(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-56663(P2018-56663A)
(43)【公開日】2018年4月5日
(54)【発明の名称】アンテナの取付構造
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20180309BHJP
F16M 11/14 20060101ALI20180309BHJP
【FI】
H01Q1/12 E
F16M11/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-187613(P2016-187613)
(22)【出願日】2016年9月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】和田 寛明
(72)【発明者】
【氏名】石田 良充
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA02
5J047AA09
5J047AB00
5J047BG02
5J047BG10
(57)【要約】
【課題】取付位置・角度の調整作業の作業性に優れたアンテナの取付構造を提供する。
【解決手段】金属製の球形ヘッド20を有する一対のカプラ2と、両端部31に球形ヘッド20を収容する球面ソケット33を有する金属製の一対の分割アーム3と、球形ヘッド20と球面ソケット33との間に介在する摺動部材からなる球面シート4と、一方のカプラ3の球形ヘッド20が球面シート4を介して一対の分割アーム3の一方の端部31の球面ソケット33間に保持され、他方のカプラ2の球形ヘッド20が球面シート4を介して一対の分割アーム3の他方の端部31の球面ソケット33間に保持されるように、一対のカプラ2を挟み込んだ一対の分割アーム3を締め付けるクランプ機構6と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置ベースに対するアンテナの取付位置および取付角度を調整可能なアンテナの取付構造であって、
金属製の球形ヘッドを有し、一方が前記アンテナ側に取り付けられ、他方が前記設置ベース側に取り付けられる一対のカプラと、
両端部に前記球形ヘッドを収容する金属製の球面ソケットを有する一対の分割アームと、
前記球面ソケットと前記球形ヘッドとの間に介在する摺動部材と、
一方の前記カプラの前記球形ヘッドが前記摺動部材を介して前記一対の分割アームの一方の端部の前記球面ソケット間に保持され、他方の前記カプラの前記球形ヘッドが前記摺動部材を介して前記一対の分割アームの他方の端部の前記球面ソケット間に保持されるように、前記一対のカプラを挟み込んだ前記一対の分割アームを締め付けるクランプ機構と、を備える
ことを特徴とするアンテナの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナの取付構造であって、
前記摺動部材は、
前記球面ソケット毎に設けられ、
前記球形ヘッドと摺動する摺動凹面および前記球面ソケットと摺動する摺動凸面の少なくとも一方を有する
ことを特徴とするアンテナの取付構造。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナの取付構造であって、
前記摺動部材は、
前記球形ヘッドの表面に配置され、前記球面ソケットと摺動する
ことを特徴とするアンテナの取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナの取付構造であって、
前記摺動部材は、
前記球面ソケットの表面に配置され、前記球形ヘッドと摺動する
ことを特徴とするアンテナの取付構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のアンテナの取付構造であって、
前記摺動部材は、ゴムより高い弾性率で厚さ方向に変形可能である
ことを特徴とするアンテナの取付構造。
【請求項6】
請求項5に記載のアンテナの取付構造であって、
前記摺動部材は、
厚さ方向に伸縮可能なエキスパンドメタルと、
前記エキスパンドメタルを被覆した樹脂層と、を有する
ことを特徴とするアンテナの取付構造。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のアンテナの取付構造であって、
前記一対の分割アーム各々は、
互いに対向する側面の前記両端部において、端に行くほど厚さが薄くなる方向へ傾斜する傾斜面を有し、
