【解決手段】本発明は、焦点合わせを行うためのフォーカスレンズ(16)を駆動するレンズ駆動機構であって、フォーカスレンズを手動で駆動させるためのユーザ操作に基づいた駆動力を伝達する第1駆動力伝達部(42)と、フォーカスレンズを自動で駆動させるための動力源からの動力に基づいた駆動力を伝達する第2駆動力伝達部(32)と、第1駆動力伝達部又は第2駆動力伝達部から伝達される駆動力に基づいてフォーカスレンズを光軸方向に移動させる駆動力を出力する出力部(44)と、出力部に対して第1駆動力伝達部から駆動力が伝達されるときに、第2駆動力伝達部による駆動力の伝達を停止させるブレーキ機構(60)と、を有することを特徴としている。
上記ブレーキ機構は、上記出力部に対して上記第1駆動力伝達部から駆動力が伝達されている間、上記第2駆動力伝達部による駆動力の伝達を停止し続ける、請求項1に記載のレンズ駆動機構。
上記ブレーキ切替機構は、上記検出部によって上記第1駆動力伝達部への駆動力の伝達が検出されない間、上記第2駆動力伝達部による駆動力の伝達の停止を解除する、請求項1乃至3の何れか1項に記載のレンズ駆動機構。
上記第1駆動力伝達部および上記第2駆動力伝達部からの駆動力を上記出力部に伝達する駆動力伝達部を備えている、請求項1乃至5の何れか1項に記載のレンズ駆動機構。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。まず、
図1乃至
図5を参照して、本発明の第1実施形態によるレンズ駆動機構を備えたカメラを説明する。
図1は本発明の第1実施形態によるレンズ駆動機構を備えたカメラの断面図である。
【0023】
図1に示すように、カメラ1は、レンズユニット2と、カメラ本体4と、を有する。レンズユニット2は、レンズ鏡筒6と、このレンズ鏡筒の中に配置された複数のレンズ8と、フォーカスレンズ16をレンズユニット2の光軸A方向に移動させるレンズ駆動機構10と、を有する。
【0024】
レンズユニット2は、カメラ本体4に取り付けられ、入射した光を撮像素子面4aに結像させるように構成されている。概ね円筒形のレンズ鏡筒6は、内部に複数のレンズ8を保持しており、フォーカスレンズ16をレンズ駆動機構10によって移動させることによりフォーカス調整を可能としている。
【0025】
また、レンズ鏡筒6の周囲には、フォーカスレンズ16を手動で移動させるために操作される(つまり、フォーカスレンズ16を手動で移動させるための操作を受け付ける)手動フォーカス操作部である筒状のフォーカスリング12が回動可能に取り付けられており、撮影者が手動でフォーカスリング12を回動操作すると、レンズ駆動機構10を介してフォーカスレンズ16が光軸A方向に移動され、手動でフォーカス調整が行われる。
【0026】
一方、カメラ本体4には、フォーカスレンズを自動で移動させる自動フォーカスによる焦点合わせを始動させるために操作される自動フォーカス操作部が設けられている。また、カメラ本体4には自動フォーカス制御部14が内蔵されており、この自動フォーカス制御部14からの信号に基づいて、レンズ駆動機構10がフォーカスレンズ16を移動させ、自動焦点合わせを行うことができる。即ち、撮影者がカメラ本体4に設けられた自動フォーカス操作部であるレリーズボタン4bを半押しにすると、自動フォーカスによる焦点合わせが始動され、自動フォーカス制御部14は、被写体の像が撮像素子面4aに合焦するようにフォーカスレンズ16の位置を調整する。レンズ駆動機構10は、自動フォーカス制御部14からの制御信号に基づいて、内蔵された駆動用モータ18(
図2)を駆動し、指令された位置にフォーカスレンズ16を移動させる。従って、本実施形態のカメラ1は、手動フォーカスと自動フォーカスの切り換え操作を行うことなく、駆動用モータ18が駆動されたときも、フォーカスリング12が回動操作されたときもフォーカスレンズ16が光軸A方向に移動され、瞬時に且つ連続的に焦点合わせが行われる所謂フルタイムマニュアル式のカメラである。
【0027】
次に、
図2乃至
図5を参照して、レンズユニット2に内蔵されている、本発明の第1実施形態によるレンズ駆動機構10を説明する。
【0028】
図2はレンズ駆動機構を光軸方向に見た透視図である。
図3は、レンズ駆動機構の、光軸方向の断面図である。
【0029】
図2及び
図3に示すように、レンズ駆動機構10は、駆動用モータ18と、手動操作リング20と、レンズ移動機構であるフォーカスレンズ駆動リング22と、手動フォーカス操作検出ギア24と、第1スリップギア26と、第2スリップギア28と、アイドラギア30と、ウォームホイール32と、遊星歯車機構34と、ウォーム36と、ブレーキ機構60と、ブレーキ切換機構62と、を有する。さらに、レンズ駆動機構10は、各ギアの回転軸を支持し、各ギアを収納する第1ハウジング46及び第2ハウジング48を有する。
【0030】
駆動用モータ18は、自動フォーカス制御部14からの制御信号に基づいて駆動されるDCモータであり、自動フォーカス時においてフォーカスレンズ16を駆動する動力源となるモータである。また、手動フォーカス時においては、駆動用モータ18のモータ出力軸18aに、ブレーキ機構60によりブレーキ力が付与され、モータ出力軸18aの回転に抵抗が与えられる。ブレーキ機構60の詳細な構成については後述する。
【0031】
手動操作リング20(
図2)は、光軸Aを中心として回動可能に、レンズユニット2に設けられた筒状の部材であり、撮影者によって操作されるフォーカスリング12と連動するように構成されている。また、手動操作リング20の内周面の一部にはギア歯20aが設けられており、このギア歯20aは第1スリップギア26と噛み合っている。従って、フォーカスリング12が撮影者によって操作されると、手動操作リング20を介して第1スリップギア26が回転される。
