【解決手段】流体機械である渦巻ポンプ10は、ケーシング12に回転可能に配置された回転軸25と、回転軸25に連結された羽根車28を備える。羽根車28は、複数の羽根板33と、羽根板33の一端に配置された第1シュラウド38と、羽根板33の他端に配置された第2シュラウド41とを備える。羽根板33は、第1シュラウド38の開口部39から突出した突出部36を有し、ケーシング12は、突出部36の外方に間隔をあけて位置する対向部46を有する。対向部46と開口部39の外周部39aとの間には、液体を通水可能な通水路50が形成され、通水路50には、断面積を広くした膨張室51A,51Bが2以上形成されている。
前記通水路には、前記第2連通部の下流側に、前記通水方向の下流側に向けて開口面積を次第に拡げた拡開部が形成されている、請求項5から10のいずれか1項に記載の流体機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡単な構成でクローズド型の羽根車のキャビテーションの発生を抑制し、NPSHを向上した流体機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケーシングに回転可能に配置された回転軸と、前記ケーシング内に配置され、前記回転軸に連結された羽根車とを備え、前記羽根車は、前記回転軸の方に位置する基端部から、前記回転軸から離れるように放射状に延びる複数の羽根板と、前記回転軸が延びる方向における前記羽根板の一端に配置され、前記基端部が位置する中央に開口部が形成されている第1シュラウドと、前記回転軸が延びる方向における前記羽根板の他端に配置され、前記第1シュラウドと間隔をあけて位置する第2シュラウドとを備え、前記羽根板は、前記第1シュラウドの前記開口部から前記回転軸が延びる方向における外方へ突出した突出部を有するとともに、前記ケーシングは、前記第1シュラウドの径方向における前記突出部の外方に間隔をあけて位置する対向部を有し、前記ケーシングの前記対向部と前記第1シュラウドの前記開口部の外周部との間には、前記羽根車の外部と内部とを連通させ、液体を通水可能な通水路が形成されており、前記通水路には、前記液体の通水方向と直交する方向の断面積を広くした膨張室が、前記通水方向に間隔をあけて2以上形成されている、流体機械を提供する。
【0009】
この流体機械の羽根車は、羽根板の両端にシュラウドが配置されたクローズド型である。そのため、ケーシングの壁と羽根板との隙間の設定が容易(不要)であるうえ、ケーシングに組み付けた後の調整が不要であるため、組立性及び保守性を向上できる。しかも、摩耗による効率の低下も少ないため、吸込性能を維持できる。また、第1シュラウド及び第2シュラウドにより、回転軸が延びる方向である羽根車の前後の圧力が平衡するため、オープン型の羽根車のように大きな軸スラストが作用することを防止できる。
【0010】
また、この態様の羽根車は、第1シュラウドの開口部から羽根板の基端部を突出させることで、部分的にオープン型としている。よって、ポンプに適用した場合、羽根板の基端部側が負圧になると、第1シュラウドとケーシングの壁との間の配置空間部の液体が羽根板の突出部へ流動する。これにより、羽根板の基端部側と先端部側の圧力差を低減できる。そのため、クローズド型の羽根車の性能を大きく変えることなく、キャビテーションの発生を抑制し、吸込性能(必要NPSH)を改善できる。また、羽根板の突出部は、表面の第1シュラウドの開口部を加工することで、容易に設けることができる。
【0011】
さらに、この態様では、プロテクタと開口部の外周部との間の通水路に、2以上の膨張室を設けることで、ラビリンスが形成されている。よって、通水路には隙間断面積が広い部分と狭い部分が形成されるため、隙間断面積が広い部分によって突出部へ流れる液体を減速し、圧力を高めることでキャビテーションを効果的に消滅させることができる。
【0012】
