(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-59013(P2018-59013A)
(43)【公開日】2018年4月12日
(54)【発明の名称】潤滑油
(51)【国際特許分類】
C10M 145/40 20060101AFI20180316BHJP
C10M 125/02 20060101ALI20180316BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20180316BHJP
C10N 20/06 20060101ALN20180316BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20180316BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20180316BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20180316BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20180316BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20180316BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20180316BHJP
【FI】
C10M145/40
C10M125/02
C10M101/02
C10N20:06 B
C10N20:06 Z
C10N30:06
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:25
C10N40:30
C10N50:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-198649(P2016-198649)
(22)【出願日】2016年10月7日
(71)【出願人】
【識別番号】594033813
【氏名又は名称】株式会社大成化研
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100127708
【弁理士】
【氏名又は名称】木暮 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】松原 賢政
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA04C
4H104CB19C
4H104DA02A
4H104EA08C
4H104EA10C
4H104LA03
4H104PA01
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA20
4H104PA41
4H104QA18
(57)【要約】
【課題】潤滑性能が高く、且つ安価な潤滑油を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の潤滑油は、基油と、前記基油に分散されたセルロースナノファイバーとを含むことを特徴とする。前記セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部がカルボキシ基で修飾されているとよい。前記カルボキシ基の対イオンとしてオニウムイオンを更に含むとよい。前記オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンが好ましい。前記セルロースナノファイバーの平均繊維幅としては1nm以上500nm以下が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、
前記基油に分散されたセルロースナノファイバーと
を含むことを特徴とする潤滑油。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部がカルボキシ基で修飾されている請求項1に記載の潤滑油。
【請求項3】
前記カルボキシ基の対イオンとしてオニウムイオンを更に含む請求項2に記載の潤滑油。
【請求項4】
前記オニウムイオンがアンモニウムイオンである請求項3に記載の潤滑油。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーの平均繊維幅が1nm以上500nm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の潤滑油。
【請求項6】
前記セルロースナノファイバーの含有量が0.01質量%以上30質量%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の潤滑油。
【請求項7】
前記基油に分散されたカーボンナノチューブを更に含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の潤滑油。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブの表面の少なくとも一部が極性基で修飾されている請求項7に記載の潤滑油。
【請求項9】
前記極性基が、水酸基、カルボニル基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種である請求項8に記載の潤滑油。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブの平均直径が0.01nm以上500nm以下である請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の潤滑油。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の潤滑油。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブの含有量が0.01質量%以上30質量%以下である請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の潤滑油。
【請求項13】
前記セルロースナノファイバーの前記カーボンナノチューブに対する含有量比が、質量比で1/10以上10/1以下である請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の潤滑油。
