【解決手段】熱可塑性樹脂、膨張黒鉛およびリン酸亜鉛を含有する樹脂組成物を配管材1、1’、1’’に用い、耐火性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、膨張黒鉛を1〜20重量部、および、リン酸亜鉛を1〜15重量部含む。
前記耐火性樹脂組成物が、さらに、耐熱性水酸化アルミニウムを、熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜15重量部含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の配管材。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
(I)配管材
本発明に係る配管材は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とを含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有する単層または複層の配管材であり、前記耐火性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、膨張黒鉛を1〜20重量部、および、リン酸亜鉛を1〜15重量部含んでいる。
【0013】
前記配管材は、管状の前記膨張耐火層を含有する単層または複層の配管材であればよい。すなわち、前記配管材は、一つの管状の前記膨張耐火層のみからなる単層の配管材であってもよいし、前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方にさらに他の層を1または2以上有する複層の配管材であってもよい。ここで、前記配管材が前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方に有する他の層の数および材質は、その外側と内側とで同じであっても異なっていてもよい。本発明の一実施形態では、前記配管材は、前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方が、被覆層で被覆されている。
図1および
図2に、本発明の一実施形態に係る配管材1、1’、および1’’を管継手4により接続した状態を示す断面図を示す。
図1に示される配管材1、1’、および1’’は、一つの管状の前記膨張耐火層2のみからなる単層の配管材である。また、
図2に示される配管材1、1’、および1’’は、膨張耐火層2の外側および内側が、被覆層3で被覆されている3層の配管材である。
【0014】
本発明に係る配管材は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とを含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の膨張耐火層を含有するので、火災等により加熱されると、加熱された部分の配管材の管壁が膨張して、配管材の内径が狭められるか或いは配管材が閉塞される。これにより、熱および煙の遮断、或いは、遮炎が可能となる。
【0015】
前記配管材の形状は、管状であれば特に限定されるものではないが、好ましい一実施形態では管の断面形状は環状である。前記配管材の管壁の厚みも、通常建物等に用いられる配管材の厚みであればよく、特に限定されるものではないが、例えば呼び径100Aの場合、6.6〜7.6mmである。
【0016】
また、前記配管材の内径も、通常建物等に用いられる配管材の内径であればよく、特に限定されるものではないが、例えば呼び径100Aの場合、98.3〜101.3mmである。前記配管材の長さも特に限定されるものではなく、用途、使用場所等に応じて適宜選択すればよい。
【0017】
(I−1)膨張耐火層
本発明において、膨張耐火層は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とを含有する耐火性樹脂組成物からなる管状の層である。この膨張耐火層は、火災等により加熱されると、加熱された部分が膨張して、配管材の内径が狭められるか或いは配管材が閉塞される。これにより、熱および煙の遮断、或いは、遮炎が可能となる。
【0018】
前記膨張耐火層の形状および長さについては、配管材の形状および長さと同じであるのでここでは説明を省略する。
【0019】
前記膨張耐火層の厚みは、例えば呼び径100Aの場合、2.0〜7.6mmである。前記膨張耐火層の厚みが前記配管材の管壁の厚み全体の40%以上、より好ましくは45%以上、さらに好ましくは50%以上であれば、管壁が加熱により十分に膨張して内径を閉塞もしくは縮めることができるので耐火性が十分であり、また、強度が十分であるため好ましい。
【0020】
前記膨張耐火層は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とを含有する耐火性樹脂組成物からなる。以下、前記耐火性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
【0021】
〔ベース樹脂〕
前記耐火性樹脂組成物はベース樹脂として熱可塑性樹脂を含む。この熱可塑性樹脂としてはこれに限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ(1−)ブテン系樹脂;ポリペンテン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド系樹脂等を挙げることができる。ベース樹脂としては、これらの熱可塑性樹脂に含まれる化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、成形性に優れるという観点からは、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂等を好適に用いることができる。
【0022】
