【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例としてのバーチャル評価システム20の構成の概略を示す構成図である。本発明のバーチャル評価システム20は、
図1に示すように、ユーザ端末12、エキスパート端末14と接続可能に構成されており、Webサーバ22、ユーザ・エキスパート特徴量計算機(U→E特徴量計算機)24、エキスパート・ユーザ特徴量計算機(E→U特徴量計算機)26、ユーザアイテム評価予測値計算機28、アイテム情報テーブル30、ユーザアイテム評価テーブル32、エキスパートアイテム評価テーブル34、ユーザ・エキスパート学習器テーブル(U→E学習器テーブル)36、エキスパート・ユーザ学習器テーブル(E→U学習器テーブル)38、ユーザアイテム評価予測器テーブル40、ユーザアイテム評価予測値テーブル42を備える。U→E特徴量計算機24は、ユーザの特徴量知覚からエキスパート特徴量知覚を予測するための学習器を備えた計算機であり、U→E学習器テーブル36は、U→E特徴量計算機24での学習器を構成するためのパラメータを保存するためのテーブルである。E→U特徴量計算機26は、エキスパート特徴量知覚からユーザの特徴量知覚を予測するための学習器を備えた計算機であり、E→U学習器テーブル38は、E→U特徴量計算機26での学習器を構成するためのパラメータを保存するためのテーブルである。
図1では、Webサーバ22、U→E特徴量計算機24、E→U特徴量計算機26、ユーザアイテム評価予測値計算機28を個別のコンピュータで構成したが、それぞれの機能の一部を兼ねる複数のコンピュータ、ないしは単一のコンピュータで構成してもよい。アイテム情報テーブル30、ユーザアイテム評価テーブル32、エキスパートアイテム評価テーブル34、U→E学習器テーブル36、E→U学習器テーブル38、ユーザアイテム評価予測器テーブル40、ユーザアイテム評価予測値テーブル42は、複数の記憶装置で構成してもよいし、単一の記憶装置で構成してもよい。
【0018】
A.バーチャル評価システム20の動作
次に、実施例のバーチャル評価システム20の動作について説明する。
図2は、実施例のバーチャル評価システム20におけるアイテム評価値予測の流れの一例を示す説明図である。
【0019】
(1)事前のアイテム評価
I個のアイテムの番号集合をI={1,…,I}、U人のユーザの番号集合をU={1,…,U}とする。ユーザとは別に、アイテムの特徴量を的確に決定できるE人のエキスパート(センサと考えてもよい)の番号集合をE={1,…,E}とする。ユーザのアイテム評価の一例を示すフローチャートを
図3に示し、エキスパートのアイテム評価の一例を示すフローチャートを
図4に示す。
【0020】
ユーザu(式(1))は、
図3に示すように、ユーザ端末12からWebサーバ22にアクセスし、評価を行いたいアイテムの番号(識別子)i(式(2))をWebサーバ22に送り、当該アイテムの情報提示を要求する(ステップS100)。Webサーバ22は、アイテム情報テーブル30から当該アイテムの情報を読み取り(ステップS110)、ユーザに提示する(ステップS120,S130)。ユーザuは、当該アイテムの特徴量x(式(3))とその評価値d(式(4))を決定し、アイテム番号(識別子)i、ユーザ番号(識別子)uとともに、Webサーバ22に送付する(ステップS140)。Webサーバ22は、送付されたユーザ番号、アイテム番号、特徴量、評価値をユーザアイテム評価テーブル32に保存する(ステップS150)。
【0021】
【数1】
【0022】
エキスパートe(式(5))は、
図4に示すように、エキスパート端末14からWebサーバ22にアクセスし、評価を行いたいアイテムの番号(識別子)i(式(2))をWebサーバ22に送り、当該アイテムの情報提示を要求する(ステップS200)。Webサーバ22は、アイテム情報テーブル30から当該アイテムの情報を読み取り(ステップS210)、エキスパートに提示する(ステップS220,S230)。エキスパートeは、当該アイテムの特徴量(式(6))を決定し、アイテム番号(識別子)i、エキスパート番号(識別子)eとともに、Webサーバ22に送付する(ステップS240)。Webサーバ22は、送付されたエキスパート番号、アイテム番号、特徴量をエキスパートアイテム評価テーブル34に保存する(ステップS250)。
