【解決手段】電圧検出部が検出した検出電圧が目標の電圧範囲から逸脱したか否かを判別する判別部151と、検出電圧が電圧範囲から逸脱すると、現在のタップ以外の1又は2以上のタップについて、検出電圧と実際に各タップに切り換えたときの検出電圧からの電圧変化量とを用いて、タップ切換後に想定される想定切換後電圧を算出する想定切換後電圧算出部152と、想定切換後電圧が算出した各タップの想定切換後電圧を用いて切換先タップを決定し、タップ切換部の現在設定されているタップを切換先タップに切り換えるタップ切換制御部154とを備える電圧調整装置により、最適なタップに迅速に切り換えることができる。
複数のタップを有し、線路を伝送する電圧を用いて各タップに対応した前記電圧を調整するための複数の調整用電圧を生成する調整用電圧生成部と、前記複数のタップを切り換えることにより、前記調整用電圧生成部から前記複数の調整用電圧のいずれか1つを出力させるタップ切換部と、前記調整用電圧生成部から出力される調整電圧を用いて前記電圧を調整する電圧調整部と、を備えた電圧調整装置であって、
前記電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した検出電圧が目標の電圧範囲から逸脱したか否かを判別する判別部と、
前記検出電圧が前記目標の電圧範囲から逸脱すると、現在のタップ以外のタップについて、前記検出電圧と実際に各タップに切り換えたときの前記検出電圧からの電圧変化量とを用いて、タップ切換後に想定される想定切換後電圧を算出する想定切換後電圧算出部と、
前記想定切換後電圧算出部が算出した各タップの想定切換後電圧を用いて切換先タップを決定し、前記タップ切換部の現在設定されているタップを前記切換先タップに切り換えるタップ切換制御部と、
を備える、電圧調整装置。
前記電圧変化量は、前記線路の前記電圧を供給する変電所側の電圧は変化しないと仮定して各タップの変圧比を元に算出される電圧変化量に係数を乗じたものである、請求項1に記載の電圧調整装置。
タップ切換えを行う毎に、タップの切換前後で実際に変化した電圧変化量を算出し、その電圧変化量と前記タップの変圧比を元に算出される電圧変化量とを用いて実際の係数を算出する係数算出部と、
前記係数算出部が算出した複数の係数の移動平均を演算して係数の更新値を算出する係数更新値算出部と、をさらに備え、
前記想定切換後電圧算出部は、前記係数更新算出部が算出した係数の更新値を用いて、前記電圧変化量を算出する、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の電圧調整装置。
前記タップ切換制御部は、前記目標の電圧範囲内に含まれる目標電圧に最も近い想定切換後電圧に対応するタップを切換先タップに決定する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電圧調整装置。
前記タップ切換制御部は、現在設定されているタップから最も離れた切換限界のタップに対応する想定切換後電圧が前記目標の電圧範囲から逸脱する場合、前記切換限界のタップを切換先タップに決定する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電圧調整装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る電圧調整装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、配電系統の高圧配電線上に配設され、高圧配電線の電圧を調整する間接切換方式の電圧調整装置の例について説明する。なお、実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る電圧調整装置の回路構成の一例を示す図である。
【0033】
図1に示す電圧調整装置1は、例えば、6600[V]の高圧で配電用変電所から各需要家の近くまで三相交流電圧を伝送する高圧配電線に設けられ、高圧配電線の線間電圧を目標の電圧範囲に自動的に調整する自動電圧調整装置である。
図1では、高圧配電線の配電用変電所側を大文字のU,V,Wで示し、高圧配電線の需要家側を小文字のu,v,wで示している。
【0034】
図1では、高圧配電線の配電用変電所側U,V,Wから需要家側u,v,wに配電用変電所からの高圧が伝送されるものとする。通常、高圧配電線を含む配電系統は開閉器を介して他の配電系統と接続されており、配電系統の切換えによってu,v,w側が配電用変電所側となり、U,V,W側が需要家側となる場合がある。
図1の配電用変電所側U,V,Wから需要家側u,v,wへの高圧の伝送を順方向の伝送(以下、「順送」という。)とし、u,v,w側が配電用変電所側となり、U,V,W側が需要家側となっている伝送状態を「逆送」という。以下の説明では、順送の場合を例に電圧調整装置1の電圧調整動作を説明する。
【0035】
電圧調整装置1は、直列変圧器11、調整変圧器12、タップ切換器13、電圧検出器14及び制御部15を備える。調整変圧器12とタップ切換器13は、それぞれ本発明に係る調整用電圧生成部とタップ切換部に対応している。また、電圧検出器14及び制御部15は、それぞれ本発明に係る検圧検出部と電圧調整部に対応している。
【0036】
直列変圧器11は、3個の変圧器11u,11v,11wを備え、各変圧器11u,11v,11wは、二次巻線112u,112v,112wがU,V,Wの各相の配電線路にそれぞれ直列に接続されている。また、3個の変圧器11u,11v,11wの一次巻線111u,111v,111wは星形に接続されており、一次巻線111uの先端側(星形結線の接続点nに接続されていない側。以下、同じ。)の端部は、タップ切換器13の出力端c2に接続され、一次巻線111vの先端側の端部は、タップ切換器13の出力端dに接続され、一次巻線111wの先端側の端部は、タップ切換器13の出力端c1に接続されている。なお、出力端dは、接地されているので、一次巻線111vの先端側の端部は、接地されている。
【0037】
変圧器11uは、タップ切換器13によって一次巻線111uに印加される電圧v
Lu(低圧)を電圧v
Hu(高圧)に変圧してU相の配電線路の電圧v
uに印加することにより、電圧v
uを調整する。同様に、変圧器11vは、タップ切換器13によって一次巻線111vに印加される電圧v
Lv(低圧)を電圧v
Hv(高圧)に変圧してV相の配電線路の電圧v
vに印加することにより、電圧v
vを調整する。また、変圧器11wは、タップ切換器13によって一次巻線111wに印加される電圧v
Lw(低圧)を電圧v
Hw(高圧)に変圧してW相の配電線路の電圧v
wに印加することにより、電圧v
wを調整する。
【0038】
調整変圧器12は、2個の変圧器12vw,12uvを備え、各変圧器12vw,12uvは、それぞれ3種類の調整用電圧(低圧)を生成する。変圧器12vwの一次巻線121vwは、V相とW相の配電線路の線間に接続され、変圧器12uvの一次巻線121uvは、U相とV相の配電線路の線間に接続されている。変圧器12vwの二次巻線122vwの両端のタップは、それぞれタップ切換器13の入力端a1と入力端a3に接続され、二次巻線122vwの中間位置(巻線中央よりも入力端a1に接続されたタップ側に偏っている位置)に設けられたタップは、タップ切換器13の入力端a2に接続されている。変圧器12uvの二次巻線122uvの両端のタップは、それぞれタップ切換器13の入力端b1と入力端b3に接続され、二次巻線122uvの中間位置(巻線中央よりも入力端b1に接続されたタップ側に偏っている位置)に設けられたタップは、タップ切換器13の入力端b2に接続されている。
【0039】
タップ切換器13は、直列変圧器11の各変圧器11u,11v,11wの一次巻線111u,111v,111wに印加する調整用電圧v
Lu,v
Lv,v
Lwを切り換える。タップ切換器13は、タップ切換回路131、スイッチ回路132、限流回路133を備える。
【0040】
タップ切換回路131は、出力端c1,dと入力端a1,a2,a3(変圧器12vwの二次巻線122vwのタップ)との間の接続を切り換える第1のタップ切換回路1311と、出力端c2,dと入力端b1,b2,b3(変圧器12uvの二次巻線122uvのタップ)との間の接続を切り換える第2のタップ切換回路1312を備える。第1,第2のタップ切換回路1311,1312は、6個のスイッチング素子を用いたブリッジ回路で構成されている。ブリッジ回路は、2個のスイッチング素子を直接に接続した直列回路を3組、並列に接続して両端の接続点を2個の入出力端とし、各直列回路の接続点を3個の入出力端とした回路である。スイッチング素子には、例えば、双方向性サイリスタ(トライアック:TRIAC)が用いられている。
