【解決手段】事故研修補助装置1は、模擬配電線13、区間開閉器14A〜14D、開閉器子局15A〜15D、変電所を模した模擬変電所ボックス11、模擬配電線13への模擬電圧の供給を遮断する補助リレー112、補助リレー112と区間開閉器14A〜14Dの各開閉動作を制御する模擬変電所子局12、及び事故の発生状態を示す事故発生信号を発生する事故模擬操作ボックス16A〜16Cを備え、模擬変電所子局12は事故模擬操作ボックス16A〜16Cのいずれかから事故発生信号が入力されると、補助リレー112を開放した後、時限順送方式により補助リレー112と区間開閉器14A〜14Dを順次再投入して模擬的に事故区間の検出動作を行う。事故研修補助装置1により作業員は事故対応を体験的に学習することができる。
前記操作部は、事故発生状態を設定する操作ボタンと、前記操作ボタンで設定された事故発生状態を保持するキープリレーと、前記操作ボタンの設定状態を示すランプとを有するリレーボックスで構成される、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の事故研修補助装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配電系統の保守、管理をする作業者の教育においては、作業者が配電線で「地絡」、「短絡」などの事故が発生した場合の対応の仕方を体験的に訓練できることが有用である。しかしながら、配電系統で実際に「地絡」、「短絡」などの事故を発生させて作業者の訓練をすることは、需要家への電力供給を阻害することになるので、採用することは困難である。
【0005】
また、実際の配電系統と同じ構成で模擬的に「地絡」、「短絡」などの事故を発生させる研修施設を設ける方法は、研修施設の規模が大規模になるとともに過大な建設費用を要するので、実現することは困難である。
【0006】
また、非特許文献1に示されている実際の配電線自動運転システムに模擬訓練を行うためのソフトウェアを搭載する方法は、シミュレーションの画面上で事故の復旧作業を模擬的に訓練するだけであるので、例えば、時限順送方式による事故区間の検出動作や健全区間への電力供給動作などを作業者が体験的に学習することは困難である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、配電線で発生する事故に対応する体験型の研修を低コストで行うことができる事故研修補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る事故研修補助装置は、配電線を模した模擬配電線と、模擬配電線を複数の区間に分割する複数の区分開閉器と、複数の区分開閉器の開閉動作をそれぞれ制御する複数の開閉器子局と、模擬配電線に模擬電圧を供給する、変電所を模した模擬変電所と、模擬配電線への模擬電圧の供給を遮断する遮断器と、遮断器の開閉動作と、複数の開閉器子局を介した複数の区分開閉器の開閉動作とを制御する模擬変電所子局と、配電線の区間毎に事故の発生状態を示す事故発生信号を発生する複数の操作部と、を備え、模擬変電所子局は、複数の操作部のいずれかから事故発生信号が入力されると、遮断器を開放した後、時限順送方式により遮断器と複数の区分開閉器を順次再投入して模擬的に事故発生信号を発生させた事故区間の検出動作を行う、事故研修補助装置である。
【0009】
上記の事故研修補助装置によれば、模擬変電所と、複数の区間開閉器により複数の区分に分割された模擬配電線とを含む模擬配電系統を用いて、模擬配電線に事故が発生した場合の時限順送方式による事故区間の検出動作と健全区間への送電復旧動作とを作業員に体験的に学習させることができる。これにより、作業員への配電系統の事故発生に対する対応の教育を低コストで効果的に行うことができる。
【0010】
上記の事故研修補助装置において、模擬配電線に供給する模擬電圧は、商用電圧であり、遮断器、複数の区分開閉器及び複数の開閉器子局は、配電線に実際に使用される機器であるとよい。
【0011】
上記の事故研修補助装置によれば、模擬電圧に商用電圧を用いているので、室内に簡易に事故研修補助装置を構築することができる。また、遮断器、区分開閉器及び開閉器子局に実際に使用されている機器を用いているので、作業員は、実際の機器の動作を学習することができる。
【0012】
また、上記の事故研修補助装置において、模擬変電所子局は、複数の開閉器子局との通信により複数の区分開閉器の状態に関する情報を取得するとよい。
