特開2018-58336(P2018-58336A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-58336(P2018-58336A)
(43)【公開日】2018年4月12日
(54)【発明の名称】基板複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20180316BHJP
   B32B 7/08 20060101ALI20180316BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180316BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20180316BHJP
【FI】
   B32B3/30
   B32B7/08 Z
   C09J201/00
   C09J5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-87506(P2017-87506)
(22)【出願日】2017年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-92676(P2016-92676)
(32)【優先日】2016年5月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-198460(P2016-198460)
(32)【優先日】2016年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
【住所又は居所】大阪府堺市中区学園町1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】松本 章一
【住所又は居所】大阪府堺市中区学園町1番1号 公立大学法人大阪府立大学内
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB00C
4F100AB01A
4F100AB04
4F100AB31A
4F100AD00A
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AK42
4F100AK53C
4F100AP00A
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100DC11C
4F100DD01B
4F100DG10A
4F100EC14
4F100GB31
4F100GB32
4F100GB41
4F100GB51
4F100JB13C
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JK06
4F100JL11C
4F100YY00C
4J040HB07
4J040HB15
4J040HB30
4J040JB01
4J040JB02
4J040LA06
4J040PA21
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】第1基板と第2基板とが接着層により強固に接着された基板複合体を提供することを課題とする。
【解決手段】第1基板と、第2基板と、前記第1基板と第2基板とを接着させる接着層とを含み、前記接着層が、第2基板側の表層部に複数の孔を有し、前記第2基板が、前記第1基板側の表面に複数の突起部を備え、前記突起部が、前記孔内に位置することを特徴とする基板複合体により上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、第2基板と、前記第1基板と第2基板とを接着させる接着層とを含み、
前記接着層が、第2基板側の表層部に複数の孔を有し、
前記第2基板が、前記第1基板側の表面に複数の突起部を備え、
前記突起部が、前記孔内に位置することを特徴とする基板複合体。
【請求項2】
前記第2基板と接着層とが、前記突起部と孔により生じるアンカー効果を利用して接着されている請求項1に記載の基板複合体。
【請求項3】
前記第2基板が、前記第1基板側に樹脂層を備え、前記突起部が、前記樹脂層と同じ樹脂から構成される請求項1又は2に記載の基板複合体。
【請求項4】
前記第2基板が、前記第1基板を構成する材料に対して、1MPa以下の接着強度を示す材料から構成される請求項1〜3のいずれか1つに記載の基板複合体。
【請求項5】
前記接着層が、前記第1基板に対して、10MPa以上の接着強度を示す材料からなり、前記第2基板が、前記接着層を構成する材料に対して、1MPa以下の接着強度を示す材料から構成される請求項1〜4のいずれか1つに記載の基板複合体。
【請求項6】
前記第1基板が、金属、合金、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、ガラス、セラミックス、木及び紙からなる基板から選択され、前記突起部が、熱可塑性樹脂又は熱硬化樹脂からなる請求項1〜5のいずれか1つに記載の基板複合体。
【請求項7】
前記第1基板が、金属及び合金からなる基板から選択され、前記接着層が、エポキシ樹脂層である請求項1〜6のいずれか1つに記載の基板複合体。
【請求項8】
前記孔が、1〜50μmの直径を有し、前記第2基板の表面側において、10〜100000個/mm2存在し、直径と数との積算値において、100〜500000μm・個/mm2の関係を満たす請求項1〜7のいずれか1つに記載の基板複合体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の基板複合体の製造方法であって、
前記接着層が熱硬化樹脂から構成される場合、
前記熱硬化樹脂を与える熱硬化性樹脂と孔形成材とを含む混合物層を前記第1基板上に形成する工程と
前記熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより、前記複数の孔を備えた接着層を形成する工程と
前記接着層から前記孔形成材を除去する工程と
前記第1基板側の前記第2基板の表面に、前記突起部を前記孔内に位置するように複数形成することで、前記第1基板と第2基板とを接着させる工程と
を含むことを特徴とする基板複合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の基板複合体の製造方法であって、
前記接着層が熱可塑性樹脂から構成される場合、
前記熱可塑性樹脂と孔形成材とを含む混合物層を前記基板上に形成する工程と
前記混合物層から前記孔形成材を除去することにより、前記複数の孔を備えた接着層を形成する工程と
前記第1基板側の前記第2基板の表面に、前記突起部を前記孔内に位置するように複数形成することで、前記第1基板と第2基板とを接着させる工程と
を含むことを特徴とする基板複合体の製造方法。
【請求項11】
前記突起部が、下記(1)〜(3):
(1)熱可塑性樹脂からなり、少なくとも接着層側に熱可塑性樹脂層を備えた第2基板を、接着層上に載せると同時に又は載せた後、加熱することにより、前記熱可塑性樹脂層から延在させることにより形成される、
(2)接着剤に由来し、接着層上に接着剤を孔に延在するように塗布して得た塗膜上に第2基板を載せた後、接着剤を固化又は硬化させることで形成される、
(3)熱可塑性樹脂からなり、少なくとも接着層側に熱可塑性樹脂層を備えた第2基板を、前記熱可塑性樹脂層を有機溶剤と接触させることにより軟化させた後、接着層上に載せ、前記熱可塑性樹脂層から延在させることにより形成される
のいずれかの工程に形成される請求項9又は10に記載の基板複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板複合体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、2つの基板を接着層の複数の孔を利用したアンカー効果により接着させた基板複合体及びその製造方法に関する。本発明の基板複合体は、同時に接着するのに適した接着剤が存在しない2つの基板の接着に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、車体等の軽量化を目的とした金属部品の樹脂化が進むなかで、樹脂基板と金属基板のような2つの基板間の高強度接着が求められている。
接着法としては、リベットやボルトを用いる機械的接着法、接着剤を用いないで面接着力を利用する直接接着法、接着剤を用いる接着剤接着法(特開2015−145461号公報:特許文献1)が知られている。
機械的接着法では、基板の種類に依存しない安定した接合強度を得ることができる。しかしながら、基板の穿孔加工が必要である他、接着部への応力集中が起こるため、接着が十分高いとは言い難かった。更に、複雑な形状の基板に対して適用し難かった。
【0003】
直接接着法では、基板を何ら処理しない場合、十分な面接着力を得難いため、基板の接着面の粗面化(例えば、化成処理、プラズマ処理、レーザー照射等)や濡れ性向上(例えば、プライマーコーティング)のための処理が通常行われる。しかしながら、上記の処理はいずれも、大掛かりな処理装置が別途必要であるため、作業性が良好とは言い難かった。更に、機械的接着法と同様、複雑な形状の基板に対して適用し難かった。
接着剤接着法は、基本的に面接着であるため、機械的接着法と比較して、接着部への応力集中は緩和され、また複雑な形状の基板への使用も可能であるといった利点がある。また、接着剤は、基板上への塗布に大掛かりな装置を必要としないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−145461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤接着法は、接着剤が2つの基板の両方に対して、十分な接着性を有する場合、有効な接着法である。しかし、接着剤がいずれか一方の基板に対して十分な接着性を有していない場合は、この接着法を適用することは困難であった。そのため、接着剤が2つの基板の両方に対して十分な接着性を有していない場合でも、2つの基板の両方への接着性を十分確保することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、一方の基板に対して十分な接着性を有する接着剤を使用して接着層を形成し、他方の基板と接着層との接着にアンカー効果を利用すれば、2つの基板と、2つの基板を接着する接着層とを含む基板複合体を提供できることを見い出し、本発明に至った。
【0007】
かくして本発明によれば、第1基板と、第2基板と、前記第1基板と第2基板とを接着させる接着層とを含み、
前記接着層が、第2基板側の表層部に複数の孔を有し、
前記第2基板が、前記第1基板側の表面に複数の突起部を備え、
前記突起部が、前記孔内に位置することを特徴とする基板複合体が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記基板複合体の製造方法であって、
前記接着層が熱硬化樹脂から構成される場合、
前記熱硬化樹脂を与える熱硬化性樹脂と孔形成材とを含む混合物層を前記第1基板上に形成する工程と
前記熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより、前記複数の孔を備えた接着層を形成する工程と
前記接着層から前記孔形成材を除去する工程と
前記第1基板側の前記第2基板の表面に、前記突起部を前記孔内に位置するように複数形成することで、前記第1基板と第2基板とを接着させる工程と
を含むことを特徴とする基板複合体の製造方法が提供される。