【0041】
図1に示す第1のタップ切換回路1311は、サイリスタTh1(1)とサイリスタThA(1)の直列回路、サイリスタTh2(1)とサイリスタThB(1)の直列回路、サイリスタTh3(1)とサイリスタThC(1)の直列回路を並列に接続し、サイリスタTh1(1),Th2(1),Th3(1)の接続点が出力端c1に接続され、サイリスタThA(1),ThB(1),ThC(1)の接続点が出力端dに接続されている。また、サイリスタTh1(1)とサイリスタThA(1)の接続点が入力端a3に接続され、サイリスタTh2(1)とサイリスタThB(1)の接続点が入力端a2に接続され、サイリスタTh3(1)とサイリスタThC(1)の接続点が入力端a1に接続されている。
【0042】
なお、6個のサイリスタTh1(1)〜Th3(1),ThA(1)〜ThC(1)の符号の「(1)」は、第1のタップ切換回路1311のスイッチング素子であることを示している。
【0043】
制御部15は、第1のタップ切換回路1311に対して、6個のサイリスタTh1(1)〜Th3(1),ThA(1)〜ThC(1)のオン/オフ動作を制御して出力端c1,dと入力端a1,a2,a3(変圧器12vwの二次巻線122vwのタップ)との間の接続を、
図2に示すように切り換える。
【0044】
図2は、制御部15が第1のタップ切換回路1311の6個のサイリスタTh1(1)〜Th3(1),ThA(1)〜ThC(1)のオン/オフを制御する内容と、タップ切換回路13と変圧器12vwのタップとの接続関係を示す図である。
【0045】
図2において、「オン/オフの組合せ」の欄の「S1C」は、番号「1」のサイリスタTh1と符号「C」のサイリスタThCだけをオンにする組合せを示している。「S1B」、「S2C」、「S1A」、「S3B」、「S2A」、「S3A」の組合せについても同様である。また、「オン/オフの組合せ」の欄の「○」は「オン」にすることを示し、「×」は「オフ」にすることを示している。「S1A」の組合せは、調整変圧器12が第1のタップ切換回路1311から切り離される組合せであるので、直列変圧器11には調整用電圧は出力されない。
【0046】
「接続関係」の欄は、タップ切換回路13の出力端c1,dに接続される入力端a1〜a3の関係を示している。例えば、「a3−a1」は、出力端c1に入力端a3が接続され、出力端dに入力端a1が接続される関係であることを示している。入力端a3には変圧器12vwの二次巻線122vwの下端側のタップが接続され、入力端a1には変圧器12vwの二次巻線122vwの上端側のタップが接続されているので、「a3−a1」の接続関係は、出力端c1に二次巻線122vwの下端側のタップを接続し、出力端dに二次巻線122vwの上端側のタップを接続する関係であることを示している。
【0047】
一方、「a1−a3」は、出力端c1に入力端a1が接続され、出力端dに入力端a3が接続される関係であることを示している。すなわち、「a1−a3」の接続関係は、「a3−a1」の接続関係に対して出力端c1,dと入力端a1,a3との接続関係が逆になることを示している。従って、「a1−a3」の接続関係は、出力端c1に二次巻線122vwの上端側のタップを接続し、出力端dに二次巻線122vwの下端側のタップを接続する関係であることを示している。「a3−a2」、「a2−a3」と、「a2−a1」、「a1−a2」の接続関係についても同様である。
【0048】
図1において、例えば、変圧器12vwの二次巻線122vwの下端側が正極、二次巻線122vwの上端側が負極となる極性を「正極性」とすると、「a3−a1」、「a3−a2」、「a2−a1」の接続関係では、タップ切換器13から出力端dに対して出力端c1が正極性となる調整用電圧が出力され、「a1−a2」、「a2−a3」、「a1−a3」の接続関係では、タップ切換器13から出力端dに対して出力端c1が負極性となる調整用電圧が出力される。従って、本実施の形態では、タップ切換器13の第1のタップ切換回路1311から7種類の調整用の電圧(調整用電圧を出力しない場合を含む。)が選択的に出力できるようになっている。
【0049】
「タップ番号」の欄は、電圧調整装置1を、例えば、
図3に示すタップ付き変圧器と見なした場合の第1のタップ切換回路1311の接続関係とタップ付き変圧器のタップ位置との関係を示したものである。
【0050】
図3に示すタップ付き変圧器Tは、二次巻線m2より巻数の多い一次巻線m1を有し、一次巻線m1に7個のタップが設けられた変圧器である。タップ4は、一次巻線m1の巻数n1が二次巻線m2の巻数n2と同じになる位置に設けられ、一次電圧v1と二次電圧v2の比である変圧比η(=v1/v2)が「1」となる位置である。タップ1〜3は、変圧比ηが「1」よりも大きくなる位置(降圧位置)に設けられ、タップ3、タップ2、タップ1の順に変圧比が大きくなっている。一方、タップ5〜タップ7は、変圧比ηが「1」よりも小さくなる位置(昇圧位置)に設けられ、タップ5、タップ6、タップ7の順に変圧比が小さくなっている。
【0051】
「a3−a3」の接続関係は、タップ切換器13から直列変圧器11に調整用電圧を供給しない(電圧調整をしない)ので、変圧比ηが「1」となるタップ4に対応している。一方、「a3−a1」、「a3−a2」、「a2−a1」の接続関係は、直列変圧器11に三相の配電線路の線間電圧v
uv,v
vw,v
wuを減少させる方向に調整用電圧を供給する接続関係であり、「a2−a1」、「a3−a2」、「a3−a1」の順に線間電圧v
uv,v
vw,v
wuを減少させる電圧量が増大する関係となっている。このため、「a3−a1」、「a3−a2」、「a2−a1」の各接続関係にタップ1、タップ2、タップ3が対応している。また、「a1−a2」、「a2−a3」、「a1−a3」の接続関係は、直列変圧器11に三相の配電線路の線間電圧v
uv,v
vw,v
wuを増加させる方向に調整用電圧を供給する接続関係であり、「a1−a2」、「a2−a3」、「a1−a3」の順に線間電圧v
uv,v
vw,v
wuを増加させる電圧量が増大する関係となっている。このため、「a1−a2」、「a2−a3」、「a1−a3」の各接続関係にタップ5、タップ6、タップ7が対応している。
【0052】
「変圧比」の欄は、
図3に示すタップ付き変圧器における各タップの変圧比η
i(iは、タップ番号。i=1,2,…7)である。タップ4の変圧比η
4は「1」であり、タップ1〜3の変圧比η
1〜η
3は、1<η
3<η
2<η
1の関係になっている。また、タップ5〜7の変圧比η
5〜η
7は、0<η
7<η
6<η
5<1の関係になっている。
【0053】
以下の説明では、
図2に示すように、「a3−a1」、「a3−a2」、「a2−a1」、「a3−a3」、「a1−a2」、「a2−a3」、「a1−a3」の各接続関係をそれぞれ「タップ1」、「タップ2」、「タップ3」、「タップ4」、「タップ5」、「タップ6」、「タップ7」と称する。
【0054】
第2のタップ切換回路1312は、サイリスタTh1(2)とサイリスタThA(2)の直列回路、サイリスタTh2(2)とサイリスタThB(2)の直列回路、サイリスタTh3(2)とサイリスタThC(2)の直列回路を並列に接続し、サイリスタTh1(2),Th2(2),Th3(2)の接続点が出力端c2に接続され、サイリスタThA(2),ThB(2),ThC(2)の接続点が出力端dに接続されている。また、サイリスタTh1(2)とサイリスタThA(2)の接続点が入力端b3に接続され、サイリスタTh2(2)とサイリスタThB(2)の接続点が入力端b2に接続され、サイリスタTh3(2)とサイリスタThC(2)の接続点が入力端b1に接続されている。
【0055】
なお、6個のサイリスタTh1(2)〜Th3(2),ThA(2)〜ThC(2)の符号の「(2)」は、第2のタップ切換回路1312のスイッチング素子であることを示している。
【0056】