前記2以上の膨張室は、前記通水方向における最も上流側に位置する第1膨張室と、前記通水方向における最も下流側に位置する第2膨張室とを備え、前記第1膨張室の形状と前記第2膨張室の形状とは異なっていることが好ましい。この態様によれば、液体が流れることによる第1膨張室と第2膨張室の固有振動数を異ならせることができる。よって、それぞれの膨張室の固有振動数が一致することで生じる共鳴(渦騒音)を抑制できる。
【0013】
詳しくは、前記回転軸が延びる方向における前記第1膨張室の深さと前記第2膨張室の深さとが異なっている。また、前記第1シュラウドの径方向における前記第1膨張室の幅と前記第2膨張室の幅とが異なっている。この態様によれば、共鳴による通水路での渦騒音を確実に防止できる。
【0014】
前記通水路は、前記第1膨張室の上流側に形成された第1連通部と、前記第2膨張室の下流側に形成された第2連通部とを備え、前記第1連通部の形状と前記第2連通部の形状とは異なるようにしてもよい。この態様のようにしても、それぞれの膨張室での固有振動数を異ならせることができるため、共鳴による通水路での渦騒音を防止できる。
【0015】
詳しくは、前記第1シュラウドの径方向における前記第1連通部の通路長と前記第2連通部の通路長とが異なっている。また、前記回転軸が延びる方向における前記第1連通部の通路幅と前記第2連通部の通路幅とが異なっている。
【0016】
前記第2連通部の前記通路幅は、前記第1連通部の前記通路幅よりも広くすることが好ましい。この態様によれば、通水路の下流側の流速を上流側の流速よりも遅くすることができる。よって、羽根板の突出部に向けた水圧を高くすることができるため、キャビテーションの発生を抑制できる。
【0017】
前記通水路は、前記第1膨張室の上流側に形成された第1絞り部と、前記第2膨張室の下流側に形成された第2絞り部とを備え、前記第1絞り部の隙間断面積と前記第2絞り部の隙間断面積とは異なるようにしてもよい。この場合、前記第2絞り部の隙間断面積は、前記第1絞り部の隙間断面積よりも広くすることが好ましい。この態様のようにしても、通水路の下流側の流速を上流側の流速よりも遅くし、羽根板の突出部に向けた水圧を高くできるため、キャビテーションの発生を抑制できる。
【0018】
前記通水路には、前記第2連通部の下流側に、前記通水方向の下流側に向けて開口面積を次第に拡げた拡開部が形成されていてもよい。また、前記第1膨張室の容積は、前記第2膨張室の容積よりも小さい方が好ましい。この態様のようにしても、通水路の下流側の流速を上流側の流速よりも遅くし、羽根板の突出部に向けた水圧を高くできるため、キャビテーションの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の流体機械の羽根車は、羽根板に第1シュラウドの開口部から内方へ突出する突出部を設けた部分オープン型としているため、クローズド型の羽根車の性能を大きく変えることなく、キャビテーションの発生を抑制し、必要NPSHを改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体機械である両吸込遠心渦巻ポンプ10を示す。この渦巻ポンプ10は、回転軸25が幅方向に貫通されたケーシング12を備える。回転軸25には、羽根板33の両端に一対のシュラウド38,41が配置されたクローズド型の羽根車28が連結されている。本実施形態では、このクローズド型の羽根車28によるキャビテーションの発生を抑制し、必要NPSHを改善する。
【0023】
(両吸込遠心渦巻ポンプの詳細)
渦巻ポンプ10のケーシング12は、ケーシング本体14とケーシングカバー18とを備えている。ケーシング本体14には、第1吸込口15と図示しない吐出口とが形成されている。
【0024】
