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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-57223(P2018-57223A)
(43)【公開日】2018年4月5日
(54)【発明の名称】高周波電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20180309BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20180309BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
   H02M7/48 P
   H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2016-193689(P2016-193689)
(22)【出願日】2016年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】河野 真吾
【テーマコード(参考)】
2G084
5H770
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB21
2G084DD55
2G084EE10
2G084EE11
2G084EE12
2G084EE15
2G084EE24
2G084HH05
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH23
2G084HH27
2G084HH28
2G084HH29
2G084HH43
2G084HH52
5H770AA02
5H770AA05
5H770AA29
5H770CA02
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA11
5H770DA18
5H770DA41
5H770EA23
5H770GA03
5H770GA04
5H770GA19
5H770HA02Y
5H770HA04Y
5H770HA04Z
5H770HA15Y
5H770HA19Y
5H770HA19Z
5H770JA03X
5H770JA06X
5H770JA11W
5H770JA11X
5H770JA11Y
5H770JA12Y
5H770JA13W
5H770JA13X
5H770JA13Y
5H770JA17W
5H770JA17X
5H770JA18W
5H770JA18X
5H770JA19X
5H770KA01Y
5H770LA05X
5H770LB02
5H770LB05
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】基準相のレグと制御相のレグとを有するブリッジ型スイッチング回路を備えたDC/RF変換部によりDC電源部の出力を高周波電力に変換する高周波電源装置において、スイッチング回路で生じるスイッチング損失の低減を図り、装置の効率を向上させる。
【解決手段】DC電源部5の出力電圧を分圧するコンデンサ分圧回路10A及びこのコンデンサ分圧回路の分圧点とスイッチング回路6Aの制御相のレグの中点との間に補助回路用スイッチ10Cを通して補助リアクトル10Bを接続した共振補助回路10と、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムの期間に完了させるべく補助回路用スイッチ10Cのオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部11とを設けた。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の直流出力を発生するDC電源部と、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを互いに直列に接続して両スイッチの接続点を中点としたレグを二つ備えて該二つのレグの一方及び他方をそれぞれ基準相のレグ及び制御相のレグとして両レグを前記DC電源部の出力端子間に並列に接続した構成を有するフルブリッジ型のスイッチング回路を備えたDC/RF変換部と、前記スイッチング回路の各レグを構成するハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチ双方への駆動信号の供給を休止する期間であるデッドタイムを設けながら、負荷に供給する高周波電力を前記DC/RF変換部から出力させるべく、前記基準相のレグのハイサイドスイッチをオン状態にした後制御相のレグのローサイドスイッチをオン状態にする動作と、基準相のレグのローサイドスイッチをオン状態にした後制御相のレグのハイサイドスイッチをオン状態にする動作とを交互に行わせるように前記スイッチング回路を構成するスイッチを制御する制御部とを有する高周波電力発生部と、前記高周波電力発生部と負荷との間に挿入されたインピーダンス整合器とを備え、
各レグの各スイッチの出力静電容量と前記DC/RF変換部内に存在するインダクタとを通して部分共振電流を流して各レグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる充放電回路が各スイッチに対して構成されている高周波電源装置において、
前記DC電源部の出力電圧が両端に印加されたコンデンサ分圧回路と、前記コンデンサ分圧回路の分圧点と前記スイッチング回路の制御相のレグの中点との間に補助回路用スイッチを通して接続された補助リアクトルとを備えて、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流を前記DC電源部から前記コンデンサ分圧回路と前記補助リアクトルと前記補助回路用スイッチとを通して出力する共振補助回路と、
前記補充電流の重畳を行わなくても前記制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができるときに前記補助回路用スイッチをオフ状態に保持し、前記補充電流の重畳を行わなくては前記制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができないときに前記補助回路用スイッチをオン状態にするように前記補助回路用スイッチのオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部とを具備したことを特徴とする高周波電源装置。
【請求項2】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通して部分共振電流を流すだけでは前記制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができない状態にあるときに前記補助回路用スイッチをオン状態にし、前記DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通して部分共振電流を流すだけで前記制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができる状態にあるときに前記補助回路用スイッチをオフ状態にするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項3】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されたときに前記補助回路用スイッチをオン状態にし、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されたときに前記補助回路用スイッチをオフ状態にするように前記補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項4】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに前記補助回路用スイッチをオン状態にし、前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに前記補助回路用スイッチをオフ状態にするように前記補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項5】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段と、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに前記補助回路用スイッチをオン状態にし、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに前記補助回路用スイッチをオフ状態にするように前記補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項6】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、前記高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに前記補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第1の設定値未満であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第2の設定値未満であるときに前記補助回路用スイッチをオン状態にするように前記補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項7】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、前記スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段と、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに前記補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第1の設定値未満であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第2の設定値未満であるときに前記補助回路用スイッチをオン状態にするように前記補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項8】
前記スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流が反映されたパラメータを検出するパラメータ検出手段を更に備え、
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記パラメータ検出手段により検出されるパラメータと前記補助回路用スイッチがとるべき状態との関係を与える補助回路用スイッチ制御用テーブルを記憶した制御用テーブル記憶手段と、前記パラメータ検出手段により検出されるパラメータに対して前記制御用テーブルを検索することにより前記補助回路用スイッチがとるべき状態がオン状態であるかオフ状態であるかを判定して、前記補助回路用スイッチを判定された状態とするように制御するスイッチ制御手段とを備えていること、
を特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項9】
前記スイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスの状態を判定する負荷状態判定手段を更に備え、
前記補助回路用スイッチ制御部のスイッチ制御手段は、前記負荷状態判定手段により前記スイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスが容量性であると判定されているときに前記補助回路用スイッチをオン状態に保つように構成されていることを特徴とする請求項3ないし8の何れか一つに記載された高周波電源装置。
【請求項10】
一定の直流出力を発生するDC電源部と、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを互いに直列に接続して両スイッチの接続点を中点としたレグを二つ備えて該二つのレグの一方及び他方をそれぞれ基準相のレグ及び制御相のレグとして両レグを前記DC電源部の出力端子間に並列に接続した構成を有するフルブリッジ型のスイッチング回路を備えたDC/RF変換部と、前記スイッチング回路の各レグを構成するハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチ双方への駆動信号の供給を休止する期間であるデッドタイムを設けながら、負荷に供給する高周波電力を前記DC/RF変換部から出力させるべく、前記基準相のレグのハイサイドスイッチをオン状態にした後制御相のレグのローサイドスイッチをオン状態にする動作と、基準相のレグのローサイドスイッチをオン状態にした後制御相のレグのハイサイドスイッチをオン状態にする動作とを交互に行わせるように前記スイッチング回路を構成するスイッチを制御する制御部とを有する高周波電力発生部と、前記高周波電力発生部と負荷との間に挿入されたインピーダンス整合器とを備え、
各レグの各スイッチの出力静電容量と前記DC/RF変換部内に存在するインダクタとを通して部分共振電流を流して各レグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる充放電回路が各スイッチに対して構成されている高周波電源装置において、
前記DC電源部の出力電圧が両端に印加されたコンデンサ分圧回路と、前記コンデンサ分圧回路の分圧点と前記スイッチング回路の制御相のレグの中点との間に第1の補助回路用スイッチを通して接続された第1の補助リアクトルと、前記コンデンサ分圧回路の分圧点と前記スイッチング回路の基準相のレグの中点との間に第2の補助回路用スイッチを通して接続された第2の補助リアクトルとを備えて、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流を前記DC電源部から前記コンデンサ分圧回路と前記第1の補助リアクトルと前記第1の補助回路用スイッチとを通して出力し、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流を前記DC電源部からコンデンサ分圧回路と第2の補助リアクトルと第2の補助回路用スイッチとを通して出力する共振補助回路と、
前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても制御相のレグを構成するスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに前記第1の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと制御相のレグを構成するスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに前記第1の補助回路用スイッチをオン状態にするように前記第1の補助回路用スイッチのオンオフを制御し、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても基準相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに前記第2の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと基準相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに前記第2の補助回路用スイッチをオン状態にするように第2の補助回路用スイッチのオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部と、
を具備したことを特徴とする高周波電源装置。
【請求項11】
一定の直流出力を発生するDC電源部と、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを互いに直列に接続して両スイッチの接続点を中点としたレグを二つ備えて該二つのレグの一方及び他方をそれぞれ基準相のレグ及び制御相のレグとして両レグを前記DC電源部の出力端子間に並列に接続した構成を有するフルブリッジ型のスイッチング回路を備えたDC/RF変換部と、前記スイッチング回路の各レグを構成するハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチ双方への駆動信号の供給を休止する期間であるデッドタイムを設けながら、負荷に供給する高周波電力を前記DC/RF変換部から出力させるべく、前記基準相のレグのハイサイドスイッチをオン状態にした後制御相のレグのローサイドスイッチをオン状態にする動作と、基準相のレグのローサイドスイッチをオン状態にした後制御相のレグのハイサイドスイッチをオン状態にする動作とを交互に行わせるように前記スイッチング回路を構成するスイッチを制御する制御部とを有する高周波電力発生部と、前記高周波電力発生部と負荷との間に挿入されたインピーダンス整合器とを備え、
各レグのスイッチの出力静電容量と前記DC/RF変換部内に存在するインダクタとを通して部分共振電流を流して各レグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる充放電回路が各スイッチに対して構成されている高周波電源装置において、
前記DC電源部の出力電圧が両端に印加された第1のコンデンサ分圧回路及び前記第1のコンデンサ分圧回路の分圧点と前記スイッチング回路の制御相のレグの中点との間に第1の補助回路用スイッチを通して接続された第1の補助リアクトルと、前記DC電源部の出力電圧が両端に印加された第2のコンデンサ分圧回路及び前記第2のコンデンサ分圧回路の分圧点と前記スイッチング回路の基準相のレグの中点との間に第2の補助回路用スイッチを通して接続された第2の補助リアクトルとを備えて、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流を前記DC電源部から前記第1のコンデンサ分圧回路と前記第1の補助リアクトルと前記第1の補助回路用スイッチとを通して出力し、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流を前記DC電源部から前記第2のコンデンサ分圧回路と第2の補助リアクトルと第2の補助回路用スイッチとを通して出力する共振補助回路と、
前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても制御相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに前記第1の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと制御相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに前記第1の補助回路用スイッチをオン状態にするように前記第1の補助回路用スイッチのオンオフを制御し、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても基準相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに前記第2の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと基準相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに前記第2の補助回路用スイッチをオン状態にするように第2の補助回路用スイッチのオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部と、
を具備したことを特徴とする高周波電源装置。
【請求項12】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通して前記DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけでは前記制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができない状態にあるときに前記第1の補助回路用スイッチをオン状態にし、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通して前記DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけで前記制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができる状態にあるときに前記第1の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通して前記DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけでは前記基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができない状態にあるときに前記第2の補助回路用スイッチをオン状態にし、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通して前記DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけで前記基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができる状態にあるときに前記第2の補助回路用スイッチをオフ状態にするように構成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の高周波電源装置。
【請求項13】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されたときに前記第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にし、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されたときに前記第1及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にするように前記第1及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項10又は11に記載の高周波電源装置。
【請求項14】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに前記第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にし、前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに前記第1及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にするように前記第1及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項10又は11に記載の高周波電源装置。
【請求項15】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段と、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にし、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にするように前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項10又は11に記載の高周波電源装置。
【請求項16】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、前記高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第1の設定値未満であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ前記負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第2の設定値未満であるときに前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にするように前記第1及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項10又は11に記載の高周波電源装置。