【0009】
更に、本発明によれば、上記基板複合体の製造方法であって、
前記接着層が熱可塑性樹脂から構成される場合、
前記熱可塑性樹脂と孔形成材とを含む混合物層を前記基板上に形成する工程と
前記混合物層から前記孔形成材を除去することにより、前記複数の孔を備えた接着層を形成する工程と
前記第1基板側の前記第2基板の表面に、前記突起部を前記孔内に位置するように複数形成することで、前記第1基板と第2基板とを接着させる工程と
を含むことを特徴とする基板複合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2つの基板が接着層により強固に接着された基板複合体及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の基板複合体の概略断面図である。
図2】実施例1のモノリス膜のSEM画像である。
図3】実施例1のモノリス膜のγに対する空隙率及び平均孔径のプロットの相関を示すグラフである。
図4】実施例1のモノリス膜の平均孔径と孔数との相関を示すグラフである。
図5】実施例1のモノリス膜のTG−DTA曲線である。
図6】実施例1の基板複合体の荷重−変位曲線である。
図7図6の荷重−変位曲線の測定用の基板複合体の作製時の熱融着状況の概略図である。
図8】実施例1の基板複合体の破断後の写真である。
図9】実施例1の基板複合体の荷重−変位曲線である。
図10図9の荷重−変位曲線の測定用の基板複合体の作製時の熱融着状況の概略図である。
図11】実施例1の基板複合体の破断後の写真である。
図12】実施例1の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図13】実施例1の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図14】実施例1の基板複合体の破断後の写真である。
図15】実施例1の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図16】実施例1の基板複合体の破断後の写真である。
図17】実施例1の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図18】実施例1の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図19】実施例1の基板複合体の接合強度を示すグラフである。
図20】実施例1の基板複合体の接合強度を示すグラフである。
図21】実施例1の基板複合体の接合強度を示すグラフである。
図22】実施例1の基板複合体の接合強度を示すグラフである。
図23】実施例1の基板複合体の接合強度を示すグラフである。
図24】実施例1の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図25】実施例1の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図26】実施例1の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図27】実施例1の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図28】実施例2のモノリス膜のSEM画像である。
図29】実施例2の基板複合体の荷重−変位曲線である。
図30】実施例2の基板複合体の破断後の写真である。
図31】実施例2の基板複合体の破断面のSEM画像である。
図32】実施例3の基板複合体の荷重−変位曲線である。
図33】実施例4のAl基板のSEM画像である。
図34】実施例5のモノリス膜のSEM画像である。
図35】実施例9のモノリス膜のSEM画像である。
図36】実施例9と比較例4の基板複合体の応力−伸びグラフである。
図37】実施例9と比較例4の基板複合体の破断後の写真である。
図38】実施例10と比較例5の基板複合体の応力−伸びグラフである。
図39】実施例10の基板複合体の破断後の写真である。
図40】実施例11と比較例6の基板複合体の応力−伸びグラフである。
図41】実施例11の基板複合体の破断後の写真である。
図42】実施例12の基板複合体の応力−伸びグラフである。
図43】実施例12の基板複合体の破断後の写真である。
図44】実施例13のモノリスシートの写真である。
図45】実施例13のモノリスシートの写真である。
図46】実施例13のモノリスシートの写真である。
図47】実施例13の基板複合体の応力−伸びグラフである。
図48】実施例13の基板複合体の破断後の写真である。
図49】実施例14の基板複合体の応力−伸びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(基板複合体)
本発明の基板複合体は、第1基板と、第2基板と、第1基板と第2基板とを接着させる接着層とを含む。また、接着層は、第2基板側の表層部に複数の孔を有している。更に、第2基板は、第1基板側の表面に孔内に位置する複数の突起部を備えている。この基板複合体は、具体的には、図1に示す構造を有している。図1中、1は第1基板、2は第2基板、3は接着層、4は孔、5は突起部を意味する。
図1では、第2基板と接着層との接着にアンカー効果を利用しているが、第1の基板と接着層との接着にもアンカー効果を利用できる。
更に、図1では、基板が2つの場合を例示している。しかし、基板の積層数は2つに限定されず、基板同士を接着する接着層は、基板の積層数に応じて増やすことができる。例えば、基板複合体は、第1の基板、第1の接着層、第2の基板、第2の接着層、第3の基板、…第n−1の接着層、第nの基板の積層体であってもよい(nは自然数)。この場合、n−1個の接着層は、n個の基板を、同時に接着してもよく、任意の順序で逐次接着してもよい。
【0013】
(1)第1基板
第1基板は、第2基板との複合体化が望まれているものであれば特に限定されない。第1基板の構成材料としては、例えば、金属(例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、クロム、鉄、銅、ニッケル、亜鉛、銀、白金、金等)、これら金属の合金(例えば、ステンレス、ハステロイ、ジュラルミン、真鍮、マグネシウム合金等)、及び上記金属の酸化物(例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等)、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリエチレンビニルアルコール、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド等)、熱硬化樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等)、ガラス、セラミックス、木及び紙等が挙げられる。樹脂からなる基板には、着色剤、充填材、強化繊維等の他の成分が含まれていてもよい。
【0014】
第1基板は、第2基板との複合体化が可能であれば、どのような構造を有していてもよい。即ち第1基板は、平板状の基板に限らず、段差のあるもの、突起や凹部を含むもの、湾曲したもの、棒状あるいは柱状のもの、球状のもの、繊維状のものあるいはその織物、更にもっと複雑な形状をしたものであってもよく、第1基板の厚さも複合化が可能でありさえすれば特に限定されない。また、第1基板の第2基板との複合体化を所望する部位は、平坦であってもよく、凹凸形状を有していてもよい。この表面の凹凸形状は、例えば、やすりで形成できる。
【0015】
(2)第2基板
第2基板は、第1基板との複合体化が望まれているものであれば特に限定されない。第2基板の構成材料としては、例えば、金属(例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、クロム、鉄、銅、ニッケル、亜鉛、銀、白金、金等)、これら金属の合金(例えば、ステンレス、ハステロイ、ジュラルミン、真鍮、マグネシウム合金等)、及び上記金属の酸化物(例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等)、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリエチレンビニルアルコール、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド等)、熱硬化樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等)、ガラス、セラミックス、木及び紙等が挙げられる。第2基板には、着色剤、充填材、強化繊維等の他の成分が含まれていてもよい。
第2基板が、金属、合金等の熱で変形しない材料から構成される場合、第2基板側の表面には、加熱加圧時に塑性変形する樹脂層(熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂から構成される層)を備えていることが好ましい。具体的には、第2基板は、金属、合金等の熱で変形しない材料からなる基板本体と、その基板本体における第1基板側の表面に形成された、突起部を有する樹脂層とで構成されていてもよい。
【0016】
第2基板は、第1基板とは異なる表面に、第2基板と同一又は異なる材料が積層されていてもよい。異なる材料としては、金属(例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、クロム、鉄、銅、ニッケル、亜鉛、銀、白金、金等)、これら金属の合金(例えば、ステンレス、ハステロイ、ジュラルミン、真鍮、マグネシウム合金等)、及び上記金属の酸化物(例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等)、上記熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0017】
第2基板は、第1基板との複合体化が可能であれば、どのような構造を有していてもよい。即ち第2基板は、平板状の基板に限らず、段差のあるもの、突起や凹部を含むもの、湾曲したもの、棒状あるいは柱状のもの、球状のもの、繊維状のものあるいはその織物、更にもっと複雑な形状をしたものであってもよく、第2基板の厚さも複合化が可能でありさえすれば特に限定されない。また、第2基板の第1基板との複合体化を所望する部位は、平坦であってもよく、凹凸形状を有していてもよい。この表面の凹凸形状は、例えば、やすりで形成できる。
【0018】
(3)接着層
接着層(以下、モノリス膜ともいう)は、表層部に、第2基板から延在する突起部を収容可能な複数の孔を備えていることで、突起部と孔とから得られるアンカー効果により、第2基板と強固に接着されている。
【0019】
接着層の構成材料としては、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリエチレンビニルアルコール、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、セルロース樹脂等)、熱硬化樹脂(例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等)等が挙げられる。
【0020】
