【課題】本発明は、レーザビームの被加工物への煩雑な焦点位置の調整を行うことなく、しかも被加工物の微小領域の焦点合わせを容易に、かつ精度良く行うことができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【解決手段】被加工物にレーザビームが照射されることにより発生する加工音を予め検出する加工音検出手段を有し、前記加工音検出手段により得られた加工音の音強度の分布からピーク値を求める制御手段と、前記ピーク値に基づいて、レーザビームの前記被加工物への焦点位置を調整する焦点位置調整手段とを有することを特徴とするものである。
パルス状にレーザビームを出力するレーザ出力手段と、前記レーザビームを被加工物へ照射する照射手段と、前記照射手段と前記被加工物とをX軸、Y軸方向に相対的に移動させる第1の移動手段と、前記照射手段と前記被加工物とをZ軸方向に相対的に移動させる第2の移動手段を有するレーザ加工装置において、
前記被加工物にレーザビームが照射されることにより発生する加工音を予め検出する加工音検出手段を有し、前記加工音検出手段により得られた加工音の音強度の分布からピーク値を求める制御手段と、前記ピーク値に基づいて、レーザビームの前記被加工物への焦点位置を調整する焦点位置調整手段とを有することを特徴とするレーザ加工装置。
前記加工音検出手段は、前記照射手段を、基準位置からZ軸方向に所定距離だけ移動させる毎に、1パルス単位でレーザビームを被加工物に照射し、前記照射時に発生する加工音を各々検出することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
前記焦点位置の調整は、前記照射手段を、前記加工音のピーク値に対応するZ軸方向位置に移動させることにより行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工装置。
前記事前調整モードにおいて求められた前記加工音のピーク値を保存する記憶手段を備え、前記通常加工モード時においては、前記加工音検出手段により被加工物にレーザビームを照射する際に発生する加工音を順次検出し、前記検出された加工音と、前記記憶手段に保存された加工音のピーク値をその都度比較してその差分を求める制御手段を有し、
前記差分が所定以上となる場合は、操作者に前記焦点位置の再調整を促す警告を発する警告手段をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工装置。
前記加工音検出手段は、レーザビーム照射時における被加工物の加工部付近に、前記照射手段と一体的に取付けられ、前記照射手段とともにX軸、Y軸、Z軸方向に移動することを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来のレーザ加工装置では、レーザビームで被加工物を加工する場合、予め光学系による煩雑な焦点調整を行わなければならず、手間がかかり面倒であるという問題があった。また、焦点調整を行った後、何等かの原因で仮に光学系による位置ずれが生じると、再度調整を行わなければならず、その調整も上記と同様に面倒であった。
【0007】
本発明は、煩雑な焦点調整を行うことなく、しかも被加工物の微小領域の焦点合わせを容易に、かつ精度良く行うことができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、パルス状にレーザビームを出力するレーザ出力手段と、前記レーザビームを被加工物へ照射する照射手段と、前記照射手段と前記被加工物とをX軸、Y軸方向に相対的に移動させる第1の移動手段と、前記照射手段と前記被加工物とをZ軸方向に相対的に移動させる第2の移動手段を有するレーザ加工装置において、前記被加工物にレーザビームが照射されることにより発生する加工音を予め検出する加工音検出手段を有し、前記加工音検出手段により得られた加工音の音強度の分布からピーク値を求める制御手段と、前記ピーク値に基づいて、レーザビームの前記被加工物への焦点位置を調整する焦点位置調整手段とを有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記加工音検出手段は、前記照射手段を、基準位置からZ軸方向に所定距離だけ移動させる毎に、1パルス単位でレーザビームを被加工物に照射し、前記照射時に発生する加工音を各々検出することを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工装置において、
