【構成】 この管路更生工法では、先ず、ロール状に巻かれた長尺帯状の合成樹脂製の保護シート14を複数個用意し、既設管路30の一方端部側に設置する。次に、複数の保護シートを引き出しつつ、その幅方向両端部を巻き込むように湾曲させることによって保護シートのそれぞれを円弧形状にし、これら複数の円弧形状の保護シートを組み合わせて略筒形状のシート筒16を成形する。そして、シート筒を成形しつつ既設管路内に引き込んで敷設し、そのシート筒内に、新設管を挿入する。
前記ステップ(a)では、2つの前記保護シートが用意され、これら2つの保護シートは、上下方向に並び、かつ、軸が横方向に延びように設置される、請求項1ないし3のいずれかに記載の管路更生工法。
前記ステップ(b)では、隣り合う前記保護シートの端部同士の重ね代は、前記シート筒の円周長さの4分の1以下の大きさに設定される、請求項2ないし4のいずれかに記載の管路更生工法。
前記ステップ(b)では、隣り合う前記保護シートの端部同士の重ね代は、前記シート筒の円周長さの32分の1以上の大きさに設定される、請求項2ないし5のいずれかに記載の管路更生工法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護シートを用いる特許文献1のような管路更生工法(シートPIP工法)を、口径の大きい既設管路にまで適用を広げたいという要望がある。
【0005】
ここで、特許文献1の技術では、1枚の保護シートを丸めてシート筒を成形しているので、口径の大きい既設管路に適用しようとすると、幅の大きい保護シートが必要になる。たとえば、口径が400mmの既設管路内に、口径が300mmの新設管を敷設する場合には、1400mm程度の幅を有する保護シートが必要となる。しかしながら、幅の大きい保護シートは、製造コストが掛かる上、重量も大きくなるので取扱いが不便になる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、管路更生工法を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、更生する既設管路の口径が大きい場合でも、施工コストを抑制しつつ、略筒形状の保護シート(シート筒)を既設管路内に適切に敷設できる、管路更生工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、既設管路内に更生管路を施工する管路更生工法であって、(a)ロール状に巻かれた長尺帯状の合成樹脂製の保護シートを複数個用意し、これら複数の保護シートを既設管路の一方端部側に設置するステップ、(b)ステップ(a)で設置した複数の保護シートを引き出しつつ、当該保護シートの幅方向両端部を巻き込むように湾曲させることによって、当該保護シートのそれぞれを拡径方向に復元しようとする張力が作用している状態の円弧形状にし、これら複数の円弧形状の保護シートを組み合わせて略筒形状のシート筒を成形するステップ、(c)ステップ(b)で成形したシート筒を、シート挿通治具を用いて既設管路内に引き込むことによって、既設管路内にシート筒を敷設するステップ、および(d)ステップ(c)で既設管路内に敷設され、複数の円弧形状の保護シートのそれぞれに拡径方向の張力が作用することによって内側に垂れ込むことなく略筒形状が保持されているシート筒内に、新設管を挿入するステップを含む、管路更生工法である。
【0009】
第1の発明に係る管路更生工法では、先ず、ステップ(a)において、ロール状に巻かれた保護シートを複数個用意し、これら複数の保護シートを既設管路の一方端部側に設けた立坑などに設置する。次に、ステップ(b)において、複数の保護シートを同時に引き出しつつ、保護シートの幅方向両端部を巻き込むように湾曲させることによって、保護シートのそれぞれを円弧形状にする。この際、保護シートのそれぞれは、拡径方向に復元しようとする張力が作用している状態とされる。そして、これら複数の円弧形状の保護シートを組み合わせて略筒形状のシート筒を成形する。続いて、ステップ(c)において、シート挿通治具を用いて既設管路内にシート筒を引き込み、既設管路内にシート筒を敷設する。そして、ステップ(d)において、既設管路内に敷設されたシート筒内に、新設管を挿入する。この際、シート筒は、複数の円弧形状の保護シートのそれぞれに拡径方向の張力が作用することによって、内側に垂れ込むことなく略筒形状が保持される。
