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特開2018-53206複合粒子及びその製造方法並びにその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-53206(P2018-53206A)
(43)【公開日】2018年4月5日
(54)【発明の名称】複合粒子及びその製造方法並びにその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20180309BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20180309BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20180309BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180309BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20180309BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20180309BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08F2/44 A
   C09D201/00
   C09D7/12
   A61K8/81
   A61K8/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-194345(P2016-194345)
(22)【出願日】2016年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西海 健悟
(72)【発明者】
【氏名】竹中 俊貴
【テーマコード(参考)】
4C083
4J011
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AD071
4C083AD091
4C083CC01
4C083CC02
4C083FF01
4J011PA13
4J011PA60
4J011PA95
4J011PB08
4J011PB16
4J011PB40
4J011PC07
4J038CB001
4J038CG141
4J038CG142
4J038DD001
4J038DG001
4J038DL031
4J038HA446
4J038KA20
4J038NA01
4J127AA03
4J127BA161
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB211
4J127BC061
4J127BC151
4J127BD411
4J127BE241
4J127BF131
4J127BF601
4J127BG281
4J127CA03
4J127CB131
4J127CC091
4J127FA07
4J127FA46
(57)【要約】
【課題】重合体粒子を含む複合粒子であって、親水性が高く水性コーティング剤等の水性混合液中での均一分散性に優れ、復元性が高く優れた触感(弾性)を有する複合粒子及びその製造方法並びにその用途を提供する。
【解決手段】複合粒子は、複数のラジカル重合性基を有する架橋性オリゴマー及び(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体に由来する架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる重合体粒子と、該重合体粒子の表面に付着した平均一次粒子径が10〜1000nmの親水性無機粒子とを含む複合粒子であって、前記架橋性オリゴマーが、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させてなり、前記複合粒子の疎水性指数が0〜10である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラジカル重合性基を有する架橋性オリゴマー及び(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体に由来する架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる重合体粒子と、該重合体粒子の表面に付着した無機粒子とを含む複合粒子であって、
前記架橋性オリゴマーが、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させてなり、
前記無機粒子が、平均一次粒子径が10〜1000nmの親水性無機粒子であり、
前記複合粒子の疎水性指数が0〜10であることを特徴とする複合粒子。
【請求項2】
20%以上の復元率を有することを特徴とする請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記架橋性オリゴマーを単独で硬化させたときに得られる硬化物の粘弾性から測定されるガラス転移温度が、0〜30℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記複合粒子が、水溶性セルロース類をさらに含み、
前記親水性無機粒子が、コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項5】
前記複合粒子中の前記親水性無機粒子の含有量が、1〜15重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項6】
安息角が30〜60度であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項7】
前記親水性無機粒子が、コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子と、コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子とを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合粒子の製造方法であって、
前記(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体20〜80重量%と、前記架橋性オリゴマー80〜20重量%とを含む重合性混合物を、前記水溶性セルロース類が表面に吸着した前記コロイダルシリカと界面活性剤との存在下、水性媒体中で懸濁重合することにより、前記重合体粒子と、前記重合体粒子表面に付着した前記コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子とを含む複合粒子を得る工程と、
前記複合粒子を前記水性媒体から分離し乾燥させる時に前記コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を前記複合粒子に吸着させることにより、前記コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を前記重合体粒子表面に含有させる工程とを含むことを特徴とする複合粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか1項に記載の複合粒子を含むことを特徴とするコーティング剤。
【請求項9】
請求項8に記載のコーティング剤を用いて形成されたことを特徴とする塗膜。
【請求項10】
請求項1〜6の何れか1項に記載の複合粒子を含むことを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、水性コーティング剤の形成を目的とする用途に好適に使用することができる複合粒子及びその製造方法並びにその用途(コーティング剤、塗膜、及び化粧料)に関する。
【背景技術】
【0002】
平均粒子径がミクロンオーダーの重合体粒子は、例えば、コーティング剤やインクへの添加剤(艶消し剤など)や、化粧品などの外用剤の充填剤(滑り性向上のための充填剤)、フィルム用のアンチブロッキング剤、光拡散剤等の用途で使用されている。
【0003】
コーティング剤としては、古くからウレタン系コーティング剤が一般に知られているが、こうしたコーティング剤に艶消し剤として重合体粒子を添加する場合、ウレタン系コーティング剤の軟らかな風合いを損なわないように、軟らかく傷つき性が高い重合体粒子が求められる。
【0004】
例えば、特許第5297845号公報(特許文献1)には、ビニル基を分子の両末端に有する特定の2種類の架橋性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む混合物を重合させることにより得られる、優れた復元率を有し、耐傷付き性に優れた軟らかな触感を有する塗膜を形成できる樹脂粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5297845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、環境保全の観点からコーティング剤の水性化が進んでおり、ウレタン系コーティングも水性ウレタン系コーティング剤が一般的になりつつある。特許文献1に記載の樹脂粒子は、疎水性が高く、水性コーティング剤への馴染みが悪いため、凝集などのために水性コーティング剤中に均一に分散せず、その結果として、水性コーティング剤を用いて塗膜を形成したときに、望む艶消し性を持つ塗膜が得られない。
【0007】
古くから艶消し剤として使用されているシリカなどの親水性無機顔料を単独で水性コーティング剤中に分散させれば、水性コーティング剤への重合体粒子の馴染みは改善できる。しかしながら、親水性無機顔料が単独で分散している水性コーティング剤を用いて形成された塗膜は、親水性無機顔料自体の硬く脆い性質から硬質な感触を有し、耐傷つき性が低下し、塗膜本来の性能を損なう。
【0008】
このように、水性コーティング剤に艶消し性及び耐傷つき性を付与でき、かつ、親水性が高く水性コーティング剤中での均一分散性に優れ、復元性が高く優れた触感(弾性)を有する重合体粒子は、従来なかった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであって、重合体粒子を含む複合粒子であって、親水性が高く水性コーティング剤等の水性混合液中での均一分散性に優れ、復元性が高く優れた触感(弾性)を有する複合粒子及びその製造方法並びにその複合粒子を用いたコーティング剤、塗膜、及び化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の複合粒子は、複数のラジカル重合性基を有する架橋性オリゴマー及び(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体に由来する架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる重合体粒子と、該重合体粒子の表面に付着した無機粒子とを含む複合粒子であって、前記架橋性オリゴマーが、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させてなり、前記無機粒子が、平均一次粒子径が10〜1000nmの親水性無機粒子であり、前記複合粒子の疎水性指数が0〜10であることを特徴としている。
【0011】
前記構成によれば、重合体粒子の表面に付着した無機粒子が平均一次粒子径が10〜1000nmの親水性無機粒子であり、疎水性指数が0〜10であることで、親水性が高く水性コーティング剤等の水性混合液中での均一分散性に優れた複合粒子を実現できる。
【0012】
また、前記構成によれば、前記重合体粒子を構成する架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させてなる架橋性オリゴマー及び(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体に由来することで、復元性が高く優れた触感(弾性)を有する複合粒子を実現できる。なお、本出願書類において、「(メタ)アクリル」はアクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0013】