ケーシング本体14の幅方向中央には、概ねU字形状の下側仕切壁16が設けられている。ケーシングカバー18の幅方向中央には、下側仕切壁16の上方に位置するように、概ね逆U字形状の上側仕切壁19が設けられている。上下の仕切壁16,19は、ケーシング本体14にケーシングカバー18を組み付けることで、中央に取付孔20を備える環状体になる。ケーシング12内において、仕切壁16,19の左右両外側の領域は、第1吸込口15と連通した渦巻形状の吸込室22を構成する。また、仕切壁16,19の内側の領域は、取付孔20を通して吸込室22と連通するとともに、吐出口に連通した渦巻形状の液体流路である吐出室23を構成する。
【0025】
ケーシング12には、取付孔20の中央を貫通するように回転軸25が配置されている。この回転軸25は、ケーシング12の左右両端に配置したメカニカルシール26によって、ケーシング12に回転可能に軸支されている。ケーシング12から突出した回転軸25の外端には、図示しない駆動手段であるモータが連結されている。回転軸25には、一体に回転するように羽根車28が連結されている。この羽根車28は、吐出室23内に位置するように、取付孔20に嵌め込まれている。
【0026】
(羽根車の詳細)
図1及び
図2に示すように、羽根車28は、回転軸25が延びる方向から見て円形状である。この羽根車28は、回転軸25に連結するための連結部30と、連結部30から放射状に突出する複数の羽根板33と、羽根板33の左右両端に配置されたシュラウド38,41とを備える。羽根車28が回転すると液体(水を含む)は、吸込室22から吐出室23へ送出され、吐出口から吐出される。
【0027】
連結部30は、吸込室22から吸い込んだ液体を羽根車28の径方向外向きに導くために、概ね二等辺三角形状に突出する隆起部31を備える。この連結部30には、羽根板33が一体に形成されている。羽根板33は、隆起部31の左右に位置する一対の基端部34A,34Bを備え、隆起部31の中心を通る中心線に対して、対称な形状である。羽根板33は、回転軸25の方に位置する基端部34A,34Bから、回転軸25から離れるように羽根車28の径方向外方へ延びている。
【0028】
図1において羽根板33の左側に位置する左シュラウド38は、回転軸25が延びる方向における羽根板33の一端に配置された第1シュラウドである。
図1において羽根板33の左側に位置する右シュラウド41は、回転軸25が延びる方向における羽根板33の他端に配置された第2シュラウドである。これらのシュラウド38,41は、外周縁が羽根板33の先端部35と一致する外径の円板状であり、互いに間隔をあけて位置している。シュラウド38,41には、羽根板33の基端部34A,34Bが位置する中央に、回転軸25と同心円形状の開口部39,42がそれぞれ設けられている。
【0029】
この両吸込型の羽根車28には、隣接する羽根板33,33と、左右のシュラウド38,41とで画定された筒状の液体流路44が周方向に複数形成されている。この液体流路44は、シュラウド38,41の開口部39,42が流入口を構成し、羽根板33の先端部35側の開口部分が流出口を構成する。開口部39,42から吸い込まれた液体は、羽根車28の回転による遠心力によって、液体流路44を通して径方向外側へ吐出される。
【0030】
図2及び
図3に示すように、羽根車28の羽根板33は、回転軸25が延びる方向において、開口部39,42から外方へ突出する突出部36A,36Bを備える。この突出部36A,36Bは、例えば既存のシュラウド38,41の開口部39,42を切り欠いて拡開することで、各開口部39,42から露出されている。本実施形態では、シュラウド38,41側に位置する基端部34A,34Bの外端34aと、連結部30側に位置する基端部34A,34Bの内端34bとの間に、開口部39,42の外周部(縁)39a,42aが位置するように設定されている。
【0031】