制御部15は、第2のタップ切換回路1312に対して、6個のサイリスタTh1(2)〜Th3(2),ThA(2)〜ThC(2)のオン/オフ動作を制御して出力端c2,dと入力端b1,b2,b3(変圧器12uvの二次巻線122uvのタップ)との間の接続を切り換える。
図2に対応する第2のタップ切換回路1312の出力端c2,dと入力端b1,b2,b3との間の接続関係を示す図は、
図2において、サイリスタの欄の「Th1(1)〜Th3(1)、ThA(1)〜ThC(1)」を「Th1(2)〜Th3(2)、ThA(2)〜ThC(2)」に変更し、接続関係の欄の「a3−a1、a3−a2、…a2−a3、a1−a3」を「b3−b1、b3−b2、…b2−b3、b1−b3」の変更したものとなる。
【0057】
従って、第2のタップ切換回路1312では、「b3−b1」、「b3−b2」、「b2−b1」、「b3−b3」、「b1−b2」、「b2−b3」、「b1−b3」の接続関係がそれぞれタップ1〜タップ7に対応する。
【0058】
制御部15は、第1のタップ切換回路1311と第2のタップ切換回路1312に同一のタップ番号に対応するサイリスタの制御信号を出力してタップ切換回路131のタップ位置の制御を行う。制御部15は、例えば、電圧調整装置1のタップ位置をタップ1に設定する場合、第1のタップ切換回路1311にサイリスタTh1(1),ThC(1)をオンにし、サイリスタTh2(1),Th3(1),ThA(1),ThB(1)をオフにする制御信号を出力し、第2のタップ切換回路1312にサイリスタTh1(2),ThC(2)をオンにし、サイリスタTh2(2),Th3(2),ThA(2),ThB(2)をオフにする制御信号を出力する。これにより、第1のタップ切換回路1311及び第2のタップ切換回路1312をタップ1の接続位置に制御する。
【0059】
本実施の形態では、第1のタップ切換回路1311及び第2のタップ切換回路1312のタップ切換えを上記のように制御することにより7種類の調整用電圧(調整用の電圧を出力しない場合を含む。)が選択的に出力できるようになっている。
【0060】
スイッチ回路132は、タップ切換器13に過電圧が掛かるときに当該タップ切換器13の出力端を短絡させることにより過電圧からタップ切換器13を保護するための回路である。スイッチ回路132は、例えば、出力端c1と出力端dとの間に接続された電磁接触器MC1と出力端c2と出力端dとの間に接続された電磁接触器MC2とで構成される。制御部15は、2個の電磁接触器MC1,MC2の開閉動作を制御する。制御部15は、電圧調整装置1の運転開始時に2個の電磁接触器MC1,MC2を「開」状態に制御し、運転停止時や外部又は内部の故障保護動作時に2個の電磁接触器MC1,MC2を「閉」状態に制御してタップ切換器13を過電圧から保護する。
【0061】
限流回路133は、タップ切換回路131がタップの切換え動作をしているときに流れる短絡電流を抑制する。限流回路133は、限流抵抗器Rとスイッチング素子ThSを直列に接続した2個の限流回路1331,1332を備える。第1の限流回路1331は、出力端c1と出力端dの間に接続され、第2の限流回路1332は、出力端c2と出力端dの間に接続されている。スイッチング素子ThS,ThSもタップ切換回路131のスイッチング素子と同様に、双方向性サイリスタが用いられる。
【0062】
なお、
図1においては、第1の限流回路1331の限流抵抗器RとサイリスタThSに第1の限流回路1331の素子であることを示す符号「(1)」を付し、第2の限流回路1332の限流抵抗器RとサイリスタThSに第1の限流回路1332の素子であることを示す符号「(2)」を付している。
【0063】
制御部15は、第1,第2の限流回路1331,1332のサイリスタThS(1),ThS(2)のオン/オフを制御する。制御部15は、通常は、サイリスタThS(1),ThS(2)をオフ状態に制御する。制御部15は、第1,第2のタップ切換回路1311,1312の12個のスイッチング素子のオン/オフを制御してタップ切換えを行う際、第1,第2のタップ切換回路1311,1312に瞬時的に短絡状態が発生する期間にサイリスタThS(1),ThS(2)のオンにして限流抵抗R(1),R(2)により短絡電流を抑制する。
【0064】
具体的には、現在のタップNから次のタップMのタップ切換えを行う場合、制御部15は、まず、サイリスタThS(1),ThS(2)をオンにして第1のタップ切換回路1311に限流抵抗R(1)を並列に接続し、第2のタップ切換回路1312に限流抵抗R(2)を並列に接続する。次に、制御部15は、第1,第2のタップ切換回路1311,1312の全てのスイッチング素子をオフに切り換える。その後、制御部15は、第1,第2のタップ切換回路1311,1312の12個のサイリスタのうち、タップMの接続関係を構成する4個のサイリスタ(例えば、タップ3の場合、サイリスタTh2(1),ThC(1),Th2(2),ThC(2))をオンに切り換える。そして、4個のサイリスタが完全にオン状態になると、制御部15は、サイリスタThS(1),ThS(2)をオフにして第1のタップ切換回路1311から限流抵抗R(1)を切り離し、第2のタップ切換回路1312から限流抵抗R(2)を切り離す。
【0065】
電圧検出器14は、三相の配電線路のいずれかに配設され、その配電線路の線間電圧を検出する。電圧検出器14には、例えば、計器用変圧器が用いられている。例えば、
図1に示すように、電圧検出器14が電圧調整装置1よりも二次側(需要家側)のW相の配電線路とU相の配電線路の間に配設されている場合、電圧検出器14は線間電圧v
wuを検出する。電圧検出器14が検出した電圧v
wuは、制御部15に入力される。なお、本実施の形態では、電圧検出器14は、三相のいずれか1つの線間電圧を検出するようにしているが、全ての線間電圧若しくは三相のうちの2つの線間電圧を検出するようにしてもよい。
【0066】
制御部15は、電圧調整装置1の電圧調整動作を制御する。制御部15は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びMPU(Micro−Processing Unit)を有するマイクロコンピュータで実現される。制御部15は、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)で実現してもよい。
【0067】
図4は、制御部15が行うタップ切換え制御に関するブロック図である。制御部15は、判別部151、想定切換後電圧算出部152、係数設定部153、タップ切換制御部154及びモード設定部155を備える。判別部151と想定切換後電圧算出部152は、それぞれ本発明に係る「判別部」と「想定切換後電圧算出部」に対応するブロックである。また、タップ切換制御部154は、本発明に係る「タップ切換制御部」に対応するブロックであり、モード設定部155は、本発明に係る「モード設定部」の機能を果たすブロックである。
【0068】
判別部151は、電圧検出器14が検出した検出電圧v
wuと目標の電圧範囲VRとを用いて、タップ切換えの要否を判別する。タップ切換えとは、上述したタップ1〜タップ7において、現在のタップ位置から他のタップ位置に切り換えることである。例えば、現在のタップ位置が「タップ4」の場合、タップ1〜3又はタップ5〜7のいずれかのタップに切り換えることである。
【0069】
目標の電圧範囲VRとは、三相の配電線路上の電圧調整装置1が配設された位置における線間電圧v
uv,v
vw,v
wuを調整すべき電圧の範囲であり、基準電圧v
0と不感帯Δvの設定により予め規定されている。基準電圧v
0は、目標の電圧範囲VRにおける電圧調整の目標電圧値に相当し、不感帯Δvは電圧調整の許容範囲に相当する。従って、目標の電圧範囲VRは、(v
0−Δv)〜(v
0+Δv)で規定されている。
【0070】
判別部151は、検出電圧v
wuと目標の電圧範囲VR(v
0±Δv)を比較し、
図5に示すように、検出電圧v
wuが目標の電圧範囲VR内であれば(
図5の時刻T
0以前の期間参照)、タップ切換えは不要と判別し、検出電圧v
wuが目標の電圧範囲VR(v
0±Δv)から逸脱すると(
図5の時刻T
0よりも後の期間参照)、タップ切換えが必要と判別する。
【0071】
判別部151には、どのタイミングでタップ切換えが必要と判別するかの判別条件が設定されている。タップ切換えのタイミングを決定する代表的な方式として定限時方式と積分方式が知られている。定限時方式は、検出電圧v
