【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を実現するために、本発明は、請求項1の特徴を有する方法を構成する。有用な改良は、従属請求項で与えられる。すべての請求項の表現は、参照によって本記述内に援用される。
【0010】
本方法において、保護層は、金属及び/又はセラミック粒子が分散される、部分的に又は完全に揮発性のキャリア液を含有するコーティング液を用いて生成される。コーティング液は、少なくともレーザ機械加工を対象とした機械加工エリアがコーティング液の層によりカバーされるというような方式でワークピースの表面に対して塗布される。コーティング液は、表面に対して直接又は直ちに塗布されてもよいし、又は間に配置された中間層と共に間接的に塗布されてもよい。
【0011】
その後、塗布されるコーティング層は、塗布されるコーティング液の粒子とから実質的に構成される、又はこれらの粒子とコーティング液に比べて低減されたキャリア液の含有量若しくはキャリア液の残量とから実質的に構成される、保護層を形成するような方式で、キャリア液の含有量を低減するために乾燥させられる。機械加工エリアは、その後、ワークピース上に保護層を通じて照射される(少なくとも)1つのレーザビームによって機械加工される。
【0012】
コーティング液は、液体分散媒(liquid dispersion medium)(キャリア液)及び固体の分散粒子を含有する流動性分散液として記述することができる。コーティング液は、その粘度が特定の塗布に応じて多様に選択することができる流動性物質である。この場合、水又はアルコールの粘度と同様の粘度を有するインクタイプの薄い液体コーティング液が、粘着性のコーティング液(例えば、ラッカー、蜂蜜、クリーム、又はペーストの粘度を有する液体)と同様にまさに適している。本方法において、キャリア液は、表面上の粒子の所望の分布を可能にするために、表面に対するコーティング液のポジティブロッキング塗布(positive-locking application)又はトポグラフィ適合塗布(topography-adapted application)における補助的薬剤として実質的に役割を果たす。
【0013】
キャリア液は、塗布される層の後続の乾燥(完了しているか部分的な乾燥)を容易にするために、ある程度、易揮発性であるべきである。キャリア液は、揮発性成分が室温又は微熱にて既に蒸発することができるように選択されることができ、その結果、乾燥フェーズの間に、コーティングにおけるキャリア液の含有量が低減されるか、又は、層内の粒子含有量が増加する。層の塗布の後にキャリア液の蒸発を容易にするために、キャリア液は、可能な限り、非重合性又は低重合性及び非硬化性又は実質的に非硬化性であるべきである。これは、レーザ機械加工の完了後に、可能性の高い所望の後続の層の剥離を容易にする。
【0014】
キャリア液は、オプションとして他の物質の不純物を伴う、単一成分のキャリア液、即ち1つの個別の液体成分から実質的に構成されるキャリア液でも良い。また、2つ以上の成分から構成されることも、即ち、多成分のキャリア液であることも、キャリア液にとって可能である。例えば、成分の1つは、アルコール系成分、アセトンなどのケトン、又はアセテートなどの比較的易揮発性の成分とすることができる。別の成分は、弱易揮発性又は不揮発性であってもよいし、粒子の結合を促進する保護層内に少なくとも部分的にオプションとして存続してもよい。
【0015】
層は、オプションとして、特別の乾燥を促進する方策を用いずに自動的に乾燥してもよい。また、例えば加熱及び/又は送風によって乾燥ステップを積極的に促進することも可能である。このようにして、キャリア液の揮発性成分の蒸発を促進することができる。
【0016】
乾燥ステップの間に、コーティング液の粘度を最初は本質的には保持しても良い塗布される層は、(揮発性)キャリア液の含有量を低減するために乾燥させられる。乾燥ステップによって、部分的に乾燥した、又は充分に乾燥した、保護層を生成することができる。部分的に乾燥した保護層は、まだ湿っている可能性もあり、少なくともいくつかのエリアにおいて、キャリア液の一部をまだ含有している可能性もあるが、その流動性は、それが表面に充分に付着する程度に低減させる。長時間乾燥の場合、保護層は、完全に乾燥することができ、その結果、キャリア液の揮発性成分は、実質的には保護層内に残存しない。
【0017】
他の目的の中で、乾燥ステップは、表面から保護層を剥離することなく、部分的に乾燥又は完全に乾燥した保護層と共に、必要であればワークピースを水平面から傾けることを可能にするように意図される。保護層は、概して、保護層にその効果を失わせることなく、レーザ機械加工の間にレーザアブレーションの部位をターゲットとする強力な空気の流れに晒すことができるように、更に充分に乾燥されるべきである。
【0018】
