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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-48768(P2018-48768A)
(43)【公開日】2018年3月29日
(54)【発明の名称】食品の冷凍装置およびその冷凍方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 13/06 20060101AFI20180302BHJP
   F25D 9/00 20060101ALI20180302BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20180302BHJP
【FI】
   F25D13/06
   F25D9/00 C
   A23L3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-184098(P2016-184098)
(22)【出願日】2016年9月21日
(71)【出願人】
【識別番号】502205499
【氏名又は名称】岩田屋フード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】組坂 善昭
【テーマコード(参考)】
3L044
3L045
4B022
【Fターム(参考)】
3L044AA02
3L044AA04
3L044BA04
3L044CA18
3L044DB02
3L044FA05
3L044FA09
3L044KA01
3L044KA03
3L044KA04
3L045AA01
3L045AA07
3L045BA03
3L045FA02
3L045KA05
3L045KA07
3L045PA01
3L045PA03
3L045PA04
4B022LB01
4B022LF11
4B022LN06
4B022LP06
4B022LT06
(57)【要約】
【課題】簡単で安価な構成でありながら、作業者の作業負担が小さく、しかも食品を高い処理効率で冷凍処理が可能な、食品の冷凍装置およびその冷凍方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明を適用した食品24の冷凍装置1は、液体透過性の収納ケース20を所定の傾斜姿勢で支持するケース支持構造50を有し、収納ケース20内に食品24を収納する食品収納部2と、食品収納部2を浸漬して食品24を冷凍する低温の不凍液6を貯溜する不凍液貯溜部3と、不凍液貯溜部3内から移送されてきた食品収納部2の食品24に向かって、ガス15をノズル管61乃至67の長孔状のスリット孔61a乃至67aから噴射方向可変に吹き付ける可変噴射構造54を有し、食品24に残存付着している不凍液6を除去する不凍液除去部4と、不凍液貯溜部3と不凍液除去部4間の食品収納部2の移送を行う移送部5とを備えたものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体透過性の収納ケースを所定の傾斜姿勢で支持するケース支持構造を有し、前記収納ケース内に食品を収納する食品収納部と、
該食品収納部を浸漬して前記食品を冷凍する不凍液を貯溜する不凍液貯溜部と、
該不凍液貯溜部内から移送されてきた前記食品収納部の食品に向かって、ガスを噴射ノズルの長孔状のスリット孔から噴射方向可変に吹き付ける可変噴射構造を有し、前記食品に残存付着している不凍液を除去する不凍液除去部と、
前記不凍液貯溜部と不凍液除去部間の食品収納部の移送を行う移送部とを備える
食品の冷凍装置。
【請求項2】
前記可変噴射構造は、
前記スリット孔から噴射するガスの噴射方向が、前記スリット孔に対向する収納ケースの傾斜方向に平行となる噴射角を有する
請求項1に記載の食品の冷凍装置。
【請求項3】
前記可変噴射構造は、
前記スリット孔から噴射するガスの噴射方向が、前記スリット孔に対向する収納ケースの側面の上下略中央と交差する噴射角を有する
請求項1に記載の食品の冷凍装置。
【請求項4】
前記可変噴射構造は、
前記不凍液除去部内で、前記不凍液貯溜部内から移送されてきた食品収納部を挟んで対向配置されると共に、軸心に平行に前記スリット孔が穿孔されるノズル管と、
該ノズル管を軸心周りに回転させる回転動力を出力する駆動モータと、
該駆動モータの駆動を制御する制御装置と、
前記駆動モータの出力部とノズル管との間に介設され、前記回転動力を単一のノズル管に伝達可能な、または複数のノズル管に同時伝達可能なリンク機構と、
前記ノズル管の端部を、前記ガスのガス供給路に、軸心周り回動可能に連通接続する接続管とを有する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の食品の冷凍装置。
【請求項5】
前記不凍液除去部は、
所定の噴射方向に設定された単一のスリット孔と、共通の噴射方向に設定された複数の前記スリット孔から成るスリット孔群とのうちの少なくとも二つが、上下方向に並設された噴射部と、
前記ガスのガス供給路へのスリット孔の連通または遮断を、弁の開閉によって行う弁制御構成とを有する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の食品の冷凍装置。
【請求項6】
前記弁制御構成は、
前記スリット孔またはスリット孔群のうち、最上位置のものから最下位置のものまで、前記ガス供給路への連通対象が単一孔ずつまたは複数孔ずつ順に切り替わる切り替え動作を繰り返して行う噴射パターンを有する
請求項5に記載の食品の冷凍装置。
【請求項7】
前記ケース支持構造は、
前記食品収納部内に、端面同士が向かい合うように2枚の棚板が対向配置されると共に、対向中心面側に向かって各棚板の板面が下がるように所定の傾斜角で傾斜配置されており、各棚板の上面にガイド部材を介して前記収納ケースを載置可能な棚板対と、
該棚板対を上下方向に並列支持する支持枠体とを有する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の食品の冷凍装置。
【請求項8】
前記傾斜角を、
2度以上45度未満に設定する
請求項7に記載の食品の冷凍装置。
【請求項9】
前記ガイド部材は、
前記棚板の対向中心面に対して平行方向に波打つ波板状に形成される
請求項7または請求項8に記載の食品の冷凍装置。
【請求項10】
前記収納ケースは、
上方に開口する有底箱状に形成されたケース本体と、
該ケース本体の底面から前記ガスの噴射方向に略交差するように立設されて、前記ケース本体の内部を噴射方向前後に画設すると共に、両端部と前記ケース本体の内壁との間に、前記不凍液が噴射方向に向かって流動するための流動路が形成される仕切り板とを有する
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の食品の冷凍装置。
【請求項11】
食品を収納した液体透過性の収納ケースが所定の傾斜姿勢で配置された食品収納部を、不凍液貯溜部内に貯溜した不凍液に浸漬して食品を冷凍する冷凍工程と、
前記食品を冷凍した後、移送部により、前記食品収納部を不凍液貯溜部から不凍液除去部まで移送する移送工程と、
該不凍液除去部で、前記食品収納部の食品に向かって、ガスを噴射ノズルの長孔状のスリット孔から噴射方向可変に吹き付けることにより、前記食品に残存付着している不凍液を除去する不凍液除去工程とを備える
食品の冷凍方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を冷凍する冷凍装置および冷凍方法に関する。詳しくは、簡単で安価な構成でありながら、作業者の作業負担が小さく、しかも食品を高い処理効率で冷凍処理が可能な、食品の冷凍装置およびその冷凍方法に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水分を含んだ食品、あるいはそれを真空パック詰めしたもの(以下、単に「食品」とする)を冷凍するには、低温に冷却されたエタノール水溶液などの不凍液を貯溜した不凍液槽内に、食品を収めた液体透過性の収納体(以下、「収納ケース」とする)を内側に収納した籠体を浸漬することにより、食品を短時間で凍結させる技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。この技術によると、細胞中の水分が低温で瞬間的に凍結するため、細胞内の氷結晶が小さくなり、細胞が破壊されずに解凍後も栄養分や旨味成分を含むドリップが少なく高い鮮度を維持することができる。
【0003】
