸O1回りに撮像部21を回転可能とする。
ここで、第1軸O1は、第1関節部232Aにおける円筒の中心軸であり、第1関節部232Aに保持された撮像部21の観察光軸に一致する軸である。
すなわち、第1軸O1回りに撮像部21を回転させると、撮像部21による撮像視野の向きが変更される。
【0030】
第1アーム部231Aは、第1関節部232Aの側面から第1軸O1と直交する方向に延在し、先端にて第1関節部232A(固定部)を支持する。
第2関節部232Bは、先端側に位置する可動部233(
図5参照)にて第1アーム部231Aの基端に接続し、基端側(ベース部22に近接する側)に位置する固定部234(
図5参照)にて第2アーム部231Bに接続する。そして、第2関節部232Bにおいて、可動部233は、固定部234に対して、第2軸O2を中心として回転可能とする。このため、第2関節部232Bは、第2軸O2回りに第1アーム部231A(撮像部21)を回転可能とする。
ここで、第2軸O2は、第1軸O1に直交し、第1アーム部231Aの延在方向に平行な軸であり、本発明に係る第1の回転軸(
図1に示すX軸)に相当する。
すなわち、第2軸O2回りに撮像部21を回転させると、観察対象に対する撮像部21の光軸の向きが変更される。言い換えれば、撮像部21による撮像視野が第1,第2軸O1,O2に直交するY軸(
図1)に沿って移動する。このため、第2関節部232Bは、撮像部21による撮像視野をY軸に沿って移動させる関節部である。そして、第2関節部232Bは、本発明に係る第1の関節部に相当する。
【0031】
第2アーム部231Bは、第1,第2軸O1,O2に直交する方向に延在したクランク形状を有し、先端にて第2関節部232B(固定部234)を支持する。
第3関節部232Cは、先端側に位置する可動部235(
図5参照)にて第2アーム部231Bの基端に接続し、基端側に位置する固定部236(
図5参照)にて第3アーム部231Cに接続する。そして、第3関節部232Cにおいて、可動部235は、固定部236に対して、第3軸O3を中心として回転可能とする。このため、第3関節部232Cは、第3軸O3回りに第2アーム部231B(撮像部21)を回転可能とする。
ここで、第3軸O3は、第1,第2軸O1,O2に直交する軸であり、本発明に係る第2の回転軸(Y軸)に相当する。
すなわち、第3軸O3回りに撮像部21を回転させると、観察対象に対する撮像部21の光軸の向きが変更される。言い換えれば、撮像部21による撮像視野がX軸(
図1)に沿って移動する。このため、第3関節部232Cは、撮像部21による撮像視野をX軸に沿って移動させる関節部である。そして、第3関節部232Cは、本発明に係る第2の関節部に相当する。
【0032】
第3アーム部231Cは、第2アーム部231Bの延在方向と略平行な方向に延在し、先端にて第3関節部232C(固定部236)を支持する。
第4関節部232Dは、第2軸O2に略平行に延在し、一端側に位置する可動部(図示略)にて第3アーム部231Cの基端に接続し、他端側に位置する固定部(図示略)にて第4アーム部231Dに接続する。そして、第4関節部232Dにおいて、可動部は、固定部に対して、第4軸O4を中心として回転可能とする。このため、第4関節部232Dは、第4軸O4回りに第3アーム部231C(撮像部21)を回転可能とする。
ここで、第4軸O4は、第3軸O3に直交する軸である。
すなわち、第4軸O4回りに撮像部21を回転させると、観察対象に対する撮像部21の高さが調整される。
【0033】
第4アーム部231Dは、第4軸O4に直交し、ベース部22に向けて直線的に延在し、先端にて第4関節部232D(固定部)を支持する。
第5関節部232Eは、第4軸O4に略平行に延在し、一端側に位置する可動部(図示略)にて第4アーム部231Dの基端に接続し、他端側に位置する固定部(図示略)にて第5アーム部231Eに接続する。そして、第5関節部232Eにおいて、可動部は、固定部に対して、第5軸O5を中心として回転可能とする。このため、第5関節部232Eは、第5軸O5回りに第4アーム部231D(撮像部21)を回転可能とする。
ここで、第5軸O5は、第4軸O4に平行な軸である。
【0034】
第5アーム部231Eは、鉛直方向に延在する第1の部位と、当該第1の部位に対して略直角に屈曲して延在する第2の部位とで構成された略L字形状を有し、当該第1の部位にて第5関節部232E(固定部)を支持する。
第6関節部232Fは、鉛直方向に延在し、一端側に位置する可動部(図示略)にて第5アーム部231Eの第2の部位に接続し、他端側に位置する固定部(図示略)がベース部22の上面に固定される。そして、第6関節部232Fにおいて、可動部は、固定部に対して、第6軸O6を中心として回転可能とする。このため、第6関節部232Fは、第6軸O6回りに第5アーム部231E(撮像部21)を回転可能とする。
ここで、第6軸O6は、鉛直方向に沿う軸である。
【0035】
本実施の形態1では、上述した支持部23のイナーシャは、2.5×10
−3kgm
2に設定されている。なお、従来の光学式顕微鏡(支持アーム装置の支持部の先端に患者の術部の微小部位を拡大観察するための拡大光学系が設けられた顕微鏡(例えば、特開2004−267774号公報参照))における支持部のイナーシャは、2.5kgm
2程度である。すなわち、支持部23のイナーシャは、従来の光学式顕微鏡に比べて、1/1000程度に設定されている。
なお、支持部23のイナーシャは、上述した値に限られず、1×10
−2kgm
2以下であれば、その他の値に設定しても構わない。
このように支持部23のイナーシャを小さく設定することにより、支持部23における6自由度の動き(撮像部21の移動)を円滑にすることができる。
【0036】
制御装置24は、ベース部22の内部に設けられ、医療用観察システム1の動作を統括的に制御する。なお、
図1では、説明の便宜上、ベース部22の外部に制御装置24を図示している。この制御装置24は、
図1に示すように、制御部241と、メモリ242とを備える。
制御部241は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて構成され、メモリ242に記録された制御プログラムにしたがって、医療用観察システム1の動作を統括的に制御する。
具体的に、制御部241は、撮像部21に設けられた動作切替スイッチ(図示略)への術者によるユーザ操作に応じて支持部23の動作モードを切り替えるとともに、当該切り替えた動作モードに応じた処理を実行する。
本実施の形態1では、支持部23の動作モードとして、固定モード、オールフリーモード、及びXY移動動作モードが設けられている。
【0037】
