【解決手段】内側環状部1と、その内側環状部1の外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と外側環状部2とを連結する連結部3とから構成される支持構造体SSを備える非空気圧タイヤTであって、内側環状部1又は外側環状部2は、弾性材料で構成された基材部21と、基材部21の中に埋設された環状の繊維強化プラスチック22とを備え、基材部21と繊維強化プラスチック22との間の剥離強度は200N/25mm以上である。
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する連結部とから構成される支持構造体を備える非空気圧タイヤであって、
前記内側環状部又は前記外側環状部は、弾性材料で構成された基材部と、前記基材部の中に埋設された環状の繊維強化プラスチックとを備え、
前記基材部と前記繊維強化プラスチックとの間の剥離強度は200N/25mm以上であることを特徴とする非空気圧タイヤ。
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する連結部とから構成される支持構造体を備える非空気圧タイヤの製造方法であって、
前記内側環状部の内周側を成形するための中型と、前記外側環状部の外周側を成形するための外型と、中型と外型の間に周方向に配置され、前記内側環状部の外周側、前記外側環状部の内周側、および前記連結部を成形するための複数の中子と、前記支持構造体のタイヤ幅方向両側面を成形するための一対の上型、下型とを配置して、前記内側環状部、前記外側環状部および前記連結部に相当するキャビティを形成する工程と、
繊維強化プラスチックの表面粗さ(Ra)を大きくして10μm以上40μm以下とする工程と、
前記キャビティのうち前記内側環状部又は前記外側環状部に相当する部分に環状の前記繊維強化プラスチックを配設する工程と、
前記キャビティに弾性材料の原料液を供給して硬化させて前記支持構造体の基材部を成形する工程と、含むことを特徴とする非空気圧タイヤの製造方法。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
【0003】
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
【0004】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、中実ゴム構造のソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような衝撃吸収能はない。また、非空気圧タイヤでは、弾性を高めてクッション性を改善することも可能であるが、空気入りタイヤが有するような荷重支持能または耐久性が悪くなるという問題がある。
【0005】
下記特許文献1には、円形の第1バンドと、前記第1バンドを離隔状態で囲み、前記第1バンドよりも大きな直径を有する第2バンドと、前記第1バンドと第2バンドを連結する複数のスポークと、並んで配置される前記スポークを相互連結する第1連結部材及び第2連結部材と、を含み、前記第2バンドの外側面に連結されるトレッドと、前記第2バンドと前記トレッドとの間に位置した補強層と、をさらに含むエアレスタイヤが開示されている。特許文献1の補強層は、タイヤの空気層に相当し、車両の荷重を支える役割をしている。
【0006】
また、下記特許文献2には、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部から前記外側環状部まで延び、タイヤ周方向に各々独立して設けられた複数の連結部とを備える支持構造体を有する非空気圧タイヤが開示されている。この非空気圧タイヤでは、外側環状部の外側に曲げ変形を補強するための補強層が設けられることもある。
【0007】
ところで、特許文献1及び特許文献2には、補強層と他の部材との間の接合方法に関する具体的な記載はない。補強層と他の部材との接合方法として、例えば接着剤を用いることが考えられるが、接着剤の強度次第では部材間で剥離するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、補強層と他の部材との間での剥離を抑制して耐久性を向上させることができる非空気圧タイヤ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する連結部とから構成される支持構造体を備える非空気圧タイヤであって、
前記内側環状部又は前記外側環状部は、弾性材料で構成された基材部と、前記基材部の中に埋設された環状の繊維強化プラスチックとを備え、
前記基材部と前記繊維強化プラスチックとの間の剥離強度は200N/25mm以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結する連結部とから構成される支持構造体を備えている。また、内側環状部又は外側環状部には、補強層としての繊維強化プラスチックが埋設されている。本発明では、内側環状部又は外側環状部の基材部と繊維強化プラスチックとの間の剥離強度が200N/25mm以上であるため、繊維強化プラスチック(補強層に相当)と基材部(他の部材に相当)との間での剥離を抑制して耐久性を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、前記繊維強化プラスチックの表面粗さ(Ra)は10μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0013】
繊維強化プラスチックの表面粗さ(Ra)を10μm以上40μm以下とすることで、繊維強化プラスチック表面の凹凸に基材部が入り込んでアンカー効果を得ることができる。その結果、基材部と繊維強化プラスチックとの間の剥離強度が高まるため、繊維強化プラスチックと基材部との間での剥離を抑制して耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の非空気圧タイヤの製造方法は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する連結部とから構成される支持構造体を備える非空気圧タイヤの製造方法であって、