【請求項17】
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、前記スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段と、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第1の設定値未満であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第2の設定値未満であるときに前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にするように前記補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えていることを特徴とする請求項10又は11に記載の高周波電源装置。
【請求項18】
前記スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流が反映されたパラメータを検出するパラメータ検出手段を更に備え、
前記補助回路用スイッチ制御部は、前記パラメータ検出手段により検出されるパラメータと前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチがとるべき状態との関係を与える補助回路用スイッチ制御用テーブルを記憶した制御用テーブル記憶手段と、前記パラメータ検出手段により検出されるパラメータに対して前記制御用テーブルを検索することにより前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチがとるべき状態がオン状態であるかオフ状態であるかを判定して、前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチを判定された状態とするように制御するスイッチ制御手段とを備えていること、
を特徴とする請求項10又は11に記載の高周波電源装置。
【請求項19】
前記スイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスの状態を判定する負荷状態判定手段を更に備え、
前記補助回路用スイッチ制御部のスイッチ制御手段は、前記負荷状態判定手段により前記スイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスが容量性であると判定されたときに前記補助回路用スイッチをオン状態に保つように構成されていることを特徴とする請求項13ないし18の何れか一つに記載された高周波電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ負荷などの負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ負荷などに高周波電力を供給する高周波電源装置として、特許文献1に示されているように、直流出力を調整する機能を有する可変DC電源部と、この可変DC電源部から出力される直流出力をスイッチ素子のオンオフ動作により高周波交流出力に変換するDC/RF変換部(直流/高周波交流変換部)とを備えて、可変DC電源部を制御することにより、DC/RF変換部から設定値に保たれた高周波電力を出力するようにしたものが用いられている。
【0003】
図16は、従来のこの種の高周波電源装置1′を負荷2とともに示したものである。図16に示された高周波電源装置1′は、負荷2に供給する高周波電力を発生する高周波電力発生部3′と、高周波電力発生部3′の出力インピーダンスと高周波電力発生部3′の出力端から負荷側を見たインピーダンスである負荷インピーダンスとを整合させるインピーダンス整合器4とを備えている。
【0004】
高周波電力発生部3′は、出力制御信号Sdcに応じて、出力する直流電力の大きさを調整する機能を有する可変DC電源部(可変直流電源部)5′と、可変DC電源部5′から出力される直流電力を高周波電力に変換するDC/RF変換部(直流/高周波変換部)6と、DC/RF変換部6の出力から高調波成分を除去するローパスフィルタ(LPF)7と、ローパスフィルタ7の出力側で負荷2に供給される進行波電力と負荷2で反射して戻ってくる反射波電力とをそれぞれ検出して進行波電力検出信号Pfと反射波電力検出信号Prとを出力するパワー検出部8と、可変DC電源部5′及びDC/RF変換部6を制御する制御部9′とを備えている。
【0005】
可変DC電源部5′は、例えば、商用電源の出力を整流して直流出力に変換するAC−DC変換部と、このAC−DC変換部の出力を、大きさが調整された直流電圧に変換するDC−DC変換部とにより構成される。制御部9′は、負荷に与える高周波電力の目標値と、パワー検出部8により検出されている進行波電力との偏差を零にするようにDC−DC変換部の出力を制御することにより、負荷に与えられる高周波出力を目標値に一致させるように制御する。
【0006】
インピーダンス整合器4は、負荷2のインピーダンスの如何に関わりなく、高周波電力発生部3′の出力端から負荷側を見たインピーダンス(負荷インピーダンス)を、高周波電力発生部3′の出力インピーダンスに一致させる(整合させる)ように調節する働きをする機器である。インピーダンス整合器4により、高周波電力発生部3′の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとが整合状態に調整されているときに、高周波電力発生部3′が発生する高周波電力(進行波電力)が負荷2に効率よく吸収される。
【0007】
図16に示された高周波電源装置1′においては、負荷に与える高周波電力を制御するために、電源部として、AC−DC変換部とDC−DC変換部とにより構成される複雑な構成を有する可変DC電源部5′を用いる必要があるため、コストが高くなるのを避けられない。
【0008】
そこで、特許文献2に示されているように、一定の直流出力を発生するDC電源部と、このDC電源部の出力を高周波電力に変換するDC−RF変換部とにより高周波電力発生部を構成して、DC−RF変換部に出力を調整する機能を持たせることにより、負荷に供給する高周波電力を制御する構成をとることが考えられる。
【0009】
図17は、このような構成を有する高周波電力発生部の構成を示したものである。図17において、5は一定の直流電圧Vdcを出力するDC電源部、6はDC電源部5の出力を高周波出力に変換するDC/RF変換部である。
【0010】
図17に示した例では、ハイサイドスイッチQ1とローサイドスイッチQ2との直列回路からなる基準相のレグと、ハイサイドスイッチQ3とローサイドスイッチQ4との直列回路からなる制御相のレグとが並列に接続されることにより、フルブリッジ型のスイッチング回路(インバータ回路)6Aが構成されている。このスイッチング回路においては、基準相のレグのハイサイドスイッチQ1と制御相のレグのハイサイドスイッチQ3との接続点a及び基準相のレグのローサイドスイッチQ2と制御相のレグのローサイドスイッチQ4との接続点bがスイッチング回路6Aの入力端子となっていて、これらの入力端子間にDC電源部5の出力電圧Vdcが入力されている。またハイサイドスイッチQ1とローサイドスイッチQ2からなる基準相のレグの中点(スイッチQ1とQ2の接続点)cと、ハイサイドスイッチQ3とローサイドスイッチQ4とからなる制御相のレグの中点(スイッチQ3とQ4の接続点)dとがスイッチング回路6Aの出力端子となっていて、これらの出力端子c,d間に、リアクトルLrとコンデンサCrとの直列回路からなる直列共振回路6Bを通してトランス6Cの一次巻線W1が接続されている。スイッチQ1〜Q4は、しきい値以上の駆動信号が与えられている間オン状態を保持し、駆動信号がしきい値未満になったときにオフ状態になる半導体スイッチにより構成される。以下の説明では、スイッチQ1〜Q4がMOSFETにより構成されるものとする。
【0011】
図17において、C1ないしC4はそれぞれスイッチQ1ないしQ4の両端に並列に設けられた出力静電容量であり、D1ないしD4はそれぞれスイッチQ1ないしQ4の両端に逆並列接続された帰還ダイオードである。図17に示したスイッチング回路においては,出力静電容量C1ないしC4及びダイオードD1ないしD4を利用してスイッチQ1〜Q4のソフトスイッチングを実現する。MOSFETのように寄生静電容量及び寄生ダイオードを内在する半導体スイッチング素子によりスイッチQ1ないしQ4を構成する場合には、当該寄生静電容量及び寄生ダイオードを上記出力静電容量C1〜C4及び帰還ダイオードD1〜D4として利用することができる。
【0012】
トランス6Cの二次巻線W2の両端には、リアクトルLzとコンデンサCzとからなるローパスフィルタ7を通して負荷2が接続されている。実際にはローパスフィルタ7と負荷との間にパワー検出部やインピーダンス整合器が挿入されるが、図17においてはこれらの図示が省略されている。
【0013】
スイッチング回路6Aの基準相のレグのハイサイドスイッチQ1を構成するMOSFETのゲート・ソース間及びローサイドスイッチQ2を構成するMOSFETのゲート・ソース間にはそれぞれ、図示しない制御部に設けられたスイッチ駆動部から所定レベル以上の駆動信号S1及びS2が交互に与えられる。駆動信号S1及びS2は、理想的には、図18(A)に模式的に示したような矩形波状の信号であって、これらの駆動信号S1及びS2のレベルがしきい値以上になっている期間ハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2をそれぞれ構成するMOSFETがオン状態になり、駆動信号S1及びS2のレベルがしきい値未満になったとき(駆動信号S1及びS2が消滅したとき)にハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2をそれぞれ構成するMOSFETがオフ状態になる。
【0014】
同様に、スイッチング回路6Aの制御相のレグのハイサイドスイッチQ3及びローサイドスイッチQ4を構成するMOSFETのゲート・ソース間にはそれぞれ図18(B)に模式的に示した矩形波状の駆動信号S3及びS4が与えられる。駆動信号S3及びS4のレベルがしきい値以上になっている期間ハイサイドスイッチQ3及びローサイドスイッチQ4をそれぞれ構成するMOSFETがオン状態になり、駆動信号S3及びS4のレベルがしきい値未満になったときにハイサイドスイッチQ3及びローサイドスイッチQ4をそれぞれ構成するMOSFETがオフ状態になる。
【0015】
MOSFETは、導通状態にあるときにそのドレイン・ソース間を流れる通電電流の自乗と、ドレイン・ソース間のオン抵抗(オン時の抵抗)との積により決まる導通損失を生じる。MOSFETをスイッチング素子として用いる場合には、その導通損失を極力減らすために、MOSFETを導通時に飽和領域で動作させる必要がある。したがって、スイッチング回路6AのスイッチQ1〜Q4を構成するMOSFETに与える駆動信号S1〜S4の波高値は、MOSFETを飽和状態にするのに必要な値以上に設定される。
【0016】
図17に示したスイッチング回路6Aにおいては、ハイサイドスイッチQ1とローサイドスイッチQ2との直列回路からなる基準相のレグ及びハイサイドスイッチQ3とローサイドスイッチQ4との直列回路からなる制御相のレグがDC電源部5の出力端子間に並列に接続されているため、各レグを構成するスイッチが同時にオン状態になる期間が生じると、DC電源部5の出力が短絡されて大電流が流れ、各スイッチを構成するMOSFETが破損する。したがって、基準相のレグのハイサイドスイッQ1に与えていた駆動信号S1を消滅させるタイミングとローサイドスイッチQ2に駆動信号S2を与えるタイミングとの間及びローサイドスイッチQ2に与えていた駆動信号S2を消滅させるタイミングとハイサイドスイッチQ1に所定レベル以上の駆動信号を与えるタイミングとの間にデッドタイムtdを設けて、これらのデッドタイムの期間、両スイッチQ1,Q2への駆動信号S1,S2の供給を停止する必要がある。同様に、制御相のレグのハイサイドスイッQ3に与えていた駆動信号S3を消滅させるタイミングとローサイドスイッチQ4に駆動信号S4を与えるタイミングとの間及びローサイドスイッチQ4に与えていた駆動信号S4を消滅させるタイミングとハイサイドスイッチQ3に駆動信号を与えるタイミングとの間にデッドタイムtdを設ける必要がある。
【0017】
図17に示したDC/RF変換部6においては、スイッチング回路6Aの各レグを構成するハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチ双方への駆動信号の供給を休止する期間であるデッドタイムを設けながら、基準相のレグのハイサイドスイッチQ1をオン状態にした後、制御相のレグのローサイドスイッチQ4をオン状態にする動作と、基準相のレグのローサイドスイッチQ2をオン状態にした後制御相のレグのハイサイドスイッチQ3をオン状態にする動作とを交互に行わせるように、スイッチQ1〜Q4を制御することにより、DC/RF変換部6から高周波電力を出力させる。
【0018】
図17に示された高周波電源装置は、複雑な構造を有する可変DC電源部を用いずに、一定の直流出力を発生するDC電源部5と、このDC電源部の直流出力を高周波電力に変換するDC/RF変換部6とにより構成されるため、装置の構成を簡単にすることができる。本発明においては、このような構成を有する高周波電源装置を対象とする。
【0019】
図17に示したDC/RF変換部において、スイッチQ1をターンオンした後、当該スイッチQ1を再びターンオンさせるまでの一連の動作は下記の通りである。
(1) 基準相のレグのハイサイドスイッチQ1をターンオンした後、制御相のレグのローサイドスイッチQ4をターンオンする。
(2) 制御相のレグのローサイドスイッチQ4がオンしている間に基準相のレグのハイサイドスイッチQ1をターンオフし、次いでデッドタイムが経過した時に基準相のレグのローサイドスイッチQ2をターンオンする。
(3) 基準相のレグのローサイドスイッチQ2をターンオンした後制御相のレグのローサイドスイッチQ4をターンオフし、次いでデッドタイムが経過した時に制御相のレグのハイサイドスイッチQ3をターンオンする。
(4) 制御相のハイサイドスイッチQ3がオン状態にある間に基準相のレグのローサイドスイッチQ2をターンオフし、次いでデッドタイムが経過した時に基準相のレグのハイサイドスイッチQ1をターンオンさせる。
【0020】
図17に示したDC/RF変換部6においては、スイッチング回路の各レグの各スイッチの出力静電容量と、DC/RF変換部6内に存在するインダクタ(インダクタンスを有する回路要素)とを通して電流を流して各レグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる充放電回路が各スイッチに対して構成されていて、上記の一連の動作を行わせる過程で、各レグの各スイッチに対して構成される充放電回路を通して各スイッチの出力静電容量の充放電を行わせて、各スイッチのソフトスイッチングを行わせる。各レグのスイッチに対して構成される充放電回路においては、各スイッチの出力静電容量とDC/RF変換部6内に存在するインダクタとが直列に接続されることにより直列共振回路が構成されているため、各スイッチの出力静電容量の充放電を行う際に各スイッチに対して構成される充放電回路を通して流れる電流は、直流共振電流の一部をなす波形の電流(この電流を部分共振電流と呼ぶ。)である。これらの動作は公知であるが、本発明が解決しようとする課題の理解を容易にするために、以下にその動作の概要を説明しておく。
【0021】
基準相のレグのハイサイドスイッチQ1及び制御相のレグのローサイドスイッチQ4にそれぞれ駆動信号S1及びS4が与えられると、これらのスイッチQ1及びQ4がオン状態になる。このときDC/RF変換部6内に存在するインダクタに電流が流れるため、当該インダクタにエネルギが蓄積される。図17に示した高周波電源装置において、DC/RF変換部6内に存在するインダクタは、直列共振回路6Bを構成しているインダクタLrとトランス6Cとである。
【0022】
制御相のレグのローサイドスイッチQ4に駆動信号S4を与えた後、基準相のレグのハイサイドスイッチQ1に与えていた駆動信号S1を消滅させて、当該スイッチQ1をターンオフする。スイッチQ1のターンオフ過程の進行に伴って、DC/RF変換部6内に存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより、部分共振電流を流してスイッチQ1の出力静電容量C1を充電し、スイッチQ1の両端の電圧を直線的に上昇させる。これにより、スイッチQ1の両端電圧の上昇を緩和して、スイッチQ1をソフトスイッチングによりターンオフさせる。またスイッチQ1の出力静電容量C1を充電することにより、スイッチQ1の両端に逆並列接続されているダイオードD1を逆バイアスして、ダイオードD1を通して電流が流れないようにする。
【0023】
基準相のレグのハイサイドスイッチQ1の出力静電容量C1を充電する過程で、基準相のレグのローサイドスイッチQ2の出力静電容量C2に蓄積されている電荷を、直列共振回路6Bと、トランス6Cの一次コイルW1と、オン状態にある制御相のレグのローサイドスイッチQ4とにより構成される充放電回路を通して放電させて、部分共振電流を流す。これにより、次にターンオンさせる基準相のレグのローサイドスイッチQ2の両端電圧をゼロにし、スイッチQ2に逆並列接続されているダイオードD2の逆バイアスを解除する。
【0024】
ダイオードD2の逆バイアスが解除されると、回路のインダクタンスに蓄積されているエネルギにより、オン状態にある制御相のレグのローサイドスイッチQ4と基準相のレグのローサイドスイッチに逆並列接続されたダイオードD2と、直列共振回路6Bとトランス6Cの一次コイルW1とにより構成される充放電回路を通してダイオードD2に順方向電流が流れる。これにより、スイッチQ2をターンオンさせる過程で、その両端の電圧をほぼゼロ(ダイオードD2の順方向電圧)に保つ。
【0025】
上記のように、基準相のレグのローサイドスイッチQ2をターンオンする際には、当該スイッチQ2の出力静電容量C2を放電させるとともに、その両端に逆並列接続されているダイオードD2に順方向電流を流すことにより、スイッチQ2の両端電圧をほぼゼロにした状態で、スイッチQ2に駆動信号を与える。これにより、基準相のレグのローサイドスイッチQ2をZVS(ゼロ電圧スイッチング)及びZCS(ゼロ電流スイッチング)でターンオンさせる。
【0026】
基準相のレグのローサイドスイッチQ2をターンオンさせた後、制御相のレグのローサイドスイッチQ4に与えていた駆動信号を消滅させて、スイッチQ4のターンオフ動作を開始させる。スイッチQ4のターンオフ動作を開始させると、トランス6Cの一次電流によりダイオードD2及びスイッチQ2とインダクタLsとを通してスイッチQ4の出力静電容量C4が充電される。これによりスイッチQ4の両端の電圧が直線的に上昇し、スイッチQ4がソフトスイッチングによりターンオフする。トランス6Cの二次側では、二次コイルW2−インダクタLz−負荷2及びキャパシタCz−二次コイルW2の閉回路を流れる負荷電流が減少していく。制御相のレグのローサイドスイッチQ4がターンオフする過程で、制御相のレグのハイサイドスイッチQ3の出力静電容量C3が放電するため、スイッチQ3の両端電圧が低下していく。
【0027】
制御相のレグのハイサイドスイッチQ3の出力静電容量C3の放電が完了すると、ダイオードD3の逆バイアスが解除されるため、インダクタLrとトランスの一次コイルW1とに蓄積されているエネルギにより、インダクタLr−一次コイルW1−ダイオードD3−DC電源5−ダイオードD2及びスイッチQ2−インダクタLrの経路でダイオードD3に順方向電流(部分共振電流)が流れる。この順方向電流は、トランス6Cの二次コイルを流れている負荷電流によりトランスの一次コイルに誘起する電流にトランスの励磁電流が重畳された電流(トランスの一次電流)である。ダイオードD3に順方向電流が流れることにより、スイッチQ3の両端電圧がほほ零にされる。
【0028】
制御相のレグのローサイドスイッチQ4の充電及びハイサイドスイッチQ3の出力静電容量C3の放電は、負荷電流が流れたときにインダクタLrとトランスの励磁インダクタンスとに蓄積されたエネルギのみにより共振モードで行われる。デッドタイムの期間に出力静電容量C4の充電及び出力静電容量C3の放電が完全に行われるか否かは、共振モードの開始時点でインダクタLr及びトランスの一次コイルW1に蓄積されているエネルギにより決まる。インダクタLr及びトランス6Cの励磁インダクタンスに蓄積されていたエネルギがスイッチQ3の出力静電容量C3に蓄積されていたエネルギよりも大きい場合に、スイッチQ4の出力静電容量の完全な充電及びスイッチQ3の出力静電容量C3の完全な放電が可能になる。スイッチQ3の出力静電容量C3の放電が完全に行われた場合にのみ、スイッチQ3のZVS及びZVCでのターンオンが可能になる。共振モードの開始時点でインダクタLr及びトランスの一次コイルW1に蓄積されているエネルギは、その時点までの間にインダクタLr及びトランスの一次コイルW1に流れていた電流により決まる。
【0029】
スイッチQ2及びQ3がオン状態を保っている間トランスの一次電流が流れ、トランスの二次側でインダクタLzと負荷2とを通して電流が流れて、負荷2に電力が供給される。この間にトランスの一次側のインダクタLr,トランスの励磁インダクタンス及びフィルタ回路のインダクタLz にエネルギが蓄積される。
【0030】
DC/RF変換部6は、半周期毎に上記と同様の動作を行い、フルブリッジ型スイッチング回路(インバータ)6AによりDC電源5の出力を高周波電力に変換して負荷2に与える。負荷2に与えられる電力は、基準相のレグのスイッチQ1,Q2をターンオンするタイミングと、基準相のレグの各スイッチの対角位置にある制御相のレグのスイッチQ4,Q3をターンオンするタイミングとの間の位相角φを制御位相角として、該制御位相角φを0°ないし180°の範囲で変化させることにより制御される。
【0031】
本発明は、図17に示されたような構成を有する高周波電源装置の効率を高めることを課題とする。図17に示された高周波電源装置の効率を高めるためには、高周波電力発生部6で生じる損失を極力小さくする必要がある。高周波電力発生部6で生じる損失の内、スイッチング回路6Aで生じる損失は、導通損失とスイッチング損失とに分けられる。スイッチQ1,Q2,Q3及びQ4で生じる導通損失は、前述のように、それぞれのスイッチを構成している半導体スイッチ(上記の例ではMOSFET)のオン抵抗と、当該スイッチを通して流れる電流の自乗との積により決まる損失である。
【0032】
MOSFET等の半導体スイッチのオン抵抗は、その制御端子に与える駆動信号の電圧値に依存し、駆動信号の電圧値を飽和電圧値以上とすることにより最小にすることができる。従って、スイッチQ1〜Q4で生じる導通損失は、それぞれを構成する半導体スイッチに与える駆動信号の電圧値を飽和電圧値以上として、半導体スイッチを飽和領域で動作させることにより低減することができる。
【0033】
またスイッチQ1〜Q4を構成する半導体スイッチで生じるスイッチング損失は、当該半導体スイッチがターンオフする際及びターンオンする際に生じる損失であり、当該半導体スイッチがターンオフする際及びターンオンする際にその両端間に生じている電圧(MOSFETの場合はドレイン・ソース間の電圧)と当該スイッチを通して流れる電流(MOSFETの場合はドレインソース間を流れる電流)との積により決まる損失である。このスイッチング損失は、スイッチQ1〜Q4をそれぞれ構成する半導体スイッチがターンオフする際及びターンオンする際にそれぞれの出力静電容量(半導体スイッチの寄生静電容量又は半導体スイッチの両端に接続されたキャパシタの静電容量)C1〜C4にどれだけの電荷が溜まっているかによって決まる。
【0034】
