特開2018-50495(P2018-50495A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018050495-藻礁 図000003
  • 特開2018050495-藻礁 図000004
  • 特開2018050495-藻礁 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-50495(P2018-50495A)
(43)【公開日】2018年4月5日
(54)【発明の名称】藻礁
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/73 20170101AFI20180309BHJP
   A01M 29/30 20110101ALI20180309BHJP
   A01G 33/00 20060101ALI20180309BHJP
【FI】
   A01K61/00 315
   A01M29/30
   A01G33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-187736(P2016-187736)
(22)【出願日】2016年9月27日
(71)【出願人】
【識別番号】502399042
【氏名又は名称】株式会社海中景観研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊良部 善久
(72)【発明者】
【氏名】斎賀 守勝
【テーマコード(参考)】
2B003
2B026
2B121
【Fターム(参考)】
2B003BB03
2B003BB04
2B003DD01
2B003EE04
2B026AB05
2B026AC05
2B121AA06
2B121BB26
2B121BB32
2B121BB35
2B121EA30
2B121FA12
(57)【要約】
【課題】特に巻貝による食害を防ぐことができる藻礁を提供する。
【解決手段】海中に沈下させて海藻を繁茂させるための藻礁Aであって、基台1と、該基台1から起立した柱体2と、を有し、柱体2の下端側に巻貝の侵入を防ぐための侵入防止部Bが形成されており、侵入防止部Bは、隣接する凸部11aどうしの間隔が巻貝10の高さ寸法と略等しいか小さい複数の凹凸を有する凹凸部11、又は多数の針状の突起を有する針状突起状部12、或いは多数の可撓性を有する繊維を有する布状部13、によって構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中に沈下させて海藻を繁殖させるための藻礁であって、
基台と、該基台から起立した柱体と、を有し、
前記柱体の下端側に巻貝の侵入を防ぐための侵入防止部が形成されており、
前記侵入防止部は、隣接する凸部どうしの間隔が巻貝の高さ寸法と略等しいか小さい複数の凹凸を有する凹凸部、又は多数の針状の突起を有する針状突起状部、或いは多数の可撓性を有する繊維を有する布状部、によって構成されている
ことを特徴とする藻礁。
【請求項2】
前記侵入防止部は、前記柱体の下端側の全周にわたって形成されていることを特徴とする請求項1に記載した藻礁。
【請求項3】
前記侵入防止部は、前記基台の表面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載した藻礁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海中に設置されて海藻を繁殖させるための藻礁に関し、特に、巻貝による藻の食害を防ぐことができる藻礁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海中に設置されて藻を繁殖させるための藻礁として、種々の形状や構造を有するものが提案されている。例えば、型枠にコンクリートを打設して直方体或いは立方体のブロックとして成形されたものがある。この藻礁では、海中に設置する際に、設置姿勢の自由度が高い。
【0003】
また例えば、特許文献1に記載された人工礁は、基台に複数本の柱体を配置して構成されている。基台はコンクリートによって構成されており、コンクリートを打設する際にコンクリート製柱体の下端部分を埋設している。更に、基台から起立したコンクリート製柱体に、複数の木材からなり、長手方向の上端、下端、中央部を夫々結束具によって束ねた人工礁ユニットを着脱させて構成されている。
【0004】
特許文献1に記載された人工礁では、海中に設置されたとき、柱体が海底から起立した状態となる。このため、柱体の上部は海面に近くなり、充分な太陽光の照射による海藻の繁殖を促進することができる。また、人工礁ユニットとして複数の木材を束ねたものを利用するため、間伐材を利用することができるため有利である。
【0005】
上記各藻礁では、海中に設置されたとき、ブロックの表面、柱体及び基台の表面に海藻の胞子が付着し、これらが成長して繁殖する。特に、特許文献1に記載された人工礁では、基台から起立した柱体に付着した海藻が繁殖することで、海中林を構成することが可能となる。そして、繁殖した海藻に魚が住み着いて繁殖する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−042705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
