【解決手段】発光素子3と、表面に銀を有する、1つ以上の銀系部材と、少なくとも1つの銀系部材を覆う第1の樹脂層4a、及び、第1の樹脂層の直上に配置された第2の樹脂層4bを含む樹脂層4と、を備え、発光素子は、第1の樹脂層、又は、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の両方により覆われ、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の少なくともいずれかが、硫化物を化学的に吸着する無機吸着剤8を含有し、第2の樹脂層が、硫化物系蛍光体9を含有し、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の総厚に対する第1の樹脂層の厚みの割合が、50%以上である、ことを特徴とする、発光装置。
前記樹脂層を構成する層のうち、前記第1の樹脂層により覆われる前記銀系部材から最も離間した層が、ガラスフレークを含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の発光装置。
前記硫化物系蛍光体が、第1の二酸化ケイ素膜と、前記第1の二酸化ケイ素膜上の第2の二酸化ケイ素膜とを含む被覆膜を表面に備え、前記第1の二酸化ケイ素膜及び前記第2の二酸化ケイ素膜の少なくともいずれかが、金属酸化物粉末を含有する、請求項1〜11のいずれかに記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(発光装置)
以下、
図1などを用いて、本発明の一実施形態の発光装置1を説明する。
本発明の一実施形態の発光装置(以下、単に「本発明の発光装置」と称する場合がある。)1は、少なくとも、リフレクタ2と、リフレクタ2上に配置された発光素子3と、樹脂層4とを備え、樹脂層4は、第1の樹脂層4aと、第1の樹脂層4aの直上に配置された第2の樹脂層4bとを含む。
なお、リフレクタ2は、特に制限されず、
図1〜3に示すように、樹脂層収容部材5とともにリードフレーム6を構成することができる。
また、本発明の発光装置1は、
図1〜3に示すように、リードフレーム6の構成部材としてリフレクタ2の下部に基板7を備えてもよく、また、その他の任意の部材を更に備えてもよい。
【0027】
<基板>
基板7としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、発光装置の分野において既知の平板状のもの、例えば、セラミック基板、樹脂基板、金属基板、ガラエポ基板などを用いることができる。
【0028】
<樹脂層収容部材>
樹脂層収容部材5は、特に制限されず、上面及び下面が円状などに開口された構造を有し、下面にリフレクタ2が配置されることで、樹脂層4が収容される領域を形成する部材である。この樹脂層収容部材5は、発光装置1の光取り出し効率を高めるため、上面の開口部の径を下面の開口部の径よりも大きくして、
図1に示すように開口断面が傾斜していることが好ましい。
樹脂層収容部材5は、例えば、熱硬化性樹脂を含む組成物を用い、射出成型などの方法により作製することができる。
【0029】
<リフレクタ>
リフレクタ2は、発光素子3から発せられた光を発光装置1の表面側(上部)に反射させるための平板状のものである。このリフレクタ2は、通常は、表面に銀を有する。また、このリフレクタ2は、第1の樹脂層4aにより全面(具体的には、樹脂層収容部材5の開口部を介して視認できる全ての面)が覆われている。
なお、表面に銀を有するリフレクタ2は、銀からなる平板であってもよく、任意の平板状基材に銀めっきを施したものであってもよい。
【0030】
<発光素子>
発光素子3は、通常はリフレクタ2上に配置され、
図1〜3に示すように第1の樹脂層4aにより覆われている(封止されている)か、又は、第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bの両方により、覆われている(封止されている)。ここで、
図1では、発光素子3が、リフレクタ2上にチップオンボード(COB)の形式で金属ワイヤー15によって直接実装されているが、実装形式は、これに制限されない。
なお、例えば、金属ワイヤー15は、表面に銀を有することができる。よって、金属ワイヤー15として表面に銀を有するワイヤーを用いる場合には、
図1に示すように、当該金属ワイヤー15を、第1の樹脂層4aで覆うことができる。
また、発光素子3も、表面に銀を有することができる点を踏まえると、発光素子3は、硫黄系ガスによる銀腐食を抑制する観点から、
図1に示すように、第1の樹脂層4aで覆われることが好ましい。
【0031】
発光素子3としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、発光ダイオードなどが挙げられる。また、発光素子3として発光ダイオードを用いる場合、この発光ダイオードは、特に制限されず、青色発光ダイオードとすることができる。ここで、青色発光ダイオードは、窒化ガリウム(GaN)を主な材料とした、青色系の光を発する発光ダイオードである。
【0032】
<樹脂層>
樹脂層4は、少なくとも、第1の樹脂層4aと、第1の樹脂層4aの直上に配置された第2の樹脂層4bとを含み、発光素子3を覆っている(封止している)。また、第1の樹脂層4aは、少なくとも1つの、表面に銀を有する部材を覆っている。即ち、第1の樹脂層4aは、例えばリフレクタ2が表面に銀を有する場合には、
図1に示すように少なくともリフレクタ2を覆うことができ、また、例えば金属ワイヤー15が表面に銀を有する場合には、
図1に示すように少なくとも金属ワイヤー15を覆うことができる。こうすることにより、硫化物系蛍光体9から放出され得る硫黄系ガスによる銀腐食を抑制し、発光装置の発光特性等の性能を良好に維持することができる。
【0033】
また、樹脂層4における第2の樹脂層4bは、硫化物系蛍光体9を含有することを要する。このように、リードフレーム6等に充填される樹脂を多層化し、且つ、硫化物系蛍光体9を第2の樹脂層4bに含有させることにより、硫化物系蛍光体9と発光素子3との距離を離し、硫化物系蛍光体9の熱劣化を抑制して、発光特性を良好に維持することができる。同様の観点から、樹脂層4における第1の樹脂層4aは、硫化物系蛍光体9を含有しないことが好ましい。
