(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-52310(P2018-52310A)
(43)【公開日】2018年4月5日
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20180309BHJP
【FI】
B60C15/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-191115(P2016-191115)
(22)【出願日】2016年9月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】仲俣 常隆
(57)【要約】
【課題】ビード部の耐久性が向上した重荷重用タイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ幅方向断面上でのビードコア10の形状がタイヤ軸方向に対して傾いた六角形であり、ビードベース部18のタイヤ幅方向内側の端部から前記ビードコア10の中心12までのタイヤ軸方向の長さAと、ビードコア10の中心12からビードベース部18のタイヤ幅方向外側の端部までのタイヤ軸方向の長さBとの関係が、0.6≦B/(A+B)≦0.7である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向断面上でのビードコアの形状がタイヤ軸方向に対して傾いた六角形であり、ビードベース部のタイヤ幅方向内側の端部から前記ビードコアの中心までのタイヤ軸方向の長さAと、前記ビードコアの中心からビードベース部のタイヤ幅方向外側の端部までのタイヤ軸方向の長さBとの関係が、0.6≦B/(A+B)≦0.7である、重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記六角形のタイヤ幅方向外側の角部と同じ高さにおける、前記ビードコアよりタイヤ幅方向外側のゴム厚Cと前記ビードコアよりタイヤ幅方向内側のゴム厚Dとの関係が、C>2.5Dである、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
内圧を保持するためのチューブを具備しない重荷重用タイヤでは、特許文献1に描かれているように、一般的にビードコアの断面形状がタイヤ軸方向に対して傾いた六角形となっている。このような重荷重用タイヤは例えばダンプカー等に装着されるが、そのダンプカー等が悪路を走行すると重荷重用タイヤに非常に大きな荷重が負荷され、その結果ビード部に故障が発生しやすい。ビード部の故障としては、ビードコアよりタイヤ幅方向外側のゴム層が、ビードコアとリムコンターとに挟まれて大きな荷重を受けることにより変形したり、当該ゴム層を構成するラバーチェーファーが摩減したりする形態がある。また、ビード部の故障として、重荷重用タイヤに非常に大きな荷重が負荷されたことが原因となってビードコア周辺でカーカスが強く引っ張られ、ビードトウ近傍が変形する形態もある。
【0003】
ところで、ビード部の耐久性を向上させるために特許文献2や特許文献3のタイヤが提案されている。特許文献2の空気入りラジアルタイヤでは、ビードコアの中心を通る水平線がタイヤ外面と交わる基準点からビードコアの中心までの幅AWと、前記基準点からビードトウ先端までの幅BWとの関係が、0.40≦AW/BW≦0.55となっている。また、特許文献3の航空機用ラジアルタイヤでは、ビードコアの中心からビードコアの中心を通る水平線とタイヤ外表面との交点までの距離Bcが、ビード部の幅Bwの、40%〜65%となっている。これらの特徴は、これらの文献によれば、ビード部の耐久性を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−191746号公報
【特許文献2】特開2014−113920号公報
【特許文献3】特開2006−327440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、ビード部の耐久性が向上した重荷重用タイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の重荷重用タイヤは、タイヤ幅方向断面上でのビードコアの形状がタイヤ軸方向に対して傾いた六角形であり、ビードベース部のタイヤ幅方向内側の端部から前記ビードコアの中心までのタイヤ軸方向の長さAと、前記ビードコアの中心からビードベース部のタイヤ幅方向外側の端部までのタイヤ軸方向の長さBとの関係が、0.6≦B/(A+B)≦0.7であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の重荷重用タイヤでは、ビードコアの中心が、重荷重用タイヤが装着されたリムのリムコンターから適度に離れている。そのため、ビードコアとリムコンターとの間に挟まれる重荷重用タイヤのゴム層にかかる負荷が低減され、ビード部の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】タイヤ幅方向片側のビード部19近傍のタイヤ幅方向断面図。
【
図2】重荷重用タイヤがリム40に装着されたときのタイヤ幅方向片側のビード部19近傍のタイヤ幅方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態について図面に基づき説明する。なお図面は、説明のために、実際のものより誇張されて描かれている場合がある。
