【解決手段】タイヤ周方向に延びる主溝11によって区画された陸部20に、主溝11よりも幅が狭くタイヤ周方向に延びる細溝30が設けられ、細溝30の両側において複数のブロック21、26がタイヤ周方向に並び、細溝30は主溝11の20%以上35%以下の深さであり、細溝30の底部側に細溝30より幅が狭いサイプ33が設けられたことを特徴とする。
タイヤ周方向に延びる主溝によって区画された陸部に、前記主溝よりも幅が狭くタイヤ周方向に延びる細溝が設けられ、前記細溝の両側において複数のブロックがタイヤ周方向に並び、前記細溝は前記主溝の20%以上35%以下の深さであり、前記細溝の底部側に前記細溝より幅が狭いサイプが設けられた、空気入りタイヤ。
前記ブロックが前記細溝を挟んで互い違いに配置され、前記サイプが、前記細溝の一方側のブロックの踏み込み側の角部からは遠ざかり、そのブロックの蹴り出し側の角部には近づくように傾斜している、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の空気入りタイヤについて図面に基づき説明する。なお図面は、説明のために、実際のものよりも誇張して描かれている場合がある。
【0010】
実施形態の空気入りタイヤは、例えばライトトラック等の車両に装着されるものである。実施形態の空気入りタイヤの構造はトレッド10を除き限定されない。実施形態の空気入りタイヤの大まかな構造は次の通りである。まず、タイヤ幅方向両側にビード部が設けられ、カーカスが、タイヤ幅方向内側から外側に折り返されてビード部を包むと共に、空気入りタイヤの骨格を形成している。カーカスのタイヤ径方向外側にはベルト層やベルト補強層が設けられ、そのタイヤ径方向外側に接地面を有するトレッド10が設けられている。またカーカスのタイヤ幅方向両側にはサイドウォールが設けられている。これらの部材の他にもタイヤの機能上の必要に応じた複数の部材が設けられている。
【0011】
図1に示すトレッド10では、タイヤ周方向に延びる3本の主溝11が設けられている。これらの主溝11に区画されて、タイヤ赤道CLに近い左右2つのセンター陸部20、40と、左右2つのショルダー陸部12、13とが形成されている。なお
図1では、下側が空気入りタイヤの踏み込み側で、上側が空気入りタイヤの蹴り出し側である。
【0012】
まず右側のセンター陸部20について説明する。
【0013】
右側のセンター陸部20には、タイヤ周方向に延びる細溝30が設けられている。細溝30は直線状であっても良いが
図1のように屈曲部を有していても良い。細溝30は主溝11よりも幅が狭い。細溝30の幅の具体的な数値は例えば2mm以上4mm以下である。また細溝30の深さは主溝11の深さの20%以上35%以下である。細溝30によってセンター陸部20が左右に分断されている。
【0014】
センター陸部20では、複数の横溝31、32が細溝30を挟んで互い違いに配置されている。細溝30よりタイヤ赤道CL側では、陸部が複数の横溝31によって分断されることにより、複数のセンター側ブロック21がタイヤ周方向に並んだブロック列が形成されている。細溝30より接地端E側では、陸部が複数の横溝32によって分断されることにより、複数のショルダー側ブロック26がタイヤ周方向に並んだブロック列が形成されている。複数のセンター側ブロック21および複数のショルダー側ブロック26は、細溝30を挟んで互い違いに配置されている。
【0015】
センター側ブロック21およびショルダー側ブロック26の形状は限定されないが、実施形態の場合は、センター側ブロック21の踏み込み側かつ細溝30側の角部22は鋭角となっている。またセンター側ブロック21の蹴り出し側かつ細溝30側の角部23は鈍角となっている。またショルダー側ブロック26の踏み込み側かつ細溝30側の角部27は鈍角となっている。またショルダー側ブロック26の蹴り出し側かつ細溝30側の角部28は鋭角となっている。
【0016】
図1〜
図3に示すように、細溝30の底部36側には、細溝30の底部36から連続するサイプ33が設けられている。サイプ33は細溝30よりも幅が狭い。サイプ33の幅の具体的な数値は例えば0.6mm以上1.5mm以下である。細溝30とサイプ33とを足した深さ、すなわち細溝30の接地面への開口端37からサイプ33の底部35までの深さは、主溝11の深さよりも浅い。