【0032】
フォーカスレンズ駆動リング22(
図2)は、光軸Aを中心として回動可能に、レンズユニット2に設けられた筒状の部材である。また、フォーカスレンズ駆動リング22の内壁面にはカム溝(図示せず)が設けられており、フォーカスレンズ駆動リング22が回動されると、カム溝に従ってフォーカスレンズ16が光軸A方向に移動されるようになっている。従って、フォーカスレンズ駆動リング22はレンズ移動機構として機能する。さらに、フォーカスレンズ駆動リング22の内周面の一部にはギア歯22aが設けられており、このギア歯22aは遊星歯車機構34の出力ギア44(
図3)と噛み合っている。遊星歯車機構34の詳細については後述する。
【0033】
手動フォーカス操作検出ギア24は、第1スリップギア26と噛み合うように配置された平歯車であり、フォーカスリング12の操作に基づいて第1スリップギア26が回転されると、これに連動して回転される。また、手動フォーカス操作検出ギア24にはエンコーダホイール24aが同軸上に取り付けられており、これらは共に回転するようになっている。さらに、エンコーダホイール24aの近傍には検出センサ50が配置されており、エンコーダホイール24aの回転を非接触で光学的に検出するようになっている。
【0034】
これにより、撮影者がフォーカスリング12を操作すると、第1スリップギア26、手動フォーカス操作検出ギア24、エンコーダホイール24aが回転され、この回転を検出センサ50が検出することにより、撮影者によるフォーカス操作が検知できるようになっている。この検出センサ50による検出信号はブレーキ切換機構62(
図3)に送られ、ブレーキ切換機構62は入力された信号に基づいて、ブレーキ機構60によるブレーキ力の付与/解除を切り換える。本実施形態においては、ブレーキ切換機構62は、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)等により構成されている。ブレーキ切換機構62によるブレーキ機構60の制御については後述する。
【0035】
第1スリップギア26は、手動操作リング20のギア歯20aと噛み合うように配置された平歯車であり、手動操作リング20と連動して回転されるようになっている。
【0036】
第2スリップギア28は平歯車であり、第1スリップギア26と同一の回転軸に取り付けられている。この回転軸を取り囲むようにスリップばね28a(
図3)が配置されており、このスリップばね28aの付勢力により、第2スリップギア28は第1スリップギア26の側面に押し付けられている。このため、第1スリップギア26と第2スリップギア28の間には所定の摩擦力が作用し、この摩擦力により第2スリップギア28は第1スリップギア26と連動して回転される。しかしながら、第1スリップギア26と第2スリップギア28の間で伝達されるトルクが所定値以上になると、摩擦力に打ち勝って両スリップギアの間がスリップし、空回りするようになる。これにより、撮影者によるフォーカスリング12の操作により、各ギアに過大なトルクが作用し、ギアが損傷されるのを防止している。
【0037】
アイドラギア30は、第2スリップギア28と噛み合うように配置された平歯車である。さらに、アイドラギア30は、遊星歯車機構34の第1入力部である入力ギア42(
図3)にも噛み合うように配置されており、第2スリップギア28に伝えられたトルクは、アイドラギア30を介して遊星歯車機構34に伝達される。また、アイドラギア30の回転軸を取り囲むようにブレーキばね30a(
図3)が配置されており、このブレーキばね30aの付勢力により、アイドラギア30の側面が摩擦板30bに押し付けられている。摩擦板30bに押し付けられることにより、アイドラギア30の回転には所定の回転抵抗が与えられる。このため、撮影者によりフォーカスリング12が操作された場合には、第1スリップギア26、第2スリップギア28を介してアイドラギア30にトルクが伝達され、与えられている回転抵抗に抗してアイドラギア30が回転され、この回転が遊星歯車機構34の入力ギア42に伝達される。従って、アイドラギア30、ブレーキばね30a、及び摩擦板30bは、手動側ブレーキ機構として機能する。
【0038】
ウォーム36は、駆動用モータ18のモータ出力軸18aに取り付けられたギアであり、ウォームホイール32と噛み合うように配置されている。
【0039】
ウォームホイール32は、遊星歯車機構34の第2入力部である太陽ギア38(
図3)と一体に形成されたギアであり、伝動回転軸32aを中心に回転可能に配置されている。伝動回転軸32aは光軸Aに平行な方向に向けられており、駆動用モータ18のモータ出力軸18aと概ね直交している。駆動用モータ18のモータ出力軸18aの回転は、ウォーム36及びウォームホイール32を介して、モータ出力軸18aに直交した伝動回転軸32aに伝達される。このように、ウォーム36及びウォームホイール32を使用して、駆動用モータ18のモータ出力軸18aと伝動回転軸32aを直交するように配置することにより、駆動用モータの出力軸と伝動回転軸を平行に配置した場合に比べ、レンズ駆動機構10の光軸A方向の寸法を小さくすることができる。
【0040】
次に、
図4及び
図5を参照して、レンズ駆動機構10に内蔵されている遊星歯車機構34の構成を説明する。
図4は、レンズ駆動機構に内蔵されている遊星歯車機構を示す分解斜視図である。