【0010】
まず、本実施形態のタイヤの全体構造について説明する。本実施形態のタイヤはダンプカーをはじめとするトラックやバス等に装着される重荷重用タイヤである。本実施形態の重荷重用タイヤは、内圧を保持するためのチューブを具備しないチューブレスタイヤである。
【0011】
本実施形態の重荷重用タイヤでは、タイヤ幅方向両側にビードコア10が設けられている。ビードコア10よりタイヤ径方向外側にはビードフィラー17が設けられている。
【0012】
図1及び
図2に示すように、1枚のカーカス20が、タイヤ幅方向両側でビードコア10をタイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向両側から包んでいる。このカーカス20は、タイヤ幅方向両側のビードコア10間で重荷重用タイヤの骨格を形成している。カーカス20は有機繊維製又はスチール製の複数本のプライコードがゴムで被覆されて形成されたものである。
【0013】
また、スチールチェーファー24が、カーカス20のうちビードコア10を包んでいる部分をさらにタイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向両側から包むように設けられている。スチールチェーファー24はスチール製の複数本のコードがゴムで被覆されて形成されたものである。
【0014】
スチールチェーファー24よりタイヤ幅方向内側に内側ゴム層27が、スチールチェーファー24よりタイヤ幅方向外側に外側ゴム層30が、それぞれ設けられている。内側ゴム層27は、空気の透過を抑えるインナーライナー28と、インナーライナー28とカーカス20との間に設けられた粘着性のあるスキージ29とからなる。外側ゴム層30は、スチールチェーファー24のタイヤ幅方向外側のチェーファーパッド32と、チェーファーパッド32のタイヤ幅方向外側のラバーチェーファー31とからなる。チェーファーパッド32はタイヤ径方向外側に延長されてその延長部分がビードフィラー17と接している。ラバーチェーファー31は、スチールチェーファー24よりタイヤ径方向内側の場所に延長して設けられている。そして、ラバーチェーファー31は、タイヤ径方向内側の端部においてビードトウ34を形成している。
【0015】
カーカス20よりもタイヤ幅方向外側でラバーチェーファー31よりタイヤ径方向外側の場所にはサイドウォール39が設けられている。また、図示しないが、カーカス20のタイヤ径方向外側にはベルト層やベルト補強層が設けられ、そのタイヤ径方向外側に接地面を有するトレッドが設けられている。
【0016】
なお本実施形態におけるビード部19とは、ビードコア10とタイヤ幅方向に重なる部分及びリム40とタイヤ幅方向に重なる部分のこととする。
【0017】
次に、本実施形態の重荷重用タイヤが装着されるリム40について説明する。
図2に示すように、リム40は、水平方向すなわちリム40の軸方向に対して所定角度θ1で傾いている底部44と、リム40の軸方向外側かつ径方向外側の部分であって湾曲している部分であるリムコンター46と、底部44とリムコンター46との間のR曲面部48とを備える。リムコンター46は、R曲面部48から連続してリム40の径方向外側へ向かって立ち上がったフランジ部42を備える。
【0018】
次に、ビードコア10及びビード部19の構造について説明する。ビードコア10は、例えば、1本又は複数本の鋼線が円環状に複数周巻かれて束ねられることによって形成されている。ビードコア10のタイヤ幅方向断面上での形状は、水平方向すなわちタイヤ軸方向に対して傾いた六角形である。
図2に示すように、ビードコア10の底面11はタイヤ軸方向に対して傾斜角θ2で傾斜している。通常、ビードコア10の底面11のタイヤ軸方向に対する傾斜角θ2は、リム40の底部44の傾斜角θ1と等しい。θ1及びθ2は例えば15°である。
【0019】
ビードコア10よりもタイヤ径方向内側にはビードベース部18が設定されている。ビードベース部18のタイヤ幅方向内側の端部はビードトウ34である。ビードトウ34は、重荷重用タイヤがリム40に装着された際に、ビード部19とリム40の底部44との接触面のタイヤ幅方向内側の端部となる。また、ビードベース部18のタイヤ幅方向外側の端部は、ビード部19とリム40のフランジ部42との接触面35を延長した仮想面S1と、ビード部19とリム40の底部44との接触面36を延長した仮想面S2との交点P(
図2及び
図3参照)である。
【0020】
重荷重用タイヤのビードベース部18のタイヤ幅方向内側の端部からビードコア10の中心12までのタイヤ軸方向の長さAと、ビードコア10の中心12からビードベース部18のタイヤ幅方向外側の端部までのタイヤ軸方向の長さBとの関係は、0.6≦B/(A+B)≦0.7である。ここで、ビードコア10の中心12とは、ビードコア10のタイヤ幅方向断面上の形状が正六角形以外の六角形である場合はその六角形の一番長い対角線の中心点のことであり、ビードコア10のタイヤ幅方向断面上の形状が正六角形の場合はその正六角形の全ての対角線の交点のことである。
【0021】
さらに、ビードコア10のタイヤ幅方向外側の角部13と同じタイヤ径方向の高さにおける、外側ゴム層30のゴム厚Cと内側ゴム層27のゴム厚Dとの関係は、C>2.5Dである。
【0022】
