【解決手段】押出量Q1となるようにゴムの押出量を徐々に増加させ、かつ回転数R1となるように成形ドラムの回転数を徐々に上昇させ、かつ口金の成形ドラムからの距離を所定距離D2まで徐々に大きくすることにより、断面楔状の巻き始め部を成形する工程と、押出量Q1、回転数R1、所定距離D2に維持することによりゴムを巻き付けていく工程と、回転数R1、所定距離D2に維持したまま、ゴムの押出量を押出量Q1から徐々に減少させることにより、巻き始め部の上に断面楔状の巻き終わり部を成形する工程とを備え、巻き始め工程では、時間に対する増加率をゼロから徐々に大きくすることでゴムの押出量を徐々に増加させ、一定の加速度で加速させることで成形ドラムの回転数を徐々に上昇させる。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの製造方法において、例えばキャップトレッドでは、押出機からコンベア上にゴムを押し出してタイヤ1本分の長さに切断し、それを成形工程に搬送し、予め成形されたファーストケースと呼ばれるベルト部材上に円筒状に貼り合せて成形している(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
特許文献1の成形方法では、タイヤ1本分の長さにゴムを切断するために切断装置が別途必要であり、さらに、切断したゴムを貯蔵・搬送するためのスペースや搬送設備が必要な場合もあり、コストが嵩んでしまう問題がある。
【0004】
また、切断装置を用いて切断すると切断部付近で応力緩和が起こることにより、寸法変化が発生し、タイヤユニフォミティの悪化に繋がる。さらに、巻き始めと巻き終わりの接合部(ジョイント部)の厚みが増加してタイヤユニフォミティが悪化したり、接合部に段差が発生する事により加硫時のエアー入りや接合部の割れや剥離が生じたりする。
【0005】
そこで、幅を一定に保ち、かつ巻き始めと巻き終わりの接合部での段差を無くして全周に亘って所望の厚みに円筒状ゴム部材を成形するために、下記特許文献2の成形方法は、金型を回転支持体に接近させる準備工程と、接近させた金型からゴムの押し出しを開始するのと同時に回転支持体の回転を開始し、ゴムの押出量を所定量まで徐々に増加させるとともに、金型の回転支持体からの距離を円筒状ゴム部材の所望の厚みに相当する所定距離まで徐々に大きくすることにより、断面楔状の巻き始め部を成形する巻き始め工程と、ゴムの押出量を前記所定量に維持し、金型の回転支持体からの距離を前記所定距離に維持することにより、ゴムを巻き付けていく巻き付け工程と、金型の回転支持体からの距離を前記所定距離に維持したまま、ゴムの押出量を前記所定量から徐々に減少させることにより、前記巻き始め部の上に断面楔状の巻き終わり部を成形する巻き終わり工程とを備える。
【0006】
しかしながら、巻き始め工程において回転支持体の回転を開始するとき、回転支持体が停止状態からほぼゼロ(例えば0.1秒以下)の時間で所定の回転数に達するため、巻き始め部のゴムが急に引っ張られてゴムが切れたり、成形精度が悪くなったりすることがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その課題は、幅を一定に保ち、かつ巻き始めと巻き終わりの接合部での段差を無くして全周に亘って所望の厚みに精度良く成形可能な円筒状ゴム部材の成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る円筒状ゴム部材の成形方法は、押出機により口金を介して押し出したゴムを回転支持体に巻き付け、巻き始め部と巻き終わり部を接合して円筒状に成形する円筒状ゴム部材の成形方法であって、
口金を回転支持体に接近させる準備工程と、
接近させた口金からゴムの押し出しを開始するのと同時に回転支持体の回転を開始し、所定の時間にて所定の押出量となるようにゴムの押出量を徐々に増加させ、かつ前記所定の時間にて所定の回転数となるように回転支持体の回転数を徐々に上昇させ、かつ口金の回転支持体からの距離を円筒状ゴム部材の所望の厚みと同一である所定距離まで前記所定の時間にて徐々に大きくすることにより、断面楔状の巻き始め部を成形する巻き始め工程と、
ゴムの押出量を前記所定の押出量に維持し、かつ回転支持体の回転数を前記所定の回転数に維持し、かつ口金の回転支持体からの距離を前記所定距離に維持することにより、ゴムを巻き付けていく巻き付け工程と、