【0013】
上記の事故研修補助装置によれば、作業員は、模擬変電所子局が実際に区分開閉器からの区間開閉器の状態に関する情報を収集する様子を学習することができる。
【0014】
また、上記の事故研修補助装置において、操作部は、事故発生状態を設定する操作ボタンと、操作ボタンで設定された事故発生状態を保持するキープリレーと、操作ボタンの設定状態を示すランプとを有するリレーボックスで構成するとよい。
【0015】
上記の事故研修補助装置によれば、模擬配電線の各区間で発生する事故状態を示す情報を簡単な構成で生成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る事故研修補助装置によれば、模擬変電所と、複数の区間開閉器により複数の区分に分割された模擬配電線とを含む模擬配電系統を用いて、模擬配電線に事故が発生した場合の時限順送方式による事故区間の検出動作と健全区間への送電復旧動作とを作業員に体験に学習させることができる。これにより、作業員への配電系統の事故発生に対する対応の教育を低コストで効果的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る事故研修補助装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、作業者が配電線で「地絡」、「短絡」などの事故が発生した場合の対応方法を体験的に訓練することができる事故研修補助装置を例に説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る事故研修補助装置の回路構成の一例を示す図である。
図1に示す事故研修補助装置1は、
図2に示す配電系統の構成例を模した模擬配電系統に対する事故研修補助装置である。
【0020】
図2に示す配電系統は、配電系統DS1と配電系統DS2が接続された系統例である。配電系統DS1は、電力源に相当する変電所Xと変電所Xから需要家に電力を供給するための配電線PL1とを有し、配電系統DS2は、電力源に相当する変電所Yと変電所Yから需要家に電力を供給するための配電線PL2とを有している。配電系統DS1の配電線PL1は、4個の区間開閉器LSB1〜LSB4によって第1区から第4区の4つの区間に分割されている。第1区は変電所Xから区間開閉器LSB1の区間、第2区は区間開閉器LSB1から区間開閉器LSB2の区間、第3区は区間開閉器LSB2から区間開閉器LSB3の区間、第4区は区間開閉器LSB3から区間開閉器LSB4の区間である。
【0021】
変電所Xは、配電線PL1に供給する電圧(高圧)を生成する変圧器T1と、配電線PL1への高圧の供給を遮断する遮断器B1を備える。また、変電所Yは、配電線PL2に供給する電圧(高圧)を生成する変圧器T2と、配電線PL2への高圧の供給を遮断する遮断器B2を備える。変電所Xは、配電線PL1に地絡、短絡などの事故が発生すると、遮断器B1により配電線PL1への高圧の供給を遮断し、変電所Xから配電線PL1を切り離す。変電所Yも同様に、配電線PL2に地絡、短絡などの事故が発生すると、遮断器B2により配電線PL2への高圧の供給を遮断し、変電所Yから配電線PL2を切り離す。
【0022】
また、変電所Xは、事故発生時に遮断器B1で配電線PL1を切り離した後、時限順送方式により遮断器B1と3個の区間開閉器LSB1〜LSB3を順番に再閉路して事故が発生している区間を検出する機能(事故区間検出機能)と、事故区間以外の区間に変電所Xから高圧の供給を再開する機能(送電復旧機能)を有する。なお、配電線PL1の先端の区間開閉器LSB4には配電線PL2が接続されており、配電線PL1の事故区間が区間開閉器LSB3よりも変電所X側にある場合は、配電線PL1の事故区間よりも外側の健全区間には配電系統DS1に隣接する配電系統DS2から高圧の供給の再開(送電復旧)が行われる。
【0023】
図1に示す事故研修補助装置1は、1つの模擬変電所ボックス11、1つの模擬変電所子局12、2本の模擬配電線13A,13B、4個の区間開閉器14A,14B,14C,14D、4個の開閉器子局15A,15B,15C,15D、3個の事故模擬操作ボックス16A,16B,16C、4個の遮断器17A,17B,17C,17Dを備える。
【0024】
