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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-50747(P2018-50747A)
(43)【公開日】2018年4月5日
(54)【発明の名称】光学装置および眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20180309BHJP
【FI】
   A61B3/10 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-188082(P2016-188082)
(22)【出願日】2016年9月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町75番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 崇
【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町75番1号 株式会社トプコン内
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 龍也
【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町75番1号 株式会社トプコン内
(72)【発明者】
【氏名】小高 沙希
【住所又は居所】東京都板橋区蓮沼町75番1号 株式会社トプコン内
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB11
4C316FA09
4C316FY01
4C316FY05
4C316FY06
(57)【要約】
【課題】機械的な機構を用いずに光路または光路長の変更が可能な技術を提供する。
【解決手段】入射光を反射光または透過光として出射する液体光学装置100であって、分離した有極性液132および無極性液133と、有極性液132に電圧を加える電極駆動電極層123および透明電極129と、前記電圧を加える場所および電圧の一方または両方を制御する制御部101とを有し、前記制御により、前記2種類の液体の界面135の向きが変更され、界面135の向きが変更されることで、界面125における光の反射方向または光の屈性方向が変更され、界面135における光の反射方向または光の屈性方向の変更により、出射する光の方向の制御が行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を反射光または透過光として出射する光学装置であって、
分離した有極性液および無極性液の2種類の液体と、
前記有極性液に電圧を加える電極と、
前記電圧を加える場所および前記電圧の一方または両方を制御する制御部と
を有し、
前記制御により、前記2種類の液体の界面の向きが変更され、
前記2種類の液体の前記界面の向きが変更されることで、前記界面における光の反射方向または光の屈性方向が変更され、
前記界面における前記光の反射方向または前記光の屈性方向の変更により、出射する光の光軸の方向の制御が行われることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
入射光を反射光または透過光として出射する光学装置であって、
分離した有極性液および無極性液の2種類の液体と、
前記有極性液に電圧を加える電極と、
前記電圧を加える場所および前記電圧の一方または両方を制御する制御部と
を有し、
前記制御により、前記2種類の液体の界面の位置が変更され、
前記2種類の液体の前記界面の位置が変更されることで、
前記2種類の液体の少なくとも一方を透過する光の光路長が変更されることを特徴とする光学装置。
【請求項3】
前記2種類液体の一方が光透過性で他方が光反射性であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記2種類の液体は共に光透過性を有し、且つ、屈折率が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の光学装置。
【請求項5】
前記出射する光の光軸の方向の制御により、複数の光路の中の一つが選択されることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記出射する光の光軸の方向の制御により、走査光の生成を行うことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
前記走査光の生成は、前記2種類の液体の界面の向きを制御することで行われることを特徴とする請求項6に記載の光学装置。
【請求項8】
請求項1〜7の光学装置のいずれか一つを備えたことを特徴とするOCTの機能を有する眼科装置。
【請求項9】