DC/RF変換部を構成するイッチング回路の各スイッチで生じるスイッチング損失を最小にするためには、ターンオフさせるスイッチの出力静電容量の充電と、次にターンオンさせるスイッチの出力静電容量の放電とをデッドタイムの期間に完全に行わせることが必要である。そのためには、デッドタイムの期間に、ターンオフさせるスイッチの出力静電容量の充電を行わせるための部分共振電流と、次にターンオンさせるスイッチの出力静電容量の放電を行わせるための部分共振電流とを十分に流すことが必要である。基準相のレグのハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2のそれぞれの出力静電容量C1及びC2の充放電を行わせる部分共振電流は負荷電流でもあるため、負荷に十分な電流が供給されているときには、デッドタイムの期間にこれらの出力静電容量C1,C2の充放電を完全に行わせることができ、ターンオンさせるスイッチQ1,Q2の出力静電容量に残留している電荷を零とした状態で、スイッチQ1,Q2に駆動信号を与えて、これらのスイッチをソフトスイッチングでターンオンさせることができる。
【0035】
これに対し、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行わせる部分共振電流は、負荷電流により回路に存在するインダクタに蓄積されたエネルギによって制御相のレグと基準相のレグとの間を流れる循環電流であるため、負荷電流が十分に流れていて、回路に存在するインダクタに十分なエネルギが蓄積されているときには十分な大きさを有するが、負荷電流が小さい場合には不足がちになるのを避けられない。そのため、基準相のレグの各スイッチをターンオンするタイミングと、基準相のレグの各スイッチの対角位置にある制御相のレグのスイッチをターンオンするタイミングとの間の位相角φが大きく、負荷電流が小さく制限されている時には、デッドタイムの期間に制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を完全に行わせることができなくなり、これらのスイッチをデッドタイムの期間の終了時にターンオンさせる際のスイッチング動作がハードスイッチングとなって、これらのスイッチで大きなスイッチ損失が生じるという問題が生じる。
【0036】
なお各スイッチの出力静電容量とDC/RF変換部内に存在するインダクタとを含む回路に各スイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を流すことができるのは、スイッチング回路のレグの中点から(スイッチング回路の出力端子c,dから)負荷側を見た回路のインピーダンスが誘導性を呈する場合のみであり、当該インピーダンスが容量性を呈する場合には、各スイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を流すことができない。そのため、スイッチング回路の出力端子c,dから負荷側を見た回路のインピーダンスが容量性を呈する場合には、デッドタイムの期間にスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行わせることができず、スイッチQ3,Q4をターンオンさせる際にこれらのスイッチの出力静電容量に大量の電荷が残留していることになって、大きなスイッチング損失が生じる。従って、この種のDC/RF変換部を用いる高周波電源装置においては、通常は、DC/RF変換部のスイッチング回路のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスZLが誘導性を呈するように回路が設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開2003−143861号公報
【特許文献2】国際公開WO2011/013297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
一般に、高周波電源装置の高周波電力発生部と負荷との間に設けられるインピーダンス整合器は、インピーダンス可変素子である可変コンデンサ又は可変インダクタをモータで制御して、該インピーダンス整合器の入力端から負荷側を見たインピーダンスを調整することにより整合動作を行うように構成されているため、瞬時にインピーダンスの整合を図ることはできず、インピーダンスの整合には通常100msecないし数secの時間を要する。インピーダンスの整合がとれるまでの間は負荷で反射が生じるため、負荷2からDC/RF変換部6に戻ってくる反射波電力が多くなる。DC/RF変換部6に戻ってくる反射波電力が多くなると、DC/RF変換部6のスイッチング回路を構成するスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を十分に流すことができなくなるため、各スイッチの出力静電容量の充放電を十分に行わせることができず、各スイッチをターンオンさせる際に大きなスイッチング損失が生じる。
【0039】
特に、高周波電力を供給する負荷2がプラズマ負荷である場合には、負荷2のインピーダンスが不安定で、印加電力、チャンバ内のガスの圧力、チャンバ内に供給されるガスの流量、処理時間などの条件により負荷インピーダンスが細かく変化するため、インピーダンスの不整合状態が頻繁に生じる。
【0040】
図17に示したようなDC/RF変換部6を備えた高周波電源装置においては、高周波電力発生部3の出力インピーダンスと、高周波電力発生部3の出力端から負荷側を見たインピーダンス(負荷インピーダンス)とが整合状態にあるときに、デッドタイムtdの期間にスイッチング素子Q1,Q2の出力静電容量C1,C2及びスイッチング素子Q3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を完全に行わせて、スイッチQ1〜Q4で生じるスイッチング損失を最小にするように、直列共振回路6B以降の回路定数が設定される。そのため、高周波電力発生部の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとが不整合の状態にある場合には、デッドタイムtdの期間にスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2及びスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を完全に行わせることができない状態が生じて、スイッチQ1〜Q4で生じるスイッチング損失が増加する。
【0041】
また、高周波電力発生部3の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとが整合状態にある場合でも、高周波電力発生部3の出力が低く抑えられていて、DC/RF変換部6を構成する回路内のインダクタに十分なエネルギが蓄積されない状態にある場合には、デッドタイムの期間に各スイッチの出力静電容量の充放電を完全に行わせることができなくなって、スイッチング損失が増大することがある。
【0042】
上記のように、一定の直流出力を発生するDC電源部と、DC電源部から一定の直流電圧が入力されるフルブリッジ型のスイッチング回路を有するDC/RF変換部と、DC/RF変換部のスイッチング回路の各レグを構成するハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチ双方への駆動信号の供給を休止する期間であるデッドタイムを設けながら、負荷に供給する高周波電力をDC/RF変換部から出力させるべく、スイッチング回路のスイッチを制御する制御部とを有する高周波電力発生部とを備えた従来の高周波電源装置においては、負荷インピーダンスの変動や、負荷電流の減少などに起因して、DC/RF変換部のスイッチング回路を構成する各スイッチで生じるスイッチング損失が増大し、装置の効率が低下することがあった。
【0043】
特に制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行わせる際に流れる部分共振電流は、負荷電流が流れる際に回路内のインダクタに蓄積されたエネルギにより制御相のレグと基準相のレグとの間を流れる循環電流であって、負荷電流が小さい時に不足しがちになるため、これらのスイッチをデッドタイムの期間の終了時にターンオンさせる際のスイッチング動作がハードスイッチングとなる状態がしばしば生じて、これらのスイッチで大きなスイッチング損失が生じ、装置の効率が低下するという問題があった。
【0044】
また前述のように、図17に示した高周波電源装置は、負荷の状況によって、スイッチング回路のレグの中点から負荷側を見た回路のインピーダンスが容量性を示す状態になったときに、スイッチング回路の各レグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を流すことができないが、そのような状態になった場合でも、各スイッチをターンオンさせる際のスイッチング損失を極力低減させるために、各スイッチの出力静電容量の充放電を少しでも行わせるようにしておくことが望ましい。
【0045】
本発明の目的は、一定の直流出力を発生するDC電源部と、該DC電源部の直流出力を高周波出力に変換するDC/RF変換部とにより高周波電力発生部の要部が構成される高周波電源装置において、DC/RF変換部のスイッチング回路の各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に極力行わせることができるようにして、スイッチング回路の各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図り、装置の効率を従来よりも更に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0046】
本発明は、一定の直流出力を発生するDC電源部と、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを互いに直列に接続して両スイッチの接続点を中点としたレグを二つ備えて該二つのレグの一方及び他方をそれぞれ基準相のレグ及び制御相のレグとして両レグを前記DC電源部の出力端子間に並列に接続した構成を有するフルブリッジ型のスイッチング回路を備えたDC/RF変換部と、スイッチング回路の各レグを構成するハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチ双方への駆動信号の供給を休止する期間であるデッドタイムを設けながら、負荷に供給する高周波電力をDC/RF変換部から出力させるべく、基準相のレグのハイサイドスイッチをオン状態にした後制御相のレグのローサイドスイッチをオン状態にする動作と、基準相のレグのローサイドスイッチをオン状態にした後制御相のレグのハイサイドスイッチをオン状態にする動作とを交互に行わせるようにスイッチング回路を構成するスイッチを制御する制御部とを有する高周波電力発生部と、高周波電力発生部と負荷との間に挿入されたインピーダンス整合器とを備えて、各レグの各スイッチの出力静電容量とDC/RF変換部内に存在するインダクタとを通して部分共振電流を流して各レグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる充放電回路が各スイッチに対して構成されている高周波電源装置を対象とする。
【0047】
本願明細書には、上記のような構成を有する高周波電源装置において、前記の目的を達成するために、少なくとも以下に示す第1の発明ないし第19の発明が開示される。
以下に示す第1の発明ないし第9の発明は、出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流が特に不足しがちなスイッチング回路の制御相のレグの各スイッチのスイッチング動作がハードスイッチング動作となるのを抑制して、スイッチング損失の低減を図ることを目的としている。
また第10の発明ないし第19の発明は、制御相のレグのスイッチだけでなく、基準相のレグのスイッチのスイッチング動作がハードスイッチング動作となるのをも抑制して、スイッチング損失の更なる低減を図ることを目的としている。以下これらの課題を解決するために第1の発明ないし第19の発明が備えている構成について、それぞれの作用と共に説明する。
【0048】
<第1の発明>
第1の発明においては、上記の目的を達成するために、DC電源部の出力電圧が両端に印加されたコンデンサ分圧回路と、コンデンサ分圧回路の分圧点とスイッチング回路の制御相のレグの中点との間に補助回路用スイッチを通して接続された補助リアクトルとを備えて、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流をDC電源部からコンデンサ分圧回路と補助リアクトルと補助回路用スイッチとを通して出力する共振補助回路と、前記補充電流の重畳を行わなくても制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができるときに前記補助回路用スイッチをオフ状態に保持し、前記補充電流の重畳を行わなくては制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を前記デッドタイムの期間に完了させることができないときに前記補助回路用スイッチをオン状態にするように前記補助回路用スイッチのオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部とを設けた。
【0049】
上記補助リアクトルは、DC/RF変換部内に本来存在するインダクタ(インダクタンスを有する回路要素)に蓄積されたエネルギにより、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通して部分共振電流を流しただけでは、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができない場合に、各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳するために設けられたものであり、DC/RF変換部内に本来存在するインダクタとは別個に設けられるものである。
【0050】
上記第1の発明のように構成すると、DC/RF変換部内に存在するインダクタに蓄積されるエネルギが少ないために、当該エネルギにより流れる部分共振電流だけではデッドタイムの期間に制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を完了させることができない場合に、補助回路用スイッチをオン状態にすることにより、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に、DC電源部側から補助リアクトルを通して流れる補充電流を重畳させることができるため、各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることが可能になる。従って、出力静電容量の充放電が不完全になりがちな(スイッチング損失が大きくなりがちな)制御相のレグの各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図って、装置の効率を高めることができる。
【0051】
また本発明では、補助回路用スイッチを必要時にのみオン状態にし、不要時にはオフ状態にするため、共振補助回路で無用な導通損失が生じるのを防ぎつつ、スイッチング回路で生じるスイッチング損失の低減を効果的に図って、高周波電源装置の効率を高めることができる。
【0052】
<第2の発明>
本願に開示された第2の発明は、上記第1の発明に適用されるものである。本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけでは制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができない状態にあるときに補助回路用スイッチをオン状態にし、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけで制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができる状態にあるときに補助回路用スイッチをオフ状態にするように構成される。
【0053】
<第3の発明>
第3の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されたときに補助回路用スイッチをオン状態にし、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されたときに前記補助回路用スイッチをオフ状態にするように前記補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0054】
本発明によると、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれていない状態にあって、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流が不足しがちなときに、補助回路用スイッチをオン状態にすることにより、共振補助回路をスイッチング回路のレグの中点に接続して、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流に、DC電源部側からコンデンサ分圧回路と補助リアクトルとを通して補充電流を重畳することができるため、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させて、各スイッチをソフトスイッチングでオンオフさせることができ、各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0055】
<第4の発明>
第4の発明も第1の発明に適用される。本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに補助回路用スイッチをオン状態にし、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに補助回路用スイッチをオフ状態にするように補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0056】
上記のように構成すると、DC/RF変換部内に存在するインダクタに蓄積されているエネルギにより、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるか否かを適確に判定して、補助回路用スイッチのオンオフ制御を適確に行うことができる。
【0057】
<第5の発明>
第5の発明も第1の発明に適用される。本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる回路電流を検出する回路電流検出手段と、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに補助回路用スイッチをオン状態にし、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに補助回路用スイッチをオフ状態にするように補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0058】
上記のように、スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる回路電流を検出すると、DC/RF変換部内に存在するインダクタを通して流れる電流を検出できるため、DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる際に十分な部分共振電流を流すことができる状態にあるか否かを適確に判定して、補助回路用スイッチの制御を適確に行わせることができる。
【0059】
<第6の発明>
第6の発明も第1の発明に適用される。本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに補助回路用スイッチをオフ状態にし、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値未満であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値未満であるときに補助回路用スイッチをオン状態にするように補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0060】
上記のように構成すると、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれていない状態にあって、DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギが不足するために、制御相のレグの各スイッチの出力静電容量の充放電を行う部分共振電流が不足する場合だけでなく、インピーダンスが整合状態にあるが、高周波電力発生部の出力を制限する制御が行われているために、制御相のレグの各スイッチの出力静電容量の充放電を行う部分共振電流が不足する場合にも、DC電源部側からコンデンサ分圧回路と補助リアクトルとを通して出力される補充電流を、制御相の各スイッチの出力静電容量の充放電を行う際に流す部分共振電流に重畳させることにより、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させて、制御相の各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0061】
<第7の発明>
第7の発明も第1の発明に適用される。本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段と、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに補助回路用スイッチをオフ状態にし、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値未満であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値未満であるときに補助回路用スイッチをオン状態にするように補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0062】
上記のように構成すると、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合状態と、各スイッチに対して構成された充放電回路を通して流れる電流の大小との双方に基づいて、補助回路用スイッチをオン状態にするかオフ状態にするかを決定して、補助回路用スイッチの制御を行うことができる。
【0063】
<第8の発明>
第8の発明も第1の発明に適用される。本発明においては、第1の発明の構成要素に加えて、スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流が反映されたパラメータを検出するパラメータ検出手段を更に備え、補助回路用スイッチ制御部は、パラメータ検出手段により検出されるパラメータと補助回路用スイッチがとるべき状態との関係を与える補助回路用スイッチ制御用テーブルを記憶した制御用テーブル記憶手段と、パラメータ検出手段により検出されるパラメータに対して制御用テーブルを検索することにより補助回路用スイッチがとるべき状態がオン状態であるかオフ状態であるかを判定して、補助回路用スイッチを判定された状態とするように制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0064】
上記のように構成した場合も、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う際に流す部分共振電流が不足する場合に、その不足を補うように補助回路用スイッチのオンオフを制御することができるため、制御相のレグの各スイッチの出力静電容量の充放電を極力デッドタイムの期間に完了させて、制御相のレグの各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0065】
<第9の発明>