本発明の複合粒子の製造方法は、前記親水性無機粒子が、コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子と、コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子とを含む本発明の複合粒子を製造する方法であって、前記(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体20〜80重量%と、前記架橋性オリゴマー80〜20重量%とを含む重合性混合物を、前記水溶性セルロース類が表面に吸着した前記コロイダルシリカと界面活性剤との存在下、水性媒体中で懸濁重合することにより、前記重合体粒子と、前記重合体粒子表面に付着した前記コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子とを含む複合粒子を得る工程と、前記複合粒子を前記水性媒体から分離し乾燥させる時に前記コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を前記複合粒子に吸着させることにより、前記コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を前記重合体粒子表面に含有させる工程とを含むことを特徴としている。
【0014】
前記方法によれば、分散剤として機能する水溶性セルロース類が表面に吸着したコロイダルシリカと、界面活性剤との存在下で懸濁重合することから、安定に懸濁重合を行うことができ、本発明の複合粒子を容易に得ることができる。
【0015】
また、前記方法によれば、コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を前記複合粒子に吸着させる前に、コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子を付着させるので、コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を水溶性セルロース類が表面に吸着したコロイダルシリカを介して重合体粒子表面へ安定的に付着させることができる。それゆえ、前記方法によれば、親水性無機粒子を、より多く、かつ安定に重合体粒子表面に付着させることができるので、疎水性指数が0〜10である本発明の複合粒子を容易に得ることができる。
【0016】
さらに、前記方法によれば、前記重合性混合物が、(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体を20〜80重量%含み、前記架橋性オリゴマーを80〜20重量%含むので、高い復元性を有する複合粒子を得ることができる。
【0017】
本発明のコーティング剤は、本発明の複合粒子を含むことを特徴としている。
【0018】
本発明のコーティング剤は、復元性が高い本発明の複合粒子を含むので、高い耐傷つき
性や軟らかな触感を有する塗膜を形成することができる。また、本発明のコーティング剤は、水性混合液中での均一分散性に優れた本発明の複合粒子を含むので、水性コーティング剤の場合であっても、複合粒子を均一に分散させることができ、均一な塗膜を形成することができる。
【0019】
本発明の塗膜は、本発明のコーティング剤を用いて形成されたことを特徴としている。
【0020】
本発明の塗膜は、復元性が高い本発明の複合粒子を含むので、高い耐傷つき性や軟らかな触感を有している。また、本発明の塗膜は、水性混合液中での均一分散性に優れた本発明の複合粒子を含む本発明のコーティング剤を用いて形成されたものであるので、用いるコーティング剤が水性コーティング剤の場合であっても、均一である。
【0021】
本発明の化粧料は、本発明の複合粒子を含むことを特徴としている。
【0022】
本発明の化粧料は、復元性が高い本発明の複合粒子を含むので、軟らかな触感を有している。また、本発明の化粧料は、水性混合液中での均一分散性に優れた本発明の複合粒子を含むので、水性化粧料の場合であっても、複合粒子を均一に分散させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、重合体粒子を含む複合粒子であって、親水性が高く水性コーティング剤等の水性混合液中での均一分散性に優れ、復元性が高く優れた触感(弾性)を有する複合粒子及びその製造方法並びにその複合粒子を用いたコーティング剤、塗膜、及び化粧料を提供できる。本発明の複合粒子は、水性コーティング剤中での均一分散性に優れていることから、水性コーティング剤への艶消し剤として好適に使用することができる。本発明の複合粒子は、復元性が高く優れた触感(弾性)を有することから、この複合粒子をコーティング剤に使用すれば、コーティング剤を用いて形成される塗膜に高い耐傷つき性や軟らかな触感を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1で得られた複合粒子を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔複合粒子〕
本発明の複合粒子は、複数のラジカル重合性基を有する架橋性オリゴマー及び(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体に由来する架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる重合体粒子と、該重合体粒子の表面に付着した無機粒子とを含む複合粒子であって、前記架橋性オリゴマーが、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させてなり、前記無機粒子が、平均一次粒子径が10〜1000nmの親水性無機粒子であり、前記複合粒子の疎水性指数が0〜10である。
【0026】
本発明の複合粒子の疎水性指数は、0〜10である。疎水性指数が10より大きい場合、水性混合液(例えば水性コーティング剤や水性化粧料)中における複合粒子の分散安定性が低下し、複合粒子が沈降しやすくなるので、好ましくない。例えば、水性コーティング剤中で複合粒子が沈降しやすくなると、水性コーティング剤を用いて形成される塗膜に艶消し性を付与できないことがある。本発明の複合粒子の疎水性指数は、7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。本出願書類において、複合粒子の疎水性指数は以下に記載する方法によって測定されるものとする。
【0027】
(複合粒子の疎水性指数の測定方法)
底部に攪拌子を置いた内容量100mlのガラス製ビーカーに、イオン交換水50mlを投入し、水面に複合粒子0.2gを浮かべた後、攪拌子を緩やかに回転させる。その後、ビーカー内の中央付近で、水面とビーカー底面との中間付近の水中までビュレットの先端を沈め、攪拌子を緩やかに回転させながら、前記複合粒子添加から5分後に、ビュレットからメタノールを1ml/分の速度で徐々に水中に導入する。メタノールは1mlずつ導入し、1ml導入する度に5分攪拌を行う。水面の複合粒子の全量が水中に沈むまで(水面に浮いている複合粒子が実質的になくなるまで)メタノールの導入を続け、水中に複合粒子の全量が沈んだ時点までのメタノール導入量(ml)を測定する。
【0028】
そして、イオン交換水の量(=50(ml))及びメタノール導入量(ml)から、下式に基づき疎水性指数を求める。
疎水性指数(%)=100×メタノール導入量(ml)
/(イオン交換水の量(ml)+メタノール導入量(ml))
なお、ビュレットからメタノールを水中に導入する前に、水面に浮かべた複合粒子が水中に完全に沈んだ場合は、疎水性指数を0と判定する。
【0029】
本発明の複合粒子は、20%以上の復元率を有することが好ましい。20%以上の復元率を有する複合粒子は、コーティング剤に添加されたときに、復元性の高い塗膜を形成可能なコーティング剤を実現できる。復元率が20%未満の複合粒子は、コーティング剤に添加されそのコーティング剤を用いて塗膜が形成されたときに、復元性の高い塗膜を得られない場合がある。複合粒子の復元率は、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。本出願書類において、複合粒子の復元率は以下に記載する方法によって測定されるものとする。
【0030】
(複合粒子の復元率の測定方法)
複合粒子の復元率の測定は、株式会社島津製作所製の微小圧縮試験機「MCTM−200」を用いた負荷−除荷試験によって行う。
【0031】
すなわち、まず、複合粒子を下部加圧板(SKS平板)上に載置し、「MCTM−200」の光学顕微鏡(対物レンズ倍率50倍)で一個の独立した微細な複合粒子を選び出す。選び出した複合粒子の直径を、「MCTM−200」の粒子径測定カーソルで測定する。選び出す複合粒子は、測定対象とする粒子径に応じて決定する。次に、選び出した複合粒子の頂点に試験用圧子を下記の負荷速度で降下させることにより、最大試験力9.81mNまで複合粒子に荷重をかけたときの粒子径Aと、その後、最小試験力1.96mNまで除荷したときの粒子径Bを測定する。粒子径A及び粒子径Bから得られる変位量(復元量)と、粒子径測定カーソルで測定された直径とから、次の復元率の算出式
復元率(%)=復元量(μm)/直径(μm)×100
により、個別の複合粒子の復元率を求める。6つの複合粒子に対して復元率の測定を行い、6つの復元率から最大値及び最小値を除き、残る4データの平均値を復元率とする。
【0032】
<復元率の測定条件>
試験温度:常温(20℃)、相対湿度65%
上部加圧圧子:直径50μmの平面圧子(材質:ダイヤモンド)
下部加圧板:SKS平板
試験種類:負荷−除荷試験
最大試験力:9.81mN
最小試験力:1.96mN
負荷速度:0.732mN/sec
負荷保持時間:1sec
除荷保持時間:1sec
【0033】
本発明の複合粒子は、安息角が30〜60度であることが好ましい。安息角を30度以上とすることで、複合粒子の凝集性が程よく、複合粒子を含むコーティング剤を用いて塗膜を形成したときに、望む艶消し性を持つ塗膜を得ることができる。安息角を60度以下とすることで、流動性が良好でハンドリング性が良好な複合粒子を実現できる。なお、本発明の複合粒子は、重合体粒子の表面に親水性無機粒子が付着していることによって流動性が向上しており、安息角が比較的低くなっている。
【0034】
(複合粒子の安息角の測定方法)
複合粒子300cm3(嵩体積)を、水平面上に立てた直径80mm、高さ70mmの円筒状の枠体に入れる。次に、持ち上げた時にできる円錐状の複合粒子の山について、山を正面から見た時の、山の二つの稜線のそれぞれが水平面に対してなす角度を分度器を用いて測定し、その角度の平均値を平均角度とする。これを5回繰り返して行って得られた平均角度の相加平均値を安息角とする。
【0035】
本発明の複合粒子の体積平均粒子径は、特に限定されないが、1〜200μmであることが好ましく、3〜50μmであることが好ましい。この範囲内の体積平均粒子径を有する複合粒子は、コーティング剤に添加されたときに、コーティング剤を用いて形成される塗膜の艶消し及び仕上がり外観をより向上できる。
【0036】
本発明の複合粒子は、体積基準の粒子径の変動係数が20〜40%の範囲内であることが好ましい。体積基準の粒子径の変動係数がこの範囲内であることで、複合粒子間の隙間ができにくくなり、複合粒子を含むコーティング剤を用いて塗膜を形成したときに、均一性の高い艶消し性を持つ塗膜を得ることができる。
本出願書類において、複合粒子の体積平均粒子径及び体積基準の粒子径の変動係数は、以下に記載する方法によって測定されるものとする。
【0037】
(複合粒子の体積平均粒子径及び体積基準の粒子径の変動係数の測定方法)
複合粒子の体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。
【0038】
なお、測定に用いるアパチャーは、複合粒子の大きさに応じて適宜選択する。50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合は、Current(アパチャー電流)は−800、Gain(ゲイン)は4と設定とする。
【0039】
測定用試料としては、複合粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10ml中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散体としたものを使用する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、10万個の複合粒子の測定を完了した時点で測定を終了する。複合粒子の体積平均粒子径は、10万個の複合粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0040】
複合粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、以下の数式によって算出する。