前記球面ソケットは、前記傾斜面に設けられている
ことを特徴とするアンテナの取付構造。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載のアンテナの取付構造であって、
前記一対の分割アーム各々は、前記両端部の幅が端に行くほど狭い
ことを特徴とするアンテナの取付構造。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか一項に記載のアンテナの取付構造であって、
前記一対のカプラの一方のカプラに取り付けられ、前記アンテナを保持するための取付部材と、
前記一対のカプラの他方のカプラに取り付けられ、前記設置ベースに固定するための固定部材と、をさらに備える
ことを特徴とするアンテナの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナの取付構造に関し、特に、指向性アンテナを内蔵した無線基地局の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
指向性アンテナを内蔵した無線基地局を壁等の設置ベースに取り付ける場合、指向性アンテナの受信感度を高めるため、指向性アンテナの取付位置・角度を自在に調整できることが望まれる。特許文献1には、設置ベースに対して所望の取付位置・角度に調整することができる取付構造が開示されている。この取付構造を用いることにより、指向性アンテナの取付位置・角度を自在に調整可能となる。
【0003】
特許文献1に記載の取付構造は、ニトリルゴム製の表層を有する球形ヘッドを有する一対のカプラと、両端部にカプラの球形ヘッドを収容する球面ソケットを有する一対の分割アームと、一対の分割アームを束ねるクランプ機構と、を備えている。この取付構造は、一方のカプラの球形ヘッドが一対の分割アームの一方の端部の球面ソケット間に保持され、他方のカプラの球形ヘッドが一対の分割アームの他方の端部の球面ソケット間に保持されるように、一対のカプラを挟み込んだ一対の分割アームを、クランプ機構で締め付けることにより、組み立てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5845885号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の取付構造は、比較的軽量な小画面サイズの医学用モニタを取付対象としており、重量が数十キログラムもあるような無線基地局を取り付けることを想定していない。このため、つぎのような問題が生じる。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の取付構造は、球形ヘッドの表層を摩擦係数の高いニトリルゴムで形成しているため、クランプ機構の締め付けに対する感度(球形ヘッドおよび球面ソケット間の摩擦力の変化具合)が高い。このため、無線基地局を所望の取付位置・角度で維持できるようにクランプ機構の締付力を少し強めると、球形ヘッドおよび球面ソケット間の摩擦力が大きくなりすぎて球形ヘッドを回転させることが困難になることがある。一方、無線基地局の取付位置・角度を容易に変更できるようにクランプ機構の締付力を少し弱めると、球形ヘッドおよび球面ソケット間の摩擦力が小さくなりすぎて球形ヘッドがすぐに回転してしまい、無線基地局を所望の取付位置・角度に維持することが困難になることがある。したがって、クランプ機構の締付力の微調整が必要となる。また、ニトリルゴムは弾性率が低いので、無線基地局の重量により球形ヘッドが大きく弾性変形し、無線基地局を所望の取付位置・角度に設定する作業が困難となることもある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、取付位置・角度の調整作業の作業性に優れたアンテナの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、カプラの球形ヘッドおよび分割アームの球面ソケットを金属で形成するとともに、球形ヘッドと球面ソケットとの間に摺動部材を介在させた。ここで、摺動部材は、ゴムより高い弾性率で厚み方向に変形可能であることが好ましい。このような摺動部材として、厚さ方向に伸縮可能なエキスパンドメタルを、例えば四ふっ化エチレン樹脂を主成分として、これにフェノール樹脂および/またはポリイミド樹脂を含有してなる潤滑性組成物で形成される樹脂層で被覆した摺動部材を用いることができる。樹脂層を形成する潤滑性組成物は、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、四ふっ化エチレン樹脂等の合成樹脂1種または2種以上からなる樹脂組成物、または、上記合成樹脂1種または2種以上を主成分とし、これに、潤滑油、ワックス、黒鉛、二硫化モリブデン、リン酸塩、四ふっ化エチレン樹脂(主成分に四ふっ化エチレン樹脂を含む場合を除く)等の潤滑油剤1種または2種以上を含有する樹脂組成物であってもよい。