前記焦点位置の調整は、前記照射手段を、前記加工音のピーク値に対応するZ軸方向位置に移動させることにより行うことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3に記載のレーザ加工装置において、
前記加工音検出手段は、マイクロフォンから構成することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4に記載のレーザ加工装置において、
操作者がレーザ加工装置の動作モードを選択・設定可能なモード設定手段を備え、
前記動作モードは、事前調整モードと通常加工モードを有し、前記事前調整モードは、前記加工音の検出及び前記加工音の検出結果から求められたピーク値に基づく焦点位置の調整を行う動作モードであり、又、前記通常加工モードは、前記事前調整モードにより調整された焦点位置にて被加工物にレーザビームを照射する動作モードであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5に記載のレーザ加工装置において、前記事前調整モードにおいて求められた前記加工音のピーク値を保存する記憶手段を備え、前記通常加工モード時においては、前記加工音検出手段により被加工物にレーザビームを照射する際に発生する加工音を順次検出し、前記検出された加工音と、前記記憶手段に保存された加工音のピーク値をその都度比較してその差分を求める制御手段を有し、前記差分が所定以上となる場合は、操作者に前記焦点位置の再調整を促す警告を発する警告手段をさらに備えたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載のレーザ加工装置において、前記加工音検出手段は、レーザビーム照射時における被加工物の加工部付近に、前記照射手段と一体的に取付けられ、前記照射手段とともにX軸、Y軸、Z軸方向に移動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、煩雑な焦点調整を行うことなく、しかも被加工物の微小領域の焦点合わせを容易に、かつ精度良く行うことができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、被加工物に対するレーザビーム照射時の加工音を1パルス単位で詳細に測定し、それらの加工音の音強度の分布から精度良くピーク値を求めることができる。その結果、焦点合わせを精度良く行うことができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、焦点位置の調整は、照射手段を、加工音のピーク値に対応するZ軸方向位置に移動させることにより決まる為、事前調整が容易である。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、加工音検出手段としてマイクロフォンを用いることにより、被加工物から発生する加工音を容易に、かつ効率良く集音検出することができ又、比較的安価に構成することができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、操作者がレーザ加工装置の動作モードを選択・設定可能なモード設定手段を備えた為、被加工物の種類が変わった場合等、再調整が必要となった場合であっても、容易に対応可能である。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、焦点調整を行った後、何等かの原因で仮に光学系による位置ずれが生じた場合や、被加工物の種類が変わった場合等に、操作者に再度焦点位置調整を行わなければならないことを警告できる為、操作者に容易に再調整を促すことができる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、被加工物がX、Y上のどの位置においても、加工音のピーク値に基づき、レーザビームの被加工物への焦点位置を調整及び、再調整できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔レーザ加工装置の基本構成〕