wuが電圧範囲VRの限界値を逸脱した時点から逸脱した状態の時間が予め決められた時間t以上経過したときにタップ切換えの動作に移行する方式である。
図5は、検出電圧v
wuが電圧範囲VRの限界値を逸脱した時点T
0から時間tが経過するまでその逸脱状態が継続した例で、この例では時点t
1でタップ切換えの動作に移行する。
【0072】
積分方式は、検出電圧v
wuが電圧範囲VRの限界値を逸脱した時点から検出電圧v
wが限界値を超えている電圧量を積分し、その積分値が予め決められた閾値以上になったときにタップ切換え動作に移行する方式である。判別部151に設定される判別条件は、ユーザが予め固定的に設定してもよく、ユーザが適宜、変更するようにしてもよい。
【0073】
判別部151に検出電圧v
wuが目標の電圧範囲VRを逸脱してから所定の時間tが経過した時点でタップ切換えの動作に移行する判別条件が設定されている場合、判別部151は、例えば、
図5に示すように、検出電圧v
wuが時刻T
0で上限値v
H0を超えると、時刻T
0から計時を開始し、その計時時間が所定の時間tに達した時刻T
1でタップ切換えが必要との判別を行う。
【0074】
また、判別部151は、タップの切換え方向も判別する。タップの切換え方向とは、検出電圧v
wuを目標の電圧範囲VRに入れる方向にタップを切り換える方向である。すなわち、タップの切換え方向とは、検出電圧v
wuが目標の電圧範囲VRの上限値v
H0より大きくなった場合は、直列変圧器11の3個の一次巻線111u,111v,111wに供給する調整用の電圧を減少させる方向のタップの切り換えであり、検出電圧v
wuが目標の電圧範囲VRの下限値v
L0より小さくなった場合は、直列変圧器11の3個の一次巻線111u,111v,111wに供給する調整用の電圧を増加させる方向のタップの切り換えである。
【0075】
そして、判別部151は、タップの切換え方向の情報とともにタップ切換えが必要の判別結果を想定切換後電圧算出部152に出力する。
【0076】
想定切換後電圧算出部152は、判別部151からタップの切換え方向とともにタップの切換えが必要の判別結果が入力されると、現在のタップの位置からタップの切換え方向にある1又は2以上のタップについて、実際にタップの切換えを行った場合に想定される検出電圧v
wuの変化値v
wu’(以下、「想定切換後電圧v
wu’」という。)を算出する。
【0077】
例えば、現在のタップ位置が「タップ4」にあり、判別部151から検出電圧v
wuを減少させる方向のタップ切換えが必要であるという判別結果が入力されると、想定切換後電圧算出部152は、タップ1、タップ2、タップ3の各タップ位置について、想定切換後電圧v
wu’を算出する。また、例えば、現在のタップ位置が「タップ4」にあり、判別部151から検出電圧v
wuを増加させる方向のタップ切換えが必要であるという判別結果が入力されると、想定切換後電圧算出部152は、タップ5、タップ6、タップ7の各タップ位置について、想定切換後電圧v
wu’を算出する。
【0078】
なお、判別部151は、タップ切換えが必要の判別結果だけを想定切換後電圧算出部152に出力し、想定切換後電圧算出部152が検出電圧v
wuと目標の電圧範囲VRからタップの切換え方向のタップを判断するようにしてもよい。この場合は、想定切換後電圧算出部152は、検出電圧v
wuを電圧範囲VRの限界値v
H0,v
L0と比較し、v
H0<v
wuであれば、タップの切換え方向は検出電圧v
wuを減少させる方向であると判断し、v
wu<v
L0であれば、タップの切換え方向は検出電圧v
wuを増加させる方向であると判断する。
【0079】
想定切換後電圧算出部152には、タップ毎に、想定切換後電圧v
wu’を算出するための下記の演算式(1)が設定されている。
想定切換後電圧=切換前電圧+k×(変圧比を元に算出したタップ切換えによる電圧の変化量)…(1)
但し、0<k<1
【0080】
演算式(1)は、電圧調整装置1の電圧調整動作を
図3に示すタップ付き変圧器による電圧調整動作と見なした場合、変電所側の電圧v
1(一次電圧v
1)が変化しないと仮定して一次巻線m1の切換先タップの変圧比を元に算出した電圧変化量に、係数k(低減率)を乗じて切換先タップに切り換えた場合の想定切換後電圧を算出する式である。
【0081】
一次巻線m1のタップを切り換えると、切換先タップの変圧ηに基づき電圧調整装置1で調整される需要家側の電圧v
2(二次電圧v
2)が変化するが、実際にタップを切り換えた場合の電圧v
2の変化量は、例えば、電圧調整装置1の入力側のインピーダンスと出力側のインピーダンスのインピーダンス比の変化などの影響を受け、切換先タップの変圧比ηだけで算出した理論上の電圧v
2の変化量よりも減少する。
【0082】
例えば、
図1に示す電圧調整装置1は、需要家側の電圧(検出電圧v
wu)を規定の基準電圧(例えば、6600[V])に調整するものとし、電圧調整装置1と等価な
図3に示すタップ付き変圧器Tのタップ1〜タップ7の変圧比η
i(=一次電圧v
1/二次電圧v
2)は、η
1:6900/6600(≒1.05)、η
2:6800/6600(≒1.03)、η
3:6700/6600(≒1.02)、η
4:6600/6600(≒1.00)、η
5:6500/6600(≒0.98)、η
6:6400/6600(≒0.97)、η
7:6300/6600(≒0.95)に設計されているとする。
【0083】
例えば、現在のタップ位置をタップ4とし、切換先タップをタップi(i≠4)とすると、タップ4は、一次電圧v
1がそのまま二次電圧v
2に出力されるが、タップiは、一次電圧v
1を1/η
iに変圧した二次電圧v
2(=v
1/η
i)が出力される。従って、変電所側の電圧v
1が変化しないと仮定してタップ4をタップ1に切り換えた場合の二次電圧v
2の電圧変化量Δv
2をタップ1の変圧比η
iを元に算出すると、Δv
2=(v
1/η
i)−v
2=(v
1/η
i)−v
1となる。
【0084】
しかし、実際にタップをタップ4からタップ1に切り換えた場合の二次電圧v
2の変化量の大きさ|Δv
2’|は、負荷や発電の変動等による電圧変化を除くと、|Δv
2’|≦|Δv
2|となる。すなわち、実際にタップをタップ1に切り換えた場合の二次電圧v
2の変化量Δv
2’は、変化量の理論値Δv
2に対してΔv
2’=k×Δv
2[V](但し、0<k≦1)の関係になる。
【0085】
係数kは、タップの変圧比η
i以外のパラメータの変化に基づく二次電圧v
2の変化量の減少分を加味して実際にタップを切り換えた場合に想定される二次電圧v
2'(想定切換後電圧v
2')を算出する為の係数である。想定切換後電圧算出部152には、係数kが係数設定部153により設定されている。係数kは、タップ1〜タップ7に共通であるが、タップ毎に異なる値を設定するようにしてもよい。
【0086】
電圧調整装置1の切換先タップi(i=1,2,…7)の変圧比をη
i、係数をkとし、一次側の電圧をv
1、タップ切換前の二次側の電圧をv
2、タップ切換後の二次側を電圧(想定切換後電圧)をv
2’とすると、タップiの想定切換後電圧v
2’を算出する演算式(1)は、
v
2’=v
2+k×(v
1/η
i−v
2) …(2)
で表される。
【0087】
従って、例えば、現在のタップ位置が「タップ4」にあり、判別部151から検出電圧v
wuを減少させる方向のタップ切換えが必要であるという判別結果が入力されると、想定切換後電圧算出部152は、タップ1、タップ2、タップ3の各タップ位置について、上記の演算式(2)を用いて想定切換後電圧v
wu’(演算式(2)ではv
2’)を算出する。
【0088】
例えば、係数kが「0.9」に設定されており、タップ切換前の検出電圧v
wuが6750[V]とすると、現在のタップがタップ4の場合、タップ切換前の電圧v
1,v
2は、v
1=v
2=6750であるから、想定切換後電圧算出部152は、6750+0.9×(6750/(6900/6600)−6750)を演算して、タップ1の想定切換後電圧v
wu1’(添え字の「1」は、タップ番号1に対応することを示す。以下、同じ)≒6486[V]を算出する。また、想定切換後電圧算出部152は、6750+0.9×(6750/(6800/6600)−6750)を演算して、タップ2の想定切換後電圧v