以下の説明では、2本の模擬配電線13A,13Bを区別せず、「模擬配電線13」と称して模擬配電線に関する説明をする場合がある。また、4個の区間開閉器14A〜14D、4個の開閉器子局15A〜15D、3個の事故模擬操作ボックス16A〜16C、4個の遮断器17A〜17Dについても、各構成要素を区別せず、それぞれ「区間開閉器14」、「開閉器子局15」、「事故模擬操作ボックス16」、「遮断器17」と称して区間開閉器、開閉器子局、事故模擬操作ボックス、遮断器の構成要素に関する説明をする場合がある。
【0025】
模擬変電所ボックス11は、主として
図2に示す配電系統DS1の変電所Xに対応する構成要素である。模擬変電所ボックス11は、配電系統DS2の変電所Yに対応する動作も模擬的に行う。模擬変電所ボックス11は、配電系統DS1における配電線PL1への高圧の供給機能と、事故発生時に配電線PL1への高圧供給を遮断する遮断機能と、事故発生後の送電復旧時に変電所Xから模擬配電線13Aの健全区間への高圧供給を再開する機能とを模擬的に行う。模擬変電所ボックス11は、実際に配電線PL1と配電線PL2に供給される高圧(例えば、6600[V])の模擬電圧として、商用電圧(例えば、100[V])を模擬配電線13に供給する。模擬変電所ボックス11は、電源111、補助リレー112、インターフェース(IF)113を含む。
【0026】
電源111は、補助リレー112及びIF113の駆動電圧(直流電圧)を生成する。電源111は、商用電圧から所定の電圧値(例えば、24[V])を有する直流電圧を生成し、補助リレー112とIF113に供給する。補助リレー112は、
図2に示す変電所X内の遮断器B1の機能を果たすものであり、本発明に係る遮断器に対応するものである。補助リレー112は、模擬配電線13Aへの模擬電圧の供給と事故発生時の模擬配電線13への模擬電圧の供給の遮断とを行う。また、補助リレー112は、事故発生後の送電復旧時における変電所Xから健全区間への電圧供給を再開する動作も行う。なお、本実施の形態では、模擬配電線13Aに供給する模擬電圧を商用電圧としているが、電圧値は商用電圧に限定されるものではない。模擬配電線13Aに供給する模擬電圧は、実際に配電線で伝送される高圧に対して低圧であればよい。
【0027】
補助リレー112は、例えば、模擬電圧の入力に対して模擬配電線13Aが接続される第1の接点と模擬配電線13Bが接続される第2の接点とを切り換えて接続するスイッチ機能を有する。補助リレー112が模擬電圧の入力と第1の接点を接続している状態(模擬配電線13Aへの模擬送電状態)では、模擬電圧が模擬配電線13Aの基端(模擬変電所ボックス11に接続される端部)に供給され、模擬配電線13Bの基端は開放端となる。また、補助リレー112が模擬電圧の入力と第2の接点を接続している状態(模擬配電線13Bへの模擬送電状態)では、模擬電圧が模擬配電線13Bの基端に供給され、模擬配電線13Aの基端は開放端となる。なお、開閉器14A〜14Dが開いている状態では、第1の接点と第2の接点の両方が閉じた状態になることがある。
【0028】
補助リレー112は、IF113を介して模擬変電所子局12に接続されており、模擬変電所子局12が補助リレー112の模擬電圧の出力先の切換動作を制御する。IF113は、模擬変電所子局12と模擬変電所ボックス11内の補助リレー112を接続するためのIF1131と、模擬変電所子局12と開閉器子局15とを接続するためのモデム1132を有する。模擬変電所子局12と模擬変電所ボックス11との物理的な接続は、例えば、USBケーブルで行われている。従って、IF1131は、模擬変電所子局12から入力される補助リレー112への制御信号と補助リレー112に入力する制御信号との信号形式の変換を行う変換器で構成される。
【0029】
また、モデム1132は、模擬変電所子局12がUSB信号で信号の入出力を行い、開閉器子局15がアナログ信号で信号の入出力を行う構成であると、例えば、USB信号とRS232C規格のシリアル信号との変換を行うUSB−RS232C変換器と、RS232C規格のシリアル信号のレベルを変換するレベル変換器と、RS232C規格のシリアル信号とアナログ信号との変換を行う変換器とで構成することができる。モデム1132は、模擬変電所子局12からの制御信号(デジタル信号)をUSB−RS232C変換器でRS232C規格のシリアル信号に変換した後、レベル変換器でレベルを調整し、変喚器でアナログ信号に変換して4個の開閉器子局15A〜15Dに送信する。モデム1132は、4個の開閉器子局15からの区間開閉器14の状態を示す信号(アナログ信号)を変喚器でRS232C規格のシリアル信号に変換した後、レベル変換器でレベルを調整し、USB−RS232C変換器でUSB信号に変換して模擬変電所子局12に送信する。
