【課題】本発明の目的は、ピエゾ抵抗効果等を利用した圧力検出素子を使用した圧力センサにおいて、温度変化による圧力検出素子の歪を低減し、精度の向上、及び、温度応答性の改善を図ることができる圧力センサを提供することである。
【解決手段】本発明の圧力センサ100は、流体の圧力を検出する圧力検出素子126と、圧力検出素子126を支持する支持部材125と、圧力検出素子126と支持部材125を接着して固定する、接着剤を塗布して形成される接着剤層125Aとを備える圧力センサにおいて、接着剤層125Aは、初期硬化層125A1と、チップマウント硬化層125A2との2層から構成されることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の圧力センサ100の圧力検出素子126の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0017】
図1において、圧力検出素子126は、接着剤を塗布して形成される接着剤層125Aを介して支柱125等の支持部材に取り付けられる。その後、圧力検出素子126のリード端子(図示を省略する)と、複数のリードピン128は、ワイヤボンディング工程により、金またはアルミニウム製のボンディングワイヤ126aにより接続される。
【0018】
圧力検出素子126として、ここではピエゾ抵抗効果等を利用した半導体圧力センサチップを使用する。ピエゾ抵抗効果を利用した圧力検出素子126は、ピエゾ抵抗効果を有する材料(例えば、単結晶シリコン)からなるダイヤフラムを有する半導体基板部と、ガラス等からなる台座部とから主に構成される。半導体基板部と、台座部は、陽極接合法などにより接合され、半導体基板部のダイヤフラムと、台座部との間の空間は、基準圧力チャンバとなる。半導体基板部のダイヤフラムには、複数の半導体歪みゲージが形成され、これらの半導体歪みゲージをブリッジ接続したブリッジ回路が構成される。このブリッジ回路により、外気圧と基準圧力チャンバとの圧力差により生じたダイヤフラムの変形を、半導体歪みゲージのゲージ抵抗の変化として、電気信号として取り出し、流体の圧力が検出される。
【0019】
支柱125は、ここでは、Fe・Ni系合金で形成されるものとしたが、これには限定されず、ステンレス等その他の金属材料で形成されるものとしてもよい。また、支柱125を設けずに、ハーメチックガラス124の凹部を形成する平坦面に直接的に固定されるように構成されてもよい。
【0020】
接着剤層125Aとしては、シリコーン系接着剤を使用するものとしてもよい。例えば、柔軟性のある付加型の一成分系であるものが好ましいが、ゲル状の接着剤でも良い。シリコーン系接着剤は、例えば、低分子シロキサン結合を有する接着剤とされる。
【0021】
また、シリコーン系接着剤は、例えば、ベースポリマーのポリシロキサンのケイ素原子上の置換基がメチル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等のフッ素化炭化水素基などであってもよい。また、下記の構造式を有する縮合型シリコーンゴムを主成分とするものでもよい。
【0023】
シリコーン系接着剤は、例えば、下記の構造式を有する付加型シリコーンゴムを主成分とするものでもよい。
【0025】
なお、シリコーン系接着剤は、2成分系であってもよく、縮合型、UV硬化型であってもよい。シリコーン系接着剤の代わりに、二成分系のウレタン系接着剤が用いられても良い。また、フッ素系接着剤が使用されても良く、フッ素系接着剤は、自己接着性を有する液状フッ素エラストマーとされるが、ゲル状の接着剤でも良い。
【0026】
さらに、フッ素系接着剤に代えて、例えば、充填材料としてフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応基を含む下記の構造式を有するエラストマーであってもよい。
【0028】
さらに、フッ素系接着剤に代えて、例えば、下記の構造式を有するパーフロロエラストマーであってもよい。
【0030】
さらにまた、フッ素系接着剤に代えて、例えば、下記の構造式を有するフッ素ゴムであってもよい。
【0032】
図1に示すように、本発明の圧力センサ100では、接着剤層125Aは、初期硬化層125A1と、チップマウント硬化層125A2の2層から構成される。初期硬化層125A1は、圧力検出素子126を接着する前に、接着剤層125Aを所定の厚さに維持するために、事前に塗布して硬化させておくものである。初期硬化層125A1は、ここでは、全体に平坦に形成される。チップマウント硬化層125A2は、初期硬化層125A1が塗布、硬化された後に、実際に圧力検出素子126をマウントする際に塗布されるものである。なお、ここでは、初期硬化層125A1、及び、チップマウント硬化層125A2の材質は、上述の接着剤層125Aの材質のうちの同じ1種類の材質を使用するが、相性のよい材質であれば、異なる材質でもよい。このように、接着剤層125Aが初期硬化層125A1と、チップマウント硬化層125A2の2層から構成されることにより、後述するように、接着剤層125Aの厚さを所定の厚さに維持することができ、温度変化による圧力検出素子126の歪を低減でき、精度向上及び温度応答性の改善を図ることができる。