【0023】
【数2】
【0024】
(2)学習
上述した事前のアイテム評価において、ユーザu(式(1))が特徴量を決定したアイテム番号集合を式(7)とし、その特徴量を式(3),式(8)とし、その評価値を式(4),式(8)とする。エキスパートe(式(5))が特徴量を決定したアイテム番号集合を式(9)とし、その特徴量を式(10),式(11)とする。以下の説明では、|A|は集合Aの要素数を表す。U→E特徴量計算機24による学習の一例を示すフローチャートを
図5に示し、E→U特徴量計算機26による学習の一例を示すフローチャートを
図6に示し、ユーザアイテム評価予測値計算機28による学習の一例を示すフローチャートを
図7に示す。
【0025】
【数3】
【0026】
手順(1)
U→E特徴量計算機24は、ユーザアイテム評価テーブル32とエキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み(ステップS300)、
図2のAで示す部分に関して、ユーザu(式(1))とエキスパートe(式(5))のすべての組み合わせについて、ユーザとエキスパートの特徴量知覚の相関関係を任意の機械学習器を用いて学習する(ステップS310)。ユーザuとエキスパートeの両者が特徴量を決定しているアイテム番号集合を式(12)とする。この相関関係学習では、ユーザuが決定したアイテムの特徴量((式(13),(式(14))を入力すると、エキスパートeが決定した同じアイテムの特徴量(式(15)), 式(14))を出力するように、入出力関係(式(16))を学習する。U→E特徴量計算機24は、ユーザ番号u、エキスパート番号e、学習器構成に必要なパラメータ(学習結果)をU→E学習器テーブル36に保存する(ステップS320)。
【0027】
【数4】
【0028】
手順(2)
E→U特徴量計算機26は、ユーザアイテム評価テーブル32とエキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み(ステップS400)、
図2のBで示す部分に関して、ユーザu(式(1))とエキスパートe(式(5))のすべての組み合わせについて、上述の入出力関係(式(16))の逆関数を任意の機械学習器を用いて学習する(ステップS410)。すなわち、エキスパートeが決定したアイテムの特徴量((式(15)),式(14))を入力すると、ユーザuが決定した同じアイテムの特徴量(式(13),式(14)を出力するように、入出力関係(式(17))を学習する。E→U特徴量計算機26は、ユーザ番号u、エキスパート番号e、学習器構成に必要なパラメータ(学習結果)をE→U学習器テーブル38に保存する(ステップS420)。
【0029】
【数5】
【0030】
手順(3)
ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザアイテム評価テーブル32から必要な情報を読み込み(ステップS500)、
図2のCで示す部分に関して、すべてのユーザu(式(1))について、ユーザuが知覚したアイテムi(式(8))の特徴量(式(13))を入力すると、その評価値(式(18))を出力するように、任意の機械学習器を用いて、入出力関係(式(19))を学習する(ステップS510)。ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザ番号uと学習器構成に必要なパラメータ(学習結果)をユーザアイテム評価予測器テーブル40に保存する(ステップS520)。なお、上述における機械学習器は、入出力関係の要件を満たすものであれば、何を用いても構わない。
【0031】
【数6】
【0032】
(3)予測
次に、実施例のバーチャル評価システム20を用いて、ユーザu’(式(20))にとって未知のアイテムi(式(21))の評価値を予測する手順を説明する。なお、いずれかのユーザによってアイテムiの特徴量が決定されている、すなわち式(22)が成り立つものとする。また、すべてのエキスパートのうち、アイテムiの特徴量を決定している、すなわち式(11)であるエキスパートe(式(5))の集合を式(23)とする。すべてユーザのうち、アイテムiの特徴量を決定している、すなわち式(8)であるユーザu(式(1))の集合を式(24)とする。予測の一例を示すフローチャートを
図8に示す。