【0009】
例えば、本発明は、設置ベースに対するアンテナの取付位置および取付角度を調整可能なアンテナの取付構造であって、
金属製の球形ヘッドを有し、一方が前記アンテナ側に取り付けられ、他方が前記設置ベース側に取り付けられる一対のカプラと、
両端部に前記球形ヘッドを収容する金属製の球面ソケットを有する一対の分割アームと、
前記球面ソケットと前記球形ヘッドとの間に介在する摺動部材と、
一方の前記カプラの前記球形ヘッドが前記摺動部材を介して前記一対の分割アームの一方の端部の前記球面ソケット間に保持され、他方の前記カプラの前記球形ヘッドが前記摺動部材を介して前記一対の分割アームの他方の端部の前記球面ソケット間に保持されるように、前記一対のカプラを挟み込んだ前記一対の分割アームを締め付けるクランプ機構と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、球形ヘッドと球面ソケットとの間に摺動部材を介在させているので、クランプ機構の締め付けに対する感度が低い。このため、クランプ機構の締付力の多少の強弱によって、球形ヘッドおよび球面ソケット間の摩擦力が大きく変化することはないので、クランプ機構の締付力の微調整が不要となる。また、球形ヘッドおよび球面ソケットを金属で形成しているので、アンテナの重量により球形ヘッドが大きく変形することもない。したがって、本発明によれば、取付位置・角度の調整作業の作業性に優れたアンテナの取付構造を提供することができる。
【0011】
なお、本発明において、ゴムより高い弾性率で厚み方向に変形可能な摺動部材を用いることにより、設置対象のアンテナの重量による摺動部材の変形を抑制しつつ、クランプ機構に適度な締付力を付与することにより、摺動部材が厚さ方向に変形して球形ヘッドおよび球面ソケットの寸法のばらつきを吸収し、より確実に摺動部材を球形ヘッドおび球面ソケットに摺接させることができ、これにより、球形ヘッドおよび球面ソケット間の摩擦力を安定させ、取付位置・角度の調整作業をより円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(A)および
図1(B)は、本発明の一実施の形態に係るアンテナの取付構造1の正面図および側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態に係るアンテナの取付構造1の部品展開図である。
【
図3】
図3(A)および
図3(B)は、球面シート4の正面図および側面図であり、
図3(C)は、
図3(A)に示す球面シート4のA−A断面図であり、
図3(D)は、
図3(C)に示す球面シート4のA部拡大図である。
【
図4】
図4(A)および
図4(B)は、球面シート4の変形例である球面シート4Aの正面図および側面図であり、
図4(C)は、
図4(A)に示す球面シート4AのB−B断面図であり、
図4(D)は、
図4(C)に示す球面シート4AのB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施の形態について説明する。
【0014】
本実施の形態に係るアンテナの取付構造1は、指向性アンテナを内蔵した無線基地局等のアンテナを、壁等の設置ベースに取り付けるためのものであり、設置ベースに対してアンテナの取付位置・角度を自在に調整可能である。
【0015】
図1(A)および
図1(B)は、本実施の形態に係るアンテナの取付構造1の正面図および側面図である。また、
図2は、本実施の形態に係るアンテナの取付構造1の部品展開図である。
【0016】
図示するように、本実施の形態に係るアンテナの取付構造1は、一対のカプラ2と、一対の分割アーム3と、球面シート4と、一対のプレート5と、ボルト60およびナット61からなるクランプ機構6と、を備えている。
【0017】
カプラ2は、金属製の球形ヘッド20と、球形ヘッド20に連結され、先端部22に雄ネジ部23が形成されたスタッド21と、を有する。
【0018】