本発明は、従来、接着剤で複合体化することが困難であった、2つの基板に適した接着剤の存在しない組み合わせ(例えば、金属とポリオレフィン系樹脂の組み合わせ)においても接着を可能とする。即ち、本発明の一態様では、接着層は、第1基板に対して、化学的結合(例えば、水素結合、共有結合等)により強固な接着を可能とし、第2基板に対して、アンカー効果による物理的結合により強固な接着を可能としている。金属とポリオレフィン系樹脂との組み合わせ以外に、金属とスチレン系樹脂との組み合わせ、金属とフッ素樹脂との組み合わせ、ガラスとポリオレフィン系樹脂の組み合わせ、セラミックスとポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、においても本発明を好適に使用できる。より詳細には、本発明は、接着層と第1基板との接着強度が10MPa以上であり、第1基板に第2基板を直接接着させた場合(第1基板を構成する材料と第2基板を構成する材料)の接合強度(第1基板を構成する材料と第2基板を構成する材料との接合強度)が1MPa以下である組み合わせに使用する場合、特に効果を奏する。
第2基板を構成する材料が、接着層を構成する材料(モノリス構造を備えず、孔を形成していないフラットな状態の材料)に対する接着強度は、1MPa以下のような場合でも、本発明によれば、第2基板と接着層との間で高い接着強度を得ることができる。このことは、本発明において、接着層を構成する材料として幅広い材料を用いることができることを示している。
【0021】
複数の孔の形状及び数は、アンカー効果を十分発現できれば、特に限定されない。ここで、アンカー効果を十分発現するとは、1MPaより大きい接着強度を示すとも言い換えることが可能である。
【0022】
例えば、孔は、1〜50μmの直径(最小径と最大径の平均値)を有していることが好ましい。直径の下限は5μmであってもよい。また、孔は、接着層の第2基板側の表層部において、10〜100000個/mm2存在していることが好ましい。更に、孔は、その直径と数との積算値において、100〜500000μm・個/mm2の関係を満たすことが好ましい。また更に、孔は、接着層の厚さ方向において、10μm以上の深さを有していることが好ましい。
【0023】
(4)用途
基板複合体は、第1基板のみでは実現困難な特性を第1基板に付与することが望まれる用途に使用できる。この特性としては、例えば、軽量性、耐熱性、低温特性、耐候性、耐衝撃性、引張り強さ、曲げ強さ、高靭性、高弾性、耐薬品性、耐腐食性、意匠性等が挙げられる。具体的な用途としては、車両(例えば、自動車、鉄道車両等)の外装、風車の羽、電子機器の筐体、建材等が挙げられる。
【0024】
(5)その他の構造
上記態様では、接着層が第1基板と化学結合により接着していたが、接着層を第2基板と接着させるために、接着層の孔と、第2基板の突起部を利用した利用形態を、接着層を第1基板と接着させるために用いてもよい。即ち、第1基板が、第2基板側の表面に複数の突起部を備え、接着層が、第1基板側の表層部に複数の孔を有し、突起部が、孔内に位置することで、接着層と第1基板とを接着させてもよい。この形態では、接着層と第1基板とを、直接接着した場合の接着強度が高くなくても、アンカー効果により接着することが可能となる。この形態は、接着層が熱可塑性樹脂から構成される場合、特に有用である。例えば、一旦接着した、第1と第2の基板を、単に加熱することで、接着剤の残存なく分離することが可能となるので、第1と第2の基板のリサイクルが容易になるという利点がある。
上記構造で使用する接着層は、第1と第2の基板に面する側に孔が存在してさえすればよい。そのため、接着層は、1層でも、複数層の積層体であってもよい。例えば、2層の積層体は、第1基板に面する側に少なくとも孔が存在した第1接着層と、第2基板に面する側に少なくとも孔が存在した第2接着層との積層構造をとり得る。第1接着層と第2接着層とは、接着剤により固定されていてもよく、両層のいずれか一方又は両方を溶融させることにより固定されていてもよい。これら固定には、両層のいずれか一方又は両方に複数の孔を設けることで、接着剤や溶融物から生じた突起部と孔とのアンカー効果による接着力も加えることができる。
(基板複合体の製造方法)
基板複合体は、接着層を構成する樹脂種に応じた方法により製造できる。具体的には、接着層が熱硬化樹脂から構成される場合、以下の方法Aにより、熱可塑性樹脂から構成される場合、以下の方法Bにより、それぞれ基板複合体を製造できる。
【0025】
(方法A)
熱硬化樹脂を与える熱硬化性樹脂と孔形成材(以下、ポロゲンともいう)とを含む混合物層を基板上に形成する工程(混合層形成工程)と、
熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより、複数の孔を備えた接着層を形成する工程(熱硬化工程)と
接着層から孔形成材を除去する工程(除去工程)と、
第1基板側の第2基板の表面に、突起部を孔内に位置するように複数形成することで、第1基板と第2基板とを接着させる工程(突起形成工程)
を経ることで基板複合体を製造できる。
【0026】
(方法B)
熱可塑性樹脂と孔形成材とを含む混合物層を基板上に形成する工程(混合層形成工程)と、
混合物層から孔形成材を除去することにより、複数の孔を備えた接着層を形成する工程(除去工程)と
第1基板側の第2基板の表面に、突起部を孔内に位置するように複数形成することで、第1基板と第2基板とを接着させる工程(突起形成工程)
を経ることで基板複合体を製造できる。
【0027】
(1)方法A
(a)混合物層形成工程
混合物層形成工程で使用される熱硬化樹脂を与える熱硬化性樹脂としては、例えば、未硬化ポリマーと硬化剤との組み合わせが挙げられる。
【0028】
具体的には、熱硬化樹脂がエポキシ樹脂の場合、未硬化ポリマーとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、及びテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベース等のポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、複素芳香環(例えば、トリアジン環等)を含有するエポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂等の非芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
一方、硬化剤としては、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン等)、芳香族酸無水物(例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等)、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、複素芳香環含有アミン(例えば、トリアジン環含有アミン等)等の芳香族硬化剤、脂肪族アミン類(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン等)、脂環族アミン類(イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、これらの変性品等)、ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミン等の非芳香族硬化剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
エポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせとしては、芳香族エポキシ樹脂と脂環族アミン硬化剤の組み合わせ、脂環族エポキシ樹脂と芳香族アミン硬化剤の組み合わせ、芳香族エポキシ樹脂と芳香族アミン硬化剤の組み合わせ、脂環族エポキシ樹脂と脂環族アミン硬化剤の組み合わせでもよい。
また、エポキシ樹脂に対する硬化剤の配合割合は、エポキシ基1当量に対して硬化剤当量が0.2〜2であることが好ましい。更に望ましくはエポキシ樹脂に対する硬化剤の配合割合は、エポキシ基1当量に対して硬化剤当量が0.6〜1.4である。
【0031】
孔形成材は、熱硬化性樹脂を熱硬化させる際に、熱硬化樹脂から分離することで、孔を形成しうる材料であることが好ましい。例えば、熱硬化樹脂がエポキシ樹脂である場合、未硬化ポリマー及び/又は硬化剤を溶かすことができ、かつ未硬化ポリマーと硬化剤が重合した後、重合物と相分離するなどして分離可能な材料を使用できる。具体的には、メチルセロソルブエチルセロソルブのようなセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンジメチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら具体的な孔形成材の内、分子量600以下のポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
孔形成材の使用量は、未硬化ポリマー100重量部に対して、10〜400重量部であることが好ましい。
【0032】
熱硬化樹脂を与える熱硬化性樹脂と孔形成材との混合方法は、特に限定されず、公知の撹拌機による混合方法が挙げられる。混合物は、基板上で混合物層を形成するために適切な粘度に調整するための粘度調整剤(例えば、低級アルコール)を含んでいてもよい。
得られた混合物を基板上に滴下又は塗布することで混合物層が得られる。混合物層の厚さは特に限定されない。
【0033】
(b)熱硬化工程
次に、熱硬化性樹脂を熱硬化させることにより、複数の孔を備えた接着層が形成される。
熱硬化の条件は、使用する熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜決定できる。例えば、未硬化ポリマーがエポキシ樹脂の場合、60〜300℃で、0.5〜10時間保持することが好ましい。熱硬化性樹脂の硬化により、熱硬化樹脂から孔形成材が分離することで、接着層に複数の孔が形成される。
【0034】
(c)除去工程
次に、接着層の複数の孔内に存在する孔形成材が除去される。除去方法は、特に限定されず、孔形成材の種類に応じて適宜決定できる。例えば、孔形成材がグリコール類である場合、水、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、THF(テトラヒドロフラン)、及びこれらの混合溶剤等を用いて、孔形成材を溶解する方法が挙げられる。
孔形成材を除去後、接着層を乾燥処理に付してもよい。
【0035】
(d)突起形成工程
突起形成工程では、第1基板側の第2基板の表面に、突起部を孔内に位置するように複数形成することで、第1基板と第2基板とを接着させる。突起部の形成は、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)突起部が熱可塑性樹脂からなる場合、少なくとも接着層側に熱可塑性樹脂層を備えた第2基板を、接着層上に載せると同時に又は載せた後、加熱することにより、熱可塑性樹脂層から延在させることにより突起部を形成する。
(2)突起部が接着剤に由来する場合、接着層上に接着剤を孔に延在するように塗布して得た塗膜上に第2基板を載せた後、接着剤を固化又は硬化させることで突起部を形成する。
(3)突起部が熱可塑性樹脂からなる場合、少なくとも接着層側に熱可塑性樹脂層を備えた第2基板を、熱可塑性樹脂層を有機溶剤と接触させることにより軟化させた後、接着層上に載せることにより、熱可塑性樹脂層から延在させることにより突起部を形成する。
【0036】
(d−1)工程(1)
加熱工程では、接着層上に樹脂層の前駆体層を形成した後、前駆体層を加熱あるいは加圧しながら加熱することにより、孔内に延在した突起部を備えた樹脂層が形成される。孔内に延在した突起部は、孔に填まり込んで孔の形状にあった形状(孔に対して相補的な形状)となりうる。