図8のフローチャートでは、ステップS600〜S630の処理はU→E特徴量計算機24により実行され、ステップS640〜S660の処理はE→U特徴量計算機26により実行され、ステップS670〜S690の処理はユーザアイテム評価予測値計算機28により実行される。
【0033】
【数7】
【0034】
手順(1)
U→E特徴量計算機24は、ユーザアイテム評価テーブル32、エキスパートアイテム評価テーブル34、U→E学習器テーブル36から必要な情報を読み込み(ステップS600)、ユーザu(式(25))ごとに、アイテムiの特徴量を決定していないすべてのエキスパートe(式(26))について、エキスパートeが知覚する特徴量を式(27)と予測する(ステップS610)。
【0035】
【数8】
【0036】
手順(2)
U→E特徴量計算機24は、エキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み(ステップS620)、上記手順(1)で算出した式(28),式(25),式(26)を用いて、すべてのエキスパートe(式(5))について、アイテムiの特徴量(式(29))を決定する。すでにアイテムiの特徴量を決定しているエキスパート、すなわち式(30)であるエキスパートについては、式(31)とする。式(26)であるエキスパートについては、式(32),式(25)を用いて式(33)を構成する。構成方法としては、たとえば、式(28),式(25)の平均値を用いる方法、すなわち式(34)とする方法が考えられる。また、すべてユーザとすべてのエキスパートに同じアイテムの特徴量を決定させた情報を用いて、構成方法を事前に学習しておき、その結果を用いても構わない。
【0037】
【数9】
【数10】
【0038】
手順(3)
E→U特徴量計算機26は、E→U学習器テーブル38から必要な情報を読み込み(ステップS640)、上記手順(2)で算出した特徴量(式(33),式(5)を用いて、ユーザu’のアイテムiに対する特徴量知覚を式(35)と予測する(ステップS650)。
【0039】
【数11】
【0040】
手順(4)
E→U特徴量計算機26は、上記手順(3)で算出した特徴量知覚(式(36),式(5))を用いて、ユーザの特徴量知覚予測結果を統合して特徴量知覚(式(37))を決定する(ステップS660)。決定方法としては、たとえば、式(36),式 (5)の平均値を用いる方法、すなわち式(38)とする方法が考えられる。また、すべてユーザとすべてのエキスパートに同じアイテムの特徴量を決定させた情報を用いて、構成方法を事前に学習しておき、その結果を用いても構わない。
【0041】
【数12】
【0042】
手順(5)
ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザアイテム評価予測器テーブル40から必要な情報を読み込み(ステップS670)、上記手順(4)で算出した式(37)を用いて、ユーザu’のアイテムiに対する評価値を式(39)と予測する(ステップS680)。ユーザアイテム評価予測値計算機は、ユーザ番号u’、アイテム番号i、予測評価値(式(39)の左辺)をユーザアイテム評価予測値テーブル42に保存する(ステップS690)。
【0043】
【数13】
【0044】
上述の処理においては、アイテムiの特徴量を決定している、すなわち式(30)であるエキスパートについては、決定済みの特徴量をそのまま用いる方法を採用しているが、ユーザu(式(25))による特徴量知覚情報を用いて、決定済みの特徴量を補正する方法も考えられる。この方法を採用する場合は、上述の手順(1)と手順(2)を以下の手順に変更することもできる。
【0045】
手順(1)
U→E特徴量計算機24は、ユーザアイテム評価テーブル32、エキスパートアイテム評価テーブル34、U→E学習器テーブル36から必要な情報を読み込み、ユーザu(式(25))ごとに、すべてのエキスパートe(式(5))について、エキスパートeが知覚する特徴量を式(27)と予測する。
【0046】
手順(2)
続いて、U→E特徴量計算機24は、エキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み、上記手順(1)で算出した式(28),式(25),式(5)を用いて、すべてのエキスパートe(式(5))について、アイテムiの特徴量(式(29))を決定する。構成方法としては、たとえば、式(28),式(25)の平均値を用いる方法、すなわち式(40)とする方法が考えられる。また、すでにアイテムiの特徴量を決定しているユーザ、すなわち式(30)であるユーザについては、式(33)の情報を加味して、式(41)とする方法も考えられる。