【請求項14】
前記基油の主成分が鉱物油である請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の潤滑油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)は、摺動材として優れているため、潤滑油の添加剤として用いると、潤滑性能を向上させることができる(下記特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−224225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、CNTを摺動材とする潤滑油は、高価なCNTを用いるため安価に提供することが困難であった。また、潤滑油の添加剤として、CNTと同等以上に摺動性に優れ、且つ安価に提供できる摺動材は検討されていなかった。
【0005】
そこで、本発明においては、潤滑性能が高く、且つ安価な潤滑油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の潤滑油は、基油と、前記基油に分散されたセルロースナノファイバー(以下、「CNF」ともいう)とを含むことを特徴とする。
【0007】
前記(1)の潤滑油によれば、CNTと同等以上に摺動性に優れるCNFを摺動材として用いるため、潤滑性能を高めることができる。また、CNFはCNTより安価であるため、前記(1)の潤滑油によれば安価に提供できる。
【0008】
(2) 前記(1)の潤滑油において、前記CNFの表面の少なくとも一部がカルボキシ基で修飾されていることが好ましい。この構成の場合、CNFの基油への分散性を向上させることができるため、潤滑性能を安定して発揮させることができる。なお、カルボキシ基で修飾される場合としては、CNF表面にカルボキシ基が付加される場合だけでなく、CNF表面の活性点(欠陥)への酸素原子の付加によりカルボニル基が形成された後、このカルボニル基への水酸基の付加によりカルボキシ基が形成される場合も含む。
【0009】
(3) 前記(2)の潤滑油において、前記カルボキシ基の対イオンとしてオニウムイオンを更に含むことが好ましい。この構成の場合、CNFの基油への分散性をより向上させることができるため、潤滑性能をより安定して発揮させることができる。
【0010】
(4) 前記(3)の潤滑油において、前記オニウムイオンがアンモニウムイオンであることが好ましい。この構成の場合、CNFの基油への分散性を更に向上させることができるため、潤滑性能を更に安定して発揮させることができる。
【0011】
(5) 前記(1)から(4)の潤滑油において、前記CNFの平均繊維幅が1nm以上500nm以下であることが好ましい。CNFの平均繊維幅を1nm以上とすることにより、CNFの摺動性が高まるため、潤滑性能を向上させることができる。また、CNFの平均繊維幅を500nm以下とすることにより、基油中におけるCNFの沈殿を抑制できるため、潤滑性能を安定して発揮させることができる。なお、前記「平均繊維幅」は、電子顕微鏡で観察されるCNFの単体の繊維幅の平均値であり、例えば電子顕微鏡で任意に10個のCNFの単体を選択し、これらのCNFの繊維幅を平均した値である。
【0012】
(6) 前記(1)から(5)の潤滑油において、前記CNFの含有量が0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましい。CNFの含有量を0.01質量%以上とすることにより、潤滑性能を向上させることができる。また、CNFの含有量を30質量%以下とすることにより、基油中におけるCNFの沈殿を抑制できるため、潤滑性能を安定して発揮させることができる。
【0013】
(7) 前記(1)から(6)の潤滑油において、前記基油に分散されたカーボンナノチューブ(CNT)を更に含むことが好ましい。CNTは摺動材として優れているため、CNFと併用することにより潤滑性能を向上させることができる。
【0014】
(8) 前記(7)の潤滑油において、前記CNTの表面の少なくとも一部が極性基で修飾されていることが好ましい。この構成の場合、CNTの基油への分散性を向上させることができるため、潤滑性能を安定して発揮させることができる。
【0015】
(9) 前記(8)の潤滑油において、前記極性基が、水酸基、カルボニル基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。この構成の場合、CNTの基油への分散性をより向上させることができるため、潤滑性能をより安定して発揮させることができる。なお、カルボニル基で修飾される場合としては、CNT表面にカルボニル基が付加される場合だけでなく、CNT表面の活性点(欠陥)への酸素原子の付加によりカルボニル基が形成される場合も含む。また、カルボキシ基で修飾される場合としては、CNT表面にカルボキシ基が付加される場合だけでなく、CNT表面の活性点(欠陥)への酸素原子の付加によりカルボニル基が形成された後、このカルボニル基への水酸基の付加によりカルボキシ基が形成される場合も含む。
【0016】
(10) 前記(7)から(9)の潤滑油において、前記CNTの平均直径が0.01nm以上500nm以下であることが好ましい。CNTの平均直径を0.01nm以上とすることにより、CNTの摺動性が高まるため、潤滑性能を向上させることができる。また、CNTの平均直径を500nm以下とすることにより、基油への分散性をより向上させることができるため、潤滑性能を安定して発揮させることができる。なお、前記「平均直径」は、電子顕微鏡で観察されるCNTの単体の直径の平均値であり、例えば電子顕微鏡で任意に10個のCNTの単体を選択し、これらのCNTの直径を平均した値である。
【0017】
(11) 前記(7)から(10)の潤滑油において、前記CNTが多層CNTであることが好ましい。この構成によれば、CNTの摺動性が高まるため、潤滑性能をより向上させることができる。なお、前記「多層CNT」とは、グラファイト層を2層以上重ねて筒状に巻いた構造を有するCNTを指す。
【0018】