以下、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の基本構成について説明する。
【0024】
図1において、本発明のレーザ加工装置1は、上位パソコン2の所定のプログラムソフトに従って、コンピュータ制御によって、シート状ワーク3にレーザ加工を施すことが可能である。詳しくは、前記上位パソコン2からの指令によりコントローラ20を介して、レーザ発振器30の作動、キャリッジ10とシート状ワーク3との三次元方向(X方向、Y方向、Z方向)への相対的な移動等を制御する。
【0025】
「被加工物」としてのシート状ワーク3は、シート状ワーク支持部40上に固定され、その上方には、レーザビーム31の「照射手段」としてのレーザノズル11を搭載したキャリッジ10が設置される。前記キャリッジ10と前記シート状ワーク3(シート状ワーク支持部40)とをX方向、Y方向に相対的に移動させる第1の移動手段86を備えることにより、シート状ワーク3の所定の位置にレーザ加工を施すことができる。前記第1の移動手段86は、後述するXドライブモータ(M1)22、Yドライブモータ(M2)23及び、X・Y方向移動手段84等により構成される。
【0026】
「レーザ出力手段」(レーザビーム31の照射源)としてのレーザ発振器30は、キャリッジ10のレーザノズル11に光学系(ミラー50、ミラー51)を介してレーザビーム31を供給する。前記レーザノズル11に供給されたレーザビーム31は、レーザノズル11内の焦点レンズ12(凸レンズ)により、いっそう集光され、シート状ワーク3に照射される。
【0027】
又、前記キャリッジ10と前記シート状ワーク3(シート状ワーク支持部40)とをZ方向に相対的に移動させる第2の移動手段87を備えることにより、レーザビーム31のシート状ワーク3への焦点位置を調整することができる。前記第2の移動手段87は、後述するZドライブモータ(M3)24及び、Z方向移動手段85等により構成される。本実施形態においては
図1に示すように、サーボモータ26に連結されたねじ軸28を回転させ、ねじ軸28に連結されたキャリッジ10をZ方向に昇降させる。前記サーボモータ26の軸に固定したエンコーダ27は、コントローラ20にキャリッジ10の位置信号をフィードバックする。
【0028】
(レーザ部の構成)
レーザ部は、レーザ発振器30と、レーザノズル11を搭載したキャリッジ10等により構成される。レーザ発振器30は、キャリッジ10の上方に設置されている。前記レーザ発振器30より照射されたパルス状のレーザビーム31が、
図1の一点鎖線で示すようにレーザ加工装置1上に設けたミラー50にて90°方向転換されて、レーザノズル11上方に設けてあるミラー51に入射するようになされている。前記ミラー51に入射したレーザビーム31は、更に90°方向転換されてレーザノズル11に入射し、レーザノズル11内の焦点レンズ12にて所定強度に絞られ、シート状ワーク支持部40上のシート状ワーク3に照射される。尚、前記レーザ発振器30は、RF励起方式のCO2レーザを用いる。
【0029】
(レーザ加工音検出手段)
本発明のレーザ加工装置1においては、
図1に示すように、レーザビーム31のシート状ワーク3への「焦点位置調整手段」として、前記第2の移動手段87とともにシート状ワーク3にレーザビーム31が照射されることにより発生する加工音を検出する加工音検出手段60を有する。前記加工音検出手段60は、例えば、マイクロフォン61から構成される。
【0030】
キャリッジ10には、マイクロフォン61が固定され、レーザ加工時の音がマイクロフォン61により幅広い周波数領域で検出される。前記マイクロフォン61は、レーザビーム照射時におけるシート状ワーク3の加工部付近に、前記キャリッジ10と一体的に取付けられ、前記照射手段とともにX軸、Y軸、Z軸方向に移動する。マイクロフォン61より出力されるアナログ信号はプリアンプ62に入力し、増幅される。増幅されたアナログ信号は、A/Dコンバータ63によってディジタル信号に変換され、コントローラ20に入力される。また、レーザ加工前にマイクロフォン61により検出される信号(作業現場のレーザ加工外の騒音検知信号)も、暗騒音のデータとして記憶手段(不図示)に記憶される。