分割アーム3は、柱状の金属部材であり、他方の分割アーム3と対向する側面30の両端部31に形成され、端に行くほど厚さTが薄くなる方向へ傾斜する傾斜面32と、側面30の両端部31の傾斜面32に形成され、カプラ2の球形ヘッド20の一部(半球より小さい領域)を収容する球面ソケット33と、側面30および側面30の反対側の側面34を貫くボルト60挿入用の貫通孔35と、を有する。また、分割アーム3の両端部31は、端に行くほど幅Wが狭くなっている。
【0019】
球面シート4は、球面ソケット33毎に設けられ、球面ソケット33とこの球面ソケット33に収容される球形ヘッド20との間に介在し、両者間の摺動を支援する。
【0020】
図3(A)および
図3(B)は、球面シート4の正面図および側面図であり、
図3(C)は、
図3(A)に示す球面シート4のA−A断面図であり、
図3(D)は、
図3(C)に示す球面シート4のA部拡大図である。
【0021】
図示するように、球面シート4は、球面ソケット33と略同じ球径を有し、球面ソケット33と摺接する球面状の摺動凸面40と、球形ヘッド20と略同じ球径を有し、球形ヘッド20と摺接する球面状の摺動凹面41と、を有する。
【0022】
球面シート4には、ゴムより高い弾性率で厚さ方向Dに伸縮可能な樹脂部材が用いられる。具体的には、球面シート4は、厚さ方向Dに起伏して厚さ方向Dに伸縮可能な金属メッシュ42を基材とし、この基材を、金属メッシュ42の形成材料よりも低摩擦係数の樹脂層43で充填、被覆した複合材料により形成される。このような金属メッシュ42としては、例えば、所定方向のスリットの列を複数行形成した燐青銅製の金属プレートを、スリットの方向と交わる方向に引き伸ばすことにより形成された網目状のエキスパンドメタルが挙げられる。また、樹脂層43は、例えば、四ふっ化エチレン樹脂を主成分として、これにフェノール樹脂および/またはポリイミド樹脂を含有してなる潤滑性組成物で形成される。樹脂層43を形成する潤滑性組成物は、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、四ふっ化エチレン樹脂等の合成樹脂1種または2種以上からなる樹脂組成物、または、上記合成樹脂1種または2種以上を主成分とし、これに、潤滑油、ワックス、黒鉛、二硫化モリブデン、リン酸塩、四ふっ化エチレン樹脂(主成分に四ふっ化エチレン樹脂を含む場合を除く)等の潤滑油剤1種または2種以上を含有する樹脂組成物であってもよい。
【0023】
プレート5は、カプラ2のスタッド21の雄ネジ部23と螺合するネジ穴50と、指向性アンテナを内蔵した無線基地局等のアンテナを取り付けるため、あるいは、アンテナの取付構造1を壁等の設置ベースに固定するために用いられるネジ穴51と、を有する。
【0024】
上記構成のアンテナの取付構造1は、例えばつぎのようにして組み立てられる。
【0025】
まず、一対の分割アーム3それぞれの互いに対向する側面30の両端部31の傾斜面32に形成された球面ソケット33各々に、球面シート4を、球面シート4の摺動凸面40を球面ソケット33に向けて装着する。
【0026】
つぎに、一方のカプラ2の球形ヘッド20が、一対の分割アーム3それぞれの互いに対向する側面30の一方の端部31の球面ソケット33に装着された球面シート4各々の摺動凹面41に収容され、他方のカプラ2の球形ヘッド20が、一対の分割アーム3それぞれの互いに対向する側面30の他方の端部31の球面ソケット33に装着された球面シート4各々の摺動凹面41に収容されるように、一対のカプラ2を一対の分割アーム3で挟み込む。
【0027】
それから、一対の分割アーム3各々の貫通孔35にボルト60を一方の分割アーム3の側面34から挿入し、他方の分割アームの側面34において貫通孔35から突出したボルト60にナット61を螺合させて、一対の分割アーム3を締め付ける。
【0028】
つぎに、一方のカプラ2のスタッド21の雄ネジ部23を一方のプレート5のネジ穴50に螺合させ、他方のカプラ2のカプラ2のスタッド21の雄ネジ部23を他方のプレート5のネジ穴50に螺合させて、各カプラ2にプレート5を取り付ける。以上により、アンテナの取付構造1が組み立てられる。
【0029】