【0041】
複合粒子の粒子径の変動係数
=(複合粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差÷複合粒子の体積平均粒子径)×100
【0042】
〔架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂〕
本発明の複合粒子を構成する重合体粒子は、複数のラジカル重合性基を有する架橋性オリゴマー及び(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体に由来する架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなっている。
【0043】
前記架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂中における前記架橋性オリゴマーに由来する構造単位の含有量は、20〜80重量%の範囲内であることが好ましく、30〜75重量%の範囲内であることがより好ましい。また、前記架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂中における前記(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体に由来する構造単位の含有量は、20〜80重量%の範囲内であることが好ましく、30〜75重量%の範囲内であることがより好ましい。前記架橋性オリゴマーに由来する構造単位の含有量及び前記(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体に由来する構造単位の含有量を前記範囲内とすることで、より高い復元性を有する複合粒子を実現できる。なお、前記架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂中における各単量体に由来する構造単位の含有量は、前記架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を得るために使用される単量体混合物中における各単量体の含有量に相当する。
【0044】
〔(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体〕
前記(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体としては、エチレン性不飽和基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステルであれば特に限定されるものではなく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0045】
前記(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体のうち、アルキル基の炭素数が1〜12であるアクリル酸アルキルが好ましく、アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルがより好ましい。このようなアクリル酸アルキルを用いることで、前記複合粒子の復元率を高くすることができる。
【0046】
〔架橋性オリゴマー(ウレタンアクリレートオリゴマー)〕
前記架橋性オリゴマーは、(a)ポリオールと、(b)ポリイソシアネートと、(c)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを反応させてなる複数のラジカル重合性基を有する化合物(ウレタンアクリレートオリゴマー)である。
【0047】
前記ウレタンアクリレートオリゴマーは、単独で硬化させたときに得られる硬化物の粘弾性から測定されるガラス転移温度(Tg)が0〜30℃であることが好ましい。前記Tgが0℃未満の場合、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に粘着性がでてくることがある。前記Tgが30℃を越える場合、復元性の高い複合粒子を得られないことがある。前記Tgは、0〜28℃であることがより好ましく、0〜25℃であることがさらに好ましい。
【0048】
また、前記ウレタンアクリレートオリゴマーは、特に限定されないが、単独で硬化させたときに得られる硬化物の鉛筆硬度がH〜HBであることが好ましい。単独で硬化させたときに得られる硬化物の鉛筆硬度が前記範囲であるウレタンアクリレートオリゴマーを使用した場合、より高い復元率を有する複合粒子を得ることができる。
【0049】
前記ウレタンアクリレートオリゴマーの市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のニューフロンティア(登録商標)RSTシリーズの「ニューフロンティア(登録商標)RST−402」及び「ニューフロンティア(登録商標)RST−201」等のようなニューフロンティア(登録商標)シリーズのウレタンアクリレートオリゴマー、共栄社化学株式会社製のUFシリーズ「UF−A01P」等を挙げることができる。
【0050】
(a)ポリオール
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、脂肪族炭化水素系ポリオール、脂環式炭化水素系ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記ポリオールは、200〜3000の数平均分子量及び2〜4個のヒドロキシ基を有していることが好ましい。数平均分子量が200未満又は3000超である場合、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が硬くなりすぎ、復元性の高い複合子を実現できないことがある。前記ポリオールは、ヒドロキシ基数が4個を越える場合、架橋性が上がりすぎ、復元性の高い複合粒子を実現できないことがある。
【0052】
(a−1)ポリエステルポリオール
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;又は、多価アルコール、多価カルボン酸、及び環状エステルの3成分の反応物であって、3個以上のヒドロキシ基を含有するようにそれぞれの原料を選択したもの等が挙げられる。
【0053】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、メタントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノル類(ビスフェノールA等)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトール等)等が挙げられる。
【0054】
前記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0055】
前記環状エステル(ラクトン)としては、例えば、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0056】
(a−2)ポリエーテルポリオール
前記ポリエーテルポリオールとしては、原料となる多価アルコールを脱水縮合して得られる、分子末端(側鎖)に3つ以上のヒドロキシ基を含有するポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0057】
前記ポリオールとしては、例えば、メタントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール、及び、それら低分子量ポリオールのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレンポリオール等の3官能以上(ヒドロキシ基数が3個以上)のポリオールが挙げられる。
【0058】
(a−3)ポリカーボネートポリオール
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとホスゲンとの反応物であって、ヒドロキシ基を3つ以上含有するようにポリオールを選択したもの;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物であって、ヒドロキシ基を3つ以上含有するもの等が挙げられる。
【0059】
前記ポリオールとしては、例えば、メタントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の低分子量(好ましくは分子量64〜250)の多価アルコール、及び、それら多価アルコールのアルキレンオキシド付加物であるポリオキシアルキレンポリオール等の3官能以上のポリオールが挙げられる。
なお、前記ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端にヒドロキシル基を3個以上含有する化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0060】
(a−4)脂肪族炭化水素系ポリオール
前記脂肪族炭化水素系ポリオールとしては、例えば、ポリオレフィンポリオール、水添化ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。前記ポリオレフィンポリオールは、分岐構造を少なくとも1つ持っている炭化水素骨格の分子末端(側鎖)にヒドロキシ基を合計3つ以上有するものであればよい。前記水添化ポリブタジエンポリオールは、ポリブタジエンポリオールの構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部が水素化された構造であって、その分子末端(側鎖)にヒドロキシ基を合計3つ以上有するものであればよい。
【0061】
(b)ポリイソシアネート
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。前記ポリイソシアネートは、2〜4個のイソシアネート基を有していることが好ましい。前記ポリイソシアネートは、イソシアネート基数が4を越える場合、架橋性が上がりすぎ、復元性の高い複合粒子を実現できないことがある。
【0062】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0064】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、前記ポリイソシアネートとして、これまでに挙げたポリイソシアネートの2量体、3量体やビュレット化イソシアネート等の変性体も挙げられる。
これらのポリイソシアネートは、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0066】
(c)ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル
前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、カプロラクトン変性−2−ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレグリコールモノアクリル酸エステル、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0067】
これらのヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中で、ヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル及びペンタエリスリトールトリアクリレートが好ましい。ここで、炭素数1〜8のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等が挙げられる。これらアルコールには、構造異性体が含まれる。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、より復元性の高い複合粒子を実現し、それによって、複合粒子を添加したコーティング剤を用いて塗膜を形成したときに、復元性のより高い塗膜を得ることができるようにする観点から、炭素数1〜8のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、その中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシプロピルアクリレートが特に好ましい。
【0068】
〔他のビニル系単量体〕