【0031】
前記暗騒音と加工音との関係は、例えば、レーザ照射時の衝撃波の周波数は、約9KHzで、ファン等のノイズは約3KHzの為、周波数帯に差がある。従って、音響信号のピーク値を測定時においては、ノイズによる影響はほとんどない。念の為、ハイパスフィルターを通して、S/N比を上げるように構成してもよい。又、前記記憶手段に保存した暗騒音のデータを用いて、測定データから暗騒音分のデータを除去するように構成してもよい。
【0032】
尚、前記マイクロフォン61は、キャリッジ10と一体的に取付けられることなく、レーザビーム照射時におけるシート状ワーク3の加工部付近に別体として取付けられるように構成してもよい。その場合、加工音の検出時においては、常にX、Y方向の特定位置(マイクロフォン61の設置位置)にキャリッジ10を移動させる必要がある。
【0033】
〔レーザ加工装置の制御部〕
以下、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置の制御部について、
図2を参照して説明する。
【0034】
(制御手段)
図2は、コントローラ20の構成例(破線枠内)を含むレーザ加工装置全体のブロック図である。コントローラ20は、上位パソコン2からの指令に基づき、主に、レーザ発振器30からのレーザビーム31の照射タイミングの制御及び、キャリッジ10(レーザノズル11)とシート状ワーク3(シート状ワーク支持部40)の相対的な移動タイミング(X方向、Y方向、Z方向)を制御するものである。コントローラ20は、基準パルス生成手段80、分周回路81、照射タイミング制御手段82、移動タイミング制御手段83等により構成される。
【0035】
基準パルス生成手段80は、前記照射タイミングの制御及び、移動タイミングの制御に用いる為の共通の基準パルス信号を生成し、前記基準パルス信号は、基準パルス信号80a、80bとして、分周回路81及び、移動タイミング制御手段83にそれぞれ入力される。
【0036】
前記分周回路81に入力された基準パルス信号80aは、分周回路81にて分周比=1:10に分周後、照射タイミング制御手段82に入力され、さらにレーザ発振器30に出力される。尚、照射タイミング制御手段82は、不図示のスイッチ回路を備え、上位パソコン2からの制御指令に基づいて、連続加工と断続加工とを適宜切り替えて実行できるように、レーザ発振器30へのパルス信号の出力をオン/オフ制御することができる。
【0037】
前記移動タイミング制御手段83は、前記入力された基準パルス信号80bを移動タイミング制御信号83a、83b、83cとして、それぞれXドライブモータ(M1)22、Yドライブモータ(M2)23、Zドライブモータ(M3)24に出力する。尚、前記移動タイミング制御手段83は、不図示のスイッチ回路を備え、上位パソコン2からの制御指令に基づいて、前記Xドライブモータ22、Yドライブモータ23、Zドライブモータ24へのパルス信号の出力をそれぞれオン/オフ制御する。
【0038】
その結果、前記Xドライブモータ22、Yドライブモータ23への制御出力は、X・Y方向移動手段84を介して、シート状ワーク支持部40のX方向への移動/停止、シート状ワーク支持部40のY方向への移動/停止を実行し、又、Zドライブモータ24への制御出力は、Z方向移動手段85を介して、キャリッジ10のZ方向への移動/停止をそれぞれ適宜切り替えて実行できるように構成されている。
【0039】
上記構成によれば、前記共通の基準パルス信号に基づき、照射手段と被加工物との相対的移動に同期させてレーザビームを被加工物へ照射するように構成したので、簡易で安価な構成により、加工寸法のバラツキを抑え又、変色・変形・変質等のない高品質な加工を実現することができる。
【0040】
又、照射タイミング制御手段82によるシート状ワーク3へのレーザビームを照射するタイミングは、前記基準パルス信号80aを所定の比率で分周した周期に同期させることにより、簡易な方法で照射タイミングを制御することが可能である。
【0041】