材料を除去するレーザアブレーションのために、機械加工エリアは、その後、ワークピース上で部分的に乾燥又は完全に乾燥した保護層を通じて照射されるレーザビームによって機械加工される。より好ましくは、これは、例えば極短パルスレーザにより生成されるパルスレーザビームにすることができる。
【0019】
本方法によって、例えば、わずかに突出する導体経路があることがある、滑らかで且つ完全には滑らかではない両表面は、合致した方式であり且つポジティブなロッキング方式でコーティングされることができる。
【0020】
コーティング液の合成又は配合は、特定の塗布の条件に対して広範囲にわたって調整することができる。多くの実施形態において、キャリア液内に分散された粒子が主に10μmの最大粒径を有するコーティング液が用いられる。これに関連して、用語「主に(predominantly)」は、とりわけ、粒子の少なくとも70%又は少なくとも80%が比較的小サイズのこれを有するはずである、ということを意味する。より好ましくは、平均粒径は、1桁のマイクロメートルの範囲内又はそれ以下であってもよい。粒子のいくつか又はすべては、1未満μmの平均粒径を有してもよい。粒子は、スケール状、又は、フレーク状(フレーク)即ち、その外径がそれらの高さよりも遥かに大きいフラットな粒子、であってもよい。例えば、径は、最大10μmにすることができ、その一方で、高さは、高い頻度で1μmより遥かに小さいか又は数百ナノメートルの範囲内にすることができる。通例、粒子の形態及び/又は形状に応じた一定の分布が、提供され、部分的に乾燥又は完全に乾燥した保護層内に比較的高密度のマイクロ多孔質又はナノ多孔質構造を実現するためにも有用である。
【0021】
コーティング液の組成は、部分的に乾燥又は完全に乾燥された仕上がった保護層内の粒子の充填比が保護層の量の50%を顕著に上回るように選択することができる。本明細書で用いられる用語「充填比(filling ratio)」は、観察された単位体積に対する保護層の単位体積における粒子の全容積の比を指す。例えば、充填比は、60%以上又は更に少なくとも70%である。多くの銀インクにおいて、銀粒子は、例えば、コロイドの長さスケール(colloidal length scale)で、略20nmから略2nmの寸法範囲内にある。このようなコロイドコーティング液において、更なる高充填比(例えば90%まで)を実現することもできる。通例、保護層は残留気孔を有する。更に、キャリア液の残留物が保護層内に存在するかもしれず、そのため、粒子の充填比は、通常90%未満である。
【0022】
粒子の材料を特定の塗布に適応させることもできる。多くの塗布において、金属粒子から主に(例えば少なくとも80%若しくは少なくとも90%に)構成される又は排他的に構成されるコーティング液が用いられると有用である。コーティング液における金属粒子の使用において、高熱伝導率の保護層が、オプションとして生成されることができ、該保護層は、概して熱管理上の又はレーザビームによって直接影響を受けるエリアからの熱放出上の有益な効果がある。更に、金属は、典型的には、比較的高いアブレーション閾値を有しており、その結果、金属粒子を装備する保護層は、例えばエッジの丸まりに対する長期間のレーザ照射下でさえも、長期間の間、有効なままである。金属粒子は、コーティングされていなくてもよいし、又は薄い酸化層又はセラミックス層などの層を載せてもよい。(コーティングされている又はコーティングされていない)金属粒子とセラミック粒子は、キャリア液と混合されてもよいし、又はそこから生成された保護層内で混合されてもよい。セラミックは、高い頻度で、金属よりも更に高いアブレーション閾値を有するので、レーザ照射下での保護層の耐性を、(代替的に又は金属粒子に加えて)セラミック粒子を使用することによって、必要に応じて更に向上することができる。
【0023】
例えば、方法との関連で、銀、金、アルミニウム、銅、ニッケル及び/又は別の金属をコーティングされている若しくはコーティングされていない粒子を持つ、及びオプションとして(若しくは付加的に)セラミック粒子を含有する、多くの市販の金属インク若しくは金属ラッカーが、コーティング液として用いられる。
【0024】
多くの実施形態において、導電性ラッカーは、コーティング液として用いられる。用語「導電性ラッカー(conductive lacquer)」は、主として電子素子において通常用いられる導電性ラッカーを指す。導電性は、ラッカーマトリクスにおける非常に高い含有量(80%以上まで)の導電性フィラー材料によって生成される。個々の粒子は、互いに接触し、それにより電流の流れを可能にする。例えば、銀(銀の導電性ラッカー又は導電性の銀)、銅(銅の導電性ラッカー)及びグラファイトの粒子(グラファイトの導電性ラッカー)系の導電性のラッカーがある。バインダー成分は、単一成分の溶剤含有ラッカー又は合成樹脂(単一成分又は二成分)とすることができる。
【0025】