【0033】
ここで、このような圧力検出素子126の取り付け構造を有する本発明の圧力センサの一例として、液封型の圧力センサ100の全体構造を説明する。
【0034】
図2は、本発明の圧力センサの一例として液封形の圧力センサ100の全体を示す縦断面図である。
【0035】
図2において、液封型の圧力センサ100は、圧力検出される流体を後述する圧力室112Aに導入する流体導入部110と、圧力室112Aの流体の圧力を検出する圧力検出部120と、圧力検出部120で検出された圧力信号を外部に送出する信号送出部130と、流体導入部110、圧力検出部120、及び、信号送出部130を覆うカバー部材140とを備える。
【0036】
流体導入部110は、圧力検出される流体が導かれる配管に接続される金属製の継手部材111と、継手部材111の配管に接続される端部と別の端部に溶接等により接続されるお椀形状を有する金属製のベースプレート112とを備える。
【0037】
継手部材111には、配管の接続部の雄ねじ部にねじ込まれる雌ねじ部111aと、配管から導入された流体を圧力室112Aに導くポート111bとが形成される。ポート111bの開口端は、ベースプレート112の中央に設けられた開口部に溶接等により接続される。なお、ここでは、継手部材111に雌ねじ部111aが設けられるものとしたが、雄ねじが設けられるものとしてもよく、または、継手部材111の代わりに、銅製の接続パイプが接続されるものとしてもよい。ベースプレート112は、継手部材111と対向する側に向かい広がるお椀形状を有し、後述するダイヤフラム122との間に圧力室112Aを形成する。
【0038】
圧力検出部120は、貫通孔を有するハウジング121と、上述の圧力室112Aと後述する液封室124Aとを隔絶するダイヤフラム122と、ダイヤフラム122の圧力室112A側に配置されるダイヤフラム保護カバー123と、ハウジング121の貫通孔内部にはめ込まれるハーメチックガラス124と、ハーメチックガラス124の圧力室112A側の凹部とダイヤフラム122との間にシリコーンオイル、または、フッ素系不活性液体等の圧力伝達媒体が充填される液封室124Aと、ハーメチックガラス124の中央の貫通孔に配置される支柱125と、支柱125に固定され液封室124A内部に配置される圧力検出素子126と、液封室124Aの周囲に配置される電位調整部材127と、ハーメチックガラス124に固定される複数のリードピン128と、ハーメチックガラス124に固定されるオイル充填用パイプ129とを備える。
【0039】
ハウジング121は、例えばFe・Ni系合金やステンレス等の金属材料により形成される。ダイヤフラム122と、ダイヤフラム保護カバー123は、共に金属材料で形成され、共にハウジング121の圧力室112A側の貫通孔の外周縁部において溶接される。ダイヤフラム保護カバー123は、ダイヤフラム122を保護するために圧力室112A内部に設けられ、流体導入部110から導入された流体が通過するための複数の連通孔123aが設けられる。ハウジング121は、圧力検出部120が組み立てられた後、流体導入部110のベースプレート112の外周縁部において、溶接等により接続される。
【0040】
支柱125は、液封室124A側に、圧力検出素子126が接着剤層125Aにより接着して固定されるものである。上述したように、本発明の圧力センサ100では、接着剤層125Aは、初期硬化層125A1と、チップマウント硬化層125A2の2層から構成される。圧力検出素子126は、流体導入部110から圧力室112Aに導入された流体の圧力を、ダイヤフラム122を介して液封室124A内のシリコーンオイル等の圧力変動として検出するものである。
【0041】
電位調整部材127は、特許第3987386号公報に記載されているように、圧力検出素子126を無電界(ゼロ電位)内に置き、フレームアースと2次電源との間に生じる電位の影響でチップ内の回路などが悪影響を受けないようにするために設けられる。電位調整部材127は、液封室124A内の圧力検出素子126とダイヤフラム122との間に配置され、金属等の導電性の材料で形成され、圧力検出素子126のゼロ電位に接続される端子に接続される。
【0042】