【0047】
【数14】
【0048】
なお、上述のシステムでは、複数のエキスパートによる特徴量決定を独立に扱う方法について説明したが、単一のエキスパートのみを考え、その特徴量は複数のエキスパートの平均値とする方法で構成しても構わない。
【0049】
(4)アイテム推薦
Webサーバ22は、ユーザ端末12からの要求に応じて、アイテム情報テーブル30とユーザアイテム評価予測値テーブル42から必要な情報を読み込み、アイテム予測値に基づいて、当該ユーザにアイテムを推薦する。
【0050】
B.具体例
B(1)ソムリエが特徴量を決定するワイン推薦システム
次に、本実施例のバーチャル評価システム20を用いた具体例としてソムリエが特徴量を決定するワイン推薦システムについて説明する。ワインの推薦システムでは、ワインの特徴量を甘み、酸味、苦味、渋み、余韻の5変数5段階で表現し、ワインの特徴量x(式(42))に対するユーザの評価z(式(43))を予測する。ワインの特徴量は、ソムリエが評価するべきであるが、ソムリエの数に限りがあり、ソムリエが評価できるワインの数にも限りがある。そこで、一般ユーザとソムリエの特徴量知覚の相関関係を利用して、ソムリエが評価していないワインの特徴量を仮想的に算出した上で、この情報から推薦対象ユーザの当該ワインに対する特徴量知覚を予測し、この情報から推薦対象ユーザに対する当該ワインの評価を予測する。
【0051】
【数15】
【0052】
(1)事前のワイン評価
本システムで取り扱うI個のワインの番号集合をI={1,…,I}とし、U人のユーザの番号集合をU={1,…,U}とする。E人のソムリエの番号集合をE={1,…,E}とする。ユーザu(式(44))は、ユーザ端末からWebサーバ22にアクセスし、評価を行いたいワインの番号i(式(45))をWebサーバ22に送り、当該ワインの情報提示を要求する。Webサーバ22は、アイテム情報テーブル30から当該ワインの情報を読み取り、ユーザに提示する。ユーザuは、当該ワインの特徴量x(式(46))とその評価値(式(47))を決定し、ワイン番号i、ユーザ番号uとともに、Webサーバ22に送付する。Webサーバ22は、送付されたユーザ番号、ワイン番号、特徴量、評価値をユーザアイテム評価テーブル32に保存する。
【0053】
【数16】
【0054】
ソムリエe(式(48))は、エキスパート端末14からWebサーバ22にアクセスし、評価を行いたいワインの番号i(式(49))をWebサーバ22に送り、当該ワインの情報提示を要求する。Webサーバ22は、アイテム情報テーブル30から当該ワインの情報を読み取り、ソムリエに提示する。ソムリエeは、当該ワインの特徴量y(式(50))を決定し、ワイン番号i、ソムリエ番号eとともに、Webサーバ22に送付する。Webサーバ22は、送付されたソムリエ番号、ワイン番号、特徴量をエキスパートアイテム評価テーブル34に保存する。
【0055】
【数17】
【0056】
(2)学習
ユーザu(式(44))が特徴量を決定したワイン番号集合を式(51)とし、その特徴量を式(46),式(52)、その評価を式(47),式(52)とする。ソムリエe(式(48))が特徴量を決定したワイン番号集合を式(53)とし、その特徴量を式(50), 式(54)とする。
【0057】
【数18】
【0058】
手順(1)
U→E特徴量計算機24は、ユーザアイテム評価テーブル32とエキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み、ユーザu(式(44))とソムリエe(式(48)のすべての組み合わせについて、特徴量知覚の相関関係を学習する。ユーザuとエキスパートeの両者が特徴量を決定しているワイン番号集合を式(55)とする。ユーザuが決定したワインの特徴量(式(56),式(57))を入力すると、ソムリエeが決定した同じワインの特徴量(式(58),式(59))を出力するように、入出力関係(式(60))を、シグモイド関数を活性化関数とした階層型ニューラルネットワークを用いて学習する。U→E特徴量計算機24は、ユーザ番号u、エキスパート番号e、学習器のパラメータとして、中間層数、中間層ニューロン数、ニューロン間の重み、活性化関数の閾値をU→E学習器テーブル36に保存する。