固定モードは、第1〜第6関節部232A〜232Fにおける各固定部に対する各可動部の回転がブレーキにより停止されることにより、撮像部21の位置及び姿勢が固定される動作モードである。すなわち、支持部23には、制御部241による制御の下、第1〜第6関節部232A〜232Fにおける各固定部に対する各可動部の回転をそれぞれ停止させるブレーキ(例えば、
図5に示したブレーキ45,55)が設けられている。
オールフリーモードは、ブレーキが解除されることにより、第1〜第6関節部232A〜232Fにおける各固定部に対する各可動部の回転が許容された状態であり、術者による直接的な動作(術者が例えば手で撮像部21を把持し、当該撮像部21を直接移動させる操作)によって撮像部21の位置及び姿勢を調整可能な動作モードである。
【0038】
XY移動動作モードは、フットスイッチ25への術者によるユーザ操作に応じて、撮像部21による撮像視野をX軸方向及びY軸方向を含む8つの移動方向Ar1〜Ar8(
図6A参照)のいずれかに移動させる動作モードである。すなわち、支持部23には、制御部241による制御の下、第2,第3関節部232B,232Cをそれぞれ動作させるX,Y軸アクチュエータ4,5(
図5参照)が設けられている。なお、X,Y軸アクチュエータ4,5の詳細な構成については後述する。
【0039】
また、制御部241は、撮像部21から出力された画像信号に対して各種の画像処理(例えば、電子ズーム機能に係る拡大処理等)を実行し、当該画像処理後の画像信号を表示装置3に出力する。
メモリ242は、制御部241が実行する制御プログラムの他、制御部241の処理に必要な情報(例えば、X軸アクチュエータ4を構成するX軸モータ41を制御するためのX軸速度プロファイルや、Y軸アクチュエータ5を構成するY軸モータ51を制御するためのY軸速度プロファイル等)等を記録する。ここで、X軸速度プロファイルは、本発明に係る第1の速度プロファイルに相当する。また、Y軸速度プロファイルは、本発明に係る第2の速度プロファイルに相当する。なお、X,Y軸速度プロファイルの詳細については後述する。
【0040】
フットスイッチ25は、術者が足で操作する部分であり、上述したようにXY移動動作モード時に用いられる。具体的に、フットスイッチ25は、術者による8つの移動方向Ar1〜Ar8(
図6A参照)のいずれかへの撮像視野の移動指示(ユーザ操作)を受け付ける。そして、フットスイッチ25は、当該移動指示に応じた指示信号を制御部241に出力する。
なお、撮像視野の移動指示を受け付ける手段(操作受付部)としては、フットスイッチ25に限られず、その他、術者が手で操作するスイッチ等を採用しても構わない。
【0041】
表示装置3は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等を用いた表示ディスプレイを用いて構成され、撮像部21から出力され、制御部241にて各種の画像処理が実行された画像信号に基づく画像を表示する。
【0042】
〔医療用観察システムの使用例〕
次に、上述した医療用観察システム1の使用例について説明する。
図2は、医療用観察システム1を用いた手術の状況を模式的に示す図である。
先ず、術者OPは、手術台の上に横臥している患者PAの観察対象(
図2の例では、患者PAの頭部)の上に撮像部21を位置付ける。例えば、オールフリーモードでは、術者OPは、撮像部21を把持し、支持部23における6自由度の動きを利用して、観察対象の上に撮像部21を位置付ける。また、XY移動動作モードでは、術者OPは、フットスイッチ25に対して操作(8つの移動方向Ar1〜Ar8(
図6A参照)のいずれかへの撮像視野の移動指示)を行うことで、観察対象の上に撮像部21を位置付ける。
撮像部21にて撮像された画像は、撮像部21における光学ズーム機能、及び制御部241による電子ズーム機能により、所定の倍率で拡大され、手術室の壁に取り付けられた表示装置3に表示される。
そして、術者OPは、表示装置3に表示された画像を確認しながら、手術を実行する。
【0043】
ここで、撮像視野を移動する場合での課題について説明する。
図3及び
図4は、撮像視野AVを移動する場合での課題を説明する図である。具体的に、
図3は、撮像視野(実視野)AVと撮像部21との位置関係を示している。
図4は、ワーキングディスタンスWD(観察対象から撮像部21までの距離)と、光学ズーム機能による倍率(変倍比)と、電子ズーム機能による倍率(
図4の例では、電子ズーム機能OFFのみ図示)と、撮像視野AVのサイズとの関係を示している。
例えば、ワーキングディスタンスWDが400mmで、光学ズーム機能による倍率を6倍(変倍比)とした場合(電子ズーム機能OFF)には、撮像視野AVのサイズは、
図4に示すように、対角で25mmとなる。そして、撮像視野AVの中央に位置する点CPが撮像視野AVの外に位置する(点CPが表示装置3の画面から消える(画が飛ぶ))まで第2軸O2(または第3軸O3)回りに撮像部21を回転させた場合での第2軸O2(または第3軸O3)回りの角度変化θは、以下の式(1)に示すように、1.8°となる。
【0045】
また、撮像部21の先端から第2軸O2までの距離を100mmとした場合には、角度変化である1.8°は、撮像部21の先端が3mm移動することに相当する。すなわち、撮像部21を1.8°回転させただけで、言い換えれば、撮像部21の先端を3mm移動させただけで、画が飛んでしまう。当該画の飛びは、高倍率になるにしたがって、小さい角度変化θ(撮像部21の先端の少ない移動量)で生じることとなる。
上述したように支持部23のイナーシャは、極めて小さい値(2.5×10
−3kgm
2)に設定されているため、術者OPが撮像部21に弱い力を加えただけで、画が飛んでしまう。このため、本実施の形態1では、第2,第3関節部232B,232Cには、当該画の飛びを抑制するために、X,Y軸負荷付与機構6,7(
図5参照)がそれぞれ設けられている。なお、X,Y軸負荷付与機構6,7の詳細な構成については後述する。
【0046】
〔X,Y軸アクチュエータの構成〕
次に、X,Y軸アクチュエータ4,5の構成について説明する。
図5は、X,Y軸アクチュエータ4,5の構成を示す断面図である。
なお、第2,第3関節部232B,232Cは、同様の構成を有する。また、X,Y軸アクチュエータ4,5は、同様の構成を有する。このため、
図5では、第2関節部232B及びX軸アクチュエータ4の構成を示す各符号の後に、第3関節部232C及びY軸アクチュエータ5の構成を示す各符号をカッコ付きで付している。
X軸アクチュエータ4は、
図5に示すように、第2関節部232Bを構成する固定部234の内部に設けられている。
このため、X軸アクチュエータ4の構成を説明する前に、
図5を参照しつつ、固定部234の構成について説明する。