wu2’≒6571[V]を算出する。また、想定切換後電圧算出部152は、6750+0.9×(6750/(6700/6600)−6750)を演算して、タップ3の想定切換後電圧v
wu3’≒6659[V]を算出する。
【0089】
想定切換後電圧算出部152は、タップ切換え方向の全てのタップについて想定切換後電圧v
u’を算出すると、その算出結果をタップ切換制御部154に入力する。上記の例では、想定切換後電圧算出部152は、タップ1,タップ2、タップ3の各タップ位置について想定切換後電圧v
wu1’〜v
wu3’を算出すると、その算出結果をタップ番号に対応付けてタップ切換制御部154に入力する。
【0090】
係数設定部153は、想定切換後電圧算出部152に、係数kを設定する。係数設定部153には係数kのディフォルト値(通常は、「1」)が格納されているが、係数設定部153は、電圧調整装置1の運転中に、後述する更新演算を行って係数の更新値k’を算出し、その更新値k’で想定切換後電圧算出部152に設定されている係数kを更新する。係数設定部153は、例えば、0.1単位で更新値k’を算出し、想定切換後電圧算出部152に設定されている係数kを更新する。
【0091】
係数設定部153は、係数kの更新処理を行うために、
図4に示すように、実際の係数k
tを算出する係数算出部1531と、係数算出部1531が算出した実際の係数k
tを記憶する係数記憶部1532と、係数算出部1531が算出した複数の係数k
t1,k
t2,…k
tnの移動平均を演算することにより係数の更新値k’を算出する係数更新値演算部1533とを備える。係数算出部1531と係数更新値算出部1533は、それぞれ本発明に係る「係数算出部」と「係数更新値算出部」に対応するブロックである。
【0092】
係数算出部1531は、上述した演算式(1)と、実際にタップ切換をしたときの電圧v
wu’の検出値を用いて、実際の係数k
tj(jは、何回目の算出かを示す回数値)を算出し、係数記憶部1532に一時記憶する。そして、係数更新値演算部1533は、算出した複数個の実際の係数k
tjの予め設定された平均回数の移動平均を演算することにより係数の更新値k’を算出する。係数更新値演算部1533は、例えば、0.1単位で更新値k’を算出する。
【0093】
図3に示す、電圧調整装置1の等価的なタップ付き変圧器Tにおいて、タップを切り換える前の一次電圧と二次電圧をそれぞれv
1,v
2、実際にタップを切り換えた後の二次電圧をv
2t’、切り換えたタップiの変圧比をη
iとする。係数算出部1531は、現在のタップからタップiに実際にタップ切換えを行ったときの実際の係数k
tを、
k
t=|(v
2t’−v
2)/(v
1/η
i−v
2)| …(3)
の演算式(3)を用いて算出する。
【0094】
演算式(3)の分母(v
1/η
i−v
2)は、タップiの変圧比η
iに基づく電圧の変化量の理論値Δv
2である。一方、演算式(3)の分子(v
2t’−v
2)は、実際にタップ位置をタップiに切り換えたときの二次電圧v
2の変化量Δv
2t(実測値)である。演算式(3)は、タップ切換えを行った場合の電圧の変化量の理論値Δv
2に対する実際の電圧の変化量Δv
2tの比率を求める演算式である。
【0095】
負荷や発電の変動等による電圧変化を除くと、Δv
2t≦Δv
2となるので、k
t≦1となるが、実測値Δv
2tがΔv
2<Δv
2tとなる場合、係数算出部1531は、k
t=1として扱う。係数算出部1531は、算出した実際の係数k
tを一時的に係数記憶部1532に保存しながら、実際の係数k
tの算出処理を繰り返す。そして、係数更新値演算部1533は、予め決められた期間毎に、予め決められたn個分の係数k
tj(j=1,2,…n)の移動平均値k
ave=(k
t1+k
t2+…+k
tn)/nを演算し、その演算結果を係数の更新値k’とする。なお、予め決められた期間内に得られた係数k
tjの個数がn個以下の場合は、係数設定部153は、得られた個数について係数k
tjの移動平均値k
ave’=(k
t1+k
t2+…+k
tr)/r(r<n)を演算し、その演算結果を係数の更新値k’とする。
【0096】
係数設定部153は、係数の更新値k’を取得する毎にその更新値k’を想定切換後電圧算出部152に入力する。想定切換後電圧算出部152は、係数設定部153から係数の更新値k’が入力されると、現在設定されている係数kを係数k’に変更する。
【0097】
本実施の形態では、係数kを電圧調整装置1の運転中に自動的に更新する構成としているが、係数kを予め決められた固定値としてもよい。また、ユーザが係数kを固定値とするか更新値とするかを選択可能にしてもよい。この場合は、係数kを固定値とするか更新値とするかを選択するための係数フラグ(例えば、0:固定値、1:更新値のフラグ)を係数記憶部1532に記憶しておき、ユーザがその係数フラグの値を設定するようにすればよい。
【0098】
係数設定部153は、係数フラグの値が「固定値」に対応する値に設定されていると、例えば、電圧調整装置1の運転開始時に固定値の係数kを想定切換後電圧算出部152に設定する。また、係数設定部153は、係数フラグの値が「更新値」に対応する値が設定されていると、電圧調整装置1の運転中に、上述した更新演算を行って係数の更新値k’を算出し、その更新値k’で想定切換後電圧算出部152に設定されている係数kを更新する。
【0099】
タップ切換制御部154は、想定切換後電圧算出部152から入力される1又は2以上の想定切換後電圧v
wu’から切換先タップを決定する。例えば、想定切換後電圧算出部152からタップ1〜タップ3の想定切換後電圧v
wu1’,v
wu2’,v
wu3’(添え字の数字は対応するタップ番号である。)が入力されている場合、タップ切換制御部154は、各想定切換後電圧v
wu1’,v
wu2’,v
wu3’を目標の電圧範囲VRと比較し、目標の電圧範囲VR内でかつ目標電圧v
0に最も近い想定切換後電圧v
u’に対応するタップを切換先タップに決定する。例えば、想定切換後電圧v
wu3’が目標の電圧範囲VR内にあり、かつ、目標電圧v
0に最も近い場合、タップ切換制御部154は、想定切換後電圧v
wu3’に対応するタップ3を切換先タップに決定する。
【0100】
そして、タップ切換制御部154は、タップ切換器13にタップ位置を切換先タップに切り換えるタップ切換制御信号を出力する。タップ切換制御信号は、タップ切換器13内の複数個のスイッチング素子(第1のタップ切換回路1311、第2のタップ切換回路1312及び限流回路133のスイッチング素子)とスイッチ回路132の電磁接触器MC1,MC2のオン/オフを制御する制御信号である。
【0101】
タップ切換制御部154は、例えば、切換先タップをタップ3に決定すると、第1のタップ切換回路1311に対してタップ3に対応する組合せのサイリスタTh2(1)、ThC(1)(
図2参照)だけをオンにする第1のオン/オフ制御信号と、第2のタップ切換回路1312に対してタップ3に対応する組合せのサイリスタTh2(2)、ThC(2)だけをオンにする第2のオン/オフ制御信号と、第1,第2のオン/オフ制御信号に同期して限流回路133の2個のスイッチング素子ThS(1),ThS(2)をオンにする第3のオン/オフ制御信号と、を含むタップ切換制御信号をタップ切換器13に出力する。
【0102】
タップ切換器13は、タップ切換制御部154から上記のタップ切換制御信号が入力されると、まず、第3のオン/オフ制御信号によりサイリスタThS(1),ThS(2)をオンにして第1のタップ切換回路1311に限流抵抗R(1)を並列に接続し、第2のタップ切換回路1312に限流抵抗R(2)を並列に接続する。次に、タップ切換器13は、第1,第2のタップ切換回路1311,1312の全てのスイッチング素子をオフに切り換えた後、第1のオン/オフ制御信号より第1のタップ切換回路1311のサイリスタTh2(1)、ThC(1)だけをオン状態にし、第2のオン/オフ制御信号より第2のタップ切換回路1312のサイリスタTh2(2)、ThC(2)だけをオン状態にするように切り換える。そして、タップ切換器13は、4個のサイリスタが完全にオン状態になると、第3のオン/オフ制御信号によりサイリスタThS(1),ThS(2)をオフにして第1のタップ切換回路1311から限流抵抗R(1)を切り離し、第2のタップ切換回路1312から限流抵抗R(2)を切り離す。