回転支持体の回転数を前記所定の回転数に維持し、かつ口金の回転支持体からの距離を前記所定距離に維持したまま、ゴムの押出量を前記所定の押出量から徐々に減少させることにより、前記巻き始め部の上に断面楔状の巻き終わり部を成形する巻き終わり工程とを備え、
前記巻き始め工程では、時間に対する増加率をゼロから徐々に大きくすることでゴムの押出量を徐々に増加させて前記所定の押出量とするとともに、一定の加速度で加速させることで回転支持体の回転数を徐々に上昇させて前記所定の回転数とすることを特徴とする。
【0010】
かかる構成による円筒状ゴム部材の成形方法の作用効果を説明する。押出機により押し出したゴムを回転支持体に巻き付ける場合、押し出されたゴムが、口金と回転支持体の表面との隙間を擦り付けられるように通過すると、通過したゴムはその隙間の厚みとなる。すなわち、巻き始め工程では、ゴムの押出量を所定の押出量まで徐々に増加させ、かつ回転支持体の回転数を所定の回転数まで徐々に上昇させ、かつ口金の回転支持体からの距離を円筒状ゴム部材の所望の厚みと同一である所定距離まで徐々に大きくすることにより、幅を一定に保ちながら、厚みが円筒状ゴム部材の所望の厚みまで徐々に厚くなった断面楔状の巻き始め部を成形することができる。また、巻き付け工程では、ゴムの押出量を所定の押出量に維持し、かつ回転支持体の回転数を所定の回転数に維持し、かつ口金の回転支持体からの距離を所定距離に維持することにより、幅を一定に保ちながら、巻き付けられたゴムを所望の厚みとすることができる。また、巻き終わり工程でも、回転支持体の回転数を所定の回転数に維持し、かつ口金の回転支持体からの距離を所定距離に維持することにより、巻き付けられたゴムを所望の厚みとすることができる。さらに、巻き終わり工程において、ゴムの押出量を所定の押出量から徐々に減少させることにより、厚みが徐々に薄くなった断面楔状の巻き終わり部を成形することができ、この巻き終わり部を巻き始め部の上に重ねることで、幅を一定に保ちながら、巻き始めと巻き終わりの接合部での段差を無くすことができる。
【0011】
さらに、巻き始め工程において、時間に対する増加率をゼロから徐々に大きくすることでゴムの押出量を徐々に増加させて所定の押出量とするとともに、一定の加速度で加速させることで回転支持体の回転数を徐々に上昇させて所定の回転数とする。これにより、巻き始め工程において回転支持体の回転を開始するとき、回転支持体が停止状態から徐々に加速して所定の時間にて所定の回転数に達するため、巻き始め部のゴムが急に引っ張られることがなくなり、ゴム切れや成形精度の悪化を防止できる。
【0012】
以上により、幅を一定に保ち、かつ巻き始めと巻き終わりの接合部での段差を無くして全周に亘って所望の厚みに精度良く円筒状ゴム部材を成形することができる。タイヤの製造において、本発明に係る円筒状ゴム部材の成形方法を用いることで、接合部での段差が無くなるため、加硫時のエアー入りが発生せず、かつユニフォミティの向上にも繋がる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、円筒状ゴム部材を成形するための成形設備の構成の一例を示す模式図である。
図1に示す成形設備は、押出機1、ギアポンプ10、口金11、成形ドラム(回転支持体に相当)2、及び制御装置3を備えている。
【0015】
押出機1は、円筒形のバレル1aと、バレル1aの供給口に接続されたホッパー1bと、ゴムを混練して先端側に送り出すスクリュー1cと、スクリュー1cを回転駆動させるスクリュー用モータ1dとを有する。スクリュー用モータ1dは、後述するように制御装置3により回転数が制御される。
【0016】
押出機1の押出方向先端側にはギアポンプ10が接続され、ギアポンプ10の先端側は口金11に接続されている。押出機1により混練されたゴム材料は、ギアポンプ10に供給され、ギアポンプ10は、口金11に対して定量のゴムを供給する。口金11からは所定の押出量でゴムSが押し出される。
【0017】
ギアポンプ10は、一対のギア10aを有しており、口金11に向けて出口側にゴムを送り出す機能を有する。一対のギア10aは、それぞれギア用モータ(不図示)によって回転駆動され、その回転数は、制御装置3により制御される。ギア用モータの回転数、及びスクリュー用モータ1dの回転数を制御装置3により連動させて制御することで、口金11から押し出されるゴムSの押出量を制御することができる。なお、図示の都合上、1対のギア10aは、