固定部234は、ハウジング部234Aと、閉塞部234Bとを備える。
ハウジング部234Aは、中心軸が第2軸O2に一致する有底筒形状を有し、第2アーム部231Bの先端に固定される。
閉塞部234Bは、貫通孔234Cを有する環形状を有し、ハウジング部234Aの開口部分を閉塞するように、当該ハウジング部234Aに固定される。
【0047】
X軸アクチュエータ4は、
図5に示すように、X軸モータ41と、減速機構42と、ドライブシャフト43と、クラッチ44と、ブレーキ45とを備える。
X軸モータ41は、制御部241にて制御される一般的な電気モータで構成され、第2関節部232Bに動力を与える動力源である。すなわち、X軸モータ41は、本発明に係る第1のモータに相当する。そして、X軸モータ41は、当該X軸モータ41の出力軸が第2軸O2に平行となるようにハウジング部234Aの内面に取り付けられる。
【0048】
減速機構42は、X軸モータ41の出力軸に設けられ、当該出力軸の回転を所定の減速比で減速する。この減速機構42は、互いに噛合する複数の歯車を備える。本実施の形態1では、当該複数の歯車は、X軸モータ41の出力軸に固定された第1平歯車421と、第1平歯車421に噛合する第2平歯車422とで構成されている。
なお、減速機構42を構成する歯車の数は、上述した2つに限られず、3つ以上で構成しても構わない。また、減速機構42を構成する歯車は、平歯車に限られず、その他の歯車で構成しても構わない。
第1,第2平歯車421,422のうち、第2平歯車422は、中心軸が第2軸O2に一致するようにハウジング部234Aの内部に配置される。また、第2平歯車422には、中心軸に沿って貫通する貫通孔422Aが形成されている。
【0049】
ドライブシャフト43は、円柱形状を有し、当該円柱の中心軸が第2軸O2に一致するように設置される。具体的に、ドライブシャフト43の一端側は、貫通孔422Aに挿通され、第1ベアリング46Aを介して第2平歯車422に対して回転可能に軸支される。また、ドライブシャフト43の他端側は、貫通孔234Cに挿通され、他端が固定部234の外部に突出した状態で、第2ベアリング46Bを介して閉塞部234Bに対して回転可能に軸支される。すなわち、ドライブシャフト43は、固定部234に対して中心軸を中心として回転可能とする。また、ドライブシャフト43の他端は、可動部233に固定されている。
【0050】
クラッチ44は、
図5に示すように、ロータ441と、アーマチュア442と、ステータ443とを備える。
ロータ441は、貫通孔441Aを有し、当該貫通孔441Aにドライブシャフト43が挿通された状態で、当該ドライブシャフト43に固定される。
アーマチュア442は、円板形状を有し、当該円板の中心軸に沿って貫通する貫通孔442Aを有する。そして、アーマチュア442は、貫通孔442Aにドライブシャフト43が挿通された状態で、第2平歯車422とロータ441との間に配置される。また、アーマチュア442は、板バネ442Bを介して第2平歯車422に取り付けられ、板バネ442Bの弾性変形に応じて、第2軸O2に沿って移動可能とする。
ステータ443は、ハウジング部234Aに固定され、制御部241による制御の下、アーマチュア442を第2軸O2に沿って進退移動させる。そして、アーマチュア442がロータ441から離間した状態では、減速機構42とドライブシャフト43とは、クラッチ44を介して接続されない遮断状態(クラッチOFF)である。すなわち、ドライブシャフト43は、X軸モータ41の回転に伴って回転しない。一方、アーマチュア442がロータ441に当接した状態では、減速機構42とドライブシャフト43とは、クラッチ44を介して接続された許容状態(クラッチON)である。すなわち、ドライブシャフト43は、X軸モータ41の回転に伴って回転し、当該X軸モータ41の回転を可動部233に伝達し、第2軸O2回りに可動部233を回転させる。
【0051】
ブレーキ45は、
図5に示すように、アーマチュア451と、ステータ452とを備える。
アーマチュア451は、円板形状を有し、当該円板の中心軸に沿って貫通してドライブシャフト43が挿通される貫通孔451Aを有する。そして、アーマチュア451は、板バネ451Bを介してドライブシャフト43の外周面に設けられたフランジ431に取り付けられ、板バネ451Bの弾性変形に応じて、第2軸O2に沿って移動可能とする。
ステータ452は、閉塞部234Bに固定され、制御部241による制御の下、アーマチュア451を第2軸O2に沿って進退移動させる。そして、アーマチュア451がステータ452から離間した状態では、ステータ452は、アーマチュア451を開放し、ドライブシャフト43の回転を許容する。一方、アーマチュア451がステータ452に当接した状態で、ステータ452は、アーマチュア451(ドライブシャフト43)の回転を拘束する。
【0052】
第3関節部232C及びY軸アクチュエータ5の構成は、第2関節部232B及びX軸アクチュエータ4と同様の構成である。すなわち、第3関節部232Cを構成する固定部236は、
図5に示すように、第2関節部232Bの固定部234を構成するハウジング部234A及び閉塞部234B(貫通孔234C)とそれぞれ同様のハウジング部236A及び閉塞部236B(貫通孔236C)を有する。また、Y軸アクチュエータ5は、X軸アクチュエータ4を構成するX軸モータ41、減速機構42(第1,第2平歯車421,422(貫通孔422Aを含む)を含む)、ドライブシャフト43(フランジ431を含む)、クラッチ44(ロータ441(貫通孔441Aを含む)、アーマチュア442(貫通孔442A及び板バネ442Bを含む)、ステータ443を含む)、ブレーキ45(アーマチュア451(貫通孔451A及び板バネ451Bを含む)、及びステータ452を含む)及び第1,第2ベアリング46A,46Bとそれぞれ同様のY軸モータ51、減速機構52(第1,第2平歯車521,522(貫通孔522Aを含む)を含む)、ドライブシャフト53(フランジ531を含む)、クラッチ54(ロータ541(貫通孔541Aを含む)、アーマチュア542(貫通孔542A及び板バネ542Bを含む)、ステータ543を含む)、ブレーキ55(アーマチュア551(貫通孔551A及び板バネ551Bを含む)、及びステータ552を含む)及び第1,第2ベアリング56A,56Bを備える。
そして、Y軸モータ51は、本発明に係る第2のモータに相当する。
【0053】
次に、撮像視野AVの移動方向とX,Y軸モータ41,51の回転方向との関係について説明する。
図6A及び
図6Bは、撮像視野AVの移動方向とX,Y軸モータ41,51の回転方向との関係を説明する図である。