【0030】
模擬変電所子局12は、
図2に示す変電所Xに設けられる親局(
図2では省略している)に対応するものである。模擬変電所子局12は、模擬配電線13で地絡、短絡などの事故を模擬的に発生させたときの時限順送方式による事故区間の検出動作を特定し、検出結果を表示する。模擬変電所子局12は、事故模擬操作ボックス16から後述する事故発生信号が入力されたときに、その事故発生信号に基づいて補助リレー112の動作を制御するためのタイマ121を備える。模擬変電所子局12は、例えば、事故模擬操作ボックス16から事故発生信号が入力されると、タイマ121で所定の時間を計時し、タイマ121がタイムアップするまで事故発生信号が継続した場合に、事故発生と判断し、補助リレー112を動作して模擬配電線13Aを遮断する。
【0031】
また、模擬変電所子局12は、事故区間の検出動作において、4個の開閉器子局15A〜15Dと通信して4個の区間開閉器14A〜14Dの状態に関する情報(以下、「開閉器情報」という。)を収集する。開閉器情報とは、区間開閉器14の開閉状態や区間開閉器14に対して上流側の区間(模擬配電線13の基端側にある区間)と下流側の区間(模擬配電線13の先端側にある区間)の電圧の有無に関する情報等である。模擬変電所子局12は、例えば、パーソナルコンピュータによって構成されている。模擬変電所子局12が制御する時限順送方式による事故区間の検出動作や開閉器情報の収集動作については、後述する。
【0032】
模擬配電線13Aは、
図2に示す配電系統DS1の配電線PL1に対応する電線であり、模擬配電線13Bは、
図2に示す配電系統DS2の配電線PL2に対応する電線である。模擬配電線13Aの途中と先端に4個の区間開閉器14A〜14Dが取り付けられ、先端の区間開閉器14Dには模擬配電線13Bの先端部が接続されている。4個の区間開閉器14A〜14Dは、
図2に示す配電線PL1に設けられる4個の区間開閉器LSB1〜LSB4にそれぞれ対応し、配電線PL1に実際に使用されている区間開閉器が用いられている。
【0033】
区間開閉器14は、「開」状態と「閉」状態が開閉器子局15からの制御信号により切り換わる開閉器である。区間開閉器14は、例えば、区間開閉器14に開閉器子局15からの「開」の制御信号が入力されていると、「開」状態を保持し、開閉器子局15からの「閉」の制御信号が入力されていると、「閉」状態を保持する。
【0034】
模擬配電線13Aは、4個の区間開閉器14A〜14Dによって4つの区間に分割さている。模擬変電所ボックス11から区間開閉器14Aの区間を「第1区」、区間開閉器14Aから区間開閉器14Bの区間を「第2区」、区間開閉器14Bから区間開閉器14Cの区間を「第3区」、区間開閉器14Cから区間開閉器14Dの区間を「第4区」とすると、第1区〜第4区は、
図2に示す4個の区間開閉器14A〜14Dによって分割された配電線PL1の第1区、第2区、第3区、第4区にそれぞれ対応している。
【0035】
4個の開閉器子局15A〜15Dは、
図2に示す配電線PL1に4個の区間開閉器LSB1〜LSB4に対応付けて設けられる開閉器子局(
図2では省略している)に対応するものであり、それぞれ4個の区間開閉器14A〜14Dの開閉動作を制御する。開閉器子局15A〜15Dは、制御ケーブルC1〜C4でそれぞれ区間開閉器14A〜14Dに接続されている。4個の開閉器子局15A〜15Dには、配電線PL1に実際に使用されている開閉器子局が用いられている。
【0036】
開閉器子局15は、図示は省略しているが、模擬配電線13Aに接続され、模擬配電線13に供給される模擬電圧を駆動電圧として動作する。開閉器子局15は、区間開閉器14に駆動電圧を供給する電源を有している。区間開閉器14は、例えば、駆動電圧が供給されていない状態では「開」状態となっている。開閉器子局15は、模擬配電線13から模擬電圧が供給されると、区間開閉器14の駆動電圧を生成し、区間開閉器14に供給する。区間開閉器14は、開閉器子局15から駆動電圧が供給されると、「開」状態から「閉」状態に切り換わる。4個の区間開閉器14A〜14Dは、模擬変電所ボックス11から模擬配電線13Aに模擬電圧が供給されると、「開」状態から「閉」状態に切り換わり、第1区から第4区の全ての区間と模擬配電線13Bは模擬電圧が供給されている状態(模擬送電状態)となる。一方、4個の区間開閉器14A〜14Dは、模擬変電所ボックス11で模擬配電線13Aへの模擬電圧の供給が遮断されると、「閉」状態から「開」状態に切り換わり、模擬配電線13Bは、第1区〜第4区の4つの区間に分離される状態(模擬送電遮断状態)となる。