図5は、レンズ駆動機構に内蔵されている遊星歯車機構を示す拡大断面図である。
【0041】
図4に示すように、遊星歯車機構34は、太陽回転部材である太陽ギア38と、この太陽ギア38と接触するように配置された遊星回転部材(動力伝達部)である3つの遊星ギア40と、これらの遊星ギア40と接触するように配置された入力ギア42と、回転出力部材である出力ギア44と、を有する。また、遊星歯車機構34の出力部である出力ギア44は、出力部材支持軸である出力ギア支持軸52によって回転可能に支持されている。さらに、遊星歯車機構34は、ウォームホイール32側の端部において伝動回転軸32aを回転可能に支持する第1ラジアル軸受54aと、出力ギア44側の端部において伝動回転軸32aを回転可能に支持する第2ラジアル軸受54bと、出力ギア44を回転可能に支持する第3ラジアル軸受56(
図5)と、を有する。
【0042】
これらの部材を備えた遊星歯車機構34は、遊星ギア40により、第1の歯車である入力ギア42から入力された回転と、第2の歯車である太陽ギア38から入力された回転の差に応じた回転が、出力歯車である出力ギア44から出力されるように構成されており、差動伝達機構として機能する。また、本実施形態のレンズ駆動機構10においては、手動フォーカス時には、太陽ギア38が停止された状態で入力ギア42が回転され、入力ギア42の回転が出力ギア44に伝達される。さらに、自動フォーカス時には、入力ギア42が停止された状態で太陽ギア38が回転され、太陽ギア38の回転が出力ギア44に伝達されるようになっている。
【0043】
太陽ギア38は、ウォームホイール32と一体に形成された平歯車であり、伝動回転軸32aを中心に、ウォームホイール32と一体に回転される。また、伝動回転軸32aのウォームホイール32側の端部は、第2ハウジング48に埋め込まれた第1ラジアル軸受54aによって回転可能に支持され、伝動回転軸32aの太陽ギア38側の端部は、出力ギア44に埋め込まれた第2ラジアル軸受54bによって回転可能に支持される。なお、太陽ギア38、ウォームホイール32及び伝動回転軸32aは、これらを全て一体に形成することもでき、或いは、これらを全て別体で形成しておき、一体となって回転されるように結合しても良い。
【0044】
遊星ギア40は、太陽ギア38の周囲に、太陽ギア38と噛み合うように配置された3つの平歯車である。また、各遊星ギア40は、出力ギア44の端面から突出するように形成された遊星支持軸である3本の遊星ギア軸44aに、夫々回転可能に取り付けられている。これらの3本の遊星ギア軸44aは、出力ギア44の中心軸線の周囲に、120゜間隔で設けられている。これにより、太陽ギア38が回転されると、これと噛み合っている各遊星ギア40が遊星ギア軸44aを中心に回転される。
【0045】
入力ギア42は、遊星ギア40を取り囲むように配置された環状の平歯車であり、第1ハウジング46によって、太陽ギア38と同一の軸線を中心に回転可能に支持されている(
図5)。入力ギア42の内周面には各遊星ギア40と噛み合うように、内周歯42aが形成され、外周にはアイドラギア30(
図3)と噛み合うように、外周歯42bが形成されている。これにより、アイドラギア30の回転は、入力ギア42を介して各遊星ギア40に伝達される。
【0046】
出力ギア44は、太陽ギア38側の端面に3本の遊星ギア軸44aが形成され、反対側に平歯車が形成された概ね円筒状の部材である。遊星ギア軸44aは、出力ギア44の端面から突出するように、伝動回転軸32aを中心とする円周上に等間隔に、且つ伝動回転軸32aと平行に形成されており、夫々遊星ギア40を回転可能に支持している。また、遊星ギア軸44aが形成されている端面の中心には円形断面の凹部が形成され、この凹部に、伝動回転軸32aの一端を支持する第2ラジアル軸受54bが埋め込まれている。従って、伝動回転軸32aの太陽ギア38側の端部は、出力ギア44によって支持されている。
【0047】
また、出力ギア44の、遊星ギア軸44aの反対側の外周面には出力ギア歯44bが設けられ、この出力ギア歯44bは、フォーカスレンズ駆動リング22のギア歯22aと噛み合っている。従って、遊星歯車機構34により出力ギア44が回転されると、これと噛み合っているフォーカスレンズ駆動リング22が回動され、これによりフォーカスレンズ16が光軸A方向に移動される。また、出力ギア歯44bの内側には円形断面の凹部(
図5)が設けられ、この凹部内には第3ラジアル軸受け56が配置されている。この第3ラジアル軸受56には出力ギア支持軸52が挿入されており、出力ギア44を出力ギア支持軸52を中心に回転可能に支持している。
【0048】
次に、
図5を参照して、伝動回転軸32aの支持構造を説明する。
図5に示すように、伝動回転軸32aの両端は、第1ラジアル軸受54a及び第2ラジアル軸受54bによって夫々支持されている。上述したように、伝動回転軸32aの、ウォームホイール32側を支持する第1ラジアル軸受54aは、第2ハウジング48に設けられた円形断面の凹部に埋め込まれている。一方、伝動回転軸32aの、太陽ギア38側を支持する第2ラジアル軸受54bは、出力ギア44に設けられた円形断面の凹部に埋め込まれている。これら第1、第2ラジアル軸受は、本実施形態においては、無給油で使用することができるオイレスタイプの滑り軸受けである。同様に、出力ギア44に埋め込まれ、出力ギア支持軸52を受け入れている第3ラジアル軸受56にも、オイレスタイプの滑り軸受けが使用されている。
【0049】