【0010】
このような第1の発明では、複数の保護シートを組み合わせてシート筒を成形するので、使用する保護シートの幅を小さいものとすることができる。すなわち、幅の大きい保護シートを用いる必要がないので、保護シートの製造コストを抑制でき、また、保護シートが重量化することを防止できる。さらに、幅の大きい保護シートを用いると、既設管路の一方端部に設ける立坑の幅も大きくする必要が生じたり、立坑の側壁などに保護シートが接触して破損してしまう恐れが生じたりするが、幅の小さい保護シートを使用することで、このような問題を解消できる。
【0011】
第1の発明によれば、更生する既設管路の口径が大きい場合でも、施工コストを抑制しつつ、シート筒を既設管路内に適切に敷設できる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、ステップ(b)では、シート筒を成形するとき、隣り合う保護シートの端部同士の少なくとも1つが重なった状態にされる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、ステップ(b)では、シート筒を成形するとき、隣り合う保護シートの端部同士の全てが重なった状態にされる。
【0014】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、ステップ(a)では、2つの保護シートが用意され、これら2つの保護シートは、上下方向に並び、かつ、軸が横方向に延びように設置される。
【0015】
第4の発明によれば、保護シートを容易に設置でき、また、保護シートを引き出しつつシート筒を成形する作業も容易となる。
【0016】
第5の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明に従属し、ステップ(b)でシート筒を成形するときに、隣り合う保護シートの端部同士の重ね代が、シート筒の円周長さの4分の1以下の大きさに設定される。
【0017】
第5の発明によれば、シート筒の口径が大きい場合でも、保護シートの端部が内側に垂れてしまうことを防止できる。
【0018】
第6の発明は、第1ないし第5のいずれかの発明に従属し、ステップ(b)でシート筒を成形するときに、隣り合う保護シートの端部同士の重ね代が、シート筒の円周長さの32分の1以上の大きさに設定される。
【0019】
第6の発明によれば、既設管路内へのシート筒の挿入時において、これらの重ね合わせ部分が外れてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、既設管路の口径が大きい場合でも、施工コストを抑制しつつ、シート筒を既設管路内に適切に敷設できる。
【0021】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の一実施例である管路更生工法によって既設管路を更生した様子を示す図解図である。
【
図2】管路更生工法に用いる新設管を示す図解図である。
【
図3】管路更生工法に用いる長尺帯状の保護シートを示す図解図である。
【
図4】既設管路内に牽引ワイヤを引き込む様子を示す図解図である。
【
図5】既設管路内に導通管を挿通させて、導通確認作業を行う様子を示す図解図である。
【
図6】導通管を示す図解図であって、(a)は導通管の平面図であり、(b)は導通管の正面図である。
【
図7】発進立坑に保護シートとシート筒成形治具とを設置した様子を示す図解図である。
【
図8】発進立坑に設置した保護シートを既設管路側から見た様子を示す図解図である。
【
図9】シート筒成形治具を示す図解図であって、(a)はシート筒成形治具の断面図であり、(b)はシート筒成形治具の一方端側から見た外観図である。
【
図10】既設管路内にシート筒を挿入する様子を示す図解図である。
【
図11】