前記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニルと他の単量体との共重合体、重合体に塩化ビニル単量体をグラフト共重合したグラフト共重合体、これらの重合体の塩化ビニル単位が塩素化された重合体(塩素化ポリ塩化ビニル等)等を挙げることができる。これらのポリ塩化ビニル系樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。塩化ビニルと共重合させる前記他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類等を挙げることができる。これらの単量体は単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、塩化ビニル単量体をグラフト共重合させる前記重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等を挙げることができる。これらの重合体は単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
〔膨張黒鉛〕
本発明で用いられる膨張黒鉛とは、層間にイオン又は分子等が挿入されることにより、熱による膨張特性が与えられた黒鉛であれば特に限定されるものではない。前記膨張黒鉛としては、例えば、GREP−EG(鈴裕化学社製);MZ−260(エア・ウォーター社製)等を挙げることができる。
【0024】
本発明において用いられる前記膨張黒鉛の発泡開始温度は260℃以上であることが好ましい。ここで、「発泡開始温度」とは、加熱炉内を一定温度にして、膨張黒鉛の試料を30分加熱した後の膨張黒鉛の膨張倍率が1.3以上になる温度である。なお、膨張倍率=(加熱後の試料の体積/加熱前の試料の体積)である。前記膨張黒鉛の発泡開始温度が260℃以上かつベース樹脂の分解温度以下であれば、火災等により加熱されると、配管材が燃えて崩れ落ちる前に加熱された部分が膨張して、配管材の内径が狭められるか或いは配管材が閉塞され、管内温度の上昇が抑制されるので延焼防止効果が高まる。また、前記膨張黒鉛の発泡開始温度が260℃以上であれば、前記耐火性樹脂組成物から管状の膨張耐火層を成形するときに、膨張黒鉛が発泡しないため、外観のより良い配管材を得ることができる。また、発泡開始温度が低い前記膨張黒鉛を使用するときは、膨張黒鉛が発泡しないように低温で成形する必要があるが、低温で成形すると膨張耐火層の性能が低下する場合があった。前記膨張黒鉛の発泡開始温度が260℃以上であれば、得られる配管材の外観を損ねることなくより好適な成形温度を選択することができる。
【0025】
前記耐火性樹脂組成物に含まれる膨張黒鉛の割合は、配管材の耐火性を向上させることができれば特に限定されるものではないが、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜20重量部であることがより好ましく、11〜18重量部であることがさらに好ましい。
【0026】
前記耐火性樹脂組成物に含まれる膨張黒鉛の割合が、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、20重量部以下であれば、加熱により前記膨張耐火層が過度に膨張することがない。それゆえ、膨張耐火層が過度の膨張により配管材内でその形状を保持できないことにより起こる残渣の脱落という問題を回避することができる。前記膨張黒鉛の割合が1重量部以上であれば、火災等の加熱により、前記膨張耐火層が膨張して前記配管材の配管材の内径を狭めることができるか或いは配管材を閉塞させることができるため好ましい。
【0027】
前記熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂である場合、前記耐火性樹脂組成物に含まれる膨張黒鉛の割合は、前記耐火性樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、15重量部より多く20重量部未満であることが特に好ましい。前記膨張黒鉛の割合が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、15重量部より多いことにより、前記膨張耐火層が大きく膨張し、前記配管材の閉塞性が増すため好ましい。
【0028】
〔リン酸亜鉛〕
本発明で用いられるリン酸亜鉛としては、特にこれに限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミンリン酸亜鉛が挙げられる。このエチレンジアミンリン酸亜鉛としては、例えば、特開2000−191674公報等に記載のもの等を用いることができるが、特にこれに限定されるものではない。前記リン酸亜鉛としては、例えば、ZPO−3(鈴裕化学社製)等を好適に用いることができる。
【0029】
ポリ塩化ビニル系樹脂に膨張黒鉛を含有させた樹脂組成物によって形成された耐火膨張層を配管材に用いる従来の技術では、膨張黒鉛の含有量が多くなると、加熱により組織が膨張しすぎてその形状を保持できないという問題があった。すなわち、加熱時の配管材の閉塞性を向上させるために膨張黒鉛の割合を大きくすることには限界があると考えられていた。かかる問題に対して、本発明者らは、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂に、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とを添加したところ、驚くべきことに膨張黒鉛の含有量を、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、15重量部より多く含有させて、加熱により組織が大きく膨張しても、その形状を保持できることを見出した。
【0030】
前記耐火性樹脂組成物に含まれるリン酸亜鉛の割合は、加熱時に膨張耐火層の形状を保持することができれば特に限定されるものではないが、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜15重量部であることが好ましく、3〜12重量部であることがより好ましく、5〜10重量部であることがさらに好ましい。
【0031】
前記耐火性樹脂組成物に含まれるリン酸亜鉛の割合が、前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、1重量部以上であれば、加熱時に膨張耐火層の形状を保持することができるため好ましい。前記リン酸亜鉛の割合が15重量部以下であれば、配管材の物性が良好であるために好ましい。