(12) 前記(7)から(11)の潤滑油において、前記CNTの含有量が0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましい。CNTの含有量を0.01質量%以上とすることにより、潤滑性能を向上させることができる。また、CNTの含有量を30質量%以下とすることにより、基油中におけるCNTの沈殿を抑制できるため、潤滑性能を安定して発揮させることができる。
【0019】
(13) 前記(7)から(12)の潤滑油において、前記CNFの前記CNTに対する含有量比が、質量比で1/10以上10/1以下であることが好ましい。この構成によれば、潤滑性能をより向上させることができる。
【0020】
(14) 前記(1)から(13)の潤滑油において、前記基油の主成分が鉱物油であることが好ましい。この構成によれば、より安価に潤滑油を提供できる。なお、前記「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。
【発明の効果】
【0021】
本発明の潤滑油によれば、潤滑性能が高く、且つ安価な潤滑油を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0023】
<潤滑油>
本発明の一実施形態に係る潤滑油は、基油と、前記基油に分散されたCNFとを含むことを特徴とする。本実施形態の潤滑油によれば、CNTと同等以上に摺動性に優れるCNFを摺動材として用いるため、潤滑性能を高めることができる。また、CNFはCNTより安価であるため、本実施形態の潤滑油によれば安価に提供できる。本実施形態の潤滑油は、例えば自動車(四輪車、二輪車、トラクター等の農機、パワーショベル等の建機などの種々の車両を包含する。以下同じ。)用、船用、各種機械(建設機械、工作機械等)用の潤滑油として使用可能である。具体例を挙げると、自動車用潤滑油としては、エンジンオイル、ギヤオイル、自動車用グリース等が挙げられる。ギヤオイルとしては、例えば、パワーステアリングフルード、トランスミッションオイル、オートマチックトランスミッションオイル、ディファレンシャルオイル等が挙げられる。自動車用グリースとしては、例えば、ホイールベアリンググリース、ウォーターポンプグリース、シャシーグリース等が挙げられる。船用潤滑油としては、船用エンジン油、シリンダー油等が挙げられる。また、各種機械用潤滑油としては、特に限定されないが、冷凍機油、食品製造用機械油、エアコンプレッサ油、真空ポンプ油、チェーンソーオイル、摺動面油、工業用ギヤオイル、工業用グリース等が挙げられる。以下、本実施形態に係る潤滑油の構成成分について説明する。
【0024】
(CNF)
CNFは、摺動材として用いられる成分である。このCNFの原料であるセルロース繊維としては、例えば機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプ、具体的にはクラフト木材パルプ、竹繊維、加水分解済みクラフト木材パルプ、亜硫酸木材パルプ等をはじめ、古紙、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース、綿セルロース、麻セルロース、これらの混合物などを用いることができる。
【0025】
CNFの製造方法としては、後述する基油に分散可能なCNFが得られる方法であれば特に限定されず、例えば上記例示した原料(セルロース繊維)を物理的、化学的に処理する方法が挙げられる。物理的処理方法としては、例えばセルロース繊維を機械的に解繊する方法が挙げられ、具体的にはセルロース繊維を含む水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸又は多軸混練機、ビーズミル等によって摩砕ないし叩解することにより解繊する方法が例示できる。
【0026】
また、セルロース繊維の化学的処理によってCNFを得る方法としては、例えば2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)をはじめとするN−オキシル化合物を触媒とした酸化反応を用いてセルロース繊維を処理する方法が挙げられる。この方法で得られた酸化セルロースは、液中での軽度な分散処理により均質なCNFの分散体となる。
【0027】
本実施形態で用いられるCNFの表面の少なくとも一部は、カルボキシ基で修飾されていることが好ましい。この場合、CNFの基油への分散性を向上させることができるため、潤滑性能を安定して発揮させることができる。
【0028】
CNFの表面をカルボキシ基で修飾する方法としては、例えば上述した酸化反応を用いてセルロース繊維を処理する方法が挙げられ、具体的には特開2015−101694号公報に記載のTEMPO酸化法が例示できる。
【0029】
表面の少なくとも一部がカルボキシ基で修飾されているCNFを用いる場合、本実施形態の潤滑油は、上記カルボキシ基の対イオンとしてオニウムイオンを更に含むことが好ましい。この場合、CNFの基油への分散性をより向上させることができるため、潤滑性能をより安定して発揮させることができる。
【0030】
上記オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン、フルオロニウムイオン、クロロニウムイオン等が挙げられる。なかでもアンモニウムイオンを用いると、CNFの基油への分散性を更に向上させることができるため、潤滑性能を更に安定して発揮させることができる。なお、オニウムイオンの導入方法としては、公知の方法が使用でき、例えば特開2015−101694号公報に記載の方法が使用できる。
【0031】
CNFの平均繊維幅としては、潤滑性能をより向上させる観点から1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましい。また、基油中におけるCNFの沈殿を抑制し、潤滑性能を安定して発揮させる観点から、CNFの平均繊維幅としては、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
【0032】
潤滑油中のCNFの含有量としては、潤滑性能をより向上させる観点から0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、基油中におけるCNFの沈殿を抑制し、潤滑性能を安定して発揮させる観点から、潤滑油中のCNFの含有量としては、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0033】