図10におけるシート筒の先頭部分の様子を拡大して示す図解図である。
【
図12】先導ヘッドを示す図解図であって、(a)は先導ヘッドの平面図であり、(b)は先導ヘッドの正面図である。
【
図13】2つの長尺帯状の保護シートによってシート筒が成形されて既設管路内に挿入される様子を示す図解図である。
【
図14】シート筒における重ね代を説明するための図解図である。
【
図15】シート筒内に滑剤を塗布する様子を示す図解図である。
【
図16】シート筒内に新設管を挿入する様子を示す図解図である。
【
図17】
図16における新設管の先頭部分の様子を拡大して示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照して、この発明の一実施例である管路更生工法は、既設管路30内に新設管(更生管)10を挿入することによって、既設管路30を更新・更生するものである。この管路更生工法では、長尺帯状の保護シート14を使用してシート筒16を成形しながら既設管路30内に挿入した後、そのシート筒16内に新設管10を挿入する。これによって、新設管10の挿入抵抗が低減されると共に、既設管路30の内面突起などとの接触による新設管10の損傷が防止される。詳細は後述するように、この実施例の管路更生工法は、2つの保護シート14を使用してシート筒16を成形することを特徴の1つとしている。
【0024】
なお、更生する既設管路30の材質、用途および口径などは、特に限定されない。この発明に係る管路更生工法は、鉄筋コンクリート管、陶管、鋳鉄管、鋼管および合成樹脂管などの様々な既設管路30の更生に適用可能であり、上下水道、ガス、通信ケーブル保護または電力ケーブル保護などの用途の既設管路30の更生に適用可能である。ただし、この発明に係る管路更生工法は、口径が300−500mmの既設管路30の更生に対して好適に用いられる。
【0025】
また、以下の説明では、既設管路30として鋳鉄製の水道配水管を想定して説明することとする。また、既設管路30の口径は、たとえば400mmであり、その管長(更生する1区間の長さ)は、たとえば100mであると想定して説明する。
【0026】
図2に示すように、新設管10は、既設管路30内に新たな更生管路を形成するものであり、この実施例では、ポリオレフィン系合成樹脂によって形成される管部材12を接続することによって構成される。具体的には、管部材12は、ポリエチレン製であって、押出成形によって円筒状に形成される。管部材12の口径は、たとえば300mm(外径355mm)であり、その管長は、たとえば5mである。この実施例では、管部材12の端面同士を突き合わせてバット融着することによって、必要な長さの新設管10が形成される。ただし、新設管10としては、ドラム等に巻き付けた長尺の管を利用することもできる。また、新設管10の口径は、既設管路30内に挿入可能な大きさの外径となるものであれば、特に限定されず、用途などに応じて適宜変更可能である。
【0027】
また、
図3に示すように、保護シート14は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の合成樹脂製であって、柔軟性および弾性を有する長尺の帯状(矩形平板状)に形成される。この保護シート14は、既設管路30内への挿入前では、図示しないドラム等の保持部材によって、ロール状に巻き取られて連続的に引き出し可能に保持される。
【0028】
保護シート14の厚みは、たとえば0.5−1.0mmである。保護シート14の長手方向の長さは、更生する既設管路30の管長よりも大きくなるように設定され、たとえば120mである。また、保護シート14の幅は、後述のように、2つの保護シート14を組み合わせることで、所定の重ね代W(
図14参照)を有し、かつ、既設管路30の内周面に沿う略筒形状のシート筒16を形成可能な大きさに設定される。この実施例では、750mmの幅を有する2つの保護シート14を組み合わせてシート筒16を成形するようにしており、この際、隣り合う保護シート14の端部同士の双方が所定の重ね代Wで重なった状態とされる。
【0029】
以下、
図4−