前記内側環状部の内周側を成形するための中型と、前記外側環状部の外周側を成形するための外型と、中型と外型の間に周方向に配置され、前記内側環状部の外周側、前記外側環状部の内周側、および前記連結部を成形するための複数の中子と、前記支持構造体のタイヤ幅方向両側面を成形するための一対の上型、下型とを配置して、前記内側環状部、前記外側環状部および前記連結部に相当するキャビティを形成する工程と、
繊維強化プラスチックの表面粗さ(Ra)を大きくして10μm以上40μm以下とする工程と、
前記キャビティのうち前記内側環状部又は前記外側環状部に相当する部分に環状の前記繊維強化プラスチックを配設する工程と、
前記キャビティに弾性材料の原料液を供給して硬化させて前記支持構造体の基材部を成形する工程と、含むことを特徴とする。
【0015】
本発明により製造される非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結する連結部とから構成される支持構造体を備えている。また、成形された内側環状部又は外側環状部には、補強層としての繊維強化プラスチックが埋設されている。本発明では、繊維強化プラスチックの表面粗さ(Ra)を10μm以上40μm以下とすることで、基材部と繊維強化プラスチックとの間の剥離強度が高まるため、繊維強化プラスチック(補強層に相当)と基材部(他の部材に相当)との間での剥離を抑制して耐久性を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る非空気圧タイヤの製造方法において、前記繊維強化プラスチックの表面粗さ(Ra)をエネルギー照射により大きくすることが好ましい。
【0017】
エネルギー照射を用いることで、補強層としての剛性を低下させることなく、繊維強化プラスチックの表面粗さ(Ra)を大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、非空気圧タイヤの一例を示す正面図である。
図2は、
図1の非空気圧タイヤのI−I矢視断面図である。ここで、Oはタイヤ軸を、Hはタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0020】
本発明の非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを有するものである。本発明の非空気圧タイヤTは、このような支持構造体SSを備えるものであればよく、その支持構造体SSの外側(外周側)や内側(内周側)に、トレッドに相当する部材、補強層、車軸やリムとの適合用部材などを備えていてもよい。
【0021】
本実施形態の非空気圧タイヤTは、
図1の正面図に示すように、支持構造体SSが、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と外側環状部2を連結する連結部3とを備えている。
【0022】
内側環状部1は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0023】
内側環状部1のタイヤ径方向の厚みは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜20%が好ましく、2〜10%がより好ましい。
【0024】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤTを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、250〜500mmが好ましく、330〜440mmがより好ましい。
【0025】
内側環状部1のタイヤ軸方向の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0026】
内側環状部1の引張モジュラスは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。なお、本発明における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した値である。
【0027】
外側環状部2は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。外側環状部2のタイヤ径方向の厚みは、連結部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜20%が好ましく、2〜10%がより好ましい。
【0028】
外側環状部2は、弾性材料で構成された基材部21と、基材部21の中に埋設された環状の繊維強化プラスチック22とを備えている。繊維強化プラスチック22は、補強層として機能する。繊維強化プラスチック22としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)が例示される。繊維強化プラスチック22からなる補強層は、繊維のクロス(織物)に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の中間部材を使用することで、容易に形成できる。繊維の配向方向は、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向とするのが好ましい。なお、繊維強化プラスチック22は、複数枚を積層して用いてもよい。
【0029】
基材部21と繊維強化プラスチック22との間の剥離強度は200N/25mm以上であり、好ましくは300N/25mm以上である。剥離強度を200N/25mm未満とすると、基材部21と繊維強化プラスチック22との間で剥離が生じてやすく、外側環状部2の耐久性が不十分となる。本発明における剥離強度とは、JIS K−6256−2に準じて測定した値であり、剥離強度の値が大きいほど剥離しにくいことを示す。
【0030】