前記Xドライブモータ22、Yドライブモータ23は、ステッピングモータを用いることが好ましい。ステッピングモータは、入力パルスに同期して正確に回転する為、回転量の検出が必要なく(エンコーダの設置は不要である)、高精度な位置決めが可能である。したがって、簡易で安価な構成により、加工寸法のバラツキを抑え又、変色・変形・変質等のない高品質な加工を実現することができる。本発明においては、前記Xドライブモータ22、Yドライブモータ23は、ステッピングモータだけに限定されず、サーボモータ等も使用可能である。
【0042】
〔シート状ワークのレーザ加工方法〕
次に、上述した前記レーザ加工装置1を用いて、シート状ワーク3にレーザビーム31を照射してレーザ加工する方法について説明する。
【0043】
(レーザ加工装置の動作モード)
本実施形態におけるレーザ加工装置の動作モードは、例えば、操作者が操作パネル等により動作モードを選択・設定可能なモード設定手段(不図示)を備え、前記動作モードは、事前調整モードと通常加工モードを有し、前記事前調整モードは、事前調整用のシート状ワーク3へのレーザビーム照射時における加工音の検出及び前記加工音の検出結果から求められたピーク値に基づく焦点位置の調整を行う動作モードであり、又、前記通常加工モードは、前記事前調整モードにより調整された焦点位置にて通常加工用(製品加工用)のシート状ワーク3にレーザビーム31を照射して加工する動作モードである。
【0044】
前記構成によれば、操作者がレーザ加工装置の動作モードを選択・設定可能なモード設定手段を備えた為、被加工物の種類が変わった場合等、再調整が必要となった場合であっても、容易に対応可能である。
【0045】
(事前調整モード)
次に、前記事前調整モードについて、
図1に基づき説明する。事前調整モードは、後に実施する通常加工モードと同種の事前調整用のシート状ワーク3を用い、先ず、被加工物にパルス状のレーザビームが照射されることにより発生する加工音を加工音検出手段60により検出し、前記加工音検出手段60により得られた加工音の音強度の分布からピーク値を求める。次に、前記ピーク値に基づいて、レーザビームの前記被加工物への焦点位置を調整する。
【0046】
前記構成によれば、煩雑な焦点調整を行うことなく、しかも被加工物の微小領域の焦点合わせを容易に、かつ精度良く行うことができる。又、前記焦点位置の調整は、照射手段を、加工音のピーク値に対応するZ軸方向位置に移動させることにより決まる為、事前調整が容易である。
【0047】
詳細には、シート状ワーク支持部40上に載置したシート状ワーク3のレーザビーム照射時における加工部付近に設置されたマイクロフォン61によりレーザ照射でシート状ワーク3から発生される加工音(破裂音)を検出する。次に、マイクロフォン61より出力されるアナログ信号はプリアンプ62に入力し、増幅される。増幅されたアナログ信号は、A/Dコンバータ63によってディジタル信号に変換され、コントローラ20に入力され、検出した加工音の音強度の分布が解析される。
【0048】
前記加工音の音強度の分布の測定にあたっては、キャリッジ10を、基準位置からZ軸方向に所定距離だけ移動させる毎に、レーザビーム31を1パルス単位でシート状ワーク3に照射し、前記レーザビーム照射時に発生する加工音を順次検出し、記憶手段(不図示)に保存していく。
【0049】
前記構成によれば、被加工物に対するレーザビーム31照射時の加工音を1パルス単位で詳細に測定し、それらの加工音の音強度の分布から精度良くピーク値を求めることができる。その結果、焦点位置を精度良く調整することができる。
【0050】
図3は、前記順次検出された加工音についての音強度の分布図であって、キャリッジ10の移動距離(1/10mm)と検出された加工音の音強度(マイクアンプ出力Vp−p)との関係を示す関係図である。前記関係図は、被加工物としてのコート紙(t=0.4mm)にパルス状のレーザビーム31を照射(1パルスにおけるパルス幅=60μsec)した場合におけるフォーカス距離(キャリッジ10の移動距離)と、マイクロフォン61からのプリアンプ62出力との関係(測定結果5回の平均値)をプロットしたものである。 横軸は、1/10mm単位でのキャリッジ10の移動距離を示している。
前記キャリッジ10の移動開始位置としての基準位置(横軸上の0mm位置)は、前記関係図におけるピーク値を求めることができさえすれば、どの位置を基準位置として加工音の測定を開始してもよく、加工音のピーク値に対応するZ軸方向位置が特定できればよい。前記基準位置からZ方向に順次所定距離だけ上昇又は、下降させる毎に距離を加算していく。尚、前記マイクロフォン61は、コート紙から30mmの位置に取付けられている。