なお、樹脂層4における第1の樹脂層4a及び/又は第2の樹脂層4bには、所望の光を取り出すために、硫化物系蛍光体以外の蛍光体が含有されていてもよい。
また、樹脂層4は、
図1に示すように第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bのみで構成されていてもよく、また、任意の樹脂層を更に備えていてもよい。
更に、樹脂層4は、
図1に示すように樹脂層収容部材5の上面に対してすり切りで充填されていてもよく、また、例えばドーム状のように盛り上がった構造を有していてもよい。
【0034】
第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bを含む樹脂層4は、主として透明樹脂からなり、例えば、第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bは、フェニル系シリコーン樹脂やメチル系シリコーン樹脂等のシリコーン樹脂、又はエポキシ樹脂を含有することが好ましい。これら透明樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
樹脂層4においては、第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bの総厚に対する第1の樹脂層4aの厚みの割合(
図1における、H
1/(H
1+H
2)×100)が、50%以上であることを要する。本発明者らは、上記割合を50%以上とすることにより、第2の樹脂層4bに含有される硫化物系蛍光体9を適切にリフレクタ2等の銀系部材から離間させ、硫化物系蛍光体9から放出され得る硫黄系ガスによる銀系部材の腐食を抑制することができることを見出した。なお、上記割合が50%未満であると、第1の樹脂層4aが覆う銀系部材の腐食を十分に抑制することができず、発光装置の発光特性等の性能を良好なものとすることができない。
また、硫化物系蛍光体9から放出され得る硫黄系ガスによるリフレクタ2等の銀系部材の腐食をより効果的に抑制する観点から、第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bの総厚に対する第1の樹脂層4aの厚みの割合は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
なお、第1の樹脂層4aの厚み、第2の樹脂層4bの厚み、並びに第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bの総厚は、基板7やリフレクタ2の面に垂直な方向の厚みを指し、また、上記厚みが均一でない場合には、厚みが最も小さい箇所における当該厚みを指すものとする。
【0036】
樹脂層4における第1の樹脂層4aの厚み(
図1における、H
1)は、240μm以上であることが好ましい。こうすることで、第2の樹脂層4bに含有される硫化物系蛍光体9とリフレクタ2等の銀系部材とを確実に離間させることができ、硫化物系蛍光体9から放出され得る硫黄系ガスによる銀系部材の腐食をより確実に抑制することができる。同様の観点から、樹脂層4における第1の樹脂層4bの厚みは、300μm以上であることがより好ましく、350μm以上であることが更に好ましい。
なお、樹脂層4の総厚は、特に制限されず、250μm以上であることが好ましく、450μm以上であることがより好ましく、また、750μm以下であることが好ましく、550μm以下であることがより好ましい。
【0037】
−硫化物系蛍光体−
硫化物系蛍光体9としては、硫黄を含有する蛍光体であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、MGa
2S
4:Eu(Mは、Sr、Ba及びCaのうちの少なくともいずれかを含む1つ以上の元素を表す)で示される緑色蛍光体を含むことが好ましい。上記の緑色蛍光体は、硫化物系蛍光体の中では比較的大気中の水分等と反応(加水分解)して硫黄系ガスを生成し易い蛍光体であるが、本発明の発光装置においては、硫化物系蛍光体9として上記の緑色蛍光体を用いた場合であっても、無機吸着剤8が好適に硫黄系ガスを吸着して、リフレクタ2等の銀系部材の腐食を抑制することができる。同様の観点から、上記の化学式で示される緑色蛍光体としては、Mが、Sr、Ba及びCaのうちの少なくともいずれかのみからなる元素を表す緑色蛍光体がより好ましく、SrGa
2S
4:Euで示される緑色蛍光体が更に好ましい。
硫化物系蛍光体9は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
また、硫化物系蛍光体9は、
図4〜6に示すように、第1の二酸化ケイ素膜10aと、前記第1の二酸化ケイ素膜10a上の第2の二酸化ケイ素膜10bとを含む被覆膜10を備え、前記第1の二酸化ケイ素膜10a及び前記第2の二酸化ケイ素膜10bの少なくともいずれかが、金属酸化物粉末11を含有する(以下、「被覆硫化物系蛍光体である」と称することがある。)ことが好ましい。これにより、硫化物系蛍光体9が大気中の水分等と触れないようにして、硫化物系蛍光体9の劣化を抑制することができるとともに、硫化物系蛍光体9が水と反応して硫黄系ガスを生成したとしても、硫化物系蛍光体9を被覆する二酸化ケイ素膜に含有される金属酸化物粉末11が当該硫黄系ガスを吸着するため、硫黄系ガスの放出量自体を低減することができる。
特に、硫化物系蛍光体9からの硫黄系ガスの放出をより効果的に抑制する観点から、被覆膜10を構成する二酸化ケイ素膜のうち、最表面側の膜が、金属酸化物粉末11を含有することが好ましい。即ち、例えば、被覆膜10が、第1の二酸化ケイ素膜10a及び第2の二酸化ケイ素膜10bのみからなる場合には、
図4及び
図6に示すように、最表面側の二酸化ケイ素膜である第2の二酸化ケイ素膜10bが金属酸化物粉末11を含有することが好ましい。また、例えば、被覆膜10が、第1の二酸化ケイ素膜10a及び第2の二酸化ケイ素膜10bに加え、第2の二酸化ケイ素膜10b上に第3の二酸化ケイ素膜(図示せず)を含む場合には、最表面側の二酸化ケイ素膜である当該第3の二酸化ケイ素膜が金属酸化物粉末11を含有することが好ましい。
なお、二酸化ケイ素膜は、例えば、アルコキシシランの加水分解(ゾルゲル法)により形成することができる。
【0039】