しかし、不凍液槽から引き上げられた籠体内の食品は、不凍液に濡れた状態にあり、段ボールが湿るために即座に箱詰することができない。そこで、食品に残存付着している不凍液を、エアーガンで吹き飛ばしたり、タオルによる拭き取りを何度も繰り返したりするなどして、水切りを行う必要があるが、冷却されたエタノール水溶液は、その粘性が高くて水切れが悪いことに加えて低温なため、タオル絞りなどの手作業では、冷えた環境下で大きな力が必要となり、エアーガンによる吹き飛ばし作業でも、エタノールの蒸気が多量に発生し、マスクや手袋などを着用した上での作業となることから、作業者の作業負担が大きいため、不凍液の除去作業に時間がかかり、冷凍処理の処理効率が低い。
【0004】
そこで、不凍液槽から引き上げられた籠体を所定の装置内に収納し、この装置内に設けた噴射ノズルを外部から操作し、籠体内の収納ケースに収めた食品に向かってガスを吹き付けることにより、食品に付着残存している不凍液を、人力に頼ることなく、外部からの装置操作でガスによって強力に吹き飛ばして除去する、といった対応が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−61090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、収納ケース自体がたとえ液体透過性を有するものであっても、不凍液槽から引き上げる際に収納ケースが略水平な状態にあると、収納ケース内の食品の上面や、食品の下面と収納ケースの底面との間の隙間(以下、「ケース側隙間」とする)には、多量の不凍液が溜まって残りやすい。このため、ガスの噴射方向によっては、食品から吹き飛ばした不凍液が、この食品と隣接する食品上に再付着したりして、不凍液の除去作業にかかる時間が長くなり、冷凍処理の処理効率が大きく低下する。
【0007】
更に、噴射ノズルの吐出孔が通常の円形状や矩形状などのピット孔の場合は、吹き付け範囲が小さく、収納ケース内に幅広く収納された食品にガスをもれなく吹き付けるには、多数の噴射ノズルが必要となる。このため、部品数が増えて部品コストが増加すると共に、吐出孔からの噴射圧のばらつきを小さくするのに制御構造が複雑となって装置コストも増加する。
【0008】
加えて、噴射ノズルの吐出孔からのガスの噴射方向が固定されている場合は、不凍液槽から引き上げる際に、食品に付着残留している不凍液が食品から流下して離脱しようとしても、ガスの噴射方向によっては、不凍液がガスに押し戻されて食品に再付着したり、あるいは、収納ケースの仕様によっては、収納ケースの高さが低いために、ガスがその上を通過して収納ケースに全く当たらなかったり、当たっても収納ケースの一部にのみ当たって、ガスの吹き付けが精度良く行われないことがある。このため、不凍液を食品から確実に除去するのが難しく、箱詰めする前に、従来の如く、不凍液をエアーガンで吹き飛ばしたり、タオルで拭き取ったりすることが必要となって、不凍液の除去作業にかかる時間が長くなり、冷凍処理の処理効率が更に大きく低下する。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、簡単で安価な構成でありながら、作業者の作業負担が小さく、しかも食品を高い処理効率で冷凍処理が可能な、食品の冷凍装置およびその冷凍方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の食品の冷凍装置は、液体透過性の収納ケースを所定の傾斜姿勢で支持するケース支持構造を有し、収納ケース内に食品を収納する食品収納部と、食品収納部を浸漬して食品を冷凍する不凍液を貯溜する不凍液貯溜部と、不凍液貯溜部内から移送されてきた食品収納部の食品に向かって、ガスを噴射ノズルの長孔状のスリット孔から噴射方向可変に吹き付ける可変噴射構造を有し、食品に残存付着している不凍液を除去する不凍液除去部と、不凍液貯溜部と不凍液除去部間の食品収納部の移送を行う移送部とを備えている。
【0011】
そして、液体透過性の収納ケースを所定の傾斜姿勢で支持するケース支持構造を有し、収納ケース内に食品を収納する食品収納部と、食品収納部を浸漬して食品を冷凍する不凍液を貯溜する不凍液貯溜部とを備えることによって、冷凍処理の処理効率を向上させることができる。すなわち、収納ケースの傾斜支持に伴い、収納ケース内に収容されている食品の上面やケース側隙間も、水平面に対して傾斜した状態に保持されるようになり、不凍液貯溜部から引き上げる際に、収納ケース内で食品の上面やケース側隙間などに溜まっている不凍液が傾斜方向に円滑に流れ、更に、収納ケースに開口された孔などの液体透過部分を介して外部へ流下排出される。このため、不凍液槽から引き上げた直後に付着残存している不凍液が著しく減少し、ガスを食品に向かって吹き付けても、食品の上面やケース側隙間から多量の不凍液が飛び散って隣接する食品上に再付着したりすることがなく、不凍液の除去作業にかかる時間を短縮することができる。
【0012】
更に、食品収納部を浸漬して食品を冷凍する不凍液を貯溜する不凍液貯溜部を備えることによって、冷凍した食品に対し、解凍後も栄養分や旨味成分を含むドリップが少なく高い鮮度を維持させることができる。すなわち、食品収納部を不凍液内に浸漬すると、食品中の細胞中の水分が低温で瞬間的に凍結するため、細胞内の氷結晶が小さくなり、冷凍処理によって細胞が破壊されることがない。
【0013】
加えて、不凍液貯溜部内から移送されてきた食品収納部の食品に向かって、ガスを噴射ノズルの長孔状のスリット孔から噴射方向可変に吹き付ける可変噴射構造を有し、食品に残存付着している不凍液を除去する不凍液除去部を備えることによって、部品コスト、装置コストの低減を図ることができると共に、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。すなわち、噴射ノズルに形成したスリット孔からガスを噴射させることにより、幅方向に長い吹き付け範囲が形成され、少ない孔数で、収納ケース内に幅広く配置された食品に対してもガスをもれなく吹き付けることができ、通常の円形状や矩形状などのピット孔に比べ、噴射ノズルが少なくて済み部品数が減少すると共に、噴射圧のばらつきを小さくするための制御構造などが不要となる。しかも、可変噴射構造を設けることにより、スリット孔からのガスの噴射方向を最適化し、不凍液がガスによって押し戻されて食品に再付着するのを防いだり、収納ケースへのガスの吹き付けを位置精度良く行うようにすることができ、不凍液のエアーガンによる吹き飛ばしやタオルによる拭き取りが不要となって、不凍液の除去作業にかかる時間を短縮することができる。
【0014】
更に、不凍液貯溜部と不凍液除去部間の食品収納部の移送を行う移送部を備えることによって、冷凍した食品の鮮度低下を抑制することができる。すなわち、冷凍してから不凍液除去部までの食品の移動を所定の移送装置によって短時間で行えるようにして、食品の温度上昇をできるだけ抑えることができる。
【0015】
また、可変噴射構造が、スリット孔から噴射するガスの噴射方向が、スリット孔に対向する収納ケースの傾斜方向に平行となる噴射角を有する場合は、不凍液貯溜部から引き上げた後も食品表面や収納ケース表面に沿って傾斜方向に流れている不凍液の流れが、ガスによって押し戻されることがなく、逆にガスによって一層加速される。これにより、収納ケース外部への不凍液の流下排出を迅速に行うことができ、不凍液の除去作業にかかる時間を一層短縮し、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。
【0016】
また、可変噴射構造が、スリット孔から噴射するガスの噴射方向が、スリット孔に対向する収納ケースの側面の上下略中央と交差する噴射角を有する場合は、収納ケースでガスが当たる範囲が広くなって、収納ケースの側面に開口された孔などの液体透過部分を通り、収納ケース内に多量のガスが吹き込まれるため、不凍液貯溜部から引き上げた後も食品表面や収納ケース表面に沿って傾斜方向に流れている不凍液の流れが、ガスによって一層加速される。これにより、収納ケース外部への不凍液の流下排出を迅速に行うことができ、不凍液の除去作業にかかる時間を一層短縮し、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。
【0017】
また、可変噴射構造が、不凍液除去部内で、不凍液貯溜部内から移送されてきた食品収納部を挟んで対向配置されると共に、軸心に平行に前記スリット孔が穿孔されるノズル管と、ノズル管を軸心周りに回転させる回転動力を出力する駆動モータと、駆動モータの駆動を制御する制御装置と、駆動モータの出力部とノズル管との間に介設され、回転動力を単一のノズル管に伝達可能な、または複数のノズル管に同時伝達可能なリンク機構と、ノズル管の端部を、ガスのガス供給路に、軸心周り回動可能に連通接続する接続管とを有する場合は、制御装置によって駆動モータからの回転動力を調整して軸心周りのノズル管の回転量を変更するだけで、スリット孔の噴射角が所定の角度に設定される。これにより、スリット孔を噴射ノズルとは別部品に形成し、この別部品を回動させてスリット孔の噴射角を変更するようなタイプの可変噴射構造に比べ、部品点数が少なくなり回動構造も単純化することができ、部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0018】