加熱は、接着層が溶融せず、前駆体層が溶融する条件で行われる。この条件で熱可塑性樹脂層を加熱することで、熱可塑性樹脂層を構成する樹脂が溶融により接着層の孔に延在して突起部を形成する。加熱温度は、熱可塑性樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)より20℃以上高いことが好ましい。加熱時間を長くすることで、加熱温度を下げることができ、この場合の加熱温度は、熱可塑性樹脂層を構成する樹脂のTgより高いことが好ましい。また、加圧の程度を大きくすることによって、加熱時間を短くする、あるいは、加熱温度を下げる、あるいは加熱時間を短くし、かつ加熱温度を下げることができる。結晶性の樹脂に対しては、融点(Tm)以上の温度であることが好ましい。
【0037】
孔内に延在した突起部を備えた樹脂層を形成する工程として、加熱以外の工程によってもよい。例えば、弾性率の低い樹脂を使用して、加熱することなく、加圧のみによって、孔内に延在した突起部を備えた第2基板が形成される。
【0038】
(d−2)工程(2)
この突起部の形成方法は、接着剤を用いて、接着層と第2基板とを接着する極めて単純な方法である。接着剤は、接着層上に塗布されることで、接着層に存在する孔を埋めた塗膜となる。接着剤を固化又は硬化させると、孔内の接着剤が突起部となり、塗膜は第2基板の一部となる。
ここで使用可能な接着剤は、特に限定されず、公知の接着剤(例えば、セルロース系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤、モノマーを塗布して硬化(重合)するタイプの接着剤、液状オリゴマーや反応性の液状ポリマーを硬化するタイプの接着剤)をいずれも使用できる。
固化及び硬化の条件は、使用する接着剤の種類に応じて適宜設定できる。
【0039】
(d−3)工程(3)
この突起部の形成方法は、第2基板側の熱可塑性樹脂層を有機溶剤により軟化させることで、熱可塑性樹脂層から延在させる方法である。ここで使用可能な有機溶剤は、特に限定されず、公知の有機溶剤(例えば、トルエンのような芳香族系溶剤、アセトンのような脂肪族系溶剤)から、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択できる。
【0040】
(e)その他
接着層の孔の大きさ、個数等は、使用する未硬化ポリマー、硬化剤及び孔形成材の種類や配合比率、硬化時の温度や時間等の条件を適宜調整することにより調整できる。
【0041】
(2)方法B
(a)混合物層形成工程
混合物層形成工程では、熱可塑性樹脂と孔形成材とを含む混合物層が基板上に形成される。ここで使用される孔形成材は、熱可塑性樹脂を溶解しうる有機溶媒を使用することが好ましい。そのような有機溶媒は、アルコール、トルエン、キシレン、エーテル、エステル等から熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択できる。混合物層の基板上への形成方法は、方法Aと同じ方法を使用できる。
【0042】
(b)除去工程
次に、混合物層から孔形成材を除去することにより、複数の孔を備えた接着層が形成される。孔の形成は、混合物層に含まれる孔形成材を、例えば、加熱により蒸発させることにより行うことができる。
(c)突起形成工程
突起形成工程は、上記方法Aと同様に行うことができる。
【実施例】
【0043】
本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
(混合層形成工程)
試薬瓶にDGEBA(未硬化ポリマー、エポキシ樹脂:2,2−ビス(4−グリシジルオキサフェニル)プロパン)、PEG200(ポロゲン:ポリエチレングリコール、東京化成工業社製)、BACM(アミン硬化剤:4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン))を所定量加えて混合溶液を調製した。アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH2]/[epoxy])が0.8〜1.5となるようにエポキシ樹脂とアミン硬化剤を計量し、これらモノマーの総量が30重量%となるようにポロゲンを加えた。
混合溶液をSUS基板に滴下して、熱硬化性樹脂とポロゲンとを含む混合物層を形成した。
【0044】
(熱硬化工程)
混合物層を、オーブンにて120℃、20分間及び80℃、30分間加熱することで、複数の孔を備えた接着層を形成した。
(除去工程)
その後、イオン交換水に一晩浸漬してポロゲンを除去し、常温、真空下で2時間乾燥させ白色のモノリス膜を得た。
SUS基板(SUS430)は、電子線で10mm×50mm×0.48mmに切断したものを用いた。
【0045】
作製したモノリス膜を以下の条件で観察した。
(1)作製したモノリス膜の表面モルフォロジーのSEM観察を、金属非蒸着、加速電圧0.8〜1.0kV、スポット径10で行った。SEM観察には走査型電子顕微鏡(VE−9800、KEYENCE社製)を用いた。
(2)作製した400〜600μm厚のモノリス膜をSUS基板からはがし、液体窒素で冷却した後ガラス棒で砕いたものについて、BET吸着法による空隙率測定を行った。BET吸着法による測定には、真空前処理装置(BELPREP−vacII、マイクロトラック・ベル社製)とガス吸着量測定装置(BELSORP−max、マイクロトラック・ベル社製)を用いた。
【0046】
(3)作製したモノリス膜をSUS基板からはがし、約1mm四方に切断した試料を用いて、窒素気流下(流量50mL/min)、昇温速度10℃/minでTG−DTA測定を行った.熱分解開始温度(Td5)は水分の蒸発による重量変化が見られなくなった時の重量を基準として算出した。最大分解温度(Tmax)はTG微分曲線の極大値として求めた。測定には、示差熱熱重量同時測定装置(DTG−60、島津製作所社製)を用いた。
【0047】
(加熱工程)
次に、所定の温度に加熱した熱プレス器の下部プレートに、モノリス膜を作製した金属基板、樹脂基板の順に接合面積10mm×10mmにて重ねて載せ、室温の上部プレートで一定時間〜0MPaの力で軽く押さえ、表1に記載した条件で熱溶着させて基板複合体を得た。樹脂基板はダイヤモンドカッターにて幅10mm×長さ50mmに切断した表1に示す6種の樹脂基板を用いた。
【0048】
表1中、PETはポリエチレンテレフタレート(タキロン社製)、PCはポリカーボネート(アズワン社製)、POMはポリオキシメチレン(アズワン社製)、ABSはアクリルニトリルブタジエンスチレン樹脂(アズワン社製)、PPはポリプロピレン(アズワン社製)、PEはポリエチレン(アズワン社製)を意味する。
【0049】
【表1】
【0050】
比較例1
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例1と同様にして金属基板と樹脂基板とからなる基板複合体を作製した。
【0051】
(試験、観察及び分析)
得られた基板複合体について、以下の試験、観察及び分析を行った。
(1)引張りせん断試験
基板複合体(試験片)を、つかみ具間距離50mm、試験片幅10mm、引張り速度1mm/minの条件の引張りせん断試験に付した。試験片厚さは表2の各樹脂基板の値とした。接合強度を式(1)より算出した(式中、Lmaxは最大負荷を意味する)。
接合強度(MPa)=Lmax(N)/100(mm2) (1)
また、つかみ具間距離30mm、試験片幅10mm、引張り速度0.3mm/minで引張り試験を行い、ひずみが0.05〜0.25%となる範囲の傾きより基板複合体の弾性率を求めた。
【0052】
(2)破断面の観察
引張りせん断試験後の試験片について、金属基板側の破断面は金属非蒸着、加速電圧0.8〜1.0kV、スポット径10で、樹脂層側の破断面はAu蒸着(30〜45秒間スパッタリング)、加速電圧2.0〜3.0kV、スポット径8〜10の条件でSEMを用いて観察を行った。
【0053】
(評価)
(1)孔径、細孔数、空隙率
異なるアミン硬化剤の比率(γ=0.8、1.0及び1.2)で硬化させることにより得られたモノリス膜表面のSEM画像を図2(a)〜(c)に、γに対する各パラメータ(空隙率及び平均孔径)のプロットの相関を図3(a)及び(b)に、細孔数と平均孔径同士の相関を図4に示す。モノリス膜表面の平均孔径及び単位面積当たりの細孔数はSEM画像より測定した。空隙率は各試験片についてモノリス膜の重量、膜厚、面積を測定し算出した密度ρと平滑なモノリス膜の密度ρ0より式(2)を用いて計算した。
空隙率(%)=(1−ρ/ρ0)×100 (2)
アミン硬化剤の比率を増やすほど、空隙率は下がり、平均孔径は大きくなるという傾向を得た。また、平均孔径の増大に対して、細孔数の対数値は線形的に減少するという相関が見られた。この結果から、アミン硬化剤の比率が多いほど架橋点密度も増大し、相分離後、より平滑な膜に近い構造が形成されると考えられる。以上より、アミン硬化剤の比率を調節することによって空隙率、孔径、細孔数を変化させることは可能であることが分かった。
【0054】
(2)BET比表面積
二種類のアミン硬化剤の比率(γ=1.0及び0.5)で硬化させたモノリス膜についてBET吸着測定を行った。γ=1.0で硬化させたモノリス膜の比表面積は、0.584m2/g(N2)及び0.662m2/g(Kr)であった。また、γ=0.5で硬化させたモノリス膜の比表面積は、0.121m2/g(N2)であった。これら比表面積値から、γが大きい方が共連続構造を形成できることが推察される。
【0055】
(3)耐熱性
γ=0.8で硬化させた場合のモノリス膜について、熱重量分析により得られたTG−DTA曲線を図5に示す。図5中、実線は左縦軸と、点線は右縦軸と、温度との関係を意味する。100℃付近での吸熱を伴う重量減少は吸着水の蒸発と考えられ、196℃で一度停止した。その後200℃以降で再び重量減少が見られ、これは発熱を伴うことから熱分解と判断される。
【0056】
(4)せん断試験
(a)γ=0.99〜1.01で硬化させたモノリス膜を作製したSUS基板とPET基板(樹脂基板)を熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線を図6に、式(1)より算出した接合強度を表2に示す。熱溶着は、図7のようにSUS基板とPET基板の接合部のみを上下ステージに挟み、20秒間行った。熱溶着温度は170℃とした。
【0057】
熱溶着を20秒間行った場合、途中で基板破壊することなく接合強度を測定できた。極性樹脂であるPETは、SUS基板上に平滑なエポキシ硬化膜を作製することでも接合強度は増大したが、モノリス膜を作製することで更に接着強度を増大できた。
破断後の試験片を図8に示す。図8から、基板破壊が生じなかったことが分かる。
【0058】
【表2】
【0059】
(b)γ=0.98で硬化させたモノリス膜を作製したSUS基板とPET及びPC基板を熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線を図9(a)及び(b)に、接合強度を表3に示す。熱溶着は図10のようにSUS基板とPET及びSUS基板とPC基板全体を上下ステージに挟み、PET基板は100℃で180秒間、PC基板は200℃で180秒間行った。熱溶着温度は、ステージ内で基板が大変形せずかつ測定に十分な接合強度が得られる温度として、Tgよりそれぞれ30℃及び50℃高い温度に設定した。
【0060】