ハーメチックガラス124には、複数のリードピン128と、オイル充填用パイプ129が貫通状態でハーメチック処理により固定される。本実施形態では、リードピン128として、全部で8本のリードピン128が設けられている。すなわち、外部入出力用(Vout)、駆動電圧供給用(Vcc)、接地用(GND)の3本のリードピン128と、圧力検出素子126の調整用の端子として5本のリードピン128が設けられている。なお、
図2においては、8本のリードピン128のうち4本が示されている。複数のリードピン128は、例えば、金またはアルミニウム製のボンディングワイヤ126aにより圧力検出素子126に接続され、圧力検出素子126の外部入出力端子を構成している。
【0043】
オイル充填用パイプ129は、液封室124Aの内部に圧力伝達媒体として、例えば、シリコーンオイル、または、フッ素系不活性液体等を充填するために設けられる。なお、オイル充填用パイプ129の一方の端部は、オイル充填後、
図2の点線で示されるように、押し潰されて閉塞される。
【0044】
信号送出部130は、圧力検出部120の圧力室112Aに対向する側に設けられ、複数のリードピン128を配列する端子台131と、端子台131に接着剤132aにより固定され、複数のリードピン128に接続される複数の接続端子132と、複数の接続端子132の外端部に半田付け等により電気的に接続される複数の電線133と、ハウジング121の上端部と端子台131の間にシリコーン系接着剤で形成される静電気保護層134とを備える。なお、静電気保護層134は、エポキシ樹脂などの接着剤でも良い。
【0045】
端子台131は、略円柱形状であって、当該円柱の中段付近に、上述の複数のリードピン128をガイドするためのガイド壁を有する形状に形成され、樹脂材料、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)により形成される。端子台131は、例えば、静電気保護層134に使用されている接着剤により、圧力検出部120のハウジング121の上部に固定される。
【0046】
接続端子132は、金属材料で形成され、端子台131の上述の固定壁より上段の円柱側壁に垂直に接着剤132aにより固定される。なお、本実施形態では、外部入出力用(Vout)、駆動電圧供給用(Vcc)、接地用(GND)の3本の接続端子132が設けられる。3本の接続端子132の内端部は、それぞれ対応するリードピン128に溶接等により電気的に接続されるが、この接続方法には限定されず、その他の方法で接続してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、3本の接続端子132に接続するために3本の電線133が設けられる。電線133は、電線133のポリ塩化ビニル(PVC)等で形成された被覆をはがした芯線133aに予め予備半田を行い、その撚り線を束ねたものを、上述の接続端子132に半田付けや溶接等により接続端子132に電気的に接続されるが、この接続方法には限定されず、その他の方法で接続してもよい。また、3本の電線133は、圧力センサ100の周囲を覆うカバー部材140から引き出された後、3本束ねた状態にしてポリ塩化ビニル(PVC)等で形成された保護チューブ(図示を省略する)で覆われる。
【0048】
静電気保護層134は、ESD保護回路の有無に影響されることなく、圧力検出部120の静電気耐力を向上させるために設けられるものである。静電気保護層134は、主に、ハーメチックガラス124の上端面を覆うようにハウジング121の上端面に塗布され、シリコーン系接着剤により形成される所定の厚さを有する環状の接着層134aと、複数のリードピン128が突出するハーメチックガラス124の上端面全体に塗布され、シリコーン系接着剤からなる被覆層134bとから構成される。端子台131の空洞部を形成する内周面であって、ハーメチックガラス124の上端面に向き合う内周面には、ハーメチックガラス124に向けて突出する環状突起部131aが形成されている。環状突起部131aの突出長さは、被覆層134bの粘性等に応じて設定される。このように環状突起部131aが形成されることにより、塗布された被覆層134bの一部が、表面張力により環状突起部131aと、端子台131の空洞部を形成する内周面のうちハーメチックガラス124の上端面に略直交する部分との間の狭い空間内に引っ張られて保持されるので、被覆層134bが端子台131の空洞部内における一方側に偏ることなく塗布されることとなる。また、被覆層134bは、ハーメチックガラス124の上端面に所定の厚さで形成されるが、
図2の部分134cに示すように、ハーメチックガラス124の上端面から突出する複数のリードピン128の一部分をさらに覆うように形成されてもよい。