繊維強化プラスチック22の表面粗さ(Ra)は10μm以上であり、好ましくは20μ以上である。繊維強化プラスチック22の表面粗さ(Ra)を10μm以上とすることで、アンカー効果によって基材部21と繊維強化プラスチック22との間の剥離強度を高めることができる。一方、表面粗さ(Ra)を10μm未満とすると、十分なアンカー効果を発揮することが難しくなる。
【0031】
また、繊維強化プラスチック22の表面粗さ(Ra)は40μm以下であり、好ましくは30μm以下である。表面粗さ(Ra)を26μmよりも大きくすると、基材部21と繊維強化プラスチック22の界面での親和性が気泡の噛みこみ等により低下するため、アンカー効果による剥離強度の向上が限界となる。さらに、表面粗さ(Ra)を40μmよりも大きくすると、十分な剥離強度を得られなくなる。
【0032】
外側環状部2の内径は、その用途等応じて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、420〜750mmが好ましく、480〜680mmがより好ましい。
【0033】
外側環状部2のタイヤ軸方向の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0034】
外側環状部2の引張モジュラスは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、5〜180000MPaが好ましく、7〜50000MPaがより好ましい。
【0035】
連結部3は、内側環状部1と外側環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を置いて、タイヤ周方向に各々が独立するように複数設けられる。
【0036】
連結部3は、内側環状部1から外側環状部2までタイヤ径方向に延びる板状をしている。また、連結部3は、タイヤ幅方向に延びている。本実施形態の連結部3は、タイヤ幅方向の一方のタイヤ端から他方のタイヤ端まで連続して形成されている。
【0037】
タイヤ全体の連結部3の数としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、10〜80個が好ましく、40〜60個がより好ましい。
【0038】
連結部3のタイヤ周方向の厚みは、内側環状部1および外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの1〜30%が好ましく、1〜20%がより好ましい。また、連結部3のタイヤ周方向の厚みは、耐久性を確保するため、2mm以上が好ましい。
【0039】
連結部3のタイヤ軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100〜300mmが好ましく、130〜250mmがより好ましい。
【0040】
連結部3の引張モジュラスは、内側環状部1及び外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、5〜50MPaが好ましく、7〜20MPaがより好ましい。
【0041】
本発明における支持構造体SSは、弾性材料で成形される。本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張モジュラスが5〜100MPaであり、より好ましくは7〜50MPaである。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0042】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0043】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0044】
上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたもの使用可能である。
【0045】
弾性材料で一体成形された支持構造体SSは、内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3が、補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0046】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維が挙げられるが、長繊維を使用する形態として、タイヤ軸方向に配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0047】
補強繊維の種類としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0048】
本発明では、補強繊維を用いる補強の他、粒状フィラーによる補強や、金属リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0049】
本発明における支持構造体SSは、弾性材料で成形されるが、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3は、補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0050】
本実施形態では、外側環状部2の外側にトレッドゴム4が設けられている例を示す。トレッドゴム4としては、従来の空気入りタイヤのトレッドゴムと同様のものを設けることができる。また、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。
【0051】
<非空気圧タイヤの製造方法>
本発明の製造方法は、上記のような本発明の非空気圧タイヤTを好適に製造できる製造方法であって、内側環状部1の内周側を成形するための中型と、外側環状部2の外周側を成形するための外型と、中型と外型の間に周方向に配置され、内側環状部1の外周側、外側環状部2の内周側、および連結部3を成形するための複数の中子と、支持構造体SSのタイヤ幅方向両側面を成形するための一対の上型、下型とを配置して、内側環状部1、外側環状部2および連結部3に相当するキャビティを形成する工程と、繊維強化プラスチック22の表面粗さ(Ra)を大きくして10μm以上40μm以下とする工程と、キャビティのうち内側環状部1又は外側環状部2に相当する部分に環状の繊維強化プラスチック22を配設する工程と、キャビティに弾性材料の原料液を供給して硬化させて支持構造体SSの基材部21を成形する工程と、含むことを特徴とする。