【0032】
また、前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂である場合、前記耐火性樹脂組成物に含まれるリン酸亜鉛の割合は、前記耐火性樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1〜15重量部であることが好ましく、3〜12重量部であることがさらに好ましく、5〜10重量部であることが最も好ましい。前記耐火性樹脂組成物に含まれるリン酸亜鉛の割合が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1重量部以上であれば、加熱時に膨張耐火層の形状を保持することができるため好ましい。前記リン酸亜鉛の割合が15重量部以下であれば、配管材の物性が良好であるために好ましい。
【0033】
〔その他の成分〕
前記耐火性樹脂組成物は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とを必須に含有していればよいが、耐火膨張層または配管材の性能を損なわない範囲でさらにその他の成分を含んでいてもよい。耐火膨張層または配管材の性能を損なわないという観点から、前記耐火性樹脂組成物100重量部に対する、その他の成分の合計含有量は、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは15重量部以下である。
【0034】
前記その他の成分としては、例えば、難燃剤、形状保持剤、加工助剤、安定剤、顔料等を挙げることができる。
【0035】
前記難燃剤としては、耐熱性水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物、トリフェニルフォスフェイト、アンモニウムポリフォスフェイト、メラミンピロホスフェイト等のリン系化合物、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等を挙げることができる。本発明の好ましい一実施形態では、前記耐火性樹脂組成物は、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とに加えて、難燃剤として、耐熱性水酸化アルミニウムを使用する。本発明者らは、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛とに加えて、難燃剤として耐熱性水酸化アルミニウムを使用したところ、難燃性のみではなく、耐火膨張層の膨張時の形状安定性が顕著に向上することを見出した。耐熱性水酸化アルミニウムとしては、より具体的には、ALH−3L(河合石灰工業社製)を挙げることができる。
【0036】
前記耐火性樹脂組成物に含まれる耐熱性水酸化アルミニウムの割合は、特に限定されるものではないが、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜15重量部であることが好ましく、3〜12重量部であることがさらに好ましく、5〜10重量部であることが最も好ましい。
【0037】
前記耐火性樹脂組成物に含まれる耐熱性水酸化アルミニウムの割合が、前記耐火性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対して、1重量部以上であれば、難燃性のみではなく耐火膨張層の膨張時の形状安定性が向上するため好ましく、15重量部以下であれば、配管材の物性が良好であるため好ましい。
【0038】
また、前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂である場合、前記耐火性樹脂組成物に含まれる耐熱性水酸化アルミニウムの割合は、前記耐火性樹脂組成物に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1〜15重量部であることが好ましく、2〜12重量部であることがさらに好ましく、4〜10重量部であることが最も好ましい。
【0039】
さらに、添加剤として炭酸カルシウムやアルミナを添加すると形状保持性が向上するので、より好ましい。
【0040】
〔膨張耐火層の製造方法〕
前記膨張性耐火層の製造方法は特に限定されるものではなく、ベース樹脂としての熱可塑性樹脂と、膨張黒鉛と、リン酸亜鉛と、必要に応じて前記他の成分とを混合する工程と、混合した前記耐火性樹脂組成物を管状に成形する工程を含んでいればよい。
【0041】
また、混合した前記耐火性樹脂組成物を管状に成形する方法も特に限定されるものではなく、押出成形、射出成形等を挙げることができる。
【0042】
(I−2)被覆層
本発明の配管材の一実施形態では、前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方が、被覆層で被覆されている。被覆層は、例えば、機械的強度、耐候性、耐薬品性等の観点から設けられる。
【0043】
前記被覆層は、熱可塑性の樹脂を含む層であることが好ましい。かかる樹脂としては特にこれに限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性の樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。耐候性、耐薬品性という観点からは、前記被覆層は、より好ましくは、ポリ塩化ビニル系樹脂を含む層である。
【0044】
被覆層に用いられるポリ塩化ビニル系樹脂としては、前記(I−1)の〔ベース樹脂〕の項で説明したポリ塩化ビニル系樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0045】
前記被覆層の厚みも特に限定されるものではないが、例えば呼び径100Aの場合、好ましくは0.1mm〜3mmであり、より好ましくは0.2mm〜2.8mmであり、さらに好ましくは0.5mm〜2mmである。前記被覆層の厚みが0.5mm以上であれば配管材の機械的強度を向上させることができるためより好ましい。また、前記被覆層の厚みが2mm以下であれば膨張耐火層の厚みが確保でき耐火性が良好であるためより好ましい。なお、前記被覆層の厚みとは、前記被覆層が前記膨張耐火層の外側および内側に設けられているときは、各被覆層の厚みを意味する。