【表3】
【0061】
熱溶着温度を100℃に下げたため、PET基板との接合強度は170℃で熱溶着させた場合と比較して(表2参照)、総じて低い接合強度となった。
【0062】
(5)アミン添加量による破断面の違い
(a)PET
γ=1.19でモノリス膜を作製したSUS基板との基板複合体について、接合強度と破断形態をγ=0.98の場合とともに表4に示す。表4中、Mixは、破断がSUS界面とPET界面とで生ずる場合が混在していることを意味する。また、それぞれのアミン硬化剤の比率(γ)における破断後の試験片を図11(a)及び(b)に、破断面を1000倍に拡大したSEM画像を図12及び13に示す。図12及び13中、(a)モノリス膜表面、(b)はPET表面の画像を意味する。
【0063】
【表4】
【0064】
アミン硬化剤の比率が多いとモノリス膜表面の孔径は大きくなるが、PETにおいて接合強度は低下する結果を得た。破断形態については、より強度が高いγ=0.98の場合にSUS基板/モノリス膜とPET基板/モノリス膜両方の界面での剥離が混在した。また、破断面のSEM画像より、γ=0.98の場合にPETがよりモノリス膜表面の細孔に入り込んでいることが分かった。モノリス膜表面の細孔に残っているPETはやや引き伸ばされた形状をしており、アンカー効果の発現が示唆される。これより、100℃という低い熱溶着条件では共連続構造の接合強度向上への寄与が大きいと考えられる。
【0065】
(b)PC
γ=1.55でモノリス膜を作製したSUS基板との基板複合体について、接合強度と破断形態をγ=0.98の場合とともに表5に示す。また、それぞれのアミン添加量における破断後の試験片のSEM画像を図14(a)〜(c)に示す。図14(a)は破断形態がSUS界面破断の場合、図14(b)は凝集破壊の場合、図14(c)はPC界面破断の場合の画像である。更に、γ=1.55の場合における破断面のSEM画像を図15(a)及び(b)に示す。図15(a)はモノリス膜表面の、図15(b)はPC表面のSEM画像である。
【0066】
【表5】
【0067】
PCの場合、アミン硬化剤の比率が多くなると接合強度が増大する結果となった。また破断形態は、SUS基板/モノリス膜界面剥離、モノリス膜凝集破壊、そしてPC基板/モノリス膜界面剥離と全ての基板複合体において別々となり、SUS基板/モノリス膜界面の相互作用、PC基板/モノリス膜界面の相互作用、及びモノリス層の強度がほぼ同等であったと推測される。破断面のSEM画像はPC基板/モノリス膜界面剥離となったγ=1.55の場合のみ示した。
【0068】
(c)POM、ABS、PP、PE
γ=0.95〜1.04で硬化させたモノリス膜を作製したSUS基板と種々の樹脂基板を熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線の各樹脂における接合強度を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
そのままのSUS基板に熱溶着させた場合と比較すると、POM、PP、PEにおいては1.5〜3倍の接合強度増大が見られ、ABSでは30倍以上の増大となった。これより、接合強度増大には、モノリス膜の共連続構造が大きく寄与していることが分かる。
モノリス膜を作製したSUS基板と各樹脂基板との基板複合体について、POM、ABS、PP、PEの順に、破断後の試験片を図16(a)〜(d)に、モノリス膜側の破断面SEM画像を図17(a)〜(d)に、樹脂側の破断面SEM画像を図18(a)〜(d)に示す。
【0071】
POM、PP、PEでは多数が樹脂基板/モノリス膜で界面剥離しており、一部SUS基板/モノリス膜と樹脂基板/モノリス膜界面での剥離が混在する破断形態が見られた。ABSではSUS基板/モノリス膜界面のみでの剥離例が多く見られた。また、SEM画像よりモノリス膜表面の細孔に樹脂が残っていることが分かった。POM、PP、PEでは樹脂が針状に引き伸ばされ、ABSでは樹脂があまり伸びずに破断した様子が観察された。これより、いずれの場合も熱溶着の際に溶融した樹脂がモノリス膜へ入り込んだことが確認され、共連続構造の寄与によってアンカー効果が発現したものと考えられる。
【0072】
(6)モルフォロジーと接合強度の相関
(a)膜厚
γ=0.95〜1.04とγ=1.24〜1.50で、表面モルフォロジーを揃えて作製したモノリス膜について、樹脂種毎の、膜厚に対するSUS基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体の接合強度を図19(a)〜(d)に示す。図19(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用したグラフである。また、図19(a)において、○は孔径7.6±2.3μmで孔数1858±895個/mm2、◇は孔径16.4±1.4μmで孔数376±275個/mm2のプロットに対応する。図19(b)において、○は孔径12.8±8.4μmで孔数1456±949個/mm2、◇は孔径35.34±11.9μmで孔数128±39個/mm2のプロットに対応する。図19(c)において、○は孔径9.2±1.5μmで孔数1752±295個/mm2のプロットに対応する。図19(d)において、○は孔径6.4±0.6μmで孔数2276±426個/mm2のプロットに対応する。
【0073】
POMでは、膜厚が厚くなるにつれて接合強度は減少する傾向を示した。これは接着剤による接合での一般的な傾向と類似するが、モノリス膜が厚いほど熱溶着の際の熱がPOMへ伝わりにくく、モノリス膜の表層部より深くに侵入していないという可能性が考えられる。ABSでは、比較的小さい孔径の場合では膜厚の増大に対して接合強度が低下する傾向が見られたが、孔径が大きい場合では膜厚が薄くても低い接合強度を示した。PPやPEについては明確な傾向は見られなかった。
【0074】
(b)平均孔径と単位面積当たり細孔数
膜厚を揃えてγ=0.83〜1.55の範囲で作製したモノリス膜について、モノリス膜表面の平均孔径、及び単位面積当たりの細孔数に対するSUS基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体の接合強度をそれぞれ図20(a)〜(d)及び図21(a)〜(d)に示す。図20(a)〜(d)及び図21(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用したグラフである。また、図20(a)及び図21(a)において、○は膜厚152±4μm、△は膜厚228±8μmのプロットに対応する。図20(b)及び図21(b)において、○は膜厚154±15μm、△は膜厚258±13μmのプロットに対応する。図20(c)及び図21(c)において、○は膜厚150±16μmのプロットに対応する。図20(d)及び図21(d)において、○は膜厚154±9μmのプロットに対応する。
図20(a)〜図21(d)から、特にABSでは、モノリス膜表面の孔径が増大する(あるいは細孔数が減少する)と接合強度は低下する傾向が見られた。
【0075】
(c)細孔断面積
モノリス膜を作製したSUS基板と各樹脂との基板複合体について、モノリス膜表面の細孔断面積に対する接合強度のプロットを図22(a)〜(d)に示す。細孔断面積は、接合面範囲のモノリス膜表面にある細孔の断面積を総計した値として、式(3)より算出した。
断面積(mm2)=πr2×n×100(mm2) (3)
r:平均孔径、n:単位面積当たりの孔数
図22(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用したグラフである。また、図22(a)において、○は膜厚152±4μm、△は膜厚228±8μmのプロットに対応する。図22(b)において、○は膜厚154±15μm、△は膜厚258±13μmのプロットに対応する。図22(c)において、○は膜厚150±16μmのプロットに対応する。図22(d)において、○は膜厚154±9μmのプロットに対応する。
【0076】
ABSでは、細孔断面積の増大に対して接合強度が低下する傾向が見られ、膜厚の薄い方がその低下はより顕著であった。一方、POM及びPEでは、ABSとは逆に、細孔断面積の増大に対して接合強度が増大する傾向が見られ、その増大は膜厚の薄い方がより顕著であった。膜厚が薄いとより顕著に傾向が出るのは、熱が樹脂により伝わり易く、モノリス膜の奥まで樹脂が入り込むためではないかと推測される。
【0077】
(d)モノリス膜表面積
モノリス膜を作製したSUS基板と各樹脂基板との基板複合体について、モノリス膜内部の表面積に対する接合強度のプロットを図23(a)〜(d)に示す。モノリス膜表面積は、接合面範囲のモノリス膜内部について、平均孔径を有し互いに連結していない球状空隙を仮定した近似値であり、式(4)より算出した。
表面積(mm2)=4πr2×(t/2r)×n×100(mm2) (4)
r:平均孔径、t:膜厚、n:単位面積当たりの孔数
図23(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用したグラフである。また、図23(a)において、○は膜厚152±4μm、△は膜厚228±8μmのプロットに対応する。図23(b)において、○は膜厚154±15μm、△は膜厚258±13μmのプロットに対応する。図23(c)において、○は膜厚150±16μmのプロットに対応する。図23(d)において、○は膜厚154±9μmのプロットに対応する。
全体として細孔数の場合と同様の傾向であった。
【0078】
(e)モルフォロジーと破断面の相関
γ=0.83及びγ=1.19〜1.55の条件でモノリス膜を作製したSUS基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体について、破断面のSEM画像を図24(a)〜図27(d)に示す。これら図において、(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用した場合の画像である。図24及び25は、γ=0.83の場合、モノリス膜側の破断面及び樹脂基板側の破断面の画像であり、図26及び27は、γ=1.19〜1.55の場合、モノリス膜側の破断面及び樹脂基板側の破断面の画像である。
【0079】
POM、PP、PEでは、孔径が小さい場合は針状に変形した樹脂が一つの細孔から一本ずつ伸びているが、孔径が大きい場合は一つの細孔から複数の針状樹脂が伸びている様子が見られた。ABSでは、孔径が大きいほど細孔に対して残った樹脂の占める面積が小さくなっている様子が見られた。また、特にABSやPEで、孔径が大きい場合の樹脂破断面では、細孔の中の微細構造を反映した形状が見られた。この粒子凝集状の微細構造は、相分離によって共連続構造が形成された後に、残った液相のポリマー分率から再度相分離が進行してできたものと考えられる。
【0080】
実施例2
モノリス膜の製造に際して、表7に示す温度条件を変えること以外は実施例1と同様にしてモノリス膜及び基板複合体を得た。得られたモノリス膜のSEM画像を図28に示す。
【0081】
【表7】
【0082】
(1)せん断試験
共連続構造及び粒子凝集構造のモノリス膜を作製したSUS基板にPE基板を100℃で60秒熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線を図29、接着強度を表8に示す。図29中、実線が粒子凝集型に、点線が共連続構造のモノリス膜に対応する。
【0083】
【表8】
【0084】