また、不凍液除去部が、所定の噴射方向に設定された単一のスリット孔と、共通の噴射方向に設定された複数のスリット孔から成るスリット孔群とのうちの少なくとも二つが、上下方向に並設された噴射部と、ガスのガス供給路へのスリット孔の連通または遮断を、弁の開閉によって行う弁制御構成とを有する場合は、ガス供給路と連通するスリット孔を弁の開閉操作によって変更するだけで、ガスを噴射するスリット孔が選択され、ガスの噴射高さが上下方向に自在に変更される。これにより、外部への不凍液の流下排出の加速に適した噴射パターンで不凍液の除去作業を行うことができ、不凍液の除去作業にかかる時間を一層短縮し、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。
【0019】
また、弁制御構成が、スリット孔またはスリット孔群のうち、最上位置のものから最下位置のものまで、ガス供給路への連通対象が単一孔ずつまたは複数孔ずつ順に切り替わる切り替え動作を繰り返して行う噴射パターンを有する場合は、例えば、3段から成る収納ケースまたは収納ケース群において、上段のスリット孔またはスリット孔群からのガスによって、上段の収納ケースまたは収納ケース群から不凍液が外部へ流下排出され、この不凍液は、直下にある中段の収納ケースまたは収納ケース群に流下し、この中段の収納ケースまたは収納ケース群内に元々溜まっていた不凍液と合流する。更に、この合流した不凍液は、中段のスリット孔またはスリット孔群からのガスによって、中段の収納ケースまたは収納ケース群から外部へ流下排出され、この排出された不凍液は、直下にある下段の収納ケースまたは収納ケース群に流下し、この下段の収納ケースまたは収納ケース群内に元々溜まっていた不凍液と合流し、その後、この合流した不凍液は、下段のスリット孔またはスリット孔群からのガスによって外部へ流下排出され、下方にある不凍液槽内に流れ落ちる。このようにして、不凍液が上から順に排出されていき、これを繰り返すことにより、上から下に向かって流れる不凍液の流れを阻害することなく、ガスによる不凍液の排出を効率的に行うことができ、不凍液の除去作業にかかる時間を一層短縮し、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。
【0020】
また、ケース支持構造が、食品収納部内に、端面同士が向かい合うように2枚の棚板が対向配置されると共に、対向中心面側に向かって各棚板の板面が下がるように所定の傾斜角で傾斜配置されており、各棚板の上面にガイド部材を介して収納ケースを載置可能な棚板対と、棚板対を上下方向に並列支持する支持枠体とを有する場合は、不凍液貯溜部から引き上げる際に、収納ケース内から外部へ流下排出された不凍液は、各棚板上にあって傾斜したガイド部材上を対向中心面側に向かって流れていき、その後、下方にある不凍液槽内に流れ落ちるなどして排出される。これにより、各収納ケースから外部へ流下排出された不凍液の排液経路を、対向中心面近傍に集中して配置することができ、排液経路のための設置空間を小さくし、食品収納部のコンパクト化を図ることができる。なお、対向中心面とは、対向配置される2枚の棚板の延長面の交線を通る鉛直面とする。
【0021】
また、傾斜角を、2度以上45度未満に設定する場合は、収納ケースとガイド部材が棚板上に適正な傾斜姿勢で支持されるため、不凍液貯溜部から引き上げる際に、収納ケース内から外部へ流下排出された不凍液は、各棚板上にあって傾斜したガイド部材上を対向中心面側に向かって流れていき、その後、下方にある不凍液槽内に流れ落ちるなどして円滑に排出させることができる。
【0022】
そして、棚板の傾斜角が2度未満では、収納ケースの傾斜が小さすぎて、収納ケース内で食品の上面やケース側隙間などに溜まっている不凍液を、食品表面や収納ケース表面に沿って傾斜方向に流すことができず、収納ケース内から外部への流下排出ができない。一方、棚板の傾斜角が45度超えでは、収納ケースの傾斜が大きすぎて、不凍液貯溜部から引き上げてからのガスの吹き付け時に、収納ケースが浅いなどの場合、ガス圧によって食品が収納ケース内を転動して傷付いたり、収納ケース内から飛び出したりする恐れがある。
【0023】
また、ガイド部材が、棚板の対向中心面に対して平行方向に波打つ波板状に形成される場合は、ガイド部材は棚板、収納ケースのいずれとも線接触となり、収納ケースと棚板間の伝熱面積が小さくて棚板から収納ケースへの伝熱が抑制されると共に、収納ケースとガイド部材との摩擦も小さい。これにより、収納ケース内の食品の温度上昇をできるだけ抑えて、冷凍した食品の鮮度低下を抑制することができ、加えて、ガイド部材上での収納ケースの移動力が小さくて済み、食品収納部内への収納ケースの載置作業が容易となり、冷凍処理の処理効率を向上させることができる。
【0024】
更に、波板状のガイド部材で収納ケース側の谷部が、対向中心面側に向かって下がる溝として、互いに平行に多数形成されており、収納ケース内から外部へ流下排出された不凍液は、多数の溝に流れ込んで対向中心面側に向かって勢いよく流れていく。これにより、不凍液の除去作業にかかる時間を短縮し、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。
【0025】
また、収納ケースが、上方に開口する有底箱状に形成されたケース本体と、ケース本体の底面からガスの噴射方向に略交差するように立設されて、ケース本体の内部を噴射方向前後に画設すると共に、両端部とケース本体の内壁との間に、不凍液が噴射方向に向かって流動するための流動路が形成される仕切り板とを有する場合は、収納ケース内では、ガスの流れが仕切り板で乱されて乱流となり、この乱流状態のガスが、仕切り板に区切られて形成された複数の空間の間を、流動路を介して自在に流動する。これにより、収納ケース内の食品表面や収納ケース表面の隅々までガスを行き渡らせ、ガスによる不凍液の排出を効率的に行うことができ、不凍液の除去作業にかかる時間を短縮し、冷凍処理の処理効率を向上させることができる。
【0026】
更に、仕切り板によって区切られて形成された複数の空間内に、食品を小分けして収納することができる。これにより、食品の単位体積当たりの表面積を大きくし、不凍液内に浸漬した際の冷却効率を向上させることができ、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。
【0027】
また、上記の目的を達成するために、本発明の食品の冷凍方法は、食品を収納した液体透過性の収納ケースが所定の傾斜姿勢で配置された食品収納部を、不凍液貯溜部内に貯溜した不凍液に浸漬して食品を冷凍する冷凍工程と、食品を冷凍した後、移送部により、食品収納部を不凍液貯溜部から不凍液除去部まで移送する移送工程と、不凍液除去部で、食品収納部の食品に向かって、ガスを噴射ノズルの長孔状のスリット孔から噴射方向可変に吹き付けることにより、食品に残存付着している不凍液を除去する不凍液除去工程とを備えている。
【0028】
そして、食品を収納した液体透過性の収納ケースが所定の傾斜姿勢で配置された食品収納部を、不凍液貯溜部内に貯溜した不凍液に浸漬して食品を冷凍する冷凍工程を備えることによって、冷凍処理の処理効率を向上させることができる。すなわち、収納ケースの傾斜支持に伴い、収納ケース内に収容されている食品の上面やケース側隙間も、水平面に対して傾斜した状態に保持されるようになり、不凍液貯溜部から引き上げる際に、収納ケース内で食品の上面やケース側隙間などに溜まっている不凍液が傾斜方向に円滑に流れ、更に、収納ケースに開口された孔などの液体透過部分を介して外部へ流下排出される。このため、不凍液槽から引き上げた直後に付着残存している不凍液が著しく減少し、ガスを食品に向かって吹き付けて除去する場合でも、食品の上面やケース側隙間から多量の不凍液が飛び散って隣接する食品上に再付着したりすることがなく、不凍液の除去作業にかかる時間を短縮することができる。
【0029】
しかも、冷凍した食品に対し、解凍後も栄養分や旨味成分を含むドリップが少なく高い鮮度を維持させることができる。すなわち、食品収納部を不凍液内に浸漬すると、食品中の細胞中の水分が低温で瞬間的に凍結するため、細胞内の氷結晶が小さくなり、冷凍処理によって細胞が破壊されることがない。
【0030】
更に、食品を冷凍した後、移送部により、食品収納部を不凍液貯溜部から不凍液除去部まで移送する移送工程を備えることによって、冷凍した食品の鮮度低下を抑制することができる。すなわち、冷凍してから不凍液除去部までの食品の移動を所定の移送装置によって短時間で行えるようにして、食品の温度上昇をできるだけ抑えることができる。
【0031】