前記光学装置を参照光の光路長を変更する手段として用いたことを特徴とする請求項8に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記光学装置を眼底に照射される走査光を生成する手段として用いたことを特徴とする請求項8または9に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光路長の調整または光の偏向を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
OCT(光干渉断層像 (optical coherence tomography))を利用した眼科装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。OCTでは、光路長を可変でできる参照光の光路を必要とする(例えば、特許文献1の符号114を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−54854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、従来における光路長の可変機構は、光軸上で移動可能な反射ミラーを用いる方法が採用されている。この方法は、精密な可動機構が必要であり、振動に弱い、可動部の経時変化がある、高価である、といった点で改善が求められている。この点は、走査光を得るスキャナについても同様に指摘できる。
【0005】
このような背景において、本発明は、機械的な機構を用いずに光路または光路長の変更が可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、入射光を反射光または透過光として出射する光学装置であって、分離した有極性液および無極性液の2種類の液体と、前記有極性液に電圧を加える電極と、前記電圧を加える場所および前記電圧の一方または両方を制御する制御部とを有し、前記制御により、前記2種類の液体の界面の向きが変更され、前記2種類の液体の前記界面の向きが変更されることで、前記界面における光の反射方向または光の屈性方向が変更され、前記界面における前記光の反射方向または前記光の屈性方向の変更により、出射する光の光軸の方向の制御が行われることを特徴とする光学装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、入射光を反射光または透過光として出射する光学装置であって、分離した有極性液および無極性液の2種類の液体と、前記有極性液に電圧を加える電極と、前記電圧を加える場所および前記電圧の一方または両方を制御する制御部とを有し、前記制御により、前記2種類の液体の界面の位置が変更され、前記2種類の液体の前記界面の位置が変更されることで、前記2種類の液体の少なくとも一方を透過する光の光路長が変更されることを特徴とする光学装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記2種類液体の一方が光透過性で他方が光反射性であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記2種類の液体は共に光透過性を有し、且つ、屈折率が異なることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記出射する光の光軸の方向の制御により、複数の光路の中の一つが選択されることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記出射する光の光軸の方向の制御により、走査光の生成を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記走査光の生成は、前記2種類の液体の界面の向きを制御することで行われることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の光学装置のいずれか一つを備えたことを特徴とするOCTの機能を有する眼科装置である。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記光学装置を参照光の光路長を変更する手段として用いたことを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の発明において、前記光学装置を眼底に照射される走査光を生成する手段として用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本発明は、機械的な機構を用いずに光路または光路長の変更が可能な技術の提供を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】液体光学装置の概念図である。
図2】駆動電極層の概念図である。
図3】液体光学装置の動作の形態を示す(A)および(B)である。
図4】反射型の光路長変更装置の概念図(A)および(B)である。
図5】反射型の光路長変更装置の概念図(A)および(B)である。
図6】反射型の光路長変更装置の概念図である。
図7】透過型の光路長変更装置の概念図である。
図8】透過型の光路長変更装置の概念図(A)および(B)である。
図9】透過型のスキャン装置の概念図(A)および(B)である。
図10】透過型スキャン装置の概念図(A)〜(C)である。