ウォームホイール32、太陽ギア38及び出力ギア44を夫々支持している伝動回転軸32a及び出力ギア支持軸52は、同一軸線上に配置されている。また、第1ハウジング46によって回転可能に支持されている入力ギア42も、伝動回転軸32a及び出力ギア支持軸52と同一の軸線を中心に回転される。従って、ウォームホイール32、太陽ギア38、入力ギア42及び出力ギア44は、夫々同一の軸線を中心に回転可能に配置されている。これに対して、ウォーム36が取り付けられた駆動用モータ18のモータ出力軸18aは、伝動回転軸32aに対して概ね直交する方向に向けられている。
【0050】
また、ウォームホイール32には、ウォーム36を介してトルクが伝達されるため、ウォームホイール32に対しては回転力と共に、スラスト方向の力も作用する。このウォームホイール32に作用するスラスト力は、ウォームホイール32が固定された伝動回転軸32aの両側の端部で支持され、伝動回転軸32aの軸線方向の移動が規制される。即ち、伝動回転軸32aのウォームホイール32側の端面は、第1ラジアル軸受54aを受け入れている第2ハウジング48の凹部の底面48aと当接し、伝動回転軸32aの軸線方向の移動が規制される。一方、伝動回転軸32aの太陽ギア38側の端面は、第2ラジアル軸受54bを受け入れている出力ギア44の凹部の底面44cと当接し、伝動回転軸32aの軸線方向の移動が規制される。従って、第2ハウジング48及び出力ギア44に夫々設けられた凹部の底面48a及び底面44cは、各々スラスト支持部として機能する。なお、本実施形態においては、各凹部の底面48a、底面44cは、夫々平面に構成されている。
【0051】
さらに、出力ギア44に作用する軸線方向の力は、出力ギア支持軸52の先端面が、第3ラジアル軸受56を受け入れている出力ギア44の凹部の底面44dと当接することにより支持される。従って、
図5における下方に向かう伝動回転軸32aの軸線方向の移動は、出力ギア44を介して出力ギア支持軸52によって規制される。なお、本実施形態においては、出力ギア44の凹部の底面44dは、平面に構成されている。
【0052】
ここで、伝動回転軸32aの両側の端面は球面状に形成されている。このため、伝動回転軸32aの各端面は、伝動回転軸32aの中心軸線上で、底面48a、底面44cと実質的に点接触する。同様に、出力ギア支持軸52の先端面も球面状に形成されており、出力ギア支持軸52の先端面は、出力ギア支持軸52の中心軸線上で、底面44dと実質的に点接触する。このように、伝動回転軸32aの各端面は、伝動回転軸32aの中心軸線上において、底面48a、底面44cと実質的に点接触するので、伝動回転軸32aの各端面と底面48a、底面44cの間で発生する摩擦トルクは非常に小さくなる。同様に、出力ギア支持軸52の先端面も、出力ギア支持軸52の中心軸線上において、底面44dと実質的に点接触するので、出力ギア支持軸52の先端面と底面44dの間で発生する摩擦トルクは非常に小さくなる。
【0053】
このように、伝動回転軸32aの両端面及び出力ギア支持軸52の先端面を球面状に構成することにより、駆動用モータ18によりウォームホイール32を駆動する際に発生するスラスト力に基づいて発生する摩擦トルクを抑制することができ、効率良くフォーカスレンズ16を駆動することができる。なお、伝動回転軸32aの熱膨張による僅かな伸びに対応するため、伝動回転軸32aの両端面は、底面48a及び底面44cと同時には接触しておらず、僅かな隙間が存在する。
【0054】
次に、
図6乃至
図10を参照して、ブレーキ機構60の構成を詳細に説明する。
図6は、ブレーキ機構60の断面図であり、ブレーキ力を付与している状態を示している。
図7は、ブレーキ機構60の断面図であり、ブレーキ力を付与していない状態を示している。
図8は、ブレーキ機構60の分解斜視図である。
図9は、ブレーキ機構60に備えられているコイルアセンブリの平面図である。
図10は、ブレーキ機構60に備えられているマグネット板の平面図である。
【0055】
図6乃至
図8に示すように、ブレーキ機構60は、可動ディスク64と、ガイドシャフト66と、付勢用コイルばね68と、コアアセンブリ70と、コイルアセンブリ72と、吸着用マグネット74と、を有する。
【0056】
図6に示すように、可動ディスク64は、円板状の円板部64aと、この円板部64aの中央からから背面側に延びる円筒部64bからなる部材である。可動ディスク64の円筒部64bにガイドシャフト66が挿入されることにより、可動ディスク64はガイドシャフト66に沿って摺動可能に配置される。円筒部64bの正面側には、駆動用モータ18のモータ出力軸18aに取り付けられた摩擦円板18bが対向して配置されている。ブレーキ機構60によりブレーキ力を付与する場合には、
図6に示すように、付勢用コイルばね68の付勢力によって円板部64aが駆動用モータ18の摩擦円板18bに押し付けられ、モータ出力軸18aの回転が阻止される。一方、ブレーキ機構60によるブレーキ力を解除する場合には、
図7に示すように、付勢用コイルばね68の付勢力に抗して円板部64aが摩擦円板18bから引き離され、モータ出力軸18aの回転が可能になる。
【0057】
ガイドシャフト66は、金属製の丸棒であり、側面の一部が平面状に切り欠かれている。ガイドシャフト66を受け入れている可動ディスク64の円筒部64bは、ガイドシャフト66と合致する断面形状に形成されており、これにより、ガイドシャフト66に対する可動ディスク64の回転が阻止される。また、ガイドシャフト66の基端部には、シャフトボス66aが取り付けられており、これにより、ガイドシャフト66がコアアセンブリ70に結合されている。