【0046】
前記膨張耐火層の外側および内側の少なくとも一方を、被覆層で被覆する方法も特に限定されるものではなく、例えば、多層押出成形、塗装等を挙げることができる。
【0047】
(II)配管材の接続
本発明に係る配管材は、通常2個または3個以上を管継手によって接続して用いる。前記管継手の形状および大きさは、前記配管材を接続できる形状および大きさであれば特に限定されるものではない。以下に、前記管継手により本発明に係る配管材を接続する方法の一例について、
図1および2に基づいて説明する。
【0048】
図1は、本発明の一実施形態に係る単層の配管材1、1’および1’’を管継手4により接続した状態を示す断面図である。また、
図2は、本発明の一実施形態に係る3層の配管材1、1’および1’’を管継手4により接続した状態を示す断面図である。
図1及び2に示すように、管継手4は、立管用配管材1及び1’がそれぞれ結合する立管接続部4a及び4bを備えた本管部と、横枝管用配管材1’’が結合する横枝管接続部4cを備えた横枝管部と、を備えている。本管部は立管用配管材1及び1’と略同じ内径を有する筒状の形状を有し、横枝管部は横枝管用配管材1’’と略同じ内径を有する筒状の形状を有している。そして、
図1及び2に示す例では、立管接続部4a及び4bは、それぞれ、立管用配管材1及び1’が挿入されて結合される受口であり、横枝管接続部4cは、横枝管用配管材1’’が挿入されて結合される受口である。
【0049】
図1及び2に示す例では、管継手は3個の配管材を接続する構成であるが、2個または4個以上の配管材を接続する構成であってもよい。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における膨張性および形状保持性の評価は次の方法により行った。
(膨張性)
得られた外径22mm、内径16mmの配管材から、軸方向に50mmの大きさに試験体を切り出した。るつぼの中に試験体を入れて、加熱炉で1000℃まで加熱し、るつぼの中に残った残渣の体積を測定した。加熱炉に入れる前の試験体の体積に対する、残渣の体積の比率が5倍以上である場合を「◎」、4倍以上5倍未満である場合を「○」、4倍未満である場合を「×」と評価した。
(形状保持性)
前記るつぼに残った残渣に所定の圧縮力を加えて、残渣が崩れないかどうか確認した。残渣が崩れない場合を「◎」、残渣のごく一部が崩れる場合を「○」、残渣の一部が崩れる場合を「△」、残渣の大半が崩れる場合を「×」と評価した。
【0051】
(外観(成形時発泡))
得られた配管材を観察し、発泡なしの場合を「◎」、小さい気泡が少量発生している場合を「○」、小さい気泡が多量に発生している場合、または大きい気泡が発生している場合を「×」と評価した。
【0052】
〔実施例1〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物は、PVC(カネカ社製、カネビニールS1001)100重量部に、鉛系安定剤(水澤化学工業社製、スタビネックス)6重量部、加工助剤(カネカ社製、PA−60)5重量部、リン酸亜鉛(鈴裕化学社製、ZPO−3)10重量部、膨張黒鉛(エア・ウォーター社製、MZ−260)11重量部、および水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、キスマ5A)5重量部を配合した後、ミキサーで撹拌混合して得た。
【0053】
得られた耐火性樹脂組成物を押出成形機によって管状に成形し、膨張耐火層からなる単層の配管材を作製した。得られた配管材の厚みは3mm、内径は16mmであった。
【0054】
〔実施例2〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、膨張黒鉛(エア・ウォーター社製、MZ−260)を5重量部にした以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0055】
〔実施例3〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物として、PVC(カネカ社製、カネビニールS1001)100重量部に、鉛系安定剤(水澤化学工業社製、スタビネックス)6重量部、加工助剤(カネカ社製、PA−60)5重量部、リン酸亜鉛(鈴裕化学社製、ZPO−3)5重量部、膨張黒鉛(エア・ウォーター社製、MZ−260)11重量部、および耐熱水酸化アルミニウム(河合石灰工業社製、ALH−3L)5重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0056】
〔実施例4〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物として、リン酸亜鉛(鈴裕化学社製、ZPO−3)5重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0057】
〔実施例5〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物として、水酸化マグネシウムの代わりに、水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、BF013)5重量部を加えた以外は、実施例4と同様にして、配管材を作製した。
【0058】
〔実施例6〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物として、追加でアルミナ系フィラー(河合石灰工業社製、セラシュールBMT−33)5重量部を加えた以外は、実施例4と同様にして、配管材を作製した。
【0059】
〔実施例7〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、耐熱性水酸化アルミニウム(河合石灰工業社製、ALH−3L)5重量部の代わりに、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、キスマ5A)5重量部および炭酸カルシウム(白石工業社製、ホワイトンP)5重量部を配合した以外は、実施例3と同様にして、配管材を作製した。
【0060】