このようにして組み立てられたアンテナの取付構造1の一方のプレート5に、指向性アンテナを内蔵した無線基地局等のアンテナを、例えばネジ穴51を利用してボルトで取り付けるとともに、他方のプレート5を、壁等の設置ベースに、例えばネジ穴51を利用してボルトで固定する。それから、ナット61の螺合具合を調整して、一対のカプラ2各々の球形ヘッド20を、球面シート4を介してこの球形ヘッド20を収容する一対の分割アーム3の球面ソケット33に対して摺動させる。これにより、他方のプレート5が固定された設置ベースに対して、一方のプレート5に取り付けられたアンテナの取付位置・角度を調整する。その後、ナット61の螺合具合を調整して、一対のカプラ2各々の球形ヘッド20の一対の分割アーム3の球面ソケット33に対する摺動を規制することにより、設置ベースに対するアンテナの取付位置・角度を固定する。
【0030】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0031】
本実施の形態では、カプラ2の球形ヘッド20とこの球形ヘッド20を収容する分割アーム3の球面ソケット33との間に摺動部材からなる球面シート4を配置しているので、クランプ機構6の締め付けに対する感度(球形ヘッド20および球面ソケット33間の摩擦力の変化具合)が低い。このため、クランプ機構6の締付力の多少の強弱によって、球形ヘッド20および球面ソケット33間の摩擦力が大きく変化することはないので、クランプ機構6の締付力の微調整が不要となる。また、球形ヘッド20および球面ソケット33を金属で形成しているので、アンテナの重量により球形ヘッド20が大きく変形することもない。したがって、本実施の形態によれば、取付位置・角度の調整作業の作業性に優れたアンテナの取付構造1を提供することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、球面シート4として、ゴムより高い弾性率で厚さ方向Dに伸縮可能な樹脂部材、具体的には、厚さ方向Dに起伏して厚さ方向Dに伸縮可能な金属メッシュ42を基材とし、この基材を、金属メッシュ42の形成材料よりも低摩擦係数の樹脂層43で充填、被覆した複合材料を用いている。このため、設置対象のアンテナの重量による球面シート4の変形を抑制しつつ、クランプ機構6に適度な締付力を付与することにより、球面シート4が厚さ方向Dに圧縮し変形して球形ヘッド20および球面ソケット33の寸法のばらつきを吸収するととともに、圧縮された金属メッシュ42の復元力により、より確実に球面シート4の摺動凸面40および摺動凹面41を、それぞれ球面ソケット33および球形ヘッド20に摺接させることができる。これにより、球形ヘッド20および球面ソケット33間の摩擦力を安定させて、アンテナの取付位置・角度の調整作業をより円滑に行うことができる。
【0033】
また、本実施の形態では、カプラ2の球形ヘッド20を収容する球面ソケット33を、一対の分割アーム3それぞれの互いに対向する側面30の両端部31において、端に行くほど厚さTが薄くなる方向へ傾斜する傾斜面32に設けている。このため、カプラ2のスタッド21の可動範囲を広くすることができ、これにより、アンテナの取付位置・角度の調整範囲を広くすることができる。
【0034】
また、本実施の形態では、一対の分割アーム3それぞれの両端部31の幅Wを端に行くほど狭くしているので、カプラ2のスタッド21の可動範囲をさらに広くすることができ、これにより、アンテナの取付位置・角度の調整範囲をさらに広くすることができる。
【0035】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0036】
例えば、上記の実施の形態では、球面ソケット33と摺接する球面状の摺動凸面40および球形ヘッド20と摺接する球面状の摺動凹面41の両方を有する球面シート4を用いた場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。球面シート4は、摺動凸面40および摺動凹面41の少なくとも一方を有するものであればよい。
【0037】
図4(A)および
図4(B)は、球面シート4の変形例である球面シート4Aの正面図および側面図であり、
図4(C)は、
図4(A)に示す球面シート4AのB−B断面図であり、
図4(D)は、
図4(C)に示す球面シート4AのB部拡大図である。ここで、
図3に示す球面シート4と同じ機能を有するものには同じ符号を付している。
【0038】
図示するように、この球面シート4Aは、球形ヘッド20と略同じ球径を有し、球形ヘッド20と摺接する球面状の摺動凹面41と、球面ソケット33と略同じ球径を有し、摺動凹面41よりも高い摩擦力で球面ソケット33に接触する球面状の摩擦凸面44と、を有する。