図1の上下方向に並べられているが、実際は平面方向(ギア10aの回転軸が
図1の上下となる方向)に並べてもよい。
【0018】
ギアポンプ10の入口側、すなわち押出機1に近い側には、第1圧力センサー12が設けられ、押出機1から供給されてくるゴムの圧力を検出する。また、ギアポンプ10の出口側には、第2圧力センサー13が設けられ、口金11から押し出されるゴムSの圧力を検出する。
【0019】
ギアポンプ10の入口側の圧力は、ギアポンプ10のギア10aと押出機1のスクリュー1cによるゴム送り量によって決定される。この入口側の圧力を一定に保つことで、ギアポンプ10は定量のゴムを口金11へ供給でき、口金11からの押出量も安定する。しかし、入口側の圧力が不安定であると、口金11からの押出量にばらつきが生じ、所望の寸法の円筒状ゴム部材を成形することが困難となる。
【0020】
ギアポンプ10の入口側の圧力を制御する方法としては、ギアポンプ10のギア10aの回転数と押出機1のスクリュー1cの回転数とをPID制御することが知られている。このPID制御は、一般的にゴムを定量で連続的に押し出す際に使用される。本発明の成形方法は、後述する準備工程、巻き始め工程、巻き付け工程、及び巻き終わり工程のような複数の工程を備えており、各工程でゴムの押出量が異なる。このような場合、ギア10aの回転数を固定してゴムを所定量で連続的に押し出す巻き付け工程におけるPID制御のパラメータを、ギア10aの回転数を大きく変化させて押出量を大きく変化させる巻き始め工程及び巻き終わり工程において用いると、入口側の圧力を一定に保つことができない。そのため、本実施形態では、PID制御のパラメータを、準備工程、巻き始め工程、巻き付け工程、及び巻き終わり工程の各工程でそれぞれ異ならせている。より具体的には、準備工程では、ギア10aは回転せずに停止しているが、それにも関わらず、入口側の圧力を一定に保つ必要があるため、スクリュー1cは微動し、回転数の変化量は少ない。よってPID制御が鈍感に反応する様にパラメータを定める。巻き付け工程では、ギア10aは高速で回転し、かつ入口側の圧力を一定に保つ必要があるため、スクリュー1cも高速で回転する。その際、混練作用により徐々にゴムが発熱し、ゴム粘度も低下していく。その影響で入口側の圧力も低下気味になり、それを補う様に高速域で外乱の影響に追従する様にPID制御を行なう。一方、巻き始め工程では、ギア10aの回転数の変化量が大きく、静止状態から瞬時に高速域までプログラム運転され、それにも関わらず入口圧側の圧力を一定に保つため、スクリュー1cの回転数も瞬時に追従する様な敏感に反応するパラメータを定める必要がある。巻き終わり工程は、巻き始め工程とは逆にギア10aの変化が高速域から静止状態まで瞬時に低下する様にプログラム運転される。その際にも、入口側の圧力を一定に保つため、スクリュー1cの回転数も瞬時に追従する様な敏感に反応するパラメータを定める必要がある。これらにより、すべての工程でギアポンプ10の入口側の圧力を略一定に安定して保つことができる。
【0021】
なお、本実施形態では、押出機1の押出方向先端側にギアポンプ10が接続された、いわゆる外付けギアポンプを用いる例を示している。ただし、これに替えて、押出機内にギアポンプを内蔵したギアポンプ内蔵型押出機を用いるようにしてもよい。
【0022】
成形ドラム2は、サーボモータ20(
図2参照)によりR方向に回転可能に構成されている。サーボモータ20の回転数は、制御装置3により制御される。成形ドラム2には、口金11を介して押し出されたゴムが供給され、ゴムが貼り付いた状態で成形ドラム2をR方向に回転駆動することにより、ゴムを周方向に沿って巻き付けることができる。なお、成形ドラム2に供給されたゴムを圧着する不図示の圧着ローラを設けてもよい。
【0023】
次に、本実施形態に係る成形設備の制御システムの機能に関して、
図2のブロック図により説明する。制御装置3は、成形設備の各部の動作を制御する機能を有する。
【0024】
スクリュー用モータ制御手段31は、第1圧力センサー12で検出されたギアポンプ10の入口側の圧力に基づいて、押出機1のスクリュー用モータ1dの回転数を制御する。ギア用モータ制御手段32は、予め定められた(時間の係数による)制御プログラムに基づいて、ギア用モータ10bの回転数を制御する。サーボモータ制御手段33は、サーボモータ20の回転数を制御する。
【0025】