このようにした羽根車28は、羽根板33の両端にシュラウド38,41を配置したクローズド型である。そのため、吐出室23の壁23aと羽根板33との隙間の設定が容易(不要)であるうえ、ケーシング12に組み付けた後の調整が不要であるため、組立性及び保守性を向上できる。しかも、摩耗による効率の低下も少ないため、吸込性能を維持できる。また、シュラウド38,41によって、回転軸25が延びる方向の圧力が平衡するため、オープン型の羽根車のように大きな軸スラストが作用することを防止できる。また、突出部36A,36Bは、シュラウド38,41の開口部39,42を加工することで容易に形成できるうえ、開口部39,42から露出しているため清掃性が良好である。
【0032】
ケーシング12の取付孔20には、吸込室22と吸込室22とを仕切るプロテクタ46が配置されている。このプロテクタ46は、例えばステンレス、鋳鉄、青銅等の摺動性が良好な材料からなる。プロテクタ46は、羽根車28の径方向における突出部36A,36Bの外方に、所定の間隔をあけて位置する内端部47を備える対向部である。また、プロテクタ46は、開口部39,42の外周部39a,42aとも、所定の間隔をあけて位置する対向面部48を備えている。
【0033】
図3に示すように、吸込室22内の圧力をP1とすると、羽根車28内での圧力は、液体が開口部39,42から羽根板33の基端部34A,34Bに至るまでの間に次第に低下する。
図3に破線で示すように、開口部から羽根板が露出していない比較例(従来品)のクローズド型羽根車では、液体が基端部の外端(34a)に至ると、圧力の下降勾配が急になる。この急勾配の圧力低下は、基端部の内端(34b)に至ると止まり、この時点が最低圧力P2になる。液体が基端部を越えて液体流路内に至ると、圧力は高くなり、羽根車の出口部分で最大圧力P3になる。この最低圧力P2と最大圧力P3の差が大きくなることで、負圧側である羽根板の基端部でキャビテーションが発生する。
【0034】
本実施形態の羽根車28には、羽根板33の基端部34A,34Bに、シュラウド38,41の開口部39,42から突出する突出部36A,36Bが形成されている。また、プロテクタ46,46とシュラウド38,41の開口部39,42との間には、液体を通水可能な通水路50が形成されている。そのため、羽根車28と吐出室23の壁23aとの間にある液体は、羽根車28の内外の圧力差によって、通水路50を通って負圧側である液体流路44に向けて注水される。よって、
図3に実線で示すように、羽根板33の基端部34A,34B側の圧力を高くすることができる。
【0035】
このように、本実施形態の羽根車28は、開口部39,42から羽根板33を突出させた部分的オープン型としているため、羽根板33の基端部34A,34B側と先端部35側の圧力差を大幅に低減できる。そのため、クローズド型の羽根車28の性能を大きく変えることなく、キャビテーションの発生を抑制し、吸込性能(必要NPSH)を改善できる。
【0036】
(通水路の詳細)
羽根車28でのキャビテーションは、通水路50にラビリンスを設けることで、より効果的に消滅させることができる。これは、ラビリンスによって隙間断面積が広い部分と狭い部分が通水路50に形成され、隙間断面積が広い部分によって突出部36A,36Bへ流れる液体を減速し、圧力を高めることができるためである。一方、
図4に一点鎖線で示すように、隙間断面積が大きい拡張部分では、液体による旋回流が生じる。同一形状の拡張部を等ピッチで形成したラビリンスでは、それぞれの拡張部での固有振動数が一致することで、共鳴による渦騒音が生じることが知られている。そこで、本実施形態の通水路50には、以下のようにラビリンスを形成している。
【0037】
図3及び
図4に示すように、通水路50には、膨張室51A,51B、連通部52A〜52C、絞り部53A〜53C、及び拡開部54が形成されている。これらは、羽根車28の開口部39,42の外周部39a,42aと、プロテクタ46の対向面部48とを、所定深さで円環状に切り欠くことで形成されている。これらは、吐出室23から液体流路44に向けた液体の通水方向に沿って、第1連通部52A、第1絞り部53A、第1膨張室51A、第3連通部52C、第3絞り部53C、第2膨張室51B、第2連通部52B、第2絞り部53B、及び拡開部54の順番で形成されている。