【0049】
カバー部材140は、略円筒形状で圧力検出部120及び信号送出部130の周囲を覆う防水ケース141と、端子台131の上部に被される端子台キャップ142と、防水ケース141の内周面とハウジング121の外周面及び端子台131の外周面との間を充填する封止剤143とを備える。
【0050】
端子台キャップ142は、例えば樹脂材料により形成される。端子台キャップ142は、本実施形態では、上述の円柱形状の端子台131の上部を塞ぐ形状に形成され、ウレタン系樹脂等の封止剤143が充填される前に端子台131の上部に被される。しかしながら、端子台キャップ142はこの形状には限定されず、端子台131の上部及び防水ケース141の上部を一体として塞ぐ形状に形成され、封止剤143が充填された後に被されるものとしても、または、端子台キャップ142とは別に新たな蓋部材が設けられ、端子台キャップ142及び封止剤143が配置された後に、防水ケース141の上部に新たな蓋部材が被されるものとしてもよい。
【0051】
防水ケース141は、樹脂材料、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)により略円筒形状に形成され、円筒形状の下端部には、内側に向かうフランジ部が設けられている。このフランジ部には、防水ケース141の上部の開口部から挿入された信号送出部130及び圧力検出部120が接続された流体導入部110のベースプレート112の外周部が当接する。この状態で封止剤143を充填することにより圧力検出部120等の内部の部品が固定される。
【0052】
なお、本実施形態では、本発明の圧力センサの一例として、液封形の圧力センサ100を例にとり説明するが、これには限定されず、本発明は、ピエゾ抵抗効果等を利用した圧力検出素子を使用する全ての圧力センサに適用可能である。
【0053】
次に、従来の圧力検出素子の取り付け構造を説明する。
【0054】
図3は、従来の圧力センサ300の圧力検出素子326の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0055】
図3において、従来の圧力センサ300の圧力検出素子326は、接着剤を塗布して形成される接着剤層325Aを介して支柱325に取り付けられる。その後、圧力検出素子326のリード端子(図示を省略する)と、複数のリードピン128は、ワイヤボンディング工程により、金またはアルミニウム製のボンディングワイヤ126aにより接続される。従来の圧力センサ300では、接着剤層325Aが2層で構成されず、1層で構成されている。
【0056】
図3に示す従来の圧力センサ300の圧力検出素子326の取り付け構造では、圧力検出素子326、支柱325、及び、接着剤層325Aの線膨張係数の差異により、圧力検出素子326に歪が生じ、測定精度、及び、温度応答性が悪化するという問題が生じていた。つまり、例えば、周囲温度が低下した場合には圧力検出素子326と比較して接着剤層325Aが収縮し、周囲温度が上昇した場合には圧力検出素子326と比較して接着剤層325Aが膨張する。このため、圧力検出素子326、支柱325、及び、接着剤層325Aの線膨張係数の差異により熱応力が発生する。この熱応力が発生すると、圧力検出素子326が歪み、圧力検出素子の出力特性が変化し、圧力検出素子326の出力精度が低下する。また、接着剤層325Aの粘弾性の性質により、熱応力が変化した際に応力が平衡状態になるまでに時間がかかるため、温度応答性が悪化する。以下に、この点について説明する。
【0057】
図4(a)は、温度応答遅れのない場合の圧力検出素子326の出力特性を示す図であり、
図4(b)は、温度応答遅れのある場合の圧力検出素子326の出力特性を示す図である。
【0058】
図4(a)及び
図4(b)に示すいずれのグラフも、所定時間の高温状態から、所定時間の低温状態に変化させる温度サイクル条件における圧力検出素子326の出力精度を示している。
図4(a)及び
図4(b)に示すいずれのグラフも、高温状態で圧力検出素子326の出力精度が悪化していることがわかる。これに加えて、
図4(b)に示すグラフでは、温度応答遅れが発生している部分で、圧力検出素子326の出力精度が更に悪化していることがわかる。
【0059】
一般的に、
図4(a)及び
図4(b)に示す高温(あるいは低温)状態の圧力検出素子326の出力精度の悪化は、線形的に変化するため、圧力検出素子326の内部、あるいは、外部回路で補正が可能である。これに対して、温度応答遅れによる圧力検出素子326の出力精度の悪化は、非線形的に変化するため補正が難しいという問題がある。そこで、以下に、温度応答遅れの原因について検討する。
【0060】