【0103】
このタップ切換動作により、タップ切換器13の出力端(c1−d)から直列変圧器11に調整用電圧v
a21(添え字の「a21」は、入力端a2と入力端a1との間に誘起された電圧であることを示す。)が出力され、タップ切換器13の出力端(c2−d)から直列変圧器11に調整用の電圧v
b21(添え字の「b21」は、入力端b2と入力端b1との間に誘起された電圧であることを示す。)が出力される。直列変圧器11では、調整用電圧v
a21が直列に接続された一次巻線111v,111wの両端に印加され、調整用電圧v
b21が直列に接続された一次巻線111u,111vの両端に印加される。
【0104】
タップ切換制御部154は、基本的に目標の電圧範囲VR内でかつ目標電圧v
0に最も近い想定切換後電圧v
wu’に対応するタップを切換先タップに決定するが、切換先の対象となるタップが現在のタップ位置に隣接していない位置関係(現在のタップ位置と切換先の対象となるタップの間に1以上のタップが存在する関係)にある場合は、モード設定部155により設定される飛越タップ切換えに関するモードに従って切換先タップを決定する。
【0105】
現在のタップ位置に隣接していない位置関係にあるタップを切換先タップに決定すると、切換先タップへのタップ切換えは、現在のタップ位置と切換先タップの間に存在する1以上のタップを飛び越して切り換える飛越タップ切換えとなる。モード設定部155は、飛越タップ切換えを許容するか否かのモードを設定する。また、モード設定部155は、飛越タップ切換えを許容する場合、1回の飛越タップ切換えで変化するタップ数の上限を設定する。
【0106】
飛越タップ切換えを許容しないモード(飛越タップ切換禁止モード)は、切換先タップが現在のタップ位置から2以上離れたタップ位置にある場合(切換先タップが現在のタップ位置の隣のタップではない場合)でも1タップずつタップ位置を変化させて切換先タップにタップ切換えを行うモードである。一方、飛越タップ切換えを許容するモード(飛越タップ切換モード)は、切換先タップが現在のタップ位置から2以上離れたタップ位置にある場合は、1回のタッフ切換えによって切換先タップにタップ切換えを行うモードである。
【0107】
モード設定部155は、飛越タップ切換えを許容するか否かを示すフラグ(例えば、0:飛越タップ切換禁止モード、1:飛越タップ切換許容モード)を記憶する記憶部1551を有しており、その記憶部1551には「0」のディフォルト値が記憶されている。ユーザは、図示省略の操作部からフラグの値を「1」に書き換えることにより、飛越タップ切換モードを設定することができる。また、記憶部1551には、飛越タップ切換えで変化するタップ数の上限である変化タップ数上限N
Tも記憶され、「1」のディフォルト値が記憶されている。従って、記憶部1551は、本発明に係る変化タップ数上限格納部に対応するブロックである。ユーザは、図示省略の操作部から、例えば、1〜6の範囲内で記憶部1551に記憶されている変化タップ数上限N
Tを書き換えることにより、所望の変化タップ数上限N
Tを設定することができる。
【0108】
なお、変化タップ数上限N
Tが「1」の場合は、現在のタップ位置から隣のタップにタップ切換えをすることを意味している。従って、変化タップ数上限N
Tに「1」が設定されている場合は、実質的に飛越タップ切換禁止モードによるタップ切換えと同じタップ切換え処理となる。また、例えば、変化タップ数上限N
Tに「3」が設定されている場合は、現在のタップ位置と切換先タップの間に2個以下のタップが存在していると、1回のタップ切換えで現在のタップ位置から3番目にある切換先タップにタップ切換えが行われるが、現在のタップ位置と切換先タップの間に3個以上のタップが存在していると、1回のタップ切換えでは現在のタップ位置から3番目にあるタップまでしかタップ切換えが行われない。
【0109】
次に、
図6のフローチャートを用いて、電圧調整装置1の電圧調整処理を説明する。
【0110】
高圧配電線U,V,Wにおける実際の電圧変動は多種多様であり、その電圧変動に応じた電圧調整装置1の電圧調整動作も多種多様になるので、以下の説明では、
図5に示すケースを例に、高圧配電線U,V,Wの線間電圧v
wvが目標の電圧範囲ARを逸脱したときの電圧調整の処理手順の一例について説明する。
【0111】
図5は、目標の電圧範囲VRに入っていた電圧検出器14の検出電圧v
wuが上昇し、時刻T
0で電圧範囲VRの上限値v
H0を超えた後、電圧範囲VRを逸脱した状態が所定の時間t以上継続する様子を示した例である。
図6に示すフローチャートの処理手順では、定限時方式により電圧調整開始のタイミングを検出し、そのタイミングで電圧調整処理を開始する。また、電圧調整処理では、タップ切換器13の7個のタップのうち、現在のタップよりも降圧するタップの中から想定切換後電圧v
wu’が電圧範囲VRの目標電圧V
0に最も近くなるタップを切換先タップに決定し、タップ切換器13のタップをその切換先タップに切り換えて検出電圧v
wuを自動的に目標の電圧範囲VR内に調整する。
【0112】
(ステップS1)制御部15の判別部151は、電圧検出器14が検出した検出電圧v
wuを読み込む。
【0113】
(ステップS2)判別部151は、検出電圧v
wuと目標の電圧範囲VR(v
L0〜v
H0)を比較し、検出電圧v
wuが目標の電圧範囲VRを逸脱したか否かを判別する。具体的には、判別部151は、検出電圧v
wuが電圧範囲VRの上限値v
H0(=v
0+Δv)より大きいか否かと、検出電圧v
wuが下限値v
L0(=v
0−Δv)より小さいか否かを判別し、v
H0<v
wu又はv
wu<v
L0であれば、検出電圧v
wuは目標の電圧範囲VRを逸脱したと判別する。判別部151は、検出電圧v
wuがv
L0≦v
wu≦v
H0を満たす(検出電圧v
wuは目標の電圧範囲VR内)と判別した場合は(ステップS2:N)、ステップS1の処理に戻り、検出電圧v
wuがv
H0<v
wu又はv
wu<v
L0を満たす(検出電圧v
wuは目標の電圧範囲VR外)と判別した場合は(ステップS2:Y)、ステップS3の処理に進む。
【0114】
(ステップS3)判別部151は、予め決められた一定の時間t(
図5参照)を計時する。すなわち、判別部151は、検出電圧v
wuが目標の電圧範囲VRが逸脱した時点T
0から一定の時間tが経過した時点T
1でステップS4に進み、ステップS4以降のタップ切換え処理を行う。
【0115】
(ステップS4)判別部151は、検出電圧v
wuを目標の電圧範囲VR内に入れる方向のタップを選定する。判別部151、例えば、現在のタップ位置がタップ4で、v
H0<v
wuであると判別すると、タップ4よりも降圧になるタップ1〜タップ3が検出電圧v
wuを目標の電圧範囲VR内に入れる方向のタップであると判別する。また、判別部151は、v
wu<v
L0であると判別すると、タップ4よりも昇圧になるタップ5〜タップ7が検出電圧v
wuを目標の電圧範囲VR内に入れる方向のタップであると判別する。
図5の例では、v
H0<v
wuであるので、判別部151は、切換先タップの候補としてタップ1〜タップ3を選定する。
【0116】
(ステップS5)想定切換後電圧算出部152は、判別部151が選定した1又は2以上のタップについて、各タップに切り換えた場合の想定切換後電圧v
wu’を算出する。例えば、判別部151が選定したタップがタップ1,タップ2,タップ3である場合、想定切換後電圧算出部152は、タップ1〜タップ3の各タップについて、想定切換後電圧v
wu1’,v
wu2’,v
wu3’を算出する。
【0117】
想定切換後電圧算出部152は、タップ1の電圧比η
1、タップ切換前の一次電圧v
1、タップ切換前の二次電圧v
2、想定切換後電圧算出部152に設定されている係数kを用いて、v
2+k×(v
1/η
1−v
2)の演算をすることにより、タップ切換え後の二次電圧v
2’、すなわち、実際にタップ1に切り換えた場合の想定切換後電圧v
wu1’を算出する。同様に、想定切換後電圧算出部152は、v
2+k×(v
1/η
2−v
2)の演算をすることにより、実際にタップ2に切り換えた場合の想定切換後電圧v
wu2’を算出し、v
2+k×(v
1/η
3−v
2)の演算をすることにより、実際にタップ3に切り換えた場合の想定切換後電圧v