共連続構造のモノリス膜の場合と比較して、粒子凝集型のモノリス膜の試験片はほぼ同様の接合強度を示した。この結果は、連結した粒子の隙間に樹脂が入り込み、共連続構造の場合と同様のアンカー効果を発現したためと推察される。
【0085】
(2)破断面の観察
粒子凝集型モノリス膜を作製したSUS基板/モノリス膜/PEの基板複合体の破断形態を図30、モノリス膜側の破断面SEM画像を図31(a)に、PE基板側の破断面SEM画像を図31(b)に示す。
破断形態はPE基板/モノリス膜界面での剥離であった。共連続構造のモノリス膜の場合と同様に、連結した粒子の隙間から針状の樹脂が伸びていることから、粒子凝集構造でもアンカー効果が発現していると推察される。
【0086】
実施例3
SUS基板をCu基板に変更し、アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH2]/[epoxy])を1.02とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が29.8重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてCu基板/モノリス膜複合体を得た。
上記Cu基板/モノリス膜複合体上に、実施例1と同じ条件で、6種の樹脂基板(POM、ABS、PP、PE、PET及びPC製)を熱融着させてCu基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体を得た。得られた基板複合体を実施例と同じ引張りせん断試験に付した。樹脂基板としてPOM、ABS、PP及びPEを用いた基板複合体の引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線を図32(a)〜(d)に、POM、ABS、PP、PE、PET及びPCを用いた基板複合体の接合強度を表9に示す。
【0087】
比較例2
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例3と同様にしてCu基板と樹脂基板とからなる基板複合体を作製した。得られた基板複合体を実施例と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表9に示す。
【0088】
【表9】
【0089】
樹脂基板をそのままCu基板に熱溶着させた場合は、低い接合強度しか得られなかった。一方、モノリス膜を作製した場合は、接合強度が増大した。熱溶着温度を高くする、あるいは熱溶着時間を長くすることにより、高い接合強度が得られた。また、熱溶着温度を高く、かつ熱溶着時間を長くすることによって高い接合強度が得られた。上記に示した範囲の熱溶着温度より更に高い温度で熱溶着を行う、あるいは上記に示した範囲の熱溶着時間より更に長い温度で熱溶着を行うと、樹脂基板の変形が起こる頻度が高くなり、接合強度にばらつきが生じて正確な接合強度の測定が困難になった。
【0090】
実施例4
SUS基板をAl基板に変更すること以外は実施例1と同様にしてAl基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体を得た。また、モノリス膜を使用しないこと以外は、Al基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体と同様にして、Al基板/樹脂基板複合体を得た。尚、Al基板はPカッターで10mm×50mm×0.52mmに切断したものを用いた。Al基板はあらかじめ表面処理を施してから使用した。Al基板を10重量%の水酸化ナトリウム水溶液に室温で2.5分から10分間浸漬することによりAl基板表面の前処理を行った後、Al基板上にモノリス膜を作製した。処理後のAl基板上に4種の樹脂基板(POM、ABS、PP及びPE製)を熱融着させてAl基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体を得た。得られた基板複合体を実施例1と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表10に示す。
【0091】
比較例3
モノリス膜を介在させず、Al基板表面の前処理を行わないこと以外は、実施例4と同様にしてAl基板と樹脂基板とからなるAl基板/樹脂の基板複合体を作製した。得られた基板複合体を実施例と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表10に示す。
【0092】
【表10】
【0093】
樹脂基板をそのままAl基板に熱溶着させた場合では、測定不能なほどに低い接合強度しか得られなかった。一方、モノリス膜を作製した場合、Al基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体の接合強度は増大した。樹脂基板としてABSを用いたAl基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体では、前処理時間2.5分から5分間の範囲で前処理時間が長くなるほど接合強度は大きくなった。樹脂基板としてPPあるいはPEを用いたAl基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体では、前処理時間2.5分から10分間の範囲で前処理時間が長くなるほど接合強度は大きくなった。
【0094】
未処理のAl基板表面のSEM画像を図33(a)に、Al基板を10重量%の水酸化ナトリウム水溶液に室温で5分間浸漬した後のAl基板表面の形態を図33(b)に示す。水酸化ナトリウム水溶液を用いる前処理によってAl基板表面の酸化膜が除去されていることが分かる。このように酸化膜の除去ならびに表面平滑性の低減によって、Al基板へのエポキシモノリス膜をより固定できる。
ここで、Al基板表面の前処理は、アルカリ処理によって行うことができるが、一般にAl基板表面の前処理法として知られているものであれば特に制限はなく、酸を用いても前処理を行うことができる。また、ブラスト処理によっても前処理を行うことができる。
【0095】
実施例5
SUS基板をAl基板に変更すること、及びAl基板表面をブラスト処理によって前処理すること以外は実施例1と同様にして、Al基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体を得た。ブラスト処理には、金属やすりあるいはサンドシート(シャイネックス社製サンドシート極荒#80、ST−01、ナイロン不織布製研磨粒子付き)を使用し、10分間金属基板表面を研磨した。得られた基板複合体を実施例1と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表11に示す。
【0096】
【表11】
【0097】
表11に示すように、金属やすりあるいはサンドシートを用いてブラスト処理を行うことにより、接合強度の向上がみられた。エポキシモノリス膜が介在しない直接接合では全く接合強度が得られない樹脂との組み合わせにおいても、POMやABSの結果からわかるように、エポキシモノリス膜が介在することによりわずかながら接合強度が発現し、金属やすりあるいはサンドシートを用いたブラスト処理によりいずれの樹脂との組みあわせにおいても更に接合強度が増大した。
【0098】
実施例6
SUS基板表面を金属やすりによりブラスト処理すること以外は実施例1と同様にして、SUS基板/モノリス膜/PETの基板複合体を得た。ブラスト処理には、金属やすりを使用し、10分間金属基板表面を研磨した。得られた基板複合体を実施例1と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表12に示す。
【0099】
【表12】
【0100】
表12に示すように、金属やすりを用いてSUS基板のブラスト処理を行うことにより、SUS基板/モノリス膜/PET複合体に対する接合強度の向上がみられた。このように、SUS基板/モノリス膜/PET複合体は、3.31MPaから6.09MPaの高い値を示し、アンカー効果の発現によってモノリス膜とPET間が強固に接合するため、他の接合部位であるSUS基板とモノリス膜間の接合も十分な強度をもつことが必要となる。SUS基板とモノリス膜間の接合には、通常の接着メカニズムを利用しているため、SUS基板表面を前処理することによって、接合強度を向上させることができる。
【0101】
実施例7
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH2]/[epoxy])を1.03〜1.11の範囲とし、モノマーの総量(エポキシ樹脂とアミン硬化剤の合計量)とポロゲンとの合計量に対するモノマーの総量(ω重量%)を30.1〜31.3の範囲に調製すること以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。モノリス膜表面のSEM画像を図34に示す。
【0102】
次に、上記SUS基板/モノリス膜複合体とPETからなる樹脂基板とを使用し、PET基板に対して100℃から160℃の範囲の熱溶着温度及び30秒から270秒間の範囲の熱溶着時間(表13に示す加熱条件)とすること以外は実施例1と同様にして接着強度を測定した。結果を表13に示す。
【0103】
【表13】
【0104】
硬化させたモノリス膜を作製したSUS基板とPET基板を熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた接合強度は、熱溶着温度を高くする、あるいは熱溶着時間を長くすることにより、高い接合強度が得られた。熱溶着温度が140℃の場合、熱溶着時間とともに接合強度は増大し、熱溶着時間が150秒で最大値を示した。
【0105】
実施例8
実施例7と同様にして、SUS基板/モノリス膜複合体とPCからなる樹脂基板とを使用し、PC基板に対して180℃から200℃の範囲の熱溶着温度及び180秒から360秒間の範囲の熱溶着時間とすること以外は実施例7と同様にして接着強度を測定した。ここで用いた熱溶着温度ならびに熱溶着時間の範囲は、PC基板が大変形せずかつ測定に十分な接合強度が得られる温度の範囲とした。結果を表14に示す。
【表14】
【0106】
熱溶着温度を高くする、あるいは熱溶着時間を長くすることにより、高い接合強度が得られた。また、熱溶着温度を高く、かつ熱溶着時間を長くすることによって高い接合強度が得られた。熱溶着温度が180℃の場合、熱溶着時間とともに接合強度は増大し、熱溶着時間が280秒で最大値を示した。熱溶着温度が200℃の場合、熱溶着時間とともに接合強度は増大し、熱溶着時間が220秒で最大値を示した。
【0107】
実施例1から実施例5で示した方法を組みあわせ、加熱温度、加熱時間、金属基板の前処理を組み合わせて使用することもでき、これら種々の条件で作製した金属基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体の最大接合強度の比較を表15に示す。SUS基板/モノリス膜複合体、Cu基板/モノリス膜複合体、及びAl基板/モノリス膜複合体と、POM、ABS、PP、PE、PET及びPCの組みあわせからなる金属基板/モノリス膜/樹脂複合体の接合強度は、SUS基板/モノリス膜/樹脂複合体に対して1.22MPaから5.13MPaの値を、Cu基板/モノリス膜/樹脂複合体に対して2.41MPaから6.88MPaの値を、及びAl基板/モノリス膜/樹脂複合体に対して0.71MPaから3.35MPaの値を示し、いずれの組みあわせの複合体に対しても、モノリス膜を用いない場合の比較例1から比較例4で示した0MPaから0.85MPaに比べて高い値を示し、アンカー効果によって高い接合強度が得られた。ここで表15に示した値は、それぞれの組みあわせの材料に対する上限値を示すものではなく、表に示した接合条件において、アンカー効果の発現によって接合強度の増大が得られたことを示すものである。