移動方向Ar1,Ar5は、X軸に沿う方向である。このため、撮像視野AVを移動方向Ar1または移動方向Ar5に移動させる際には、制御部241は、Y軸モータ51のみを順方向CWまたは当該順方向CWとは逆方向CCWに回転させる。
また、移動方向Ar3,Ar7は、Y軸に沿う方向である。このため、撮像視野AVを移動方向Ar7またはAr3に移動させる際には、制御部241は、X軸モータ41のみを順方向CWまたは逆方向CCWに回転させる。
さらに、移動方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8は、X軸及びY軸に対して45°で交差する方向である。以下、説明の便宜上、移動方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8を斜め方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8と記載する。そして、撮像視野AVを斜め方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8のいずれかに移動させる際には、制御部241は、X,Y軸モータ41,51の双方を順方向CWや逆方向CCWにそれぞれ回転させる。
【0054】
〔X,Y軸負荷付与機構の構成〕
次に、X,Y軸負荷付与機構6,7の構成について
図5を参照しつつ説明する。
X軸負荷付与機構6は、固定部234に対して可動部233が回転する際に、当該回転に対して摩擦による回転抵抗を付与する機構である。本実施の形態1では、X軸負荷付与機構6は、
図5に示すように、可動部233及び固定部234の間に介装され、可動部233と固定部234とで圧縮されたOリングで構成されている。
Y軸負荷付与機構7は、固定部236に対して可動部235が回転する際に、当該回転に対して摩擦による回転抵抗を付与する機構である。本実施の形態1では、Y軸負荷付与機構7は、
図5に示すように、X軸負荷付与機構6と同様に、可動部235及び固定部236の間に介装され、可動部235と固定部236とにより圧縮されたOリングで構成されている。
【0055】
ところで、第2関節部232Bは、撮像部21、第1関節部232A、及び第1アーム部231Aの3つの構成全体を回転させる。一方、第3関節部232Cは、撮像部21、第1関節部232A、第1アーム部231A、第2関節部232B、及び第2アーム部231Bの5つの構成全体を回転させる。すなわち、第3関節部232Cは、第2関節部232Bに対して、回転させる対象の重量が重く、慣性力が大きいものである。
また、第2軸O2及びグリップ位置(術者OPが把持する位置(例えば、撮像部21))の離間距離と、第3軸O3及び当該グリップ位置の離間距離とは異なるため、第2関節部232Bによる第2軸O2回りの回転のし易さと、第3関節部232Cによる第3軸O3回りの回転のし易さとは異なるものである。
このため、上述した点を考慮し、可動部233及び固定部234によるX軸負荷付与機構6の圧縮量と可動部235及び固定部236によるY軸負荷付与機構7の圧縮量とを異なるものとし、X,Y軸負荷付与機構6,7が付与する回転抵抗の摩擦力を異なるものとしている。本実施の形態1では、Y軸負荷付与機構7は、X軸負荷付与機構6よりも圧縮量が大きく設定され、付与する回転抵抗の摩擦力がX軸負荷付与機構6よりも強く設定されている。
【0056】
〔医療用観察装置が実行する制御方法〕
次に、上述した医療用観察装置2が実行する制御方法について説明する。
図7は、医療用観察装置2が実行する制御方法を示すフローチャートである。
以下では、説明の便宜上、XY移動動作モードにおいて、撮像視野AVを斜め方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8のいずれかに移動させる場合について説明する。また、クラッチ44,54がそれぞれ遮断状態に切り替えられている(クラッチOFF)とともに、ブレーキ45,55がそれぞれ作動している(ドライブシャフト43,53がそれぞれ拘束されている)状態から説明を開始する。
先ず、制御部241は、術者OPによりフットスイッチ25に対して斜め方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8のいずれかへの撮像視野AVの移動指示があったか否かを常時、監視する(ステップS1)。
【0057】
斜め方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8のいずれかへの撮像視野AVの移動指示があったと判断した場合(ステップS1:Yes)には、制御部241は、クラッチ44,54の動作をそれぞれ制御し、遮断状態(クラッチOFF)から許容状態(クラッチON)にそれぞれ切り替える(ステップS2)。
ステップS2の後、制御部241は、ブレーキ45,55の動作をそれぞれ制御し、当該ブレーキ45,55をそれぞれ解除(ドライブシャフト43,53の回転をそれぞれ許容)する(ステップS3)。
【0058】
ステップS3の後、制御部241は、メモリ242に記録されたX,Y軸速度プロファイルを読み出し、当該X,Y軸速度プロファイルにしたがって、以下に示すように、X,Y軸モータ41,51の双方の動作を制御する(ステップS4〜S6:制御ステップ)。
図8は、メモリ242に記録されたX,Y軸速度プロファイルPx,Pyを示す図である。具体的に、
図8では、横軸を時間とし、縦軸をX,Y軸モータ41,51の回転速度としている。また、
図8では、X軸速度プロファイルPxを一点鎖線で示し、Y軸速度プロファイルPyを二点鎖線で示している。
【0059】
ここで、X軸モータ41の駆動を開始し、当該X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、X軸速度プロファイルPxに沿って当該回転速度を第1加速度で加速させた場合を想定する。すなわち、X軸速度プロファイルPxは、X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を第1加速度で加速する速度プロファイルである。
この際、可動部233は、X軸モータ41の駆動が開始されると同時に固定部234に対して回転することはなく、X軸モータ41の駆動を開始してから時間Tx(
図8)後に回転を開始する。これは、X軸モータ41の回転を可動部233に伝達するX軸動力伝達機構40(
図5)がX軸負荷付与機構6による回転抵抗の摩擦力と釣り合うまでX軸モータ41の回転に伴い徐々に弾性変形することに起因する。なお、X軸動力伝達機構40は、減速機構42、ドライブシャフト43、及びクラッチ44等に相当する。すなわち、X軸動力伝達機構40の弾性変形量が当該摩擦力に応じた所定量を超えた時点(時間Tx)で、可動部233は、固定部234に対して回転を開始する。