本発明の架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、前記架橋性オリゴマー及び(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体のみに由来するものであってもよいが、前記架橋性オリゴマー及び(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体に由来する構造単位に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、他のビニル系単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0069】
前記他のビニル系単量体は、使用される。前記他のビニル系単量体としては、前記(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体以外の他の単官能ビニル系単量体(1つのエチレン性不飽和基を有する化合物)又は前記架橋性オリゴマー以外の他の多官能ビニル系単量体(2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物)を用いることができる。
【0070】
前記他の単官能ビニル系単量体としては、例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレンの誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル;アクリロニトリル、アクリルアミド等のようなアクリル酸エステル以外のアクリル酸誘導体;メタクリロニトリル、メタクリルアミド等のようなメタクリル酸エステル以外のメタクリル酸誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン等が挙げられる。
【0071】
前記他の多官能ビニル系単量体としては、ジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(繰り返し単位数が2〜10)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(繰り返し単位数が2〜10)、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ブチレンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート;エトキシ化(繰り返し単位数が2〜10)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の2官能エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルフォスフェート等の3官能トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能テトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート類;ポリ(ペンタエリスリトール)アクリレート等の8官能ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート類;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのような3官能の窒素原子含有環状(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これら他のビニル系単量体は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0072】
〔親水性無機粒子〕
本発明の複合粒子は、重合体粒子表面に付着した親水性無機粒子を含んでいる。本出願書類において、「親水性無機粒子」とは、水中に分散しうる無機粒子を意味し、より詳細には、水中に導入して撹拌した場合に、親水性の挙動をとる無機粒子、すなわち表面が水により完全に濡れ、従って水に対して90゜より小さい接触角を有する、水中に分散する無機粒子を意味する。複合粒子における重合体粒子の表面に付着した無機粒子が親水性であるか否かは、複合粒子の親水性試験(実施例参照)を実施した結果、すぐに複合粒子の沈降が始まるか否かによって間接的に確認することもできる。また、前記親水性無機粒子は、親水性を示す程度の数の水酸基を有する無機粒子である。
【0073】
前記親水性無機粒子は、10〜1000nmの平均一次粒子径を有するものである。平均一次粒子径が1000nmより大きい場合、重合体粒子に親水性無機粒子が付着しにくくなり、剥がれることがあり、好ましくない。前記親水性無機粒子の平均一次粒子径は、12〜500nmの範囲内であることが好ましく、15〜300nmの範囲内であることがより好ましい。本出願書類において、親水性無機粒子の平均一次粒子径は以下に記載する方法によって測定されるものとする。
【0074】
(親水性無機粒子の平均一次粒子径の測定方法)
親水性無機粒子の平均一次粒子径(具体的には、キュムラント解析法で算出したZ平均粒子径)は、例えば動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製の「Zetasizer Nano ZS」)により測定する。
【0075】
測定試料としては、測定する親水性無機粒子をイオン交換水中に分散させて、分散液としたものを使用する。なお、親水性無機粒子の想定の平均一次粒子径が100nm未満の場合は、親水性無機粒子の濃度が1重量%となるように上記分散液を調製し、親水性無機粒子の想定の平均一次粒子径が100nm以上の場合は、親水性無機粒子の濃度が0.1重量%となるように上記分散液を調製する。上記動的光散乱法による粒径測定装置(Malvern社製の「Zetasizer Nano ZS」)の測定部に、ポリエチレン製セルをセットし、前記ポリエチレン製セルに上記分散液を分注して、親水性無機粒子のZ平均粒子径を測定する。
【0076】
Z平均粒子径とは、粒子分散液等の動的光散乱法の測定データを、キュムラント解析法を用いて解析して得られる値である。
【0077】
キュムラント解析法においては、粒子径の平均値と多分散指数(PDI)が得られ、この粒子径の平均値が、Z平均粒子径と定義される。厳密には、測定で得られたG1相関関数の対数に、多項式をフィットさせる作業を、キュムラント解析といい、下式における定数bが、二次キュムラント又はZ平均拡散係数とよばれる。
【0078】
LN(G1)=A+bt+ct2+dt3+et4+・・・
上記定数bを、上記分散液の粘度と幾つかの装置定数を用いて粒子径に換算した値がZ平均粒子径である。
【0079】
また、本発明の複合粒子における前記親水性無機粒子の含有量は、前記複合粒子100重量%に対して1〜15重量%の範囲内であることが好ましい。前記親水性無機粒子の含有量が1重量%より少ない場合、複合粒子同士が合着してしまい、ハンドリング性が悪くなることがあるので、好ましくない。前記親水性無機粒子の含有量が15重量%より多い場合、複合粒子の硬度が高くなり、ソフトフィール性が損なわれる場合がある。前記親水性無機粒子の含有量は、2〜10重量%の範囲内であることがより好ましく、3〜8重量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0080】
前記親水性無機粒子の形状は、真球状(球状)に限定されるものではなく、鱗片状や板状等の非真球状であってもよい。また、前記親水性無機粒子としては、親水性シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子等の親水性金属酸化物粒子が挙げられる。
【0081】
前記親水性シリカ粒子の市販品としては、日本アエロジル株式会社製の親水性フュームドシリカ「AEROSIL(登録商標)」シリーズ、例えば、平均一次粒子径が5〜40nmの球状粒子である親水性汎用タイプ(「AEROSIL(登録商標) 50」、「AEROSIL(登録商標) 90G」、「AEROSIL(登録商標) 130」、「A
EROSIL(登録商標) 200」、「AEROSIL(登録商標) 200CF」、「AEROSIL(登録商標) 200V」、「AEROSIL(登録商標) 200FAD」「AEROSIL(登録商標) 300」「AEROSIL(登録商標) 380」、「AEROSIL(登録商標) OX 50」等)を挙げることができる。
【0082】
前記アルミナ粒子の市販品としては、デンカ株式会社製の球状アルミナシリーズ、例えば、平均一次粒子径が200nmの「ASFP−20」、平均一次粒子径が1000nmの「DAW−01」;キンセイマテック株式会社製の合成板状アルミナ「セラフ(登録商標)」シリーズ、例えば、平均一次粒子径が300nmの「YFA00310」、平均一次粒子径が600nmの「YFA00610」等を挙げることができる。
【0083】
前記酸化チタン粒子の市販品としては、石原産業株式会社製の超微粒子酸化チタンTTOシリーズ、例えば平均一次粒子径が100nm〜500nmの「TTO−51(A)」「TTO−51(C)」「TTO−55(A)」等を挙げることができる。
【0084】
〔コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子〕
前記重合体粒子表面に付着した前記親水性無機粒子は、コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子を含んでいることが好ましく、コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子とコロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子(前段で例示したような親水性無機粒子)とを含むことがより好ましい。
【0085】
前記コロイダルシリカとしては、沈降性シリカパウダー、気相法シリカパウダー等パウダー状のコロイダルシリカ;媒体中で一次粒子レベルまで安定分散させたコロイダルシリカのゾルを挙げることができる。これらの中でも、媒体中で一次粒子レベルまで安定分散させたコロイダルシリカのゾルが、本発明の製造方法での使用により適している。
【0086】
前記コロイダルシリカのゾルとしては、水性シリカゾル、オルガノシリカゾル等を好適に使用することができる。特に、本発明の製造方法では、ビニル系単量体を水性媒体中で重合させるため、コロイダルシリカのゾルの分散安定性の面から水性コロイダルシリカを使用することが最も好ましい。コロイダルシリカのゾル中のシリカ濃度(固形分濃度)は、5〜50重量%のものが一般に市販されており、容易に入手できるので好ましい。
【0087】
前記コロイダルシリカの市販品としては、日産化学工業株式会社製のスノーテックス(登録商標)シリーズ、例えば、平均一次粒子径が10〜100nmの球状粒子である汎用タイプのスノーテックス(登録商標)(アルカリ性:「ST−30」、「ST−50」、「ST−30L」、「ST−ZL」、酸性:「STO」、「ST−O−40」、「ST−OL」、「ST−OZL35」)、平均一次粒子径が70〜480nmの球状粒子である大粒タイプのスノーテックス(登録商標)(アルカリ性:「ST−MP−2040」、「ST−MP−4540M」)、平均一次粒子径が40〜100nmの細長い形状をした鎖状タイプのスノーテックス(登録商標)(アルカリ性:「ST−UP」、酸性:「ST−OUP」)、平均一次粒子径が10〜25nmの球状粒子が連結したパールネックレス状タイプのスノーテックス(登録商標)(アルカリ性:「ST−PS−S」、「ST−PS−M」、酸性:「ST−PS−SO」、「ST−PS−MO」)等を挙げることができる。
【0088】
前記コロイダルシリカの平均一次粒子径(前記コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子の平均一次粒子径)は、10〜1000nmの範囲内であれば特に限定されないが、12〜200nmの範囲内であることが好ましい。前記コロイダルシリカの平均一次粒子径が200nmより大きいと、複合粒子製造時の分散安定性が低くなるため、好ましくない。また、前記コロイダルシリカの平均一次粒子径は、できるだけ小さいことが好ましく、
15〜150nmの範囲内であることがより好ましく、20〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0089】