【0037】
また、開閉器子局15A〜15Dは、通信ケーブルC5でそれぞれ模擬変電所子局12と通信可能に接続されており、模擬変電所子局12からの制御信号に基づいて区間開閉器14A〜14Dの開閉動作を制御する。また、開閉器子局15Bと開閉器子局15Cは、模擬変電所子局12からの要求信号に基づいて区間開閉器14Bと区間開閉器14Cの開閉器情報を収集し、模擬変電所子局12に送信する。
【0038】
開閉器子局15Bには、模擬配電線13の第2区が遮断器17Aを介して接続されるとともに、模擬配電線13の第3区が遮断器17Bを介して接続されている。また、開閉器子局15Cには、模擬配電線13の第3区が遮断器17Cを介して接続されるとともに、模擬配電線13の第4区が遮断器17Dを介して接続されている。例えば、開閉器子局15Bは、模擬変電所子局12から開閉器情報の要求があると、模擬配電線13の第2区と第3区に模擬電圧が供給されているか否かを判別し、その判断結果を模擬変電所子局12に送信する。同様に、開閉器子局15Cは、模擬変電所子局12から開閉器情報の要求があると、模擬配電線13の第3区と第4区に模擬電圧が供給されているか否かを判別し、その判別結果を模擬変電所子局12に送信する。
【0039】
事故模擬操作ボックス16は、模擬配電線13で地絡、短絡などの事故が発生している状態を示す事故発生信号を生成し、模擬変電所子局12に入力する装置である。事故模擬操作ボックス16に含まれる3個の事故模擬操作ボックス16A〜16Cは、それぞれ模擬配電線13の第2区、第3区、第4区で事故が発生している状態を示す事故発生信号を生成し、模擬変電所子局12に入力する。
【0040】
事故模擬操作ボックス16は、例えば、作業者が手動で操作する操作ボタンと、操作ボタンの設定状態に応じた信号を生成するキープリレーと、電圧の有無を検出するリレーと、操作ボタンの設定状態を示すランプとを含むリレーボックスで構成される。操作ボタンは、例えば、事故発生ボタンと事故解除ボタンを含む。なお、事故発生ボタンと事故解除ボタンを1個の操作ボタンで構成するようにしてもよい。キープリレーは、事故発生ボタンが操作されると、可動接点をその操作状態(事故発生状態)に対応する接点(常閉接点)に接続し、その接続状態を保持する。また、キープリレーは、事故解除ボタンが操作されると、可動接点をその操作状態(事故解除状態)に対応する接点(常開接点)に接続し、その接続状態を保持する。
【0041】
事故模擬操作ボックス16から模擬変電所子局12にキープリレーの保持している状態に応じた信号と電圧有無の状態に応じた信号と、が入力される。すなわち、事故発生ボタンが操作されると、事故模擬操作ボックス16から模擬変電所子局12に事故発生の状態を示す事故発生信号と電圧有無の状態に応じた信号とが入力され、事故解除ボタンが操作されると、事故模擬操作ボックス16から模擬変電所子局12に事故解除の状態を示す事故解除信号と電圧有無の状態に応じた信号とが入力される。
【0042】
また、事故模擬操作ボックス16では、キープリレーの保持している状態に応じたランプが点灯する。例えば、事故発生ボタンが操作されると、事故模擬操作ボックス16から模擬変電所子局12に事故発生の状態を示す事故発生信号が入力され、赤色のランプが点灯する。また、事故解除ボタンが操作されると、事故模擬操作ボックス16から模擬変電所子局12に事故解除の状態を示す事故解除信号が入力され、緑色のランプが点灯する。
【0043】
3個の事故模擬操作ボックス16A,16B,16Cは、事故研修補助装置1を起動したときの初期状態が事故解除状態(事故未発生状態)に設定されている。従って、事故研修補助装置1の起動時は、3個の事故模擬操作ボックス16A,16B,16Cは、全て緑色のランプが点灯し、作業者は、そのランプの色によって事故研修補助装置1の状態(模擬配電線13Aの全ての区間に模擬電圧が伝送されている健全な状態)を知ることができる。