〔実施例8〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、炭酸カルシウム(白石工業社製、ホワイントンP)5重量部を追加で加えた以外は、実施例3と同様にして、配管材を作製した。
【0061】
〔実施例9〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、鉛系安定剤(水澤化学工業社製、スタビネックス)4.5重量部を配合した以外は、実施例3と同様にして、配管材を作製した。
【0062】
〔実施例10〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、膨張黒鉛(エア・ウォーター社製、MZ−260)16重量部を配合した以外は、実施例9と同様にして、配管材を作製した。
【0063】
〔実施例11〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、リン酸亜鉛(鈴裕化学社製、ZPO−3)7重量部を配合した以外は、実施例10と同様にして、配管材を作製した。
【0064】
〔実施例12〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、耐熱性水酸化アルミニウム(河合石灰工業社製、ALH−3L)7重量部を配合した以外は、実施例11と同様にして、配管材を作製した。
【0065】
〔実施例13〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、膨張黒鉛(エア・ウォーター社製、MZ−260)20重量部を配合した以外は、実施例10と同様にして、配管材を作製した。
【0066】
〔実施例14〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、リン酸亜鉛(鈴裕化学社製、ZPO−3)9重量部を配合した以外は、実施例13と同様にして、配管材を作製した。
【0067】
〔実施例15〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、耐熱性水酸化アルミニウム(河合石灰工業社製、ALH−3L)9重量部を配合した以外は、実施例14と同様にして、配管材を作製した。
【0068】
〔実施例16〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、水酸化マグネシウムを加えなかった以外は、実施例4と同様にして、配管材を作製した。
【0069】
〔実施例17〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、膨張黒鉛(鈴裕化学社製、GREP−EG)11重量部を配合した以外は、実施例9と同様にして、配管材を作製した。
【0070】
〔実施例18〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、膨張黒鉛(鈴裕化学社製、GREP−EG)11重量部を配合した以外は、実施例16と同様にして、配管材を作製した。
【0071】
〔実施例19〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、リン酸亜鉛(鈴裕化学社製、ZPO−3)5重量部を2.5重量部に変更し、メラミンピロホスフェイト(MPP)を配合した以外は、実施例9と同様にして、配管材を作製した。
【0072】
〔比較例1〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物として、PVC(カネカ社製、カネビニールS1001)100重量部に、鉛系安定剤(水澤化学工業社製、スタビネックス)6重量部、加工助剤(カネカ社製、PA−60)5重量部、ポリリン酸アンモニウム(鈴裕化学社製、FCP−APP)5重量部、および膨張黒鉛(鈴裕化学社製、GREP−EG)11重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0073】
〔比較例2〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、キスマ5A)5重量部を追加で加えた以外は、比較例1と同様にして、配管材を作製した。
【0074】
〔比較例3〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、BF013)5重量部を追加で加えた以外は、比較例1と同様にして、配管材を作製した。
【0075】
〔比較例4〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物として、PVC(カネカ社製、カネビニールS1001)100重量部に、鉛系安定剤(水澤化学工業社製、スタビネックス)6重量部、加工助剤(カネカ社製、PA−60)5重量部、およびリン酸亜鉛(鈴裕化学社製、ZPO−3)5重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0076】
〔比較例5〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、ポリリン酸アンモニウム(鈴裕化学社製、FCP−APP)5重量部を追加で加え、リン酸亜鉛を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0077】
〔比較例6〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、リン酸亜鉛(鈴裕化学社製、ZPO−3)の配合量を10重量部から20重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0078】
〔比較例7〕
膨張耐火層を構成する耐火性樹脂組成物の配合において、リン酸亜鉛を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、配管材を作製した。
【0079】
〔膨張性および形状保持性の評価〕
実施例1〜19および比較例1〜7で得られた配管材について、膨張性評価および形状保持性評価を実施した。その結果を表1および2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】