押出機1、ギアポンプ10及び口金11は、一体として前後駆動装置14により押出方向の前後に移動可能に構成されており、成形ドラム2に対して近付いたり遠ざかったりすることができる。かかる前後の移動も、制御装置3の前後駆動装置制御手段34によって制御される。
【0026】
<円筒状ゴム部材の成形方法>
次に、上記の成形設備を用いて円筒状ゴム部材を成形する方法について説明する。本発明に係る円筒状ゴム部材の成形方法は、口金11を成形ドラム2に接近させる準備工程と、接近させた口金11からゴムSの押し出しを開始するのと同時に成形ドラム2の回転を開始し、所定の時間にて所定の押出量となるようにゴムSの押出量を徐々に増加させ、かつ前記所定の時間にて所定の回転数となるように成形ドラム2の回転数を徐々に上昇させ、かつ口金11の成形ドラム2からの距離を円筒状ゴム部材の所望の厚みと同一である所定距離まで前記所定の時間にて徐々に大きくすることにより、断面楔状の巻き始め部を成形する巻き始め工程と、ゴムSの押出量を前記所定の押出量に維持し、かつ成形ドラム2の回転数を前記所定の回転数に維持し、かつ口金11の成形ドラム2からの距離を前記所定距離に維持することにより、ゴムSを巻き付けていく巻き付け工程と、成形ドラム2の回転数を前記所定の回転数に維持し、かつ口金11の成形ドラム2からの距離を前記所定距離に維持したまま、ゴムSの押出量を前記所定の押出量から徐々に減少させることにより、巻き始め部の上に断面楔状の巻き終わり部を成形する巻き終わり工程とを備える。さらに、巻き始め工程では、時間に対する増加率をゼロから徐々に大きくすることでゴムSの押出量を徐々に増加させて前記所定の押出量とするとともに、一定の加速度で加速させることで成形ドラム2の回転数を徐々に上昇させて前記所定の回転数とする。
【0027】
図3は、円筒状ゴム部材を成形する際の手順の一例を示すフローチャートである。
図4は、円筒状ゴム部材を成形する様子を示す概略図である。
図5(a)は成形ドラム2の回転数の時間変化を示し、
図5(b)はゴムSの押出量の時間変化を示し、
図5(c)は口金11から成形ドラム2までの距離の時間変化を示す。また、
図5(d)は成形ドラム2の回転角度とゴムSの押出量との関係を示し、
図5(e)は成形ドラム2の回転角度と口金11から成形ドラム2までの距離との関係を示す。
【0028】
まず、押出機1、ギアポンプ10及び口金11を一体として前進させ(#1)、
図4(a)に示すように口金11を成形ドラム2に接近させる。このとき、口金11は、成形ドラム2の表面に所定の間隔D1まで接近させられる。D1は、0.1mm以下が好ましい。なお、口金11を成形ドラム2に接近させるタイミングは、ゴムSが口金11から押し出されるまでに前記の所定間隔が設けられるものであれば、特に制限されない。
【0029】
次に、前工程にて調整されたゴムSのゴム材料が、押出機1のホッパー1bに投入され、押出機1に充填される(#2)。ここで、ゴム材料としては特に制限がなく、例えば、天然ゴム、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)などの汎用のゴム原料に、配合材料を常法にて混練し、加熱架橋を可能に調製したものが挙げられる。また、投入されるゴム材料の形状としては、特に制限がなく、例えば、リボン状、シート状、ペレット状などの形状が挙げられる。
【0030】
ホッパー1bに投入されたゴム材料は、押出機1のスクリュー1cによって混練され、押出方向先端側に送り出されてギアポンプ10に供給される(#3)。そして、ギアポンプ10に供給されたゴム材料は、回転する一対のギア10aによって、口金11に向けて出口側に送り出される。
【0031】
口金11に供給されたゴム材料は、口金11の開口からゴムSとして押し出される(#4)。
図4(b)のように、押し出されたゴムSの先端部が、成形ドラム2の外表面に貼り付いて固定された状態となると、
図4(c)のように、成形ドラム2の回転駆動が開始される(#5)。実際には、口金11からゴムSの押し出しを開始すると同時に(もしくは略同時に)成形ドラム2の回転を開始する。
【0032】
成形ドラム2の回転数は、
図5(a)のように所定の時間(この例ではT1)にて所定の回転数(この例ではR1)となるようにゼロから徐々に上昇させられる(♯6)。成形ドラム2の回転数は、一定の加速度で加速させられる。
【0033】
また、ゴムSの押出量は、