金属酸化物粉末11としては、硫黄系ガス、例えば、硫化水素を吸着する能力に優れ、硫黄系ガスの抑制効果を奏することができるものが好ましい。このような金属酸化物粉末11としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)粉末、酸化アルミニウム(Al
2O
3)粉末が挙げられ、特に、硫黄系ガスの抑制効果をより効果的に奏することができる観点から、金属酸化物粉末11が酸化亜鉛(ZnO)粉末を含むことが好ましい。ここで、金属酸化物粉末11は、表面処理を施したものであってもよい。
なお、金属酸化物粉末11は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
金属酸化物粉末11は、粒径が0.2μm以下であることが好ましい。金属酸化物粉末11の粒径を0.2μm以下とすることにより、金属酸化物粉末11による硫黄系ガスの吸着能が乏しくならないようにし、これにより、硫化物系蛍光体9からの硫黄系ガスの放出を効果的に抑制することができる。
【0041】
金属酸化物粉末11の量は、100質量部の硫化物系蛍光体9に対して、1質量部以上、20質量部未満とすることが好ましく、5質量部以上、10質量部以下とすることがより好ましい。金属酸化物粉末11の量を100質量部の硫化物系蛍光体9に対して1質量部以上とすることにより、金属酸化物粉末11の有効な吸着作用を得ることができる、すなわち、金属酸化物粉末11による硫黄系ガスの吸着能が乏しくならないようにすることができる。また、金属酸化物粉末11の量を100質量部の硫化物蛍光体9に対して20質量部未満とすることにより、硫化物系蛍光体9の特性の悪化、例えばピーク強度や輝度の低下を抑制することができる。
【0042】
ここで、第2の樹脂層4bにおける硫化物系蛍光体9の含有量としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の発光特性を得る観点からは、樹脂に対して3質量%以上の割合であることが好ましく、また、硫黄系ガスの過度な生成を抑制する観点からは、10質量%以下であることが好ましい。
【0043】
−無機吸着剤−
また、樹脂層4は、第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bの少なくともいずれかが、硫化物を化学的に吸着する無機吸着剤8を含有することを要する。第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bの少なくともいずれかが無機吸着剤8を含有することにより、第2の樹脂層4bに含有される硫化物系蛍光体9が大気中の水分等と反応して硫黄系ガスを生成したとしても、無機吸着剤8が当該硫黄系ガスを吸着して、リフレクタ2等の銀系部材の腐食を抑制することができる。
【0044】
なお、無機吸着剤8は、
図1に示すように樹脂層4のうち第1の樹脂層4aのみに存在していてもよく、
図2に示すように樹脂層4のうち第2の樹脂層4bのみに存在していてもよく、
図3に示すように第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bの両方に存在していてもよい。
ただし、
図1に示すように、樹脂層4のうち第1の樹脂層4aのみが無機吸着剤8を含有することがより好ましい。こうすることで、無機吸着剤8と硫化物系蛍光体9とが同一層に存在しないこととなり、上層から下層に到達した硫黄系ガスのみを無機吸着剤8が吸着できるため、同一層に存在する場合に比べて無機吸着剤8の吸着能を長持ちさせることができ、より効果的にリフレクタ2等の銀系部材の腐食を抑制することができる。
一方で、樹脂層4及び発光素子3の位置関係の観点からは、第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bのうち、発光素子3を覆う樹脂層が無機吸着剤8を含有することも好ましい。即ち、第1の樹脂層4aがリフレクタ2等の銀系部材に加えて発光素子3を覆い(封止し)、第2の樹脂層4bが発光素子3と接触していない場合には、第1の樹脂層4aが無機吸着剤8を含有することが好ましく、また、第1の樹脂層4aが発光素子3を完全には覆っておらず、第1の樹脂層4aと第2の樹脂層4bとで発光素子3を覆っている(封止している)場合には、第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bのいずれも無機吸着剤8を含有することが好ましい。通常、発光素子3の周辺は、熱・光の影響が大きく、水分と硫化物系蛍光体9との反応が促進されて硫化水素等の硫黄系ガスの発生が顕著となる傾向にあるが、上述のようにすることで、発光素子3の周辺での硫黄系ガスの発生を効果的に抑制することができる。
【0045】
無機吸着剤8としては、硫化物を配位結合によって吸着するなどの、硫化物を化学的に吸着することができる無機物質であれば特に制限されないが、より高い吸着能をもたらす観点から、無機吸着剤8は、金属元素を含有する化合物からなる微粒子を含むことが好ましい。
なお、無機吸着剤8は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
ここで、金属元素を含有する化合物としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、MgO、CaO、BaO、BaB
2O
4、SrO、La
2O
3、ZnO、Zn(OH)
2、ZnSO
4・nH
2O(0≦n≦7)、ZnTi
2O
4、Zn
2Ti
3O
8、Zn
2TiO
4、ZnTiO
3、ZnBaO
2、ZnBa
2O
3、ZnGa
2O
4、Zn
1.23Ga
0.28O
2、Zn
3GaO
4、Zn
6Ga
2O
9、Zn
0.125〜0.95Mg
0.05〜0.9O、Zn
0.1〜0.75Ca
0.25〜0.9O、ZnSrO
2、Zn
0.3Al
2.4O
4、ZnAl
2O
4、Zn
3〜7In
2O
6〜10、ZnSnO
3、Zn
2SnO
4、並びに、Cu、Zn、Mn、Co、Ni、Zr、Al及びランタノイド元素から選択される金属元素を含有するケイ酸塩、などが挙げられる。金属元素を含有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、無機吸着剤8は、一層高い吸着能をもたらす観点から、ZnOからなる微粒子を含むことがより好ましい。