【0108】
【表15】
【0109】
実施例9
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH2]/[epoxy])を1.07とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30.6重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。得られたモノリス膜のSEM画像を図35に示す。
モノリス膜上に木工用ボンド(コニシ社製、品番#10122、成分:酢酸ビニル樹脂41%、水59%)を0.1g/cm2の量で塗布し、得られた塗膜上に木材(ラワン材、厚さ3mm)を25kg/m2の力でSUS基板に向けて押圧し、一晩静置することで、SUS基板と木材とを接着した。得られた基板複合体を、引張速度を0.1mm/minとすること以外は実施例1と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表16に示す。
【0110】
比較例4
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例9と同様にしてSUS基板と木材とを木工用ボンドで接着した。得られた基板複合体を実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表16に示す。
【0111】
【表16】
【0112】
モノリス膜を介した方が、SUS基板と木材とを強く接着できることが分かる。なお、引張りせん断試験に接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを図36に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。
実施例9の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、木材側とモノリス膜側の破断面のSEM画像を図37(a)及び(b)に示す。また、比較例4の基板複合体を引張りせん断試験に付した後の試験片について、木材側の破断面のSEM画像を図37(c)に示す。モノリス膜を介した場合、図37(a)より、接着剤が破断していることが示されており、かつ図37(b)より、接着剤がモノリス膜表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。モノリス膜を介在させない場合、図37(c)より、アンカー効果が全く発現していないことが示唆される。
【0113】
実施例10
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH2]/[epoxy])を1.23とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30.2重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。
モノリス膜上にプラモデル用接着剤(セメダイン社製、プラモデル用接着剤、スチロール樹脂:14%、アセトンとシクロヘキサンと酢酸ブチルの合計:86%)を0.05g/cm2の量で塗布し、得られた塗膜上にポリスチレン板(HIKARI社製PS2031−1、厚さ1mm)を25kg/m2の力でSUS基板に向けて押圧し、一晩静置することで、SUS基板とポリスチレン基板とを接着した。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表17に示す。
【0114】
比較例5
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例10と同様にしてSUS基板とポリスチレン板とをプラモデル用接着剤で接着した。得られた基板複合体を実施例10と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表17に示す。
【0115】
【表17】
【0116】
モノリス膜を介した方が、SUS基板とポリスチレン基板とを強く接着できることが分かる。なお、引張りせん断試験に接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを図38に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。
実施例10の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、モノリス膜側の破断面のSEM画像を図39に示す。モノリス膜を介した場合、接着剤がモノリス膜表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。
【0117】
実施例11
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH2]/[epoxy])を1.24とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30.2重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。
ポリスチレン基板上に、1cm2面積あたり、パスツールピペットを用いてトルエンを数滴(約0.05mL)滴下し、室温で10分間放置した後、ポリスチレン基板と、基板上にモノリス膜を作製したSUS基板とをダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、70℃に加熱した真空オーブン中で1時間真空乾燥することで残ったトルエンを除去し、SUS基板とポリスチレン基板とを接着した。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表18に示す。
【0118】
比較例6
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例11と同様にしてSUS基板とポリスチレン基板とをトルエンで接着した。得られた基板複合体を実施例11と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表18に示す。
【0119】
【表18】
【0120】
モノリス膜を介した方が、SUS基板とポリスチレン基板とを強く接着できることが分かる。なお、引張りせん断試験において接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを図40に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。
実施例11の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、ポリスチレン基板側とモノリス膜側の破断面のSEM画像を図41(a)及び(b)に示す。モノリス膜を介した場合、図41(a)より、ポリスチレンが破断していることが示されており、かつ図41(b)より、ポリスチレンがモノリス膜表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。
【0121】
実施例12
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH2]/[epoxy])を1.23とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が29.8重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)基板上に、パスツールピペットを用いてアセトンを数滴(約0.05mL)滴下し、5分間放置した後、PMMA基板と、基板上にモノリス膜を作製したSUS基板とをダブルクリップ(幅15mm)で挟み、一晩室温で放置し、SUS基板とPMMA基板とを接着した。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表19に示す。
【0122】
比較例7
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例12と同様にしてSUS基板とPMMA板とをアセトンで接着した。得られた基板複合体を実施例12と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表19に示す。
【0123】
【表19】
【0124】
モノリス膜を介した方が、SUS基板とPMMA基板とを強く接着できることが分かる。なお、引張りせん断試験において接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを図42に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。
実施例12の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、PMMA基板側とモノリス膜側の破断面のSEM画像を図43(a)及び(b)に示す。モノリス膜を介した場合、図43(a)より、PMMAが破断していることが示されており、かつ図43(b)より、PMMAがモノリス膜表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。
【0125】
実施例13
(モノリスシートの作製)
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH2]/[epoxy])を1.22とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30.0重量%となるようにポロゲンを加え、表面未処理のAl基板上で作製したこと以外は実施例1と同様にしてAl基板/モノリス膜複合体を得た。Al基板/モノリス膜複合体の写真を図44に示す。モノリス膜と未処理のAl基板の接着力は小さいため、Al基板上に作製したモノリス膜は容易にはく離でき、図45に示すようなシート状のモノリス膜(以降、基板からはく離したモノリス膜をモノリスシートと称する)が得られる。上記の方法で作製したモノリスシートの膜厚は、0.328±0.049mmであった。
【0126】
モノリスシートの両面のうち、片面は実施例1で作製したAl基板上のモノリス膜の表面と同様の形状からなり(これをモノリス面と呼ぶ)、他面は、表面に細孔が観察されない平滑な面(これを平滑面と呼ぶ)を有する。モノリスシートの表面の形状を示すSEM画像を図46に示す。図46(a)は、モノリスシート作製時のAl基板と反対側の多孔構造(モノリス面)を、図46(b)は、モノリスシート作製時のAl基板と接触していた面の平滑構造(平滑面)を示す。
ここで、モノリスシートを作製するために用いる基板として、モノリス膜と接着性の低い材料であれば、Al基板以外のものも使用でき、テフロン(登録商標)基板やPE基板やPP基板等のポリオレフィン基板をもちいることができる。また、モノリスシートの膜厚は、単位面積あたりに塗布するエポキシ樹脂、アミン硬化剤、及びポロゲンの量を調整することにより可能である。