【0058】
付勢用コイルばね68は、ガイドシャフト66及び可動ディスク64の円筒部64bを取り囲むように配置されており、可動ディスク64の円板部64aの背面側を駆動用モータ18の摩擦円板18bに向けて付勢している。この付勢用コイルばね68の付勢力により、円板部64aの正面側が駆動用モータ18の摩擦円板18bに押し付けられ、ブレーキ力が付与される。
【0059】
コアアセンブリ70は、ドーナツ板型の基部70aと、この基部70aに対して直角に延びる6本の矩形断面の棒状のコア部70bから構成された部材である。6本のコア部70bは、ガイドシャフト66と平行に、ガイドシャフト66を等間隔に取り囲むように形成され、配置されている。ブレーキ機構60によるブレーキ力を解除する場合には、
図7に示すように、可動ディスク64が各コア部70bの先端に吸着され、駆動用モータ18の摩擦円板18bから引き離される。従って、無通電の状態においては、付勢用コイルばね68の付勢力によって可動ディスク64は駆動用モータ18の摩擦円板18bに押し付けられており、ブレーキ力が付与されている。
【0060】
コイルアセンブリ72は、各コイルに電流を導くフレキシブル基板72aと、このフレキシブル基板72aに対して垂直に取り付けられた6本の筒状コイル72bから構成されている。各筒状コイル72bの内側には、コアアセンブリ70の各コア部70bが夫々挿入され、各コア部70bの先端は各筒状コイル72bから僅かに突出する。この構成により、各筒状コイル72bに電流が流れると、各コア部70bが磁化され、可動ディスク64を吸着することができる。
【0061】
図9に示すように、コイルアセンブリ72の6本の筒状コイル72bは、時計回りに電流が流れる3本の筒状コイルと、反時計回りに電流が流れる3本の筒状コイルの2群からなり、各群の筒状コイルが円周上に交互に配置されている。また、フレキシブル基板72aには、各筒状コイル72bに電流を供給する2組の回路パターン72c、72dが形成されており、これらの回路パターンにより各群の筒状コイルに所定方向の電流が供給される。この電流により、本実施形態においては、コアアセンブリ70の各コア部70bの先端は、S極とN極が円周方向に交互に並ぶように磁化される。
【0062】
図10に示すように、吸着用マグネット74は、ドーナツ板状のフェライトゴム製のマグネットである。また、吸着用マグネット74には、中央の開口を取り囲むように扇形の6つの磁極が形成されている。これら各磁極は、コイルアセンブリ72の6本のコア部70bと夫々対向するように配置されていると共に、対向する各コア部70bの磁極と反対の極性をもつように、S極とN極が交互に円周方向に並ぶように形成されている。
【0063】
さらに、吸着用マグネット74の、各コア部70bの反対側の面には、概ねドーナツ板型のヨーク74aが配置されている(
図8)。このヨーク74aは、各コア部70bの先端が磁化されたときの、吸着用マグネット74の吸着力を強化する。
【0064】
一方、吸着用マグネット74の、各コア部70bに対向する側の面には、概ねドーナツ板型のスペーサー74bが配置されている(
図8)。このスペーサー74bは、吸着用マグネット74が各コア部70bに吸着されたときの吸着力を調整すると共に、吸着された際の吸着用マグネット74の損傷を防止している。これら、ヨーク74a、吸着用マグネット74、及びスペーサー74bは、この順序で重ねられ、中央部の開口に可動ディスク64の円筒部64bを受け入れ、円板部64aの背面側に取り付けられる(
図6)。
【0065】
次に、
図1乃至3を参照して、本発明の第1実施形態によるレンズ駆動機構10の作用を説明する。
【0066】
まず、撮影者が手動フォーカスを行うために、フォーカスリング12(
図1)を回動させると、これと連動して、手動操作リング20(
図2)が回動される。手動操作リング20が回動されると、そのギア歯20aと噛み合っている第1スリップギア26(
図3)が回転され、これに伴い、手動フォーカス操作検出ギア24が回転される。手動フォーカス操作検出ギア24が回転されると、これに取り付けられたエンコーダホイール24aが回転され、この回転が検出センサ50によって検知される。検出センサ50による検知信号はブレーキ切換機構62(
図3)に入力され、ブレーキ切換機構62は、検出センサ50からの検知信号及び自動フォーカス制御部14(
図1)からの信号に基づいてブレーキ機構60を制御する。
【0067】
一方、第1スリップギア26(
図3)が回転されると、これに伴い第2スリップギア28が回転され、アイドラギア30に作用しているブレーキ力に打ち勝って、第2スリップギア28の回転がアイドラギア30に伝達される。アイドラギア30が回転されると、この回転が遊星歯車機構34に伝達される。即ち、アイドラギア30と噛み合っている外周歯42bが設けられた入力ギア42が回転される。ここで、ブレーキ機構60によるブレーキ力が付与されている状態においては、駆動用モータ18は停止されているため、これと連動している太陽ギア38も停止されている。このように太陽ギア38が停止された状態で入力ギア42が回転されるため、入力ギア42の回転は各遊星ギア40を介して出力ギア44に伝達され、入力ギア42が回転されると、所定の回転数比で出力ギア44が回転される。出力ギア44が回転されると、その出力ギア歯44bと噛み合っているギア歯22a(
図2)が設けられたフォーカスレンズ駆動リング22が回動され、フォーカスレンズ16(
図1)が光軸A方向に移動される。
【0068】