【0038】
膨張室51A,51Bは、液体の通水方向と直交する方向である回転軸25が延びる方向の隙間断面積を広くしたものである。膨張室51A,51Bは、回転軸25が延びる方向の深さAと、羽根車28の径方向の幅Rとで定められる。これらの寸法を異ならせることで、第1膨張室51Aの形状と第2膨張室51Bの形状とを異ならせることができる。本実施形態では、上流側の第1膨張室51Aの深さA1は、下流側の第2膨張室51Bの深さA2よりも浅くなっている(A1<A2)。また、第1膨張室51Aの幅R1は、第2膨張室51Bの幅R2よりも狭くなっている(R1<R2)。これにより、第1膨張室51Aの容積V1は、第2膨張室51Bの容積V2よりも小さくなっている(V1<V2)。
【0039】
なお、第3の膨張室を形成する場合の位置は、第1膨張室51Aと第2膨張室51Bとの間である。よって、第1膨張室51Aは、液体の通水方向における最も上流側に位置し、第2膨張室51Bは、液体の通水方向における最も下流側に位置する。第3の膨張室の深さA3は、上流側の第1膨張室51Aの深さA1よりも深く、下流側の第2膨張室51Bの深さA2よりも浅くする(A1<A3<A2)。また、第3の膨張室の幅R3は、第1膨張室51Aの幅R1よりも広く、第2膨張室51Bの幅R2よりも狭くする(R1<R3<R2)。これにより、第3の膨張室の容積V3は、第1膨張室51Aの容積V1よりも大きく、第2膨張室51Bの容積V2よりも小さくする(V1<V3<V2)。即ち、膨張室の深さAは、上流側から下流側に向けて次第に深くし、膨張室の幅Rは、上流側から下流側に向けて次第に広くすることで、膨張室の容積Vは、上流側から下流側に向けて次第に大きくする。
【0040】
このように、形状が異なる膨張室51A,51Bを通水路50に形成することで、これらに液体が流れた際の固有振動数を異ならせることができる。よって、それぞれの膨張室51A,51Bの固有振動数が一致することで生じる渦騒音を抑制できる。また、膨張室51A,51Bの容積Vを下流側に向けて大きくしているため、通水路50の下流側の流速を上流側の流速よりも遅くできる。よって、羽根板33の突出部36A,36Bに向けた水圧を高くすることができるため、キャビテーションの発生を抑制できる。
【0041】
第1連通部52Aは、吐出室23内の液体を通水路50内に取り入れる入口であり、第1膨張室51Aの上流側に形成されている。第2連通部52Bは、第2膨張室51Bの下流側に形成され、第3連通部52Cは第1膨張室51Aと第2膨張室51Bとの間に形成されている。なお、第3の膨張室を形成する場合には、第3連通部52Cが第1膨張室51Aと第3膨張室との間に形成され、第3膨張室と第2膨張室51Bとの間に第4の連通部が形成される。
【0042】
連通部52A〜52Cは、羽根車28の径方向の通路長Lと、回転軸25が延びる方向の通路幅Sとで定められる。これらの寸法を異ならせることで、第1連通部52A、第2連通部52B、及び第3連通部52Cそれぞれの形状を異ならせることができる。
【0043】
第1連通部52Aの通路長L1は、下流側の第2連通部52Bの通路長L2よりも短くなっている。また、中間の第3連通部52Cの通路長L3は、第1連通部52Aの通路長L1よりも長く、第2連通部52Bの通路長L2よりも長くなっている(L1<L2<L3)。なお、羽根車28の径方向における通水路50の寸法を一定とする場合、連通部52A〜52Cの通路長Lを長くすると、膨張室51A,51Bの幅Rは狭くなる。よって、連通部52A〜52Cの通路長Lと膨張室51A,51Bの幅Rとは、渦騒音の大小によって調整することが好ましい。
【0044】
第1連通部52Aの通路幅S1は、第2連通部52Bの通路幅S2よりも狭くなっている。また、中間の第3連通部52Cの通路幅S3は、第1連通部52Aの通路幅S1よりも広く、第2連通部52Bの通路幅S2よりも狭くなっている(S1<S3<S2)。即ち、連通部52A〜52Cの通路幅Sは、通水路50の上流側から下流側に向けて次第に広くなっている。