第9の発明は、第1の発明ないし第8の発明の何れかに適用される。本発明においては、スイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスの状態を判定する負荷状態判定手段を更に備え、補助回路用スイッチ制御部のスイッチ制御手段は、前記負荷状態判定手段により前記スイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスが容量性であると判定されているときに前記補助回路用スイッチをオン状態に保つように構成される。
【0066】
上記のように構成すると、DC/RF変換部のスイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相の中点から負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態が生じた場合でも、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を多少なりとも行わせることができるため、高周波電力発生部から負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態になったときに生じるスイッチング損失を従来よりも低減させることができる。
【0067】
<第10の発明>
第10の発明は、第1の発明が対象とする高周波電源装置と同様の構成を有する高周波電源装置を対象とする。
本発明においては、DC電源部の出力電圧が両端に印加されたコンデンサ分圧回路と、コンデンサ分圧回路の分圧点とスイッチング回路の制御相のレグの中点との間に第1の補助回路用スイッチを通して接続された第1の補助リアクトルと、コンデンサ分圧回路の分圧点とスイッチング回路の基準相のレグの中点との間に第2の補助回路用スイッチを通して接続された第2の補助リアクトルとを備えて、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流を前記DC電源部から前記コンデンサ分圧回路と前記第1の補助リアクトルと前記第1の補助回路用スイッチとを通して出力し、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流を前記DC電源部からコンデンサ分圧回路と第2の補助リアクトルと第2の補助回路用スイッチとを通して出力する共振補助回路と、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても制御相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに第1の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと制御相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに第1の補助回路用スイッチをオン状態にするように前記第1の補助回路用スイッチのオンオフを制御し、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても基準相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに第2の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと基準相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに第2の補助回路用スイッチをオン状態にするように第2の補助回路用スイッチのオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部とが設けられる。
【0068】
上記のように構成すると、DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより流れる部分共振電流だけではデッドタイムの期間に制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を完了できない状態が生じている場合に、DC電源部側からコンデンサ分圧回路と第1の補助リアクトルとを通して流れる補充電流を制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う際に流す部分共振電流に重畳して、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるだけでなく、負荷電流の減少などにより、デッドタイムの期間に基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を完了させることができない状態が生じたときに、DC電源部側からコンデンサ分圧回路と第2の補助リアクトルとを通して流れる補充電流を、基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う際に流す部分共振電流に重畳して、基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるため、制御相のレグのスイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができるだけでなく、基準相のレグのスイッチで生じるスイッチング損失の低減をも図って、装置の効率のさらなる向上を図ることができる。
【0069】
<第11の発明>
第11の発明も第1の発明が対象とする高周波電源装置と同様の構成を有する高周波電源装置を対象とする。
本発明においては、DC電源部の出力電圧が両端に印加された第1のコンデンサ分圧回路及び第1のコンデンサ分圧回路の分圧点とスイッチング回路の制御相のレグの中点との間に第1の補助回路用スイッチを通して接続された第1の補助リアクトルと、DC電源部の出力電圧が両端に印加された第2のコンデンサ分圧回路及び第2のコンデンサ分圧回路の分圧点とスイッチング回路の基準相のレグの中点との間に第2の補助回路用スイッチを通して接続された第2の補助リアクトルとを備えて、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流をDC電源部から第1のコンデンサ分圧回路と第1の補助リアクトルと第1の補助回路用スイッチとを通して出力し、基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流をDC電源部から第2のコンデンサ分圧回路と第2の補助リアクトルと第2の補助回路用スイッチとを通して出力する共振補助回路と、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても制御相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに第1の補助回路用スイッチをオフ状態にし、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと制御相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに第1の補助回路用スイッチをオン状態にするように第1の補助回路用スイッチのオンオフを制御し、基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても基準相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに第2の補助回路用スイッチをオフ状態にし、基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと基準相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに第2の補助回路用スイッチをオン状態にするように第2の補助回路用スイッチのオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部とを設けた。
【0070】
第11の発明の構成は、DC電源部の出力電圧が印加される第1のコンデンサ分圧回路と第2の分圧回路とを設けて、DC電源部と第1のコンデンサ分圧回路とにより、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う部分共振電流に重畳する補充電流を出力する電流源を構成し、DC電源部と第2のコンデンサ分圧回路とにより、基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う部分共振電流に重畳する補充電流を出力する電流源を構成する点を除き、第10の発明の構成と同様であり、第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチの制御の仕方及び作用効果は第10の発明と同様である。
【0071】
<第12の発明>
第12の発明は、第10の発明又は第11の発明に適用される。本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけでは制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができない状態にあるときに第1の補助回路用スイッチをオン状態にし、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけで制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができる状態にあるときに第1の補助回路用スイッチをオフ状態にし、基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけでは基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができない状態にあるときに第2の補助回路用スイッチをオン状態にし、基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけで基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができる状態にあるときに第2の補助回路用スイッチをオフ状態にするように構成される。
【0072】
上記のように構成すると、スイッチング回路の制御相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了できない状態が生じているときにDC電源部から第1の補助リアクトルと第1の補助回路用スイッチとを通して制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を補充することができ、スイッチング回路の基準相のレグを構成する各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了できない状態が生じているときにDC電源部から第2の補助リアクトルと第2の補助回路用スイッチとを通して基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を補充することができるため、制御相のレグのスイッチ及び基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を十分に行わせて、各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。また制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を十分に流すことができるとき及び基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を十分に流すことができるときには、共振補助回路をスイッチング回路から切り離すことができるので、共振補助回路で生じる損失によりDC/RF変換部で生じるトータルの損失が増大するのを防ぐことができる。
【0073】
<第13の発明>
第13の発明も第10の発明又は第11の発明に適用される。本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されたときに前記第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にし、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されたときに前記第1及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にするように前記第1及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0074】
上記のように構成しておくと、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれていない状態にあって、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流が不足しがちなときに、DC電源部から第1の補助リアクトルと第1の補助回路用スイッチとを通して、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を補充することができ、基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流が不足しがちなときに、DC電源部から第2の補助リアクトルと第2の補助回路用スイッチとを通して、基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を補充することができるため、デッドタイムの期間に制御相のレグのスイッチ及び基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を十分に行わせて、各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。またインピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれている状態にあって、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を十分に流すことができるとき及び基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を十分に流すことができるときには、共振補助回路をスイッチング回路から切り離すことができるので、共振補助回路で生じる損失によりDC/RF変換部で生じるトータルの損失が増大するのを防ぐことができる。
【0075】
<第14の発明>
第14の発明は、第10の発明又は第11の発明に適用される。本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに前記第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にし、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに前記第1及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にするように前記第1及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0076】
上記のように構成すると、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる際に十分な部分共振電流を流すことができる状態にあるか否かの判定、及び基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる際に十分な部分共振電流を流すことができる状態にあるか否かの判定をより適確に行うことができ、第1及び第2の補助回路用スイッチの制御を適確に行わせることができる。
【0077】
<第15の発明>
第15の発明も第10の発明又は第11の発明に適用されるもので、本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段と、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にし、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にするように第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0078】
上記のように構成すると、DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる際に十分な部分共振電流を流すことができる状態にあるか否かの判定を適確に行って、補助回路用スイッチの制御を適確に行わせることができる。
【0079】
<第16の発明>
第16の発明も、第10の発明又は第11の発明に適用されるもので、本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にし、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値未満であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値未満であるときに第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にするように第1及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0080】
上記のように構成すると、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれていないために高周波電力発生部から負荷に所定の進行波電力を供給できない状態にあって、DC/RF変換部内に存在するインダクタに蓄積されたエネルギが不足し、制御相のレグのスイッチの出力静電容量及び基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う際に部分共振電流を十分に流すことができない場合だけでなく、インピーダンスが整合状態にあるが、高周波電力発生部の出力を制限する制御が行われているために、DC/RF変換部内に存在するインダクタに蓄積されたエネルギが不足して、制御相のレグのスイッチの出力静電容量及び基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う際に流す部分共振電流が不足する場合にも、第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にして、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電及び基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させるべく、制御相のレグ及び基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う部分共振電流に補充電流を重畳して、各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができ、制御相及び基準相の各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。本発明によった場合には、インピーダンスが整合しているか否かを判定するだけで第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にするか否かを決定する場合に比べて、よりきめの細かい制御を行わせることができる。
【0081】
<第17の発明>
第17の発明も、第10の発明又は第11の発明に適用される。本発明においては、補助回路用スイッチ制御部が、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段と、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオフ状態にし、前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第1の設定値未満であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第2の設定値未満であるときに前記第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にするように前記補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0082】
上記のように構成すると、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合状態と、各スイッチに対して構成された充放電回路を通して流れる電流の大小との双方に基づいて、第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にするかオフ状態にするかが決められるので、第1及び第2の補助回路用スイッチの制御をよりきめ細かく行うことができ、第1及び第2の補助回路用スイッチがむやみに投入されて制御相のレグのスイッチ及び基準相のレグのスイッチで発生する導通損失が増大するのを防ぐことができる。
【0083】
<第18の発明>
第18の発明も、第10の発明又は第11の発明に適用される。本発明においては、スイッチング回路の基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流が反映されたパラメータを検出するパラメータ検出手段が更に設けられ、補助回路用スイッチ制御部は、パラメータ検出手段により検出されるパラメータと第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチがとるべき状態との関係を与える補助回路用スイッチ制御用テーブルを記憶した制御用テーブル記憶手段と、パラメータ検出手段により検出されるパラメータに対して制御用テーブルを検索することにより第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチがとるべき状態がオン状態であるかオフ状態であるかを判定して、第1の補助回路用スイッチ及び第2の補助回路用スイッチを判定された状態とするように制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0084】
上記のように構成した場合も、第1及び第2の補助回路用スイッチのオンオフの制御を適確に行わせて、制御相のレグのスイッチ及び基準相のレグのスイッチで生じるスイッチング損失の低減をはかることができる。
【0085】
<第19の発明>
第19の発明は、第10の発明ないし第18の発明の何れかに適用される。本発明においては、スイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスの状態を判定する負荷状態判定手段が更に設けられ、補助回路用スイッチ制御部のスイッチ制御手段が、負荷状態判定手段によりスイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスが容量性であると判定されているときに補助回路用スイッチをオン状態に保つように構成される。
【0086】
上記のように構成すると、DC/RF変換部のスイッチング回路のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態が起った場合に、第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にして、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電及び基準相のレグの出力静電容量の充放電を多少なりとも行わせることができるため、高周波電力発生部から負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態が起った場合に生じるスイッチング損失を従来よりも低減させることができる。
【発明の効果】
【0087】