図17を参照して、既設管路30を更生する管路更生工法について具体的に説明する。この管路更生工法では、先ず、既設管路30の更生区間(新設管10の敷設区間)の一方端部側に発進立坑32を掘削し、また、他端部側に到達立坑34を掘削して、発進立坑32および到達立坑34内で既設管路30の両端をそれぞれ開口させる。その後、既設管路30内を適宜洗浄する。この際には、既設管路30内に滑剤を染み込ませたスポンジ等を通過させることによって、既設管路30の内周面に滑剤を塗布しておいてもよい。また、既設管路30内の大きな突起などは除去しておくとよい。
【0030】
また、発進立坑32および到達立坑34の近辺には、施工に必要な各種装置および挿入する管などを適宜準備(搬入)しておく。たとえば、終点である到達立坑34側には、牽引ワイヤ40を巻き取るためのウインチ52を配置する。一方、始点である発進立坑32側には、管部材12、2つの保護シート14、シート筒成形治具20およびバット融着機80などを搬入する。
【0031】
次に、
図4に示すように、通線工具36を使用して、牽引ワイヤ40の引込作業を行う。通線工具36としては、たとえば通線ロッド38等を備える従来公知のものを用いるとよい。牽引ワイヤ40の引込作業を行う際には、先ず、既設管路30の発進立坑32側の開口端(発進側開口端)30aから通線ロッド38を挿入し、通線ロッド38の先端が既設管路30の到達立坑34側の開口端(到達側開口端)30bに到達するまで、通線ロッド38をそのまま押し込んでいく。通線ロッド38の先端が既設管路30の到達側開口端30bに到達すると、そこで通線ロッド38の先端に牽引ワイヤ40を取り付ける。そして、通線ロッド38を引き戻して、既設管路30の発進側開口端30aまで牽引ワイヤ40を引き込む。
【0032】
続いて、
図5に示すように、導通管42を用いて、既設管路30の導通確認作業を行う。導通管42は、
図6に示すように、軸方向の一方端部を縮径(先鋭化)させた略円柱状に形成される本体44を含み、鋼などの一定以上の硬度を有する金属などによって形成される。この本体44の最大外径は、既設管路30の内径よりも小さくかつ新設管10(管部材12)の外径よりも大きくなるように設定され、たとえば390mmである。また、本体44の軸方向の両端面には、たとえばアイボルトが取り付けられることによって、牽引ワイヤ40および第1引き込み用ロープ50等を連結するための連結部46,48が形成される。
【0033】
図5に戻って、導通確認作業を行う際には、先ず、発進立坑32において、導通管42の前方側の連結部46に牽引ワイヤ40を接続すると共に、導通管42の後方側の連結部48に第1引き込み用ロープ50を接続する。そして、牽引ワイヤ40をウインチ52で巻き取ることによって、導通管42を発進側開口端30aから既設管路30内に引き込む。
【0034】
なお、この実施例で言う「前方」とは、導通管42、後述する先導ヘッド56および先導管74などの挿入方向における前方を意味し、「後方」とは、その反対側を意味する。以下、同様である。
【0035】
導通管42が既設管路30の到達立坑34に到達すると、導通管42の損傷を確認する。導通管42に目立った損傷がなければ、作業を続けても問題はないと判断して、導通管42の連結部46,48から牽引ワイヤ40および第1引き込み用ロープ50を取り外す。この際には、既設管路30内に第1引き込み用ロープ50が挿通された状態となっている。なお、第1引き込み用ロープ50から取り外した導通管42は、地上を通って発進立坑32側に搬送しておく。
【0036】
導通確認作業が終了すると、続いて、2つの保護シート14を使用してシート筒16を成形しつつ、成形したシート筒16を既設管路30内に挿入して敷設する。この工程では、先ず、
図7に示すように、発進立坑32の所定位置に対して、シート筒成形治具20と、ロール状に巻かれた2つの保護シート14とを設置する。
【0037】
具体的には、既設管路30の発進側開口端30aから外側に所定距離だけ離れた位置に対して、シート筒成形治具20を設置する。