そして、
図8に示したA1〜A4で囲まれる台形の領域の面積は、可動部233が回転するまでのX軸モータ41の回転量であり、X軸動力伝達機構40の弾性変形量に対応する。
【0060】
また、Y軸モータ51の駆動を開始し、当該Y軸モータ51の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、上述したX軸モータ41の場合と同様に、当該回転速度を第1加速度で加速させた場合(X軸速度プロファイルPxに沿って制御した場合)を想定する。
この際、可動部235は、Y軸モータ51の駆動が開始されると同時に固定部236に対して回転することはなく、Y軸モータ51の駆動を開始してから時間Ty(
図8)後に回転を開始する。この時間Tyは、時間Txよりも遅れた時間である。これは、Y軸モータ51の回転を可動部235に伝達するY軸動力伝達機構50(
図5)がY軸負荷付与機構7による回転抵抗の摩擦力(X軸負荷付与機構6による回転抵抗の摩擦力よりも強い摩擦力)と釣り合うまで、Y軸モータ51の回転に伴い徐々に弾性変形することに起因する。なお、Y軸動力伝達機構50は、減速機構52、ドライブシャフト53、及びクラッチ54等に相当する。すなわち、Y軸動力伝達機構50の弾性変形量が当該摩擦力に応じた所定量を超えた時点(時間Ty)で、可動部235は、固定部236に対して回転を開始する。
そして、
図8に示したA1,A2,A5,A6で囲まれる台形の領域の面積は、可動部235が回転するまでのY軸モータ51の回転量であり、Y軸動力伝達機構50の弾性変形量に対応する。
【0061】
以上のように、X,Y軸モータ41,51の回転速度を同一の速度プロファイルに沿って制御した場合には、付与された摩擦力が弱い可動部233の回転が先に開始される。その後、付与された摩擦力が強い可動部235の回転が開始される。すなわち、可動部233,235が回転を開始する時間にずれが生じる。このため、フットスイッチ25に対して斜め方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8のいずれかへの撮像視野AVの移動指示が行われた場合には、先ず、Y軸方向に沿って撮像視野AVが移動し、その後、当該移動指示に応じた斜め方向に撮像視野AVが移動することとなる。したがって、表示装置3に表示された画像を確認する術者OPに対して、違和感を与えてしまう。
【0062】
本実施の形態1では、可動部233,235が回転を開始する時間のずれを低減するために、X,Y軸速度プロファイルPx,Pyを互いに異なるものとする。
具体的に、X,Y軸速度プロファイルPx,Pyは、以下に示すように導出される。なお、X軸速度プロファイルPxについては、説明の便宜上、上述したX軸速度プロファイルPxとする。
先ず、上述した時間Tx,Tyを実際に測定する。そして、
図8に示したA1,A7,A2で囲まれる三角形の領域が
図8に示したA3〜A6で囲まれる長方形の領域の面積と同一の面積となるように、Y軸速度プロファイルPyを導出する。すなわち、Y軸速度プロファイルPyは、Y軸モータ51の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を第1加速度よりも高い第2加速度で加速する速度プロファイルである。
ここで、
図8に示したA1,A7,A3,A4で囲まれる台形の領域の面積と、
図8に示したA1,A2,A5,A6で囲まれる台形の領域の面積とは同一である。すなわち、Y軸速度プロファイルPyに沿ってY軸モータ51を制御した場合には、可動部235は、可動部233の回転の開始と同時(Y軸モータ51の駆動を開始してから時間Tx後)に回転を開始することとなる。
【0063】
そして、制御部241は、X軸モータ41の制御を実行する場合(ステップS4:Yes)には、X軸モータ41の回転速度を既定の動作速度V1とするまで、X軸速度プロファイルPxに沿って当該回転速度を制御する(ステップS5:第1の制御ステップ)。なお、制御部241は、X軸モータ41の回転速度を既定の動作速度V1とした後は、当該動作速度V1でX軸モータ41を回転させる。
また、制御部241は、Y軸モータ51の制御を実行する場合(ステップS4:No)には、ステップS5と並行して(X軸モータ41と同時にY軸モータ51の駆動を開始して)、Y軸モータ51の回転速度を既定の動作速度V1とするまで、Y軸速度プロファイルPyに沿って当該回転速度を制御する(ステップS6:第2の制御ステップ)。なお、制御部241は、Y軸モータ51の回転速度を既定の動作速度V1とした後は、当該動作速度V1でY軸モータ51を回転させる。
【0064】
そして、制御部241は、ステップS1での術者OPによるフットスイッチ25への操作が解除されたか否か(フットスイッチ25がOFFしたか否か)を常時、監視し(ステップS7)、当該操作が継続している間、ステップS4〜S6の処理を継続する。一方、フットスイッチ25がOFFしたと判断した場合(ステップS7:Yes)には、制御部241は、X,Y軸モータ41,51の駆動を停止する(ステップS8)。
【0065】
ステップS8の後、制御部241は、クラッチ44,54の動作をそれぞれ制御し、許容状態(クラッチON)から遮断状態(クラッチOFF)にそれぞれ切り替える(ステップS9)。
ステップS9の後、制御部241は、ブレーキ45,55の動作をそれぞれ制御し、当該ブレーキ45,55をそれぞれ作動(ドライブシャフト43,53をそれぞれ拘束)する(ステップS10)。この後、制御部241は、ステップS1に戻る。
【0066】
以上説明した本実施の形態1に係る医療用観察装置2では、X,Y軸速度プロファイルPx,Pyを互いに異なる速度プロファイルとしている。また、付与する回転抵抗の摩擦力は、X軸負荷付与機構6よりもY軸負荷付与機構7の方が強く設定されている。そして、X,Y軸速度プロファイルPx,Pyを互いに異なる速度プロファイルとすることで、撮像視野AVを斜め方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8のいずれかに移動する移動指示が行われてからのY軸モータ51の回転量をX軸モータ41の回転量よりも多く設定することが可能となる。すなわち、Y軸動力伝達機構50の弾性変形量がY軸負荷付与機構7による回転抵抗の摩擦力に応じた所定量を超える時間を短くすることができる。
このため、撮像視野AVを斜め方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8のいずれかに移動する際に、可動部233,235が回転を開始する時間のずれを低減することができる。したがって、本実施の形態1に係る医療用観察装置2によれば、術者OPに与える違和感を低減することができる、という効果を奏する。