本発明の一部の態様は、従って、特にこの出願において述べられる方法における保護層を生成するコーティング液として、他の目的のために通常用いられる、金属粒子を含有する導電性ラッカー、とりわけ導電性の銀、のための新規の有用な使用に関わる。
【0026】
本方法によって、高度に有効で且つ多機能の保護層を生成することができる。この場合、比較的薄い有効な層(effective layer)の厚みは、上記の課題を解消又は防止するのに充分になり得る。用語「有効な保護層の厚み(effective protective layer thickness)」は、これに関連して、レーザ機械加工の間の、即ち、層が少なくとも部分的に乾燥していて、表面に対して比較的確実に付着する場合の、保護層の層厚を指す。
【0027】
ガウスの照射プロファイルの想定に基づいて、可能な限り平滑なフランクが丸まりを伴わずにワークピース内に生成されるように、有効層の厚みを充分に厚くするべきである。重要な基準は、有効なレーザビームを向上させるということを意図した作用である。この場合、更に、限られた時間内にレーザビームがワークピース表面にまで浸透するように、保護層を充分に薄くするべきである。多くの実施形態において、保護層は、50μm未満の有効な保護層の厚みで生成される。現在の発見によれば、5μmから50μmの範囲内の有効な保護層の厚みは、有用になる多くの実用的なケースにおいて出現する。とりわけ、エッジの丸まりが機械加工されたワークピースのエリア内に伸長するということが、顕著に薄い有効な保護層の厚みの場合に生じるかもしれない。非常に厚い層厚は、高い頻度で無用であるように見え、主として、対応する付加価値を伴わずにコーティング液の多大な材料消費に結びつくことになる。
【0028】
但し、例えば非常に不利な照射プロファイルM
2>2、即ち、ドーナツ状のビーム断面、による400Wのレーザのために、非常に厚い層が必要であることは全体的に可能的である。従って、最適な有効層の厚みは、また、例えば50μmから200μm以上の範囲内の50μm以上、例えば1mm又は2mmであってもよい。
【0029】
概して、レーザ機械加工の完了の後に、保護層が表面上に残存することになるのは可能的である。例えば、これは微構造の診断(microstructural diagnosis)のためのレーザ系の試料調製(laser-based sample preparations)のケースになり得る。但し、保護層は、その後、例えば、5μmから10μmの範囲内の有効層の厚みと共に、可能な程度にまで比較的薄くするべきである。但し、多くのケースにおいて、保護層は、レーザ機械加工の完了の後に、表面から取り除かれる。このようにして、保護層上に残存する付着物(残骸)は、前記保護層と共に作業部(workplace)の表面から取り除くことができる。
【0030】
本方法の好ましい変形例の主な有利性は、必要に応じて、作業部を保全して残留物を残さないようにしながら、多大の労力を伴わずにワークピースから保護層を剥離するか又は取り除くことができるということである。この場合、オプションとして保護層内の残りの多成分のキャリア液の成分を溶解する溶剤が、保護層を取り除くために、好ましくは用いられる。保護層を機械力に対して晒す必要がないので、保護層のこの湿式の化学的除去は、概して、周囲温度にて行なうことができ、ワークピースを保全する。
【0031】
但し、湿式の化学溶剤の代替えとして、局所的に塗布されるCO
2ビーム(時として「スノージェット("snow jet)」とも称される)もまた、保護層を剥離するために用いることができる。この場合、(液体)CO
2は、圧縮空気によって超音波の速度まで加速されて、ノズルから放出される際に減圧されて、サンプル上に方向づけられる。このビームが保護層上に衝突する場合、前記層は、迅速に冷却し、その結果として脆くなる。表面上の衝突量の増加(600倍)と共にCO
2スノーが蒸発するので、粒子コーティング剤は、概して、実質的には残留物を残さずに表面から吹き飛ばされる。この状況は、CO
2がバインダー又はスタビライザとして層の配合物(layer formulation)内に存在するかもしれない有機化合物の強溶剤であるので、更に促進されることができる。
【0032】
保護層は、概して、塗布工程(コーティング液の塗布、部分的乾燥又は完全乾燥)のために、ギャップを伴わないポジティブロッキング及び平面的な方式で表面に対して付着するが、表面に対する保護層のバインディングは、概して、あまり強力ではない。この理由のために、多くの場合において、全体としてそれ自身強く接合される保護層を容易に剥離することが可能である。保護層は、また、個々の粒子(例えば「フレーク」など)がキャリア液の不揮発性残留物によって互いに直接接触することを防止するような方式で構成されることができる。このため、粒子間のバインディングは、確実な保護層を実現するためには恣意的に強力である必要はない。このような保護層は、例えば、粒子間の有機成分が溶解されるので、湿式化学的手段によって又は別の溶剤塗布によって容易に溶解されることができる。
【0033】