【0047】
上述の、金属元素を含有するケイ酸塩は、金属とケイ素とのモル比が、金属/ケイ素=0.60〜0.80であることが好ましい。このようなケイ酸塩は、金属塩とケイ酸アルカリ塩とを反応させて製造することができる。また、上記の金属塩としては、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、アルミニウム及びランタノイドから選ばれる少なくとも1種の金属の、硫酸、塩酸、硝酸等の無機塩、及び/又はギ酸、酢酸、シュウ酸などの有機塩を用いることができる。特に、金属としては、銅(I)、銅(II)及び亜鉛(I)が好ましい。上記金属元素を含有するケイ酸塩としては、M
2O・nSiO
2・xH
2O(Mは一価のアルカリ金属を表し、nは1以上であり、xは0以上である)で表されるケイ酸アルカリ塩が挙げられる。
【0048】
第1の樹脂層4a及び/又は第2の樹脂層4bにおける無機吸着剤8の含有量としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、必要最低限の量で効果的に硫黄系ガスを吸着させる観点から、樹脂に対して1質量%以上5質量%以下の割合であることが好ましい。
【0049】
−ガラスフレーク−
また、樹脂層4は、ガラスフレーク(図示せず)を含有することが好ましい。樹脂層4がガラスフレークを含有することにより、当該ガラスフレークが大気中の水に対する拡散障壁として機能し、硫化物系蛍光体9が水と反応して硫黄系ガスを生成することの抑制、ひいては当該硫黄系ガスによるリフレクタ2等の銀系部材の腐食の抑制をもたらすことができる。
同様の考え方により、樹脂層4を構成する層のうち、リフレクタ2等の銀系部材から最も離間した層がガラスフレークを含有することも好ましい。即ち、例えば、樹脂層4が、第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bのみからなる場合には、第1の樹脂層4aで覆われたリフレクタ2等の銀系部材から最も離間した層である第2の樹脂層4bが、ガラスフレークを含有することが好ましい。また、例えば、樹脂層4が、第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bに加え、第2の樹脂層4bの直上に第3の樹脂層(図示せず)を含む場合には、第1の樹脂層4aで覆われたリフレクタ2等の銀系部材から最も離間した層である当該第3の樹脂層が、ガラスフレークを含有することが好ましい。
【0050】
ガラスフレークは、大気中の水に対する拡散障壁としての機能をより効果的なものとする観点から、直径が5μm以上20μm以下で、厚みが0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
また、ガラスフレークを含有させる樹脂層におけるガラスフレークの含有量としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、大気中の水に対する拡散障壁としての機能をより効果的なものとする観点から、樹脂に対して1質量%以上5質量%以下の割合であることが好ましい。
【0051】
(発光装置の製造方法)
次に、上述した本発明の発光装置を製造することが可能な、本発明の一実施形態に係る発光装置の製造方法を説明する。なお、本発明の一実施形態に係る発光装置の製造方法における、各部材や原料などの具体的な構成は、本発明の発光装置の説明で既述したものと同様である。
【0052】
本発明の一実施形態に係る発光装置の製造方法は、リフレクタ準備工程、第1樹脂層形成工程、第2樹脂層形成工程を含み、更に必要に応じて、蛍光体調製工程、被覆蛍光体調製工程、樹脂組成物調製工程、追加樹脂層形成工程などの他の工程を含むことができる。
【0053】
<リフレクタ準備工程>
リフレクタ準備工程は、発光素子3を上部に備える、表面に銀を有するリフレクタ2を準備する工程である。このリフレクタ準備工程では、例えば、リフレクタ2及び樹脂層収容部材5を備えるリードフレーム6に、発光素子3を実装させたものを準備してもよい。
なお、特に制限されず、このリードフレーム6に充填される樹脂組成物の量と、当該量の樹脂組成物がリードフレーム6に充填されて樹脂層が形成されたときの当該樹脂層の高さとの関係を、あらかじめ把握しておくことが好ましい。
【0054】
<蛍光体調製工程>
蛍光体調製工程は、第2の樹脂層4bに含有させる硫化物系蛍光体を調製する工程である。この工程では、例えば、MGa
2S
4:Eu(Mは、Sr、Ba及びCaのうちの少なくともいずれかを含む1つ以上の元素を表す)で示される緑色蛍光体を調製することができる。一実施形態に係る上記緑色蛍光体の調製においては、ユウロピウム化合物、並びに、ストロンチウム化合物、カルシウム化合物、及びバリウム化合物のうちの少なくともいずれかを含む混合溶液を、粉末ガリウム化合物を加えた亜硫酸塩溶液中に滴下して、Euと、Sr、Ca及びBaのうちの少なくともいずれかと、Gaとを含む亜硫酸塩の粉体混合物を得た後、該粉体混合物を焼成し、MGa
2S
4:Eu(Mは、Sr、Ba及びCaのうちの少なくともいずれかを含む1つ以上の元素を表す)で示される緑色蛍光体を得ることができる。即ち、一実施形態に係る上記緑色蛍光体の調製においては、出発物質を液相にて生成させる湿式法を用いることができる。
【0055】
ユウロピウム化合物としては、硝酸ユウロピウム[Eu(NO
3)
3・xH
2O]、蓚酸ユウロピウム[Eu
2(C
2O
4)
3・xH
2O]、炭酸ユウロピウム[Eu
2(CO
3)
3・xH
2O]、硫酸ユウロピウム[Eu
2(SO
4)
3]、塩化ユウロピウム[EuCl
3・xH
2O]、フッ化ユウロピウム[EuF
3]、水素化ユウロピウム[EuH
x]、硫化ユウロピウム[EuS]、トリ−i−プロポキシユウロピウム[Eu(O−i−C
3H
7)
3]、酢酸ユウロピウム[Eu(O−CO−CH
3)
3]等を用いることができる。
ユウロピウム化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
ストロンチウム化合物としては、硝酸ストロンチウム[Sr(NO
3)
2]、酸化ストロンチウム[SrO]、臭化ストロンチウム[SrBr
2・xH
2O]、塩化ストロンチウム[SrCl