【0067】
特に、Y軸速度プロファイルPyは、
図8に示したA1,A7,A2で囲まれる三角形の領域が
図8に示したA3〜A6で囲まれる長方形の領域の面積と同一の面積となるように導出されている。
このため、撮像視野AVを斜め方向Ar2,Ar4,Ar6,Ar8のいずれかに移動する際に、可動部233,235を同時に回転させることができる。したがって、術者OPに与える違和感を失くすことができる。
【0068】
また、本実施の形態1に係る医療用観察装置2では、X軸速度プロファイルPxは、X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を第1加速度で加速する速度プロファイルである。また、Y軸速度プロファイルPyは、Y軸モータ51の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を第1加速度よりも高い第2加速度で加速する速度プロファイルである。
このため、X,Y軸速度プロファイルPx,Pyを単純な速度プロファイルとし、X,Y軸モータ41,51の制御を容易に実行することができ、制御部241の処理負荷を軽減することができる。
【0069】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施の形態2では、上述した実施の形態1に対して、メモリ242に記録されたX,Y軸速度プロファイルが異なるのみである。
以下、本実施の形態2に係るX,Y軸速度プロファイルについて説明する。
【0070】
図9は、本実施の形態2に係るX,Y軸速度プロファイルPxA,Pyを示す図である。具体的に、
図9は、
図8に対応した図であり、X軸速度プロファイルPxAを一点鎖線で示し、Y軸速度プロファイルPyを二点鎖線で示している。
本実施の形態2に係るX,Y軸速度プロファイルPxA,Pyは、
図9に示すように、上述した実施の形態1と同様に、互いに異なるものとされている。
具体的に、本実施の形態2に係るX軸速度プロファイルPxAは、Y軸速度プロファイルPyでのY軸モータ51の駆動を開始するタイミングTy0(
図9)よりも遅れたタイミングTx0(
図9)でX軸モータ41の駆動を開始する速度プロファイルである。また、本実施の形態2に係るX,Y軸速度プロファイルPxA,Pyは、X,Y軸モータ41,51の駆動をそれぞれ開始してから、X,Y軸モータ41,51の回転速度がそれぞれ既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を同一の加速度でそれぞれ加速する速度プロファイルである。
【0071】
そして、本実施の形態2に係るX,Y軸速度プロファイルPxA,Pyは、以下に示すように導出される。なお、Y軸速度プロファイルPyについては、説明の便宜上、上述した実施の形態1で説明したY軸速度プロファイルPyと同一の速度プロファイルとする。
先ず、X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまで加速する加速度を上述した実施の形態1で説明したY軸速度プロファイルPyでの第2加速度とする。そして、
図9に示したA1,A7,A8,A9で囲まれる平行四辺形の領域が
図8に示したA3〜A6で囲まれる長方形の領域の面積と同一の面積となるように、X軸速度プロファイルPxAを導出する。
ここで、
図9に示したA9,A8,A3,A4で囲まれる台形の領域の面積と、
図8に示したA1〜A4で囲まれる台形の領域の面積とは同一である。すなわち、X軸速度プロファイルPxAに沿ってX軸モータ41を制御した場合には、可動部233は、可動部235の回転の開始と同時(Y軸モータ51の駆動を開始してから時間Tx後)に回転を開始することとなる。
【0072】
なお、本実施の形態2に係る制御方法は、上述した実施の形態1で説明した制御方法(
図7)に対して、ステップS4〜S6において、X,Y軸モータ41,51の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、
図9に示したX,Y軸速度プロファイルPxA,Pyに沿って当該回転速度を制御する点が異なるのみである。
【0073】
以上説明した本実施の形態2によれば、上述した実施の形態1と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態2に係るX軸速度プロファイルPxAは、Y軸速度プロファイルPyでのY軸モータ51の駆動を開始するタイミングTy0よりも遅れたタイミングTx0でX軸モータ41の駆動を開始する速度プロファイルである。また、本実施の形態2に係るX,Y軸速度プロファイルPxA,Pyは、X,Y軸モータ41,51の駆動をそれぞれ開始してから、X,Y軸モータ41,51の回転速度がそれぞれ既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を同一の加速度でそれぞれ加速する速度プロファイルである。
すなわち、X,Y軸モータ41,51を同一の加速度で回転させればよいため、X,Y軸モータ41,51の制御を容易に実行することができ、制御部241の処理負荷をさらに軽減することができる。
【0074】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施の形態3では、上述した実施の形態1に対して、メモリ242に記録されたX,Y軸速度プロファイルが異なるのみである。
以下、本実施の形態3に係るX,Y軸速度プロファイルについて説明する。
【0075】
図10は、本実施の形態3に係るX,Y軸速度プロファイルPxB,PyBを示す図である。具体的に、
図10は、
図8に対応した図であり、X軸速度プロファイルPxBを一点鎖線で示し、Y軸速度プロファイルPyBを二点鎖線で示している。
本実施の形態3に係るX,Y軸速度プロファイルPxB,PyBは、
図10に示すように、上述した実施の形態1と同様に、互いに異なるものとされている。
具体的に、本実施の形態3に係るX軸速度プロファイルPxBは、X軸モータ41の駆動を開始してから、X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を第3加速度で加速する速度プロファイルである。また、本実施の形態3に係るY軸速度プロファイルPyBは、Y軸モータ51の駆動を開始してから、Y軸モータ51の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を第3加速度よりも高い第4加速度で加速するとともに動作速度V1よりも高くする加速区間と、当該回転速度を動作速度V1まで減速する減速区間とを有する速度プロファイルである。