本発明によれば、一定の直流出力を発生するDC電源部と、基準相のレグと制御相のレグとを有するフルブリッジ型のスイッチング回路を備えてDC電源部から一定の直流電圧が入力されるDC/RF変換部と、DC/RF変換部のスイッチング回路の各レグを構成するハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチ双方への駆動信号の供給を休止する期間であるデッドタイムを設けながら、負荷に供給する高周波電力をDC/RF変換部から出力させるべく、スイッチング回路を構成するDC/RF変換部のスイッチを制御する制御部とを有する高周波電力発生部とを備えた高周波電源装置において、DC電源部の出力電圧が両端に印加されたコンデンサ分圧回路と、このコンデンサ分圧回路の分圧点とスイッチング回路の制御相のレグの中点との間に補助回路用スイッチを通して接続された補助リアクトルとを備えた共振補助回路を設けて、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う部分共振電流に、DC電源部からコンデンサ分圧回路と補助リアクトルとを通して出力させた補充電流を重畳することができるようにしたので、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を極力デッドタイムの期間に完了させて、制御相のレグのスイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができ、負荷電流の減少時などに制御相のレグのスイッチのスイッチング損失が増大して装置の効率が低下するのを防ぐことができる。
【0088】
また本発明によれば、スイッチング回路の制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う部分共振電流が不足するおそれがないときには、補助回路用スイッチをオフ状態にして、共振補助回路で無用な導通損失が生じるのを防ぐことができるようにしたので、スイッチング回路で生じる損失の低減を効果的に図って、高周波電源装置の効率を高めることができる。
【0089】
特に、本願に開示された第10ないし第18の発明によれば、DC/RF変換部のスイッチング回路の制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う際に流れる部分共振電流が不足するときに該部分共振電流に補充電流を重畳することができるだけでなく、基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う際に流れる部分共振電流が不足するときに該部分共振電流に補充電流を重畳することができるようにしたので、負荷電流の減少などに起因して基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行う際に流れる部分共振電流が不足する状態になったときに、スイッチング損失が増加して装置の効率が低下するのを防ぐことができる。
【0090】
また第9の発明又は第19の発明によれば、DC/RF変換部のスイッチング回路のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態が生じた場合に、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を多少なりとも行わせることができるようにしたため、高周波電力発生部から負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態が生じた場合に生じるスイッチング損失を従来よりも低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】本発明の一実施形態の構成を示したブロック図である。
図2】本発明の他の実施形態の構成を示したブロック図である。
図3】本発明の更に他の実施形態の構成を示したブロック図である
図4】本発明の更に他の実施形態の構成を示したブロック図である
図5】本発明の更に他の実施形態の構成を示したブロック図である
図6】本発明の更に他の実施形態の構成を示したブロック図である
図7】本発明の更に他の実施形態の構成を示したブロック図である
図8】本発明の更に他の実施形態の構成を示したブロック図である
図9】本発明の更に他の実施形態の構成を示したブロック図である
図10】本発明の各実施形態で用いることができるDC電源部とDC/RF変換部の構成例を示した回路図である。
図11図10に示した回路において制御相のレグの各スイッチに与えられる駆動信号の波形と補助リアクトルに流れる電流の波形とを模式的に示した波形図である。
図12】本発明の各実施形態で用いることができるDC電源部とDC/RF変換部の他の構成例を示した回路図である
図13】本発明の各実施形態で用いることができるDC電源部とDC/RF変換部の更に他の構成例を示した回路図である。
図14】(A)ないし(D)は、本発明の各実施形態で用いることができる補助回路用スイッチの種々の構成例を示した回路図である。
図15】(A)及び(B)は、本発明の各実施形態で用いることができる補助回路用スイッチの他の構成例を示した回路図である。
図16】可変DC電源部と該可変DC電源部の直流出力を高周波出力に変換するDC/RF変換部とを備えた従来の高周波電源装置の構成を示したブロック図である。
図17】一定の直流電圧を出力するDC電源部と、該DC電源部の直流出力を高周波出力に変換するDC/RF変換部とを備えた従来の高周波電源装置の要部の構成例を示した回路図である。
図18】(A)及び(B)は本発明が対象とする高周波電源装置のDC/RF変換部を構成するスイッチング回路の基準相のレグのスイッチ及び制御相のレグのスイッチにそれぞれ与えられる駆動信号の波形を模式的に示した波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下に本発明の第1の実施形態ないし第19の実施形態を開示する。これらの実施形態のうち、第1ないし第9の実施形態は、それぞれ前記第1の発明ないし第9の発明に対応するもので、出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流が特に不足しがちなスイッチング回路の制御相のレグの各スイッチのスイッチング動作がハードスイッチング動作となるのを抑制して、スイッチング損失の低減を図ることを目的としている。
また第10の実施形態ないし第19の実施形態は、それぞれ前記第10の発明ないし第19の発明に対応するもので、制御相のレグのスイッチだけでなく、基準相のレグのスイッチのスイッチング動作がハードスイッチング動作となるのをも抑制して、スイッチング損失の更なる低減を図ることを目的としている。以下各実施形態について詳細に説明する。
【0093】
<第1の実施形態>
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態の構成がブロック図で示されている。またこの実施形態の要部の回路構成が図10に示されている。図1に示した高周波電源装置1は、負荷2に供給する高周波電力を発生する高周波電力発生部3と、高周波電力発生部3の出力インピーダンスと高周波電力発生部3の出力端から負荷側を見たインピーダンスである負荷インピーダンスとの整合を図るインピーダンス整合器4と、一定の直流出力を発生するDC電源部5とを備えている。以下、各部の構成を説明する。
【0094】
本実施形態では、負荷2がプラズマ負荷であるとする。プラズマ負荷は、高周波電源装置1から与えられる高周波電力によりプラズマを発生する負荷で、半導体等の被処理物にプラズマを照射することによりエッチング等の処理を行うプラズマ処理装置等である。プラズマ負荷は通常チャンバ内にプラズマ発生用の電極を備えていて、該電極に高周波電力が与えられた際にプラズマを発生する。プラズマ負荷のインピーダンスは、電極間に与えられる電力の大きさ、チャンバ内のガスの圧力、チャンバ内に供給されるガスの流量、プラズマを発生させる時間などの種々の条件により細かく変化する。
【0095】
インピーダンス整合器4は、インピーダンス可変素子である可変コンデンサ又は可変インダクタと、モータを駆動源としてインピーダンス可変素子を操作する操作機構と、高周波電力発生部から負荷側を見たインピーダンスを検出するための手段とを備えていて、負荷2で消費される高周波電力を最大にするために、高周波電源装置1の高周波電力発生部3の出力インピーダンスと、高周波電力発生部3から負荷側を見たインピーダンスとを整合させる(共役関係にする)ように調整する。一般に高周波電力発生部3の出力インピーダンスは50Ωに設計されているため、インピーダンス整合器3は、高周波電力発生部3から負荷側を見たインピーダンスを50Ωに等しくするように動作する。
【0096】
DC電源部5は、一定の直流出力を発生する電源部で、商用の交流電力を直流電力に変換する整流器や、商用電源の出力で整流回路を通して充電されるバッテリなどにより構成される。
【0097】
高周波電力発生部3は、DC電源部5の直流出力を高周波出力に変換するDC/RF変換部6と、DC/RF変換部6の出力から高調波成分を除去するローパスフィルタ(LPF)7と、ローパスフィルタ7の出力側で、負荷に供給される進行波電力と負荷から戻ってくる反射波電力とを検出するパワー検出部8と、DC/RF変換部6を制御する制御部9とを備えている。高周波電力発生部3がこれらの構成を備えていることは従来の高周波電源装置と同様であるが、本実施形態では、高周波電力発生部3に新たに共振補助回路10と、補助回路用スイッチ制御部11とが設けられている。以下、本実施形態で用いる高周波電力発生部3の各部の構成を詳細に説明する。
【0098】
DC/RF変換部6は、DC電源部5の直流出力を高周波出力に変換するためのスイッチング動作を行うスイッチング回路6Aと、スイッチング回路の一方の出力端子に一端が接続された直列共振回路6Bと、スイッチング回路6Aの出力が直列共振回路6Bを通して一次コイルW1に入力されたトランス6Cとからなっている。スイッチング回路6Aは、互いに直列に接続されたハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを有して両スイッチの接続点を中点とした基準相のレグと、同じく互いに直列に接続されたハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを有して両スイッチの接続点を中点とした制御相のレグとを備えて、両レグをDC電源部5の出力端子間に並列に接続した構成を有するフルブリッジ型の回路からなっている。DC/RF変換部6は、DC電源部5の直流出力をスイッチング回路6Bのスイッチング動作により高周波出力に変換して、変換した高周波出力を直列共振回路6Bとトランス6Cとを通して出力する。
【0099】
本実施形態で用いるスイッチング回路6Aは、例えば図10に示されているように構成される。図10に示されたスイッチング回路6Aは、ハイサイドスイッチQ1と該ハイサイドスイッチに対して直列に接続されたローサイドスイッチQ2とからなる基準相のレグと、ハイサイドスイッチQ3と該ハイサイドスイッチに対して直列に接続されたローサイドスイッチQ4とからなる制御相のレグとを備えて、両レグがDC電源部5の出力端子間に並列に接続されたフルブリッジ型の構成を有している。
【0100】
ハイサイドスイッチQ1,Q3及びローサイドスイッチQ2,Q4は、半導体スイッチにより構成される。スイッチQ1〜Q4をそれぞれ構成する半導体スイッチとしては、それぞれの制御端子間に所定レベル以上の駆動信号が与えられたときにターンオンして該駆動信号が与えられている間オン状態を保持し、駆動信号の供給が停止されたときにターンオフする特性を有するものを用いる。本実施形態では、各スイッチとしてMOSFETが用いられている。
【0101】
図示のスイッチング回路6Aにおいては、基準相のレグのハイサイドスイッチQ1を構成するMOSFETのドレインと、制御相のレグのハイサイドスイッチQ3を構成するMOSFETのドレインとの接続点aと、基準相のレグのローサイドスイッチQ2を構成するMOSFETのソースと制御相のレグのローサイドスイッチQ4を構成するMOSFETのソースとの接続点bとがスイッチング回路6Aの入力端子となっていて、これらの入力端子a,b間にDC電源部5の出力電圧Vdcが入力されている。
【0102】
また基準相のレグのハイサイドスイッチQ1を構成するMOSFETのソースと、基準相のレグのローサイドスイッチQ2を構成するMOSFETのドレインとの接続点(基準相のレグの中点)cと、制御相のレグのハイサイドスイッチQ3を構成するMOSFETのソースと制御相のレグのローサイドスイッチQ4を構成するMOSFETのドレインとの接続点(制御相のレグの中点)dとがスイッチング回路6Aの出力端子となっていて、基準相のレグの中点となっている一方の出力端子cがインダクタLrとコンデンサCrとの直列回路からなる直列共振回路6Bの一端に接続されている。
【0103】
直列共振回路6Bの他端は、トランス6Cの1次コイルW1の一端に接続され、トランス6Cの1次コイルW1の他端は、制御相のレグの中点となっているスイッチング回路の他方の出力端子dに接続されている。トランス6Cの二次コイルW2の一端e及び他端fがDC/RF変換部6の出力端子となっていて、これらの出力端子e,fから出力される高周波電力がローパスフィルタ7に入力されている。
【0104】
ローパスフィルタ7は、例えば図10に示されているように、DC/RF変換部6の一方の出力端子eに一端が接続されたリアクトルLzと、リアクトルLzの他端とDC/RF変換部6の他方の出力端子fとの間に接続されたキャパシタCzとからなっていて、DC/RF変換部6から出力される高周波電力から高調波成分を除去して得た所望の周波数の高周波電力を出力する。
【0105】
基準相のレグのハイサイドスイッチQ1を構成するMOSFETのゲート・ソース間(制御端子間)及び基準相のレグのローサイドスイッチQ2を構成するMOSFETのゲート・ソース間にはそれぞれ、図1に示された制御部9内に設けられたスイッチ駆動部から駆動信号S1及びS2が交互に与えられる。これらの駆動信号は、図17に示した従来のDC/RF変換部の基準相のレグのスイッチQ1及びQ2に与えられていた駆動信号S1及びS2と同様であり、それぞれの波形を模式的に示すと図18(A)の通りである。
【0106】
スイッチQ1及びQ2が同時にオン状態になって、DC電源部5の出力を短絡するのを防ぐため、スイッチQ1及びQ2の一方に与えていた駆動信号を消滅させるタイミングと他方に駆動信号を与えるタイミングとの間及びスイッチQ1及びQ2の他方に与えていた駆動信号を消滅させるタイミングと一方に駆動信号を与えるタイミングとの間にデッドタイムtdが設けられ、これらのデッドタイムの期間、スイッチQ1,Q2への駆動信号の供給が停止させられる。
【0107】
同様に、制御相のレグのハイサイドスイッチQ3を構成するMOSFETのゲート・ソース間(制御端子間)及び制御相のレグのローサイドスイッチQ4を構成するMOSFETのゲート・ソース間にそれぞれ、図1に示された制御部9内に設けられたスイッチ駆動部から、図18(B)に示されているように駆動信号S3及びS4が交互に与えられる。制御相のレグのスイッチQ3及びQ4が同時にオン状態になってDC電源部5の出力を短絡するのを防ぐため、スイッチQ3及びQ4の一方に与えていた駆動信号を消滅させるタイミングと他方に駆動信号を与えるタイミングとの間、及びスイッチQ3及びQ4の他方に与えていた駆動信号を消滅させるタイミングと一方に駆動信号を与えるタイミングとの間にデッドタイムtdが設けられ、これらのデッドタイムの期間、スイッチQ3,Q4への駆動信号の供給が停止させられる。
【0108】
なお図10においては、スイッチQ1〜Q4の出力静電容量C1〜C4の図示と、各スイッチの両端に逆並列に設けられている帰還ダイオードD1〜D4の図示とが省略されている。
【0109】
図1に示されたパワー検出部8は、ローパスフィルタ7の出力側で、DC/RF変換部5からローパスフィルタ7を通して負荷に与えられる進行波電力と負荷で反射して戻ってくる反射波電力とを検出して、進行波電力及び反射波電力に関する情報を有する進行波電力検出信号Pf及び反射波電力検出信号Prを出力する。このようなパワー検出部の構成は周知であるのでその詳細な説明は省略する。
【0110】
DC/RF変換部6のスイッチング回路6Aを制御するために制御部9が設けられている。制御部9は、パワー検出部8が出力する進行波電力検出信号Pf及び反射電力検出信号Prを入力として、スイッチング回路6Aの基準相のレグのハイサイドスイッチQ1及びローサイドスイッチQ2にそれぞれ駆動信号S1及びS2を与えるとともに、制御相のレグのハイサイドスイッチQ3及びローサイドスイッチQ4にそれぞれ駆動信号S3及びS4を与えて、高周波電力発生部から所定の大きさの高周波電力を出力させるべく、スイッチング回路6Aにスイッチング動作を行わせる。
【0111】
制御部9は、スイッチング回路6Aに段落[0019]に示した動作を繰り返し行わせるようにスイッチQ1〜Q4に駆動信号S1〜S4を与えることにより、DC電源部5の直流出力を高周波出力に変換する動作をDC/RF変換部6に行わせる。DC/RF変換部6が出力する高周波電力は、ローパスフィルタ7により高調波成分が除去された後、パワー検出部8とインピーダンス整合器4とを通して負荷2に供給される。
【0112】
制御部9は、基準相のレグの各スイッチをターンオンするタイミングと、基準相のレグの各スイッチの対角位置にある制御相のレグの各スイッチをターンオンするタイミングとの間の位相角φ(図18参照)を制御位相角として、パワー検出部8から出力される検出信号に応じて、該制御位相角φを0°ないし180°の範囲で変化させることにより、負荷2に供給される高周波電力の進行波成分を設定値に保つ出力制御と、パワー検出部8で検出された反射波成分が設定された規定値を超えたときに、該反射波成分を規定値以下に抑えるようにDC/RF変換部6の出力を抑制する反射保護制御とを行う。
【0113】
前述した背景技術についての説明の中で述べたように、この種のDC/RF変換部は、デッドタイムの開始時に駆動信号の供給が停止されるスイッチの出力静電容量の充電と、デッドタイムの終了時に駆動信号が供給されるスイッチの出力静電容量の放電とを、各スイッチの出力静電容量とDC/RF変換部6内に本来存在するインダクタとを含む充放電回路(直列共振回路)を通してデッドタイムの期間に行わせるように構成されている。
【0114】
なおここでいう「直列共振回路」は、各スイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を流す共振回路で、各スイッチの出力静電容量と、各スイッチの出力静電容量の充電電流又は放電電流が流れる経路に存在する静電容量及びインダクタンスとにより構成されるものであり、図1及び図10に示された直列共振回路6Bそのものを意味するものではない。
【0115】
図示の例では、各スイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための回路(充放電回路)を構成するためのインダクタを確保する目的と、直流分をカットする目的とで直列共振回路6Bを設けているが、直列共振回路6Bを省略して、トランス6Cのインダクタンスと各スイッチの出力静電容量とにより、各スイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を流す直列共振回路を構成するようにしても、DC/RF変換部を機能させることができる。また直流分のカットは、トランス6Cの二次側や、ローパスフィルタ内で行うこともできる。
【0116】
スイッチング回路6Aの各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図るためには、各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させる必要があるが、「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたように、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとられていない場合や、DC/RF変換部6の回路内に本来存在するインダクタに蓄積されているエネルギが不足している場合には、各スイッチの出力静電容量の充放電を行う際に流す部分共振電流が不足することがあるため、デッドタイムの期間に各スイッチの出力静電容量の充放電を完了させることができないことがある。このような事態が生じると、各スイッチのターンオフ及びターンオンをZVSやZCSで行わせることができなくなるため、スイッチング損失が増加してしまう。
【0117】
特に、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行う際に流す部分共振電流は、負荷電流により回路に存在するインダクタに蓄積されたエネルギによって制御相のレグと基準相のレグとの間を流れる循環電流であるため、負荷電流が小さい場合に不足がちになるのを避けられない。従って、少なくとも制御相のレグのスイッチQ3及びQ4に対して、それぞれの出力静電容量の充放電を行わせる部分共振電流が不足することがないようにするための対策を講じておくことが好ましい。
【0118】
そこで本実施形態では、図1及び図10に示したように、第1の分圧コンデンサCaと該第1の分圧コンデンサに直列に接続された第2の分圧コンデンサCbとを有してDC電源部5の出力電圧が両端に印加されたコンデンサ分圧回路10Aと、コンデンサ分圧回路10Aの分圧点(分圧コンデンサCaとCbの接続点)10aとスイッチング回路6Aの制御相のレグの中点dとの間にオンオフ制御が可能な補助回路用スイッチ10Cを通して接続された補助リアクトル10Bとを備えて、制御相のレグのスイッチQ3,Q4に対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に重畳する補充電流をDC電源部5からコンデンサ分圧回路10Aと補助リアクトル10Bと補助回路用スイッチ10Cとを通して出力する共振補助回路10と、補助回路用スイッチ10Cのオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部11とを設けた。
【0119】
上記補助回路用スイッチ制御部11は、制御相のレグのスイッチQ3,Q4に対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流の重畳を行わなくても制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムtdの期間に完了させることができるときに補助回路用スイッチ10Cをオフ状態に保持し、制御相のレグのスイッチQ3,Q4に対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流の重畳を行わなくては制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量の充放電をデッドタイムtdの期間に完了させることができないときに補助回路用スイッチ10Cをオン状態にするべく補助回路用スイッチ10Cのオンオフを制御するように構成される。
【0120】
ここで共振補助回路10のコンデンサ分圧回路10Aを構成する第1及び第2の分圧コンデンサCa及びCbは、十分大きな静電容量を有するコンデンサであるとし、各分圧コンデンサが、DC電源部5の出力電圧Vdcの1/2の電圧Vdc/2を発生する電圧源と等価であるとする。
【0121】
補助回路用スイッチ10Cがオン状態にあるときには、分圧回路のコンデンサCa又はCbの両端の電圧Vdc/2が補助リアクトル10Bの両端に印加されるが、補助リアクトル10Bの両端に印加される電圧Vdc/2の極性は、スイッチング回路10Aの制御相のレグのスイッチQ3,Q4のオンオフにより変化する。ハイサイドスイッチQ3がオン状態にあるときには、コンデンサ分圧回路の分圧点10a側が負の極性となるように、コンデンサCaの両端の電圧Vdc/2が補助リアクトル10Bの両端に印加され、ローサイドスイッチQ4がオン状態にあるときには、コンデンサ分圧回路の分圧点10a側が正の極性となるように、コンデンサCbの両端の電圧Vdc/2が補助リアクトル10Bの両端に印加される。そして、補助リアクトル10Bに第1の分圧コンデンサCaの両端の電圧Vdc/2が印加されたときには、スイッチング回路6Aの制御相のレグの中点dからコンデンサ分圧回路10Aの分圧点10a側に向かう極性の電流ILa(図11C参照)が流れ、第2の分圧コンデンサCbの両端の電圧Vdc/2が印加されたときには、分圧回路の分圧点10aからスイッチング回路6Aの制御相のレグの中点d側に向かう極性の電流ILb(図11C参照)が流れる。