即ち、ユーザ操作に基づいた駆動力である、ユーザのフォーカスリング操作による駆動力が、第1スリップギア26から入力ギア42(第1駆動力伝達部)まで伝達される駆動力である。検出センサ50(検出部)が、フォーカスリグ12が操作されたことを検知することにより、フォーカスレンズ16を光軸方向に移動させる駆動力を出力する出力部に対して第1駆動力伝達部から駆動力が伝達されることが検知され、ブレーキ切り換え装置62がブレーキ機構60を駆動してブレーキをかける。このように、ユーザによりフォーカスリング12が操作されたとき、ブレーキ機構60はブレーキをかける。
【0069】
次に、使用者がカメラ本体4のレリーズボタン4b(
図1)を半押しにすると、自動フォーカス制御部14は、被写体の像が撮像素子面4aに合焦するように、駆動用モータ18(
図3)を駆動する。駆動用モータ18が駆動されると、そのモータ出力軸18aに取り付けられたウォーム36が回転され、これと噛み合っているウォームホイール32が回転駆動される。即ち、動力源からの動力(駆動用モータ18の回転)が第2駆動力伝達部であるウォームホイール32まで伝達される。ウォームホイール32の回転駆動により、伝動回転軸32aの軸線方向にスラスト力が発生するが、伝動回転軸32aの軸線方向の移動は、スラスト支持部である底面48a又は底面44c(
図5)によって規制される。なお、スラスト力は、ウォームホイール32の回転方向によって何れかの方向に発生し、このスラスト力が底面48a又は底面44cによって支持される。
【0070】
ウォームホイール32が回転駆動されると、これと一体に形成された太陽ギア38も回転駆動される。一方、アイドラギア30には、ブレーキばね30a(
図3)の付勢力によるブレーキ力が作用しているため、これと噛み合っている入力ギア42の回転は停止されている。このように、入力ギア42が停止された状態で太陽ギア38が回転駆動されるため、太陽ギア38の回転は、遊星ギア40を介して、所定の回転数比で出力ギア44に伝達される。出力ギア44が回転されると、その出力ギア歯44bと噛み合っているギア歯22a(
図2)が設けられたフォーカスレンズ駆動リング22が回動され、フォーカスレンズ16(
図1)が光軸A方向に移動され、自動フォーカスが実行される。
【0071】
次に、
図11及び
図12を新たに参照して、ブレーキ切換機構によるブレーキ機構の制御を説明する。
図11はブレーキ切換機構によって実行される制御のフローチャートである。
図12はブレーキ切換機構によりブレーキ機構のコイルアセンブリに印加される電圧を示すタイムチャートである。
【0072】
まず、ブレーキ機構60は、その付勢用コイルばね68の付勢力によりブレーキ力を常に付与しており、ブレーキ切換機構62によりコイルアセンブリ72に電圧が印加されたときのみ、ブレーキ力は解除される。従って、カメラ1やレンズユニット2の電源スイッチ(図示せず)がオフにされた状態であってもブレーキ機構60によるブレーキ力は付与されている。このため、無通電時においても駆動用モータ18のモータ出力軸18aは停止されているので、使用者はフォーカスリング12を操作することにより、フォーカスレンズ16を移動させることができる。
【0073】
図11に示すフローチャートは、ブレーキ切換機構62による処理を示すものである。撮影者がレリーズボタン4b(
図1)を半押しして、自動フォーカスによる焦点合わせを始動させると、自動フォーカス制御部14からの信号がブレーキ切換機構62に入力され、
図11に示すフローチャートの処理が開始される。なお、
図11に示すフローチャートの処理が開始される時点においては、ブレーキ機構60はブレーキ力を付与している状態にある。
【0074】
まず、
図11のステップS1においては、撮影者がフォーカスリング12を操作したか否かが判断される。即ち、検出センサ50(
図3)がエンコーダホイール24aの回転を検知しているか否かが判断され、回転が検知されていない場合にはステップS2に進み、回転が検知された場合には
図11に示すフローチャートの1回の処理を終了する。従って、撮影者によりレリーズボタン4bが半押しされたとしても、フォーカスリング12が操作された場合には、手動によるフォーカス調整を行う意志があるものとして、ブレーキ力が付与されている状態が維持され、手動によるフォーカス調整が可能にされる。
【0075】
一方、フォーカスリング12が操作されていない場合にはステップS2に進み、ステップS2においては、ブレーキ機構60により付与されていたブレーキ力が解除される。即ち、ブレーキ切換機構62は、ブレーキ機構60のコイルアセンブリ72(
図6)に電圧を印加し、これによりコアアセンブリ70の各コア部70bを磁化する。この結果、可動ディスク64に取り付けられている吸着用マグネット74が、付勢用コイルばね68の付勢力に抗して各コア部70bの先端に吸着される。これにより、
図7に示すように、可動ディスク64の円板部64aが駆動用モータ18の摩擦円板18bから引き離され、ブレーキ機構60により付与されていたブレーキ力が解除される。
【0076】
図12は、ブレーキ切換機構62によってブレーキ機構60のコイルアセンブリ72に付与される電圧を示すタイムチャートである。
図12に示すように、自動フォーカスが始動される以前(時刻t0以前)は、ブレーキ機構60には電圧が印加されておらず、ブレーキ力が付与された状態にある。次いで、時刻t0において
図11のステップS2が実行されると、ブレーキ切換機構62はブレーキ機構60に初期印加電圧V1を印加し、各コア部70bを磁化させる。この初期印加電圧V1は、本実施形態においては、約20msecの間印加される。この間に、摩擦円板18bに押し付けられていた(