【0017】
図1に示すように、実施形態ではサイプ33はセンター側ブロック21毎に設けられている。つまり、1つのセンター側ブロック21に対してそれに沿う1つのサイプ33が設けられ、隣接する2つのセンター側ブロック21の間の場所でサイプ33が途切れている。当然、サイプ33が途切れている場所では細溝30の底部36側にはサイプ33が無い。
【0018】
実施形態のサイプ33は、センター側ブロック21の踏み込み側の角部22からは遠ざかり、センター側ブロック21の蹴り出し側の角部23には近づくように傾斜している。つまり、
図2に示すように、サイプ33は、センター側ブロック21の踏み込み側の部分近傍では、センター側ブロック21から遠ざかる方向に傾斜している。そしてその傾斜角度θは、センター側ブロック21の踏み込み側の角部22に近いほど大きい。また
図3に示すように、サイプ33は、センター側ブロック21の蹴り出し側の部分近傍では、センター側ブロック21に近づく方向に傾斜している。そしてその傾斜角度θは、センター側ブロック21の蹴り出し側の角部23に近いほど大きい。そして、センター側ブロック21の踏み込み側の角部22側から蹴り出し側の角部23側にかけて、サイプ33の傾斜角度θが連続的に変化することにより、サイプ33がひねられた形状になっている。
【0019】
サイプ33の接地面に垂直な方向に対する傾斜角度θの大きさは最大でも15°以下であることが望ましい。
【0020】
サイプ33の深さは部分的に浅くなっていても良い。このサイプ33の浅くなった部分をタイバー38と言う。タイバー38は、サイプ33の幅方向全体にわたって形成されており、それによって細溝30の左右両側の陸部を連結している。
図4に示すように、タイバー38の位置としては、タイヤ周方向に隣接する2つのショルダー側ブロック26の間の位置が望ましい。つまり、2つのショルダー側ブロック26の間の横溝32とタイバー38とがタイヤ幅方向に重なりを有していることが望ましい。
【0021】
次に左側のセンター陸部40について説明する。
【0022】
左側のセンター陸部40にも、タイヤ周方向に延びる細溝50が設けられている。細溝50は主溝11よりも幅が狭い。また細溝50の深さは主溝11の深さの20%以上35%以下である。細溝50によってセンター陸部40が左右に分断されている。
【0023】
左側のセンター陸部40では、複数の横溝51、52が細溝50を挟んで互い違いに配置されている。細溝50よりタイヤ赤道CL側では、陸部が複数の横溝51によって分断されることにより、複数のセンター側ブロック41がタイヤ周方向に並んだブロック列が形成されている。細溝50より接地端E側では、陸部が複数の横溝52によって分断されることにより、複数のショルダー側ブロック46がタイヤ周方向に並んだブロック列が形成されている。複数のセンター側ブロック41および複数のショルダー側ブロック46は、細溝50を挟んで互い違いに配置されている。
【0024】
センター側ブロック41およびショルダー側ブロック46の形状は限定されないが、実施形態の場合は、センター側ブロック41の踏み込み側かつ細溝50側の角部42は鈍角となっている。またセンター側ブロック41の蹴り出し側かつ細溝50側の角部43は鋭角となっている。またショルダー側ブロック46の踏み込み側かつ細溝50側の角部47は鋭角となっている。またショルダー側ブロック46の蹴り出し側かつ細溝50側の角部48は鈍角となっている。
【0025】
細溝50の底部側には、細溝50の底部から連続するサイプ53が設けられている。サイプ53は細溝50よりも幅が狭い。細溝50とサイプ53とを足した深さは主溝11の深さよりも浅いことが望ましい。
【0026】
実施形態では
図1に示すようにサイプ53はセンター側ブロック41毎に設けられている。つまり、1つのセンター側ブロック41に対してそれに沿う1つのサイプ53が設けられ、隣接する2つのセンター側ブロック41の間に対応する場所でサイプ53が途切れている。