【0051】
又、
図4は、
図3の音強度の分布図の内、「A点」、「B点」、「C点」におけるシート状ワーク3のレーザ加工後の加工穴の状態を示す模式図である。尚、
図3において、「B点」は加工音の音強度のピーク値を示している。
図4において、×印はレーザ加工の中心位置73、実線はレーザ加工時の加工ライン71、破線はレーザ加工ラインの理想範囲72(想像円)を示している。
【0052】
図3おける「A点」、「B点」、「C点」の加工音の音強度と、それに対応する
図4における「A点」、「B点」、「C点」の模式図を比較すると、
図3おける音強度のピーク位置である「B点」が、
図4(B点)において最も理想範囲72に近い加工穴の状態となっていることがわかる。その他の「A点」、「C点」においては、加工ライン71が理想範囲72より過剰に広がっていることがわかる。したがって、レーザビーム31の前記被加工物への焦点位置の調整は、前記キャリッジ10を、前記加工音のピーク値「B点」に対応するZ軸方向位置に移動させることにより行うことが、最も理想的な加工状態となる。
【0053】
そして、コントローラ20は、検出した加工音の音強度分布(加工音のピーク値)に基づいて、第2の移動手段87によりキャリッジ10をZ方向に昇降させることによりレーザビーム31のシート状ワーク3への焦点位置を調整する。尚、キャリッジ10のZ方向の位置情報は、前記サーボモータ26の軸に固定したエンコーダ27を用い、コントローラ20にキャリッジ10の位置信号をフィードバックすることにより認識することができる。
【0054】
以上のように、事前調整モードにおいては、先ず、シート状ワーク3にレーザビーム31が照射されることにより発生する加工音を予め加工音検出手段60により検出し、前記加工音検出手段60により得られた加工音の音強度の分布からピーク値を求める。次に、前記ピーク値に基づいて、レーザビーム31の前記シート状ワーク3への焦点位置を調整する。このため、検出した音強度分布の音強度のピーク位置にキャリッジ10を移動させるだけで調整することができるので、従来のような加工光学系による煩雑な焦点調整を行うことなく、微小領域の焦点合わせを容易に、かつ精度良く行うことができる。
【0055】
本実施例は、被加工物(シート状ワーク3)から発生される加工音(破裂音)を検出できるようにマイクロフォン61から構成する加工音検出手段60を備えるため、マイクロフォン61により被加工物から発生する加工音を容易に、かつ効率良く集音検出することができるうえ、マイクロフォン61により比較的安価なシステムを構成することができる。
【0056】
被加工物の種類(特に、厚さ)が変わる場合は、再度、加工音の音強度のピーク値に基づき焦点距離を合わす必要がある。
図5に示すように、被加工物の種類により音強度の分布が異なる。
【0057】
図5は、被加工物の種類として、コート紙(t=0.4mm)、板紙(t=0.6mm)の2種類について、
図3と同様に、キャリッジ10のZ方向への移動に伴い、順次検出された加工音についての音強度の分布図であって、キャリッジ10の移動距離(1/10mm)と前記検出された加工音の音強度(マイクアンプ出力Vp−p)との関係を示す関係図である。尚、コート紙(t=0.4mm)に照射するパルス状のレーザビーム31は、1パルス当たりのパルス幅は60μsecであり、板紙(t=0.6mm)に照射するパルス状のレーザビーム31は、1パルス当たりのパルス幅は100μsecである。
前記関係図において、板紙については、キャリッジ10が基準位置から0.6mm下降した位置である「D点」が加工音の音強度のピーク値を示しており又、コート紙については、キャリッジ10が基準位置から1.6mm下降した位置である「E点」が加工音の音強度のピーク値を示している。すなわち、被加工物の種類により調整するべき両者の焦点位置が異なることを示している。加工音の音強度のピーク値により焦点位置を調整する場合は、被加工物の種類(厚さ等)に関わらずベストなポジションとなるように設定される。
【0058】