【0122】
従って、補助回路用スイッチ10Cがオン状態にあるときに補助リアクトル10Bに流れる電流は、図11(C)に示すように、三角波形の電流となり、制御相のレグのハイサイドスイッチQ3への駆動信号S3の供給が停止してからローサイドスイッチQ4への駆動信号S4の供給が開始されるまでのデットタイムtd1の期間に補助リアクトル10Bを通して流れるILaが、デッドタイムtd1の開始時にターンオフ動作を開始するスイッチQ3の出力静電容量C3の充電と、デッドタイムtd1の終了時にターンオン動作を開始するスイッチQ4の出力静電容量C4の放電とを行わせる部分共振電流に補充電流として重畳される。
【0123】
そのため、DC/RF変換部6内の回路に存在するインダクタに蓄積されているエネルギが少ない場合でも、補助回路用スイッチ10Cをオン状態にすれば、ハイサイドスイッチQ3の出力静電容量C3の充電及びローサイドスイッチQ4の出力静電容量C4の放電をデッドタイムtd1の期間に完了させて、スイッチQ3及びQ4で生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0124】
また補助回路用スイッチ10Cがオン状態にあるときには、ローサイドスイッチQ4への駆動信号S4の供給が停止してからハイサイドスイッチQ3への駆動信号S3の供給が開始されるまでのデットタイムtd2の期間に補助リアクトル10Bを通して流れる電流ILbが、デッドタイムtd2の開始時にターンオフ動作を開始するローサイドスイッチQ4の出力静電容量C4の充電と、デッドタイムtd2の終了時にターンオン動作を開始するハイサイドスイッチQ3の出力静電容量C3の放電とを行う際に流れる部分共振電流に補充電流として重畳される。従って、DC/RF変換部6内の回路に存在するインダクタに蓄積されているエネルギが少ない場合でも、補助回路用スイッチ10Cをオン状態にしておけば、ローサイドスイッチQ4の出力静電容量C4の充電及びハイサイドスイッチQ3の出力静電容量C3の放電をデッドタイムtd2の期間に完了させて、スイッチQ3及びQ4で生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0125】
ただし、共振補助回路10により無用の導通損失が生じるのを防ぐためには、共振補助回路10の分圧回路10A及び補助リアクトル10Bを必要なときにのみスイッチング回路に接続するように補助回路用スイッチ10Cを制御する必要がある。
【0126】
従って、装置の効率を高めるためには、何らかの原因で制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムに期間に完了させることができない状態にあるときに補助回路用スイッチ10Cをオン状態にし、補助回路用スイッチをオン状態にしなくても制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムに期間に完了させることができるときには補助回路用スイッチをオフ状態にするように補助回路用スイッチ10Cを制御する必要がある。
【0127】
なおDC/RF変換部内に存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより流れる部分共振電流が不足するときに、補助リアクトル10Bを通して電流を補充してスイッチQ3,Q4の出力静電容量の充放電を確実に行わせるためには、補助リアクトル10Bを通して行う部分共振電流への補充電流の重畳を、デッドタイムが開始されるタイミングよりも前に開始する必要がある。従って、補助回路用スイッチ10Cは、各デッドタイムが開始されるタイミングよりも前にオン状態にしておく必要がある。
【0128】
ただし、スイッチQ3がオン状態にある期間ts1の間及びスイッチQ4がオン状態にある期間ts2 の間補助回路用スイッチ10Cをオン状態に保持しておくと、スイッチQ3,Q4を通して電流ILa,ILbが流れ続けるため、スイッチQ3,Q4で生じる導通損失の増加を招く。従って、DC/RF変換部6を設計する際には、低減されるスイッチング損失と増加する導通損失とのバランスをとって、スイッチング回路6Aで生じるトータルの損失が少なくなるように、補助リアクトル10Bのインダクタンス値を設定する。
【0129】
本実施形態による場合、補助回路用スイッチ制御部11は、DC/RF変換部6の状態や負荷の状態などから、部分共振電流への補充電流の重畳を行わなくても(補助リアクトル10Bを制御相のレグの中点から切り離しておいても)制御相のレグを構成するスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムtdの期間に完了させることができるか否かを判定する手段を備える必要があるが、この判定は、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合状態や、負荷電流の大きさ、あるいはDC/RF変換部内の回路を流れる回路電流などに基づいて行うことができる。
【0130】
本実施形態のように構成すると、DC/RF変換部6内に存在するインダクタに蓄積されるエネルギが少なく、当該エネルギにより流れる部分共振電流だけではデッドタイムの期間に制御相のレグのスイッチQ3、Q4の出力静電容量の充放電を完了させることができない場合に、補助回路用スイッチ10Cをオン状態にすることにより、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に、DC電源部5側からコンデンサ分圧回路10Aと、補助リアクトル10Bとを通して流れる補充電流を重畳させることができるため、スイッチQ3、Q4の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることが可能になる。従って、出力静電容量の充放電が不完全になりがちな(スイッチング損失が大きくなりがちな)制御相のレグの各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図って、装置の効率を高めることができる。
【0131】
DC/RF変換部内に存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより、各スイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させるために必要な部分共振電流を流すことができる状態にある場合に、共振補助回路を制御相のレグの中点に接続しておくと、共振補助回路を通して各スイッチに流れる電流により導通損失が増大するため、スイッチング回路で生じる損失がかえって増大してしまうという問題が生じ、スイッチング損失の低減を図ることの利点を活かすことができなくなる。本実施形態によれば、補助回路用スイッチを必要時にのみオン状態にし、不要時にはオフ状態にするため、上記のような問題が生じるのを防いで、スイッチング回路で生じる損失の低減を効果的に図り、高周波電源装置の効率を高めることができる。
【0132】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態においては、補助回路用スイッチ制御部11が、制御相のレグのスイッチQ3,Q4に対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけでは制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムtdの期間に完了させることができない状態にあるときに補助回路用スイッチ10Cをオン状態にし、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけで制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができる状態にあるときに補助回路用スイッチ10Cをオフ状態にするように構成される。
【0133】
制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内の回路に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけで制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができる状態にあるか否かの判定は、インダクタに蓄積されるエネルギと関連を持つ適宜のパラメータ、例えば、負荷インピーダンスや、負荷電流の大きさや、DC/RF変換部内の回路を流れる電流の大きさなどを設定値と比較することにより行うことができる。判定に用いる設定値は、実験的に決定することができる。
【0134】
上記補助回路用スイッチ制御部11は、種々の構成をとることができる。制御相のレグのスイッチQ3及びQ4の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることを可能にするべく、補助回路用スイッチ10Cを制御する補助回路用スイッチ制御部11の種々の構成例を、図2ないし図7に第3いし第8の実施形態として示した。なお図2ないし図7に示した各実施形態において、スイッチング回路6A、直列共振回路6B、トランス6C、ローパスフィルタ7及び共振補助回路10の回路構成は図10に示した例と同様である。
【0135】
<第3の実施形態>
図2は、本発明の第3の実施形態の構成を示したものである。本実施形態においては、補助回路用スイッチ制御部11が、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合状態に応じて補助回路用スイッチ10Cを制御するように構成されている。
【0136】
図2に示した例では、補助回路用スイッチ制御部11が、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段11Aと、整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていないと判定されたときに補助回路用スイッチ10Cをオン状態にし、整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていると判定されたときに補助回路用スイッチ10Cをオフ状態にするように補助回路用スイッチ10Cを制御するスイッチ制御手段11Bとにより構成されている。その他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0137】
図2に示した整合状態判定手段11Aは、パワー検出部8が出力する進行波電力検出信号Pf及び反射波電力検出信号Prを用いてインピーダンスの整合がとれているか否かの判定を行うように構成されている。パワー検出部8が進行波電力及び反射波電力の絶対値を検出するように構成されている場合には、例えば、進行波電力の検出値と反射波電力の検出値とから求めた反射係数|Γ|が設定値以下であるときにインピーダンスの整合がとれていると判定し、反射係数|Γ|が設定値を超えているときにインピーダンスの整合がとれていないと判定するように整合状態判定手段11Aを構成することができる。
【0138】
またパワー検出部8が、進行波及び反射波のベクトル値を検出して進行波電力及び反射波電力を検出するように構成されている場合には、進行波及び反射波の絶対値と位相とから高周波電力発生部から負荷側を見たインピーダンスである負荷側インピーダンスを求めて、該負荷側インピーダンスからインピーダンスの整合がとれているか否かを判定するように整合状態判定手段を構成することができる。
【0139】
またパワー検出部8で検出点における電圧及び電流を検出し、検出した電圧と電流との間の位相差を演算した後、検出した電圧及び電流と演算した位相差(電圧と電流との位相差)とに基づいて負荷側インピーダンスを求めて、該負荷側インピーダンスからインピーダンスの整合がとれているか否かを判定するように整合状態判定手段11Aを構成することもできる。
【0140】
一般に高周波電源装置においては、高周波電力発生部の出力端に高周波電力の進行波成分と反射波成分とを検出するパワー検出部8を常備しているので、本実施形態のように構成すると、特別のセンサを付加することなく、補助回路用スイッチ10Cの制御に用いる制御情報(補助回路用スイッチをオン状態にするかオフ状態にするかを決定するために用いる情報)を得ることができる。
【0141】
図2に示した例では、パワー検出部8の出力信号を用いてインピーダンスの整合がとれているか否かの判定を行うように整合状態判定手段11Aを構成しているが、インピーダンスの整合がとれているか否かの判定は、インピーダンス整合器4から得た負荷側インピーダンスの情報に基づいて行うこともできる。図2に示した例では、整合状態判定手段11Aを補助回路用スイッチ制御部11内に設けているが、インピーダンス整合器4から得た負荷側インピーダンスの情報に基づいてインピーダンスの整合がとれているか否かの判定を行う場合には、整合状態判定手段をインピーダンス整合器4内に設けることもできる。
【0142】
上記のような整合状態判定手段11Aが設けられる場合、スイッチ制御手段11Bは、整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていないと判定されたときにスイッチング回路6Aの制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムの期間に完了できない状態が生じていると見做して補助回路用スイッチ10Cをオン状態にし、整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていると判定されたときにスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムの期間に完了できる状態にあると見做して補助回路用スイッチ10Cをオフ状態にするように構成することができる。
【0143】
インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれていない場合には、スイッチング回路6Aの各スイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流が不足することが多く、各スイッチをターンオンさせる際に多くのスイッチング損失が生じることが多い。本実施形態のように構成しておくと、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれていない状態にあって、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行わせるための部分共振電流が不足しがちなときに、補助回路用スイッチ10Cをオン状態にすることにより、補助リアクトル10Bを分圧回路10Aの分圧点とスイッチング回路の制御相のレグの中点との間に接続して、DC電源部5側からコンデンサ分圧回路10Aと補助リアクトル10Bとを通して流れる電流を、スイッチング回路6Aの制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行わせるための部分共振電流に重畳することができるため、制御相のレグのスイッチQ3、Q4の出力静電容量C3、C4の充放電をデッドタイムの期間に完了させて、各スイッチをソフトスイッチングでオンオフさせることができ、各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0144】
またインピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれている状態にあって、DC/RF変換部6内に存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより、制御相の各スイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流を十分に流すことができるときには、補助回路用スイッチ10Cを開くことにより共振補助回路10をスイッチング回路6Aから切り離すことができるため、共振補助回路10で生じる導通損失によりDC/RF変換部6で生じるトータルの損失が増大するのを防ぐことができる。
【0145】
<第4の実施形態>
図3は、本発明の第4の実施形態を示したものである。本実施形態においては、補助回路用スイッチ制御部11が、高周波電力発生部3から負荷2に供給される電流を検出する負荷電流検出手段11Cと、負荷電流検出手段11Cにより検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに補助回路用スイッチ10Cをオン状態にし、負荷電流検出手段11Cにより検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに補助回路用スイッチ10Cをオフ状態にするように補助回路用スイッチ10Cを制御するスイッチ制御手段11Bとを備えている。その他の構成は第1の実施形態の構成と同様である。
【0146】
図3に示された負荷電流検出手段11Cは、高周波電力発生部3から負荷2に供給される電流の情報を含む検出信号を得るように設ければよいが、図示の例では、ローパスフィルタ7とパワー検出部8との間を接続する回路を流れる電流を検出する電流センサ12を設けて、この電流センサの出力から負荷2に供給される電流を検出するように負荷電流検出手段11Cが構成されている。
【0147】
制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる際に流れる部分共振電流の大きさは、DC/RF変換部内の回路を流れる電流により、当該回路に含まれるインダクタに蓄積されるエネルギの大きさにより決まる。高周波電力発生部内の回路を流れる電流の大小は、高周波電力発生部から負荷に供給される電流の平均値又は実効値の大小に対応している。従って、上記のように構成すると、DC/RF変換部6内に存在するインダクタに蓄積されているエネルギにより、制御相のレグのスイッチQ3、Q4の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるか否かを適確に判定して、その判定結果に基づいて補助回路用スイッチのオンオフを制御することができる。制御相のレグのスイッチQ3、Q4の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるか否かを判定するために、負荷電流検出手段11Cにより検出された電流の平均値又は実効値と比較する設定値は、実験的に決定することができる。
【0148】
<第5の実施形態>
図4は、本発明の第5の実施形態の構成を示している。本実施形態においては、補助回路用スイッチ制御部11が、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点cと制御相のレグの中点dとの間の回路を流れる回路電流を検出する回路電流検出手段11Dと、回路電流検出手段11Dにより検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに補助回路用スイッチ10Cをオン状態にし、回路電流検出手段11Dにより検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに補助回路用スイッチ10Cをオフ状態にするように補助回路用スイッチ11Cを制御するスイッチ制御手段11Bとを備えている。その他の構成は第1の実施形態の構成と同様である。
【0149】
DC/RF変換部6内に本来存在するインダクタに蓄積されるエネルギの大きさは、当該インダクタを流れる電流の大きさにより決る。本実施形態のように、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流を検出すると、DC/RF変換部6内に存在するインダクタを通して流れる電流を検出することができるため、DC/RF変換部6内の回路に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行わせる際に十分な部分共振電流を流すことができる状態にあるか否かを適確に判定することができ、補助回路用スイッチの制御を適確に行わせることができる。回路電流検出手段11Dにより検出された電流の平均値又は実効値と比較する設定値は実験的に決めることができる。
【0150】
<第6の実施形態>
図5は、本発明の第6の実施形態の構成を示している。本実施形態では、補助回路用スイッチ制御部11が、パワー検出部8から得られる進行波電力検出信号Pf及び反射波電力検出信号Prに基づいてインピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段11Aと、高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段11Cと、整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ負荷電流検出手段11Cにより検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、負荷電流検出手段11Cにより検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに補助回路用スイッチ10Cをオフ状態にし、整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、負荷電流検出手段11Cにより検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値未満であるとき、及び整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ負荷電流検出手段11Cにより検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値未満であるときに補助回路用スイッチ10Cをオン状態にするように補助回路用スイッチ10Cを制御するスイッチ制御手段11Bとを備えている。
【0151】
上記第1の設定値及び第2の設定値は等しくてもよく、異なっていてもよい。これらの設定値は、実験結果に基づいて、スイッチング回路6Aの各スイッチで生じるスイッチング損失を最小にするように決定する。その他の構成は第1の実施形態の構成と同様である。
【0152】
本実施形態のように構成すると、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれていない状態にあって、高周波電力発生部3から負荷2に所定の進行波電力を供給できない状態にあるために、DC/RF変換部6内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通して部分共振電流を流すだけでは、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができない場合だけでなく、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれているが、負荷2に供給する高周波電力を抑えるべく高周波電力発生部3から出力される電力を制限する制御が行われているために、DC/RF変換部6内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより各スイッチに対して構成された充放電回路を通して部分共振電流を流すだけでは制御相のレグを構成するスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときにも、補助回路用スイッチ10Cをオン状態にすることにより、制御相のレグのスイッチの充放電を行わせるための部分共振電流に補充電流を重畳して制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができる。
【0153】