【0045】
このように、形状が異なる連通部52A〜52Cを通水路50に形成することにより、膨張室51A,51Bに液体が流れた際の固有振動数を異ならせることができるため、共鳴による渦騒音の発生を抑制できる。しかも、連通部52A〜52Cの通路幅Sを上流側から下流側に向けて次第に広くしているため、通水路50の下流側の流速を上流側の流速よりも遅くできる。よって、羽根板33の突出部36A,36Bに向けた水圧を高くすることができるため、キャビテーションの発生を抑制できる。
【0046】
第1絞り部53Aは、第1連通部52Aから第1膨張室51Aへの液体流動を調整するもので、第1膨張室51Aの上流側に形成されている。第2絞り部53Bは、第2連通部52Bから拡開部54への液体流動を調整するもので、第2膨張室51Bの下流側に形成されている。第3絞り部53Cは、第3連通部52Cから第2膨張室51Bへの液体流動を調整するもので、第1膨張室51Bの下流側に形成されている。
【0047】
第1絞り部53Aと第3絞り部53Cとは、羽根車28の径方向の絞り幅Cと、回転軸25が延びる方向の絞り長Bとで定められる。第2絞り部53Bは、第2連通部52Bと拡開部54との間の絞り幅Cで定められる。そのうち、第1絞り部53Aの絞り幅C1は、第2絞り部53Bの絞り幅C2よりも狭くなっている。第3絞り部53Cの絞り幅C3は、第1絞り部53Aの絞り幅C1よりも広く、第2絞り部53Bの絞り幅C2よりも広くなっている(C1<C3<C2)。即ち、絞り部53A〜53Cの隙間断面積に相当する絞り幅Cは、上流側から下流側に向けて次第に広くなるようにしている。
【0048】
このように、隙間断面積が異なる絞り部53A〜53Cを設け、下流側の第2絞り部53Bの隙間断面積を広くしているため、連通部52A〜52Cの場合と同様に、通水路50の下流側の流速を上流側の流速よりも遅くできる。よって、羽根板33の突出部36A,36Bに向けた水圧を高くすることができるため、キャビテーションの発生を確実に抑制できる。
【0049】
拡開部54は、通水路50内の液体を液体流路44に放出する出口であり、第2連通部52Bの下流側に形成されている。この拡開部54は、プロテクタ46の対向面部48に、通水方向に沿って外向き(吸込室22側)に傾斜する斜面48aを設けることで、開口面積を次第に拡げたものである。開口部39,42の外周部39a,42aと対向面部48の斜面48aによる拡開部54の角度αは、開口部39,42からの突出部36A,36Bの突出量(寸法)に応じて設定される。詳しくは、斜面48aは、延長線が基端部34A,34Bの外端34aと内端34bとの間に位置するように形成される。また、斜面48aは、延長線が内端34bよりも外端34aの方に近接するように形成される。
【0050】
このように、拡開部54を設けることで、突出部36A,36Bに放出する液体を拡散できるとともに、流速を上流側よりも遅くできる。よって、羽根板33の突出部36A,36Bに向けた水圧を高くすることができるため、キャビテーションの発生を確実に抑制できる。
【0051】
以上のように、第1実施形態の渦巻ポンプ60では、羽根車28を部分的にオープン型としているため、クローズド型の羽根車の性能を大きく変えることなく、キャビテーションの発生を抑制し、必要NPSHを改善できる。また、通水路50には形状が異なる2以上の膨張室51A,51Bを形成しているため、それぞれの膨張室51A,51Bでの固有振動数を異ならせ、共鳴による渦騒音を防止できる。
【0052】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態の流体機械である片吸込遠心渦巻ポンプ60を示す。この渦巻ポンプ60は、回転軸74が回転可能に配置されたケーシング62を備える。回転軸74の一端には、第1実施形態と同様に概ねクローズ型の羽根車76が連結されている。この羽根車76は、第1実施形態の羽根車28とは異なり、回転軸74が延びる方向における一方のみから液体を吸い込むものである。