加えて、不凍液除去部で、食品収納部の食品に向かって、ガスを噴射ノズルの長孔状のスリット孔から噴射方向可変に吹き付けることにより、食品に残存付着している不凍液を除去する不凍液除去工程を備えることによって、部品コスト、装置コストの低減を図ることができると共に、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。すなわち、噴射ノズルに形成したスリット孔からガスを噴射させることにより、幅方向に長い吹き付け範囲が形成され、少ない孔数で、収納ケース内に幅広く配置された食品に対してもガスをもれなく吹き付けることができ、通常の円形状や矩形状などのピット孔に比べ、噴射ノズルが少なくて済み部品数が減少すると共に、噴射圧のばらつきを小さくするための制御構造などが不要となる。しかも、ガスをスリット孔から噴射方向可変とすることにより、スリット孔からのガスの噴射方向を最適化し、不凍液がガスによって押し戻されて食品に再付着するのを防いだり、収納ケースへのガスの吹き付けを位置精度良く行ったりすることができ、不凍液のエアーガンによる吹き飛ばしやタオルによる拭き取りが不要となって、不凍液の除去作業にかかる時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係わる食品の冷凍装置およびその冷凍方法は、簡単で安価な構成でありながら、作業者の作業負担が小さく、しかも食品を高い処理効率で冷凍処理が可能なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係わる食品の冷凍装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】同じく正面一部断面図である。
図3】食品収納部の外観図であって、図3(a)は食品収納部の正面図、図3(b)は同じく左側面図である。
図4】食品収納部の上部の拡大正面図である。
図5】食品収納部の説明図であって、図5(a)は食品収納部の右上部の斜視図、図5(b)は収納ケースの斜視図である。
図6】不凍液除去部の正面図である。
図7】噴射部構造の説明図であって、図7(a)は右噴射部の平面図、図7(b)は同じく左側面図である。
図8図7(b)のA−A矢視断面図である。
図9】噴射角の説明図であって、図9(a)は噴射角89を有する右噴射部の上部の正面断面図、図9(b)は噴射角90を有する右噴射部の上部の断面正面図である。
図10】噴射パターンと冷凍方法の説明図であって、図10(a)はスリット群ごとの噴射ガス量の変化を示す図、図10(b)は冷凍手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、食品の冷凍装置およびその冷凍方法に関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
なお、図1の矢印F、L、Uで示す方向を、それぞれ前方、左方、上方とし、以下で述べる各部の位置や方向などはこれらの前方、左方、上方を基準とするものである。
【0035】
まず、本発明を適用した冷凍装置1の全体構成について、図1乃至図3により説明する。
【0036】
冷凍装置1は、食品を収納する食品収納部2と、この食品収納部2を浸漬して食品を冷凍する不凍液6を貯溜した不凍液貯溜部3と、この不凍液貯溜部3内から移送されてきた食品収納部2の図示せぬ食品に向かってガス15を吹き付け、食品に残存付着している不凍液6を除去する不凍液除去部4と、前述の不凍液貯溜部3と不凍液除去部4間の食品収納部2の移送を行う移送部5とを備えている。なお、ガス15には通常は高圧空気を使用するが、高圧窒素などを使用してもよく、食品の品質を劣化させないものであれば、特には限定されない。
【0037】
このうちの不凍液貯溜部3においては、周囲が断熱材13で覆われ密閉された不凍液槽7内に、60%エタノール水溶液が不凍液6として貯溜されており、この不凍液6は、ろ過などによる図示せぬ浄化装置によって清浄化されると共に、冷却装置によって約マイナス35度の低温に常時保たれている。
【0038】
更に、不凍液槽7の右側上面には、前後に2個の撹拌装置8が配設されている。この撹拌装置8は、不凍液槽7の天板7aの右側上面に立設される電動モータ8aと、この電動モータ8aの下端より不凍液槽7内に垂下される撹拌軸8bと、この撹拌軸8bで異なる高さの3カ所に固設された攪拌羽根8cとを有している。
【0039】
このため、高さの異なる3枚の攪拌羽根8cが、不凍液槽7内で、不凍液6に浸漬された状態の食品収納部2の右方で前後に配置されており、計6枚の攪拌羽根8cによって食品収納部2の右側の不凍液6が強力に撹拌される。
【0040】
これにより、不凍液槽7内には複雑な渦流が発生し、食品収納部2内に収納された食品に対して様々な方向から不凍液6が衝突し、食品全体をむらなく冷却することができ、冷凍後の食品品質を向上させることができる。
【0041】
加えて、撹拌装置8を設けた天板7aの近傍には排気用のダクト9が連通されており、たとえ不凍液6の撹拌によって多量のエタノールガスが発生しても、効率良く排気できるようにしている。
【0042】
以上のような構成の不凍液貯溜部3を備えることによって、食品収納部2を不凍液6内に浸漬させると、食品中の細胞中の水分が低温で瞬間的に凍結するため、細胞内の氷結晶が小さくなり、冷凍処理によって細胞が破壊されることがない。
【0043】
また、移送部5は、食品収納部2を載置して保持する載置枠体10と、この載置枠体10に下端が連結される吊持具11と、この吊持具11の上部のチェーン11dを巻き取って載置枠体10と一緒に食品収納部2を昇降させる昇降駆動装置12とを有している。
【0044】
このうちの載置枠体10においては、前後に配置された2本の角パイプ状の左右方向フレーム10b2の内側間を、左右に配置された6本の角パイプ状の前後方向フレーム10b1により連結して底枠組み10bが形成されている。
【0045】
そして、左右外側から2番目の前後方向フレーム10b1の上面に、前述の食品収納部2の四隅から垂設される角パイプ状の4本の支持脚14a1、14a2、14b1、14b2の下端部が置かれるようにして、前述の食品収納部2が底枠組み10b上に載置されている。
【0046】
更に、この底枠組み10bで左右外側から2番目の前後方向フレーム10b1からは、短い角パイプ状の第1ストッパ16aが立設され、左右外側から1番目と2番目の前後方向フレーム10b1間を連結する連結部材18からは、短い角パイプ状の第2ストッパ16bが立設されており、前述の支持脚14a1、14a2、14b1、14b2の下端部の前面に第1ストッパ16aの後面が当接され、支持脚14a1、14a2、14b1、14b2の下端部の外側面に第2ストッパ16bの内側面が当接されるようにしている。
【0047】
これにより、載置枠体10が昇降中に揺れて支持脚14a1、14a2、14b1、14b2の下端部が底枠組み10b上を摺動しようとしても、第1ストッパ16aと第2ストッパ16bから成る規制部材16に支持脚14a1、14a2、14b1、14b2の下端部が当接し、食品収納部2がそれ以上摺動しないようにすることができ、昇降中の食品収納部2の重心位置を安定化させ、移送作業の作業効率を向上させることができる。
【0048】
加えて、このような底枠組み10bの上方には、平面視でこの底枠組み10bよりも大きな矩形状の上板10aが略水平に配置され、これら上板10aと底枠組み10bとの間は、中枠組み10cを介して連結されている。
【0049】
中枠組み10cは、四隅に配設された4本の角パイプ状の縦フレーム10c3間を、左右に配置された4本の角パイプ状の前後方向フレーム10c1と、後のみに配置された2本の角パイプ状の左右方向フレーム10c2とにより連結して形成される。
【0050】
これにより、載置枠体10は、上面に位置する上板10aを除き、各フレーム間には大きな隙間が設けられており、この隙間を通って、不凍液6やガス15を食品収納部2に供給することができ、不凍液6の供給作業や除去作業を効率的に行うことができる。
【0051】
更に、平面視で、前述の天板7aの左側に形成された天板開口7a1よりも、上板10aは大きく、底枠組み10b、中枠組み10cは小さく形成されている。
【0052】
これにより、冷凍時に載置枠体10を下降すると、底枠組み10b、中枠組み10cは、天板開口7a1を通って不凍液槽7内に挿入される一方、上板10aは、天板開口7a1の内周縁部上に、不凍液槽7内が密閉可能に係止されて、載置枠体10が天板7aよって吊持される。このため、簡単な構成で、食品収納部2を載置した載置枠体10を、天板7aに吊持した状態で食品収納部2を冷凍すると共に、載置枠体10の上板10aにより、天板開口7a1を閉塞してエタノールガスの漏出を防止することができ、複雑な吊持構造や閉塞構造が不要となって、部品コスト、装置コストの低減を図ることができる。
【0053】