図11】反射型のスキャン装置の概念図(A)および(B)である。
図12】反射型スキャン装置の概念図(A)〜(C)である。
図13】OCTを利用した眼科装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(液体光学装置)
図1には、発明を利用した液体光学装置100が示されている。液体光学装置100は、入射光を反射光または透過光として出射する。液体光学装置100は、分離した有極性液132および無極性液133と、有極性液に電圧を加える駆動電極層123および透明電極129と、駆動電極層123への制御信号を出力し、電圧を加える場所および電圧の一方または両方を制御する制御部101とを有し、前記制御により、前記2種類の液体の界面135の向きが変更され、界面135の向きが変更されることで、界面125における光の反射方向または光の屈性方向が変更され、界面135における光の反射方向または光の屈性方向の変更により、出射する光の方向の制御が行われる。
【0019】
以下、液体光学装置100について詳細に説明する。ここでは、反射タイプの液体光学装置100について説明する。液体光学装置100は、光を反射し、且つ、その反射光の反射方向を変更できる。光軸の方向から見た液体光学装置100の形状は、矩形または円形の外観を有している(形状は任意に選択できる)。液体光学装置100は、隙間を有した状態で対向して配置された一対のガラス基板121と122を用いて構成されている。一対の基板の内、少なくとも一方は光透過性である必要がある。光透過性を有する材料としては、ガラス以外に透明なプラスチック材料を用いることもできる。
【0020】
下側のガラス基板121上には、0V(基準電位)に保たれる一面ベタな共通な電極となる透明電極(ITO膜)129が配置されている。透明電極129の上には、高誘電フィルム124が配置されている。高誘電フィルム124としては、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が用いられる。高誘電フィルム124に接して撥水膜125が配置されている。撥水膜125は、撥水性を有する膜で、例えばテフロンAF(登録商標)やサイトップが用いられる。
【0021】
撥水膜125に接してリング部材126が配置されている。リング部材126は、リング状の部材で、撥水膜125と高誘電膜127に接し、その内側に内部空間128が形成されている。上側の高誘電膜127に接して、透明電極129の対向電極となる駆動電極層123が配置されている。この例では、駆動電極層123として、液晶表示装置等で公知のアクティブマトリクス電極(図2参照)を採用している。図2は、見やすいように、上下を反転させた状態で、駆動電極層123を含む層構造が示されている。駆動電極層129は、透明電極129の基準電位(0V)対して正(+)又は負(−)の電位とされ、透明電極129と駆動電極層123の間に電圧が加えられ、両者の間に電界が形成される。勿論、駆動電極層123の電位を透明電極129と同電位とすることも可能である。
【0022】
なお、透明電極129と駆動電極層123の位置を交換した形態、両者の電位関係を反転させた形態、透明電極129に対して駆動電極層123の一または複数の画素電極の電位をマイナス電位とプラス電位の間で調整する形態等も可能である。これらは、後述する有極性液と無極性液の選択、実際の製品の形態等に鑑み、適宜選択することできる。
【0023】
駆動電極層123は、縦横に配置された画素電極により構成されるマトリクス電極と、各画素電極の電位を決める画素毎に配置されたTFT(薄膜トランジスタ)と、TFTを駆動する周辺駆動回路を備えている。画素電極は、ITO膜等の透明導電膜により構成され、各画素電極の電位は、制御部101から出力される制御信号により、個別に制御が可能とされている。制御部101により、界面135の位置および向きの一方または両方が制御され、光路長の変更、光の出射する方向の制御、スキャン動作等の制御が行われる。
【0024】
駆動電極層123の構造は、周知の液晶ディスプレイ用のアクティブマトリクス回路と同じである。駆動電極層123としては、複数の電極を放射状に配置した構造、同心円状のリング電極を配置した構造、複数の電極をストライプ状に配置した構造等が挙げられる。例えば、後述する図3(A)⇔図3(B)の切り替えであれば、縦横に画素電極を配置する必要はなく、また電極の密度もそれほど精細である必要はない。最適な画素電極の寸法は、液体の粘度や基板間隔等によって変わるので、実験的に決めることが好ましい。上記の各種形態の電極構造の場合も各電極にTFT等のスイッチング素子を配置し、各電極の電位を個別に制御できる構造とする。
【0025】
駆動電極層123は、上側のガラス基板122に接して設けられている。リング部材126の周囲は、封止材130により封止され、内部空間128を密閉空間としている。高誘電膜127の内部空間128の側には、親水膜131が配置されている。親水膜131は、親水機能を有する膜で、例えばトリシラノールやシリカなどの無機分散体により構成されている。
【0026】