【0053】
(片吸込遠心渦巻ポンプの詳細)
渦巻ポンプ60のケーシング62は、ケーシング本体63と、このケーシング本体63に固定されたケーシングカバー64とを備える。ケーシング本体63には、
図5において左側に吸込口65が設けられている。吸込口65は断面円形状の空間であり、ケーシングカバー64が配置された奥側には、羽根車76を配置する配置空間部66が設けられている。この配置空間部66の外周部には、ケーシング62内に吸い込んだ液体を下流側に吐出する液体流路であるボリュート通路67が設けられている。また、ケーシング本体63には、
図5において上側に位置するように、ボリュート通路67の出口である吐出口68が設けられている。
【0054】
ケーシング62には、水平方向に延びるように回転軸74が回転自在に配置されている。回転軸74は、一端がケーシングカバー64のシャフト穴69から配置空間部66内に突出している。シャフト穴69の周囲には、液密性を保持するためのメカニカルシール70が取り付けられている。ケーシングカバー64の外側にはベアリングケース71が固定されている。回転軸74は、ベアリングケース71に固定されたベアリング72により回転自在に軸支されている。ベアリングケース71から突出した回転軸74の外端には、図示しない駆動手段であるモータが連結されている。
【0055】
(羽根車の詳細)
図5及び
図6に示すように、ケーシング62の配置空間部66には、回転軸74が延びる方向から見て円形状の羽根車76が配置されている。この羽根車76は、複数の羽根板78と、回転軸74が延びる方向における羽根板78の両側に配置されたシュラウド83,86とを備える。羽根車76が回転すると液体(水を含む)は、吸込口65からボリュート通路67へ送出され、吐出口68から吐出される。
【0056】
羽根板78は、第1実施形態の羽根板33と同様に、回転軸74の方に位置する基端部79から、回転軸74から離れるように羽根車76の径方向外方へ延びている。
【0057】
図5において左側に位置する前シュラウド83は、回転軸74が延びる方向における羽根板78の前端(一端)に配置された第1シュラウドである。この前シュラウド83は、回転軸74が延びる方向に対して直交方向に延びる概ね平板状である。前シュラウド83には、回転軸74と同心円形状をなすように開口部84が設けられている。
【0058】
図5において右側に位置する後シュラウド86は円板状であり、回転軸74が延びる方向における羽根板78の後端(他端)に配置された第2シュラウドである。この後シュラウド86は、前シュラウド83に対して所定の間隔をあけて位置している。後シュラウド86の中心には、回転軸74を連結するための連結部87が設けられている。また、後シュラウド86には、連結部87と同心の円筒状をなすように、ケーシングカバー64に向けて突出する円筒部88が設けられている。
【0059】
羽根車76には、隣接する羽根板78,78と、前後のシュラウド83,86とで画定された筒状の液体流路90が周方向に複数形成される。この液体流路90は、前シュラウド83の開口部84が流入口を構成し、羽根板78の先端部80が位置する外側開口部分が流出口を構成する。また、羽根車76の羽根板78には、回転軸74が延びる方向において、前シュラウド83の開口部84から外方へ突出する突出部81が形成されている。
【0060】
図5に示すように、後シュラウド86とケーシングカバー64との間には、ケーシングカバー64と吐出口68側を仕切るウェアリング92が配置されている。また、ケーシング本体63には、配置空間部66の吸込口65側と前シュラウド83との間を仕切るプロテクタ93が配置されている。ウェアリング92とプロテクタ93とは、第1実施形態のプロテクタ46と同様の材料からなる。
【0061】