逆に、冷凍後に載置枠体10を昇降駆動装置12によって上昇させると、上板10aが、不凍液除去部4内を上昇しつつ、下方の底枠組み10b、中枠組み10cは、不凍液貯溜部3内の不凍液槽7内から天板開口7a1を通って不凍液除去部4内に移送される。
【0054】
吊持具11においては、上板10aの四隅近傍から立設されたリング10a1にフック11aが係止され、このフック11aを下端に固定した4本のワイヤ11bの上端が、単一のリング11cに連結され、このリング11cの上端は、チェーン11dを介して、昇降駆動装置12における電動モータ12aの図示せぬ出力部に連結されている。
【0055】
昇降駆動装置12は、天井19に前後方向に延設されたレール12b1などから成る前後移動機構12bによって、前後方向に移動可能に構成されている。
【0056】
これにより、昇降駆動装置12の前後位置を微調整することで、この昇降駆動装置12に吊持具11を介して吊下される載置枠体10の底枠組み10b、中枠組み10cを、天板開口7a1に対して適正な前後位置に設定することができ、載置枠体10の天板開口7a1との接触を防いで、移送作業の作業効率を更に向上させることができる。
【0057】
以上のような構成の移送部5を備えることによって、不凍液貯溜部3で冷凍してから不凍液除去部4までの食品の移動を短時間で行い、食品の温度上昇をできるだけ抑えることができる。
【0058】
次に、前述した食品収納部2について、図2乃至図5により詳細に説明する。
食品収納部2は、食品24を収納する収納ケース20と、内側の端面同士が突き合うように対向配置される左右2枚の棚板45、46から成ると共に、その上面にガイド部材49を介して収納ケース20を載置可能な棚板対21と、棚板対21を上下方向に並列支持するための支持枠体22と、この支持枠体22の前面開口22aを閉じるための内扉23とを有している。
【0059】
このうちの収納ケース20においては、図5(b)に示すように、ケース本体20aは、上方に開口する浅い有底箱状に形成されると共に、その壁部は、不凍液6の出入りを許容する液体透過性であって、そのほぼ全面に多数の孔20dが形成されている。
【0060】
更に、ケース本体20aの底面20a1には、仕切り板20bが、ガス15の噴射方向27と略交差するようにして立設され、ケース本体20aの内部の収納空間20cが、噴射方向27前後の第1空間部20c1と第2空間部20c2とに画設されるようにしている。そして、食品24は、このように、仕切り板20bによって区切られて形成された空間部20c1、20c2内に、小分けして収納することができる。
【0061】
これにより、食品24の単位体積当たりの表面積を大きくし、不凍液6内に浸漬した際の冷却効率を向上させることができ、冷凍処理の処理効率を向上させることができる。
【0062】
加えて、仕切り板20bの前後の端部20b1、20b2と、ケース本体20aの前後の内壁20a2、20a3との間に、不凍液6が噴射方向27に向かって流動するための流動路28a、28bが形成されている。
【0063】
これにより、収納ケース20内では、ガス15が噴射方向27に向かって流れると、その流れが仕切り板20bで乱されて乱流となり、この乱流状態のガス15が、仕切り板20bに区切られて形成された複数の空間部20c1、20c2の間を、流動路28a、28bを介して自在に流動する。すると、収納ケース20内の食品24の表面や収納ケース20の表面の隅々までガス15が行き渡り、このガス15による不凍液6の排出を効率的に行うことができ、不凍液6の除去作業にかかる時間を短縮し、冷凍処理の処理効率を向上させることができる。
【0064】
また、支持枠体22においては、図3に示すように、前述した4本の支持脚14a1、14a2、14b1、14b2のうち、左側の前後の支持脚14a1、14a2間を、上から順に配置された3本の角パイプ状の前後方向フレーム29a、29b、29cにより連結して左枠組み31が形成され、右側の前後の支持脚14b1、14b2間を、上から順に配置された3本の角パイプ状の前後方向フレーム30a、30b、30cにより連結して右枠組み32が形成されている。
【0065】
そして、左右の枠組み31、32の上端部間は、前中後の左右方向フレーム33a、33b、33cにより連結され、左右の枠組み31、32の下端部間は、前中後の左右方向フレーム33d、33e、33fにより連結されている。そして、前側上下の左右方向フレーム33a、33dの左右略中央部間は、縦フレーム34aにより連結され、後側上下の左右方向フレーム33c、33fの左右略中央部間は、縦フレーム34bにより連結されている。
【0066】
更に、前述の左右の枠組み31、32内は、いずれも、前後の縦フレーム36、36によって前後方向に3分割された上で網材37に覆われ、枠組み31、32の上端部間は、前述の左右方向フレーム33a、33b、33cによって前後方向に2分割された上で網材37に覆われ、枠組み31、32の下端部間も、前述の左右方向フレーム33d、33e、33fによって前後方向に2分割された上で網材37に覆われ、枠組み31、32の後端部間も、前述の左右方向フレーム33c、33fと、その上下途中部の左右方向フレーム33gと、縦フレーム34bとによって、4分割された上で網材37に覆われている。
【0067】
これにより、支持枠体22は、その前端部のみが開口されており、この前面開口22aを除いた外周面は、全て網材37で覆うようにしている。
【0068】
また、内扉23が、図2に示すように、この前面開口22aに左右開き可能に取り付けられている。この内扉23は、枠内が上下方向に2分割された枠組み23a1内を網材37で覆った左扉部23aと、枠内が上下方向に2分割された枠組み23b1内を網材37で覆った右扉部23bとから構成される。
【0069】
そして、左右の扉部23a、23bの左右外縁部と前側の左右の支持脚14a1、14b1との間には、ヒンジ38が複数介設されており、このヒンジ38を中心にして、左右の扉部23a、23bが外方に水平回動できるようにしている。
【0070】
更に、このうちの左扉部23aの右端縁の上部と左右方向フレーム33aからの突出部39との間、左扉部23aの右端縁の下部と左右方向フレーム33dからの突出部40との間には、それぞれ、連結具41、42が介設されており、この上下の連結具41、42を開操作した後に、左右の取っ手43を把持して手前に引くことにより、左右の扉部23a、23bを開いて支持枠体22内へのアクセスが可能となる。
【0071】
これにより、支持枠体22の外周面全てを網材37で覆うことができる。すなわち、不凍液6内に浸漬する間、ガス15を吹き付ける間のいずれにおいても、内扉23を閉めた状態で不凍液6やガス15を食品24に供給することができ、内部に収納した食品24が液圧や風圧によって外に飛び出すのを確実に防止すると共に、必要に応じて内扉23を開くだけで支持枠体22内の食品24に容易にアクセスすることができる。
【0072】
また、棚板対21においては、左右の棚板45、46は平面視矩形状であって、図3乃至図5に示すように、このうちの左棚板45の外端縁45aは、左側の前後の支持脚14a1、14a2間に橋設固定される一方、左棚板45の内端縁45bは、前後の縦フレーム34a、34b間に橋設固定されると共に、内端縁45bは外端縁45aよりも低位置に配置されており、左棚板45が、縦フレーム34a、34b側、すなわち左右の棚板45、46が対向する対向中心面47側に向かって、左棚板45の板面が下がるように所定の傾斜角44で傾斜配置されている。
【0073】
同様に、右棚板46の外端縁46aは、右側の前後の支持脚14b1、14b2間に、左棚板45の外端縁45aと略同一高さで橋設固定される一方、右棚板46の内端縁46bは、前後の縦フレーム34a、34b間に、左棚板45の内端縁45bと略同一高さで橋設固定されると共に、内端縁46bは外端縁46aよりも低位置に配置されており、右棚板46も、対向中心面47側に向かって、その板面が下がるように前述の傾斜角44で傾斜配置されている。
【0074】
更に、左棚板45の外端縁45a、内端縁45b、及び右棚板46の外端縁46a、内端縁46bのいずれにも、断面視L字状で長尺の介装部材48が、その屈曲部48aが各端縁に当接するように固設されている。そして、この介装部材48の縦板部48bには、複数の矩形状の連通孔48b1が長手方向に並設されている。
【0075】
これにより、後述するようにして、この介装部材48上にガイド部材49を介して載置される収納ケース20に対し、連通孔48b1を通って、不凍液6やガス15を食品収納部2内に供給することができ、不凍液6の供給作業や除去作業を効率的に行うことができる。
【0076】
加えて、左棚板45の左右の介装部材48間、右棚板46の左右の介装部材48間のいずれにも、対向中心面47に対して平行にガイド部材49が介設固定されている。
【0077】