図6)可動ディスク64が摩擦円板18bから引き離され、各コア部70bに吸着されて(
図7)、ブレーキ力が解除される。この初期印加電圧V1を約20msec印加した後の時刻t1において、印加電圧は、初期印加電圧V1よりも低い保持電圧V2に低下され、そのまま持続される。即ち、可動ディスク64の吸着を開始する際は、各コア部70bの先端と吸着用マグネット74が大きく離間しているため、高い電圧を付与してコイルアセンブリ72に大きな電流を流し、大きな吸着力を発生させる必要がある。初期印加電圧V1を所定時間印加した後は、吸着用マグネット74が各コア部70bの先端に吸着されているため、印加電圧を保持電圧V2に低下させてコイルアセンブリ72に流す電流を減じても吸着用マグネット74を吸着した状態を維持することができる。これにより、ブレーキ機構60による消費電力を低減することができる。
【0077】
次に、
図11のステップS3において、撮影者がフォーカスリング12を操作したか否かが再び判断される。即ち、ステップS2においてブレーキ機構60によるブレーキ力を解除した後であっても、撮影者がフォーカスリング12を操作した場合にはステップS8に進み、ブレーキ力の付与を復活させ、手動によるフォーカス操作を可能にする。一方、フォーカスリング12を操作していない場合においては、ステップS4に進む。
【0078】
ステップS4においては、自動フォーカス制御部14により駆動用モータ18が駆動され、自動フォーカス動作が開始される(
図12の斜線部分)。この際、ブレーキ機構60によるブレーキ力は解除されているため、駆動用モータ18による自動フォーカス動作を円滑に実行することができる。次いで、ステップS5において、撮影者がフォーカスリング12を操作したか否かが更に判断される。フォーカスリング12が操作された場合には、ステップS4において開始された自動フォーカス動作中であっても、駆動用モータ18を停止させ(ステップS7)た上で、ブレーキ力の付与を復活させ(ステップS8)、手動によるフォーカス操作を可能にする。一方、フォーカスリング12を操作していない場合においては、自動フォーカス動作が継続される。
【0079】
ステップS6において自動フォーカス動作により合焦されると(
図12の時刻t2)、ステップS8においてブレーキ力の付与が復活され(
図12の時刻t3〜t4)、
図11のフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、ブレーキ切換機構62がブレーキ機構60への電圧の印加を停止させることにより、各コア部70bの磁気が失われる。この結果、付勢用コイルばね68(
図6)の付勢力により、可動ディスク64の円板部64aが摩擦円板18bに押し付けられ、駆動用モータ18にブレーキ力が付与される。これにより、
図11のフローチャート実行前の状態に戻り、処理を終了する。
【0080】
本発明の第1実施形態のレンズ駆動機構10によれば、フォーカスリング12及び/又はレリーズボタン4b(自動フォーカス操作部)に対する操作に基づいてブレーキ力の付与/解除を切り換える(
図11)ので、ブレーキ機構60のブレーキ力により太陽ギア38を停止させておくことにより、自己保持力の低い駆動用モータ18を使用した場合でも、遊星歯車機構34を介して手動フォーカスを確実に作動させることができる。一方、自動フォーカスを行う場合には、ブレーキ力を解除しておく(
図11のステップS2〜S6)ことにより、駆動用モータ18が不要な回転抵抗に抗してフォーカスレンズ駆動リング22を駆動する必要がなく、円滑な自動フォーカスを実行することができる。これにより、自己保持力の小さい駆動用モータを使用した場合であっても、フルタイムマニュアル式で、円滑なフォーカス調整を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態のレンズ駆動機構10によれば、ブレーキ機構60は、無通電状態においてもブレーキ力を付与する(
図6)ように構成されているので、無通電の状態でも太陽ギア38が確実に停止される。このため、レンズユニット2やカメラ1の電源がオフの状態でも、使用者はフォーカスリング12を操作することによりフォーカス調整を行うことができる。
【0082】
さらに、本実施形態のレンズ駆動機構10によれば、ブレーキ切換機構62は、フォーカスリング12が操作されると、自動フォーカスによる焦点合わせの実行中であっても、ブレーキ力が付与されるようにブレーキ機構60を切り換える(
図11のステップS5→S7→S8)ので、撮影者は特別な切り換え操作なしに、手動フォーカスに移行することができる。
【0083】
また、本実施形態のレンズ駆動機構10によれば、遊星歯車機構34(
図5)により差動伝達機構を構成しているので、入力ギア42(第1の歯車)又は太陽ギア38(第2の歯車)への入力を確実に出力ギア44に伝達することができ、確実なフルタイムマニュアル動作を実現することができる。
【0084】
次に、
図13を参照して、本発明の第2実施形態によるレンズ駆動機構を説明する。上述した第1実施形態においては、太陽ギア及び入力ギアからの入力を出力ギアから出力する差動伝達機構として遊星歯車機構が使用されていたが、本発明の第2実施形態によるレンズ駆動機構では、異なる機構を採用している点が第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0085】