【0044】
例えば、事故模擬操作ボックス16Cの事故発生ボタンが操作され、模擬配電線13の第4区で事故が発生している状態が設定されると、事故模擬操作ボックス16Cから模擬変電所子局12に事故発生の状態を示す事故発生信号と電圧有り信号とが入力される。模擬変電所子局12は、電圧有り信号により事故発生区間に模擬電圧有りと判断し、タイマ121を起動して所定の時間を計時する。模擬変電所子局12は、タイマ121が所定の時間を計時するまでに事故発生信号が解除されなければ、補助リレー112の第1の接点を開く。これにより、模擬配電線13は停電状態となり、事故模擬操作ボックス16Cから模擬変電所子局12へ模擬電圧無しの信号が入力される。
【0045】
次に、
図3に示すフローチャートを用いて、事故研修補助装置1を用いた事故発生時の時限順送方式による模擬的な事故区間の検出動作について説明する。
【0046】
(ステップS1)模擬変電所子局12は、事故模擬操作ボックス16から事故発生信号と電圧有り信号が入力されたか否かを判断している。電気工事作業員の研修において、例えば、作業員が事故模擬操作ボックス16内の事故模擬操作ボックス16Cの事故発生ボタンを操作すると、その事故模擬操作ボックス16Cから模擬変電所子局12に事故発生信号と電圧有り信号が入力される。模擬変電所子局12は、事故模擬操作ボックス16Cから事故発生信号と電圧有り信号が入力されると、タイマ121を起動して所定の時間を計時する。模擬変電所子局12は、タイマ121がタイムアップするまで事故発生信号及び電圧有り信号の入力状態が継続すると、ステップS2に進む。
【0047】
(ステップS2)模擬変電所子局12は、補助リレー112に切換信号を出力し、補助リレー112の第1の接点(模擬配電線13A側)を開放する。この補助リレー112の開放により模擬配電線13Aへの模擬電圧の供給が遮断され、模擬配電線13Aの全区間が無電圧状態になる。この補助リレー112の開放処理は、実際の変電所における遮断器(CB:Circuit Breaker)の遮断動作(配電線への高圧供給の遮断)に相当する処理である。
【0048】
(ステップS3)模擬配電線13Aへの模擬電圧の供給が遮断されることにより、4個の区間開閉器14A〜14Dが全て「閉」状態から「開」状態に切り換わる。これにより、模擬配電線13Aが第1区〜第4区の4つの区間に分離される。
【0049】
(ステップS4)模擬変電所子局12は、補助リレー112を開放してから一定の時間(例えば、10秒)が経過したか否かを判別する。この場合も、模擬変電所子局12は、タイマ121を用いて一定時間が経過したか否かを判断する。一定の時間は、実際の変電所における遮断器の再閉路までの時間である。模擬変電所子局12は、タイマ121が一定の時間が計時すると(ステップS4:Y)、ステップS5の処理に進む。なお、一定の時間は、固定されていてもよく、ユーザが変更可能であってもよい。
【0050】
(ステップS5)模擬変電所子局12は、補助リレー112に投入信号を出力し、補助リレー112の第1の接点(模擬配電線13A側)を閉じる(投入する)。この補助リレー112の投入により模擬配電線13Aへの模擬電圧の供給が再開される。この補助リレー112の切換え処理は、実際の変電所における遮断器の再閉路動作(事故区間探索のための配電線への送電開始)に相当する処理である。
【0051】
(ステップS6)開閉器子局15は、補助リレー112の第1の接点に近いものから順に、電源復帰後、例えば7秒後に、対応する区間開閉器14に対し駆動電圧を供給し、区間開閉器14を「開」状態から「閉」状態に切り換える。例えば、事故模擬操作ボックス16Cの事故発生ボタンが操作されている場合は、第4区が事故区間となるので、区間開閉器14A、区間開閉器14B及び区間開閉器14Cを「閉」状態に切り換える。この処理は、模擬配電線13Aを1区間単位で順番に模擬変電所ボックス11に接続して事故区間を探索する動作に相当するものである。
【0052】
実際の配電線における時限順送では、事故発生直後に変電所の遮断器が配電線を切り離した後、一定時間後に遮断器に最も近い区間開閉器から順番に一定の時間間隔で区間開閉器の再投入を行って事故区間の探索が行われる。区間開閉器の下流側の区間が事故区間の場合、その区間開閉器の再投入を行うと、直ちに遮断器が遮断動作を行うので、事故区間に接続されている区間開閉器を特定することにより事故区間が検出される。