そして、このガイド部材49は、本実施例では前後方向に波打つ波板状であって、上に凸状の山部49aと凹状の谷部49bが交互に列設して形成され、このうちの山部49aの上に、前述の収納ケース20が、仕切り板20bが前後方向となるようにして載置される。
【0078】
これにより、ガイド部材49は棚板45、46、収納ケース20のいずれとも線接触となり、収納ケース20と棚板45、46間の伝熱面積が小さくて棚板45、46から収納ケース20への伝熱が抑制されると共に、収納ケース20とガイド部材49との摩擦も小さい。このため、収納ケース20内の食品24の温度上昇をできるだけ抑えて、冷凍した食品24の鮮度低下を抑制することができ、加えて、ガイド部材49上での収納ケース20の移動力が小さくて済み、食品収納部2内への収納ケース20の載置作業が容易となり、冷凍処理の処理効率を向上させることができる。
【0079】
更に、波板状のガイド部材49の収納ケース20側の谷部49bが、対向中心面47側に向かって下がる溝として、互いに平行に多数形成されており、収納ケース20内から外部へ流下排出された不凍液6は、多数の溝に流れ込んで対向中心面47側に向かって勢いよく流れていく。このため、不凍液6の除去作業にかかる時間を短縮し、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。
【0080】
以上のようにして、図3に示すように、棚板対21を支持枠体22によって上下方向に並列支持することで、液体透過性の収納ケース20を所定の傾斜姿勢で支持するためのケース支持構造50が構成される。
【0081】
これにより、前述の不凍液貯溜部3から引き上げる際に、収納ケース20内から外部へ流下排出された不凍液6は、図4図5に示すように、各棚板45、46上にあって傾斜した前述のガイド部材49上を対向中心面47側に向かって流れていき、その後、左右方向内側の介装部材48の連通孔48b1から前後の縦フレーム34a、34b間の空間を通る排液経路25を介して、下方にある不凍液槽7内に流れ落ちて排出される。このように、各収納ケース20から外部へ流下排出された不凍液6の排液経路25を、対向中心面47近傍に集中して配置することができ、排液経路25のための設置空間を小さくし、食品収納部2のコンパクト化を図ることができる。
【0082】
更に、収納ケース20のこのような傾斜支持に伴い、収納ケース20内に収容されている食品24の上面やケース側隙間も、水平面に対して傾斜した状態に保持されるようになり、不凍液貯溜部3から引き上げる際に、収納ケース20内で食品24の上面やケース側隙間などに溜まっている不凍液6が傾斜方向に円滑に流れ、更に、収納ケース20に開口された孔20dなどの液体透過部分を介して外部へ流下排出される。このため、不凍液槽7から引き上げた直後に付着残存している不凍液6が著しく減少し、後述するようにして、ガス15を食品24に向かって吹き付けても、食品24の上面やケース側隙間から多量の不凍液6が飛び散って隣接する食品24上に再付着したりすることがなく、不凍液6の除去作業にかかる時間を短縮することができる。
【0083】
また、前述の傾斜角44は、2度以上45度未満に設定するのが好ましい。
これは、傾斜角44が2度未満では、収納ケース20の傾斜が小さすぎて、収納ケース20内で食品24の上面やケース側隙間などに溜まっている不凍液6を、食品24の表面や収納ケース20の表面に沿って傾斜方向に流すことができず、収納ケース20内から外部への流下排出ができないからである。
【0084】
一方、傾斜角44が45度を超えると、収納ケース20の傾斜が大きすぎて、不凍液貯溜部3から引き上げてからのガス15の吹き付け時に、本実施例のように深さが浅い収納ケース20の場合には、ガス圧によって食品24が収納ケース20内を転動して傷付いたり、飛び出したりする恐れがあるからである。
【0085】
従って、傾斜角44を2度以上45度未満することにより、不凍液貯溜部3から引き上げる際、収納ケース20内から外部へ流下排出された不凍液6が、前述の如く、傾斜したガイド部材49上を対向中心面47側に向かって流れていき、その後、下方にある不凍液槽7内に流れ落ちるなどして円滑に排出させることができる。
【0086】
次に、前述した不凍液除去部4について、図1図2図6乃至図10により詳細に説明する。
図1図2図7に示すように、不凍液除去部4は、前述の不凍液貯溜部3の天板開口7a1を介して下端が不凍液槽7内に連通される中空直方体状の不凍液除去室51と、この不凍液除去室51内で対向する左右の壁部51a、51bに設けられ、不凍液貯溜部3内から不凍液除去室51内に移送されてきた食品収納部2に向かって、ガス15を噴射する噴射部52と、この噴射部52へのガス15の給排を弁の開閉によって行う弁制御構成53とを有する。そして、この噴射部52には、ガス15を噴射方向可変に噴射するための可変噴射構造54が設けられている。
【0087】
このうちの不凍液除去室51においては、図1図2図6に示すように、上面は開放される一方、前面には、移送されてきた食品収納部2の前述の内扉23よりも外側に位置する外扉55が設けられている。
【0088】
この外扉55は、枠内が上下方向に2分割された枠組み55a1内を透明板材56で覆った左扉部55aと、枠内が上下方向に2分割された枠組み55b1内を透明板材56で覆った右扉部55bとから構成される。
【0089】
そして、左右の扉部55a、55bの左右外縁部と、左右の壁部51a、51bの前部との間には、ヒンジ57が複数介設されており、このヒンジ57を中心にして、左右の扉部55a、55bが外方に水平回動できるようにしている。
【0090】
更に、このうちの左扉部55aの右端縁の上下略中央部と、右扉部55bの左端縁の上下略中央部との間には、連結具58が介設されており、この連結具58を開操作した後に、左右の取っ手59を把持して手前に引くことにより、左右の扉部55a、55bを開いて不凍液除去室51内へのアクセスが可能となる。
【0091】
これにより、ガス15の吹き付けによる不凍液除去室51内における不凍液6の除去作業の間、外扉55を閉めた状態で、除去作業の状況を室外から透明板材56を通して視認することが可能となり、ガス15の噴出状況、不凍液6の残存状況などを迅速に把握して、噴出条件の適正化を即座に行うことができる。
【0092】
不凍液除去室51の後壁部51cには、正面視略中央に凹み51c1が形成され、この凹み51c1には、屋外に通じる排気口51c2が開口されている。
【0093】
これにより、不凍液6の除去作業中に、左右面は左右の壁部51a、51bに、後面は後壁部51cに、前面は外扉55に、上面は載置枠体10の上板10aに、下面は不凍液槽7によってそれぞれ閉塞されて、不凍液除去室51内が密閉状態となっても、噴射部52から噴射されたガス15を、排気口51c2を介して常に屋外に排気することができ、不凍液除去室51のガス圧が高くなってガス15の噴射量が低下するのを確実に防止することができるようにしている。
【0094】
また、噴射部52は、図6に示すように、左壁部51aに配置される左噴射部52Lと、不凍液貯溜部3内から移送されてきた食品収納部2を挟んで、この左噴射部52Lに対向配置される右壁部51bの右噴射部52Rとから成るが、両噴射部52L、52Rは、前述の対向中心面47を中心とした左右面対称の関係にあって構成が略同一であることから、右噴射部52Rを中心に説明し、左噴射部52Lの詳細な説明は省略する。
【0095】
図7図8に示すように、右噴射部52Rにおいては、右壁部51bの左側面には、前後方向に軸心を有する第1ノズル管61乃至第7ノズル管67が、上から順に互いに平行に配置されると共に、ノズル管61乃至67のいずれも、その前後途中部が、右壁部51bから左方に突出する前後の回動支持リング60a、60bによって、軸心周りを回動可能に右壁部51bに設置されている。そして、これらのノズル管61乃至67の左側のいずれにも、長孔状のスリット孔61a乃至67aが軸心に平行に穿孔されている。
【0096】
このようなノズル管61乃至67の後端部のいずれにも、後端が閉塞された短パイプ状の嵌合キャップ68が外嵌固定され、この嵌合キャップ68からは径方向にリンクステー69が突出され、このリンクステー69の突出先部には、突出方向に長い長孔69aが穿孔されている。
【0097】
例えば、右噴射部52Rにおいて、図8に示すような第1ノズル管61と第2ノズル管62とを有する上段噴射部分81の場合、右壁部51bの左側面からは、角パイプ状の支持ステー70が左方に突設され、この支持ステー70の先端には、上下方向に貫通する摺動孔71aが形成されたモータ台71が固定され、このモータ台71の上面には、ノズル管61、62を軸心周りに回転させる回転動力を出力するための電動モータ72が載置固定されている。
【0098】
そして、この電動モータ72から前方に突出するモータ軸72aには、駆動ピニオン73が外嵌固定され、この駆動ピニオン73のギア部73aは、前述の摺動孔71a内に挿通されて上下方向に揺動可能な従動ラック74Sの上部右面に設けたギア部74aに噛合されている。