図5(b)のように所定の時間(この例ではT1)にて所定の押出量(この例ではQ1)となるようにゼロから徐々に増加させられる(♯6)。ゴムSの押出量は、時間に対する増加率がゼロから徐々に大きくなるように増加させられる。本実施形態では、ゴムSの押出量は、
図5(b)に示すように、時間に対して下に凸となる2次曲線状に増加させられる。
【0034】
また、口金11は、ゴムSの押出量の増加とともに、
図4(c)のように一定速度で徐々に後退される。口金11の成形ドラム2からの距離は、
図5(c)のように所定の時間(この例ではT1)にてD1から所定距離(ここではD2)まで徐々に大きくされる(♯6)。
【0035】
成形ドラム2の回転数、ゴムSの押出量、及び口金11の成形ドラム2からの距離をこのように制御することにより、ゴムSの巻き始め部S1は、
図4(d)のように断面楔状となる。なお、所定の時間T1は、1秒以上であることが好ましく、5秒以上であることがより好ましい。従来、
図7に示すように、成形ドラム2が停止状態からほぼゼロの時間で所定の回転数R1に達するようにされていたため、巻き始め部S1のゴムが急に引っ張られてゴムが切れたり、成形精度が悪くなったりすることがあった。これに対し、本発明では1秒以上をかけて所定の回転数R1に達するため、巻き始め部S1のゴムが急に引っ張られることがなくなり、ゴム切れや成形精度の悪化を防止できる。
【0036】
また、巻き始め部S1は、
図5(d)のように成形ドラム2の角度θの範囲に成形される。角度θ、すなわち所定の時間T1にて成形ドラム2が回転する角度は、10〜90°が好ましく、30〜80°がより好ましい。
【0037】
その後は、
図5(b)のようにゴムSの押出量を所定の押出量Q1に維持し、かつ
図5(a)のように成形ドラム2の回転数を所定の回転数R1に維持し、かつ
図5(c)のように口金11の成形ドラム2からの距離を所定距離D2に維持する。ここで所定距離D2は、成形したい円筒状ゴム部材の所望の厚みに相当し、押し出されたゴムSは、口金11と成形ドラム2の表面との隙間を通過して、D2の厚みとなる。これにより、ゴムSは、巻き始め部S1が断面楔状となり、その後は、
図4(d)のように一定の厚みD2となる。
【0038】
そして、
図4(e)に示すように、ゴムSの巻き始め部S1が口金11に近づくと、
図5(a)のように成形ドラム2の回転数を所定の回転数R1に維持し、かつ
図5(c)のように口金11の成形ドラム2からの距離を所定距離D2に維持したまま、
図5(b)のようにゴムSの押出量を所定の押出量Q1から徐々に減少させる(#7)。
【0039】
なお、
図5(b)及び
図5(d)から分かるように、ゴムSの押出量を減少させ始める時間T2において、成形ドラム2の回転角度は360°となっている。すなわち、
図5(d)のように、成形ドラム2の回転角度が360°となるまではゴムSの押出量を所定の押出量Q1に維持し、回転角度が(360+θ)度になるまでに、ゴムSの押出量を所定の押出量Q1から徐々に減少させる。このとき、
図5(e)のように、口金11の成形ドラム2からの距離は所定距離D2に維持する。これにより、
図4(f)に示すように、ゴムSは、巻き終わり部S2が断面楔状となり、この巻き終わり部S2を巻き始め部S1の上に重ねて成形する。これにより、巻き始め部S1と巻き終わり部S2の接合部の厚みがその他の部分の厚みと略同じとなった円筒状ゴム部材が成形される。
【0040】
最後に、
図4(g)、
図5(c)に示すように、口金11は後退して、円筒状ゴム部材の成形が終了する(#8)。
【0041】
<別実施形態>
(1)前述の実施形態では、巻き始め工程において、ゴムSの押出量を時間に対して下に凸となる2次曲線状に増加させているが、これに限定されない。ゴムSの押出量をステップ状に徐々に増加させてもよい。
【0042】
(2)前述の実施形態では、巻き終わり工程において、成形ドラム2の回転数を所定の回転数R1に維持しているが、
図6のように成形ドラム2の回転数を所定の回転数R1から徐々に低下させてもよい。
【0043】
(3)前述の実施形態では、巻き始め工程において、口金11を一定速度で徐々に後退しているが、これに限定されない。ゴムSの押出量と同様に、口金11の成形ドラム2からの距離を時間に対して下に凸となる2次曲線状に増加させてもよい。
【0044】
(4)前述の実施形態では、押出機1を前後に移動させて成形ドラム2に対して近付けたり遠ざけたりしているが、成形ドラム2を前後に移動させて押出機1に対して近付けたり遠ざけたりしても構わない。