また本実施形態のように構成すると、インピーダンス整合器4によりインピーダンスの整合がとれていて、高周波電力発生部3から十分な進行波電力が出力されているために、補助リアクトル10Bを通して電流を補充しなくても制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路に、各スイッチの出力静電容量の充電又は放電をデッドタイムの期間に完了するために必要な部分共振電流を流すことができる状態にあるときだけでなく、インピーダンスの整合がとれていないが、高周波電力発生部が大きな進行波電力を出力しているために、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了するために必要な部分共振電流を流すことができる状態にあるときにも、補助回路用スイッチ10Cをオフ状態にして共振補助回路10をスイッチング回路6Aから切り離すことができる。従って、本実施形態によった場合には、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定するだけで補助回路用スイッチ10Cをオン状態にするか否かを決定する場合に比べて、よりきめの細かい制御を行わせることができる。
【0154】
<第7の実施形態>
図6は、本発明の第7の実施形態の構成を示している。本実施形態においては、補助回路用スイッチ制御部11が、パワー検出部8から得られる進行波検出信号Pf 及び反射波検出信号Pr に基づいてインピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段11Aと、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点cと制御相のレグの中点dとの間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段11Dと、整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ回路電流検出手段11Dにより検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、回路電流検出手段11Dにより検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに補助回路用スイッチをオフ状態にし、整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、回路電流検出手段11Dにより検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値未満であるとき、及び整合状態判定手段11Aによりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ回路電流検出手段11Dにより検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値未満であるときに補助回路用スイッチをオン状態にするように補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段11Bとを備えている。
【0155】
図示の回路電流検出手段11Dは、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点cと直列共振回路6Bとの間を流れる電流を検出する電流センサ13の出力を用いてスイッチング回路6Aの基準相のレグの中点cと制御相のレグの中点dとの間の回路を流れる電流を検出するように構成されている。上記第1の設定値及び第2の設定値は等しくてもよく、異なっていてもよい。これらの設定値は、実験結果に基づいて、スイッチング回路6Aの各スイッチで生じるスイッチング損失を最小にするように決定する。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0156】
本実施形態のように構成すると、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合状態と、各スイッチに対して構成された充放電回路を通して流れる電流の大小との双方に基づいて、補助回路用スイッチ10Cをオン状態にするかオフ状態にするか否かが決められるので、補助回路用スイッチ10Cの制御をよりきめ細かく行うことができ、補助回路用スイッチ11Cがむやみに投入されて制御相のレグのスイッチで発生する導通損失が増大するのを防ぐことができる。
【0157】
<第8の実施形態>
図7は、本発明の第7の実施形態を示している。本実施形態においては、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流が反映されたパラメータを検出するパラメータ検出手段14が設けられ、補助回路用スイッチ制御部11は、パラメータ検出手段14により検出されるパラメータと補助回路用スイッチ10Cがとるべき状態との関係を与える補助回路用スイッチ制御用テーブルを記憶した制御用テーブル記憶手段11Eと、パラメータ検出手段14により検出されるパラメータに対して制御用テーブル記憶手段11Eに記憶された制御用テーブルを検索することにより補助回路用スイッチ10Cがとるべき状態がオン状態であるかオフ状態であるかを判定して、補助回路用スイッチ10Cを判定された状態とするように制御するスイッチ制御手段11Bとを備えている。
【0158】
スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点と制御相のレグの中点との間の回路を流れる電流が反映されたパラメータとしては、パワー検出部8が出力する進行波電力検出信号Pfや、DC電源部5の出力電圧Vdcが反映されたパラメータを用いることができる。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0159】
本実施形態によれば、実験結果に基づいて、適確な補助回路用スイッチ制御用テーブルを作成しておくことにより、補助回路用スイッチのオンオフの制御を適確に行わせることができる。
【0160】
図7に示した実施形態において、制御用テーブル記憶手段11Eに記憶させておく補助回路用スイッチ制御用テーブルは、パワー検出部8の出力から検出される負荷の状態と補助回路用スイッチ10Cがとるべき状態との関係を与えるように作成することもできる。パワー検出部8の出力から検出される負荷の状態を示すパラメータとしては、例えば反射係数と負荷インピーダンスとを用いることができる。
【0161】
<第9の実施形態>
上記第1ないし第7の実施形態において、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点c及び制御相のレグの中点dから負荷側を見たインピーダンスが何らかの原因で容量性を呈する状態が生じた場合には、スイッチング回路の制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電回路に部分共振電流を流すことができないため、これらのスイッチのスイッチング動作がハードスイッチング動作となり、スイッチング損失が増大する。
【0162】
本発明の第9の実施形態においては、上記のスイッチング損失の軽減を図るために、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点c及び制御相のレグの中点dから負荷側を見たインピーダンス(負荷側インピーダンス)の状態を判定する負荷状態判定手段を更に設けて、この負荷状態検出手段により負荷側インピーダンスが容量性であることが検出されているときに補助回路用スイッチ10Cをオン状態に保つように補助回路用スイッチ制御部11のスイッチ制御手段11Bを構成する。本実施形態の構成は、補助回路用スイッチ制御部が、第1の実施形態ないし第8の実施形態に示した構成のうちの何れの構成をとる場合にも適用することができる。
【0163】
図10に示した回路において、補助リアクトル10Bを流れる電流ILa及びILb(図11参照)は、スイッチング回路6Aの制御相のレグの中点dから先の(負荷側の)インピーダンス(負荷側インピーダンス)には依存せず、DC電源部5の出力電圧Vdcと、補助リアクトル10Bのインダクタンスとによって決まる。従って、負荷側インピーダンスが容量性であって、スイッチング回路6Aの動作モードが、本来スイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電が行われない動作モードである場合でも、補助回路用スイッチ10Cをオン状態にして共振補助回路10をスイッチング回路6Aの制御相のレグの中点dに接続することにより、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をある程度行うことが可能になる。
【0164】
上記のように構成しておくと、DC/RF変換部6のスイッチング回路6Aの基準相のレグの中点c及び制御相のレグの中点cから負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態が生じた場合でも、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を多少なりとも行わせることができるため、高周波電力発生部から負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態になったときに生じるスイッチング損失を従来よりも低減させることができる。
【0165】
以上説明した第1ないし第9の実施形態においては、出力静電容量C3,C4の充放電を行わせるための部分共振電流が不足しがちなスイッチング回路の制御相のレグのスイッチQ3,Q4のスイッチング動作がハードスイッチング動作となるのを抑制して、スイッチング損失の低減を図ったが、以下に示す第10ないし第19の実施形態では、制御相のレグのスイッチだけでなく、基準相のレグのスイッチQ1,Q2のスイッチング動作がハードスイッチング動作となるのをも抑制して、スイッチング損失の更なる低減を図る。
【0166】
<第10の実施形態>
本発明の第10の実施形態の構成を示すブロック図を図8に示し、要部の回路構成を示す回路図を図12に示した。図8及び図12に示された実施形態においては、コンデンサCa及びCbの直列回路からなっていてDC電源部の出力電圧が両端に印加されたコンデンサ分圧回路10Aと、コンデンサ分圧回路10Aの分圧点10aとスイッチング回路6Aの制御相のレグの中点dとの間に第1の補助回路用スイッチ10C1を通して接続された第1の補助リアクトル10B1と、コンデンサ分圧回路10Aの分圧点10aとスイッチング回路6Aの基準相のレグの中点cとの間に第2の補助回路用スイッチ10C2を通して接続された第2の補助リアクトル10B2とを備えた共振補助回路10と、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムtdの期間に完了させるべく第1の補助回路用スイッチ10C1のオンオフを制御し、基準相のレグを構成するスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電をデッドタイムの期間に完了させるべく第2の補助回路用スイッチ10C2のオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部11とを設けた。
【0167】
この場合補助回路用スイッチ制御部11は、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても制御相のレグを構成するスイッチQ3,Q4の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに第1の補助回路用スイッチ10C1をオフ状態にし、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと制御相のレグを構成するスイッチQ3,Q4の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに第1の補助回路用スイッチ10C1をオン状態にするように第1の補助回路用スイッチのオンオフを制御し、基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても基準相のレグを構成するスイッチQ1,Q2の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに第2の補助回路用スイッチ10C2をオフ状態にし、基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと基準相のレグを構成するスイッチQ1,Q2の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに第2の補助回路用スイッチ10C2をオン状態にするように第2の補助回路用スイッチ10C2のオンオフを制御する。その他の構成は第1の実施形態の構成と同様である。
【0168】
本実施形態のように構成すると、高周波電源装置1から負荷2に供給される電流(負荷電流)が小さく、DC/RF変換部6の回路内のインダクタに蓄積されるエネルギが少ない等の理由により、DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより流れる部分共振電流だけではデッドタイムの期間に制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量の充放電を完了できない状態が生じている場合でも、第1の補助回路用スイッチ10C1をオン状態にすることにより、DC電源部5側からコンデンサ分圧回路10と第1の補助リアクトル10B1とを通して流れる電流を、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量の充放電を行わせる部分共振電流に重畳して、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムtdの期間に完了させることができるだけでなく、負荷2のインピーダンスが著しく大きくなる等の原因により、負荷電流が殆ど流れなくなる状態が生じて、DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより流れる部分共振電流だけではデッドタイムの期間に基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を完了させることができない状態が生じたときに、DC電源部5側からコンデンサ分圧回路10と第2の補助リアクトル10B2とを通して流れる電流を、基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を行う部分共振電流に重畳させることができるため、負荷電流が抑制された際に基準相のレグのスイッチで大きなスイッチング損失が生じるのを防ぐことができる。
【0169】
<第11の実施形態>
本発明の第11の実施形態の構成を示すブロック図を図9に示し、要部の回路構成を図13に示した。本実施形態においては、互いに直列に接続されたコンデンサCa1,Cb1からなっていて、DC電源部5の出力電圧が両端に印加された第1のコンデンサ分圧回路10A1及びこの第1のコンデンサ分圧回路10A1の分圧点10a1とスイッチング回路6Aの制御相のレグの中点dとの間に第1の補助回路用スイッチ10C1を通して接続された第1の補助リアクトル10B1を備えた第1の補助共振回路構成部10-1と、互いに直列に接続されたコンデンサCa2,Cb2からなっていてDC電源部5の出力電圧が両端に印加された第2のコンデンサ分圧回路10A2及びこの第2のコンデンサ分圧回路10A2の分圧点10a2とスイッチング回路6Aの基準相のレグの中点cとの間に第2の補助回路用スイッチ10C2を通して接続された第2の補助リアクトル10B2を備えた第2の補助共振回路構成部10-2 とにより構成された共振補助回路10と、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムtdの期間に完了させるべく第1の補助回路用スイッチ10C1のオンオフを制御し、基準相のレグを構成するスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電をデッドタイムの期間に完了させるべく第2の補助回路用スイッチ10C2のオンオフを制御する補助回路用スイッチ制御部11とを設けた。
【0170】
この場合も補助回路用スイッチ制御部11は、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても制御相のレグを構成するスイッチQ3,Q4の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに第1の補助回路用スイッチ10C1をオフ状態にし、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと制御相のレグを構成するスイッチQ3,Q4の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに第1の補助回路用スイッチ10C1をオン状態にするように第1の補助回路用スイッチのオンオフを制御し、基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しなくても基準相のレグを構成するスイッチQ1,Q2の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができるときに第2の補助回路用スイッチ10C2をオフ状態にし、基準相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を流れる部分共振電流に補充電流を重畳しないと基準相のレグを構成するスイッチQ1,Q2の出力静電容量の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときに第2の補助回路用スイッチ10C2をオン状態にするように第2の補助回路用スイッチ10C2のオンオフを制御する。その他の構成は第1の実施形態の構成と同様である。
【0171】
本実施形態の構成は、DC電源部5の出力電圧が印加される第1のコンデンサ分圧回路10A1と第2の分圧回路10A2とを設けて、DC電源部5と第1のコンデンサ分圧回路10A1とにより、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行う部分共振電流に重畳する電流を出力する電流源を構成し、DC電源部5と第2のコンデンサ分圧回路10A2とにより、基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を行う部分共振電流に重畳する電流を出力する電流源を構成する点を除き、第8の実施形態と同様であり、第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2の制御のしかたは第8の実施形態と同様である。
【0172】
図8又は図9に示したように、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行う部分共振電流に重畳する電流を得るために第1の補助リアクトル10B1と第1の補助回路用スイッチ10C1とを設ける場合、及び基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を行う部分共振電流に重畳する電流を得るために第2の補助リアクトル10B2と第2の補助回路用スイッチ10C2とを設ける場合のいずれの場合にも、第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2を制御する補助回路用スイッチ制御部11は、第1の実施形態ないし第9の実施形態にそれぞれ示した構成と同様の構成をとることができる。
【0173】
以下、図8に示した第10の実施形態及び図9に示した第11の実施形態のように、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行う部分共振電流に重畳する電流を得るために第1の補助リアクトル10B1と第1の補助回路用スイッチ10C1とを設け、基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を行う部分共振電流に重畳する電流を得るために第2の補助リアクトル10B2と第2の補助回路用スイッチ10C2とを設ける構成をとる場合に用いる補助回路用スイッチ制御部11の種々の構成例を示す実施形態を、第12の実施形態ないし第19の実施形態として、それぞれの構成を以下に示す。
【0174】
<第12の実施形態>
本実施形態においては、図8又は図9に示された補助回路用スイッチ制御部11が、制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけでは制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができない状態にあるときに第1の補助回路用スイッチ10C1をオン状態にし、制御相のレグのスイッチQ3,Q4に対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部6内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけで制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量の充放電をデッドタイムtdの期間に完了させることができる状態にあるときに第1の補助回路用スイッチ10C1をオフ状態にし、基準相のレグのスイッチQ1,Q2に対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部6内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけでは基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができない状態にあるときに第2の補助回路用スイッチ10C2をオン状態にし、基準相のレグのスイッチQ1,Q2に対して構成された充放電回路を通してDC/RF変換部6内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより部分共振電流を流すだけで基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができる状態にあるときに第2の補助回路用スイッチ10C2をオフ状態にするように構成される。その他の構成は、第10の実施形態又は第11の実施形態と同様である。
【0175】
本実施形態のように構成すると、スイッチング回路6Aの制御相のレグを構成するスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムtdの期間に完了できない状態が生じているときに、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行わせるための部分共振電流に、DC電源部5から第1の補助リアクトル10B1と第1の補助回路用スイッチ10C1とを通してを補充電流を重畳することができ、スイッチング回路6Aの基準相のレグを構成するスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電をデッドタイムの期間に完了できない状態が生じているときに、基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を行う部分共振電流にDC電源部5から第2の補助リアクトル10B2と第2の補助回路用スイッチ10C2とを通して補充電流を重畳することができるため、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4及び基準相のレグのスイッQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電をデッドタイムの期間に完了させて、制御相のレグのスイッチQ3,Q4及び基準相のレグのスイッチQ1,Q2で生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0176】
また制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行う部分共振電流を十分に流すことができるとき及び基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を行う部分共振電流を十分に流すことができるときには、共振補助回路10をスイッチング回路から切り離すことができるので、共振補助回路10で生じる損失によりDC/RF変換部6で生じるトータルの損失が増大するのを防ぐことができる。