【0052】
図3は、支持構造体SSを成形するための成形型を示しており、(a)正面図、(b)縦断面図である。成形型10は、支持構造体SSに対応するキャビティCを有する。各々のキャビティC1〜C3は、それぞれ支持構造体SSの内側環状部1、外側環状部2、連結部3に対応している。このようなキャビティCは、中型11と、外型12と、中子13と、上型14(
図3(a)では不図示)と、下型15とによって形成される。中型11は、内側環状部1の内周側を成形し、外型12は、外側環状部3の外周側を成形し、中子13は、内側環状部1の外周側と外側環状部2の内周側および連結部3を成形するためのものである。また、上型14と下型15は、支持構造体SSのタイヤ幅方向両側面を成形するためのものである。中型11、外型12、中子13は、下型15に固定することができ、上型14は下型15に対して開閉可能になっている。
【0053】
外型12と中子13との間のキャビティC2に環状の繊維強化プラスチック22を配設する。ただし、キャビティC2に繊維強化プラスチック22を配設する前に、予め繊維強化プラスチック22の表面粗さ(Ra)を大きくしておく。繊維強化プラスチック22の表面粗さ(Ra)を大きく方法としては、バフ処理等の機械的な方法もあるが、エネルギー照射による方法が好ましい。エネルギー照射によれば、補強層としての剛性を低下させることなく、繊維強化プラスチック22の表面粗さを大きくすることができる。エネルギー照射としては、電子線照射によるものが好ましい。電子線照射前の繊維強化プラスチック22の表面粗さ(Ra)が5〜10μmの場合、電子線照射は、30〜180kGyの照射線量で行うことが好ましく、100〜150kGyの照射線量で行うことがより好ましい。
【0054】
繊維強化プラスチック22は、環状に形成した際にその環状形状を保持し、自立可能となることが好ましい。繊維が柔らかすぎて自立できない場合、樹脂でコーティングするなどして自立可能にしてもよい。コーティング用の樹脂としては、ポリウレタンプライマーや樹脂エマルジョンなどが例示される。
【0055】
次に、成形型10のキャビティCに弾性材料の原料液を充填する。弾性材料の原料液としては、前述した弾性材料を高温で軟化させたものや、反応硬化前又は架橋前の液状原料が挙げられる。充填の際、キャビティCの隙間への浸入や補強繊維への含浸を好適に行う上で、充填の際に原料液の粘度が小さいことが好ましい。
【0056】
また、原料液の充填を均一に行う目的で、遠心力を付与する方法も効果的である。その場合、成形型10の下型15を円盤状に形成して、成形型10を軸芯Oの周りにモーター等で回転させる方法が利用できる。
【0057】
次いで、弾性材料の原料液を固化させ、脱型することにより支持構造体SSを得ることができる。原料液を固化させる方法としては、反応硬化、加熱硬化、冷却固化などが挙げられる。脱型を容易にするためには、成形型10の中子13を着脱可能な形態とすることが効果的である。
【0058】
脱型後には、ポストキュア工程などを実施することも可能である。その後、支持構造体SSの外周側に接着剤を介して、ベルト層、トレッドゴム等を巻き付けて接合してもよい。
【0059】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、外側環状部2に繊維強化プラスチックが埋設されている例を示したが、内側環状部1に繊維強化プラスチックを埋設するようにしてもよい。また、内側環状部1と外側環状部2の両方に繊維強化プラスチックを埋設するようにしてもよい。
【0060】
(2)前述の実施形態では、タイヤ径方向に延びる板状の連結部3が、タイヤ周方向に各々が独立するように複数設けられている例を示したが、連結部3は、内側環状部1と外側環状部2を連結するものであれば、その形状、個数、配置等は特に限定されない。
【0061】
(3)本発明の他の実施形態として、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた中間環状部と、その中間環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と中間環状部を連結する内側連結部と、中間環状部と外側環状部を連結する外側連結部とを備える支持構造体を有する非空気圧タイヤであって、内側環状部又は外側環状部は、弾性材料で構成された基材部と、基材部の中に埋設された環状の繊維強化プラスチックとを備え、基材部と繊維強化プラスチックとの間の剥離強度は200N/25mm以上であるものでもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0063】
比較例1
繊維強化プラスチックに対して電子線照射を行うことなく製造した非空気圧タイヤを比較例1とした。表面粗さは8.2μmであった。評価結果を表1に示す。
【0064】
実施例1〜5、比較例2
繊維強化プラスチックに対して電子線照射を行い、表面粗さを大きくした繊維強化プラスチックを用いて製造した非空気圧タイヤを実施例1〜5、比較例2とした。評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1の結果から以下のことが分かる。比較例1の非空気圧タイヤは、基材部と繊維強化プラスチックとの間の剥離強度が不十分なため、繊維強化プラスチックと基材部との間で剥離が生じた。実施例1〜5の非空気圧タイヤは、比較例1と比較して、剥離強度が200N/25mm以上となり、繊維強化プラスチックと基材部との間での剥離を抑制することができた。比較例2の非空気圧タイヤは、表面粗さが40μmよりも大きくなり、十分な剥離強度が得られず、繊維強化プラスチックと基材部との間で剥離が生じた。