2・xH
2O]、炭酸ストロンチウム[SrCO
3]、蓚酸ストロンチウム[SrC
2O
4・H
2O]、フッ化ストロンチウム[SrF
2]、ヨウ化ストロンチウム[SrI
2・xH
2O]、硫酸ストロンチウム[SrSO
4]、水酸化ストロンチウム[Sr(OH)
2・xH
2O]、硫化ストロンチウム[SrS]等を用いることができる。
ストロンチウム化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
カルシウム化合物としては、硝酸カルシウム[Ca(NO
3)
2]、酸化カルシウム[CaO]、臭化カルシウム[CaBr
2・xH
2O]、塩化カルシウム[CaCl
2・xH
2O]、炭酸カルシウム[CaCO
3]、蓚酸カルシウム[CaC
2O
4・H
2O]、フッ化カルシウム[CaF
2]、ヨウ化カルシウム[CaI
2・xH
2O]、硫酸カルシウム[CaSO
4]、水酸化カルシウム[Ca(OH)
2]、硫化カルシウム[CaS]等を用いることができる。
カルシウム化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
バリウム化合物としては、硝酸バリウム[Ba(NO
3)
2]、酸化バリウム[BaO]、臭化バリウム[BaBr
2・xH
2O]、塩化バリウム[BaCl
2・xH
2O]、炭酸バリウム[BaCO
3]、蓚酸バリウム[BaC
2O
4・H
2O]、フッ化バリウム[BaF
2]、ヨウ化バリウム[BaI
2・xH
2O]、硫酸バリウム[BaSO
4]、水酸化バリウム[Ba(OH)
2]、硫化カルシウム[BaS]等を用いることができる。
バリウム化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上述の混合溶液を得るための溶媒としては、純水、硝酸水溶液、アンモニア水溶液、塩酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、これらの混合水溶液を用いることができる。
【0060】
また、粉状ガリウム化合物としては、酸化ガリウム[Ga
2O
3]、硫酸ガリウム[Ga
2(SO
4)
3・xH
2O]、硝酸ガリウム[Ga(NO
3)
3・xH
2O]、臭化ガリウム[GaBr
3]、塩化ガリウム[GaCl
3]、ヨウ化ガリウム[GaI
3]、硫化ガリウム(II)[GaS]、硫化ガリウム(III)[Ga
2S
3]、オキシ水酸化ガリウム[GaOOH]等を用いることができる。
粉状ガリウム化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
粉状ガリウム化合物を加える亜硫酸塩としては、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムを用いることができる。
【0062】
また、前述した操作に限らず、ユウロピウム化合物、並びに、ストロンチウム化合物、カルシウム化合物、及びバリウム化合物のうちの少なくともいずれかを含む混合溶液に粉末ガリウム化合物を加え、Euと、Sr、Ca及びBaのうちの少なくともいずれかと、Gaとを含む混合溶液を亜硫酸塩溶液中に滴下し、Euと、Sr、Ca及びBaのうちの少なくともいずれかと、Gaとを含む亜硫酸塩の粉体混合物を得た後、該粉体混合物を焼成し、MGa
2S
4:Eu(Mは、Sr、Ba及びCaのうちの少なくともいずれかを含む1つ以上の元素を表す)で示される緑色蛍光体を得てもよい。
【0063】
<被覆蛍光体調製工程>
被覆蛍光体調製工程は、硫化物系蛍光体9に、第1の二酸化ケイ素膜10aと、第1の二酸化ケイ素膜10a上の第2の二酸化ケイ素膜10bとを含む被覆膜10を形成し、被覆硫化物系蛍光体を得る工程である。この工程では、例えば、硫化物系蛍光体9と、アルコキシシランと、金属酸化物粉末11と、触媒とを溶媒中で混合させた混合液を作製し、金属酸化物粉末9が含有されたアルコキシシランから形成される二酸化ケイ素膜によって硫化物系蛍光体9を被覆させ、次いで、上述の混合液を固相と液相とに分離することにより、金属酸化物粉末11を含有する二酸化ケイ素膜(10a又は10b)を硫化物系蛍光体9の表面に形成することができる。即ち、第1の二酸化ケイ素膜10aと、第2の二酸化ケイ素膜10bとを形成するためには、上述したものと同様の操作を2回繰り返せばよく、更なる二酸化ケイ素膜を形成するためには、上述したものと同様の操作を更に繰り返せばよい。
なお、金属酸化物粉末11を含有しない二酸化ケイ素膜(10a又は10b)を形成する場合には、上記工程において、単に金属酸化物粉末11を用いなければよい。
【0064】
アルコキシシランは、エトキシド、メトキシド、イソプロポキシド等から選択することができ、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、アルコキシシランは、ポリエチルシリケート等のアルコキシシランオリゴマーや加水分解縮合物であってもよい。更に、アルコキシシランは、アルキルアルコキシシラン等のように、ゾルゲル反応に寄与しないアルキル基、アミノ基、メルカプト基等を有するシランカップリング剤を用いてもよい。
アルコキシシランは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
溶媒は、特に限定されず、例えば、水、有機溶媒等を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール、エーテル、ケトン、多価アルコール類等を用いることができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール等を用いることができる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等を用いることができる。
溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