【0059】
【数19】
【0060】
手順(2)
E→U特徴量計算機26は、ユーザアイテム評価テーブル32とエキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み、ユーザu(式(44))とソムリエe(式(48))のすべての組み合わせについて、上述の式(60)の逆関数を学習する。すなわち、ソムリエeが決定したワインの特徴量((式(58),式(59))を入力すると、ユーザuが決定した同じワインの特徴量(式(56),式(57))を出力するように、入出力関係(式(61))を、シグモイド関数を活性化関数とした階層型ニューラルネットワークを用いて学習する。E→U特徴量計算機26は、ユーザ番号u、エキスパート番号e、学習器のパラメータとして、中間層数、中間層ニューロン数、ニューロン間の重み、活性化関数の閾値をE→U学習器テーブル38に保存する。
【0061】
【数20】
【0062】
手順(3)
ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザアイテム評価テーブル32から必要な情報を読み込み、すべてのユーザu(式(44))について、ユーザuが知覚したワインi(式(52))の特徴量(式(56))を入力すると、その評価(式(62))を出力するように、入出力関係(式(63))を、ラジアル基底関数ネットワークを用いて学習する。ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザ番号u、学習器のパラメータとして、中間層ニューロン数、基底関数の中心、基底関数の半径、基底関数と出力層間の重みをユーザアイテム評価予測器テーブル40に保存する。
【0063】
【数21】
【0064】
(3)予測
つぎに、本システムを用いて、ユーザu’(式(64))にとって未知のワインi(式(65))の評価を予測する手順を説明する。なお、いずれかのユーザによって、ワインiの特徴量が決定されており、そのユーザ番号集合を式(66)とする。すべてのソムリエのうち、アイテムの特徴量を決定しているソムリエの番号集合を式(67)とする。
【0065】
【数22】
【0066】
手順(1)
U→E特徴量計算機24は、ユーザアイテム評価テーブル32、エキスパートアイテム評価テーブル34、U→E学習器テーブル36から必要な情報を読み込み、ユーザu(式(68))ごとに、ワインiの特徴量を決定していないすべてのソムリエe(式(69))について、ソムリエeが知覚する特徴量を式(70)と予測する。
【0067】
【数23】
【0068】
手順(2)
U→E特徴量計算機24は、エキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み、上記手順(1)で算出した式(71),式(68),式(69)を用いて、すべてのソムリエe(式(48))について、ワインiの特徴量(式(72))を決定する。すでにワインiの特徴量を決定しているソムリエe(式(73))については、式(74)とする。ワインiの特徴量を決定していないソムリエe(式(69))については、ユーザの知覚情報から予測した式(71),式(68)を用いて、式(75)とする。
【0069】
【数24】
【0070】
手順(3)
E→U特徴量計算機26は、E→U学習器テーブル38から必要な情報を読み込み、上記手順(2)で算出した特徴量(式(27),式(48))を用いて、ユーザu’のワインiに対する特徴量知覚を式(76)と予測する。
【0071】
【数25】
【0072】
手順(4)
E→U特徴量計算機26は、上記手順(3)で算出した式(77),式(48)を用いて、一般ユーザu’のワインiに対する特徴量知覚を式(78)と決定する。
【0073】
【数26】
【0074】
手順(5)
ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザアイテム評価予測器テーブル40から必要な情報を読み込み、上記手順(4)で算出した式(79)を用いて、ユーザu’のワインiに対する評価を式(80)と予測する。ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザ番号u’、ワイン番号i、予測評価値(式(81))をユーザアイテム評価予測値テーブル42に保存する。