また、モノリスシート作製時に希釈剤を用いて、モノリスシートの膜厚を小さくすることができる。モノリスシートは、多孔構造(モノリス面)と平滑構造(平滑面)を有するモノリスシートを単独で用いてもよく、それらを複数同時に用いてもよい。また、2枚のモノリスシートの平滑面どうしを貼り合わせると、両面に多孔構造(モノリス面)を有するモノリスシートとして用いることができる。2枚のモノリスシートの貼り合わせは、あらかじめ行ってもよく、基板複合体の作製と同時に行ってもよく、また、基板複合体を作製後に行ってもよい。更に、モノリスシートの平滑構造(平滑面)を多孔構造が露出するまで除去することによって、両面に多孔構造(モノリス面)を有するモノリスシートとして用いてもよい。
【0127】
(基板複合体の作製)
モノリスシートのモノリス面にプラモデル用接着剤(セメダイン社製、プラモデル用接着剤、スチロール樹脂:14%、アセトンとシクロヘキサンと酢酸ブチルの合計:86%)を0.05g/cm2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上にポリスチレン基板(HIKARI社製PS2031−1、厚さ1mm)を25kg/m2の力で押圧し、ポリスチレン基板とモノリスシートとを接着した。
次に、別のモノリスシートのモノリス面に二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上に25kg/m2の力でSUS基板を押圧し、SUS基板とモノリスシートとを接着した。
【0128】
上記の、ポリスチレン基板に接着したモノリスシートの平滑面と、SUS基板に接着したモノリスシートの平滑面に、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜面を貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置し、ポリスチレン基板/モノリスシート/SUS基板複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。
【0129】
引張りせん断試験に接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを図47に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。ポリスチレン基板/モノリスシート/SUS基板複合体に対して、0.88±0.01MPaの接着強度が得られた。実施例13の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、ポリスチレン基板側とモノリスシート側の破断面のSEM画像を図48(a)及び(b)に示す。モノリス膜を介した場合、図48(a)より、ポリスチレンが破断していることが示されており、かつ図48(b)より、ポリスチレンがモノリスシート表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。
【0130】
実施例14
実施例13と同様にして、作製したモノリスシートのモノリス面に木工用ボンド(コニシ社製、品番#10122、成分:酢酸ビニル樹脂41%、水59%)を0.1g/cm2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上に木材(ラワン材、厚さ3mm)を25kg/m2の力でSUS基板に向けて押圧し、一晩静置することで、SUS基板と木材とを接着した。
次に、別のモノリスシートのモノリス面に二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上に25kg/m2の力でSUS基板を押圧し、SUS基板とモノリスシートとを接着した。
【0131】
上記の、木材に接着したモノリスシートの平滑面と、SUS基板に接着したモノリスシートの平滑面に、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm2の量で塗布し、得られた塗膜面を貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、木材/モノリスシート/SUSの基板複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。
【0132】
引張りせん断試験に接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを図49に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。木材/モノリスシート/SUSの基板複合体に対して、2.50±0.31MPaの接着強度が得られた。
【0133】
実施例15
実施例13と同様にして、作製したモノリスシートのモノリス面に木工用ボンド(コニシ社製、品番#10122、成分:酢酸ビニル樹脂41%、水59%)を0.1g/cm2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上に木材(ラワン材、厚さ3mm)を25kg/m2の力でSUS基板に向けて押圧し、一晩静置することで、SUS基板と木材とを接着した。
次に、別のモノリスシートのモノリス面にプラモデル用接着剤(セメダイン社製、プラモデル用接着剤、スチロール樹脂:14%、アセトンとシクロヘキサンと酢酸ブチルの合計:86%)を0.05g/cm2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上にポリスチレン基板(HIKARI社製PS2031−1、厚さ1mm)を25kg/m2の力で押圧し、ポリスチレン基板とモノリスシートとを接着した。
【0134】
上記の、木材に接着したモノリスシートの平滑面と、ポリスチレン基板に接着したモノリスシートの平滑面に、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm2の量で塗布し、得られた塗膜面を貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、木材/モノリスシート/ポリスチレン基板の複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。木材/モノリスシート/ポリスチレンの基板複合体に対して、0.68MPaの接着強度が得られた。
【0135】
実施例16
実施例13と同様にして、作製したモノリスシートのモノリス面にトルエンを0.1g/cm2の量で塗布し、トルエンを塗布したモノリス面と、接合面にトルエンを0.1g/cm2の量で塗布したPC基板のトルエンを塗布した面とを25kg/m2の力で押圧し、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、PC基板/モノリスシートの複合体を得た。次に、別のモノリスシートのモノリス面とPP基板とを170℃で60秒熱融着させてPP基板/モノリスシートの複合体を得た。
【0136】
PC基板/モノリスシートの複合体のモノリスシートの平滑面と、PP基板/モノリスシートの複合体の平滑面に、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm2の量で塗布し、モノリスシートの平滑面どうしを25kg/m2の力で押圧し、PC基板/モノリスシート複合体とPP基板/モノリスシートの複合体とを接着した。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。PC基板/モノリスシート/モノリスシート/PP基板の複合体に対して、1.45MPaの接着強度が得られた。
【0137】
比較例8
木材(ラワン材、厚さ3mm)と、SUS基板とに、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm2の量で塗布し、得られた塗膜面を貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、木材/SUS基板複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。木材/SUS基板複合体に対して、0.103MPaの接着強度が得られた。
【0138】
比較例9
木材(ラワン材、厚さ3mm)に木工用ボンド(コニシ社製、品番#10122、成分:酢酸ビニル樹脂41%、水59%)を0.1g/cm2の量で塗布し、得られた塗膜面をポリスチレン基板と貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、木材/SUSの基板複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。木材/ポリスチレンの基板複合体に対して、0.27MPaの接着強度が得られた。
【0139】
比較例10
PC基板にトルエンを0.1g/cmの量で塗布し、PP基板と25kg/mの力で押圧し、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、PC基板/PP基板の複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表21に示す。PC基板/PP基板複合体に対して、0.028MPaの接着強度が得られた。
【0140】
【表20】
【0141】
実施例13及び実施例14において、それぞれ実施例10及び実施例9の結果と同等の接着強度が得られ、モノリスシートを用いた基板複合体は、直接SUS板状にモノリス膜を作製した基板複合体と同様の接着強度を有することがわかる。また、実施例14及び実施例15において、それぞれ比較例8及び比較例9の結果に比べてそれぞれ高い接着強度が得られた。また、実施例16において、比較例10の結果に比べて高い接着強度が得られた。
【0142】
実施例17
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH2]/[epoxy])を1.25とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。
SUS基板/モノリス膜複合体に、接着面積が50mm×150mmとなるように粘着テープ(ニチバン株式会社製、No.102N)を、2kgのハンドローラーを用いて、20mm/秒の速さで2往復させて圧着し、SUS基板/モノリス膜/粘着テープ複合を作製した。作製したSUS基板/モノリス膜/粘着テープ複合体を10mm/分の速度で180°剥離し、剥離強度を測定した。剥離強度は、剥離開始点から25mm以降に相当する部分の100mmの長さの剥離領域における平均荷重から求めた。結果を表21に示す。
【0143】
比較例11
ポロゲンを用いないことを除いて、実施例17と同様にして、SUS基板/エポキシ膜複合体を得た。ここでSUS基板上に形成されるエポキシ膜は、細孔を有さない密に詰まったバルク層のエポキシ膜であり、エポキシ表面上での細孔の有無、即ちアンカー効果の有無が剥離強度に及ぼす効果を明らかにするために用いた。結果を表21に示す。
【表21】
【0144】
実施例17において得られたSUS基板/モノリス膜/粘着テープ複合体の剥離強度は1.72±0.04N/cmであり、比較例11において得られた剥離強度1.29±0.12N/cmに比べて高く、モノリス膜のアンカー効果は粘着テープの剥離強度を増大した。
【符号の説明】
【0145】
1 第1基板、2 第2基板、3 接着層、4 孔、5 突起部
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