本発明の複合粒子における前記コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子の含有量は、前記複合粒子100重量%に対して0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましい。前記コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子の含有量が0.1重量%より少ない場合、重合時の分散安定性が低下してしまい、複合粒子が得られないことがある。前記コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子の含有量が10重量%より多い場合、前記親水性無機粒子が重合体粒子表面に付着しにくくなり、望む複合粒子が得られないことがある。前記コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子の含有量は、0.2〜8重量%の範囲内であることがより好ましく、0.3〜5重量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0090】
〔水溶性セルロース類〕
本発明の複合粒子は、水溶性セルロース類をさらに含むことが好ましく、水溶性セルロース類をさらに含むと共に前記親水性無機粒子としてコロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子を含むことがより好ましく、水溶性セルロース類をさらに含むと共に前記親水性無機粒子としてコロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子とコロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子とを含むことがさらに好ましい。これにより、コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を水溶性セルロース類及びコロイダルシリカを介して重合体粒子表面へ安定的に付着させることができる。それゆえ、親水性無機粒子を、より多く、かつ安定に重合体粒子表面に付着させることができるので、疎水性指数が0〜10である本発明の複合粒子を容易に得ることができる。
【0091】
水溶性セルロース類をさらに含むと共に前記親水性無機粒子としてコロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子を含む複合粒子において、前記親水性シリカ粒子は、前記水溶性セルロース類を介して前記重合体粒子の表面に付着していてもよいし、前記重合体粒子の表面に直接付着していてもよい。言い換えれば、前記水溶性セルロース類は、前記親水性シリカ粒子及び前記重合体粒子の両方に付着していてもよいし、前記親水性シリカ粒子及び前記重合体粒子の一方にのみ付着していてもよい。
【0092】
前記水溶性セルロース類としては、特に限定されず、例えば、メチルセルロース等のアルキルセルロース類;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース類等の化合物が挙げられる。これらの化合物の中でも、ヒドロキシアルキルセルロース類、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース類が好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)がより好ましい。また、これら化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0093】
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、一般的に、45℃の下限臨界共溶温度(LCST)を有することが知られており、市販品としては、例えば、日本曹達株式会社製のNISSO(登録商標) HPCシリーズ(「SSL」、「SL」、「L」、「M」、「H」等)を挙げることができる。
【0094】
また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の市販品としては、信越化学工業株式会社製のメトローズ(登録商標)シリーズ、より具体的には、60℃の曇点を有するメトローズ(登録商標)60SHシリーズ(「SH60−50」、「60SH−4000」、「60SH−10000」)、65℃の曇点を有するメトローズ(登録商標)65SHシリーズ(「65SH−50」、「65SH−400」、「65SH−1500」、「65SH−4000」)、90℃の曇点を有するメトローズ(登録商標)90SHシ
リーズ(「90SH−100」、「90SH−400」、「90SH−4000」、「90SH−15000」)等を挙げることができる。
【0095】
〔複合粒子の製造方法〕
本発明の複合粒子の製造方法は、前記親水性無機粒子が、コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子と、コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子とを含む本発明の複合粒子を製造する方法であって、前記(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体20〜80重量%と、前記架橋性オリゴマー80〜20重量%とを含む重合性混合物を、前記水溶性セルロース類が表面に吸着した前記コロイダルシリカと界面活性剤との存在下、水性媒体中で懸濁重合することにより、前記重合体粒子と、前記重合体粒子表面に付着した前記コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子とを含む複合粒子を得る工程と、前記複合粒子を前記水性媒体から分離し乾燥させる時に前記コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を前記複合粒子に吸着させることにより、前記コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を前記重合体粒子表面に含有させる工程とを含んでいる。
【0096】
(水溶性セルロース類が表面に吸着したコロイダルシリカ)
前記コロイダルシリカへの前記水溶性セルロース類の吸着量は、特に限定されず、コロイダルシリカの比表面積に応じて適宜設定することができるが、コロイダルシリカ1gあたり0.05g〜0.5gであることが好ましい。
【0097】
なお、コロイダルシリカへの水溶性セルロース類の吸着量は、例えば、公益社団法人高分子学会発行の高分子論文集(Japanese Journal of Polymer Science and Technology)Vol.40,No.10,pp.697−702(Oct,1983)に記載されている方法を用いて測定することができる。
【0098】
本発明の製造方法は、前記懸濁重合する工程の前に、前記コロイダルシリカを前記水溶性セルロース類で処理して、前記コロイダルシリカの表面に前記水溶性セルロース類を吸着させる吸着工程を含むことが好ましい。
【0099】
前記コロイダルシリカの表面に前記水溶性セルロース類を吸着させるための、前記水溶性セルロース類による前記コロイダルシリカの処理方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用することができ、例えば、水系媒体中においてコロイダルシリカおよび水溶性セルロース類を共存させ、コロイダルシリカの表面に水溶性セルロース類を物理的に吸着させる方法(具体例としては、Rheological and Interfacial Properties of Silicone Oil Emulsions Prepared by Polymer Pre−adsorbed onto Silica Particles,Colloids Surfaces A:Physicochem.Eng.Aspects,328,2008,114−122.の文献に記載の方法)が好ましい。この処理方法によりコロイダルシリカに吸着させた水溶性セルロース類は、前記重合工程において、コロイダルシリカからほとんど脱離せず、安定した状態にある。
【0100】
また、前記水溶性セルロース類の(T−15)℃(Tは、前記水溶性セルロース類の下限臨界共溶温度(℃)又は曇点(℃)を意味する。)以上の温度条件下、より好ましくは、(T−15)℃以上、(T+20)℃以下の温度条件下で、前記コロイダルシリカと前記水溶性セルロース類とを共存させることにより、より効果的に前記コロイダルシリカの表面に水溶性セルロース類を物理的に吸着させることができる。なお、前記水溶性セルロース類は、その特性により、下限臨界共溶温度又は曇点のどちらか一方のみを有する。
【0101】
なお、前記吸着工程において、前記コロイダルシリカに吸着されなかった水溶性セルロース類は、前記懸濁重合する工程の前に遠心分離等によって取り除いてもよいし、前記懸濁重合する工程の後、懸濁重合で得られた複合粒子を精製する精製工程において洗浄によって取り除いてもよい。
【0102】
(界面活性剤)
前記界面活性剤としては、(非反応性の)アニオン性界面活性剤、反応性のアニオン性界面活性剤、(非反応性の)ノニオン性界面活性剤、反応性のノニオン性界面活性剤、(非反応性の)カチオン性界面活性剤、(非反応性の)両性イオン型界面活性剤等が挙げられる。
【0103】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム;ヒマシ油カリ石鹸等の脂肪酸石鹸;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0104】
前記反応性のアニオン性界面活性剤としては、例えば、株式会社ADEKA製のアデカリアソープ(登録商標)ER−10(純分100重量%)、アデカリアソープ(登録商標)ER−20(純分75重量%)、アデカリアソープ(登録商標)ER−30(純分65重量%、アデカリアソープ(登録商標)ER−40(純分60重量%)、アデカリアソープ(登録商標)NE−10(純分100重量%)、アデカリアソープ(登録商標)NE−20(純分80重量%)、アデカリアソープ(登録商標)NE−30(純分80重量%)、及びアデカリアソープ(登録商標)NE−40(純分40重量%)等が挙げられる。
【0105】
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0106】
前記反応性のノニオン性界面活性剤としては、第一工業製薬株式会社製のポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテルであるアクアロン(登録商標)RN−20(純分100重量%)、アクアロン(登録商標)RN−2025(純分25重量%)、アクアロン(登録商標)RN−30(純分100重量%)、及びアクアロン(登録商標)RN−50(純分65重量%);花王株式会社製のポリオキシアルキレンアルケニルエーテルであるラテムル(登録商標)PD−420(純分100重量%)、ラテムル(登録商標)PD−430(純分100重量%)、及びラテムル(登録商標)PD−450(純分100重量%)等が挙げられる。
【0107】
前記カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0108】
前記両性イオン型界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル系界面活性剤、亜リン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
前記界面活性剤は、得られる複合粒子の径や重合時における単量体混合物の分散安定性等を考慮して、種類が適宜選択され、使用量が適宜調整される。前記界面活性剤の使用量は、前記単量体混合物100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜2.0重量部の範囲内であることがより好ましい。前記界面活性剤の使用量が上記範囲より少ない場合には、重合安定性が低くなるおそれがある。また、前記界面活性剤の使用量が上記範囲より多い場合には、前記界面活性剤分のコストが悪化する。
【0110】
(水性媒体)
本発明の製造方法において使用される水性媒体としては、水、又は、水と水溶性媒体(例えば、メタノール、エタノール等のアルコール)との混合媒体が挙げられる。前記水性媒体の使用量は、複合粒子の安定化を図るために、通常、単量体混合物の使用量100重量部に対して、100〜1000重量部であることが好ましい。
【0111】
(重合開始剤)
本発明の製造方法において、前記水性媒体中での単量体混合物の懸濁重合は、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
【0112】