図9に示すように、シート筒成形治具20は、複数の保護シート14を組み合わせてシート筒16を成形するときに、その成形作業を容易にする(補助する)ための治具であって、硬質塩化ビニル等の合成樹脂または金属などの硬質素材によって形成される。シート筒成形治具20は、短筒状の治具本体22を備える。治具本体22は、一方端22a側から他端22b側に向かって縮径する両端開口のテーパ筒状に形成される。また、治具本体22の外周面には、貫通孔24aを有する矩形平板状の2つの治具固定部24が形成される。治具本体22の軸方向長さは、たとえば200mmであり、治具本体22の一方端22aの内径は、たとえば530mmである。また、治具本体22の他端22bの内径は、成形するシート筒16の外径と同程度に設定され、たとえば380mmである。このようなシート筒成形治具20は、
図7に示すように、小径である他端22b側が既設管路30の発進側開口端30aと対向するように設置される。
【0038】
また、
図7および
図8に示すように、シート筒成形治具20の一方端18a側の所定位置に対して、ロール状に巻かれた2つの保護シート14を回転可能(引出し可能)に設置する。この実施例では、2つの保護シート14は、上下方向に並び、かつ、その軸が横方向(つまり発進立坑32の幅方向)に延びるように設置される。たとえば、下側の保護シート14を支持する支持軸26は、発進立坑32の上縁部に係止させ、上側の保護シート14を支持する支持軸26は、発進立坑32の上縁部に立設した支持部材28の上端部に係止させるとよい。なお、
図7などでは、2つの保護シート14を鉛直方向に並べる態様を示しているが、保護シート14を上下方向に並べて配置するときには、これらを前後方向にずらして配置してもよい。つまり、一方の保護シート14を他方の保護シート14の斜め上に配置してもよい。
【0039】
シート筒成形治具20および保護シート14の設置作業が終了すると、次に、
図10および
図11に示すように、シート筒成形治具20およびシート挿通治具54を利用して、既設管路30内へのシート筒16(保護シート14)の敷設作業を行う。
【0040】
シート挿通治具54は、シート筒16を既設管路30内に引き込んで挿通するための治具であり、この実施例では、上述した導通管42と後述する先導ヘッド56とを連結金具64を介して連結させることによって構成される。ただし、シート挿通治具54の具体的構成は適宜変更可能であり、たとえば、導通管42を使用せずに先導ヘッド56単独でシート筒16を引き込むこともできる。
【0041】
先導ヘッド56は、
図12に示すように、発泡スチレン等によって略円柱状に形成される本体58を含む。この本体58の外径は、成形するシート筒16の内径と同程度に設定され、たとえば380mmである。また、本体58の軸方向の両端面には、たとえばアイボルトが取り付けられることによって、連結金具64や第2引き込み用ロープ66などを連結するための連結部60,62が形成される。
【0042】
図10および
図11に戻って、シート筒16の敷設作業を行う際には、先ず、発進立坑32において、導通管42の前方側の連結部46に第1引き込み用ロープ50を接続すると共に、その導通管42の後方側の連結部48と先導ヘッド56の前方側の連結部60とを連結金具64を介して接続する。また、先導ヘッド56の後方側の連結部62に第2引き込み用ロープ66を接続する。
【0043】
さらに、先導ヘッド56の本体58の外周面上に2つの保護シート14の先端部分を巻き付けるようにして固定する。具体的には、2つの保護シート14を保持手段から引き出して、各保護シート14の幅方向両端部を巻き込むように湾曲させることによって、保護シート14のそれぞれを拡径方向に復元しようとする張力が作用している状態の円弧形状とする。次に、円弧形状の2つの保護シート14の両端部同士を上下方向から重ね合わせるようにして略筒形状とし、略筒形状とした保護シート14の先端部分をシート筒成形治具20内に挿通する。そして、シート筒成形治具20の他端18b側から略筒形状となって出てきた保護シート14の先端部分、つまりシート筒16の先端部分を先導ヘッド56の外周面上に巻き付け、番線や締め付けバンド等の締め付け具68によって固定する。このとき、先導ヘッド56をその本体58の前方端部が少し浮き上がった状態になるように導通管42に連結して、先導ヘッド56の外周面上に固定したシート筒16の先端部分が既設管路30の内周面に接触しないようにすることが好ましい(