リング部材126の部分、すなわち側面を光透過性としてもよい。この場合、側面からの光の入射または出射が可能となる。また、リング部材126の部分(つまり側面)に電極を設ける構成も可能である。本実施形態では、後述する有極性液と無極性液の界面の向きの制御が重要であり、この界面の向きの制御のために、側面からの電界の印可が効果的な場合がある。この場合は、側面の少なくとも一部に電極を設けてもよい。また、側面の電極を透明電極とすることで、側面からの電界の印可が可能で、且つ、側面からの光の入射および出射が可能な構造も可能である。
【0027】
内部空間128は、透明な水系の有極性液132と、光反射性の金属粉(例えば、アルミニウム粉)を分散させた光反射性を有する無極性液133で満たされている。有極性液132の具体的な例としては、水やメタノール等が挙げられる。無極性液133としては、炭化水素系合成油、シリコーンオイル等のオイルが挙げられる。有極性液132と無極性液133は、水と油のように互い混じり合わずに分離する性質のものが選択される。光反射性の無極性液を作る具体例としては、シリコーンオイルに粒径が1〜400nmのアルミニウム粉を1〜50重量部分散させたものが挙げられる。
【0028】
各部の寸法としては、一例であるが、液体光学装置100の有効面(レンズとして有効に機能する領域)の寸法が直径25mm〜40mm程度の円形、ガラス基板121,122の厚みが0.1〜0.5mm、高誘電フィルム124の厚みは0.3〜5μm、撥水膜125の厚みは数〜500nm、内部空間の高さ(撥水膜125と親水膜131との間の距離)が0.1〜5mm、高誘電膜127の厚みが0.3〜5μm、親水膜131の厚みが数〜500μm、透明電極129の厚みが10〜200nmの場合が挙げられる。駆動電極層123各部の寸法は、公知の液晶ディスプレイ用のアクティブマトリクス基板で採用される値とする例が挙げられる。
【0029】
図3(A)および(B)には、液体光学装置100の動作形態の一例が示されている。図3には、図示省略されているが、図3の場合も図1と同様に、駆動電極層123の駆動制御を行う制御部を備え、この制御部により、以下に示す各種動作の制御が行われる。これは、図4図5図6図8図9図10図11の場合も同じである。図3(A)の状態では、内部空間128の左上側に相対的に高い電圧を加え、右上側に進むに従い相対的に低い電圧を加えている。この場合、有極性液132が電界密度の高い内部空間128の左側に寄り、また有極性液(水)132が撥水膜125から極力離れようとし、且つ、親水膜131に極力接触しようとすることから、図示する形状に有極性液132と無極性液133との間の界面135が形成される。
【0030】
図3(B)の状態では、内部空間128の右上側に相対的に高い電圧を加え、左上側に進むに従い相対的に低い電圧を加えている。この場合、有極性液132が電界密度の高い内部空間128の右側に寄り、また有極性液(水)132が撥水膜125から極力離れようとし、且つ、親水膜131に極力接触しようとすることから、図示する形状に有極性液132と無極性液133との間の界面135が形成される。
【0031】
図3において、光線が図の液体光学装置100の上方から入射した場合を考える。この場合、有極性液132が透明で無極性液133が光反射性なので、図3(A)の場合、上方から入射した入射光は、界面135で左斜め上の方向に反射される。また、図3(B)の場合、上方から入射した入射光は、界面135で右斜め上の方向に反射される。
【0032】
界面135の傾きは、加える電圧の分布を調整することで制御できる。こうして、ガラス基板121と122の間(内部空間128)への電圧印加の面内分布を調整することで、反射面となる界面135の向きを変更し、界面135からの反射光の方向を制御できる。
【0033】
(反射型の光路長変更装置)
図4には、反射型の光路長変更装置200が示されている。光路長変更装置200は、液体光学装置100と同様な構造を有する液体光学装置210と220を備えている。液体光学装置210と220は、光の入射方向が逆方向となる向きで配置されている。液体光学装置210,220の左側には、反射ミラー231,232が配置され、液体光学装置210,220の右側には、反射ミラー233,234が配置されている。
【0034】
図4において、無極性液133が光反射性であり、界面135が光反射面である。図4(A)の場合、液体光学装置210への入射光241は、界面135でミラー231の方向に反射され、更にミラー232で反射されて液体光学装置220に入射する。この入射光は、界面135で反射され、出射光242となる。
【0035】
図4(B)の場合、液体光学装置210への入射光241は、界面135でミラー233の方向に反射され、更にミラー234で反射されて液体光学装置220に入射する。この入射光は、界面135で反射され、出射光242となる。
【0036】
図4(A)と(B)の切り替えは、図3に関連して説明した液体光学装置201,220における基板間(内部空間128)への電圧印加の面内分布を調整することで行われる。すなわち、内部空間128への電圧の加え方を制御することで、界面135の向きを図4(A)および図4(B)の一方とし、2つある光路の一方を選択する。この制御は、図4では図示省略されている制御装置(図1の制御部101)によって行われる。