図13は、本発明の第2実施形態によるレンズ駆動機構に採用されている差動伝達機構の拡大断面図である。
【0086】
図13に示すように、本実施形態における差動伝達機構134は、太陽回転部材である太陽摩擦車138と、この太陽摩擦車138と接触するように配置された遊星回転部材である3つの遊星球体140と、これらの遊星球体140と接触するように配置された回転入力部材142と、回転出力部材である出力ギア144と、を有する。また、出力ギア144は、出力部材支持軸である出力ギア支持軸152によって回転可能に支持されている。さらに、差動伝達機構134は、ウォームホイール132側の端部において伝動回転軸132aを回転可能に支持する第1ラジアル軸受154aと、出力ギア144側の端部において伝動回転軸132aを回転可能に支持する第2ラジアル軸受154bと、出力ギア144を回転可能に支持する第3ラジアル軸受156と、を有する。
【0087】
これらの部材を備えた差動伝達機構134は、遊星球体140により、第1入力部である回転入力部材142から入力された回転と、第2入力部である太陽摩擦車138から入力された回転の差に応じた回転が、出力部である出力ギア144から出力されるように構成されており、差動伝達機構として機能する。また、本実施形態のレンズ駆動機構においても、手動フォーカス時には、太陽摩擦車138がブレーキ機構60のブレーキ力によって停止された状態で回転入力部材142が回転され、回転入力部材142の回転が出力ギア144に伝達される。さらに、自動フォーカス時には、回転入力部材142が停止された状態で太陽摩擦車138が回転され、太陽摩擦車138の回転が出力ギア144に伝達される点も、第1実施形態と同様である。
【0088】
太陽摩擦車138は、ウォームホイール132と一体に形成された摩擦車であり、伝動回転軸132aを中心に、ウォームホイール132と一体に回転される。また、伝動回転軸132aのウォームホイール132側の端部は、第2ハウジング148に埋め込まれた第1ラジアル軸受154aによって回転可能に支持され、伝動回転軸132aの太陽摩擦車138側の端部は、出力ギア144に埋め込まれた第2ラジアル軸受154bによって回転可能に支持される。
【0089】
遊星球体140は、太陽摩擦車138の周囲に配置された3つの球体であり、太陽摩擦車138の外周面上を転がることにより、太陽摩擦車138の回転に伴って回転するように構成されている。また、各遊星球体140は、出力ギア144の端面から突出するように形成された3本の遊星球体軸144aに、夫々回転可能に取り付けられている。これらの3本の遊星球体軸144aは、出力ギア144の中心軸線の周囲に、120゜間隔で設けられている。これにより、太陽摩擦車138が回転されると、この外周面上を転がる各遊星球体140が遊星球体軸144aを中心に回転される。
【0090】
回転入力部材142は、遊星球体140を取り囲むように配置された環状の部材であり、太陽摩擦車138と同一の軸線を中心に回転可能に支持されている。回転入力部材142の内周には各遊星球体140が表面上を転がるように、転動面142aが形成され、外周にはアイドラギア30(
図3)と噛み合うように、外周歯142bが形成されている。これにより、アイドラギア30の回転は、回転入力部材142を介して各遊星球体140に伝達される。
【0091】
出力ギア144は、太陽摩擦車138側の端面に遊星支持軸である3本の遊星球体軸144aが形成されている点を除き、第1実施形態における出力ギア44と同様に構成されている。また、伝動回転軸132aの支持構造も上述した第1実施形態と同様である。
図6に示すように、伝動回転軸132aの両端は、第1ラジアル軸受154a及び第2ラジアル軸受154bによって夫々支持されている。
【0092】
また、ウォームホイール132には、ウォーム136を介してトルクが伝達されるため、ウォームホイール132に対しては回転力と共に、スラスト方向の力も作用する。このウォームホイール132に作用するスラスト力は、ウォームホイール132が固定された伝動回転軸132aの両側の端部で支持され、伝動回転軸132aの軸線方向の移動が規制される。即ち、伝動回転軸132aのウォームホイール132側の端面は、第1ラジアル軸受154aを受け入れている第2ハウジング148の凹部の底面148aと当接し、伝動回転軸132aの軸線方向の移動が規制される。一方、伝動回転軸132aの太陽摩擦車138側の端面は、第2ラジアル軸受154bを受け入れている出力ギア144の凹部の底面144cと当接し、伝動回転軸132aの軸線方向の移動が規制される。
【0093】
さらに、出力ギア144に作用する軸線方向の力は、出力ギア支持軸152の先端面が、第3ラジアル軸受156を受け入れている出力ギア144の凹部の底面144dと当接することにより支持される。
【0094】
なお、伝動回転軸132aの両側の端面は、第1実施形態と同様に球面状に形成されている。このため、伝動回転軸132aの各端面は、伝動回転軸132aの中心軸線上で、底面148a、底面144cと実質的に点接触する。同様に、出力ギア支持軸152の先端面も球面状に形成されており、出力ギア支持軸152の先端面は、出力ギア支持軸152の中心軸線上で、底面144dと実質的に点接触する。
【0095】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、フルタイムマニュアル式のスチルカメラに本発明が適用されていたが、双眼鏡、ビデオカメラ、望遠鏡等に内蔵されたレンズの移動に本発明のレンズ駆動機構を適用することもできる。