wu3’を算出する。
【0118】
(ステップS6)タップ切換制御部154は、想定切換後電圧算出部152が算出した1又は2以上の想定切換後電圧v
wu’の中から目標の電圧範囲VR内にあるタップを切換先タップの候補として選定する。例えば、想定切換後電圧算出部152が算出した想定切換後電圧v
wu’がタップ1〜3に対して算出した3個の想定切換後電圧v
wu1’,v
wu2’,v
wu3’の場合、タップ切換制御部154は、各想定切換後電圧v
wu1’,v
wu2’,v
wu3’が電圧範囲VRの上限値v
H0(=v
0+Δv)より大きいか否かと、検出電圧v
wuが下限値v
L0(=v
0−Δv)より小さいか否かを判別する。
【0119】
そして、タップ切換制御部154は、3個の想定切換後電圧v
wu1’,v
wu2’,v
wu3’の中の一つだけがv
L0≦v
wu’≦v
H0を満たす場合、切換先タップの候補としてその想定切換後電圧v
wu’に対応するタップを選定する。例えば、
図7(a)に示すように、想定切換後電圧v
wu3’だけがv
L0≦v
wu3’≦v
H0を満たす場合、タップ切換制御部154は、想定切換後電圧v
wu3’に対応するタップ3を選定する。
【0120】
なお、
図7は、タップ切換制御部154が切換先タップの候補を選定する方法を説明するための図である。
図7において、時刻T1は、想定切換後電圧v
wu’が算出される時点を示し、P1は、検出電圧v
wuのレベル(現在のタップ位置がタップ4の場合のレベル)を示している。また、P2〜P4は、タップ1〜タップ3の想定切換後電圧v
wu1’,v
wu2’,v
wu3’のレベルを示している。例えば、
図7(a)のP2は、現在のタップ4をタップ3に切り換えた場合に想定される検出電圧v
wu3’のレベル(変化点)を示している。P3,P4についても同様である。
【0121】
図7(a)は、想定切換後電圧v
wu3’だけが目標の電圧範囲VR内に入るケースを示したものであり、このケースでは、想定切換後電圧v
wu3’に対応するタップ3が切換先タップに選定されることになる。
【0122】
また、タップ切換制御部154は、3個の想定切換後電圧v
wu1’,v
wu2’,v
wu3’の中の複数個がv
L0≦v
wu’≦v
H0を満たす場合、切換先タップの候補にそれらの想定切換後電圧v
wu’に対応するタップを選定する。例えば、
図7(b)に示すように、想定切換後電圧v
wu3’と想定切換後電圧v
wu2’がv
L0≦v
wu3’≦v
H0、v
L0≦v
wu2’≦v
H0、を満たす場合、タップ切換制御部154は、想定切換後電圧v
wu3’に対応するタップ3と想定切換後電圧v
wu2’に対応するタップ2を選定する。
【0123】
また、タップ切換制御部154は、3個の想定切換後電圧v
wu1’,v
wu2’,v
wu3’の中のいずれもv
L0≦v
wu’≦v
H0を満たさない場合、切換先タップの候補が存在しないと判断する。このようなケースとしては、例えば、v
H0<v
wu1’<v
wu2’<v
wu3’又はv
wu1’<v
wu2’<v
wu3’<v
L0の場合がある。
【0124】
(ステップS7)タップ切換制御部154は、切換先タップの候補が存在するか否かを判別する。切換先タップの候補が存在する場合、すなわち、タップ切換制御部154が切換先タップの候補を選定できた場合は(ステップS7:Y)、タップ切換制御部154は、ステップS8の処理に進み、切換先タップの候補が存在しない場合、すなわち、タップ切換制御部154が切換先タップの候補が存在しないと判断した場合は(ステップS7:N)、タップ切換制御部154は、ステップS9の処理に進む。
【0125】
(ステップS8)タップ切換制御部154は、選定した切換先タップの候補のうち、目標電圧v
0に最も近い想定切換後電圧v
wu’を有するタップを切換先タップに決定する。例えば、タップ切換制御部154がタップ3とタップ2を切換先タップの候補に選定している場合(
図7(b)のケース参照)、タップ切換制御部154は、タップ3の想定切換後電圧v
wu3’の目標電圧v
0との差分Δv
3(=│v
wu3’−v
0│)と、タップ2の想定切換後電圧v
wu2’の目標電圧v
0との差分Δv
2(=│v
wu2’−v
0│)を算出し、差分Δvの小さいタップを切換先タップに決定する。すなわち、タップ切換制御部154は、Δv
2<Δv
3であれば、タップ2を切換先タップに決定し、Δv
3<Δv
2であれば、タップ3を切換先タップに決定する。
図7(b)のケースでは、Δv
2<Δv
3であるので、タップ2が切換先タップに決定されることになる。
【0126】
なお、選定した切換先タップの候補が1つしかない場合、タップ切換制御部154は、そのタップを切換先タップに決定する。
図7(a)のケースでは、タップ3だけが切換先タップの候補に選定されるので、タップ5が切換先タップに決定されることになる。
【0127】
(ステップS9)タップ切換制御部154は、切換先タップの候補が選定されないので、最小の切換数で目標の電圧範囲VRの限界値に最も近くなるタップを切換先タップに決定する。例えば、v
H0<v
wu1’<v
wu2’<v
wu3’の場合、想定切換後電圧v
wu1’が目標の電圧範囲VRの上限値v
H0に最も近くなるので、タップ切換制御部154は、タップ1を切換先タップに決定する。また、v
wu1’<v
wu2’<v
wu3’<v
L0の場合、想定切換後電圧v
wu3’が目標の電圧範囲VRの下限値v
L0に最も近くなるので、タップ切換制御部154は、タップ3を切換先タップに決定する。
【0128】
(ステップS10)タップ切換制御部154は、飛越タップ切換禁止モードが設定されているか否かを判別する。タップ切換制御部154は、例えば、飛越タップ切換えを許容するか否かを示すフラグを参照し、例えば、「0」に設定されていると、飛越タップ切換禁止モードが設定されていると判別し、「1」に設定されていると、飛越タップ切換禁止モードは設定されていないと判別する。タップ切換制御部154は、飛越タップ切換禁止モードが設定されていると判別すると(ステップS10:N)、ステップS12の処理に進み、飛越タップ切換禁止モードが設定されていないと判別すると(ステップS10:Y)、ステップS11の処理に進む。
【0129】
(ステップS11)タップ切換制御部154は、ステップS8,S9で決定した切換先タップをタップの切換方向にある現在のタップ位置の隣のタップに変更する。例えば、現在のタップ位置がタップ4で、決定された切換先タップがタップ7の場合、タップ切換制御部154は、切換先タップをタップ切換え方向にあるタップ4の隣のタップ5に変更する。
【0130】
(ステップS12)タップ切換制御部154は、タップの飛び越しがあるか否かを判別する。タップ切換制御部154は、現在のタップ位置のタップ番号と切換先タップのタップ番号の差分を算出し、差分が2以上であるか否かを判別することにより、タップの飛び越しがあるか否かを判別する。例えば、現在のタップ位置がタップ4で、切換先タップがタップ6の場合、タップ番号の差分は「2」であるから、タップ切換制御部154は、タップの飛び越しがあると判別する。一方、切換先タップがタップ5の場合、タップ番号の差分は「1」であるから、タップ切換制御部154は、タップの飛び越しはないと判別する。
【0131】
タップ切換制御部154は、タップの飛び越しがあると判別した場合(ステップS12:Y)、ステップS13の処理に進み、タップの飛び越しがないと判別すると(ステップS12:N)、ステップS15の処理に進む。
【0132】
(ステップS13)タップ切換制御部154は、タップの飛越数が、モード設定部155により設定された変化タップ数上限N
T以内であるか否かを判別する。タップ切換制御部154は、算出した現在のタップ位置のタップ番号と切換先タップのタップ番号の差分ΔN(タップの飛越数)と変化タップ数上限N
Tを比較し、ΔN≦N
Tであれば、タップの飛越数ΔNは変化タップ数上限N
T以内であると判別し、N
T<ΔNであれば、タップの飛越数ΔNは変化タップ数上限N
Tよりも大きいと判別する。
【0133】
例えば、変化タップ数上限N
T=3が設定されており、切換先タップがタップ6の場合、タップ切換制御部154は、現在のタップ4と切換先タップ6のタップ番号の差分ΔN=2を算出する。タップ切換制御部154は、差分ΔN=2と変化タップ数上限N