本実施形態の重荷重用タイヤでは、ビードベース部18のタイヤ幅方向内側の端部からビードコア10の中心12までのタイヤ軸方向の長さAと、ビードコア10の中心12からビードベース部18のタイヤ幅方向外側の端部までのタイヤ軸方向の長さBとの関係が、0.6≦B/(A+B)であることによって、ビードコア10の中心12がリム40のリムコンター46から十分に離れている。そのため、ビード部19のうち特にビードコア10とリムコンター46とに挟まれた外側ゴム層30の耐久性が向上し、重荷重用タイヤに高い荷重が負荷されても外側ゴム層30からの故障が発生しにくくなっている。また、本実施形態の重荷重用タイヤでは、ビードトウ34からビードコア10の中心12までのタイヤ軸方向の長さAと、ビードコア10の中心12からビードベース部18のタイヤ幅方向外側の端部Pまでのタイヤ軸方向の長さBとの関係が、B/(A+B)≦0.7であるため、内側ゴム層27の厚みが十分に確保されている。そのため、ビード部19の内側ゴム層27の耐久性が確保され、内側ゴム層27からの故障が発生しにくくなっている。
【0023】
さらに、タイヤ幅方向断面上でのビードコア10の形状がタイヤ軸方向に対して傾いた六角形である。このことにより、重荷重用タイヤがリム40に装着されたときに、タイヤ軸方向に対して傾いているリム40の底部44と、同じ方向に傾いているビードコア10とで、カーカス20を押さえることができる。そのため、重荷重用タイヤに大きな荷重が負荷されてカーカス20に対して強く引っ張る力が働いても、ビードトウ34近傍が変形しにくくなっている。
【0024】
また、外側ゴム層30のゴム厚Cと内側ゴム層27のゴム厚Dとの関係がC>2.5Dであることにより、ビードコア10とリムコンター46との間の外側ゴム層30の厚みが十分に確保されている。その結果、外側ゴム層30の耐久性が向上し、重荷重用タイヤに高い荷重が負荷されても外側ゴム層30からの故障が発生しにくくなっているのはもちろんのこと、重荷重用タイヤに比較的低い荷重が負荷された場合の外側ゴム層30からの故障も発生しにくくなっている。
【0025】
本実施形態は例示であって、発明の範囲はこれに限定されない。以上の実施形態に対して、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な変更、置換、省略等を行うことができる。
【0026】
重ねられた2枚のナイロンチェーファーが、上記実施形態のスチールチェーファー24を、さらにタイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向両側からから包むように設けられていても良い。その場合、2枚のナイロンチェーファーは、スチールチェーファー24をタイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向両側から完全に包み込んでいることが望ましい。なおナイロンチェーファーはナイロン製の複数本のコードがゴムで被覆されて形成されたものである。ナイロンチェーファーは内側ゴム層27及び外側ゴム層30には含まれない。
【0027】
また、重ねられた2枚のナイロンチェーファーが、上記実施形態のスチールチェーファー24の代わりに設けられていても良い。つまり、スチールチェーファー24ではなく2枚のナイロンチェーファーが、カーカス20のビードコア10を包んでいる部分をさらにタイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向両側から包むように設けられていても良い。
【0028】
表1に示す比較例及び実施例の重荷重用タイヤの耐久性試験を行った。試験に供した重荷重用タイヤのサイズは11R22.5である。この重荷重用タイヤを幅7.50のリムに装着した。この重荷重用タイヤを直径1700mmのドラム上で30km/hで走行させ、ビード部が故障するまでの走行距離を調べた。そして、ビード部が故障するまでの走行距離を指数化した。指数は、比較例1の結果を100とし、走行距離が長いほど大きいものとした。従って指数が大きいほどビード部の耐久性が良いことを意味している。高内圧高荷重条件での耐久性試験と一般条件での耐久性試験とを行い、高内圧高荷重条件は内圧1000kPa、荷重53.4kNとし、一般条件は内圧725kPa、荷重26.7kNとした。
【0029】
なお表1における長さA、B、C、Dは上記実施形態における長さA、B、C、Dに対応するものである。具体的には、Aはビードトウからビードコアの中心までのタイヤ軸方向の長さ、Bはビードコアの中心からビードベース部のタイヤ幅方向外側の端部までのタイヤ軸方向の長さ、Cは外側ゴム層のゴム厚、Dは内側ゴム層のゴム厚である。
【0030】
試験結果は表1の通りで、0.6≦B/(A+B)≦0.7という関係及びC>2.5Dという関係を満たす重荷重用タイヤは、高内圧高荷重条件でビード部の耐久性が非常に良く、一般条件でのビード部の耐久性も良いことが確認できた。
【符号の説明】
【0032】
10…ビードコア、11…ビードコア10の底面、12…ビードコア10の中心、13…角部、17…ビードフィラー、18…ビードベース部、19…ビード部、20…カーカス、24…スチールチェーファー、27…内側ゴム層、28…インナーライナー、29…スキージ、30…外側ゴム層、31…ラバーチェーファー、32…チェーファーパッド、34…ビードトウ、35…リム40のフランジ部42との接触面、36…リム40の底部44との接触面、39…サイドウォール、40…リム、42…フランジ部、44…底部、46…リムコンター、48…R曲面部