【0037】
図4(A)と(B)では、ミラー231,232と、ミラー233,234の配置位置の違いにより、光路長が異なるように設定されている。このため、図4(A)を選択した場合は、相対的に長光路長の光路が選択される。そして、図4(B)を選択した場合は、相対的に短光路長の光路が選択される。こうして、液体光学装置210,220における界面135の向きを電気的に制御することで、設定された2つの光路のいずれかを選択できる。この切り替えには、機械的な可動部分はなく、分離した有極性液132と無極性液133を電気的に移動させることで行われる。
【0038】
(反射型の光路長変更装置の他の例)
(その1)
図5には、液体光学装置100が示されている。液体光学装置100の構造は、図1に関連して説明したものと同じである。図5(A)の場合、光反射性を有する無極性液133が上に凸型の水滴状になるように、基板間(内部空間128)に加える電圧の面内分布を調整する。具体的には、中央で相対的に低電圧、周辺で相対的に高電圧となるように面内電圧分布を調整する。この結果、有極性液132が周辺に集まり、有極性液132に押し込まれる形で無極性液133が中央に集まる。こうして、図5(A)の状態が得られる。この場合、反射面となる界面135は高い位置にあり、上方から入射した光は、図5(A)に示すように反射する。
【0039】
上記の場合と逆に、中央で相対的に高電圧、周辺で相対的に低電圧となるように面内電圧分布を調整すると、有極性液132が中央に集まり、有極性液132に押し出される形で無極性液133が周辺に集まり、中央で薄くなる。こうして、図5(B)の状態が得られる。この場合、反射面となる界面135は低い位置にある。
【0040】
図5(A)と(B)の状態の一方を選択することで、中央部分の界面135の高さ位置の違いの分、光路長に差が生じる。
【0041】
(その2)
図6には、光反射性に無極性液の界面の高さを変更することで、光路長の変更を行う例が示されている。この場合、通路で接続された2つの容器の上面と底面には、電極が設けられ、2つの容器における印加電圧を調整することで、第1の容器と第2の容器との間で有極性液と無極性液の配分が変化し、反射面となる界面の位置が変わる。この反射面の位置の変化により、光路長の調整が行われる。光路長の必要精度が出ない場合は、側面にも電極が設けられることもある。また、アクティブマトリクス電極を採用する場合もある。
【0042】
反射型ではないが、図6の構造を採用した透過型の光路長変更装置の例を図7に示す。この場合、有極性液と無極性液は、共に透明で、屈折率に極力差があるものを用いる。この構造では、有極性液と無極性液との界面位置を変化させることで、光路を構成する媒体の屈折力を変化させ、光路の光学的距離を変化させる。光路の光学的な距離を変えることで、光学的な光路長を可変できる。この場合も光路長の必要精度が出ない場合は、側面にも電極が設けられることもある。また、アクティブマトリクス電極を採用する場合もある。
【0043】
(透過型の光路長変更装置)
図8には、透過型の光路長変更装置300が示されている。光路長変更装置300は、液体光学装置100と同様な構造を有する液体光学装置310と320を備えている。液体光学装置310と320は、上下(表裏)をひっくり返した状態で配置されている。ここで、有極性液132および無極性液133が共に光透過性を有する。また、有極性液132と無極性液133の屈折率は異なっている。
【0044】
この例では、図示省略した制御装置により、各液体光学装置に供給する制御電圧を調整し、有極性液132と無極性液133の界面135の傾きを変化させる。界面135の傾きを調整することで、界面133を通過する際の屈折の状態を変化させ、透過光の光軸の方向を変更する。この光軸の方向を変えることで、光路の選択(切り替え)を行う。
【0045】
界面133の傾きの制御は、図3に関連して説明した原理で行われる。図8(A)では、基板間(内部空間128)に加える電圧は、ゼロであり、界面133は水平(ガラス基板121,122と平行)である。この場合、入射光は、液体光学装置310,320をそのまま真っすぐに透過する。
【0046】
図8(B)では、2つの液体光学装置で電圧をONとし、液体光学装置310および320を図3(A)の状態とする。この場合、界面135が傾き、また有極性液132と無極性液133の屈折率が異なっているので、界面135で屈折が生じ、液体光学装置320への入射光330は、当初の光軸と異なる方向に出射する。この屈折した光軸の線上に反射ミラー331が配置され、反射ミラー332→333→334とリレーして、液体光学装置310に光線は入射する。液体光学装置310では、液体光学装置320と逆の光学作用で屈折が生じ、出射光331が生じる。
【0047】
図8(B)の光路では、反射ミラー331→332→333→334と光路が迂回しているので、図8(A)の場合よりも光路長が長くなる。こうして、液体光学装置310,320における電圧ON/OFFを選択することで、異なる2つの光路長を選択できる。