前記被加工物の種類として、例えば、ある一定以上厚さが薄い薄紙を用いる場合は、照射するエネルギーに対して貫通に必要なエネルギーが僅かで良いため、薄紙に対するベストフォーカス点の範囲が広くなってピークが出なくなることもあり得る。この場合、照射時間を短くしてパワーを下げる等の調整を行えば良い。尚、厚紙の場合は、照射するエネルギーと貫通に必要なエネルギーの関係にあまり余裕度がない為、距離と音との関係の特性でピークが顕著に出やすい。
【0059】
(通常加工モード)
次に、前記通常加工モードについて、
図1に基づき説明する。通常加工モードは、前述の事前調整モードにより調整された焦点位置にて、事前調整モードで用いたものと同種の通常加工用(製品加工用)のシート状ワーク3にレーザビーム31を照射して加工する動作モードである。
【0060】
前記シート状ワーク支持部40に固定されたシート状ワーク3の上方にはレーザ発振器
30が配置される。そして、前記レーザ発振器30より照射されたパルス状のレーザビーム31は、ミラー50、51で反射し、焦点レンズ12で集光されて、シート状ワーク3の所定箇所に照射される。それと共に、製品形状に基づき、シート状ワーク3とキャリッジ10(レーザノズル11)を第1の移動手段86により二次元方向(X、Y方向)に相対移動させることにより、複数の孔を連続して備えた
図6に示すような加工ラインを形成する。尚、前記レーザ発振器30は、RF励起方式のCO2レーザを用いる。
【0061】
このとき、シート状ワーク3の相対移動速度V1が一定となるように制御し、さらに、シート状ワーク3の表面上で各照射スポットSpが一定のピッチP1で並ぶようにパルス状のレーザビームを照射することにより、均一な加工が可能である。
【0062】
図7は、シート状ワーク3の表面上で2つの照射スポットSp1、Sp2が、一定のピッチPにて、一定のオーバーラップ率で並ぶようにパルス状のレーザビームが照射される状態を示す図である。前記基準パルス信号80aを分周回路81にて分周した周波数の分周比率は、使用するレーザの照射スポット半径(r)に対する照射スポットの配列ピッチ(P)の比率が50から150%の範囲内に設定される。前記構成によれば、パルスレーザにおける照射スポットの加工送り方向のオーバーラップ率が一定範囲内に規制される為、加工部位の変色等を防ぐことができる。
【0063】
前記各照射スポットSpに対応するCO2レーザ発振器30により発振されるレーザビーム31の出力波形は、
図8に示すような波形をなす。RF励起方式では、
図8の出力波形において定格出力からピーク出力の間のレーザの出力パワーを用いるのが通常である。
又、照射時間は、被加工物に対して極力熱ストレスを与えないで最大となるエネルギーで、
図8の最大パルス照射時間内に抑えることが好ましい。
【0065】
事前調整モードにおいて求められた加工音のピーク値を保存する記憶手段を備え、通常加工モード時においては、加工音検出手段60により被加工物にレーザビーム31を照射する際に発生する加工音を順次検出し、前記検出された加工音と、前記記憶手段に保存された加工音のピーク値をその都度比較してその差分を求める制御手段を有し、前記差分が所定以上となる場合は、操作者に前記焦点位置の再調整を促す警告を発する警告手段をさらに備えるように構成してもよい。
【0066】
前記構成によれば、焦点調整を行った後、何等かの原因で仮に光学系による位置ずれが生じた場合や、被加工物の種類が変わった場合等に、操作者に再度焦点位置調整を行わなければならないことを警告できる為、操作者に容易に再調整を促すことができる。
この場合、マイクロフォン61は、レーザビーム31照射時における被加工物の加工部付近に、前記照射手段と一体的に取付けられ、前記照射手段とともにX軸、Y軸、Z軸方向に移動するように構成される。前記構成によれば、被加工物がX、Y上のどの位置においても、加工音のピーク値に基づき、レーザビームの被加工物への焦点位置を調整及び、再調整できる。
【0067】
又、上記実施形態では、レーザビーム31の照射手段と被加工物とを相対的に(X、Y方向に)移動させる相対移動機構として、照射手段を固定し、被加工物を互いに直交するX方向及びY方向に移動させる場合について説明したが、本発明はこの形態に限られるものではなく、照射手段及び被加工物の両方を移動させる場合や、被加工物を固定してセットし、照射手段をX方向及びY方向に移動させる場合にも適用できるものである。