人工礁で繁殖させた海藻を巻貝が食べてしまう食害が生じるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、特に巻貝による食害を防ぐことができる藻礁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本件発明者等は人工礁を設置する都度、設置現場を観察して巻貝による食害を防ぐための手段を検討してきた。その結果、巻貝は自らの高さと略等しいか小さい寸法間隔を有する凹凸や、ブラシ状の突起が密集している部分、細く且つ可撓性を有する繊維が密集している部分、では移動することができない、との知見を得た。
【0010】
このため、本発明に係る藻礁は、海中に沈下させて海藻を繁茂させるための藻礁であって、基台と、該基台から起立した柱体と、を有し、前記柱体の下端側に巻貝の侵入を防ぐための侵入防止部が形成されており、前記侵入防止部は、隣接する凸部どうしの間隔が巻貝の高さ寸法と略等しいか小さい複数の凹凸を有する凹凸部、又は多数の針状の突起を有する針状突起状部、或いは多数の可撓性を有する繊維を有する布状部、によって構成されているものである。
【0011】
上記藻礁に於いて、前記侵入防止部は、前記柱体の下端側の全周にわたって形成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記何れかの藻礁に於いて、前記侵入防止部は、前記基台の表面に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る藻礁では、基台から起立した柱体の下端側に、隣接する凸部どうしの間隔が巻貝の高さ寸法よりも小さい複数の凹凸を有する凹凸部、又は多数の針状の突起を有する針状突起状部、或いは多数の可撓性を有する繊維を有する布状部、等の侵入防止部が形成されている。
【0014】
巻貝は、凹凸部を構成する隣接する凸部の間を渡ることができず、針状の突起を構成する針状の突起に沿って移動することができない。また、布状部では繊維が可撓性を有するため、巻貝が侵入したとき繊維に撓みが生じて移動することができない。このため、海中に設置した藻礁に巻貝が接近しても、侵入防止部を通過することができず、柱体の上部に侵入することがない。従って、巻貝による食害を防いで海藻を繁殖させることができる。
【0015】
また、侵入防止部が柱体の下端側の全周にわたって形成されていることで、柱体の上部に繁殖した海藻を巻貝の食害から確実に防ぐことができる。
【0016】
また、侵入防止部が基台の表面に形成されていることで、巻貝の基台への侵入を防ぐことができ、基台から繁殖した海藻を巻貝の食害から防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】藻礁の構成を説明する図である。
図2】侵入防止部としての凹凸部の構成を説明する模式図である。
図3】他の例に係る侵入防止部の構成を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る藻礁について説明する。本発明に係る藻礁は、目的の海底に複数沈下させて設置することで、海底に複数の柱体を起立させるようにしたものである。そして、設置された藻礁を構成する柱体の上端部分は海面に近い位置を保持するため、太陽光の照射を受けて光合成が促進されて海藻が繁殖し、この海藻の繁殖に伴って魚類の成長を促すことが可能である。
【0019】
本発明に係る藻礁は、基台と、基台から起立した柱体を有しており、この柱体の下端側に巻貝の侵入を防ぐ侵入防止部を形成したものである。柱体の下端側に侵入防止部を形成することで、巻貝が柱体に形成された侵入防止部よりも上部に侵入することがなく、柱体に海藻の胞子が付着して成長しても、成長した海藻に対する巻貝の食害を防ぐことが可能である。
【0020】
特に、柱体が基台から起立しているため、藻礁の沈下によって基台が着底したとき、略海底から柱体が起立する。このため、海底の地盤構造や状況の如何に関わらず柱体が起立することとなり、確実な海藻の繁殖を実現することが可能である。
【0021】
基台は藻礁を海底に設置したとき、充分な安定性を確保し得ることが必要である。このため、前記条件を満足するものであれば基台の構造を限定するものではなく、コンクリートの地肌を露出した状態の構造体、木製の枠にコンクリートを打設してコンクリートと枠を一体化した状態の構造体、等の構造体であって良い。また、基台の形状も特に限定するものではなく、平らな板状の形状や、ブロック状の形状、等であって良い。
【0022】
基台から起立した柱体の数は特に限定するものではなく、少なくとも1本以上であれば良い。また、柱体の形状や構造も限定するものではなく、コンクリート製の柱体や、間伐材を利用した木材からなる柱体であって良い。例えば、木材からなる柱体を利用する場合、基材からコンクリート製の心体を起立させておき、この心体に着脱可能に構成することが好ましい。