配置空間部66に羽根車76を配置すると、プロテクタ93は、羽根車76の径方向における突出部81の外方に所定の間隔をあけて位置する。また、プロテクタ93は、羽根車76の開口部84の外周部84aに対しても、所定の間隔をあけて位置する。そして、プロテクタ93と開口部84の外周部84aとの間には、水や液体を羽根車76の径方向に通水可能な通水路95が形成されている。この通水路95には、第1実施形態の通水路50と同様に、2個の膨張室96A,96B、3個の連通部97A〜97C、3個の絞り部98A〜98C、及び1個の拡開部99を備えるラビリンスが形成されている。
【0062】
このようにした第2実施形態の片吸込遠心渦巻ポンプ60は、第1実施形態の両吸込遠心渦巻ポンプ10と同様に、概ねクローズド型の羽根車76であるため、ケーシング62の壁66aと羽根板78との隙間の設定が不要であるため、組立性及び保守性を向上できる。しかも、摩耗による効率低下も少ないため、吸込性能を維持できる。また、前シュラウド83と後シュラウド86により、回転軸74が延びる方向の圧力が平衡するため、大きな軸スラストが作用することを防止できる。
【0063】
また、前シュラウド83の開口部84から羽根板78の一部を突出させることで、部分的にオープン型としているため、羽根板78の基端部79側と先端部80側の圧力差を低減できる。よって、キャビテーションの発生を抑制し、吸込性能(必要NPSH)を改善できる。しかも、プロテクタ93と羽根車76との間に形成される通水路95には、形状が異なる膨張室96A,96Bを設けているため、突出部81へ流れる液体を減速し、圧力を高めることでキャビテーションを効果的に消滅させることができる。また、それぞれの膨張室96A,96Bの固有振動数が一致することで生じる渦騒音を抑制できる。
【0064】
(実験例)
本願の発明者は、第1実施形態と同様の両吸込式の遠心渦巻ポンプ10を用い、発明品と従来品のポンプ性能曲線を比較した。発明品は、第1実施形態と同様に、セミオープン型の羽根車28と、膨張室51A,51Bを形成可能なプロテクタ46とを用いた。従来品は、突出部が無いクローズド型の羽根車と、膨張室が形成されることのないプロテクタとを用いた。その試験結果を
図7に示す。
【0065】
図7には、発明品と従来品それぞれの効率、NPSH、軸動力、全揚程Hが示されている。発明品の効率は、クローズド型の従来品の効率と同等になった。また、過大流量域においても、発明品のNPSHは、従来品のNPSHよりも小さく、吸込性能が向上した。これは、羽根車28とプロテクタ46との間に膨張室51A,51Bを備える通水路50を形成することで、漏れ量を低く抑え、ポンプ漏れ損失を低減したため、効率が向上したものと考えられる。また、通水路50により漏流を調整し、この漏流を羽根板33の突出部36A,36Bに注水することで、キャビテーションを抑制できることを確認した。そして、発明品における最高効率点は約2〜4%上昇し、吸込性能も吸込比速度で約150〜280改善された。
【0066】
なお、本発明の流体機械は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、通水路50の膨張室51,96は、形状が異なっていれば、容積Vを同一にしてもよい。また、膨張室51,96は、深さAと幅Rのうち、一方だけを異なるようにしてもよい。また、拡開部54は設けなくてもよい。また、第2絞り部53Bも設けずに、第2連通部52Bが液体流路44を臨むようにしてもよい。また、第1実施形態の羽根車28には、隆起部31から羽根板33の先端部35に至る仕切板を設けてもよい。
【0068】
前記実施形態では、排水に用いられる渦巻ポンプ10,60を例に挙げて本発明の流体機械を説明したが、この流体機械は、発電に用いられる発電機、及び排水と発電の両方に用いられるポンプ水車であってもよい。なお、各実施形態のいずれかの羽根車28,76を水車のランナとして用いる場合、羽根板33,78の先端部35,80側が流入口になり、羽根板33,78の基端部34,79側が流出口になる。即ち、ポンプと水車とでは、液体の出入口が逆になる。