前記重合開始剤としては、通常、水性媒体中での重合に用いられる油溶性の過酸化物系重合開始剤又はアゾ系重合開始剤を好適に使用することができる。
【0113】
前記過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0114】
前記アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、(2−カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0115】
これら重合開始剤のなかでも、分解速度等の観点から、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が本発明の製造方法で使用され得る重合開始剤として好ましい。
【0116】
前記重合開始剤の使用量は、前記ビニル系単量体の使用量100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5.0重量部であることがより好ましい。前記重合開始剤の使用量が、前記ビニル系単量体の使用量100重量部に対して、0.01重量部未満であると、重合開始の機能を十分に果たし難く、また、10重量部を超えると、使用量に見合った効果が得られず、コスト的に不経済的であるため好ましくない。
【0117】
なお、前記重合開始剤は、単量体混合物に混合した後、得られた混合物を水性媒体中に分散させてもよいし、重合開始剤と単量体混合物との両者を別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。
【0118】
(重合禁止剤)
本発明の製造方法において、前記水性媒体中での単量体混合物の懸濁重合は、水系での乳化粒子(粒子径の小さすぎる重合体粒子)の発生を抑えるために、水溶性の重合禁止剤の存在下で行ってもよい。
【0119】
前記水溶性の重合禁止剤としては、例えば、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等を挙げることができる。前記重合禁止剤の添加量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.02〜0.2重量部の範囲内であることが好ましい。
【0120】
(その他添加剤)
本発明の製造方法において、前記水性媒体中での単量体混合物の懸濁重合は、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの存在下で行われてよい。
【0121】
前記顔料としては、例えば、鉛白、鉛丹、黄鉛、カーボンブラック、群青、酸化亜鉛、酸化コバルト、二酸化チタン、酸化鉄、チタン黄、チタンブラック等の無機顔料;ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロン、レッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミンB等の赤色顔料;ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、ジオキサンバイオレット等の紫色顔料;アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物;ファストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料;ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等の緑色顔料;イソインドリノン顔料、キナクリドン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染色レーキ顔料等の有機顔料を挙げることができる。
【0122】
前記染料としては、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン染料、ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン染料、インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料等を挙げることができる。
【0123】
前記酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3’−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等のフェノール系酸化防止剤;ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(
2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等のリン系酸化防止剤;フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤等を挙げることができる。
【0124】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(例えば、株式会社ADEKA製の「アデカスタブ(登録商標)LA−31」)、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が例示できる。
【0125】
(懸濁重合の方法)
本発明の製造方法の重合工程では、前記水溶性セルロース類が表面に吸着したコロイダルシリカ及び界面活性剤の存在下、水性媒体中で前記単量体混合物を懸濁重合させる。例えば、前記重合工程では、前記単量体混合物を、必要に応じて重合開始剤及び/又は重合禁止剤及び/又はその他の添加剤と混合した後、単量体混合物を、水溶性セルロース類が表面に吸着したコロイダルシリカ及び界面活性剤を含む(必要に応じて、さらにその他の懸濁安定剤を含む)水性媒体中に分散させて、懸濁重合を行う。
【0126】
単量体混合物を水性媒体中に分散させる方法としては、例えば、水性媒体中に単量体混合物を直接添加して、プロペラ翼等の攪拌力によりモノマー滴として分散させる方法;水性媒体中に単量体混合物を直接添加して、ローターとステーターとから構成される高剪断力を利用する分散機であるホモミキサーを用いて単量体混合物を水性媒体中に分散させる方法;水性媒体中に単量体混合物を直接添加して、超音波分散機を用いてモノマー混合物を水性媒体中に分散させる方法;水性媒体中に単量体混合物を直接添加して、マイクロフルイダイザーやナノマイザー等の高圧型分散機を用いて、単量体混合物の液滴同士の衝突や反応容器内壁に対する単量体混合物の液滴の衝突を利用して、単量体混合物を水性媒体中に液滴として分散させる方法;MPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通して単量体混合物を水性媒体中に圧入させる方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、上記のマイクロフルイダイザーやナノマイザー等の高圧型分散機を用いる方法や、上記のMPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通す方法は、粒子径をより均一に揃えられるため、単量体混合物を水性媒体中に分散させる方法として好ましく用いることができる。
【0127】
次いで、単量体混合物が分散された水性媒体(水性懸濁液)を、加熱することにより懸濁重合を開始させる。重合反応中は、水性懸濁液を攪拌するのが好ましい。攪拌は、例えば、単量体混合物が液滴として浮上すること、および重合により生成した複合粒子が沈降することを防止できる程度に行えばよい。
【0128】
懸濁重合において、重合温度は、30〜120℃の範囲内にするのが好ましく、40〜80℃の範囲内にするのがより好ましい。この重合温度を保持する時間は、0.1〜20時間の範囲内であることが好ましい。
【0129】
(コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を複合粒子に吸着させる方法)
前記複合粒子を前記水性媒体から分離し乾燥させる時に前記コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を前記複合粒子に吸着させる方法としては、例えば、吸引濾過、遠心脱水、遠心分離、加圧脱水等の方法により前記複合粒子を前記水性媒体から分離し、必要に応じて水等で洗浄した後、コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子を添加し、その後に乾燥する方法を用いることができる。乾燥の方法としては、例えば減圧乾燥を用いることができる。
【0130】
〔コーティング剤及び塗膜〕
本発明の複合粒子は、塗膜(コーティング)軟質化剤、塗料用艶消し剤、光拡散剤等としてコーティング剤に含有させることが可能である。本発明のコーティング剤は、本発明の複合粒子を含んでいる。本発明の複合粒子は水性混合液中での均一分散性に優れていることから、本発明のコーティング剤が水性コーティング剤(水性媒体を含むコーティング剤)である場合、均一分散性に優れた水性コーティング剤を実現でき、水性コーティング剤を用いて均一な塗膜を形成できる。
【0131】
前記コーティング剤は、通常、バインダー樹脂を含んでいる。前記バインダー樹脂としては、有機溶剤もしくは水に可溶な樹脂、又は水中に分散できるエマルジョン型の水性樹脂を使用でき、公知のバインダー樹脂をいずれも利用できる。前記バインダー樹脂としては、例えば、三菱レイヨン株式会社製の商品名「ダイヤナール(登録商標)LR−102」や「ダイヤナール(登録商標)BR−106」、或いは、大日精化工業株式会社製の商品名「メジウム VM」等のアクリル系樹脂;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;株式会社トクシキ製の型番「UVTKA−520」(紫外線硬化型の水性ポリウレタン系コーティング剤)、大同化成工業株式会社製の商品名「E−5221P」等のポリウレタン樹脂;塩素化ポリオレフィン樹脂;アモルファスポリオレフィン樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。前記バインダー樹脂として、前記架橋性オリゴマー(例えば「ニューフロンティア(登録商標)RST−402」(第一工業製薬株式会社製))を光重合開始剤(例えば、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン)と共に用いることもできる。これらバインダー樹脂は、塗工される基材(被塗工基材)へのコーティング剤の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0132】
前記コーティング剤における前記複合粒子の配合量は、前記コーティング剤を用いて形成される塗膜の厚み、前記複合粒子の平均粒子径、前記コーティング剤の塗工方法、前記コーティング剤の用途等によって適宜調整されるが、前記バインダー樹脂100重量部に対して、1〜300重量部の範囲内であることが好ましく、5〜100重量部の範囲内であることがより好ましい。前記コーティング剤における前記複合粒子の配合量が、前記バインダー樹脂100重量部に対して1重量部未満である場合、艶消し効果が十分得られないことがある。また、前記コーティング剤における前記複合粒子の配合量が、前記バインダー樹脂100重量部に対して300重量部を超える場合、前記コーティング剤の粘度が大きくなりすぎるために前記複合粒子の分散不良が起こることがあり、この結果、前記コーティング剤を用いて形成される塗膜表面にマイクロクラックが発生する、或いは、得られる塗膜表面にザラツキが生じる等のような、塗膜表面の外観不良が起こることがある。
【0133】
前記コーティング剤は、必要に応じて、媒体を含んでいる。前記媒体として、バインダー樹脂を溶解できる溶剤(溶媒)、又はバインダー樹脂を分散できる分散媒を使用することが好ましい。前記分散媒又は溶媒としては、水性媒体および油性媒体がいずれも使用できる。前記油性媒体としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。前記水性媒体としては、水、アルコール類(例えばイソプロパノール)等が挙げられる。これら媒体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。前記コーティング剤中における媒体の含有量は、前記コーティング剤全量に対し、通常、20〜60重量%の範囲内である。
【0134】
さらに、前記コーティング剤には、硬化剤、着色剤(体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等)、帯電防止剤、レベリング剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光