【0027】
サイプ53の深さが部分的に浅くなってタイバーが設けられていても良い。タイバーの位置としては、タイヤ周方向に隣接する2つのショルダー側ブロック46の間の位置が望ましい。
【0028】
なお、2つのショルダー陸部12、13の構造は
図1のものに限定されない。
【0029】
本実施形態の空気入りタイヤではヒールアンドトウ摩耗が生じにくい。従来の空気入りタイヤであれば、ブロック列の間の細溝は十分に深く、細溝の底部側にサイプが存在しない。しかし本実施形態の空気入りタイヤでは、細溝30の深さは主溝11の深さの20%以上35%以下にとどまり、細溝30の底部36側に細溝30より幅が狭いサイプ33が設けられている。このことにより、従来の空気入りタイヤと比べて、細溝30の両側のセンター側ブロック21およびショルダー側ブロック26の剛性が高まり、これらのブロックにヒールアンドトウ摩耗が生じにくくなっている。
【0030】
また、サイプ33が、センター側ブロック21の踏み込み側の角部22からは遠ざかり、蹴り出し側の角部23には近づくように傾斜していることにより、踏み込み側の角部22近傍の剛性が上がり、蹴り出し側の角部23近傍の剛性が下がっている。このことにより、従来摩耗し易かった踏み込み側の角部22近傍が摩耗しにくくなり、センター側ブロック21にヒールアンドトウ摩耗が生じにくくなっている。
【0031】
ここで、
図1のセンター側ブロック21のように、踏み込み側かつ細溝30側の角部22が鋭角である場合は、その角部22近傍において剛性が低い。しかし、サイプ33がセンター側ブロック21の踏み込み側の角部22から遠ざかるように傾斜していれば、そのことによりその角部22近傍の剛性が上がり、もとの剛性の低さが補完される。
【0032】
また、サイプ33がセンター側ブロック21毎に設けられ、隣接する2つのセンター側ブロック21の間に対応する場所でサイプ33が途切れていることにより、センター側ブロック21の踏み込み側の角部22近傍および蹴り出し側の角部23近傍の剛性が上がっている。このことにより、センター側ブロック21にヒールアンドトウ摩耗が生じにくくなっている。
【0033】
また、サイプ33が部分的に浅くなってタイバー38が形成されていることにより、センター側ブロック21およびショルダー側ブロック26におけるタイバー38近傍の剛性が上がっている。このことにより、センター側ブロック21およびショルダー側ブロック26に摩耗が生じにくくなっている。
【0034】
また、隣接するショルダー側ブロック26の間の位置にタイバー38が形成されていることにより、ショルダー側ブロック26の細溝30側の角部近傍の剛性が上がっている。このことにより、ショルダー側ブロック26にヒールアンドトウ摩耗が生じにくくなっている。
【0035】
以上の実施形態は例示であって、発明の範囲はこれに限定されない。以上の実施形態に対して、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な変更、置換、省略等を行うことができる。
【0036】
上記実施形態の
図2、
図3ではサイプ33は細溝30への開口端34から底部35にかけて真っ直ぐに延びている。しかし
図5のように、サイプ33は、細溝30への開口端34から一定距離だけ接地面に対して垂直な方向に延び、開口端34から前記一定距離の位置で屈曲し、開口端34から前記一定距離の位置から底部35までの部分が傾斜していても良い。
図5のようにサイプ33が開口端34から前記一定距離の位置で屈曲している場合は、その屈曲位置から底部35までの部分が、センター側ブロック21の踏み込み側の角部22からは遠ざかり、センター側ブロック21の蹴り出し側の角部23には近づくように傾斜している。
【0037】
図5のようにサイプ33が開口端34から前記一定距離の位置で屈曲している場合は、傾斜角度θとは、サイプ33の開口端34とサイプ33の底部35とを結ぶ線と接地面に垂直な線とのなす角度のことである。上記実施形態と同様、この傾斜角度θの大きさは最大でも15°以下であることが望ましい。また