【0076】
そして、本実施の形態3に係るX,Y軸速度プロファイルPxB,PyBは、以下に示すように導出される。
先ず、X軸速度プロファイルPxBについては、X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまでに加速する加速度を上述した実施の形態1で説明したX軸速度プロファイルPxでの第1加速度よりも高い第3加速度にした速度プロファイルとする。
ここで、
図10に示したA1,A10〜A12で囲まれる台形の領域の面積と、
図8に示したA1〜A4で囲まれる台形の領域の面積とは同一である。すなわち、X軸速度プロファイルPxBに沿ってX軸モータ41を制御した場合には、可動部233は、X軸モータ41の駆動を開始してから、上述した実施の形態1で説明した時間Txよりも短い時間TxB後に回転を開始することとなる。
【0077】
また、Y軸モータ51の駆動を開始してから当該Y軸モータ51の回転を加速する加速度を第3加速度よりも高い第4加速度とする。そして、
図10に示したA1,A13,A10で囲まれる三角形の領域が
図8に示したA3〜A6で囲まれる長方形の領域の面積と同一の面積となるように、Y軸速度プロファイルPyBを導出する。
ここで、
図10に示したA1,A13,A10〜A12で囲まれる領域の面積と、
図8に示したA1,A2,A5,A6で囲まれる台形の領域の面積(A1,A7,A3,A4で囲まれる台形の領域の面積)とは同一である。すなわち、Y軸速度プロファイルPyBに沿ってY軸モータ51を制御した場合には、可動部235は、可動部233の回転の開始と同時(Y軸モータ51の駆動を開始してから時間TxB後)に回転を開始することとなる。
【0078】
なお、本実施の形態3に係る制御方法は、上述した実施の形態1で説明した制御方法(
図7)に対して、ステップS4〜S6において、X,Y軸モータ41,51の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、
図10に示したX,Y軸速度プロファイルPxB,PyBに沿って当該回転速度を制御する点が異なるのみである。
【0079】
以上説明した本実施の形態3によれば、上述した実施の形態1と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態3に係るX軸速度プロファイルPxBは、X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまでに加速する加速度を上述した実施の形態1で説明したX軸速度プロファイルPxでの第1加速度よりも高い第3加速度にした速度プロファイルである。また、本実施の形態3に係るY軸速度プロファイルPyBは、Y軸モータ51の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を第3加速度よりも高い第4加速度で加速するとともに動作速度V1よりも高くする加速区間と、当該回転速度を動作速度V1まで減速する減速区間とを有する速度プロファイルである。
このため、可動部233,235が同時に動き出す動き出し時間TxBを上述した実施の形態1での動き出し時間Txよりも短くすることができる。
【0080】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施の形態4では、上述した実施の形態1に対して、メモリ242に記録されたX,Y軸速度プロファイルが異なる。また、本実施の形態4に係るY軸モータ51は、ステッピングモータで構成されている。その他の構成は、上述した実施の形態1と同様である。
以下、本実施の形態4に係るX,Y軸速度プロファイルについて説明する。
【0081】
図11は、本実施の形態4に係るX,Y軸速度プロファイルPxC,PyCを示す図である。具体的に、
図11は、
図8に対応した図であり、X軸速度プロファイルPxCを一点鎖線を示し、Y軸速度プロファイルPyCを二点鎖線で示している。
本実施の形態4に係るX,Y軸速度プロファイルPxC,PyCは、
図11に示すように、上述した実施の形態1と同様に、互いに異なるものとされている。
具体的に、本実施の形態4に係るX軸速度プロファイルPxCは、X軸モータ41の駆動を開始してから、X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、当該回転速度を第5加速度で加速する速度プロファイルである。また、本実施の形態4に係るY軸速度プロファイルPyCは、Y軸モータ51の駆動を開始する時点での初速を既定の動作速度V1よりも高くした速度プロファイルである。
【0082】
そして、本実施の形態4に係るX,Y軸速度プロファイルPxC,PyCは、以下に示すように導出される。
先ず、X軸速度プロファイルPxCについては、X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまでに加速する加速度を上述した実施の形態3で説明したX軸速度プロファイルPxBでの第3加速度よりも高い第5加速度にした速度プロファイルとする。
ここで、
図11に示したA1,A14〜A16で囲まれる台形の領域の面積と、
図10に示したA1,A10〜A12で囲まれる台形の領域の面積とは同一である。すなわち、X軸速度プロファイルPxCに沿ってX軸モータ41を制御した場合には、可動部233は、X軸モータ41の駆動を開始してから、上述した実施の形態3で説明した時間TxBよりも短い時間TxC後に回転を開始することとなる。
【0083】
また、Y軸モータ51の駆動を開始する時点での初速を既定の動作速度V1よりも高くする。そして、
図11に示したA1,A17,A14で囲まれる三角形の領域が
図8に示したA3〜A6で囲まれる長方形の領域の面積と同一の面積となるように、Y軸速度プロファイルPyCを導出する。
ここで、
図11に示したA1,A17,A14〜16で囲まれる領域の面積と、
図8に示したA1,A2,A5,A6で囲まれる台形の領域の面積(A1,A7,A3,A4で囲まれる台形の領域の面積)とは同一である。すなわち、Y軸速度プロファイルPyCに沿ってY軸モータ51を制御した場合には、可動部235は、可動部233の回転の開始と同時(Y軸モータ51の駆動を開始してからTxC後)に回転を開始することとなる。
【0084】
なお、本実施の形態4に係る制御方法は、上述した実施の形態1で説明した制御方法(
図7)に対して、ステップS4〜S6において、X,Y軸モータ41,51の回転速度が既定の動作速度V1になるまで、
図11に示したX,Y軸速度プロファイルPxC,PyCに沿って当該回転速度を制御する点が異なるのみである。