【0099】
更に、この従動ラック74Sで摺動孔71aよりも下方に突出するリンク部74bの前面からは、上下の摺動ピン75が突設され、この摺動ピン75は、前述したリンクステー69の長孔69a内に、摺動可能かつ抜脱不能に挿嵌されている。
【0100】
これにより、駆動ピニオン73、従動ラック74S、摺動ピン75、リンクステー69、及び嵌合キャップ68を有する、部分ギア式のリンク機構76が構成される。そして、このリンク機構76において、上段噴射部分81の電動モータ72を駆動すると、モータ軸72aの回転と一緒に駆動ピニオン73が回転して従動ラック74Sが上下方向に揺動し、この上下揺動運動によって、リンクステー69から嵌合キャップ68を介して、ノズル管61、62には回転動力が同時に伝達される。
【0101】
なお、第3ノズル管63と第4ノズル管64を有する中段噴射部分82のリンク機構76は、前述の上段噴射部分81と同一であるが、第5ノズル管65、第6ノズル管66、及び第7ノズル管67を有する下段噴射部分83については、3本のノズル管65、66、67をリンクさせるため、前述の従動ラック74Sよりも長尺の従動ラック74Lが使用される。
【0102】
このようなリンク機構76を、各電動モータ72の出力部であるモータ軸72aと各噴射部分81、82、83との間に介設することにより、噴射部分81、82、83ごとに、スリット孔61a乃至67aを共通の噴射方向27に設定するための回転動力を、複数のノズル管に同時に伝達することができる。
【0103】
図6乃至図8に示すように、各噴射部分81、82、83の電動モータ72のいずれの電力線79も、電力供給の入切制御を行って駆動を制御する制御装置80に接続され、この制御装置80には、入切信号を伝達可能な信号線106を介して、ノズル管61乃至67の噴射角や、後述するガス15の噴射パターンを設定するためのキーボード、ディスプレイなどの入力装置84が接続されている。
【0104】
一方、上段噴射部分81のノズル管61、62の前端部、中段噴射部分82のノズル管63、64の前端部のいずれも、それぞれ管継手88を介して、右壁部51b内の二股の接続管85の二股部に接続され、この接続管85の基端部は、不凍液除去室51の外側に設けた上段と中段の連結管87の左端に接続されている。なお、この接続管85は、軟質塩化ビニルのような弾性変形能を有する素材より形成されており、ノズル管61乃至64が軸心周りを所定の回転量だけ回動できるようにしている。
【0105】
下段噴射部分83のノズル管65、66、67の前端部のいずれも、それぞれ管継手88を介して、右壁部51b内の三股の接続管86の三股部に接続され、この接続管86の基端部も、下段の連結管87の左端に接続されると共に、この接続管86も軟質塩化ビニルのような弾性変形能を有する素材より形成されており、ノズル管65、66、67が軸心周りを所定の回転量だけ回動できるようにしている。
【0106】
これにより、ノズル管61乃至67、リンク機構76、電動モータ72、制御装置80、接続管85、86、及び入力装置84を有する可変噴射構造54が構成される。そして、この可変噴射構造54において、制御装置80によって電動モータ72からの回転動力を調整してノズル管61乃至67の軸心周りの回転量を変更するだけで、スリット孔61a乃至67aの噴射角を所定の角度に設定できるため、従来のように、スリット孔を噴射ノズルとは別部品に形成し、この別部品を回動させてスリット孔の噴射角を変更するようなタイプの可変噴射構造に比べ、部品点数が少なくなり回動構造も単純化することができ、部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0107】
更に、このようなスリット孔61a乃至67aからガス15を噴射させることにより、幅方向に長い吹き付け範囲が形成され、通常の円形状や矩形状などのピット孔に比べて少ない孔数で、収納ケース20内に幅広く配置された食品24に対してもガス15をもれなく吹き付けることができ、噴射ノズルが少なくて済み部品数が減少すると共に、噴射圧のばらつきを小さくするための制御構造などが不要となる。しかも、前述のような可変噴射構造54を設けることにより、スリット孔61a乃至67aからのガス15の噴射方向27を最適化し、不凍液6がガス15によって押し戻されて食品24に再付着するのを防いだり、収納ケース20へのガス15の吹き付けを位置精度良く行うようにすることができ、不凍液6のエアーガンによる吹き飛ばしやタオルによる拭き取りが不要となって、不凍液6の除去作業にかかる時間を短縮することができる。
【0108】
図9に、このような構成の可変噴射構造54により、ノズル管61、62を所定の噴射角に設定した場合について説明する。ここで、噴射角とは、水平線91を基準線とし、この水平線91とのなす角度であって、本実施例では水平線91からの俯角を意味しているが、基準線は特に限定されるものではなく、ガス15の噴射方向27を確実に設定できるものであればよい。
【0109】
図9(a)に示す噴射角89は、スリット孔61a、61bから噴射するガス15の噴射方向92が、スリット孔61a、62aに対向する収納ケース20の傾斜方向94に平行となるように設定されている。
【0110】
すると、不凍液貯溜部3から引き上げた後も、食品24の表面や収納ケース20の表面に沿って傾斜方向94に流れている不凍液6の流れが、ガス15によって押し戻されることがなく、逆にガス15によって一層加速される。
【0111】
図9(b)に示す噴射角90は、スリット孔61a、61bから噴射するガス15の噴射方向93が、スリット孔61a、61bに対向する収納ケース20の側面20eの上下略中央と交差するように設定されている。
【0112】
すると、収納ケース20でガス15が当たる範囲が広くなって、収納ケース20の側面20eに開口された孔20dなどの液体透過部分を通り、収納ケース20内に多量のガス15が吹き込まれるため、不凍液貯溜部3から引き上げた後も食品24の表面や収納ケース20の表面に沿って傾斜方向94に流れている不凍液6の流れが、ガス15によって一層加速される。
【0113】
また、弁制御構成53においては、図1図2図6図7に示すように、冷凍装置1が設置された床面100上に電動式の高圧ポンプ95が載置固定されると共に、不凍液槽7の天板7aの右側上面で前側の撹拌装置8と前述の右壁部51bとの間には、ガス分岐管97が立設され、上下の固定具102によって右壁部51bの外側面に固定されている。そして、これら高圧ポンプ95の吐出口95aとガス分岐管97の下端開口97aとの間は、連結管96によって連通接続されている。
【0114】
更に、ガス分岐管97の上下方向3カ所からは、それぞれ、連結管98が後方に延設されて上中下段3個の電磁弁99に接続され、この上中下段3個の電磁弁99は、それぞれ、前述した上中下段3本の連結管87の右端に連通接続されている。
【0115】
これにより、この電磁弁99を挟んでスリット孔61a乃至67a側には、前述の接続管85、86と連結管87から成る連通路104が形成される一方、電磁弁99を挟んで高圧ポンプ95側には、前述の連結管96、ガス分岐管97、連結管98から成るガス供給路105が形成される。
【0116】
そして、前述の高圧ポンプ95に電力を供給する電力線103と、上中下段3個の電磁弁99に弁の開閉信号を伝達可能な信号線101とは、いずれも制御装置80に接続されている。
【0117】
更に、これらの電磁弁99は、それぞれ、前述の三つの連通路104を介して、第1ノズル管61のスリット孔61a、第2ノズル管62のスリット孔62aから成る上段スリット孔群111と、第3ノズル管63のスリット孔63a、第4ノズル管64のスリット孔64aから成る中段スリット孔群112と、第5ノズル管65のスリット孔65a、第6ノズル管66のスリット孔66a、及び第7ノズル管67のスリット孔67aから成る下段スリット群113とに連通され、これら上から順に並設されたスリット孔群111、112、113は、前述した可変噴射構造54によって、群ごとに共通の噴射方向27に設定することができる。
【0118】
なお、電動モータ72のモータ軸72aを、ノズル管61乃至67のうちの複数のノズル管ではなく単一のノズル管にリンク機構76を介して連結し、他のスリット孔とは噴射方向が異なる単一のスリット孔を設けるようにしてもよい。
【0119】
以上のような構成により、可変噴射構造54において、スリット孔群111、112、113ごとのノズル管61乃至67の噴射角を入力装置84で入力すると、噴射角に基づいた駆動電力が、電力線79を介して各電動モータ72に供給され、スリット孔61a乃至67aの噴射角が所定の角度になるまで、ノズル管61乃至67が回動される。同様に、弁制御構成53において、スリット孔群111、112、113ごとのガス15の噴射パターンを入力装置84で入力すると、噴射パターンに応じた弁開度信号が所定のタイミングで、信号線101を介して電磁弁99に送信され、所定の噴射パターンとなるように、上中下段3個の電磁弁99が所定のタイミングで開閉動作される。