【0177】
<第13の実施形態>
本発明の第13の実施形態においては、図8又は図9に示された補助回路用スイッチ制御部11が、図2に示した実施形態と同様に、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されたときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオン状態にし、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されたときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオフ状態にするように第1及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。その他の構成は、第10の実施形態又は第11の実施形態と同様である。
【0178】
本実施形態のように構成すると、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれていない状態にあって、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流が不足しがちなときに、DC電源部5から第1の補助リアクトル10B1と第1の補助回路用スイッチ10C1とを通して流れる電流を、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行う部分共振電流に補充電流として重畳することができ、基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせるための部分共振電流が不足しがちなときに、DC電源部から第2の補助リアクトル10B2と第2の補助回路用スイッチ10C2とを通して流れる電流を、基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を行う部分共振電流に補充電流として重畳することができるため、デッドタイムの期間に制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電及び基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を完了させて、各スイッチで生じるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0179】
またインピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれている状態にあって、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を行う部分共振電流を十分に流すことができるとき及び基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を行う部分共振電流を十分に流すことができるときには、共振補助回路10をスイッチング回路6Aから切り離すことができるため、共振補助回路10で生じる導通損失によりDC/RF変換部で生じるトータルの損失が増大するのを防ぐことができる。
【0180】
<第14の実施形態>
本実施形態においては、図8又は図9に示された補助回路用スイッチ制御部11が、図3に示した実施形態と同様に、高周波電力発生部から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、この負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオン状態にし、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオフ状態にするように、第1及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。その他の構成は、第10の実施形態又は第11の実施形態と同様である。
【0181】
本実施形態のように構成すると、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電をデッドタイムの期間に完了させるために十分な部分共振電流を流すことができる状態にあるか否かの判定、及び基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電を行わせる際に十分な部分共振電流を流すことができる状態にあるか否かの判定をより適確に行うことができ、第1及び第2の補助回路用スイッチの制御を適確に行わせることができる。
【0182】
<第15の実施形態>
本実施形態においては、図8又は図9に示された補助回路用スイッチ制御部11が、図4に示した実施形態と同様に、スイッチング回路の基準相のレグの中点cと制御相のレグの中点dとの間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段と、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値未満であるときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオン状態にし、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が設定値以上であるときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオフ状態にするように第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2を制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0183】
本実施形態のように構成すると、DC/RF変換部6内の回路に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより、制御相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる際に十分な部分共振電流を流すことができる状態にあるか否かの判定、基準相のレグのスイッチの出力静電容量の充放電を行わせる際に十分な部分共振電流を流すことができる状態にあるか否かの判定及びを適確に行って、第1及び第2の補助回路用スイッチの制御を適確に行わせることができる。
【0184】
<第16の実施形態>
本実施形態においては、図8又は図9に示された補助回路用スイッチ制御部11が、図5に示した実施形態と同様に、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、高周波電力発生部3から負荷に供給される電流を検出する負荷電流検出手段と、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオフ状態にし、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値未満であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ負荷電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値未満であるときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオン状態にするように第1及び第2の補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0185】
本実施形態のように構成すると、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合がとれていない状態にあって、高周波電力発生部3から負荷に所定の進行波電力を供給できない状態にあるために、DC/RF変換部6内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより、各スイッチに対して構成された充放電回路を通して部分共振電流を流すだけでは制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電及び基準相のレグのスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができない場合だけでなく、インピーダンスが整合状態にあるが、負荷に供給する高周波電力を抑えるべく高周波電力発生部から出力される電力を制限する制御が行われているために、DC/RF変換部内に本来存在するインダクタに蓄積されたエネルギにより充放電回路を通して部分共振電流を流すだけでは制御相のレグを構成するスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電及び基準相のレグを構成するスイッチQ1,Q2の出力静電容量C1,C2の充放電をデッドタイムの期間に完了させることができないときにも第1及び第2の補助回路用スイッチ10C1及び10C2をオン状態にして、制御相の各スイッチの充放電及び基準相の各スイッチの充放電を行わせるための部分共振電流を補充することができる。
【0186】
また本実施形態のように構成すると、インピーダンスの整合がとれていて、高周波電力発生部3から十分な進行波電力が出力されているために、補助リアクトルを通して部分共振電流を補充しなくても制御相のレグの各スイッチに対して構成された充放電回路に各スイッチの出力静電容量の充放電を完了するために必要な部分共振電流を流すことができる状態にあるとき、及びインピーダンスの整合がとれていないが、高周波電力発生部が大きな進行波電力を出力しているために、制御相のレグのスイッチQ3,Q4の出力静電容量C3,C4の充放電を完了するために必要な部分共振電流を流すことができる状態にあるときに、第1及び第2の補助回路用スイッチ10C1及び10C2をオフ状態にして共振補助回路10をスイッチング回路6Aから切り離すことができる。本実施形態によれば、インピーダンスが整合しているか否かを判定するだけで第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にするか否かを決定する場合に比べて、よりきめの細かい制御を行わせることができる。
【0187】
<第17の実施形態>
本実施形態においては、図8又は図9に示された補助回路用スイッチ制御部11が、図6に示した実施形態と同様に、インピーダンス整合器4によるインピーダンスの整合がとれているか否かを判定する整合状態判定手段と、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点cと制御相のレグの中点dとの間の回路を流れる電流を検出する回路電流検出手段と、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定され、かつ回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第1の設定値以上であるとき、及び整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定されているが、回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が第2の設定値以上であるときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオフ状態にし、整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていると判定されているが、前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第1の設定値未満であるとき、及び前記整合状態判定手段によりインピーダンスの整合がとれていないと判定され、かつ前記回路電流検出手段により検出された電流の平均値又は実効値が前記第2の設定値未満であるときに第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2をオン状態にするように補助回路用スイッチを制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0188】
本実施形態のように構成すると、インピーダンス整合器によるインピーダンスの整合状態と、各スイッチに対して構成された充放電回路を通して流れる電流の大小との双方に基づいて、第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にするかオフ状態にするかが決められるため、第1及び第2の補助回路用スイッチの制御をよりきめ細かく行うことができ、第1及び第2の補助回路用スイッチがむやみに投入されて制御相のレグのスイッチ及び基準相のレグのスイッチで発生する導通損失が増大するのを防ぐことができる。
【0189】
<第18の実施形態>
本実施形態においては、図7に示した実施形態と同様に、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点cと制御相のレグの中点dとの間の回路を流れる電流が反映されたパラメータを検出するパラメータ検出手段が更に設けられ、図8又は図9に示された補助回路用スイッチ制御部11は、パラメータ検出手段により検出されるパラメータと第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2がとるべき状態との関係を与える補助回路用スイッチ制御用テーブルを記憶した制御用テーブル記憶手段と、パラメータ検出手段により検出されるパラメータに対して制御用テーブルを検索することにより第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2がとるべき状態がオン状態であるかオフ状態であるかを判定して、第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2を判定された状態とするように制御するスイッチ制御手段とを備えている。
【0190】
上記第1及び第2の補助回路用スイッチ制御用テーブルは、実験により、制御相のレグのスイッチのスイッチング損失及び基準相のレグのスイッチのスイッチング損失を最小にするために、パラメータと第1の補助回路用スイッチ10C1及び第2の補助回路用スイッチ10C2がとるべき状態との関係を求めることにより、適切なものを作成することができる。本実施形態のように構成すると、適確な第1及び第2の補助回路用スイッチ制御用テーブルを作成しておくことにより、第1及び第2の補助回路用スイッチのオンオフの制御を適確に行わせることができる。
【0191】
<第19の実施形態>
本実施形態においては、スイッチング回路6Aの基準相のレグの中点c及び制御相のレグの中点dから負荷側を見たインピーダンスの状態を判定する負荷状態判定手段が更に設けられ、図8又は図9に示された補助回路用スイッチ制御部に設けられるスイッチ制御手段が、負荷状態判定手段によりスイッチング回路の基準相のレグの中点及び制御相のレグの中点から負荷側を見たインピーダンスが容量性であると判定されているときに補助回路用スイッチをオン状態に保つように構成される。
【0192】
本実施形態のように構成すると、DC/RF変換部6のスイッチング回路6Aのレグの中点から負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態になった場合に、第1及び第2の補助回路用スイッチをオン状態にして、制御相のレグの各スイッチの出力静電容量の充放電及び基準相のレグの出力静電容量の充放電を多少なりとも行わせることができるため、高周波電力発生部から負荷側を見たインピーダンスが容量性を示す状態になった場合に生じるスイッチング損失を従来よりも低減させることができる。
【0193】
上記の実施形態では、スイッチング回路6Aの各レグのハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを構成するスイッチング素子としてMOSFETを用いているが、これらのスイッチは、しきい値以上の駆動信号が与えられたときにオン状態になり、駆動信号がしきい値未満になったときにオフ状態になるスイッチング素子であればよく、バイポーラトランジスタや、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などの他のオンオフ制御が可能なスイッチング素子を用いて、各レグのハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチを構成してもよいのはもちろんである。
【0194】
<補助回路用スイッチの構成について>
第1ないし第9の実施形態においては、補助リアクトル10BをDC/RF変換部6のスイッチ回路の制御相のレグの中点に接続したり、該中点から切り離したりするために補助回路用スイッチ10Cが設けられる。また第10ないし第19の実施形態においては、第1の補助リアクトル10B1を制御相のレグの中点に接続したり、該中点から切り離したりするために第1の補助回路用スイッチ10C1が設けられ、第2の補助リアクトル10B2を基準相のレグの中点に接続したり、該中点から切り離したりするために第2の補助回路用スイッチ10C2が設けられるが、これらの補助回路用スイッチとしてはオンオフ制御が可能な双方向スイッチを用いる。補助回路用スイッチとして用いるのに適した双方向スイッチのいくつかの例を図14及び図15に示した。
【0195】
図14(A)に示した双方向スイッチは、2つのMOSFET21及び22により構成されている。この双方向スイッチにおいては、2つのMOSFETのソースSの電位の共通化を図るため、MOSFET21及び22のソースSどうしが共通接続されている。このように、MOSFET21,22のソース電位の共通化を図っておくと、両MOSFETの駆動回路の共通化を図ることが可能である。MOSFETのドレインソース間のオン抵抗をRFETとすると、この双方スイッチのオン抵抗(オン時の抵抗)は、2×RFETで表すことができる。またMOSFETのオン時にドレインソース間を通して流れる電流をIonとすると、この双方向スイッチのオン時の導通損失Ponlossは、
Ponloss=2×RFET×Ion …(1)
で与えられる。なお各MOSFETに付された符号D、S及びGはそれぞれドレイン、ソース及びゲートを意味している。
【0196】
図14(B)に示した双方向スイッチは、MOSFET21のソースにダイオード23のアノードを接続して構成した単方向スイッチと、MOSFET22のソースにダイオード24のアノードを接続して構成した単方向スイッチとを逆並列接続した構成を有するものである。MOSFETのオン抵抗をRFET、ダイオードの順方向電圧降下をVDiode、オン時の通電電流をIonとすると、この双方向スイッチのオン時の導通損失Ponlossは、
Ponloss=Rfet×Ion+Vdiode×Ion …(2)
で与えられる。図14(A)に示した双方スイッチでは、オン動作を行わせる際に2つのMOSFETを同時にオン状態にする必要があるため、高速化を図るためには駆動回路のバラツキをなくす配慮が必要であるが、図14(B)の双方向スイッチでは2つのMOSFETを同時のオン状態にする必要がないため高速化が容易である。
【0197】
図14(C)に示した双方向スイッチは、2つのIGBT25及び26のエミッタEどうしを共通接続して、2つのIGBTのエミッタ電位の共通化を図ったものである。D25及びD26はそれぞれIGBT25及び26のコレクタCとエミッタEとの間に形成された寄生の逆導通ダイオードである。
【0198】
図14(C)に示した双方スイッチにおいては、寄生逆導通ダイオードD25及びD26があるため、オン動作を行わせる際に2つのIGBTを同時にオン状態にする必要がないが、寄生逆導通ダイオードD25及びD26のオン電圧が高いという難点がある。IGBTのオン電圧をVonIGBT、IGBTの寄生逆導通ダイオードの順方向電圧をVIGBTdiode、通電電流をIonとすると、この双方スイッチのオン時の導通損失Ponlossは、
Ponloss=(VonIGBT +VIGBTdiode )×Ion …(3)
で与えられる。
【0199】
図14(D)に示した双方向スイッチは、逆阻止寄生ダイオードD27を直列に有する逆阻止IGBT27と、逆阻止寄生ダイオードD28を直列に有する逆阻止IGBT28とを逆並列接続した構成を有するもので、外付けのダイオードを用いることなく図14(B)の双方スイッチと同様の双方スイッチを構成したものである。IGBTのオン電圧をVonIGBT、IGBTの寄生逆阻止ダイオードの順方向電圧をVIGBTdiode、通電電流をIonとすると、この双方スイッチのオン時の導通損失Ponlossも(3)式で与えられる。
【0200】
図15(A)に示した双方向スイッチは、ダイオードDa 〜Dd により構成されたダイオードブリッジ整流回路の直流出力端子間に、寄生逆阻止ダイオード(図示せず。)を有するIGBT30を並列接続したものである。IGBTのオン時のコレクタエミッタ間電圧をVonIGBTとし、ダイオードの順方向電圧をVdiode、通電電流をIonとすると、図15(A)に示した双方スイッチのオン時の導通損失Ponlossは、
Ponloss=(VonIGBT+2×Vdiode)×Ion …(4)
で与えられる。
【0201】
図15(B)は、ダイオードDa 〜Dd により構成されたダイオードブリッジ回路の両端に寄生逆導通ダイオードD30を有するIGBT30を並列接続したもので,オン時の導通損失は、上記(4)式により与えられる。
【0202】
図15(A),(B)に示した例のように、ダイオードブリッジ整流回路の直流出力端子間に半導体スイッチを接続する構成をとれば、オンオフ制御を行うスイッチ素子として一つの半導体スイッチ素子を用いるだけで、双方向性を有するスイッチを構成することができる。
【0203】
以上、補助回路用スイッチの構成例を種々示したが、補助回路用スイッチは、オンオフ制御が可能で導通損失が少ないものであればよく、図14及び図15に示したものには限定されない。例えば、図14(C)において、IGBTに代えてMOSFETを用いることもできる。図14(C)に示したスイッチを構成するに当たり、IGBTに代えてMOSFETを用いる場合には,損失を少なくするために、ドレイン・ソース間に形成された寄生ダイオードで生じる導通損失(寄生ダイオードの順方向電圧降下と順方向電流との積により決まる損失)をできるだけ低くくするために、寄生ダイオードの順方向電圧降下ができるだけ低いMOSFETを用いることが好ましい。
【0204】
また図15(A),(B)に示された例において、IGBTに代えてMOSFETを用いることもできる。図15(A),(B)に示されたように、ダイオードブリッジ整流回路の直流出力端子間に半導体スイッチを並列接続する構成をとる場合、整流回路の直流出力端子間に接続する半導体スイッチには一方向にしか電流が流れないため、当該半導体スイッチとしては、一方向にのみ電流が流れるもの及び双方向に電流が流れ得るものの何れを用いてもよい。
【符号の説明】
【0205】
1 高周波電源装置
2 負荷
3 高周波電力発生部
4 インピーダンス整合器
5 DC電源部
6 DC/RF変換部
6A スイッチング回路
6B 直列共振回路
6C トランス
7 ローパスフィルタ
8 パワー検出部
9 制御部
10 共振補助回路
10A コンデンサ分圧回路
10A1 第1のコンデンサ分圧回路
10A2 第2のコンデンサ分圧回路
10B 補助リアクトル
10B1 第1の補助リアクトル
10B2 第2の補助リアクトル
10C 補助回路用スイッチ
10C1 第1の補助回路用スイッチ
10C2 第2の補助回路用スイッチ
11 補助回路用スイッチ制御部
11A 整合状態判定手段
11B スイッチ制御手段
11C 負荷電流検出手段
11D 回路電流検出手段
11E 制御用テーブル記憶手段
Q1 基準相のレグのハイサイドスイッチ
Q2 基準相のレグのローサイドスイッチ
Q3 制御相のレグのハイサイドスイッチ
Q4 制御相のレグのローサイドスイッチ
C1〜C4 スイッチQ1〜Q4の出力静電容量
D1〜D4 帰還ダイオード
図1
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