【0085】
以上説明した本実施の形態4によれば、上述した実施の形態1と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態4に係るX軸速度プロファイルPxCは、X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V1になるまでに加速する加速度を上述した実施の形態3で説明したX軸速度プロファイルPxBでの第3加速度よりも高い第5加速度にした速度プロファイルである。また、本実施の形態5に係るY軸速度プロファイルPyCは、Y軸モータ51の駆動を開始する時点での初速を既定の動作速度V1よりも高くした速度プロファイルである。
このため、可動部233,235が同時に動き出す動き出し時間TxCを上述した実施の形態3での動き出し時間TxBよりも短くすることができる。
【0086】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態1〜4によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態1〜4では、支持部23にX,Y軸負荷付与機構6,7が設けられた構成としていたが、これに限られず、X,Y軸負荷付与機構6,7を省略した構成も本発明に含まれるものである。
【0087】
上述した実施の形態1〜4において、第2,第3関節部232B,232CやX,Y軸アクチュエータ4,5の配設位置は、上述した実施の形態1〜4で説明した配設位置に限られず、その他の位置に配設しても構わない。例えば、第2,第3関節部232B,232Cの配設位置を逆(
図1に示したX軸方向とY軸方向とを逆)にしても構わない。
また、上述した実施の形態1〜4では、本発明に係る第1,第2の回転軸(X,Y軸)を互いに直交する構成としていたが、これに限られず、互いに直交しない構成も本発明に含まれるものである。
【0088】
上述した実施の形態1〜4では、X,Y軸負荷付与機構6,7をOリングでそれぞれ構成していたが、これに限られず、可動部233(235)及び固定部234(236)間に摩擦による回転抵抗を付与する構成であれば、その他の構成を採用しても構わない。
【0089】
上述した実施の形態1〜4では、第1〜第5アーム部231A〜232Fと第1〜第6関節部232A〜232Fを構成する可動部及び固定部とを別体で構成していたが、これに限られない。例えば、当該可動部及び固定部の少なくともいずれか一方をアーム部で構成しても構わない。
【0090】
上述した実施の形態1〜4において、本発明に係るX,Y軸速度プロファイルとしては、上述した実施の形態1〜4で説明したX軸速度プロファイルPx,PxA〜PxC及びY軸速度プロファイルPy,PyB,PyCに限られず、その他の速度プロファイルとしても構わない。例えば、本発明に係るY軸速度プロファイルとしては、
図8〜
図11に示したX軸速度プロファイルPx,PxA〜PxCとの間で囲む領域が
図8に示したA3〜A6で囲まれる長方形の領域の面積と同一となれば、いずれの速度プロファイルとしても構わない。
【0091】
図12は、本実施の形態1〜4の変形例を示す図である。具体的に、
図12は、
図8〜
図11に対応した図であり、X軸速度プロファイルPxDを一点鎖線で示し、Y軸速度プロファイルPyDを二点鎖線で示している。
上述した実施の形態1〜4では、X,Y軸モータ41,51の動作速度を同一の動作速度V1としていたが、これに限られず、
図12に示すように、X軸モータ41の動作速度を動作速度V2とし、Y軸モータ51の動作速度を動作速度V3としても構わない。すなわち、X,Y軸に対して45°以外の角度で交差する斜め方向に撮像視野AVを移動可能に構成しても構わない。
ここで、X軸モータ41の駆動を開始し、当該X軸モータ41の回転速度が既定の動作速度V2になるまで、X軸速度プロファイルPxDに沿って当該回転速度を第6加速度で加速させた場合を想定する。
この際、可動部233は、X軸負荷付与機構6による回転抵抗の摩擦力、及びX軸動力伝達機構40の弾性変形により、X軸モータ41の駆動を開始してから時間TxD(
図12)後に回転を開始する。
そして、
図12に示したA1,A18,A19,A20で囲まれる台形の領域の面積は、可動部233が回転するまでのX軸モータ41の回転量であり、X軸動力伝達機構40の弾性変形量に対応する。
【0092】
また、Y軸モータ51の駆動を開始し、当該Y軸モータ51の回転速度が既定の動作速度V3になるまで、上述したX軸モータ41の場合と同様に、当該回転速度を第6加速度で加速させた場合(
図12の一点鎖線及び破線)を想定する。
この際、可動部235は、Y軸負荷付与機構7による回転抵抗の摩擦力(X軸負荷付与機構6による回転抵抗の摩擦力よりも強い摩擦力)、及びY軸動力伝達機構50の弾性変形により、Y軸モータ51の駆動を開始してから時間TxDよりも遅れた時間TyD(
図12)後に回転を開始する。
そして、
図12に示したA1,A21〜A23で囲まれる台形の領域の面積は、可動部235が回転するまでのY軸モータ51の回転量であり、Y軸動力伝達機構50の弾性変形量に対応する。
【0093】
以上のように、X,Y軸モータ41,51の回転速度を同一の速度プロファイルに沿って制御した場合には、実施の形態1〜4と同様に、可動部233,235が回転を開始する時間にずれが生じる。このため、フットスイッチ25に対してX軸及びY軸に対して45°以外の角度で交差する斜め方向への撮像視野AVの移動指示が行われた場合には、先ず、Y軸方向に沿って撮像視野AVが移動し、その後、当該移動指示に応じた斜め方向に撮像視野AVが移動することとなる。
したがって、本変形例においても、X,Y軸速度プロファイルPxD,PyDを互いに異なるものとすることが好ましい。
具体的に、X,Y軸速度プロファイルPxD,PyDは、以下に示すように導出される。なお、X軸速度プロファイルPxDについては、説明の便宜上、上述したX軸速度プロファイルPxDとする。
先ず、上述した時間TxD,TyDを実際に測定する。そして、
図12に示したA1,A24,A21で囲まれる三角形の領域が
図12に示したA20、A25,A22,A23で囲まれる長方形の領域の面積と同一の面積となるように、Y軸速度プロファイルPyDを導出する。
ここで、
図12に示したA1,A24,A25,A20で囲まれる台形の領域の面積と、
図12に示したA1,A21〜A23で囲まれる台形の領域の面積とは同一である。すなわち、Y軸速度プロファイルPyDに沿ってY軸モータ51を制御した場合には、可動部235は、可動部233の回転の開始と同時(Y軸モータ51の駆動を開始してから時間TxD後)に回転を開始することとなる。