安定剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
【0135】
本発明の塗膜は、前記コーティング剤を用いて形成されたものであり、前記コーティング剤を被塗工基材に塗工した後、乾燥や紫外線照射等により硬化させることで形成することができる。本発明の複合粒子は高い復元性を有しているので、本発明の複合粒子を含むコーティング剤を用いて形成された塗膜は、高い耐傷つき性及び軟らかな触感を有する。
【0136】
前記被塗工基材としては、特に限定されず、用途に応じた基材が使用できる。
例えば、光学用途では、前記被塗工基材として、ガラス基材、透明樹脂基材等の透明基材が使用される。前記被塗工基材として透明基材を使用し、着色剤を含まないコーティング剤(光拡散用コーティング剤)を透明基材上に塗工して透明の塗膜を形成することで、光拡散フィルムや防眩フィルム等の光学フィルムを製造することができる。この場合、複合粒子は光拡散剤として機能する。
【0137】
また、前記被塗工基材として紙を使用し、着色剤を含まないコーティング剤(紙用コーティング剤)を紙上に塗工して透明の塗膜を形成することで、艶消し紙を製造することができる。
【0138】
前記コーティング剤の塗工方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。塗工方法としては、例えば、コンマダイレクト法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコート法、ディッピング法、ナイフコート法、カーテンフロー法、ラミネート法等の方法が挙げられる。前記コーティング剤は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤を加えて希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。前記光学フィルムを製造する場合には、塗工方法として、複合粒子に由来する凹凸が塗膜表面に形成されるような方法を使用することが好ましい。
【0139】
〔化粧料〕
本発明の化粧料は、本発明の複合粒子を含んでいる。本発明の複合粒子は水性混合液中での均一分散性に優れていることから、本発明の化粧料が水性化粧料(水性媒体を含む化粧料)である場合、均一分散性に優れた水性化粧料を実現できる。本発明の複合粒子は高い復元性を有しているので、本発明の複合粒子を含む化粧料は非常に柔らかな触感および軽い使用感を有する。
【0140】
前記化粧料は、前記複合粒子を1〜40質量%の範囲で含んでいることが好ましい。複合粒子の含有量が1質量%未満であると、複合粒子が少なすぎて、複合粒子を添加した効果が明確に認められないことがある。また、複合粒子の含有量が40質量%を超えると、それ以上に複合粒子の添加量を増加しても、添加量の増加に見合った顕著な効果の増進が認められないことがある。
【0141】
前記化粧料としては、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品、化粧水、クリーム、乳液、パック類、おしろい類、ファンデーション、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品、マニキュア化粧品、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、歯磨き、浴用剤、制汗剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用化粧料、ひげ剃り用クリーム、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、ボディローション等のローション等が挙げられる。
【0142】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に一般に用いられている成分を目的に応じて配合することができる。そのような成分として、例えば、水、低級アルコール、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、特殊配合成分が挙げられる。
【0143】
前記油脂及びロウ類としてはアボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0144】
前記炭化水素としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等が挙げられる。
【0145】
前記高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等が挙げられる。
【0146】
前記ステロールとしては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
前記脂肪酸エステルとしては、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクタドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクタドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキサデシル、イソオクタン酸セチル、パルミチン酸デシル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリルやイソステアリン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0147】
前記金属石鹸としては、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
前記保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
【0148】
前記界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N−アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤、脂肪酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0149】
前記高分子化合物としては、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子等の樹脂粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0150】
前記色材原料としては、酸化鉄、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0151】
ここで、前記高分子化合物や色材原料等の粉体原料については、予め表面処理が施されていてもよい。表面処理方法としては従来公知の表面処理技術が利用できる。例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0152】
前記香料としては、ラベンダー油、ペパーミント油、ライム油等の天然香料、エチルフェニルアセテート、ゲラニオール、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート等の合成香料が挙げられる。
前記防腐・殺菌剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0153】
前記酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸系、パラアミノ安息香酸系、アントラニリック酸系、サルチル酸系、桂皮酸系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0154】
前記特殊配合成分としては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニ
ウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸−L−アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【実施例】
【0155】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。まず、実施例及び比較例の複合粒子における無機粒子の含有量の測定方法について説明する。
【0156】
〔複合粒子における無機粒子の含有量の測定方法〕
後述する実施例及び比較例で得られた複合粒子については、上記強熱残分は親水性無機粒子等の無機粒子の含有量(重量%)とほぼ等しいことから、以下の強熱残分の測定方法により測定された強熱残分を無機粒子の含有量(重量%)とした。
【0157】
(強熱残分の測定方法)
複合粒子1.0gを計量した後、計量した複合粒子を550℃で30分間、電気炉内で焼失させて、残った残渣の重量(g)を測定した。そして、測定した残渣の重量(g)を、測定前の粒子の重量(1.0g)で除し、百分率換算して、強熱残分(重量%)を得た。
【0158】
〔実施例1〕
攪拌装置を有する内容量5Lの容器内に、水性媒体としてのイオン交換水300重量部と、コロイダルシリカとしての「スノーテックス(登録商標)O−40」(平均一次粒子径25nm、固形分40重量%、日産化学工業株式会社製)15重量部(SiO2純分量6重量部)と、水溶性セルロース類としての「メトローズ(登録商標)65SH−50(曇点65℃、信越化学工業株式会社製)1.2重量部とを投入し、60℃の温度で12時間混合することで、コロイダルシリカに水溶性セルロース類を吸着させて分散剤とした。この分散剤を含む水溶液に、界面活性剤としてのドデシル硫酸ナトリウム0.25重量部を混合して、水相を調整した。
【0159】
次に、(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体としてのアクリル酸n−ブチル50重量部と、架橋性オリゴマー(ウレタンアクリレートオリゴマー)としての「ニューフロンティア(登録商標)RST−402」(第一工業製薬株式会社製;単独で硬化させたときに得られる硬化物の粘弾性から測定されるガラス転移温度(Tg)が13℃で鉛筆硬度がFのもの)50重量部と、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名「ABN−V」、株式会社日本ファインケム製)0.5重量部及び過酸化ベンゾイル0.2重量部とを混合して、油相を調整した。
【0160】
次に、上記油相を上記水相中に乳化・分散機(商品名「ホモミキサーMARK II 2.5型」、プライミクス株式会社製)を用い、回転数8000rpmにて10分間分散させて、およそ10μmの液滴径を有する懸濁液を得た。その後、攪拌機及び温度計を備えた重合器にこの懸濁液を入れ、重合器の内部温度を50℃に昇温して上記懸濁液の攪拌を5時間続けることで、懸濁重合反応を完了させた。
【0161】
上記懸濁液を冷却した後、懸濁液をろ過により脱水して固形分を分離し、10Lの水で固形分を洗浄し、重合体粒子と、重合体粒子表面に付着した(水溶性セルロース類が表面に吸着した)コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子とを含む複合粒子を得た。この複
合粒子に対し、コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子としての親水性フュームドシリカ「AEROSIL(登録商標)200」(日本アエロジル株式会社製、平均一次粒子径:約12nm)3重量部を添加して複合粒子に吸着させ、60℃で24時間減圧乾燥し、未分級の複合粒子を得た。その後、未分級の複合粒子を目開き45μmのメッシュに通して分級することで、上限(45μm)より大きい粒子径を有する粒子を除去し、複合粒子を得た。
【0162】
得られた複合粒子をSEMで撮像したところ、図1に示すように、複合粒子は、重合体粒子(図1における円形の灰色部分)と、当該重合体粒子に付着した親水性無機粒子(図1における白色部分)とを含むことが認められた。
【0163】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は9.91μmであり、複合粒子中の親水性無機粒子の含有量(コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子及び親水性フュームドシリカの合計含有量)は4.26重量%であった。また、この複合粒子は、22.4%の復元率を有し、疎水性指数は2.0、安息角は52度であった。