【0120】
例えば、図6図7図10(a)に示すように、このような弁制御構成53によって、上段スリット孔群111、中段スリット孔群112、下段スリット群113の順に、各スリット群に接続されている電磁弁99のみを開弁してガス供給路105を連通路104に連通するようにして、略同一の噴射ガス量を各スリット群に順に供給し、これを何度も繰り返して行う噴射パターン107を設けることができる。この噴射パターン107では、スリット孔61a乃至67aまたはスリット孔群111、112、113のうち、最上位置のものから最下位置のものまで、ガス供給路105への連通対象が単一孔ずつまたは複数孔ずつ順に切り替わる切り替え動作が繰り返して行われる。
【0121】
これにより、上段スリット孔群111からのガス15によって、収納ケース20の壁部の孔20dや排液経路25などを通り、上段収納ケース群121から不凍液6が外部へ流下排出され、この不凍液6は、直下にある中段収納ケース群122に流下し、この中段収納ケース群122内に元々溜まっていた不凍液6と合流する。更に、この合流した不凍液6は、中段スリット孔群112からのガス15によって、孔20dや排液経路25などを通り、中段収納ケース群122から外部へ流下排出され、この排出された不凍液6は、直下にある下段収納ケース群123に流下し、この下段収納ケース群123内に元々溜まっていた不凍液6と合流し、その後、この合流した不凍液6は、下段スリット孔群113からのガス15によって外部へ流下排出され、下方にある不凍液槽7内に流れ落ちる。このようにして、不凍液6が上から順に排出されていき、これを繰り返すことにより、上から下に向かって流れる不凍液6の流れを阻害することなく、ガス15による不凍液6の排出を効率的に行うことができ、不凍液6の除去作業にかかる時間を一層短縮し、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。
【0122】
以上のようにして、不凍液除去部4が、所定の噴射方向27に設定された単一のスリット孔と、共通の噴射方向に設定された複数のスリット孔61a乃至67aから成るスリット孔群111、112、113とのうちの少なくとも二つが、上下方向に並設された噴射部52と、ガス供給路105へのスリット孔61a乃至67aの連通または遮断を、電磁弁99の開閉によって行う弁制御構成53とを有する場合は、ガス供給路105と連通するスリット孔61a乃至67aを電磁弁99の開閉操作によって変更するだけで、ガス15を噴射するスリット孔61a乃至67aが選択され、ガス15の噴射高さが上下方向に自在に変更される。
【0123】
これにより、外部への不凍液6の流下排出の加速に適した噴射パターン107で不凍液6の除去作業を行うことができ、不凍液6の除去作業にかかる時間を一層短縮し、冷凍処理の処理効率を更に向上させることができる。
【0124】
なお、上述した部分ギア式のリンク機構76については、例えば、モータ軸72aに軸心から偏心して設けた図示せぬ偏心ピンに、リンク部74bのようなリンク部材からリンクステー69のような接続部材を介して、ノズル管61乃至67を連結し、その上で、電動モータ72を駆動してモータ軸72aを回転させると、偏心ピンによってリンク部材が上下方向に揺動してノズル管61乃至67が回転する、いわゆる偏心カム式のリンク機構を用いてもよく、リンク機構の構造は、本実施例に限定されるものではない。
【0125】
更に、ノズル管61乃至67のうち、例えば、3本のノズル管61乃至63のみを壁部51a、51bの上下方向に間隔をあけて配置し、単一の電動モータ72と単一のリンク機構76によってノズル管61乃至63を回転することにより、スリット孔61a乃至63aを共通の噴射方向に設定するようにしてもよい。これにより、部品点数を著しく減らし、更なる、部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0126】
次に、本発明を適用した冷凍装置1の冷凍方法について、図1図2図5図6図10(b)により説明する。
初めに、食品24を収納した液体透過性の収納ケース20が所定の傾斜姿勢で配置された食品収納部2を、不凍液貯溜部3内に貯溜した不凍液6に浸漬して食品24を冷凍する冷凍工程S1が行われ、続いて、食品24を冷凍した後、移送部5により、食品収納部2を不凍液貯溜部3から不凍液除去部4まで移送する移送工程S2が行われる。その後、不凍液除去部4で、食品収納部2の食品24に向かって、ガス15をノズル管61乃至67の長孔状のスリット孔61a乃至67aから噴射方向可変に吹き付けることにより、食品24に残存付着している不凍液6を除去する不凍液除去工程S3が行われる。
【0127】
このうちの冷凍工程S1においては、収納ケース20の傾斜支持に伴い、収納ケース20内に収容されている食品24の上面やケース側隙間も、水平面に対して傾斜した状態に保持されるようになり、不凍液貯溜部3から引き上げる際に、収納ケース20内で食品24の上面やケース側隙間などに溜まっている不凍液6が傾斜方向に円滑に流れ、更に、収納ケース20に開口された孔20dなどの液体透過部分を介して外部へ流下排出される。このため、不凍液槽7から引き上げた直後に付着残存している不凍液6が著しく減少し、ガス15を食品24に向かって吹き付けて除去する場合でも、食品24の上面やケース側隙間から多量の不凍液6が飛び散って隣接する食品24上に再付着したりすることがなく、不凍液6の除去作業にかかる時間を短縮することができる。
【0128】
しかも、冷凍した食品24に対し、解凍後も栄養分や旨味成分を含むドリップが少なく高い鮮度を維持させることができる。すなわち、食品収納部2を低温の不凍液6内に浸漬すると、食品24中の細胞中の水分が低温で瞬間的に凍結するため、細胞内の氷結晶が小さくなり、冷凍処理によって細胞が破壊されることがない。
【0129】
また、移送工程S2においては、冷凍してから不凍液除去部4までの食品24の移動を所定の移送装置である移送部5によって短時間で行えるようにして、食品24の温度上昇をできるだけ抑えることができる。
【0130】
また、不凍液除去工程S3においては、ノズル管61乃至67に形成したスリット孔61a乃至67aからガス15を噴射させることにより、幅方向に長い吹き付け範囲が形成され、少ない孔数で、収納ケース20内に幅広く配置された食品24に対してもガス15をもれなく吹き付けることができ、通常の円形状や矩形状などのピット孔に比べ、噴射ノズルが少なくて済み部品数が減少すると共に、噴射圧のばらつきを小さくするための制御構造などが不要となる。
【0131】
しかも、ガス15をスリット孔61a乃至67aから噴射方向可変とすることにより、スリット孔61a乃至67aからのガス15の噴射方向を最適化し、不凍液6がガス15によって押し戻されて食品24に再付着するのを防いだり、収納ケース20へのガス15の吹き付けを位置精度良く行ったりすることができ、不凍液6のエアーガンによる吹き飛ばしやタオルによる拭き取りが不要となって、不凍液6の除去作業にかかる時間を短縮することができる。
【0132】
以上のように、本発明を適用した食品の冷凍装置およびその冷凍方法は、簡単で安価な構成でありながら、作業者の作業負担が小さく、しかも食品を高い処理効率で冷凍処理が可能なものとなっている。
【符号の説明】
【0133】
1 冷凍装置
2 食品収納部
3 不凍液貯溜部
4 不凍液除去部
5 移送部
6 不凍液
15 ガス
20 収納ケース
20a ケース本体
20a1 底面
20a2、20a3 内壁
20b 仕切り板
20b1、20b2 端部
20e 側面
21 棚板対
22 支持枠体
24 食品
27、92、93 噴射方向
28a、28b 流動路
44 傾斜角
45 左棚板(棚板)
46 右棚板(棚板)
47 対向中心面
49 ガイド部材
50 ケース支持構造
52 噴射部
53 弁制御構成
54 可変噴射構造
61、62、63、64、65、66、67 ノズル管(噴射ノズル)
61a、62a、63a、64a、65a、66a、67a スリット孔
72 電動モータ(駆動モータ)
72a モータ軸(出力部)
76 リンク機構
80 制御装置
85、86 接続管
89、90 噴射角
92 噴射方向
94 傾斜方向
99 電磁弁(弁)
105 ガス供給路
107 噴射パターン
111 上段スリット孔群(スリット孔群)
112 中段スリット孔群(スリット孔群)
113 下段スリット孔群(スリット孔群)
S1 冷凍工程
S2 移送工程
S3 不凍液除去工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10