【0075】
【数27】
【0076】
(4)ワイン推薦
Webサーバ22は、ユーザ端末12からの要求に応じて、アイテム情報テーブル30とユーザアイテム評価予測値テーブル42から必要な情報を読み込み、ワイン予測値に基づいて、当該ユーザにワインを推薦する。
【0077】
B(2)センサが特徴量を決定するワイン推薦システム
次に、ワインなどの食品の味覚をセンシングする技術について考える。食品に対する味覚を定量的に計測することが可能であるが、計測に対する時間的、金銭的コストが大きく、市場に出回っているワインすべてを測定することは難しい。そこで、代表的なワインを集めたベンチマークワインを考え、ベンチマークワインについて事前にセンシングを行い、一般ユーザとセンサによる特徴量知覚の相関係数を利用して、センサが評価していないワインの特徴量を仮想的に算出した上で、この情報から推薦対象ユーザの当該ワインに対する特徴量知覚を予測し、この情報から推薦対象ユーザに対する当該ワインの評価を予測する。
【0078】
(1)事前のワイン評価
本システムで取り扱うI個のワインの番号集合をI={1,…,I}とし、U人のユーザの番号集合をU={1,…,U}とする。センシング済みのベンチマークワイン番号集合を式(81A)とし、その特徴量を式(82),式(83)とする。センシング済みのベンチマークワインの特徴量は、すべてエキスパートアイテム評価テーブル34に入力済みであるものとする。
【0079】
【数28】
【0080】
ユーザu(式(84))は、ユーザ端末からWebサーバ22にアクセスする。ベンチマークワインの情報未入力の場合は、Webサーバ22は、アイテム情報テーブル30からベンチマークワインの情報を読み取り、ユーザに評価値を入力するように促す。ユーザuは、ベンチマークワインの特徴量(式(84),式(85))とその評価値式((86),式(85))を決定し、ワイン番号i、ユーザ番号uとともに、Webサーバ22に送付する。Webサーバ22は、送付されたユーザ番号、ワイン番号、特徴量、評価値をユーザアイテム評価テーブル32に保存し、当該ユーザのベンチマークワイン情報入力フラグを入力済みとする。なお、ユーザはすべてのベンチマークワインの情報を入力する必要はない。ベンチマークワインの情報を入力済みの場合は、評価を行いたいワインの番号i(式(87))をWebサーバ22に送り、当該ワインの情報提示を要求する。Webサーバ22は、アイテム情報テーブル30から当該ワインの情報を読み取り、ユーザに提示する。ユーザuは、当該ワインの特徴量(式(85))とその評価値(式(86))を決定し、ワイン番号i、ユーザ番号uとともに、Webサーバ22に送付する。Webサーバ22は、送付されたユーザ番号、ワイン番号、特徴量、評価値をユーザアイテム評価テーブル32に保存する。
【0081】
【数29】
【0082】
(2)学習
ユーザu(式(88))が特徴量を決定したワイン番号集合式を(89)とし、その特徴量を式(85),式(90)、その評価を式(86),式(90)とする。
【0083】
【数30】
【0084】
手順(1)
U→E特徴量計算機24は、ユーザアイテム評価テーブル32とエキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み、すべてのユーザu(式(91))について、センサとの特徴量知覚の相関関係を学習する。ベンチマークワインのうち、ユーザuが特徴量を決定しているワイン番号集合を式(92)とする。ユーザuが決定したワインの特徴量(式(93),式(94))を入力すると、ベンチマークワインの特徴量(式(95),式(94))を出力するように、入出力関係(式(96))を、シグモイド関数を活性化関数とした階層型ニューラルネットワークを用いて学習する。U→E特徴量計算機24は、ユーザ番号i、学習器のパラメータとして、中間層数、中間層ニューロン数、ニューロン間の重み、活性化関数の閾値をU→E学習器テーブル36に保存する。
【0085】
【数31】
【0086】
手順(2)