T=3を比較し、ΔN≦N
Tであるので、タップの飛越数ΔNは変化タップ数上限N
T以内であると判別する。
【0134】
タップ切換制御部154は、タップの飛越数ΔNがタップ飛越数N
T以内であると判別した場合(ステップS13:Y)、ステップS15の処理に進み、タップの飛越数ΔNが変化タップ数上限N
Tより大きいと判別した場合(ステップS13:N)、ステップS14の処理に進む。
【0135】
(ステップS14)タップ切換制御部154は、切換先タップを現在のタップ位置から変化タップ数上限N
Tだけ離れたタップに変更する。例えば、変化タップ数上限N
T=3が設定されており、現在のタップがタップ5、切換先タップがタップ1の場合、ΔN=4、N
T<ΔNであるので、タップ切換制御部154は、切換先タップを現在のタップ5からN
T=3だけ離れたタップ2に変更する。
【0136】
(ステップS15)タップ切換制御部154は、タップ切換制御信号をタップ切換回路131に出力してタップを切換先タップに切り換える。タップ切換制御部154は、第1のタップ切換回路1311に対して、決定した切換先タップに対応する組合せのサイリスタだけをオンにする第1のオン/オフ制御信号を出力する。また、タップ切換制御部154は、第2のタップ切換回路1312に対して、その切換先タップに対応する組合せのサイリスタだけをオンにする第2のオン/オフ制御信号を出力する。また、タップ切換制御部154は、第1,第2のオン/オフ制御信号に同期して限流回路133の2個のスイッチング素子のオン/オフを制御する第3のオン/オフ制御信号を限流回路133に出力する。
【0137】
タップ切換器13は、第3のオン/オフ制御信号によりサイリスタThS(1),ThS(2)をオンにして第1のタップ切換回路1311に限流抵抗R(1)を並列に接続し、第2のタップ切換回路1312に限流抵抗R(2)を並列に接続する。次に、タップ切換器13は、第1,第2のタップ切換回路1311,1312の全てのスイッチング素子をオフに切り換えた後、第1,第2のオン/オフ制御信号より第1,第2のタップ切換回路1311の切換先タップに対応する組合せのサイリスタだけをオン状態にするように切り換える。そして、タップ切換器13は、第1,第2のタップ切換回路1311のサイリスタの切換えが終了すると、第3のオン/オフ制御信号によりサイリスタThS(1),ThS(2)をオフにして第1のタップ切換回路1311から限流抵抗R(1)を切り離し、第2のタップ切換回路1312から限流抵抗R(2)を切り離す。
【0138】
このタップ切換動作により、電圧調整装置1のタップ位置が切換先タップに切り換えられ、検出電圧v
wu’は、切換先タップの想定切換後電圧v
wu’に調整される。例えば、
図7(a)のケースでは、現在のタップ4がタップ3に切り換えられ、P1のレベルの電圧v
wu’がP2のレベルの電圧v
wu’に調整される。
【0139】
なお、
図6のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0140】
図6のフローチャートでは、切換先タップを決定してから飛越タップ禁止モードの有無を判別し、飛越タップ禁止モードが設定されていない場合は、タップを1つずつ切り換えるタップ切換処理に変更しているが、例えば、ステップS3から電圧調整処理に移行すると、まず、飛越タップ禁止モードが設定されているか否かを判別するようにしてもよい。このような処理にした場合は、飛越タップ禁止モードが設定されていない場合にステップS4以降の処理に進み、飛越タップ禁止モードが設定されている場合は、現在のタップからタップ切換え方向にある隣のタップを切換先タップに設定してステップS15の処理に進むようにすればよい。
【0141】
以上説明したように、本実施の形態に係る電圧調整装置1によれば、タップを切り換える場合、タップ切換え方向にある1又は2以上のタップについて、実際にタップを切り換えた場合に想定される想定切換後電圧v
wu’を算出し、その算出結果から切換先タップを決定するようにしているので、最も適切なタップを切換先タップに選定することができ、最適な電圧調整をすることができる。
【0142】
また、切換先タップが現在のタップ位置から離れている場合でも1回の飛越タップ切換えにより迅速かつ最適な電圧調整をすることができる。さらに、タップの切り換え回数を可及的に低減して少ないタップの切換数で最適な電圧調整ができるので、タップ切換えによる限流抵抗の発熱を抑制することができる。
【0143】
なお、上記の実施の形態では、順送の場合について説明したが、逆送の場合でも同様の考え方でタップ切換え方向にある1以上のタップについて想定切換後電圧v
wu’を算出し、その想定切換後電圧v
wu’を用いて切換先タップを決定し、現在のタップを切換先タップに切り換えることによりタップを最適なタップに制御することができる。
【0144】
逆送の場合は、
図3に示す等価的にタップ付き変圧器Tの二次巻線m2に変電所から高圧が供給され、一次巻線m1のタップを切り換えることにより一次巻線m1から出力される電圧が調整されることになる。順送の場合は、タップ付き変圧器Tの二次電圧v
2を目標電圧v
0に調整するので、タップ1〜タップ3が降圧タップとして電圧調整動作をし、タップ5〜タップ7が昇圧タップとして電圧調整動作をしていたが、逆送の場合は、タップ付き変圧器Tの一次電圧v
1を目標電圧v
0に調整するので、タップ1〜タップ3が昇圧タップとして電圧調整動作をし、タップ5〜タップ7が降圧タップとして電圧調整動作をする点が異なる。
【0145】
逆送の場合は、
図3に示すタップ付き変圧器Tの一次電圧v
1を調整することになるので、
v
1’=v
1+h×(v
2×η
i−v
1) …(4)
の演算式(4)を用いて、実際にタップを切り換えた場合に想定される一次電圧v
1’(想定切換後電圧v
1’)を算出すればよい。そして、その想定切換後電圧v
1’を用いて、上述した順送時のタップ切換えと同様の処理により電圧調整をするとよい。
【0146】
演算式(4)式において、η
iは、切換先タップi(i=1,2,…7)の変圧比、hは、逆送時の切換先タップiの係数、v
1は、電圧調整装置1の一次側の電圧、v
2は、タップ切換前の電圧調整装置1の二次側の電圧、v
1’は、タップ切換後の電圧調整装置1の一次側の電圧(想定切換後電圧)である。
【0147】
また、逆送時の係数hを自動更新する場合は、
h
it=|(v
1t’−v
1)/(v
2×η
i−v
1)| …(5)
の演算式(5)を用いて、実際の係数h
itを算出し、予め決められた期間毎に、予め決められたn個分の係数h
itの移動平均値h
iave=(h
it1+h
it2+…+h
itn)/nを演算して係数の更新値h
i’を求めるとよい。そして、その更新値h
i’を用いて逆送時の電圧調整における各タップiの係数h
iを自動更新するようにすればよい。
【0148】
演算式(5)式において、v
1,v
2は、タップを切り換える前の電圧調整装置1の一次側の電圧と二次側の電圧、v
2t’は、実際にタップを切り換えた後の電圧調整装置1の二次側の電圧、η
iは、切り換えたタップiの変圧比である。
【0149】
逆送時の場合も、実際にタップを切り換えた場合に想定される想定切換後電圧を算出し、その算出結果から切換先タップを決定するようにしているので、上述した順送時の場合と同様に、最も適切なタップを切換先タップに選定することができ、最適な電圧調整を迅速に行うことができる。
【0150】
また、切換先タップが現在のタップ位置から離れている場合でも1回の飛越タップ切換えにより迅速かつ最適な電圧調整をすることができる。さらに、タップの切り換え回数を可及的に低減して少ないタップの切換数で最適な電圧調整ができるので、タップ切換えによる限流抵抗の発熱を抑制することができる。
【0151】
上記の実施の形態では、三相の高圧配電線に使用される電圧調整装置について説明したが、本発明は、単相の配電線に使用される電圧調整装置にも適用可能であり、低圧配電線に使用される電圧調整装置にも適用可能である。また、上記の実施の形態では、間接切換方式の電圧調整装置について説明したが、本発明は、直接切換方式の電圧調整装置にも適用可能である。さらに、本発明に係る電圧調整装置は、配電線路の電圧調整に限定されるものではなく、他の用途の電圧調整にも適用することができる。