図5のようにサイプ33が開口端34から前記一定距離の位置で屈曲している場合も、隣接する2つのショルダー側ブロック26の間の位置等でサイプ33の深さが部分的に浅くなってタイバーが形成されていても良い。
【0038】
また、右側のセンター陸部20のショルダー側ブロック26においてヒールアンドトウ摩耗が生じにくくなるように、サイプ33が、ショルダー側ブロック26の踏み込み側の角部からは遠ざかり、ショルダー側ブロック26の蹴り出し側の角部には近づくように傾斜していても良い。サイプ33がこのように傾斜する場合、サイプ33は、センター側ブロック21毎ではなく、ショルダー側ブロック26毎に設けられていても良い。
【0039】
また、
図1の左側のセンター陸部40において、サイプ53が、センター側ブロック41の踏み込み側の角部42から遠ざかり、センター側ブロック41の蹴り出し側の角部43に近づくように傾斜していても良い。サイプ53がこのように傾斜している場合、左側のセンター陸部40のセンター側ブロック41にヒールアンドトウ摩耗が生じにくくなる。
【0040】
また、
図1の左側のセンター陸部40において、サイプ53が、センター側ブロック41の踏み込み側の角部42に近づき、センター側ブロック41の蹴り出し側の角部43から遠ざかるように傾斜していても良い。サイプ53がこのように傾斜している場合、空気入りタイヤを
図1と逆向きにして車両に装着したときに左側のセンター陸部40のセンター側ブロック41にヒールアンドトウ摩耗が生じにくくなるため、空気入りタイヤがいずれの方向に装着されても良いものとなる。
【0041】
また、
図1の左側のセンター陸部40において、サイプ53がセンター側ブロック41毎ではなくショルダー側ブロック46毎に設けられていても良い。
【0042】
また、主溝の数および主溝に区画されて形成される陸部の数は上記実施形態の数に限定されない。また、複数の陸部のうち少なくともいずれかの陸部が、上記実施形態の少なくともセンター陸部20に例示される構造となっていれば良い。
【0043】
表1に示す実施例および比較例の空気入りタイヤの耐偏摩耗性および加硫成型における釜抜け性を評価した。評価に用いた空気入りタイヤのトレッドには、上記実施形態の
図1と同じブロック列が形成されていた。表1および
図6に示すように、実施例および比較例では、サイプ33の有無ならびに細溝30およびサイプ33の断面形状が異なっていた。ここで、表1における全体深さrとは、細溝深さpとサイプ深さqとを足した深さである。また、サイプ33はセンター側ブロックの踏み込み側の角部からは遠ざかり、センター側ブロックの蹴り出し側の角部には近づくように傾斜していた。また、表1におけるサイプ最大傾斜角度とは、サイプ33が最も大きく傾斜する位置での、接地面に垂直な方向に対するサイプ33の傾斜角度の大きさのことである。細溝30の幅および主溝深さは全ての実施例および比較例で同じで、細溝30の幅は3mm、主溝深さは14mmであった。
【0044】
耐偏摩耗性の評価では、タイヤサイズを205/85R16、装着リムサイズを16×5.50、内圧を600kPaとした。駆動2輪の4トン車のフロント1軸に評価対象の空気入りタイヤを装着し、1軸あたりの荷重を25.2kNとし、12000km走行させた。走行後にセンター側ブロックの踏み込み側と蹴り出し側の摩耗差を測定した。そして、車両の左右2本の空気入りタイヤの前記摩耗差の平均値を求め、その平均値を指数化した。指数は、比較例1の指数を100とし、摩耗差が小さいほど指数が小さくなるようにしたものである。
【0045】
釜抜け性の評価では、空気入りタイヤの加硫成型が終わって空気入りタイヤをモールドから取り出した後に、サイプ33近傍のゴムの欠陥の有無を確認した。複数の空気入りタイヤについてこの確認を行い、欠陥の発生率を求め、その発生率を釜抜け性とした。
【0046】
評価結果は表1の通りで、細溝30の底部側にサイプ33があると耐偏摩耗性が良くなることが確認できた。また、サイプ33がセンター側ブロックの踏み込み側の角部からは遠ざかり、蹴り出し側の角部には近づくように傾斜していると、耐偏摩耗性がさらに良くなることが確認できた。