E→U特徴量計算機26は、ユーザアイテム評価テーブル32とエキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み、すべてのユーザu(式(91))について、上述の式(96)の逆関数を学習する。すなわち、ベンチマークワインの特徴量(式(95),式(94))を入力すると、ユーザuが決定した同じワインの特徴量(式(93),式(94))を出力するように、入出力関係(式(97))を、シグモイド関数を活性化関数とした階層型ニューラルネットワークを用いて学習する。E→U特徴量計算機26は、ユーザ番号u、学習器のパラメータとして、中間層数、中間層ニューロン数、ニューロン間の重み、活性化関数の閾値をE→U学習器テーブル38に保存する。
【0087】
【数32】
【0088】
手順(3)
ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザアイテム評価テーブル32から必要な情報を読み込み、すべてのユーザu(式(91)について、ユーザuが知覚したワイン(式(90))の特徴量(式(93))を入力すると、その評価(式(98))を出力するように、入出力関係(式(99))を、ラジアル基底関数ネットワークを用いて学習する。ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザ番号u、学習器のパラメータとして、中間層ニューロン数、基底関数の中心、基底関数の半径、基底関数と出力層間の重みをユーザアイテム評価予測器テーブル40に保存する。
【0089】
【数33】
【0090】
(3)予測
つぎに、本システムを用いて、ユーザu’(式(100))にとって未知のワインi(式(101))の評価を予測する手順を説明する。なお、いずれかのユーザによって、ワインの特徴量が決定されており、そのユーザ番号集合を式(102)とする。
【0091】
【数34】
【0092】
手順(1)
U→E特徴量計算機24は、エキスパートアイテム評価テーブル34から必要な情報を読み込み、もし式(83)、すなわちワインiがベンチマークワインに含まれているならば、式(103)とし、以下の手順(2)をスキップして手順(3)に進む。式(104)であれば、U→E特徴量計算機24は、ユーザアイテム評価テーブル32、U→E学習器テーブル36から必要な情報を読み込み、ユーザu(式(105))ごとに、センサが知覚する特徴量を式(106)と予測する。
【0093】
【数35】
【0094】
手順(2)
E→U特徴量計算機26は、手順(1)で算出した式(107),式(105)用いて、式(108)とする。
【0095】
【数36】
【0096】
手順(3)
E→U特徴量計算機26は、E→U学習器テーブル38から必要な情報を読み込み、手順(2)までに算出した特徴量(式(109))を用いて、ユーザu’のワインiに対する特徴量知覚を式(110)と予測する。
【0097】
【数37】
【0098】
手順(4)
ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザアイテム評価予測器テーブル40から必要な情報を読み込み、手順(3)で算出した式(111)を用いて、ユーザu’のワインiに対する評価を式(112)と予測する。ユーザアイテム評価予測値計算機28は、ユーザ番号u’、ワイン番号i、予測評価値(式(113))をユーザアイテム評価予測値テーブル42に保存する。
【0099】
【数38】
【0100】
(4)ワイン推薦
Webサーバ22は、ユーザ端末12からの要求に応じて、アイテム情報テーブル30とユーザアイテム評価予測値テーブル42から必要な情報を読み込み、ワイン予測値に基づいて、当該ユーザにワインを推薦する。
【0101】
B(3)その他
本システムは、特徴量を算定可能なアイテムのリコメンデーション全般に適用可能で、とくに、正確に特徴量を決定可能なエキスパートないしは(コストの大きい)センサが存在する一方で、一般ユーザが特徴量知覚を行うと、その基準がユーザごとに異なる場合に有用である。たとえば、本システムは、上述のワインをはじめとする酒類(ビール、日本酒、焼酎など)のリコメンデーション、チーズなどの食品のリコメンデーション、香水のリコメンデーション、レビューをもとにした映画のリコメンデーション、レビューをもとにした化粧品のリコメンデーション等に応用可能である。
【0102】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。