触媒は、アルコキシシランの加水分解や重縮合反応を開始させるためのものであり、例えば、酸性触媒や塩基性触媒を用いることができる。酸性触媒しては、塩酸、硫酸、ホウ酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸、酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。塩基性触媒としては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、アンモニア等が挙げられる。これらの触媒の中では、硫化物系蛍光体9の劣化を効果的に防止する観点から、塩基性触媒を用いることが好ましい。
触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
混合液の固相と液相とへの分離では、例えば、吸引濾過器を用いて、混合液を固相と液相とに分離し、分離した固相を乾燥し、乾燥して得られた試料を解砕し、焼成処理を行うことができる。これにより、金属酸化物粉末11が含有された二酸化ケイ素膜(10a又は10b)によって硫化物系蛍光体9を被覆することができる。
【0068】
分離した固相を乾燥させる温度は、使用する溶媒に応じて変更することが可能であるが、80〜110℃とすることが好ましい。また、分離した固相を乾燥させる時間は、2時間以上とすることが好ましい。
【0069】
そして、焼成温度は、150〜250℃とすることが好ましく、また、焼成時間は、8時間以上とすることが好ましい。
【0070】
<樹脂組成物調製工程>
樹脂組成物工程は、第1樹脂層形成工程で使用する第1の樹脂組成物及び第2樹脂層形成工程で使用する第2の樹脂組成物をそれぞれ調製する工程である。第2の樹脂組成物の調製においては、少なくとも硫化物系蛍光体9を必要な量だけ配合する。また、第1の樹脂組成物の調製及び第2の樹脂組成物の調製の少なくともいずれかにおいては、硫化物を化学的に吸着する無機吸着剤8を必要な量だけ配合する。そして、第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物は、それぞれ、少なくとも透明樹脂と、硫化物系蛍光体9や無機吸着剤8等の必要な成分とを用いるほか、更に必要に応じて、例えば、可塑剤、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、光拡散材、沈降防止材、フィラー等の各種添加剤を用い、これらを混合することにより調製することができる。また、混合方法としては、均一に混合できる方法であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空撹拌による混合、真空デシケータ内でのプロペラ撹拌、自転・公転による遠心力を利用した回転撹拌などが挙げられる。
なお、第1の樹脂組成物の調製及び第2の樹脂組成物の調製は、同時に行う必要はなく、例えば、第1樹脂層形成工程及び第2樹脂層形成工程の前にそれぞれ行うことができる。
【0071】
<第1樹脂層形成工程>
第1樹脂層形成工程は、第1の樹脂組成物を、銀系部材としてのリフレクタ2を覆うように供給して、第1の樹脂層4aを形成する工程である。ここで、第1の樹脂組成物の供給は、例えば、ポッティングにより行うことができる。そして、第1樹脂層形成工程では、リフレクタ2を覆うように供給した第1の樹脂組成物が、発光素子3の一部又は全部を内包する。
【0072】
ここで、第1樹脂層形成工程では、形成される第1の樹脂層4aの厚みが所望のものとなるように、具体的には、形成される第1の樹脂層4a及び第2の樹脂層4bの総厚に対する第1の樹脂層4aの厚みの割合が50%以上となるように、第1の樹脂組成物の供給量を決定しておくことが必要である。なお、第1の樹脂組成物の量は、例えば、電子天秤などで管理することができる。
【0073】
第1樹脂層形成工程では、例えば、供給された第1の樹脂組成物を硬化又は半硬化させることにより、第1の樹脂層4aを形成することが好ましい。第1の樹脂組成物を硬化又は半硬化させることで、後で供給される第2の樹脂組成物の成分が第1樹脂層に入り込むことを抑制することができる。なお、形成される第1の樹脂層の表面に適度な接着性を発現させて、後で形成される第2の樹脂層との接合を良好なものとする、ひいては第1の樹脂層と第2の樹脂層との界面に空気が混入することを抑制する観点からは、供給された第1の樹脂組成物を、半硬化させることが好ましい。
ここで、例えばシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂を用いる場合、硬化は、一般的には、約150℃(例えば130℃以上170℃以下)で約2時間(例えば1.5時間以上2.5時間以下)加熱することにより達成することができ、半硬化は、一般的には、約100℃(例えば80℃以上120℃以下)で約1時間(例えば45分間以上1.5時間未満)加熱することにより達成することができる。
【0074】
<第2樹脂層形成工程>
第2樹脂層形成工程は、第2の樹脂組成物を、第1樹脂層形成工程で形成した第1の樹脂層4aの上に供給して、第2の樹脂層4bを形成する工程である。ここで、第2の樹脂組成物の供給は、例えば、ポッティングにより行うことができる。そして、第2樹脂層形成工程では、第2の樹脂層4bを、第1の樹脂層4aの直上に配置することができる。
【0075】
ここで、第2樹脂層形成工程では、第1の樹脂層4aの直上に形成される第2の樹脂層4bの厚みが所望のものとなるように、具体的には、既に形成した第1の樹脂層4a及び形成される第2の樹脂層4bの総厚に対する第1の樹脂層4aの厚みの割合が50%以上となるように、第2の樹脂組成物の供給量を決定しておくことが必要である。なお、第2の樹脂組成物の量は、例えば、電子天秤などで管理することができる。
【0076】
第2樹脂層形成工程では、例えば、供給された第2の樹脂組成物を硬化させることにより、第2の樹脂層4bを形成することができる。
【0077】
<追加樹脂層形成工程>
追加樹脂層形成工程は、所望の成分を含有する樹脂組成物を調製するとともに、当該樹脂組成物を第2の樹脂層4bの上に供給し、追加樹脂層を形成する任意の工程である。
なお、樹脂組成物の調製は、第2の樹脂組成物の調製と同様のやり方で行うことができ、追加樹脂層の形成は、第2の樹脂層4bの形成と同様のやり方で行うことができる。
【0078】
そして、第2樹脂層形成工程又は追加樹脂層形成工程を経て、
図1〜3に示すような発光装置を簡便に得ることができる。
【実施例】
【0079】
次に、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0080】