上記のように、保護層は、部分的のみの乾燥形態(状況に応じて湿った形態)及び完全な乾燥形態の両方に存在するかもしれない。保護層の剥離性の後続の容易さに関して、保護層がキャリア液の量をなお含有する時間窓の範囲内で塗布層の乾燥フェーズの間にレーザ機械加工が行なわれる方法の変形例は、有用かもしれない。完全には乾燥されずに湿ったこのような層は、概して、例えば残留物を残さない湿式化学的手法によって、ワークピース表面から比較的容易に取り除かれることができる。
【0034】
ワークピース表面全体にわたってコーティングを施し、レーザビームによって続いて機械加工されるワークピース表面のエリアを保護層によってカバーすることが可能である。例えば、完全な表面及び構造の塗布は、スクリーン印刷、ドクタリング、高圧噴霧、スピンコーティング、浸漬コーティング、パッド転写、又は同種のものによって実行することができる。
【0035】
但し、本方法は、また機械加工エリアを備えるコーティングエリアにのみ局所的に限られた方式で表面に対してコーティング液を塗布するコーティング液の塗布の可能性を提供する。例えば、コーティングエリアは、円形か、楕円形、又は略多角形若しくはストリップの形式で構成されることができる。それは、機械加工部位の辺りで対称的又は非対称的に分散して位置してもよい。この局所的塗布は、コーティングエリアの外部、表面がコーティングされていないか又は保護層がないままである、ということを意味する。コーティングエリアのその後の展開に関して、アブレーションの生成物(残骸粒子)の最大飛行半径のみを確実にカバーするために表面を清潔に維持するのに充分である、ということは注目され得る。発明者らの経験では、アブレーション粒子が、不利な環境下でさえも数百マイクロメートル又は数ミリメートルの距離を飛ぶことができる一方で、エッジの丸まりにとって及び熱管理に関して重要であるこれらの効果は、それぞれの機械加工部位の辺りの数マイクロメートルの範囲内に横方向に及ぼす。これらの条件に関して、例えば、コーティングエリアは、非常に大きくなり得るので、機械加工構造の辺りの2mmから5mmの最大範囲及び状況に応じて更に大きな範囲をカバーする。コーティング液又は保護層が局所的に限られた方式でのみ塗布されると、コーティング液は、相当な程度まで可能に節約することができ、その節約は、方法のコスト並びに速度及び環境の見地からの両方に関して有用である。
【0036】
定義された方式で保護層が局所的に塗布されることになる場合、容積方法(volumetric methods)は、とりわけ、コーティング液の塗布、例えば投与バルブ(ジェットバルブ若しくはピストン及びスピンドルバルブなど)を用いるか又は噴霧バルブを用いるもの、に適しているように見える。オプションとして、連続的なインクジェット(ドロップオンデマンド)方法によって、コーティング液の個々の滴下は、静電気デフレクターによってターゲットエリア(コーティングエリア)に対してターゲット方式で塗布されてもよい。代替的に、対応するコーティング液配合物を用いるスプレー又はグラビア印刷が実行されてもよく、状況に応じて、特定エリア(コーティングエリア)に対するマスクによって層が制限される。
【0037】
多くのケースにおいて、コーティング液は、ワークピースの表面に対して直接塗布され、その結果、仕上がった保護層は、ワークピースに対して直接付着する。但し、表面に対して中間層を塗布し、次に中間層に対してコーティング液を塗布することもまた、コーティング液の塗布の前に可能である。このようにして、保護層は、多層(とりわけ、二重の層の保護層系)の一部になる。例えば、中間層は接着促進層としての役割を果たしてもよい。代替的に又は付加的に、可能的な程度に、保護層及び前記保護層を載せる中間層の残留物がない除去を、レーザ機械加工の完了後に実行することができるように、中間層の材料もまた選択することができる。
【0038】
本方法によって、レーザ微細機械加工の品質は、多機能の保護層を用いることによって、1つ以上の目的に関して最適化されることができる。保護層の作用は、少なくとも3つの部分からなるかもしれない。第1に、機械加工の後にいかなる残留物も残さずに取り除くことができるコーティング剤を用いることによって、残骸が機械加工部位のエリア内に付着することを、かなり効果的に防止することができる。第2に、充分に厚い保護層を塗布することによって、エッジの丸まりを保護層内にシフトすることができ、その結果として、非常に純粋で「バリのない」フランクを持つワークピースが可能である。第3に、保護層は、改善された放熱性によって、例えば、レーザ機械加工の直近付近における熱管理を助成することができる。これは、表面近くに配置されたワークピースの敏感な面を、レーザ機械加工に伴うエッジのすぐ近接の熱発生による損傷から効果的に保護することを可能的にする。
【0039】
本発明の更なる有利性及び態様は、図を参照して以下に説明される、特許請求の範囲及び本発明の以下の好適な実施の形態において提示される。