【0048】
(透過型の偏向装置(スキャナ))
図9には、透過型の偏向装置(スキャナ)400の原理が示されている。偏向装置400は、透過する光の光軸の向きを変え、走査光を生成する。偏向装置400は、液体光学装置100と同様な構造を有している。ここで、有極性液132および無極性液133が共に光透過性を有する。また、有極性液132と無極性液133の屈折率は異なっている。
【0049】
電圧OFFにおいて、偏向装置400に入射した入射光は、直進して出射する(図9(A))。他方で、図3(B)の状態となるように、有極性液132と無極性液133に電圧を加えると、界面135が入射光の光軸に対して傾斜し、界面135を通過する際に入射光の屈折が生じる。この場合、図9(B)に示すように、偏向装置400から出射する光の光軸の方向が図9(A)の場合と違う方向になる。ここで、界面135の傾きを連続的(あるいは段階的)に変化させ、更にこの変化を繰り返すことで、偏向装置400から出射する光を走査光(スキャン光)とできる。
【0050】
図10には、Y軸方向のスキャンを行う場合の状態が段階的に示されている。図10には、概念的に3段階のスキャンを行った場合が示されている。図10に示すように、Y軸方向における界面135の傾きを徐々に変化させることで、偏向装置400を透過する光のY軸方向における向きは徐々に変化する。なお、図10には、界面135の傾きおよび偏向の様子が誇張して示されている。
【0051】
図10には、Y軸方向のスキャンの例が示されているが、同様の原理により、X軸方向における界面135の傾きを変化させることで、偏向装置400を透過する光がX軸方向に走査される走査光となる。そして、X軸方向における界面135の傾きとY軸方向における界面135の傾きを組み合わせることで、X−Y平面における2次元走査光が得られる。すなわち、偏向装置400を透過型の2次元スキャナとして利用できる。
【0052】
例えば、図10(A)の状態でX軸方向におけるスキャンを行い、次いで図10(B)の状態に移行し、X軸方向におけるスキャンを行い、次いで図10(C)の状態に移行し、X軸方向におけるスキャンを行うことで、2次元のスキャンが行える。なお、偏向装置400を2つ用いて、X軸方向のスキャンとY軸方向のスキャンを個別に行い、それを合成することで、2次元スキャナを得ることもできる。
【0053】
(反射型の偏向装置(スキャナ))
図11には、偏向装置500が示されている。偏向装置500は、液体光学装置100において、有極性液132を光透過性とし、無極性液133を光反射性としたものである。偏向装置500の詳細は、図1の液体光学装置100と同じである。この場合、偏向装置500の有極性液132の側から光が入射する。また、入射光は、偏向装置500に対して垂直でなく、斜めの方向から入射させる。
【0054】
有極性液132と無極性液133に印加する電圧がOFFの状態では、界面135は、偏向装置500の面に平行であり、入射角=反射角の関係で入射光は界面135において反射する(図11(A))。図3(B)の状態となるように有極性液132と無極性液133に印加する電圧を調整すると、界面135が傾き、図11(A)の場合とは異なる方向に反射光が出射する(図11(B))。ここで、界面135の傾きを連続的(または段階的)に変化させ、それを周期的に繰り返すことで、走査光(スキャン光)を得ることができる。
【0055】
図12には、Y軸方向のスキャンを行う場合の状態が段階的に示されている。図12には、概念的に3段階のスキャンを行った場合が示されている。図12に示すように、Y軸方向における界面135の傾きを徐々に変化させることで、偏向装置500で反射する光のY軸方向における向きは徐々に変化する。なお、図12には、界面135の傾きおよび偏向の様子が誇張して示されている。
【0056】
図12には、Y軸方向のスキャンの例が示されているが、同様の原理により、X軸方向における界面135の傾きを変化させることで、偏向装置500で反射する光がX軸方向に操作される走査光となる。そして、X軸方向における界面135の傾きとY軸方向における界面135の傾きを組み合わせることで、X−Y平面における2次元走査光が得られる。すなわち、偏向装置400を反射型の2次元スキャナとして利用できる。
【0057】
例えば、図12(A)の状態でX軸方向におけるスキャンを行い、次いで図12(B)の状態に移行し、X軸方向におけるスキャンを行い、次いで図12(C)の状態に移行し、X軸方向におけるスキャンを行うことで、2次元のスキャンが行える。なお、偏向装置500を2つ用いて、X軸方向のスキャンとY軸方向のスキャンを個別に行い、それを合成することで、2次元スキャナを得ることもできる。
【0058】
(OCT装置)