図5(a)は、接着剤層325Aの有無による圧力検出素子326の出力精度を比較して示す図であり、
図5(b)は、荷重による変位を示す図である。
【0061】
図5(a)に示すグラフは、高温から低温への温度変化後の圧力検出素子326の出力精度を示している。上述のように、圧力検出素子326は、接着剤層325Aを介して支柱325に取り付けられている。ここでは、測定時に、接着剤層325Aを取り付けたままの場合と、接着剤層325Aを取り外した場合の比較を行っている。その結果、接着剤層325Aを取り外した場合には、圧力センサ300の出力精度の温度応答遅れがなくなっていることがわかる。
【0062】
図5(b)に示すグラフは、荷重がかかった場合の、上から弾性、粘性、塑性の変位を示している。このうち、弾性については、応答遅れなく、一度変位した後元に戻り、塑性については応答遅れなく変位した後元に戻らない。これに対して、粘性については、応答遅れが発生しながら変位し、元に戻らないことがわかる。つまり、温度応答遅れは、粘弾性を有する接着剤層325Aが原因であることがわかる。次に、この対策について検討する。
【0063】
図6は、接着剤層325Aの厚さと温度応答性の相関を示す図である。
【0064】
図6において、縦軸は、高温から低温への温度変化後の圧力検出素子326の出力精度を示し、横軸は、接着剤層325Aの厚さを示している。ここでは、支柱325にレーザ照射で複数個所に突起部を形成し、接着剤層325Aの厚さを調整し、測定を行った。その結果、接着剤層325Aの厚さが5μmより厚いと温度応答遅れによる圧力検出素子326の出力精度の悪化が解消されることがわかった。これは、接着剤層325Aの厚さが所定の厚さより薄いと、圧力検出素子326、支柱325、及び、接着剤層325Aの線膨張係数の差異による熱応力により圧力検出素子326に歪が発生し、圧力検出素子326の出力精度が悪化するが、接着剤層325Aの厚さが所定の厚さより厚いと、接着剤層325Aの弾性により生じる線膨張係数の差異による熱応力が吸収され、圧力検出素子326の歪が抑制されるからだと考えられる。
【0065】
なお、本発明の圧力センサ100で使用される各部材の常温での線膨張係数としては、圧力検出素子126の台座部として使用されるガラスの線膨張係数が9.0[10
-6/℃]であり、接着剤層125Aの線膨張係数が約300[10
-6/℃]である。また、支柱125として使用される材料の常温での線膨張係数としては、Fe・Ni系合金の線膨張係数が5.0[10
-6/℃]であり、ステンレス鋼の線膨張係数が17.3[10
-6/℃]であり、黄銅の線膨張係数が20.8[10
-6/℃]であり、ケイ素の線膨張係数が2.6[10
-6/℃]である。従って、支柱125の線膨張係数は2〜22[10
-6/℃]であればよく、好ましくは、2.6〜8.5[10
-6/℃]であるのが望ましい。これは、ハーメチックガラス124の線膨張係数が8.5(8〜10)[10
-6/℃]であり、支柱125の線膨張係数はそれより小さい方が望ましいからである。
【0066】
次に、本発明の圧力センサの取り付け構造の別の形態を説明する。
【0067】
図7は、本発明の圧力センサの圧力検出素子726の取り付け構造の別の例700を示す縦断面図である。
【0068】
図7において、
図1に示す圧力センサ100と同様に、圧力検出素子726は、接着剤を塗布して形成される接着剤層725Aを介して支柱725に取り付けられる。その後、圧力検出素子726のリード端子(図示を省略する)と、複数のリードピン128は、ワイヤボンディング工程により、金またはアルミニウム製のボンディングワイヤ126aにより接続される。同様の部材には、同様の符号を付し説明を省略する。
【0069】
圧力センサ700では、
図1に示す圧力センサ100と異なり、初期硬化層725A1と、チップマウント硬化層725A2の2層から構成される接着剤層725Aのうち、初期硬化層725A1が中央に突起部分を有する形状に形成される。このように初期硬化層725A1の形状を中央に突起部分を有する形状とすることにより、接着剤層725Aの厚さを所定の厚さに容易に確保でき、温度変化による圧力検出素子726の歪を低減でき、精度向上及び温度応答性の改善を図ることができる。
【0070】
なお、これまで
図1、
図7を参照して、2層から構成される接着剤層125A、725Aを説明してきたが、初期硬化層125A1、725A1の形状は上述の形状に限定されるものではなく、その他の形状に形成するものとしてもよい。
【0071】
以上のように、本発明の圧力センサによれば、ピエゾ抵抗効果等を利用した圧力検出素子を使用した圧力センサにおいて、温度変化による圧力検出素子の歪を低減し、精度の向上、及び、温度応答性の改善を図ることができる。