図11参照)。これにより、シート筒16の先端部分が既設管路30の内周面の錆こぶ等の突起と接触して破断することが防止される。
【0044】
そして、
図10に示すように、第1引き込み用ロープ50に接続した牽引ワイヤ40をウインチ52で巻き取ることによって、または、到達立坑34に配備した作業員の手作業で第1引き込み用ロープ50を牽引することによって、2つの保護シート14を同時に引き出しつつ、成形されたシート筒16を発進側開口端30aから既設管路30内に引き込んでいく。
【0045】
このとき、
図13に示すように、その先端部分が略筒形状となるように組み合わされた状態で先導ヘッド56に固定された2つの保護シート14のそれぞれは、短筒状のシート筒成形治具20内を通ることによって、その幅方向両端部が中央側に巻き込まれて自動的に円弧形状に湾曲すると共に、これら円弧形状の2つの保護シート14の両端部同士が自動的に重ね合わされて略筒形状のシート筒16が成形される。また、この際には、シート筒成形治具20の治具本体22がテーパ筒状に形成されることから、シート筒成形治具20を通る2つの保護シート14は、治具本体22の内周面に沿うようにして他端22b側に向かうに従い徐々に湾曲していくようになり、2つの帯状の保護シート14から略筒形状のシート筒16への変形(成形)が円滑に行われる。
【0046】
また、シート筒成形治具20を通過後のシート筒16には、保護シート14の両端部に対して、軸方向の一定間隔ごとに粘着テープ70等を貼り付けることによって、シート筒16がその略筒形状を保持できるように仮止めしておく。
【0047】
ここで、
図14を参照して、保護シート14の両端部同士を重ね合わせてシート筒16を成形するときの重ね代W、つまり隣り合う保護シート14の端部同士の重ね代Wは、シート筒16の円周長さの4分の1以下の大きさに設定されることが好ましく、また、シート筒16の円周長さの32分の1以上の大きさに設定されることが好ましい。重ね代Wがシート筒16の円周長さの4分の1を超える大きさになると、口径の大きいシート筒16を成形する場合に、保護シート14の端部が内側に垂れる可能性が生じるからである。また、重ね代Wがシート筒16の円周長さの32分の1未満の大きさになると、既設管路30内へのシート筒16の挿入時に、重ね合わせ部分が外れて隙間ができてしまう可能性があるからである。なお、本発明者らの実験によれば、重ね代Wがシート筒16の円周長さの32分の1以上の大きさであれば、既設管路30内へのシート筒16の挿入時において、保護シート14同士の相対位置が多少ずれたとしても、これらの重ね合わせ部分は外れ難いことが確認されている。
【0048】
また、保護シート14同士の重ね合わせ部分の外れを確実に防止できること、保護シート14の無駄をできるだけ省くこと、また、施工の容易さ等も考慮すると、重ね代Wは、シート筒16の円周長さの32分の2−32分の4の大きさに設定することがより好ましい。この実施例では、重ね代Wが最適値であるシート筒16の円周長さの32分の3の大きさとなるように、2つの保護シート14の幅が設定されている。
【0049】
図10に戻って、このように発進立坑32内で略筒形状に成形保持されたシート筒16は、その後順次、既設管路30内に引き込まれていく。そして、シート筒16の先端部分が既設管路30の到達立坑34に到達すると、導通管42から第1引き込み用ロープ50および先導ヘッド56を取り外すと共に、先導ヘッド56からシート筒16および第2引き込み用ロープ66を取り外す。その後、シート筒16の両端部を発進側開口端30aおよび到達側開口端30bよりも外側で固定する。これによって、既設管路30の全長に亘ってシート筒16が敷設され、シート筒16(保護シート14)の敷設作業が終了する。このように敷設されたシート筒16は、円弧形状の保護シート14のそれぞれに拡径方向の張力が作用することによって、内側に垂れ込むことなくその略筒形状が保持される。したがって、後述する新設管10の敷設作業が容易となる。