【0039】
球面シート4Aは、エキスパンドメタル等の厚さ方向Dに起伏して厚さ方向Dに伸縮可能な金属メッシュ42を基材とし、この基材を、金属メッシュ42の形成材料よりも低摩擦係数の樹脂層43で充填、被覆した複合材料により形成され、摺動凹面41では、金属メッシュ42が樹脂層43で完全に被覆されている一方、摩擦凸面44では、金属メッシュ42の一部が樹脂層43から露出している。金属メッシュ42の一部を樹脂層43から露出させることにより、高摩擦係数の摩擦凸面44を形成することができる。したがって、球面シート4Aを球面ソケット33により確実に装着することができ、これにより、球面シート4Aが球面ソケット33から脱落するのを防止することができる。
【0040】
なお、ここでは、球形ヘッド20と接触する凹面を樹脂層43で完全に被覆することにより球形ヘッド20と摺動させる一方、球面ソケット33と接触する凸面から金属メッシュ42を一部露出させることにより、この凸面を高い摩擦力で球面ソケット33に接触させているが、球面ソケット33と接触する凸面を樹脂層43で完全に被覆することにより球面ソケット33と摺動させ、球形ヘッド20と接触する凹面から金属メッシュ42を一部露出させることにより、この凹面を高い摩擦力で球形ヘッド20に接触させてもよい。
【0041】
また、上記の実施の形態において、球面シート4を球面ソケット33の表面に接着剤等により固定することにより、球面ソケット33の表面に摺動凹面41を形成してもよい。また、球面シート4を球形ヘッド20の表面に接着剤等により固定するか、あるいは球形ヘッド20の表面を球面シート4と同じ摺動部材で被覆することにより、球面シート4の表面に摺動凸面40を形成してもよい。
【0042】
また、上記の実施の形態では、球面シート4として、ゴムより高い弾性率で厚さ方向Dに伸縮可能な樹脂部材、具体的には、厚さ方向Dに起伏して厚さ方向Dに伸縮可能な金属メッシュ42を基材とし、この基材を、金属メッシュ42の形成材料よりも低摩擦係数の樹脂層43で充填、被覆した複合材料を用いている。しかし、本発明はこれに限定されない。球面シート4は、ゴムより高い弾性率で変形可能な摺動部材で形成されたものであればよい。このような摺動部材として、例えば、裏金上に形成された金属粉末焼結層を金属粉末焼結層の形成材料よりも低摩擦係数の樹脂層で充填、被覆した複合材料を用いてもよい。このような金属粉末焼結層としては、例えば青銅焼結層が挙げられる。また、樹脂層は、例えば四ふっ化エチレン樹脂を主成分として、これにフェノール樹脂および/またはポリイミド樹脂を含有してなる潤滑性組成物で形成される。または、裏金に、例えば四ふっ化エチレン樹脂を主成分として、これにフェノール樹脂および/またはポリイミド樹脂を含有してなる潤滑性組成物で形成された樹脂フィルムあるいは樹脂シートを貼り付けた複合材料を用いてもよい。ここで、樹脂層、樹脂フィルムおよび樹脂シートを形成する潤滑性組成物は、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、四ふっ化エチレン樹脂等の合成樹脂1種または2種以上からなる樹脂組成物、または、上記合成樹脂1種または2種以上を主成分とし、これに、潤滑油、ワックス、黒鉛、二硫化モリブデン、リン酸塩、四ふっ化エチレン樹脂(主成分に四ふっ化エチレン樹脂を含む場合を除く)等の潤滑油剤1種または2種以上を含有する樹脂組成物であってもよい。
【0043】
また、上記の実施の形態では、アンテナの取付部材および設置ベースへの固定部材としてプレート5を用いているが、本発明はこれに限定されない。アンテナの取付部材は、アンテナを取り付けることができるものであればどのようなものでもよい。同様に、設置ベースの固定部材は、設置ベースに固定できるものであればどのようなものでもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:アンテナの取付構造、 2:カプラ、 3:分割アーム、 4、4A:球面シート、 5:プレート、 6:クランプ機構、 20:球形ヘッド、 21:スタッド、 22:スタッド21の先端部、 23:スタッド21の雄ネジ部、 30、34:分割アーム3の側面、 31:分割アーム3の先端部、 32:分割アーム3の傾斜面、 33:球面ソケット、 35:分割アーム3の貫通孔、 40:摺動凸面、 41:摺動凹面、 42:金属メッシュ、 43:樹脂層、 44:摩擦凸面、 50、51:プレート5のネジ穴、 60:ボルト、 61:ナット