【0164】
〔実施例2〕
(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体としてのアクリル酸n−ブチルの使用量を65重量部に、架橋性オリゴマーとしての「ニューフロンティア(登録商標)RST−402」の使用量を35重量部に、懸濁液を得る際の乳化・分散機の回転数を5000rpmに、乾燥後の分級に使用するメッシュを目開き53μmのメッシュにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を作製した。
【0165】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は18.38μmであり、複合粒子中の親水性無機粒子の含有量は3.60重量%であった。また、この複合粒子は、37.8%の復元率を有し、疎水性指数は3.8、安息角は40度であった。
【0166】
〔実施例3〕
(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体として、アクリル酸n−ブチルに代えてアクリル酸エチルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を作製した。
【0167】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は7.92μmであり、複合粒子中の親水性無機粒子の含有量は4.82重量%であった。また、この複合粒子は、22.0%の復元率を有し、疎水性指数は2.0、安息角は41度であった。
【0168】
〔実施例4〕
減圧乾燥前に添加されるコロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子として、「AEROSIL(登録商標)200」3重量部に代えて、球状アルミナ微粒子「ASFP−20」(平均一次粒子径200nm、デンカ株式会社製)5重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を作製した。
【0169】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は9.16μmであり、複合粒子中の親水性無機粒子の含有量(コロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子及び球状アルミナ微粒子の合計含有量)は4.86重量%であった。また、この複合粒子は、24.7%の復元率を有し、疎水性指数は3.8、安息角は41度であった。
【0170】
〔実施例5〕
(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体としてのアクリル酸n−ブチルの使用量を30重量部に、架橋性オリゴマーとしての「ニューフロンティア(登録商標)RST−402」の使用量を70重量部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合
粒子を作製した。
【0171】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は30.03μmであり、複合粒子中の親水性無機粒子の含有量は1.78重量%であった。また、この複合粒子は、43.9%の復元率を有し、疎水性指数は2.0、安息角は38度であった。
【0172】
〔実施例6〕
架橋性オリゴマーとして、「ニューフロンティア(登録商標)RST−402」に代えて「ニューフロンティア(登録商標)RST−201」(第一工業製薬株式会社製;単独で硬化させたときに鉛筆硬度がFの硬化物が得られるもの)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を作製した。
【0173】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は11.73μmであり、複合粒子中の親水性無機粒子の含有量は4.23重量%であった。また、この複合粒子は、21.6%の復元率を有し、疎水性指数は2.0、安息角は47度であった。
【0174】
〔比較例1〕
コロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子としての親水性フュームドシリカに代えて、疎水性の無機粒子である「AEROSIL(登録商標)R974」(日本アエロジル株式会社製の疎水性シリカ粒子)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を作製した。
【0175】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は10.69μmであり、複合粒子中の親水性無機粒子の含有量は4.29重量%であった。また、この複合粒子は、22.2%の復元率を有し、疎水性指数は12.3、安息角は42度であった。
【0176】
〔比較例2〕
水性媒体としてのイオン交換水300重量部と、分散剤としての無機リン酸塩の1種であるピロリン酸マグネシウム7.5重量部と、界面活性剤としてのドデシル硫酸ナトリウム0.25重量部を混合して、水相を調整したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を作製した。
【0177】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は13.03μmであり、複合粒子中の親水性無機粒子の含有量は3.84重量%であった。また、この複合粒子は、23.4%の復元率を有し、疎水性指数は20.6、安息角は41度であった。
【0178】
〔比較例3〕
架橋性オリゴマーとしての「ニューフロンティア(登録商標)RST−402」に代えて1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを用いたこと以外は、施例1と同様にして複合粒子を作製した。
【0179】
得られた複合粒子の体積平均粒子径は8.01μmであり、複合粒子中の親水性無機粒子の含有量は4.92重量%であった。また、この複合粒子は、15.6%の復元率を有し、疎水性指数は28.5、安息角は50度であった。
【0180】
以上の実施例及び比較例における複合粒子の原料の種類及び量と、複合粒子の各特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0181】
【表1】
【0182】
以上のように、実施例1〜8では、(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体20〜80重量%と、ウレタンアクリレートオリゴマー80〜20重量%とを含む重合性混合物を、水溶性セルロース類が表面に吸着した平均一次粒子径が10〜1000nmのコロイ
ダルシリカと界面活性剤との存在下、水性媒体中で懸濁重合した後、得られた複合粒子を前記水性媒体から分離し乾燥させる時にコロイダルシリカ由来でない平均一次粒子径が10〜1000nmの親水性無機粒子を前記複合粒子に吸着させる製造方法により、前記(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体及び前記ウレタンアクリレートオリゴマーに由来する架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる重合体粒子と、該重合体粒子の表面に付着した平均一次粒子径が10〜1000nmのコロイダルシリカ由来の親水性シリカ粒子及びコロイダルシリカ由来でない親水性無機粒子とを含む複合粒子であって、疎水性指数が0〜10であり、復元率が20%以上である複合粒子を得ることができた。
【0183】
これに対し、コロイダルシリカ由来でない無機粒子として親水性無機粒子でなく疎水性無機粒子を使用した比較例1の製造方法、及び分散剤として水溶性セルロース類が表面に吸着したコロイダルシリカでなく無機リン酸塩を使用した比較例2の製造方法では、疎水性指数が0〜10である複合粒子を得ることができなかった。また、架橋剤としてウレタンアクリレートオリゴマーでなくアルキレングリコールジアクリレートを使用した比較例3の製造方法では、疎水性指数が0〜10である複合粒子を得ることができず、また、復元率が20%以上である複合粒子を得ることができなかった。
【0184】
〔実施例7〕(水性コーティング剤の製造例)
実施例1で得られた複合粒子0.8gに対して、バインダー樹脂としての紫外線硬化型の水性ポリウレタン系コーティング剤(株式会社トクシキ製、型番「UVTKA−520」)10gを配合することで、水性コーティング剤を得た。得られた水性コーティング剤は、複合粒子が凝集せず、均一に分散したものであった。
【0185】
この水性コーティング剤を、スリット幅40μmのアプリケーターを使用してABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)板上に塗布し、乾燥した後、紫外線を照射して硬化させることによって、塗膜を得た。得られた塗膜は、ムラのない均一なものであった。
【0186】
〔比較例4〕(水性コーティング剤の比較製造例)
実施例1で得られた複合粒子に代えて比較例1で得られた複合粒子を用いたこと以外は、実施例7と同様にして水性コーティング剤を得た。得られた水性コーティング剤は、複合粒子が凝集し、不均一なものであった。得られた水性コーティング剤を実施例7で得られた水性コーティング剤に代えて用いたこと以外は、実施例7と同様にして塗膜を得た。得られた塗膜は、ムラのある不均一な塗膜であった。
【0187】
以上のように、(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体及びウレタンアクリレートオリゴマーに由来する架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる重合体粒子と、該重合体粒子の表面に付着したコロイダルシリカ由来でない無機粒子とを含む複合粒子を用いた水性コーティング剤は、重合体粒子の表面に付着したコロイダルシリカ由来でない無機粒子が親水性無機粒子でなく疎水性無機粒子であり、複合粒子の疎水性指数が10超である比較例4の場合には、複合粒子が均一に分散したものでなく均一な塗膜を形成できなかったのに対し、重合体粒子の表面に付着したコロイダルシリカ由来でない無機粒子が親水性無機粒子であり、複合粒子の疎水性指数が0〜10である実施例7の場合には、複合粒子が均一に分散したものであり、均一な塗膜を形成できた。
【0188】
〔実施例8〕(耐傷つき性コーティング剤の製造例)
実施例1で得られた複合粒子0.8gに対して、バインダー樹脂としての「ニューフロンティア(登録商標)RST−402」(第一工業製薬株式会社製)4g、光重合開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(BASF社製、商品名「Darocur(登録商標)1173」)0.15g、及び油性媒体(溶媒)としての酢酸ブチ
ル6gを配合することで、耐傷つき性コーティング剤を得た。得られた耐傷つき性コーティング剤を、スリット幅40μmのアプリケーターを使用してABS板上に塗布し、乾燥した後、紫外線を照射して硬化することによって、塗膜を得た。
【0189】
得られた塗膜について、学振型摩擦堅牢度試験機(株式会社大栄科学精器製作所製、型番「RT−200」)を用いて試験荷重300gで往復速度60回/分で100回真鍮ブラシによる繰り返し擦傷試験を行った。その結果、スジがほとんど残らず、耐傷つき性の高い塗膜が得られたことが確認された。
【0190】
〔比較例5〕(耐傷つき性コーティング剤の比較製造例)
実施例1で得られた複合粒子に代えて比較例3で得られた複合粒子を用いたこと以外は、実施例8と同様にして塗膜を作製した。得られた塗膜について、実施例8と同様の繰り返し擦傷試験を行った。その結果、白くスジが残り、得られた塗膜の耐傷つき性は低かった。
【0191】
以上のように、(メタ)アクリル酸エステル系単官能単量体及び架橋剤に由来する架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる重合体粒子と、該重合体粒子の表面に付着した親水性無機粒子とを含む複合粒子を用いた塗膜は、架橋剤がウレタンアクリレートオリゴマーでなくアルキレングリコールジアクリレートである比較例5の場合には耐傷つき性が低いのに対し、架橋剤がウレタンアクリレートオリゴマーである実施例8の場合には耐傷つき性が高いことが確認された。
図1