(実施例1)
<(未被覆の)硫化物系蛍光体の調製>
原料として、Ga
2O
3(純度6N)、Sr(NO
3)
2(純度3N)、及びEu(NO
3)
3・nH
2O(純度3N、n=6.00)、並びに、亜硫酸アンモニウム一水和物を準備した。そして、組成式Sr
1−xGa
2S
4:Eu
xで表される蛍光体において、x=0.10とする組成比(Eu濃度:10mol%)で、0.2モル量となるように、各原料の秤量値を求めた。即ち、ユウロピウム化合物(Eu(NO
3)
3・nH
2O)8.921g、ストロンチウム化合物(Sr(NO
3)
2)38.093gと算出された。
【0081】
次いで、秤量したユウロピウム化合物及びストロンチウム化合物を、200mlの純水に添加し、溶け残りが無くなるまで十分に撹拌し、Eu及びSrを含有する混合溶液を得た。
【0082】
次に、Eu及びSrのモル数の合計の1.15倍のモル数の亜硫酸アンモニウム(30.974g)を200mlの純水に溶解させた溶液に、粉状ガリウム化合物(粉状Ga
2O
3)37.488gを加え、十分撹拌して、亜硫酸塩混合溶液を作製した。
【0083】
この亜硫酸塩混合溶液に、先のEu及びSrを含有する混合溶液を滴下することで、析出・沈殿物を得た。この析出・沈殿物は、亜硫酸ユウロピウム・ストロンチウム粉体と、酸化ガリウム粉体の混合物である。
【0084】
そして、伝導率が0.1mS/cm以下になるまで、析出・沈殿物を純水で洗浄、濾過し、120℃で6時間、乾燥させた。その後、公称目開き100μmの金網を通すことで、Eu、Sr、Ca、及びGaを含有する粉体混合品を得た。この粉体混合品は、亜硫酸ユウロピウム・ストロンチウム粉体[(Sr,Eu)SO
3からなる粉体]と酸化ガリウム粉体とを含有する混合物である。
【0085】
次いで、粉体混合品を電気炉で焼成した。焼成の条件として、1.5時間で925℃まで昇温し、その後、1.5時間、925℃を保持し、次いで、2時間で室温まで降温させた。焼成中、0.3リットル/分の割合で電気炉に硫化水素を流した。その後、公称目開き25μmのメッシュを通し、Sr
1−xGa
2S
4:Eu
x(x=0.10)で示される硫化物系蛍光体の粒子を得た。
【0086】
なお、この硫化物系蛍光体について、PLスペクトルを測定した結果、波長538nmにPLピークが現れ、PLピーク強度は3.13(YAG比)、半値幅は46nmであった。また、変換効率を算出した結果、吸収率は82.3%、内部量子効率は65.4%、及び外部量子効率は53.9%であった。
【0087】
<被覆硫化物系蛍光体の調製>
まず、得られた硫化物系蛍光体10g、エタノール80g、純水5g及び28%のアンモニア水6gを混合してなる第1配合物、並びに、テトラエトキシシラン5g及びエタノール35gを混合してなる第2配合物を準備した。
次いで、ポリエチレン樹脂製容器に、第1配合物を投入し、マグネチックスターラーを投入し、40℃の恒温槽にて10分間撹拌した。その後、第2配合物をこの容器に投入した。第2配合物の投入が完了した時点を0分として、3時間撹拌を行った。撹拌終了後、真空ポンプを用いて吸引濾過を行い、回収したサンプルをビーカーに移し、水やエタノールで洗浄後、再度濾過を行い、サンプルを回収した。回収したサンプルを85℃で2時間乾燥し、200℃で8時間焼成を行うことで、第1の二酸化ケイ素膜を備える硫化物系蛍光体を得た。
【0088】
次に、得られた第1の二酸化ケイ素膜を備える硫化物系蛍光体10g、エタノール80g、純水5g及び28%のアンモニア水6gを混合してなる第3配合物、並びに、上述した第2配合物と同様のものを準備した。
次いで、上述の被覆処理において、第1配合物を投入する代わりに、第3配合物と、粒径が0.1〜0.2μmの酸化亜鉛粉末(K−FRESH MZO、テイカ製)0.1g(硫化物系蛍光体100質量部に対して1質量部)とを投入したこと以外は、上述の被覆処理と同様の処理を行い、
図6に示すような被覆硫化物系蛍光体を得た。
【0089】
<発光装置の製造>
青色発光ダイオードが直接上部に配置された銀リフレクタを備えるリードフレームを準備した。
一方で、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング株式会社製、「OE−6550」(A液:B液=1:1))と、当該シリコーン樹脂に対して2質量%の無機吸着剤(東亞合成株式会社製、「ケスモン」、酸化亜鉛)とを容器に投入し、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、「AR−250」)で撹拌及び脱泡を180秒ずつ行い、第1の樹脂組成物を調製した。この第1の樹脂組成物5mgを、上述のリードフレーム内に、銀リフレクタ及び青色発光ダイオードを覆うように充填(供給)し、100℃で1時間加熱することで半硬化させた。
また、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング株式会社製、「OE−6550」(A液:B液=1:1))と、当該シリコーン樹脂に対して5質量%の上記被覆硫化物系蛍光体(色度点(x,y)=(0.1958,0.2333)となる量)とを容器に投入し、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、「AR−250」)で撹拌及び脱泡を180秒ずつ行い、第2の樹脂組成物を調製した。この第2の樹脂組成物2mgを、上述の半硬化させた第1の樹脂組成物の上に充填(供給)し、150℃で2時間加熱することで硬化させた。
なお、第1の樹脂組成物の供給量及び第2の樹脂組成物の供給量は、形成される第1の樹脂層の厚み及び第2の樹脂層の厚みが所望のものとなるように、リードフレームの構造を把握しつつ、あらかじめ決定しておいた量である。
このようにして、発光装置を得た。なお、作製した発光装置を中央部で切断し、断面をSEMで観察したところ、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の界面は、銀リフレクタの面と略平行となっていることが確認され、また、第1の樹脂層の厚みは350μmであり、第2の樹脂層の厚みは140μmであることが確認された。
【0090】
(実施例2)