本発明を利用したOCT装置の例を説明する。図13には、OCT装置600が示されている。OCT装置600は、マイケルソン干渉計を基本としている。OCT装置600は、光源601を備えている。光源601は、時間的に低コヒーレンスである光を出力するレーザー光源が選択される。光源601から出射した光は、光ファイバによりファイバーカプラー602に送られる。ファイバーカプラー602は、光ファイバで伝送される光の分岐および合成を行う光学素子である。ファイバーカプラー602は、光源601からの光を参照光と測定光とに分岐する。参照光と測定光の光量比は、例えば、80:20とされている。
【0059】
参照光は、ファイバーカプラー602から、リファレンスユニット630に送られる。リファレンスユニット630は、参照光の光路長が測定光の光路長と同じになるように調整を行う。リファレンスユニット630に導かれた参照光は、コリメータ604を介して光路長調整部606に入射する。光路長調整部606は、図4図8に示す光路長変更装置の一または複数により構成されている。光路長調整部606を通過した参照光は、ミラー607で反射され、再び光路長調整部606を通り、ファイバーカプラー602を介してファイバーカプラー602に戻る。
【0060】
光路長調整部606は、後述する視度補正系610で生じる測定光および検出光の光路長の変化に対応させて、参照光の光路長を調整し、測定に係るOCT光の光路長と参照光の光路長が同じになるように調整する。
【0061】
光源601から出射し、ファイバーカプラー602で分岐された光の他方は、測定光としてコリメータ608を介して、2次元スキャナ609に導かれる。2次元スキャナ609は、図9,10または図11,12の構造を有し、コリメータ608から出射した測定光を2次元走査光として出射させる。
【0062】
2次元スキャナ609から出射した2次元走査光とされた測定光は、視度補正系610、レンズ系611を介して、被検眼612の眼底613に照射される。視度補正系610は、眼底613の被観察点が光学系の焦点となるように調整を行う。すなわち、視度補正系610は、測定光を眼底613上に略点像として照射するように調整を行う。視度補正系610は、くの字形状の一対の視度補正ミラーを備え、この一対の視度補正ミラーの間隔を調整することで、上記の調整を行う。視度補正系601として、図4図8に示す光路長変更装置の一または複数を用いることもできる。
【0063】
視度には、個人差や個体差があるが、この視度に違いがあっても、視度補正系610の機能により、眼底613上に測定光が略点像として集光して照射されるように調整が行われる。また、視度補正系610により、被検眼612の屈折異常への対応、観察対象となる特定の層への集光位置の微調整が行われる。
【0064】
眼底613で反射された測定光は、検出光として測定光と逆の経路をたどり、ファイバーカプラー602に戻ってくる。この検出光は、リファレンスユニット630から得られる参照光とファイバーカプラー602において合成される。この合成により、干渉光が得られ、この干渉光は、干渉光検出部616に送られる。干渉光検出部616は、回折格子により構成される分光器617、分光器617で分光された干渉光を検出するラインセンサ618を備えている。
【0065】
時間的に低コヒーレンスである光を用いた場合、参照光路と測定光の光路長がほぼ等しいときに干渉信号が得られる。眼底のような多層構造の対象を測定する場合、異なる層からの反射光あるいは後方散乱した光は、光源波長幅内の異なる波長で干渉する。この干渉光の波長スペクトルをスペクトル分光器で取得し、スペクトル強度分布に対してフーリエ変換することで、実空間での深さに関する情報を得ることができる。
【0066】
この例では、分光器617で分光された干渉光がラインセンサ618で検出される。ラインセンサ618の出力は、デジタル信号処理を行う電子回路を備えた干渉光分析部619に送られる。干渉光分析部619では、上述した原理に従ってデジタル信号処理により、眼底613の深さ方向の情報(網膜の層構造の情報)を得る。この情報は、層画像作成部620に送られ、層画像作成部620は、デジタル処理により網膜の層構造に係る断層画像を作成する。この網膜の層構造に係る断層画像は、図示しないディスプレイに送られ、そこに表示される。
【0067】
(優位性)
機械的な機構を用いずに光路または光路長の変更が可能となる。また、光の偏向制御では、回転ミラーのような回転軸が存在しないので、簡素な構造で2次元スキャナを実現できる。OCT装置のような眼科装置に適用した場合、精密な可動機構部分を減らすことができ、振動への耐性や可動部の経時変化に対する耐性の点で有利となる。
【符号の説明】
【0068】
100…液体光学装置、121…ガラス基板、122…ガラス基板、123…駆動電極層、124…高誘電フィルム、125…撥水膜、126…リング部材、127…高誘電膜、128…内部空間、129…透明電極、130…封止材、131…親水膜、132…有極性液、133…無極性液、135…有極性液132と無極性液133との間の界面、200…光路長変更装置、210,220…液体光学装置、231〜234…反射ミラー、241…入射光、242…出射光、300…光路長変更装置、310,320…液体光学装置、331〜334…反射ミラー、400…偏向装置、500…偏向装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13