【0050】
シート筒16の敷設作業が終了すると、続いて、
図15に示すように、後述する新設管10の挿入時の抵抗を低減させるために、シート筒16の内周面に滑剤を塗布する作業を行う。具体的には、先ず、到達立坑34において、第2引き込み用ロープ66と牽引ワイヤ40とを接続して、その接続部付近に、シリコンオイル等の滑剤を染み込ませたスポンジ72を取り付ける。スポンジ72としては、従来公知のものを用いるとよいが、スポンジ72の大きさを、シート筒16の内径に合わせた大きさに設定して、シート筒16の内周面全体に滑剤を塗布できるようにするとよい。
【0051】
そして、たとえば発進立坑32に配備した作業員の手作業で第2引き込み用ロープ66を牽引することによって、スポンジ72をシート筒16内に到達側開口端30b側から引き込んで、シート筒16の内周面に滑剤を塗布する。その後、スポンジ72が発進側開口端30aに到達すると、第2引き込み用ロープ66および牽引ワイヤ40からスポンジ72を取り外して、第2引き込み用ロープ66と牽引ワイヤ40との接続を解除する。これによって、シート筒16の内周面全体に滑剤が塗布される。なお、この際には、牽引ワイヤ40が発進立坑32側まで引き込まれた状態となっている。
【0052】
シート筒16の内周面への滑剤の塗布作業が終了すると、続いて、
図16および
図17に示すように、先導管74を利用して、シート筒16内に新設管10を敷設する。
【0053】
先導管74は、合成樹脂によって一端が封止された円筒状に形成される本体76を含む。この実施例では、本体76は、ポリエチレン管76aとその一方端を封止するキャップ76bとを含み、ポリエチレン管76aとキャップ76bとは、バット融着で接合されている。ポリエチレン管76aの口径は、新設管10(管部材12)とほぼ等しい口径に設定され、たとえば300mmである。また、キャップ76bには、たとえばアイボルトが取り付けられることによって、牽引ワイヤ40を接続するための連結部78が形成される。
【0054】
新設管10の敷設作業を行う際には、先ず、発進立坑32において、先導管74の連結部78に牽引ワイヤ40を接続する。また、先導管74の後方側端面に第1の管部材12の前方側端面を突き合わせ、バット融着機80を用いて、これらをバット融着によって接合する。そして、牽引ワイヤ40をウインチ52で巻き取ることによって、先導管74および第1の管部材12をシート筒16内、すなわち既設管路30内に引き込む。
【0055】
先導管74および第1の管部材12が既設管路30内に引き込まれると、第1の管部材12の後方側端面に第2の管部材12の前方側端面を突き合わせ、バット融着機80を用いて、これらをバット融着によって接合する。そして、牽引ワイヤ40をウインチ52で巻き取ることによって、新しく接合した第2の管部材12を既設管路30内に引き込む。なお、管部材12同士をバット融着によって接合した際には、接合部分が外周面上に盛り上がってビード(図示せず)が形成されるので、ビードを除去して接合部分を平滑にしておくとよい。
【0056】
その後、このような作業を順次繰り返し、新設管10をシート筒16内に引き込んでいく。この際、新設管10は、シート筒16内を進行する、つまり新設管10と既設管路30との間にはシート筒16が介在するので、既設管路30の内面突起などとの接触による新設管10の損傷が防止される。また、新設管10の挿入抵抗が低減される。
【0057】
そして、新設管10の前方端が到達立坑34に到達すると、牽引ワイヤ40を先導管74の連結部78から取り外すと共に、先導管74を新設管10から切断して、新設管10の敷設作業を終了する。
【0058】
以上のように、この実施例によれば、2つの保護シート14を組み合わせてシート筒16を成形するので、使用する保護シート14の幅を小さいものとすることができる。すなわち、幅の大きい保護シート14を用いる必要がないので、保護シート14の製造コストを抑制でき、また、保護シート14が重量化することを防止できる。
【0059】