(CNT)
本実施形態の潤滑油は、潤滑性能を向上させる観点から、摺動材としてCNTを更に含んでいてもよい。このCNTは、後述する基油に分散可能である限り、その製法等について特に限定されないが、表面の少なくとも一部が極性基で修飾されているCNTが好ましい。表面の少なくとも一部が極性基で修飾されているCNTによれば、基油への分散性を向上させることができる。これにより、潤滑性能を安定して発揮させることができる。
【0034】
上記極性基としては、水酸基、カルボニル基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。この場合、CNTの基油への分散性をより向上させることができるため、潤滑性能をより安定して発揮させることができる。
【0035】
CNTの表面に極性基を導入する方法は、特に限定されず、例えば特開2014−15387号公報等に記載の公知の方法を採用できる。より具体的には、まず、CNT粉末と硫酸とを少量ずつ所定の割合で混合撹拌し、混合液を生成する(工程1)。続いて、この混合液に所定の割合で硝酸を混合し撹拌する(工程2)。その後、十分に煮沸するまで該混合液を加熱した(工程3)後、加熱を止め、冷却する(工程4)。続いて、該混合液をpH12〜13のアルカリ水溶液で希釈してpH値を調整した(工程5)後、更に大気中において冷却する(工程6)。冷却後、該混合液をろ過して、ろ過水を取り出す(工程7)。そして、取り出したろ過水(混合液)を水で希釈する(工程8)。ここで、工程7及び工程8については、更に1回以上繰り返してもよい。続いて、希釈した混合液を遠心分離機により遠心分離させた(工程9)後、上澄み液に対して超音波洗浄機により超音波照射しながらろ過する(工程10)。ここで、工程9及び工程10については、それぞれ更に1回以上繰り返してもよく、工程9及び工程10のいずれか一方のみを更に1回以上繰り返してもよい。続いて、得られたろ過水を水で希釈して所定の濃度に調整することで、表面に極性基が導入されたCNTの分散液を得ることができる。
【0036】
CNTの平均直径としては、潤滑性能をより向上させる観点から、0.01nm以上が好ましく、0.1nm以上がより好ましく、1nm以上が更に好ましい。また、基油への分散性をより向上させる観点から、CNTの平均直径としては、500nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、50nm以下が更に好ましい。
【0037】
本実施形態で用いられるCNTとしては、多層CNTが好ましい。多層CNTを用いると、潤滑性能をより向上させることができる。
【0038】
本実施形態の潤滑油がCNTを含有する場合、潤滑油中のCNTの含有量としては、潤滑性能をより向上させる観点から0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、基油中におけるCNTの沈殿を抑制し、潤滑性能を安定して発揮させる観点から、潤滑油中のCNTの含有量としては、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0039】
本実施形態の潤滑油がCNTを含有する場合、CNFのCNTに対する含有量比(CNF/CNT)としては、潤滑性能をより向上させる観点から、質量比で1/10以上10/1以下が好ましく、1/5以上5/1以下がより好ましい。
【0040】
(基油)
本実施形態で用いられる基油としては、特に限定されるものではなく、例えば鉱物油、合成油、これらの混合油等が使用できる。使用可能な鉱物油としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油、これらの混合系炭化水素油などが挙げられる。
【0041】
また、使用可能な合成油としては、例えば、ポリα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、シリコーン油、フッ素油、アルキルフェニルエーテル油、アルキルビフェニル油、ポリフェニルエーテル油等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の潤滑油をより安価に提供する観点から、基油としては鉱物油を主成分として含むものが好ましい。
【0043】
(他の成分)
本実施形態の潤滑油には、必要に応じて他の成分を添加してもよい。他の成分としては、例えば有機モリブデン化合物(モリブデンジチオカーバメイト、モリブデンジチオホスフェイト、モリブデンアミン錯体等)、二硫化モリブデンなどのモリブデン化合物;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂からなる樹脂粉末;アルキル芳香族アミン、アルキルフェノール等の無灰系酸化防止剤;アルカリ土類金属を含有する中性又は過塩基性のスルフォネート;コハク酸イミド(ホウ素化物を含む)、コハク酸エステル等の無灰系分散剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛、硫化油脂、硫化オレフィン、ポリサルファイド、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びそれらのアミン塩等の耐摩耗剤;流動点降下剤;防錆剤;消泡剤などが挙げられる。なかでも、潤滑性能を向上させる観点からモリブデン化合物が好ましく、有機モリブデン化合物がより好ましい。これらの成分は、1種単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの成分を配合する場合、その配合量は、例えば0.05質量%以上5質量%以下程度である。
【0044】
本実施形態の潤滑油の製造方法は、特に限定されず、例えば粉末状のCNFを基油に分散させる方法、CNFの分散液を基油に加える方法等、いずれの方法であってもよい。また、CNTを更に含有する潤滑油を製造する場合、CNTの配合方法についても特に限定されず、例えば粉末状のCNTを基油に分散させる方法、CNTの分散液を基油に加える方法等、いずれの方法であってもよい。この場合、CNFとCNTの配合順序についても特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の潤滑油は、潤滑性能が高く、且つ安価な潤滑油として好適である。