【0023】
柱体に形成する侵入防止部は、該柱体の下端側であれば良く、柱体の下端側の端部、柱体の下端側の端部及び基台、基台、の何れかであって良い。要するに、巻貝が柱体の上部に侵入することを防げれば良く、侵入防止部の形成部位は柱体の下端側であれば必ずしも柱体に形成してなくとも基台であっても良い。
【0024】
先ず、図1により、本実施例に係る藻礁Aの全体構成について説明する。この藻礁Aは、四角形で平らな板状の基台1と、基台1の上面1aから起立した4本の柱体2と、を有して構成されている。各柱体2の下端側である基台1側の端部に侵入防止部Bが形成されている。この侵入防止部Bは、後述する凹凸部11,針状突起部12,布状部13の何れかによって構成されている。
【0025】
図2(a)に示す実施例では、柱体2の下端側である基台1側の端部の全周にわたって侵入防止部Bとしての凹凸部11が形成されている。この構成では、巻貝10は基台1の上面1aに侵入することがあるが、凹凸部11を通過することができず、柱体2に形成された凹凸部11よりも上部に侵入することはない。
【0026】
侵入防止部Bを構成する凹凸部11は、同図(b)に示すように多数の凸部11aと凹部11bを有しており、柱体2の下端側の全周にわたって形成されている。特に、巻貝10の高さをhとしたとき、凹凸部11に於ける隣接する凸部11aの間隔l、lは、巻貝10の高さhと略等しいか小さく形成されている。
【0027】
凸部11aの凹部11bからの高さは特に限定するものではなく、凸部11aが上記の如き間隔を有して凹凸であることが明確な高さであれば良い。
【0028】
本件発明者の観察では、凸部11aの間隔が巻貝10の高さhよりも大きい場合、巻貝10は凸部11aを構成する斜面に沿って移動することが可能であった。また、凸部11aの間隔が小さいと、巻貝10にとって平坦な面と同じとなるようであり、隣接する凸部11aを渡るようにして移動することが可能であった。
【0029】
上記の如き観点から、侵入防止部Bを構成する凹凸部11では、巻貝10の高さをhとしたとき、凸部11aの間隔は、最大寸法が巻貝10の高さhと略等しく、最小寸法は巻貝hの高さの略1/2の範囲にあることが好ましい。
【0030】
図2(c)に示す実施例では、侵入防止部Bとしての凹凸部11が柱体2の下端側のみならず、基台1の上面1a、側面1bに形成されている。この構成では、巻貝10は基台1の側面1bに侵入することができないため、柱体2に形成された凹凸部11よりも上部に侵入することがない。
【0031】
凹凸部11を形成する場合、例えば柱体2や基台1に対し、モルタルの吹き付け、塗布したモルタルの掻き落とし、予め凹凸を形成したシートの貼り付け、基台1に対するポーラスコンクリート板の取り付けなど、種々の方法があり、何れも好ましく採用することが可能である。
【0032】
図3(a)に示す実施例は、柱体2の下端側に侵入防止部Bを構成する針状突起状部12を形成したものである。針状突起状部12は、細い針状の多数の突起によって構成されており、個々の突起が適度な剛性を有することが好ましい。このような針状の突起を有するものとしては、瓶の内部を掃除するブラシやたわしの素材のように、剛性を有する心材の周囲に多数の適度な剛性を有する針状の材を取り付けたものを利用することが可能である。また、シート状に構成した人工芝や靴拭きマットも利用することが可能である。
【0033】
そして、上記したブラシやたわしの素材、人工芝のシートや靴拭きマット等の中から予め選択したものを、柱体2の下端側の全周に巻き付けることで、針状突起状部12を形成することが可能である。また、人工芝のシートや靴拭きマットを基台1の上面1a、或いは上面1aと側面1bに取り付けても良い。
【0034】
上記の如く構成された侵入防止部Bでは、巻貝10が侵入しても、この巻貝10は針状突起から隣接する針状突起に乗り移ることができず、この結果、該侵入防止部Bを通過することができない。
【0035】
同図(b)に示す実施例は、柱体2の下端側に侵入防止部Bを構成する布状部13を形成したものである。布状部13は、可撓性を有する多数の繊維によって構成されている。このような可撓性を有する繊維によって構成された布としては例えば不織布がある。繊維の太さは特に限定するものではないが、充分な可撓性を発揮し得る程度な太さであることが好ましい。
【0036】
上記の如く構成された侵入防止部Bでは、巻貝10が侵入しても繊維に撓みが生じて隣接する繊維に移動することができず、この結果、侵入防止部Bを通過することができない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る藻礁は、海藻を繁殖させると共に魚類の成長を促進するための人工礁として利用して有利である。
【符号の説明】
【0038】
A 藻礁
B 侵入防止部
1 基台
1a 上面
1b 側面
2 柱体
10 巻貝
11 凹凸部
11a 凸部
11b 凹部
12 ブラシ部
13 布状部
図1
図2
図3