実施例1の発光装置の製造における第2の樹脂組成物の調製において、シリコーン樹脂に対して5質量%の被覆硫化物系蛍光体に加えて、更にシリコーン樹脂に対して2質量%のガラスフレーク(日本板硝子株式会社製、「RCF−015」)を容器に投入したこと以外は、実施例1と同様にして、発光装置を得た。
【0091】
(実施例3)
実施例1の発光装置の製造において、被覆硫化物系蛍光体に代えて、実施例1で調製した(未被覆の)硫化物系蛍光体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、発光装置を得た。
【0092】
(実施例4)
実施例3の発光装置の製造における第2の樹脂組成物の調製において、シリコーン樹脂に対して5質量%の(未被覆の)硫化物系蛍光体に加えて、更にシリコーン樹脂に対して2質量%の無機吸着剤(東亞合成株式会社製、「ケスモン」、酸化亜鉛)を容器に投入したこと以外は、実施例3と同様にして、発光装置を得た。
【0093】
(実施例5)
実施例1の発光装置の製造における第2の樹脂組成物の調製において、シリコーン樹脂に対して5質量%の(未被覆の)被覆硫化物系蛍光体に加えて、更にシリコーン樹脂に対して2質量%の無機吸着剤(東亞合成株式会社製、「ケスモン」、酸化亜鉛)を容器に投入したこと以外は、実施例1と同様にして、発光装置を得た。
【0094】
(実施例6)
実施例5の発光装置の製造における第2の樹脂組成物の調製において、シリコーン樹脂に対して5質量%の被覆硫化物系蛍光体及びシリコーン樹脂に対して2質量%の無機吸着剤に加えて、更にシリコーン樹脂に対して2質量%のガラスフレーク(日本板硝子株式会社製、「RCF−015」)を容器に投入したこと以外は、実施例5と同様にして、発光装置を得た。
【0095】
(実施例7)
実施例5の発光装置の製造における第1の樹脂組成物の調製において、無機吸着剤を容器に投入しなかったこと以外は、実施例5と同様にして、発光装置を得た。
【0096】
(比較例1)
実施例1において、発光装置の製造を以下の通りで行ったこと以外は、実施例1と同様にして、発光装置を得た。
<発光装置の製造>
青色発光ダイオードが直接上部に配置された銀リフレクタを備えるリードフレームを準備した。
一方で、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング株式会社製、「OE−6550」(A液:B液=1:1))と、当該シリコーン樹脂に対して2質量%の上記被覆硫化物系蛍光体とを容器に投入し、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、「AR−250」)で撹拌及び脱泡を180秒ずつ行い、樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物7mgを、上述のリードフレーム内に、銀リフレクタ及び青色発光ダイオードを覆うように充填し、150℃で2時間加熱することで硬化させた。
【0097】
(比較例2)
実施例1の発光装置の製造における第1の樹脂組成物の調製において、無機吸着剤を容器に投入しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、発光装置を得た。
【0098】
(比較例3)
実施例2の発光装置の製造における第1の樹脂組成物の調製において、無機吸着剤を容器に投入しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、発光装置を得た。
【0099】
(比較例4)
比較例1の発光装置の製造における樹脂組成物の調製において、被覆硫化物系蛍光体に代えて、実施例1で調製した(未被覆の)硫化物系蛍光体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、発光装置を得た。
【0100】
(実施例8)
実施例1の発光装置の製造において、第1の樹脂組成物の充填量を5mgから4mgに変え、且つ、第2の樹脂組成物の充填量を2mgから3mgに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み280μmの第1の樹脂層と、厚み210μmの第2の樹脂層とを備える発光装置を得た。
【0101】
(実施例9)
実施例1の発光装置の製造において、第1の樹脂組成物の充填量を5mgから3.5mgに変え、且つ、第2の樹脂組成物の充填量を2mgから3.5mgに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み245μmの第1の樹脂層と、厚み245μmの第2の樹脂層とを備える発光装置を得た。
【0102】
(比較例5)
実施例1の発光装置の製造において、第1の樹脂組成物の充填量を5mgから3mgに変え、且つ、第2の樹脂組成物の充填量を2mgから4mgに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、厚み210μmの第1の樹脂層と、厚み280μmの第2の樹脂層とを備える発光装置を得た。
【0103】
(銀腐食試験の実施及び反射率の測定)
実施例及び比較例で得られた発光装置を、両面テープでスライドガラスに貼り付け、密閉ビン(容量100mlのガラス製秤量ビン)の中に入れるとともに、湿度100%RHとするため、水を入れたガラスセルを密閉ビンに入れた。そして、ふたを閉めて、密閉ビンを85℃のオーブンに入れることで、銀腐食試験を実施した。
そして、オーブンに入れる前の発光装置と、オーブンに入れて48時間を経過した後の発光装置とにおける銀リフレクタについて、積分球ユニットを装着した蛍光分光光度計(日本分光株式会社製「FP−6500」)を用い、硫酸バリウムを主成分とした白板を基準として、560nmの光の反射率を測定した。
結果を表1,2に示す。なお、オーブンに入れて48時間を経過した後の発光装置における銀リフレクタの反射率が60%以上であれば、銀リフレクタの腐食が十分に抑制されており、発光装置の実使用が可能である。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
表1,2の結果から、実施例1〜9に係る発光装置は、85℃のオーブンに入れて48時間を経過した後でも、銀リフレクタの反射率が60%以上になっていることを確認することができ、銀系部材としての銀リフレクタの腐食が十分に抑制され、良好な発光特性等の性能が維持できることが分かる。