また、幅の大きい保護シート14を用いると、それに合わせて発進立坑32の幅も大きくする必要が生じたり、発進立坑32の側壁などに保護シート14が接触して破損してしまう恐れが生じたりするが、幅の小さい保護シート14を使用することで、このような問題を解消できる。
【0060】
さらに、口径の大きい既設管路30に対して、従来の口径の小さい既設管路30で使用していた保護シート14と同じ幅のものを用いることもできる。つまり、1種類の幅の保護シート14で対応可能な既設管路30の口径範囲が広がるので、保護シート14の在庫を減らすことができ、コストを削減できる。
【0061】
したがって、この実施例によれば、既設管路30の口径が大きい場合でも、施工コストを抑制しつつ、シート筒16(略筒形状の保護シート14)を既設管路30内に適切に敷設できる。
【0062】
また、この実施例によれば、2つの保護シート14は、上下方向に並び、かつ、軸が横方向に延びるように設置されるので、保護シート14を容易に設置でき、また、保護シート14を引き出しつつシート筒16を成形する作業も容易となる。
【0063】
なお、上述の実施例では、同じ幅を有する2つの保護シート14を使用するようにしたが、使用する保護シート14の幅は、互いに異なっていてもよい。この場合には、たとえば、幅の大きい方の保護シート14を下側に配置し、幅の小さい方の保護シート14を上側に配置するよい。
【0064】
また、上述の実施例では、2つの保護シート14を使用してシート筒16を成形したが、3つ以上の保護シート14を使用してシート筒16を成形することもできる。
【0065】
さらに、上述の実施例では、保護シート14は、軸が横方向に延びるように設置(横置き)されるが、軸が縦方向に延びるように設置(縦置き)されてもよいし、軸が斜め方向に延びるように設置(斜め置き)されてもよい。ただし、縦置きまたは斜め置きは設置し難いので、保護シート14は横置きすることが好ましい。
【0066】
さらにまた、上述の実施例では、略筒形状のシート筒16を成形するとき、隣り合う保護シート14の端部同士の全てが重なった状態となるようにしたが、隣り合う保護シート14の端部同士の間には、多少の隙間があっても構わない。すなわち、この発明で言う「略筒形状」は、シート筒16が周方向において完全に閉じられた状態を含むのはもちろんのこと、この発明の本旨を変更しない範囲内において、周方向の一部に隙間がある状態も含むものとする。ただし、新設管10の挿入抵抗を適切に低減し、また、新設管10の損傷を適切に防止するためには、シート筒16は、隣り合う保護シート14の端部同士の少なくとも1つが重なった状態で成形されていることが好ましく、上述の実施例のように隣り合う保護シート14の端部同士の全てが重なった状態で成形されていることがより好ましい。
【0067】
また、上述の実施例では、シート筒成形治具20(治具本体22)をテーパ筒状に形成したが、シート筒成形治具20は、必ずしもテーパ筒状に形成される必要はなく、その形状は適宜変更可能である。また、保護シート14を組み合わせてシート筒16を成形するときには、必ずしもシート筒成形治具20を用いる必要もない。
【0068】
さらに、上述の実施例では、シート筒16の略筒形状を保持するために、粘着テープ70のような留め具を用いるようにしたが、これに限定されない。たとえば、結束バンドのような留め具を用いることもできる。また、接着剤を用いたり、溶接(融着)したりしてシート筒16の形状を略筒形状に保持するようにしてもよい。なお、この際のシート筒16の形状の拘束は、強固なものである必要はなく、たとえば、シート筒16内への新設管10の敷設時または敷設後にその拘束が解除されても構わない。
【0069】
さらにまた、上述の実施例では、既設管路30の発進側開口端30aからシート筒16を挿入するようにしたが、シート筒16は、既設管路30の到達側開口端30bから挿入されてもよい。つまり、シート筒16の挿入方向と新設管10の挿入方向とは、逆方向であってもよい。
【0070】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。