【0053】
区間開閉器14が順次「開」状態から「閉」状態に切り換えられ、区間開閉器14Cが「開」状態から「閉」状態に切り換えられたとき、故模擬操作ボックス16Cから模擬変電所子局12に事故発生信号と電圧有り信号が再度入力される。模擬変電所子局12は、事故模擬操作ボックス16Cから事故発生信号と電圧有り信号が入力された状態が一定時間経過すると、補助リレー112に切換信号を出力し、補助リレー112の第1の接点(模擬配電線13A側)を開放する。
【0054】
(ステップS7)模擬変電所子局12は、補助リレー112に切換信号を出力し、補助リレー112の第1の接点(模擬配電線13A側)を開放する。この補助リレー112の開放により模擬配電線13Aへの模擬電圧の供給が再度遮断され、模擬配電線13Aの全区間が無電圧状態になる。この補助リレー112の開放処理は、実際の時限順送処理における事故区間検出時の遮断器の再遮断動作(配電線への送電遮断)に相当する処理である。
【0055】
(ステップS8)開閉器子局15は対応する区間開閉器14の投入直後に再度停電したことを検出し、自分自身の自動投入をロックする。例えば、事故区間が第4区の場合、開閉器子局15Cは区間開閉器14Cの投入直後に再度停電したことを検出し、自分自身の自動投入をロックする。これにより、模擬変電所ボックス11から模擬配電線13Aに供給される模擬電圧は第3区まで供給され、第4区以降には供給されない。
【0056】
上記の処理手順では、模擬的に時限順送方式により模擬配電線13Aの事故区間を検出し、その事故区間を切り離した後に模擬配電線13Aの健全区間への模擬電圧の供給を復旧する動作を説明した。実際の配電線では事故区間の下流側に健全区間がある場合、隣接する配電系統から健全区間に送電して当該健全区間への送電の復旧処理が行われる。
【0057】
例えば、
図2に示す配電系統DS1において、事故区間が第3区の場合、配電線PL1の健全区間は、第1区、第2区、第4区となるから、第4区への送電の復旧は、隣接する配電系統DS2によって行われる。この第4区への送電の復旧を事故研修補助装置1で模擬する場合、例えば、ステップS8の次に、以下の処理を行うステップS9を追加するとよい(
図3の下線で示すステップS9参照)。
【0058】
ステップS9においては、模擬変電所子局12は、補助リレー112に切換信号を出力し、補助リレー112の第1の接点(模擬配電線13A側)と第2の接点(模擬配電線13B側)の両接点を閉じる。この補助リレー112の両接点の閉成により、模擬変電所ボックス11から出力される模擬電圧は模擬配電線13Bにも供給されるようになる。第3区が事故区間で第4区が健全区間の場合、第3区を挟む区間開閉器14Bは「開」状態にロックされ、第3区は模擬配電線13Aから切り離されているので、開閉器子局15Dは模擬配電線13Bからの給電で動作を開始し、模擬変電所子局12からの投入指令で開閉器14Dを閉じることで第4区を充電状態とすることができる。
【0059】
上記の実施の形態では、模擬配電線13の分割数を4個としているが、その分割数は任意であり、4個以上であってもよい。従って、区間開閉器14と開閉器子局15の個数は、任意に設定することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態に係る事故研修補助装置1によれば、変電所を模した模擬変電所ボックス11と複数の区間開閉器14A〜14Dにより複数の区分に分割された模擬配電線13Aとを含む模擬配電系統を有し、この模擬配電系統を用いて模擬配電線13Aに事故が発生した場合の時限順送方式による事故区間の検出動作と健全区間への送電復旧動作を模擬的に行うので、作業員は配電線で事故が発生した場合の対応を体験的に学習することができる。
【0061】
特に、模擬配電線13A、区間開閉器14及び開閉器子局15を実際に使用されている電線や機器を用いているので、作業員は、これらの機器の動作を効率良く学習することができる。また、模擬配電線13Aに供給する電圧に模擬電圧を用いているので、作業者が配電線で事故が発生した場合の対応を学習する際の安全性が向上する。
【0062】
また、事故研修補助装置1は、実際の配電系統を模した模擬配電系統を有しているので、配電系統の作業員の教育を補助するための事故研修補助装置1を低コストで実現することかできる。